(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体積50%平均粒子径が50nm以上300nm以下、体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)が2.0以下であり、BJH法による細孔径が5nm以上30nm以下のメソ孔を有し、その細孔構造が3次元キュービック相構造であることを特徴とする、金属酸化物多孔質粒子。
体積50%平均粒子径が50nm以上100nm以下、体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)が1.5以下であり、BJH法による細孔径が5nm以上30nm以下のメソ孔を有し、その細孔構造が3次元キュービック相構造であることを特徴とする、請求項1に記載の金属酸化物多孔質粒子。
水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒と、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子と、塩基触媒とを含む、混合物を得る工程と、
前記混合物に、金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程と、
前記有機無機複合体粒子から前記非水溶性ポリマー粒子を除去する工程と、
を含む、請求項1又は2に記載の金属酸化物多孔質粒子の製造方法。
有機無機複合体粒子を得る前記工程において、前記金属酸化物前駆体は予め水の一部または全部を溶解する有機溶媒で希釈された状態で混合される、請求項3ないし7のいずれか1項に記載の金属酸化物多孔質粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の金属酸化物多孔質粒子、その製造方法、及びその用途について第1実施形態および第2実施形態に基づいて説明する。
【0041】
<第1実施形態>
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子は、体積50%平均粒子径が50nm以上300nm以下、体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)が2.0以下であり、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法)による細孔径が5nm以上30nm以下のメソ孔を有し、その細孔構造が3次元キュービック相構造である。
以下、本実施形態について、適宜図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0042】
<金属酸化物多孔質粒子>
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子は、大きさが略均一で、かつ分散性が高い、いわゆる単分散粒子である。
図1に示すように、金属酸化物多孔質粒子は内部に略均一なメソ孔を有しており、メソ孔は相互に連結した3次元キュービック相構造を構成する。本実施形態の金属酸化物多孔質粒子の体積50%平均粒子径は外径が50nm以上300nm以下であり、好ましくは50nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは、60nm以上90nm以下である。この範囲であると粒子製造が容易であり、かつ、様々な用途に用いることができ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂中に均一に分散させることができ、透明性が高い樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態の金属酸化物多孔質粒子の体積90%平均粒子径と体積50%平均粒子径との比(D90/D50)は2.0以下であり、好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.0以上1.4以下である。この範囲であると、粒子径分布が狭く、粗大粒子が少ないため、取扱性に優れ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば、後述する樹脂組成物として用いる場合、バインダー樹脂への均一分散性、得られる樹脂の透明性の点で好ましい。
【0044】
また、本実施形態の金属酸化物多孔質粒子はメソ孔を有し、BJH細孔径は、5nm以上30nm以下であり、好ましくは10nm以上25nm以下である。その細孔構造は、定形な3次元キュービック相構造である。
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子は、単分散粒子であるためフィルムや塗料に均一に分散させることが容易であり、さらに外径が小さいため透明性が高くなる。BJH細孔径が5nm以上30nm以下のメソ孔を有し、その細孔構造が定形な3次元キュービック相構造となるため、粒子内部に大きな空孔を備える。そのため、高吸着性が期待できる。また、粒子内部に大きな空気層を備えるため、軽量、断熱性、低屈折率、低誘電率などの特性が期待できる。
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子の比表面積は、80m
2/g以上であることが好ましく、100m
2/g以上であることがより好ましく、150m
2/g以上であることが特に好ましい。
また、熱伝導性は形状に起因した異方性が無い方が好ましいという観点から、球形の形状を有し、均一なメソ孔を有することが好ましい。
【0045】
金属酸化物多孔質粒子の外径は、水に分散したサンプルを動的光散乱による粒度分布計(DLS)で確認することができる。メソ孔の径はTEMの画像写真から観察でき、また、窒素ガス吸着の吸着側の等温線からBJH法により算出することができる。また、窒素ガス吸着法の脱着側の等温線からBJH法によりメソ孔を連結する孔の径を算出することができる。一般的に吸着側と脱着側のピークが異なる場合3次元キュービック相構造を取っており、ピークがほぼ同じ位置にある場合は2次元シリンダー構造を取っていると判断できる。
【0046】
また本実施形態において、金属とは、典型的な金属だけでなく、Siなどの半金属をも意味する。
本実施形態の金属酸化物としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ハフニウム(Hf)、コバルト(Co)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)から選ばれる金属の酸化物が好ましく、物質自身の屈折率、熱伝導率が金属酸化物の中で比較的低いという観点から、ケイ素酸化物(シリカ)が特に好ましい。
また金属酸化物は複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
【0047】
<金属酸化物多孔質粒子の製造方法>
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子の製造方法は、
水系媒体に分散可能な非水溶性ポリマー粒子の存在下に、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行い、有機無機複合体粒子を得る工程(1)と、
有機無機複合体粒子から前記非水溶性ポリマー粒子を除去して、金属酸化物多孔質粒子を得る工程(2)と、を含む。
【0048】
工程(1)で得られる有機無機複合体粒子は、金属酸化物体からなる粒子中に非水溶性ポリマー粒子を内包しており、工程(2)でテンプレートである非水溶性ポリマー粒子を除去することにより本実施形態の金属酸化物多孔質粒子が製造される。
【0049】
前記工程(1)は、さらに、工程(1−1)と工程(1−2)を含む。
工程(1−1)
水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下である非水溶性ポリマー粒子と塩基触媒とを添加し、混合物を得る工程。
工程(1−2)
前記工程(1−1)で得られた混合物と金属酸化物前駆体を混合し、該金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行って有機無機複合体粒子を得る工程。
【0050】
このように、本実施形態においては、非水溶性ポリマー粒子の存在下で、塩基触媒を用いた金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行う必要がある。塩基触媒により、ゾル−ゲル反応が早く進行し、さらに非水溶性ポリマー粒子を内包するように金属酸化物前駆体が3次元的に緻密なゲルを形成するため、有機無機複合体粒子を好適に得ることができる。
以下、各工程を順に説明する。
【0051】
[工程(1−1)]
工程(1−1)においては、具体的に、非水溶性ポリマー粒子(X)(以下、適宜「成分(X)」とする)、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)(以下、適宜「成分(Y)」とする)、塩基触媒(Z)(以下、適宜「成分(Z)」とする)を混合して混合物を調製する。
工程(1−1)において、後述の非水溶性ポリマー粒子の水分散体、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒、塩基触媒を混合することにより混合物を得るのが好ましい。
【0052】
非水溶性ポリマー粒子(X)について詳細に説明する。
非水溶性ポリマー粒子は、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下であることが好ましい。このような非水溶性ポリマー粒子から得られた金属酸化物多孔質粒子を用いることにより、高断熱で透明なフィルム、塗膜が実現できる。外径の測定方法は、例えば、粒度分布計(DLS)を用いて測定する方法、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて直接観察する方法等が適用可能である。
【0053】
本実施形態で用いる非水溶性ポリマー粒子(X)としては、水系媒体に分散可能なポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系、またはポリブタジエン系の重合体粒子が好ましい。特に、ポリオレフィン系の非水溶性ポリマー粒子が、外径30nm以下の非水溶性ポリマー粒子を形成しやすく好適に用いられる。より好ましくは、下記一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子である。
【0054】
[末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子]
【化7】
【0055】
式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。R
1およびR
2は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、X
1およびX
2は、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。
【0056】
一般式(1)で表される末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の数平均分子量は2.5×10
4以下、好ましくは1.5×10
4以下、より好ましくは4.0×10
3以下である。また、好ましくは5.5×10
2以上、より好ましくは8×10
2以上である。その数平均分子量は、Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量とX
1およびX
2で表されるポリアルキレングリコール基を含む基の数平均分子量とR
1,R
2およびC
2H分の分子量の和で表される。
【0057】
末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の数平均分子量が上記範囲にあると、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質とした際の分散液中の粒子の安定性、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒への分散性が良好となる傾向があり、かつ分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0058】
一般式(1)のAであるポリオレフィン鎖は、炭素数2〜20のオレフィンを重合したものである。炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。本実施形態においては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0059】
一般式(1)中、Aで表されるポリオレフィン鎖の、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)により測定された数平均分子量は、400〜8000であり、好ましくは500〜4000、さらに好ましくは500〜2000である。ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
【0060】
Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が高く、分散液の安定性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
【0061】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0062】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散液中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
【0063】
GPCによる、Aで表されるポリオレフィン鎖の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
