特許第5964476号(P5964476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964476光電装置および鮮明な画像を撮影するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964476
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】光電装置および鮮明な画像を撮影するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20060101AFI20160721BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20160721BHJP
   G03B 13/36 20060101ALI20160721BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20160721BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20160721BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20160721BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G02B7/28 N
   G02B3/14
   G03B13/36
   G03B15/00 T
   G03B17/02
   H04N5/225 D
   G02B7/04 E
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-54917(P2015-54917)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-184679(P2015-184679A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】10 2014 104 029.5
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン シュナイダー
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−519300(JP,A)
【文献】 特開2008−158247(JP,A)
【文献】 特開2012−208797(JP,A)
【文献】 特表2006−520918(JP,A)
【文献】 特開2001−251552(JP,A)
【文献】 特開2013−162280(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28
G02B 3/14
G02B 7/04
G03B 13/36
G03B 15/00
G03B 17/02
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(12)からの、物体を特定するための物体情報を検出するための光電装置(10)であって、
画像センサ(16)と、前記画像センサ(16)に割り当てられた、傾きが可変の適応レンズ(26)が設けられた受光光学系(14)と、前記画像センサ(16)の受光信号から前記物体情報を生成するための評価ユニット(18)と、を備えた光電装置(10)において、
前記評価ユニット(18)が、前記適応レンズ(26)の第1の傾き角度に制御された状態での前記画像センサ(16)の撮影画像において、画像特徴部(24)の第1の位置を決定し、且つ、前記適応レンズ(26)の第2の傾き角度に制御された状態での前記画像センサ(16)の撮影画像において、前記画像特徴部(24)の第2の位置を決定するとともに、前記第1の傾き角度から前記第2の傾き角度へ傾けている間に露光することによって形成される、前記第1の位置と前記第2の位置の間のぼやけた線の長さから前記適応レンズ(26)の焦点設定のドリフトを修正するためのドリフト補正値を決定するように構成されていることを特徴とする、光電装置(10)。
【請求項2】
発光器(20)をさらに備えており、
前記評価ユニット(18)が、前記発光器(20)の光点または照明パターンの部分を前記画像特徴部(24)として使用する、請求項1に記載の光電装置(10)。
【請求項3】
監視領域(12)からの、物体を特定するための物体情報を検出するための光電装置(10)であって、
画像センサ(16)と、発光器(20)と、前記発光器(20)に割り当てられた、傾きが可変の適応レンズ(26)が設けられた発光光学系(22)と、前記画像センサ(16)の受光信号から前記物体情報を生成するための評価ユニット(18)と、を備えた光電装置(10)において、