【0064】
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
【0065】
R
1,R
2としては、Aを構成するポリオレフィンの2重結合に結合した置換基である水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0066】
一般式(1)において、X
1,X
2は同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜10000のポリアルキレングリコール基を含む基を表す。分岐ポリアルキレングリコール基の分岐態様は、多価の炭価水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
【0067】
ポリアルキレングリコール基を含む基の数平均分子量が上記範囲にあると、分散液の分散性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0068】
一般式(1)のX
1,X
2が上記の構造を有することにより、界面活性剤を用いることなく、体積50%平均粒子径が5nm以上30nm以下の粒子径を有する、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる重合体粒子が得られる。
【0069】
一般式(1)において、X
1およびX
2の好ましい例としては、それぞれ同一または相異なり、一般式(2)
【0071】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、X
3はポリアルキレングリコール基、または一般式(3)
【0073】
(式中、R
3はm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX
4、−NX
5X
6(X
4〜X
6はポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表し、mはR
3とGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
【0075】
(式中、X
7,X
8は同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表される基である。
【0076】
一般式(3)において、R
3で表される基としては、炭素数1〜20のm+1価の炭化水素基である。mは1〜10の整数であり、1〜6の整数が好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。
【0077】
一般式(1)の好ましい例としては、一般式(1)中、X
1、X
2のどちらか一方が、一般式(4)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。さらに好ましい例としては、X
1、X
2のどちらか一方が一般式(4)で表され、他方が、一般式(2)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。
【0078】
一般式(1)の別の好ましい例としては、一般式(1)中、X
1およびX
2の一方が、一般式(2)で表される基であり、さらに好ましくはX
1およびX
2の両方が一般式(2)で表される基である末端分岐型ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。
【0079】
一般式(4)のさらに好ましい構造としては、一般式(5)
【0081】
(式中、X
9、X
10は同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基を表し、Q
1、Q
2は同一または相異なり、それぞれ2価の炭化水素基を表す。)で表される基である。
【0082】
一般式(5)においてQ
1,Q
2で表される2価の炭化水素基は、2価のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜20のアルキレン基であることがより好ましい。炭素数2〜20のアルキレン基は、置換基を有していてもいなくてもよく、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモメチルエチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、炭化水素系のアルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、メチルエチレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基である。Q
1,Q
2は1種類のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
【0083】
一般式(1)で表されるX
1およびX
2のさらに好ましい構造としては、一般式(6)
【0085】
(式中、X
11はポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基である。
【0086】
X
3〜X
11で表されるポリアルキレングリコール基とは、アルキレンオキシドを付加重合することによって得られる基である。X
3〜X
11で表されるポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドであり、特に好ましくは、エチレンオキシドである。X
3〜X
11で表されるポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基である。
【0087】
一般式(1)においてX
1、X
2が上記構造を有すると、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質とした際の水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒への分散性が良好となるため好ましい。
【0088】
本実施形態で用いることができる末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子としては、下記一般式(1a)または(1b)で表される重合体を用いることが好ましい。
【0090】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+mは2以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。)
【0092】
(式中、R
4およびR
5は、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
R
6およびR
7は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
8およびR
9は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R
10およびR
11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+m+oは3以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。)
【0093】
一般式(1b)で表される重合体としては、下記一般式(1c)で表される重合体を用いることがさらに好ましい。
【0095】
(式中、l+m+o、nは一般式(1b)と同様である。)
ポリエチレン鎖のエチレンユニット数(n)は、一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量(Mn)をエチレンユニットの分子量で割ることにより算出した。また、ポリエチレングリコール鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)は、ポリエチレングリコール基付加反応時の重合体原料と使用したエチレンオキシドとの重量比が、重合体原料とポリエチレングリコール基の数平均分子量(Mn)との比に同じであると仮定して算出できる。
【0096】
また、n、l+mもしくはl+m+oは
1H−NMRによっても測定することができる。例えば、実施例で用いた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)およびそれを含む分散系粒子においては、一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の末端メチル基(シフト値:0.88ppm)の積分値を3プロトン分とした際の、Aで表されるポリオレフィン鎖のメチレン基(シフト値:1.06−1.50ppm)の積分値およびポリエチレングリコール(PEG)のアルキレン基(シフト値:3.33−3.72ppm)の積分値から算出することできる。
【0097】
具体的には、メチル基の分子量は15、メチレン基の分子量は14、エチレンオキサイド基の分子量は44であることから、各積分値の値よりAで表されるポリオレフィン鎖およびアルキレン基の数平均分子量が計算できる。ここで得られたAで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量をエチレンユニットの分子量で割ることによりnを、アルキレン基の数平均分子量をエチレングリコールユニットの分子量で割ることで、PEG鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)を算出することができる。
【0098】
Aで表されるポリオレフィン鎖がエチレン−プロピレン共重合体よりなる場合は、IR、
13C−NMRなどで測定できるプロピレンの含有率と、
1H−NMRにおける積分値の両者を用いることでnおよびl+mもしくはl+m+oを算出することができる。
1H−NMRにおいて、内部標準を用いる方法も有効である。
【0099】
前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、例えばWO2010/103856に記載の方法により製造することができる。
【0100】
このような末端分岐型ポリオレフィン系共重合体からなる本実施形態の重合体粒子は、一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジットな粒子である。
【0101】
本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、ポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するため、分散液の乾燥による粒子の取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することが可能である。本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、粒子が含むポリオレフィン鎖部分の融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のリジッドな粒子である。
【0102】
ポリオレフィン鎖部分の融点が上記の温度以上にあると、結晶性が良好なリジッドな粒子になり、より高温で加熱した場合においても粒子の崩壊が抑制される。
このため、後述する各種用途における製造工程や使用場面において、粒子の崩壊が抑制されるので、本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子が有する特性を失うことがなく、製品の歩留まりや製品の品質がより安定する。
【0103】
本実施形態の末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子は、溶媒等に分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
【0104】
[非水溶性ポリマー粒子分散液]
本実施形態の分散液は前記の非水溶性ポリマー粒子、好ましくは前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子を分散質に含み、該分散質が水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に粒子として分散している。
【0105】
本実施形態において、非水溶性ポリマー粒子が分散されてなる分散液は、例えば、
(1)非水溶性ポリマー粒子を製造する際に得られた、該重合体粒子を含む分散液、
(2)非水溶性ポリマー粒子を製造する際に得られた該重合体粒子を含む分散液に、さらに他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
(3)非水溶性ポリマー粒子を水や水と親和性を有する有機溶媒に分散させるとともに、他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
の何れをも含む。
【0106】
本実施形態の分散液における前記非水溶性ポリマー粒子の含有割合は、全分散液を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0107】
非水溶性ポリマー粒子の含有割合が上記範囲にあると、分散液の実用性が良好であり、かつ粘度を適正に保つことができ、取り扱いが容易になるため好ましい。
【0108】
また、本実施形態の分散液中の粒子の体積50%平均粒子径は好ましくは5nm以上30nm以下である。
【0109】
粒子の体積50%平均粒子径は、非水溶性ポリマーの分子量、親水性基と親油性基の比率、分岐の度合いなどを変更することにより制御することが可能である。
例えば前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体のポリオレフィン部分の構造および末端分岐部分の構造を変えることにより調節可能である。
なお、本実施形態における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径を指し、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
また、その形状は、例えばリンタングステン酸によりネガティブ染色を施した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することができる。
【0110】
本実施形態における分散液は、非水溶性ポリマー粒子を水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に分散化することにより得られる。
【0111】
本実施形態における分散化は、機械的せん断力により非水溶性ポリマー粒子を水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒に物理的に分散化する方法で行なうことができる。
【0112】
分散化方法としては特に限定されるものではないが、各種の分散化方法を利用することができる。具体的に言えば、非水溶性ポリマー粒子と水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒とを混合した後、溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機、オートクレーブ等で分散化する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法が挙げられる。また、前記非水溶性ポリマー粒子を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒とを混合して高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により分散化する方法も可能である。この際、非水溶性ポリマー粒子の溶解に使用する溶媒は、非水溶性ポリマー粒子が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散液に混入することが好ましくない場合には、蒸留等の操作により除去することが可能である。
【0113】
さらに具体的には、例えば、せん断力をかけることが可能な撹拌機付きのオートクレーブ中、非水溶性ポリマー粒子が溶融状態にあり、かつ加熱により劣化しにくい温度で、例えば非水溶性ポリマー粒子が前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の場合、100℃以上、好ましくは120〜200℃の温度でせん断力をかけながら加熱撹拌することによって分散液を得ることができる。
【0114】
分散化に要する時間は、分散化温度やその他の分散化条件によっても異なるが、1〜300分程度である。
上記の撹拌時間では分散化を十分に行うことができ、かつ非水溶性ポリマー粒子が劣化しにくいため好ましい。反応後は、分散液中の温度が100℃以下になるまで、好ましくは60℃以下になるまでせん断力をかけた状態を保つことが好ましい。
【0115】
本実施形態に用いる分散液の製造において、界面活性剤の添加は不可欠ではないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
【0116】
アニオン界面活性剤として、例えば、カルボン酸塩、単純アルキル・スルフォネート、変性アルキル・スルフォネート、アルキル・アリル・スルフォネート、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセライド、硫酸化アルカノール・アミド、硫酸化エーテル、アルキル燐酸エステル塩、アルキル・ベンゼン・フォスフォン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0117】
カチオン界面活性剤として、例えば、単純アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、アルキル・ピリジニウム塩、変性アルキル・ピリジニウム塩、アルキル・キノリニウム塩、アルキル・フォスフォニウム塩、アルキル・スルフォニウム塩などが挙げられる。
【0118】
両性界面活性剤として、例えば、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタインなどが挙げられる。
【0119】
ノニオン界面活性剤として、例えば、脂肪酸モノグリセリン・エステル、脂肪酸ポリグリコール・エステル、脂肪酸ソルビタン・エステル、脂肪酸蔗糖エステル、脂肪酸アルカノール・アミド、脂肪酸ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミド・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アルコール・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミン・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸メルカプタン・ポリエチレン・グリコール縮合物、アルキル・フェノール・ポリエチレン・グリコール縮合物、ポリプロピレン・グリコール・ポリエチレン・グリコール縮合物などが挙げられる。
これら界面活性剤は、単独または2種以上を併用することができる。
【0120】
本実施形態に用いる分散液の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)をおこなえばよい。
【0121】
上記の方法で得られる分散液は、各種の酸や塩基、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの塩基を添加することによりpHを1から13まで変化させても、凝集、沈殿を起こさない。また、この分散液を常圧下で加熱還流もしくは凍結解凍を繰り返すような、幅広い温度範囲においても凝集、沈殿を起こさない。
【0122】
上記方法における水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0123】
また、上記方法における水と親和性を有する有機溶媒は、非水溶性ポリマー粒子、界面活性剤等の分散質が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。分散液中への有機溶媒の混入が好ましくない場合には、該分散質を含有した分散液を調製した後、蒸留等により、前記有機溶媒を除去することが可能である。
【0124】
本実施形態における分散液は、前記非水溶性ポリマー粒子を100質量部としたときに、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子以外の分散質を好ましくは0.001質量部〜20質量部、より好ましくは0.01質量部〜10質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部含有することができる。
該分散質の含有量が上記範囲にあると、分散液の物性が実用面で良好であり、且つ分散液が凝集、沈殿を生じにくいため好ましい。
【0125】
[水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)]
本実施形態における成分(Y)は、金属酸化物前駆体(W)(以下、適宜「成分(W)」とする)を、さらに加水分解させる目的で添加される。
【0126】
また、成分(Y)は、非水溶性ポリマーを用いて水分散液を得るときに使用する溶媒と、該水分散液、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物および後述するゾル−ゲル反応用触媒の成分(Z)を混合するときに使用する溶媒、後述の金属酸化物前駆体(W)を混合するときに使用する溶媒を含む。
【0127】
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0128】
水の一部または全部を溶解する有機溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、非水溶性ポリマーが分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。混合物にこれらの有機溶媒が含まれていると、金属酸化物前駆体が縮合する際に、粒子径や形状を制御することができ、大きさの揃った球状の微粒子に近づけることができる。さらに後述する成分(W)として、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)が好ましいため、エタノール、メタノール等のアルコール類が、特に好ましい。
【0129】
[塩基触媒(Z)]
本実施形態で用いる混合組成物において、金属酸化物前駆体の縮合速度を制御し、球状体の金属酸化物多孔質体を形成させる点において塩基触媒が好適に使用される。具体的には、アンモニア、水酸化アンモニウム(アンモニア水)、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム水酸化物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類などが挙げられる。最も好適には金属酸化物多孔質体の粒子径や形状を制御し易い点から、アンモニア、水酸化アンモニウム(アンモニア水)が用いられ、安全性の点から水酸化アンモニウム(アンモニア水)がより好ましい。
【0130】
[工程(1−2)]
工程(1−2)においては前記工程(1−1)において得られた混合物中に、金属酸化物前駆体(W)を混合しゾル−ゲル反応を行い、有機無機複合体粒子を得る。
【0131】
[金属酸化物前駆体(W)]
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩、金属硫酸塩等が挙げられる。
【0132】
本実施形態における金属アルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R
12)x
1M(OR
13)y
1 (12)
【0133】
式中、R
12は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。R
13は、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。x
1およびy
1は、x
1+y
1=4かつ、x
1は2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等として利用する観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。中でも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物は、水および触媒の添加により、ゾル−ゲル反応することで、後述する金属酸化物となる化合物であってもよい。
【0134】
具体例を挙げると、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、これらに対応するアルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタンが挙げられる。
【0135】
さらに、これらの金属アルコキシドに加えて、以下1)〜4)に示すようなR
12に各種官能基をもつ金属アルコキシドを使用することもできる。
1)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物
2)3−グリシドキシプロピルプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基とアルコキシシリル基とを有する化合物
3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基とアルコキシシリル基とを有する化合物
4)3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基とアルコキシシリル基とを有する化合物
【0136】
本実施形態において、金属アルコキシドとしては、上記式(12)において、Mが珪素(Si)であるアルコキシシラン、Mがジルコニウム(Zr)であるアルコキシジルコニウム、Mがアルミニウム(Al)であるアルコキシアルミニウムおよびMがチタン(Ti)であるアルコキシチタンが好ましい。
【0137】
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、これらの1種以上の金属アルコキシドに塩基触媒(Z)を用いて部分的に加水分解されたものが、重縮合することにより得られる化合物であり、たとえば金属アルコキシドの部分加水分解重縮合化合物である。
本実施形態において、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物、およびアルコキシチタンの縮合物が好ましい。
【0138】
本実施形態における金属ハロゲン化物としては、下記式(13)で表されるものを用いることができる。
(R
14)x
2MZy
2 (13)
【0139】
式中、R
14は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。ZはF、Cl、Br、Iを表す。x
2およびy
2は、x
2+y
2≦4かつ、x
2は2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、光学材料等として利用する観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
【0140】
具体例を挙げると、テトラクロロ−ジメチルジシラン、クロロプロピルジクロロメチルシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジクロロ(メチル)−n−オクチルシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロエチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ヘキサクロロジシラン、フェニルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、これらに対応するフロロシラン類、ブロモシラン類、ヨードシラン類、および、これらに対応するハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化バリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化マンガン及びそれらの水和物が挙げられる。