前記評価ユニット(18)が、前記適応レンズ(26)の第1の傾き角度に制御された状態での前記画像センサ(16)の撮影画像において、前記発光器(20)の光点または照明パターンの一部によって形成された画像特徴部(24)の第1の位置を決定し、且つ、前記適応レンズ(26)の第2の傾き角度に制御された状態での前記画像センサ(16)の撮影画像において、前記発光器(20)の光点または照明パターンの一部によって形成された画像特徴部(24)の第2の位置を決定するとともに、前記第1の傾き角度から前記第2の傾き角度へ傾けている間に露光することによって形成される、前記第1の位置と前記第2の位置の間のぼやけた線の長さから前記適応レンズ(26)の焦点設定のドリフトを修正するためのドリフト補正値を決定することを特徴とする、光電装置(10)。
【請求項4】
記憶要素(18)に少なくとも1つの参照位置が保存されており、前記評価ユニット(18)が、前記第1の位置および/または前記第2の位置の参照位置からのずれに基づいて前記ドリフト補正値を決定する、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項5】
前記評価ユニット(18)が、前記焦点設定のドリフトが補償されるように前記ドリフト補正値に基づいて傾き角度の制御量を調整する調整部のために構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項6】
前記評価ユニット(18)が、前記適応レンズ(26)の焦点距離を設定するように構成されており、焦点距離設定のための制御信号が前記ドリフト補正値に基づいて修正される、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項7】
前記適応レンズ(26)が液体レンズまたはゲル・レンズである、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項8】
前記適応レンズ(26)が回転方向にセグメント化された制御要素(36a〜d)を備えている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項9】
前記評価ユニット(18)が、前記物体に付けられた光学コードを読み出すように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項10】
前記評価ユニット(18)が、前記監視領域(12)の一連の撮影画像を生成し、その際、前記焦点設定のドリフトを修正するために、少なくとも1度、前記第1の傾き角度に制御するように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電装置(10)。
【請求項11】
鮮明な画像を撮影するための方法であって、
受光光学系(14)の適応レンズ(26)を焦点合わせし、傾ける方法において、
前記適応レンズ(26)の第1の傾き角度に制御された状態での撮影画像において、画像特徴部(24)の第1の位置を決定し、
前記適応レンズ(26)の第2の傾き角度に制御された状態での撮影画像において、画像特徴部(24)の第2の位置を決定し、
前記第1の傾き角度から前記第2の傾き角度へ傾けている間に露光することによって形成される、前記第1の位置と前記第2の位置の間のぼやけた線の長さから前記適応レンズ(26)の焦点設定のドリフトを修正するためのドリフト補正値を決定し、
前記ドリフト補正値を用いて前記受光光学系(14)の焦点設定のドリフトを修正することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1あるいは12のプリアンブルに記載の光電装置および鮮明な画像を撮影するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほぼ全ての光電センサには、発光光学系あるいは受光光学系が設けられている。多くの場合、この光学系は、電気機械的または光学機械的にレンズの位置を調節することで発光光学系および受光光学系の背面焦点距離を調節する焦点調節部によって、特定の距離または距離範囲に精密に設定される。
【0003】
このような解決策には広い設置空間が必要であり、加えて、既定の焦点位置を実際に採用できるように正確な設定を可能にするための機械構造に対して高度な要求が課される。代替手段として、背面焦点距離ではなくレンズ自体の形状ひいてはその焦点距離が電圧制御によって直接変更される光学系の使用がある。このために、特にゲル・レンズまたは液体レンズが使用される。ゲル・レンズの場合は、シリコン状の液体が圧電アクチュエータまたは誘導アクチュエータによって機械的に変形される。液体レンズは、例えば、混合不可能な2種類の液体をチャンバ内に重ねて配置することによって、いわゆるエレクトロ・ウェッティング効果を利用する。制御電圧が印加されると、両方の液体の表面張力が異なって変化し、その結果、液体の内側の界面の曲率が電圧に応じて変化する。液体レンズに基づいた焦点調節を用いた光電センサが、DE 10 2005 015 500 A1またはDE 20 2006 017 268 U1から知られている。
【0004】