【0141】
本実施形態において、金属アセテートとしては、酢酸コバルト、アセト酢酸コバルト、酢酸リチウム、アセト酢酸リチウム、酢酸鉄、アセト酢酸鉄、酢酸マンガン、アセト酢酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸セレン、硫酸アンチモン、硫酸スズ、硫酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0142】
成分(W)として、本実施形態の用途において金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物が好ましく、金属アルコキシドとしてはアルコキシシランがより好ましく、特に取り扱いが容易であることから、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)が特に好ましい。
【0143】
[成分(X)〜成分(W)の混合割合]
非水溶性ポリマー粒子(X)と金属酸化物前駆体(W)の混合比率は特に制限されるものでは無いが、1:10〜10:1が好ましい。成分(X)が多い場合、金属酸化物の存在比が低下するため多孔質構造の制御が難しくなり、細孔間をつなぐ壁が薄くなるため機械的強度が低下する。成分(W)が多い場合は孔の存在する割合が低くなるため、表面積、空孔率が小さくなり多孔質としての性能が期待できない。水および/または水の一部または全部を溶解する有機溶媒(Y)は金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して30重量部以上100000重量部以下が好ましく、より好ましくは50重量部以上50000重量部以下である。成分(Y)の割合が低いと粒子が凝集しやすくなり、多い場合は生産効率の点から好ましくない。なお、成分(Y)中の水と溶媒の割合は特に制限されるものでは無いが0.1:100〜1:50が好ましい。水が少ないと金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応速度が著しく低下し、多いと反応速度が速くなり粒子径や形状の制御が難しくなる。ゾル−ゲル反応用触媒(Z)は金属酸化物前駆体(W)100重量部に対して10重量部以上1000重量部以下が好ましい。成分(Z)の割合が低いと金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応速度が著しく低下し、割合が高いと粒子径が大きくなり300nm以下の粒子を得るのが難しくなる。
【0144】
前記工程(1−2)において、前記工程(1−1)において得られた混合物中に成分(W)を混合する方法としては、成分(W)が予め水の一部または全部を溶解する有機溶媒で希釈された状態で混合されることが好ましい。有機溶媒で希釈されることにより、ゾル−ゲル反応用触媒(Z)の存在する液中での局所的な反応を抑制することができるため、金属酸化物多孔質体の粒子径や形状を制御し易くなる。有機溶媒で希釈する割合は成分(W)100重量部に対して、例えば10重量部以上10000重量部、より好ましくは100重量部以上1000重量部である。希釈する割合が小さい場合効果が小さく、多い場合は生産効率の点から好ましくない。
水の一部または全部を溶解する有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。金属アルコキシドとしてテトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)を用いる場合、エタノール、メタノールが特に好ましい。
【0145】
また、成分(W)のゾル−ゲル反応の好ましい反応温度は、1℃以上200℃以下であり、より好ましくは10℃以上100℃以下であり、20℃以上50℃以下である。温度が低い場合、反応の速度が低下し粒子径や形状が不揃いになりやすい。高い場合は触媒のアンモニアが揮発するため粒子径の制御が難しくなる。反応時間は収率、生産効率の点から10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。成分(W)のゾル−ゲル反応は大気圧下で進行するが、オートクレーブなどを用いて高圧下で行っても構わない。
【0146】
金属酸化物前駆体縮合物のゾル−ゲル反応が進行することにより有機無機複合体粒子が形成する。
図2は、本実施形態に係る有機無機複合体粒子を示す模式断面図である。
得られた有機無機複合体粒子は遠心分離などの方法により反応液中から取り出される。取り出された有機無機複合体粒子はゾル−ゲル反応を完結させるため、ゾル−ゲル反応用触媒、水分を有機溶媒により洗浄除去し、その後充分に乾燥する。なお、ゾル−ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR
2)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
【0147】
[工程(2)]
工程(2)では有機無機複合体粒子から非水溶性ポリマー粒子を除去し、金属酸化物多孔質粒子を調製する。
【0148】
非水溶性ポリマー粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は200℃〜1000℃、より好ましくは300℃〜700℃である。焼成温度が低すぎる場合、非水溶性ポリマー粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるため細孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない。VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することができる。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O
3)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されず非水溶性ポリマー粒子が除去される条件が選ばれる。
【0149】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後は細孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下、熱処理を行うのが好ましい。
【0150】
金属酸化物多孔質粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、前記末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子の分散化方法で述べたアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
【0151】
金属酸化物多孔質粒子は、溶剤、水への分散安定性を向上させるため、あるいはバインダー樹脂との馴染みを良くし機械的強度や耐水性を向上させるために、シランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)で表面処理しても良い。
【0152】
表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。特に重合性単量体がカチオン重合成単量体である場合、カチオン重合性の官能基を有するシランカップリング剤である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン等が望ましい。上記シランカップリング剤は1種類あるいは2種類以上を合わせて用いることができる。
【0153】
[金属酸化物多孔質粒子の評価方法]
本実施形態で得られた金属酸化物多孔質粒子の構造確認および細孔径の確認は透過電子顕微鏡(TEM/日本電子社製透過型電子顕微鏡JEM−2010F)で200kVの条件にて行うことができる。平均粒子径および粒子分布は水中に分散させた粒子を動的光散乱法(粒度分布計/ナノトラックWAVE)にて測定することができる。粒子のBET比表面積は窒素吸着法で、細孔径およびメソ孔を連結する孔の径はBJH法にて計算することもできる(日本ベル社製表面積測定装置BELSORP−max)。
【0154】
<樹脂組成物>
本実施形態の金属酸化物多孔質粒子は、後述する様々な用途にそのまま用いることができ、さらに金属酸化物多孔質粒子とバインダー樹脂とを含む樹脂組成物として用いることもできる。以下、樹脂組成物について説明する。
【0155】
<バインダー樹脂>
本実施形態においてバインダー樹脂は、金属酸化物多孔質粒子間を結合しうる、あるいは金属酸化物多孔質粒子を均一に分散させる媒体となりうるものをいう。
本実施形態で使用しうるバインダー樹脂に特に制限はない。例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂、紫外線等の光の照射により硬化する光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、水溶性樹脂が挙げられる。なかでも造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系の樹脂が好ましい。
【0156】
熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0157】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、環状脂肪族型、ノボラック型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型等の各種のエポキシ樹脂が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂としては、オルソフタル酸系、イソフタル酸系、テレフタル酸系、脂環式不飽和酸系、脂肪式飽和酸系、ビスフェノール系、含ハロゲン酸系、含ハロゲンビスフェノール系の各種の不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂が挙げられる。
【0158】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロックコポリマー樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルアセタール樹脂(PVB)、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルホン樹脂、非晶アリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、シンジオ系ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
【0159】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、α−オレフィンコポリマー樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0160】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0161】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
【0162】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマー樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソールコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0163】
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP),ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体等が挙げられる。
【0164】
造膜性を有するポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系の樹脂としては、粒子径10〜300μmのポリマー粒子であり、乾燥後、室温または100℃以下の加熱により透明な塗膜を形成するものが好ましい。
【0165】
上記のバインダー樹脂の中では、金属酸化物多孔質粒子の分散性や汎用性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、水溶性樹脂、及び前記の造膜性を有する樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0166】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、200〜100,000が好ましく、500〜80,000がより好ましい。
光学特性、誘電率特性、断熱性等の性能発現の観点から、バインダー樹脂の含有量は、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、本発明の金属酸化物多孔質粒子の含有量は70〜5質量%が好ましく、60〜10質量%がより好ましい。
【0167】
金属酸化物多孔質粒子のバインダー樹脂への分散方法は特に限定されず、公知の方法が適用でき、例えば以下のような分散方法を用いることができる。
なおバインダー樹脂と有機溶媒、水等の分散媒を混合してエマルジョンにして用いてもよい。
【0168】
(1)バインダー樹脂(またはそのエマルジョン)、金属酸化物多孔質粒子を、必要に応じ溶剤及び/又は分散剤の存在下で混練機により溶融混練し、バインダー樹脂中に金属酸化物多孔質粒子(軽量化充填剤)が分散したマスターバッチを得る方法。