焦点設定が可変のカメラ・システムは2種類に分類することができる。オートフォーカス・システムは、異なる焦点位置での複数の撮影画像に基づいて、適した焦点位置を反復的に特定する(「閉ループ」法)。反復が必要なため、この方法には比較的時間がかかる。焦点合わせの2つ目の手段は、必要な焦点位置を距離測定値から決定し、次に焦点ユニットが基準値を置き換えるものである(「開ループ」法)。その場合、焦点ユニットが実際に所望の焦点位置に達するように配慮する必要がある。このことは特に、熱によって体積膨張する、温度に依存した屈折率を有する液体レンズまたはゲル・レンズでは重要である。このような変化を補償するために、温度に依存した補正マトリクスが教え込まれる。これにより、焦点ユニットの制御部が現在の温度を考慮して温度ドリフトを相殺することができる。しかし、このような可逆の温度推移と違って規則的な予測ができない経年変化のようなその他の効果がさらに加わることがある。その結果、修正不可能なドリフトが発生するとともに不鮮明さが残る。
【0005】
焦点調節のための液体レンズの発展構成において、EP 2 071 367 A1は異なる電圧を回転方向に印加することによって液体レンズの傾きをも変化させることを提案している。ぼやけた画像が撮影されることを防ぐために、カメラの固有運動が特定され、この固有運動を打ち消すためにカメラ内の1つまたは複数のレンズが傾けられる。しかし、この傾動が可能であったとしても、温度推移およびドリフトに関する上述の問題があることに何ら変わりはない。
【0006】
DE 10 2005 015 500 A1には液体レンズを備えた別の光電センサが開示されており、この液体レンズは、非対称フレームの使用によって、またはレンズ・フレームに別個に取り付けられた複数の電極に異なる電位を与えることによって、その光線形成特性を非対称に変化させることができる。しかし、この文献にはこれを何のために利用可能であるかが説明されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 10 2005 015 500 A1
【特許文献2】DE 20 2006 017 268 U1
【特許文献3】EP 2 071 367 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、当分野に属する装置における適応レンズを用いた焦点合わせを改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1および3に記載の光電装置、ならびに請求項12に記載の鮮明な画像を撮影するための方法によって解決される。この装置は、画像センサと、傾動によって様々な位置に合わせることができる適応レンズとを備えている。本発明は、適応レンズを傾けて、特定の画像特徴部がこの傾きに基づいてどの位置に到達するかを、画像センサを用いて観察するという基本思想を起点としている。この位置は、ドリフト、つまり特に温度および経年変化現象によって変化する。したがって、この位置からドリフトを推定し、それを用いて必要なドリフト補正値を推定することができる。
【0010】
請求項1による実施形態では、適応レンズが画像センサの受光光学系に設けられている。適応レンズが傾けられると、画像センサの視野が変化するとともに、画像センサの撮影画像内で特定の画像特徴部の位置が変化する。
【0011】
画像特徴部は、対象空間内の再認識可能な何らかの構造であってよい。好ましくは、装置は発光器を備えており、評価ユニットが、発光器の光点または照明パターンの部分を画像特徴部として使用する。これにより、装置は対象空間内のそのような再認識可能な構造の有無にもはや依存しなくなる。自らの照明から得られるこの画像特徴部は高い信頼性で良好に認識可能である。例えばこの発光器は、物体領域においてカメラの記録フィールドまたはコード読取装置の読取フィールドを表示するため等の、明暗パターン照射装置または照準装置である。このような発光器は、その独自の機能に基づいて設けられており、本発明によるドリフト補正用に特別に設けられているものではない。
【0012】
請求項3による代替の実施形態では、適応レンズが発光器の発光光学系に設けられている。この場合、適応レンズが傾けられると、発光器によって生成された照明パターンまたは光点の位置が画像センサの撮影画像において移動する。発光器の焦点合わせは、例えば、明暗パターン、特定の記録領域または読取領域を示すためのターゲット・パターン、または鮮明な光点の生成に役立つ。請求項1および3に記載の実施形態の混合形態も考えられ、この形態では受光器および発光器の両方が焦点合わせされるが、その際に1つの共通の適応レンズを用いてもよいし、それぞれ1つの適応レンズを用いてもよい。
【0013】
本発明には、請求項1に記載の適応レンズの受光側での使用においても、請求項3に記載の発光側での使用においても、素早く正確な焦点設定が可能になるという利点がある。本発明によれば、この焦点設定は開ループ法においてさえもうまくいく。なぜなら、運転中に適応レンズの温度推移および経年効果ひいては受光光学系または発光光学系の温度推移および経年効果を判定し、必要に応じてこれらを補償することができるからである。実際の焦点位置に照準を合わせる閉ループ法においても、このドリフト効果は考慮されるであろうが、この方法では反復によって比較的時間がかかってしまう。
【0014】
評価ユニットは好ましくは、適応レンズの第2の傾き角度に制御された状態での画像センサの撮影画像において、画像特徴部の第2の位置を決定するとともに、第1の位置および第2の位置からドリフト補正値を決定するように構成されている。このように、本実施形態では、ドリフト補正値が、2つの傾き角度およびその際決定される画像特徴部の2つの位置に基づいている。傾き角度をさらに変化させてその都度の画像特徴部の位置を決定することも考えられる。逆に、1つの傾き角度で2つ以上の画像特徴部の位置を決定することも考えられる。これによって、データベースが拡張され、このデータベースからドリフト補正値が決定される。各傾き角度においてそれぞれ撮影画像を生じさせることができる。代替的に、傾けている間に露光すれば、画像特徴部がぼやけて第1の位置から第2の位置への線が形成される。
【0015】
好適には、記憶要素には少なくとも1つの参照位置が保存されており、評価ユニットが、第1の位置および/または第2の位置の参照位置からのずれに基づいてドリフト補正値を決定する。つまり、この場合、最初に教え込んだ値または他の基準値によって、ドリフトが無い場合に各傾き角度において期待される画像特徴部の位置が最初に決定される。そして、この参照位置からのずれがドリフトの尺度となる。
【0016】
評価ユニットは好ましくは、ドリフトが補償されるようにドリフト補正値に基づいて傾き角度の制御量を調整する調整部用に構成される。ドリフトを認識し、例えばそれに関して保守要求を出力するだけでもすでに有利であると言えるが、本来の目標はドリフトを補償することである。ドリフト補正はこれを可能にする。つまり、ドリフトがもはや生じないように、あるいはドリフトが補償されるように、適応レンズへの制御信号を適合させることができる。また、適宜調整された傾きに制御した後、画像特徴部の位置がドリフトの無い場合の位置と一致することを確認することで、補正を検査することもできる。この検査は、調整手法を検証するために予め行ってもよいし、さらにはドリフト補償の作業方法が正しいこと保証するために運転中に行ってもよい。
【0017】
評価ユニットは好ましくは、適応レンズの焦点距離を設定するように構成されており、焦点距離を設定するための制御信号がドリフト補正値に基づいて修正される。適応レンズの任務は傾き角度の設定ではなく焦点合わせである場合が多い。あるいは、少なくとも傾き角度の設定に加えて焦点合わせも実行すべきである。この目的のため、開ループ法では、設定すべき特定の焦点距離に対して必要とされる制御信号を含む焦点表が保存される。ドリフトを補償するために、これらの制御信号が運転中にドリフト補正値に基づいて適合される。その際、ある傾きに応じて画像特徴部の位置のずれを補償するドリフト補償を行えば、同程度に焦点設定も補償されると考えられる。これは、適応レンズが傾動および焦点合わせのために同じ物理的動作原理を利用しており、したがって同じドリフトの影響を受けるからである。
【0018】
適応レンズは好ましくは、液体レンズまたはゲル・レンズである。このようなレンズは、所望の設定が可能でありながら、非常に小型で低コストである。このようなレンズの傾きは当然ながら幾何学的傾きであるとは限らず、実質的に傾きに相当する光学的な効果をいう。
【0019】
適応レンズは好ましくは、回転方向にセグメント化された制御要素を備えている。制御要素とは、例えば、エレクトロ・ウェッティング効果を介して液体レンズを制御する、セグメント化された電極である。さらに、液体に対する圧力を局所的に変化させることによって液体上の膜を様々に湾曲させる、またはレンズのゲル状物質を直接変形させる、セグメント化されたアクチュエータ、特に圧電アクチュエータが考えられる。回転方向のセグメント化によって、光学的傾きを生じさせる非回転対称な影響をレンズに与えることが可能になる。
【0020】
評価ユニットは好ましくは、物体情報からコード情報を読み出すように構成されている。これにより、本発明の装置がコード読取装置となる。
【0021】
評価ユニットは好ましくは、監視領域の一連の撮影画像を生成し、その際ドリフト補正のために、少なくとも一度、第1の傾き角度に制御するように構成されている。つまり、この種の装置は、例えば、コンベヤーベルトに取付けられた場合に、コンベヤーベルト上を送られる物体の検査または測定のために、もしくはこれらの物体に付けられた光学コードの読出のために、一連の画像を撮影する。画像はそれぞれ精密に焦点合わせされて撮影されなければならない。この目的のため、焦点設定を見出すために、適応レンズを傾けた状態での追加的な撮影画像を割り込ませることが考えられる。この追加的な撮影画像は、画像処理プログラムを用いて傾きの無い視点に逆算することもできる。傾き角度が小さければ、単に画像の一部を移動するだけで、傾きの無い視点に非常に近くなる。このようにすれば、焦点位置を見出すための撮影画像がそれだけで失われることがなくなる。ここで取り上げられているドリフトは比較的遅いプロセスなので、ドリフト補正値の算出もまた、使用される各画像について行う代わりに、より長い時間間隔で行うのみでもよい。
【0022】
本発明による方法は、同様にさらなる特徴によって構成することができ、その際も同様の利点を発揮する。このようなさらなる特徴は、独立請求項に続く下位請求項に、完結的にではなく例示的に記載されている。
【0023】