混練機としては、ビーズミル混合機、3本ロールミル混合機、ホモジナイザー混合機、ラボプラストミル混合機などが使用できる。
(2)水中に分散している金属酸化物多孔質粒子を、処理剤を添加して湿式処理を行なった後、溶剤置換した金属酸化物多孔質粒子オルガノゾルをバインダー樹脂(またはそのエマルジョン)に添加・混合する方法。
処理剤としては、前記のシランカップリング剤に代表される有機珪素化合物(表面処理剤)あるいはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0169】
<フィルム、塗膜>
本実施形態の樹脂組成物からフィルムまたは塗膜を得ることができる。このフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、0.1W/mK以下であることが好ましく、より好ましくは0.05W/mK以下である。これにより、断熱効率が向上できる。また、このフィルムまたは塗膜の乾燥時厚みが10μmの時のHAZE値は、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。これにより、透明性の高いフィルム、または塗膜が得られる。
【0170】
フィルムまたは塗膜の作成方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば、以下のようにして形成される。
金属酸化物多孔質粒子を含む塗料を、ガラス基盤上にバーコーターを用い厚みを調節しコートする。オーブンにより50℃〜100℃の温度で1時間〜24時間乾燥させた後、形成されたフィルムをガラス基盤から剥がし取り、金属酸化物多孔質粒子含有フィルムまたは塗膜を得る。
【0171】
本実施形態のフィルムまたは塗膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。また、本実施形態のフィルムまたは塗膜のHAZE値は、フィルムまたは塗膜の乾燥時の厚みを10μmとし、日本電色工業社製 NDH4000により測定することができる。フィルムの屈折率はアッベ屈折計により、また薄い塗膜の屈折率はエリプソメーターにより測定することができる。
【0172】
<用途>
本実施形態の金属酸化物多孔質体は、医薬(DDS:ドラッグデリバリーシステム)、分子プローブ、触媒、吸着材料、センサー、塗料、インク等に用いることができる。
本実施形態の金属酸化物多孔質体を含む樹脂組成物は、プリント基板等の低誘電率材料、機能性分子を内包した特殊塗料またはインク等に用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物から得られるフィルムまたは塗膜は、自動車、住宅、ビル等の窓ガラス断熱フィルムまたは断熱塗料等の断熱材料、ディスプレイ、タッチパネル等の反射防止フィルム等に用いることができる。
【0173】
<第2実施形態>
本実施形態によれば、下記成分(A)及び成分(B)を含有するコート剤が提供される。
(A)第1実施形態に記載の金属酸化物多孔質粒子。
(B)硬化性官能基含有化合物。
【0174】
本実施形態は、第1実施形態に記載の金属酸化物多孔体粒子を含有し、十分な耐擦傷性を発揮するコート剤およびその用途を提供するものである。
【0175】
本実施形態のコート剤は、屈折率が低く調節可能であり、成分(B)のバインダーの特性によりハードコート性を付与できるため、様々な用途に用いることができ、所望の特性を効果的に発現することができる。例えば本実施形態のコート剤から得られるコート膜を画像表示装置表面に設けることにより、良好な視認性と耐擦傷性を付与することが出来る。また、本発明に用いる金属酸化物多孔質粒子の製造方法は、粒子設計の自由度が大きく、一粒子中に存在するメソ孔の割合(空孔率)を自由に変えることができるため、屈折率を調節することができる。
【0176】
すなわち、本実施形態のコート剤は、第1実施形態に記載の金属酸化物多孔質粒子、紫外線等の活性エネルギー線あるは熱により硬化する化合物からなり、屈折率が低く、透明なコート層を形成することが出来る。
以下、本実施形態について、説明する。
【0177】
<金属酸化物多孔質粒子>
本実施形態における成分(A)としては、第1実施形態に記載の金属酸化物多孔質粒子が用いられる。また、当該粒子の製造方法についても第1実施形態に記載のものを採用すればよい。
【0178】
<コート剤>
本実施形態の成分(A)の金属酸化物多孔質粒子は、硬化性官能基含有化合物からなる成分(B)のバインダーと混合しコート剤として用いられる。硬化性官能基含有化合物からなる成分(B)としては、特に好ましくは活性エネルギー線硬化性官能基含有化合物または熱硬化性官能基含有珪素化合物が用いられる。以下、バインダー成分について詳細に説明する。
【0179】
<活性エネルギー線硬化性官能基含有化合物>
活性エネルギー線硬化性官能基含有化合物としては、具体的には(メタ)アクリレート化合物及びポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物について説明する。好ましい(メタ)アクリレート化合物は1分子中に2個以上(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系オリゴマー/モノマーである。1分子中に2個以上(メタ)アクリロイルオキシ基を有することにより、紫外線、電子線等の活性エネルギー線により硬化し、耐擦傷性が良好なコート層を形成する。
【0180】
具体的には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、1,1,3,3,5,5―ヘキサ((メタ)アクリロキシ)シクロトリホスホゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(メタ)アクリロキシエチルオキシシクロトリホスホゼン等が挙げられる。
また、耐擦傷性を向上させる目的で、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物が好適に添加される。一般的には、ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートの反応により得られ、具体的には、ジイソシアネートとして、プロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、メチルノルボルネンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシドールメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどをそれぞれ組合せた反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
これらのうち、硬化後の硬度を上げるためには、官能基は2つ以上が好ましく、さらに好ましくは3つ以上であり、ヒドロキシ(メタ)アクリレートにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを用いたものが特に好ましい。
【0181】
また1分子に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系モノマーも粘度の調整などの目的で配合してもよい。具体的には、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシージエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシーポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0182】
また数個のビニル基やチオール基を有する反応性モノマーも粘度調製や硬化性の制御を目的に添加しても良い。
【0183】
具体的には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトール(3−メルカプトプロピオネート)などを用いることができる。
【0184】
また、紫外線や熱による硬化を促進させるため、光または熱重合開始剤を配合してもよい。
【0185】
光重合開始剤としては、一般に市販されているもので構わないが、特に例示すると、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF(株)製品 イルガキュアー651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製品 イルガキュアー184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF製品 ダロキュアー1173 ランベルティー社製品 エサキュアーKL200)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1―フェニル−プロパン−1−オン)(ランベルティー社製品 エサキュアーKIP150)、(2−ヒドロキシエチル)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)(BASF製品 イルガキュアー2959)、2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF製品 イルガキュアー907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASF製品 イルガキュアー369)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASF製品 イルガキュアー819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(BASF製品 CGI403)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(=TMDPO BASF社製ルシリンTPO、BASF製品 ダロキュアーTPO)、チオキサントンまたはその誘導体など1種、あるいは2種以上混合して用いる。添加量は(メタ)アクリレート化合物100重量部に対して0.01〜10.0重量部の範囲内が望ましい。
【0186】
また、光増感作用の目的により第三アミン、例えばトリエタノールアミン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、イソペンチルメチルアミノベンゾエートなどを添加しても良い。
【0187】
熱重合開始剤としては、主として過酸化ベンゾイル(=BPO)などの過酸化物、アゾビスイソブチルニトリル(=AIBN)などのアゾ化合物が用いられる。
【0188】
ポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物について説明する。
好ましいポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物は、1分子中に2個以上(メチル)グリシジルエーテル基を有するオリゴマー/モノマーである。1分子中に2個以上の(メチル)グリシジルエーテル基を有することにより、紫外線、電子線等の活性エネルギー線により硬化し、耐擦傷性が良好なコート層を形成する。具体的には、例えば以下の化合物が挙げられる。
(メチル)グリシジルエーテル基を2個有する化合物としては、エチレングリコール(メチル)ジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジ(メチル)グリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジ(メチル)グリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジ(メチル)グリシジルエーテル、グリセリンジ(メチル)グリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジ(メチル)グリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジ(メチル)グリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール(メチル)グリシジルエーテル等が挙げられる。さらにグリシジルオキシ基を3個以上有する化合物としてはグリセリントリ(メチル)グリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メチル)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メチル)グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(メチル)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラ(メチル)グリシジルエーテル、カルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
紫外線や熱による硬化を促進させるため、光または熱重合開始剤を配合してもよい。
具体的には光または熱によりカチオン重合を開始する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。
【0189】
また、光カチオン重合開始剤は一般に市販されているもので構わないが、特に例示すると、Uvacure1590、1591(いずれもダイセルUCB社製、商品名)、アデカオプトマ−SP−100、SP−170、SP−172,SP−150、SP−152(いずれも旭電化社製 商品名)、ロードシル−2074(ローディア社製 商品名)が好適に使用できる。
これらの光カチオン重合開始剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。添加量はポリ(メチル)グリシジルエーテル化合物100重量部に対して0.01〜10.0重量部の範囲内が望ましい。
さらに、必要に応じて、光カチオン重合促進剤を併用することができる。具体的には、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0190】