以下では本発明を、さらなる利点および特徴に関して、添付図面を参照しながら実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)受光光学系内に傾け可能な適応レンズを備えた光電センサの概略断面図、及び(b)適応レンズの2つの傾き姿勢における、(a)に従うセンサを用いた画像特徴部の記録を非常に簡略化した図。
図2】(a)発光光学系内に傾け可能な適応レンズが設けられた光電センサの概略断面図、及び(b)適応レンズの2つの傾き姿勢における、(a)に従うセンサを用いた画像特徴部の記録を非常に簡略化した図。
図3】(a)光線を拡大するように設定された適応レンズの図、(b)偏りなく設定された適応レンズの図、及び(c)光線を集束するように設定された適応レンズの図。
図4】(a)下方に傾けられた適応レンズの図、(b)傾けられていない適応レンズの図、及び(c)上方に傾けられた適応レンズの図。
図5】セグメント化された非回転対称の制御を説明するための適応レンズの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、監視領域12からの物体情報を検出するための光電装置10の一実施形態の概略断面を示す。画像センサ16(例えばCCDチップまたはCMOSチップ)は、受光光学系14を介して監視領域12の画像を生成する。この画像の画像データは次に評価ユニット18に送られる。
【0026】
受光光学系14は、評価ユニット18の電子制御によって傾けることが可能な適応レンズを備えている。適応レンズの機能原理は、後ほど図3から図5に基づいてより詳しく説明する。適応レンズに加えて、例えば、その前方に適応レンズが配置された、前方開口部が設けられた固定焦点対物レンズ、または、絞りもしくはレンズのような一般的なその他の光学要素が設けられていてもよい。適応レンズの傾きによって、装置10の視野の変化、つまり、回転および/または移動が生じる。
【0027】
本発明によれば、この視野の変化が、適応レンズのドリフト効果を測定し、場合によってはこれを補償するために利用される。装置10はさらに、発光光学系22が設けられた発光器20を備えている。それによって、監視領域内に、十分に再認識可能な画像特徴部24が生成される。それは、平行化された発射光線から成る狭い光点でもよければ、発光器20によって生成された明暗パターンの部分でもよい。好ましい一実施形態では、発光器20は、記録領域または読取領域の可視化のために使用される照準器あるいは照準用レーザである。発光器20が設けられていない不図示の一実施形態では、対象空間の構造的な特徴部を画像特徴部24として使用することができる。
【0028】
画像特徴部24は、適応レンズを傾けた状態で生成された撮影画像において、ドリフト効果を測定するために、その位置が評価ユニット18によって特定される。これが図1(b)に図示されている。この図では、第1の傾き位置における画像特徴部24aが実線で示されており、第2の傾き位置において時間をずらして記録された画像特徴部24bが破線で示されている。これらの画像特徴部の隣に実線矢印で示されているように、この傾きに基づいて、画像特徴部24a〜bが記録される両方の位置の間にずれが生じている。このずれは実際の傾きに起因しており、そこには、評価ユニット18または他の記憶要素において例えば教え込みによって記憶されている、制御による傾きの見込み量(破線矢印で示された部分)と、温度効果または経年効果に基づく、制御による傾きと実際の傾きとの間のずれをもたらす追加的なドリフト成分とが含まれている。これにより、ドリフトを測定することができる。発光器20と画像センサ16との間の間隔は可能な限り狭くすべきである。というのは、画像特徴部24の移動はこの間隔に依存しており、この依存性によって、ドリフトの測定値が変化したり、より複雑な計算が必要となったりするからである。
【0029】
簡素な実施形態では、ドリフトは単に測定されるだけであり、例えばそれが許容値を上回っていることが表示される。しかし、好適にはドリフト補償が行われる。このために、調整部が、制御による傾きと実際の傾きとを再び一致させるような、つまり、図1(b)の図示において実線矢印と破線矢印とが同じ長さになるような、適応レンズの制御量を決定する。
【0030】
時間をずらした画像撮影の代替として、傾けている間に露光してもよく、それにより、画像特徴部24が2つの個別の位置で記録される代わりに、ぼやけて両方の位置の間の線として記録される。この線はおそらく容易に認識可能であり、その場合、線の長さがドリフトを含む変位の尺度となる。
【0031】
適応レンズの傾き位置と焦点距離との間には温度に依存しない関係がある。というのは、これらの調節可能なパラメータが同一の物理的機能原理に基づいているからである。言い換えれば、前述のような焦点距離調節のドリフトを傾き調節のドリフトとして測定することができる。傾き調節を修正するドリフト補償は、焦点距離調節のドリフト補償にもつながる。ドリフト補償の目標は素早く確実な焦点設定であることが多いが、これが本発明によれば、適応レンズを傾けた際の画像特徴部24の移動を介して非間接的に決定される。
【0032】
例えばコンベヤーベルト上の物体の検査または測定のため、もしくは送られる物体上の光学コードを読み取るために、装置10を使用して一続きの画像全体を撮影する場合には、ドリフトを通常の画像撮影と同時に特定することができる。このために、異なる傾き位置で交互に画像撮影が行われ、必要な場合には、続いて評価ユニット18によって、傾きの影響がその後の画像処理によって補償される。発光器20の照明が撮影画像に不利な影響を与えて画像品質がもはや十分でなくなるような場合は、通常の撮影時には発光器20を停止させておき、適応レンズを傾けた状態での発光器20によって生成された画像特徴部24の中間撮影を通常の撮影の間に挿入することも考えられる。その際、この順序は厳密に交互でなくてもよく、複数の通常の撮影が連続していてもよく、適応レンズを傾けた状態での発光器20を動作させた際の複数の撮影が連続していてもよい。画像特徴部24が取り得る位置は限定されているので、中間撮影を高速にするために、中間撮影画像の一部のみを読み込んでもよい。
【0033】
図2には光電装置10の別の実施形態が示されている。この実施形態は、ここでは適応レンズが受光光学系14ではなく発光光学系22の一部である点が、図1に示された実施形態と異なっている。つまり、画像センサ16による撮影画像ではなく、鮮明な明暗パターン、記録領域または読取領域を認識可能にするための鮮明なターゲット・パターン、または鮮明な光点を特定の距離で投影するための発光器20の照明が焦点合わせされる。適応レンズの傾きによって、画像特徴部24a〜bが、撮影された画像データの内部に外見上生じるだけでなく、物体領域内の異なる位置に実際に生じる。しかし、本発明によるドリフト補正は、図1に関して説明したものと全く同様に行われる。図2に示された不変の受光光学系14の代わりに、同様に適応レンズを備えた受光光学系14も考えられる。特に、例えばオートコリメーションにより、多少異なった発光経路および受光経路の配置で、発光光学系22と同一の適応レンズを備えた受光光学系14が考えられる。
【0034】
図1および図2は、多数のセンサを代表してものとして示した原理的な図である。本発明にとっては、受光光学系14および/または発光光学系22内の適応レンズ、ならびにこの適応レンズに基づいたドリフト決定のみが重要である。これにより、例えば物体の検査、および測定のための多様な用途が実現される。コードを読み取るためのそれ自体は知られた信号処理または画像処理を使用すれば、バーコード・スキャナまたはカメラに基づくコード読取装置が得られる。
【0035】
図3および図4には、エレクトロ・ウェッティング効果に従った液体レンズ26としての例示的な一実施形態における受光光学系14あるいは発光光学系22の適応レンズが示されている。機能性をこの液体レンズ26に基づいて説明するが、本発明は他の適応レンズ、例えば、液体チャンバと、液体への圧力によってその湾曲が変更される、この液体チャンバを覆う膜とを備えたレンズ、またはアクチュエータ工学的手法によって機械的に変形される、ゲル状の光学的に透過性の材料を備えたレンズも含んでいる。
【0036】
能動的に整調可能な液体レンズ26は、屈折率が異なり密度が等しく透明であって混合不可能な2種類の液体28、30を備えている。2種類の液体28、30の間の液−液界面32の形状は、機能を最適化するために使用される。アクチュエータの動作は、表面張力または界面張力が印加電場に依存するというエレクトロ・ウェッティングの原理に基づいている。そのため、接続部34を通して適宜の電圧を電極36に印加するという電気制御によって、界面の形状32とともに液体レンズ26の光学特性を変化させることが可能である。
【0037】
図3には、まずは液体レンズ26の焦点特性を従来より知られた方法で変化させる様子を示している。図3(a)では、入射光が凹状の界面32に当たって広がっている。図3(b)には、界面32が平坦な偏りのない設定が示されており、図3(c)では界面が凸状であり、これにより入射光が集束されている。適宜の中間的な設定によって、屈折特性をより細かく段階付けすることができ、例えば焦点距離を調節可能であることが明らかである。
【0038】
加えて、液体レンズ26の傾きにも影響を与えることができる。これは図4に示されており、非回転対称に印加される電圧およびそれに伴う電場に基づいている。それに応じて界面32は非回転対称に変形され、これが傾きに利用される。図4(a)には液体レンズ26の下方への傾きが、図4(b)には比較のために傾きの無い回転対称な設定が、図4(c)には液体レンズ26の上方への傾きが示されている。その際、傾きの方向はそれぞれ光学的効果、つまり、どの方向から光が受光され、あるいはどの方向に光が射出されるかに関連している。傾き操作にはそれぞれ焦点合わせが重畳されていてもよい。
【0039】
図5には、非回転対称な制御を再度説明するために、液体レンズ26の平面図が示されている。詳しく言うと、前記制御のために電極36がセグメント化されている。ここでは例示的に4つのセグメント36a〜dを制御するために、図4に示された少なくとも1つの追加的な接続部34bが必要である。異なる電圧をセグメント36a〜dに印加することによって、界面32が非回転対称に変形するので、焦点距離の他にレンズ形状の傾きをも調節することができる。
図1
図2
図3
図4
図5