さらに、熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物、例えば、熱潜在性カチオン重合開始剤も併用することができる。具体的には、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、p−t−ブチルベンジルテトラヒドロチオフェニウム六フッ化アンチモンなど;アニリニウム塩型化合物では、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、N,N−ジメチル−N−(4−クロロベンジル)アニリニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−(1−フェニルエチル)アニリニウム六フッ化アンチモン;ピリジニウム塩型化合物では、N−ベンジル−4−ジメチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモン、N−ベンジル−4−ジエチルアミノピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸、N−(4−メトキシベンジル)−4−ジメチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモン、N−(4−メトキシベンジル)−4−ジエチルアミノピリジニウム六フッ化アンチモンなど;トルイジニウム塩型化合物では、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモンなど;ホスホニウム塩型化合物では、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモンなど;ヨードニウム塩型化合物では、ジフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−4−クロロフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−4−ブロムフェニルヨードニウム六フッ化ヒ素、ジ−p−トリルヨードニウム六フッ化ヒ素、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素などが挙げられる。
【0191】
市販の熱潜在性カチオン重合開始剤として、例えば、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイド SI−80、サンエイドSI−100、サンエイドSI−145、サンエイドSI−150、サンエイドSI−160(以上、三新化学工業株式会社製、商標名)等が挙げられる。
以上の開始剤は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わない。また、光照射後に熱を併用しさらに硬化を進めることもできる。
【0192】
<熱硬化性基含有有機珪素化合物>
熱硬化性基含有有機珪素化合物として具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−エチル−3−{[3−(トリメトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタンなどが挙げられる。
【0193】
これらの化合物は、熱による3次元的な網目構造を形成することが可能であり、ハードコート性を上げることができる。これらのシラン化合物はそのままの状態で用いても構わないが、反応性をより高めるために、予め、アルコキシシリル基を塩酸水などの酸性触媒、またはアンモニア水などの塩基性触媒を用いて加水分解し、シラノール(Si−OH)の状態にして、または部分的に縮合し、シロキサン結合(Si−O−Si)が形成された状態にして用いるのがより好ましい。
熱による硬化性を促進させるため、好ましい金属キレート化合物は、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネート、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも、硬化条件、塗液のポットライフなどにおいて、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネートがより好ましい。添加量は、熱硬化性官能基含有有機珪素化合物100重量部に対して0.01〜10.0重量部の範囲内が望ましい。さらに過塩素酸類を併用して使用することも可能である。好ましい過塩素酸類としては、過塩素酸、過 塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等が挙げられる。
コート剤組成物には目的に応じて、これらの他に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコ−ン系界面活性剤、シリコーンオイルなどの各種添加剤を配合することができる。
【0194】
金属酸化物多孔質粒子(成分(A))と硬化性官能基含有化合物(成分(B))との比率は、各成分の種類にもよるが好ましくは、成分(A)が、(A)と(B)の合計100重量部に対して1重量部以上60重量部以下、より好ましくは5重量部以上50重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上40重量部以下である。この範囲であると屈折率が低く耐傷つき性の良好なコート膜が得られやすい。
コート剤の調製は、公知の方法で行えばよく、特に限定されるものではないが、例えば以下の通りである。まず所望量の成分を遮光性の褐色ガラス容器あるいはポリ容器中で混合、必要に応じてハードコート剤組成物を温め(概ね50℃以下)、完全に混合させる。さらに必要に応じその他成分を添加し充分に混合する。さらに充分静置脱気してハードコート剤組成物とした。混合はマグネチックスターラーや攪拌器を用いたが、量や粘度に応じて、ミキサー、シェーカーなどを選択すればよい。
溶剤を加える場合は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(PEGME)、ポリエチレングリコールメチルエーテルアセテート(PEGMEA)、ダイアセトンアルコール(DAA)、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエンなどが挙げられる。コーティング液の粘度は基材へのコーティングの方法により調整されるが、好ましくは、0.1cp〜10000cpでありより好ましくは、0.5cp〜500cpであり、さらに好ましくは1cp〜100cpである。
【0195】
<コート膜の形成>
基材へのコート方法としては、ディップ、スピンコート、スプレーなどの方法をとることができる。
【0196】
光重合に必要な光源としては、低圧、高圧、超高圧の各種水銀ランプ、ケミカルランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。光重合を行う時間は、好ましくは1秒から10分である。1秒より短いと充分に光硬化が行われず、10分より長いと、コート皮膜、基材の劣化が起き着色、ワレなどが起こる場合がある。硬化は基材へコートした後、必要に応じて溶媒の乾燥を行う。乾燥温度、時間は用いる溶剤の沸点により決定される。熱重合に必要な温度条件は一般的には50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であるが、用いる溶媒の沸点、基材の耐熱温度、熱重合開始剤の種類により決定される。
硬化後のコート膜の特性は特に限定されるものではないが、屈折率がNaのD線(589.6nm)において1.45以下であることが好ましく、より好ましくは1.40以下である。
【0197】
<用途>
本実施形態の低屈折率コート材は、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、反射スクリーン等の画像表示装置、タッチパネル等の反射防止フィルム用コート剤、眼鏡レンズ等の反射防止コート等に用いることができる。
【0198】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0199】
以下、実施例Aおよび実施例Bにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0200】
[実施例A]
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の合成例)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSC(示差走査熱量測定)を用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。
1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
【0201】
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)の合成例)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm
2G加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記一般式(14)で示される化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
【0202】
【化16】
【0203】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、Na
2WO
40.85g(2.6mmol)、CH
3(nC
8H
17)
3NHSO
40.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(t,3H,J=6.92Hz),1.18−1.66(m),2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz),2.66(dd,1H,J=4.29,5.28Hz),2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm)121℃
【0204】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、下記一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R
1=R
2=水素原子、Y
1、Y
2の一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(t,3H,J=6.6Hz),0.95−1.92(m),2.38−2.85(m,6H),3.54−3.71(m,5H)
融点(Tm)121℃
【0205】
【化17】
【0206】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0207】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R
1=R
2=水素原子、X
1、X
2の一方が一般式(6)で示される基(X
11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q
1=Q
2=エチレン基、X
9=X
10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
融点(Tm)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0208】
<末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製例>
(20重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液の調製)
(A)前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は0.018μmであった(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。
【0209】
実施例a1
(シリカ多孔質粒子の合成1)
エタノール/水(10mL/2.5mL)混合液に、1重量%に希釈した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液1mLおよび28%アンモニア水溶液0.4mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS 20μLをマイクロピペットを用いて添加した。その後、室温で6時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が90nm、D90/D50が1.38であり、TEM観察から内部に10−20nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積108m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が13nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
なお、本実施例A項において、DLSの測定は粒度分布計/ナノトラックWAVEを用い水に分散させて行っている。また、多孔質粒子としてシリカを用い、分散溶媒として水を用いているので、シリカの屈折率を1.44、水の屈折率を1.0として測定している。
【0210】
実施例a2
(シリカ多孔質粒子の合成2)
TEOSを12.5μLに変更し、攪拌時間を4時間にする以外は合成1と同様の方法によりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が70nm、D90/D50が1.32であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。またBET比表面積105m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が14nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0211】
実施例a3
(シリカ多孔質粒子の合成3)
エタノール400mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液20mLおよび28%アンモニア水溶液5mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS3mLをマイクロピペットを用いて添加した。その後、室温で48時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を、減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が75nm、D90/D50が1.32であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。またBET比表面積102m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が14nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0212】
実施例a4
(シリカ多孔質粒子の合成4)
エタノール150mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液40mLおよび28%アンモニア水溶液3mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS/エタノール(8.7mL/35mL)を一度に添加した。その後、室温で24時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が80nmで、D90/D50が1.30であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。またBET比表面積105m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が14nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0213】
実施例a5
(シリカ多孔質粒子の合成5)
エタノール500mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液72mLおよび28%アンモニア水溶液14.4mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS/エタノール(36mL/144mL)、エチルトリエトキシシラン(Triethoxy(ethyl)silane)/エタノール(3.6mL/14.4mL)を一度に添加した。その後、室温で4時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が80nmで、D90/D50が1.32であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった(
図3)。またBET比表面積194m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が11nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0214】
実施例a6
(シリカ多孔質粒子の合成6)
50mLのフラスコに、エタノール10.6mL、脱イオン水1.8mL、15重量%に調整した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液0.8mLおよび28%アンモニア水溶液0.4mLを加えて15分間攪拌した。その後TEOS 1.1mLをエタノール4.4mLで希釈した溶液を加え、室温で24時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離(11000rpm、15分)にて分取し、エタノールを用いて3回洗浄した後、80℃で一晩乾燥させた。室温から600℃まで2時間で昇温し、さらに600℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が123nm、D90/D50が1.35であり、TEM観察から内部に10−20nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積183m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が15nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0215】
実施例a7
(シリカ多孔質粒子の合成7)
50mLのフラスコに、エタノール9.72mL、脱イオン水1.8mL、15重量%に調整した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液0.8mLおよび28%アンモニア水溶液0.4mLを加えて15分間攪拌した。その後TEOS 1.32mLをエタノール5.28mLで希釈した溶液を加え、室温で24時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離(11000rpm、15分)にて分取し、エタノールを用いて3回洗浄した後、80℃で一晩乾燥させた。室温から600℃まで2時間で昇温し、さらに600℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が142nm、D90/D50が1.41であり、TEM観察から内部に10−20nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積153m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が12nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0216】
実施例a8
(シリカ多孔質粒子の合成8)
実施例a6において、脱イオン水を2mL、15重量%に調整した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液0.6mLとした以外は実施例a6と同様の方法によりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が242nm、D90/D50が1.74であり、TEM観察から内部に10−20nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積102m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が14nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0217】
実施例a9
(シリカ多孔質粒子の合成9)
実施例a7において、脱イオン水を2mL、15重量%に調整した末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液0.6mLとした以外は実施例a7と同様の方法によりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が251nm、D90/D50が1.36であり、TEM観察から内部に10−20nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。窒素吸着法にて細孔構造を調べたところ、BET比表面積88m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が13nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0218】
参考例a1
(シリカ粒子の合成)
エタノール5mLに28%アンモニア水を0.1mLを加えて攪拌し、TEOS/エタノール(0.1mL/0.4mL)を加え4時間攪拌した。この混合物を乾燥させることにより、シリカ粒子を得た。
DLSによる測定から、得られた粒子の体積50%平均粒子径が150nmであり、D90/D50が1.2であるシリカ粒子が得られていることが分かった。なお、TEM観察において、このシリカ粒子の内部に細孔は確認できなかった(
図4)。BET比表面積は20m
2/gであった。
【0219】
比較例a1
(シリカ多孔質粒子の合成10)
陽イオン界面活性剤CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)8.2mgをエタノール/水(10mL/2mL)に溶解し、28%アンモニウム水を0.2mL加え攪拌した。TEOS0.1mLを加え4時間攪拌した。得られたシリカ/CTAB複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、CTABを除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が300nm、D90/D50が1.3であるシリカ多孔質粒子が得られていることが分かった。また、本比較例a1においてはTEM観察で、この粒子内部の細孔径を判別することは難しかった。またBET比表面積32m
2/g、吸着側、脱着側からBJH法で得られる細孔径は共に2nmであった。細孔は2次元シリンダー構造を有しているものと推定された。
【0220】
比較例a2
(シリカ多孔質粒子の合成11)
CTABの量を10.2mgに変更する以外合成10と同様の方法によりシリカ多孔質粒子を得た。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が410nm、D90/D50が1.3であるシリカ多孔質粒子が得られていることがわかった。また、TEMによる粒子の観察結果を
図5に示す。BET比表面積64m
2/g、吸着側、脱着側からBJH法で得られる細孔径は共に2nmであった。細孔は2次元シリンダー構造を有しているものと推定された。
【0221】
比較例a3
(シリカ多孔質粒子の合成12)
CTABの量を20.5mgに変更する以外、合成10と同様の方法によりシリカ多孔質粒子を得た。TEM観察ではいずれも球状ではない不定形の粒子しか得られなかった(
図6)。
【0222】
実施例a10
(シリカ多孔質粒子水分散液の調製)
エタノール500mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液72mLおよび28%アンモニア水溶液14.4mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS/エタノール(36mL/150mL)、エチルトリエトキシシラン(Triethoxy(ethyl)silane)/エタノール(3.6mL/14.4mL)を一度に添加した。その後、室温で4時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を、減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて450℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。シリカ多孔質粒子の粉体10gを500mlの水に加え、ビーズミルを用いて分散処理を行った。分散処理後、沈殿のない均一な分散液が得られた。分散液の一部を乾燥させ、得られた粒子のTEM観察より、多孔質構造が保持されていることを確かめられた(
図7、
図8)。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が80nmで、D90/D50が1.3であり、TEM観察により内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることがわかった。またBET比表面積235m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が11nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった(
図9(a)(b))。
【0223】
実施例a11
(シリカ多孔質粒子エタノール分散液の調製)
エタノール500mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液72mLおよび28%アンモニア水溶液14.4mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS/エタノール(36mL/150mL)、エチルトリエトキシシラン(Triethoxy(ethyl)silane)/エタノール(3.6mL/14.4mL)を一度に添加した。その後、室温で4時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を、減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて450℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。シリカ多孔質粒子の粉体10gを437mlのエタノールに加え、超音波(US)処理を30分行い、分散処理を行った。分散処理後、沈殿のない均一な分散液が得られた。分散液の一部を乾燥させ、得られた粒子のTEM観察より、多孔質構造が保持されていることを確かめられた。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が80nmで、D90/D50が1.3であり、TEM観察により内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることがわかった。またBET比表面積235m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が11nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0224】
比較例a4
テトラメトキシシラン(TMOS)10重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1N―塩酸水溶液1重量部を滴下した後、50℃で1時間攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
得られたTMOSの脱水縮合物に、1N―塩酸水溶液をさらに3.4g滴下した後(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体添加後のpHを3とするため)、室温で攪拌し、さらに末端分岐型ポリオレフィン共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を72.4重量部滴下し、室温で攪拌し、末端分岐型ポリオレフィン共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。この組成物をスプレードライヤー装置に流量6cc/minで流し込み、ノズル出口温度120℃で加圧(2.6kg/cm
2)し、噴霧することで末端分岐型ポリオレフィン系共重合体/シリカの複合微粒子を得た。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。
シリカ多孔質粒子の粉体10gを500mlの水に加え、ビーズミルを用いて分散処理を行った。分散処理後、沈殿のない均一な分散液が得られた。分散液の一部を乾燥させ、得られた粒子のTEM観察より、多孔質構造が保持されていることを確かめられた。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が3.8μmで、D90/D50が5.2であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることわかった。またBET比表面積680m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて得求めた値(BJH細孔径)が11nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
【0225】
実施例a12
実施例a10で得られた水分散液を限外ろ過により2.9重量%まで濃縮した。この分散液35gにアクリル系樹脂水エマルションAlmatexA9083(三井化学社製 固形分濃度:50重量%)8gを混合し、シャーレに流し入れ70℃のオーブン中で乾燥し、厚さ50μmの均一かつ透明な膜を得た。HAZE値1.7、膜のD線(589nm)における屈折率は1.38であり、熱伝導率は0.04W/mKであった。
【0226】
実施例a13
実施例a11で得られたエタノール分散液(2.9重量%)35gと予め10%に調整したPVB樹脂エタノール溶液(ポリビニルブチラール、重量平均分子量:50,000〜80,000)を混合し、シャーレに流し入れ70℃のオーブン中で乾燥し、厚さ70μmの均一かつ透明な膜を得た。HAZE値0.4、膜のD線(589nm)における屈折率は1.33であり、熱伝導率は0.03W/mKであった。
【0227】
比較例a5
分散液を用いなかった以外は、実施例a12と同様に膜を調製し、アクリル系樹脂水エマルションAlmatexA9083のみの膜を得た。この膜のHAZE値は0.3、膜のD線(589nm)における屈折率は1.47、熱伝導率は0.58W/mKであった。
【0228】
比較例a6
比較例a1で得られたシリカ多孔質粒子を実施例a10と同様にビーズミルにより分散化処理し、得られた分散液を用いて実施例a12と同様の方法で膜を作成した。HAZE値は12であり、屈折率は測定不能であった。熱伝導率は0.88W/mKであった。
【0229】
比較例a7
比較例a2で得られたシリカ多孔質粒子を実施例a10と同様にビーズミルにより分散化処理し、得られた分散液を用いて実施例a12と同様の方法で膜を作成した。HAZE値は20であり、屈折率は測定不能であった。熱伝導率は0.92W/mKであった。
【0230】
比較例a8
比較例a4で得られたシリカ多孔質粒子分散液を用い、実施例a12と同様の方法で膜を作成した。HAZE値は36であり、屈折率は測定不能であった。熱伝導率は0.07W/mKであった。
【0231】
比較例a9
分散液を用いなかった以外は、実施例a13と同様に膜を調製し、PVBのみの膜を得た。この膜のHAZE値は0.1、膜のD線(589nm)における屈折率は1.49、熱伝導率は0.22W/mKであった。
【0232】
[実施例B]
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体の合成例)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSC(示差走査熱量測定)を用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。
1H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
【0233】
(末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)の合成例)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cm
2G加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算 1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記一般式(14)で示される化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
【0234】
【化18】
【0235】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、Na
2WO
40.85g(2.6mmol)、CH
3(nC
8H
17)
3NHSO
40.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった(末端エポキシ基含有率:90mol%)。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(t,3H,J=6.92Hz),1.18−1.66(m),2.38(dd,1H,J=2.64,5.28Hz),2.66(dd,1H,J=4.29,5.28Hz),2.80−2.87(m,1H)
融点(Tm)121℃
【0236】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、下記一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R
1=R
2=水素原子、Y
1、Y
2の一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(t,3H,J=6.6Hz),0.95−1.92(m),2.38−2.85(m,6H),3.54−3.71(m,5H)
融点(Tm)121℃
【0237】
【化19】
【0238】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0239】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R
1=R
2=水素原子、X
1、X
2の一方が一般式(6)で示される基(X
11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q
1=Q
2=エチレン基、X
9=X
10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H−NMR:δ(C2D2Cl4)0.88(3H,t,J=6.8Hz),1.06−1.50(m),2.80−3.20(m),3.33−3.72(m)
融点(Tm)−16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0240】
<末端分岐型ポリオレフィン系共重合体粒子水分散液の調製例>
(20重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液の調製)
(A)前記合成例で得られた末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)10重量部と溶媒(C)の蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は0.018μmであった(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)。得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。
【0241】
<シリカ多孔質粒子分散液の調製例>
(シリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液の調製例b1)
エタノール500mLに、15重量%末端分岐型ポリオレフィン系共重合体(T)水分散液72mLおよび28%アンモニア水溶液14.4mLを加えて均一になるまで攪拌した。TEOS/エタノール(36mL/150mL)、エチルトリエトキシシラン(Triethoxy(ethyl)silane)/エタノール(3.6mL/14.4mL)を一度に添加した。その後、室温で4時間攪拌した。得られたシリカ/末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を、減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて450℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、末端分岐型オレフィン共重合体複合粒子を除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。シリカ多孔質粒子の粉体10gを437mlのダイアセトンアルコールに加え、超音波(US)処理を30分行い、分散処理を行った。分散処理後、沈殿のない均一な分散液が得られた。分散液の一部を乾燥させ、得られた粒子のTEM観察より、多孔質構造が保持されていることを確かめた。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が80nmで、D90/D50が1.3であり、TEM観察から内部に10−30nmの細孔を有するシリカ多孔質粒子が得られていることがわかった。またBET比表面積235m
2/g、また、吸着側の等温線からBJH法にて求めた値(BJH細孔径)が11nm、脱着側の等温線からBJH法にて求めた値(連結部)が4nm以下であることから細孔が相互に連結した3次元キュービック相構造であることがわかった。
なお、本実施例B項においては、得られたシリカ多孔質粒子を水に分散させ、粒度分布計/ナノトラックWAVEを用いてDLS測定を行っている。また、多孔質粒子としてシリカを用い、分散溶媒として水を用いているので、シリカの屈折率を1.44、水の屈折率を1.0として測定している。
【0242】
(シリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液の調製例b2)
陽イオン界面活性剤CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)4.1gをエタノール/水(5L/1L)に溶解し、28%アンモニウム水を100mL加え攪拌した。TEOS 50mLを加え4時間攪拌した。得られたシリカ/CTAB複合粒子を遠心分離にて分取し、さらにエタノールを用いて洗浄処理した。得られた粉体を減圧乾燥機を用いて乾燥処理した。室温から3.5℃/minにて550℃まで昇温し、さらに550℃で4時間焼成し、CTABを除去することによりシリカ多孔質粒子を得た。シリカ多孔質粒子の粉体10gを437mlのダイアセトンアルコールに加え、超音波(US)処理を30分行い、分散処理を行った。分散処理後、沈殿のない均一な分散液が得られた。
DLSによる測定から、体積50%平均粒子径が300nm、D90/D50が1.3であるシリカ多孔質粒子が得られていることがわかった。また、TEM観察から内部の細孔径を判別することは難しかった。またBET比表面積32m
2/g、吸着側、脱着側からBJH法で得られる細孔径は共に2nmであった。細孔は2次元シリンダー構造を有しているものと推定された。
【0243】
実施例b1
10重量%まで濃縮した調製例b1のシリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液を20g、トリメチロールプロパントリアクリレートを3.0g、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製 商品名UA―306H)を1.0g混合後、ポリエチレングリコールメチルエーテル3gを加えた。さらに光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイドを0.15g、Si系界面活性剤(日本ユニカー(株)製 商品名FZ−2110)を0.01g添加し、充分攪拌しコーティング用組成物を調製した。調製したコーティング用組成物を用い、Si−ウェハー上、石英ガラス上にコートし、高圧水銀ランプ(強度100W/cm)を60秒間照射し、コート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0244】
なお、Si−ウェハー上または石英ガラス上にスピンコート法にて形成した1.0〜3.0μmの厚みを有するコート膜については以下の評価を行っている。
【0245】
(1)屈折率
本実施形態のコート材の屈折率はSi−ウェハー上に形成した薄膜についてアタゴ社製アッベ屈折計により測定した。
(2)透明性
本実施形態の透明性は、石英ガラス上に形成した透過率を膜透過率計((株)島津製作所製 UV2200)により400nm〜600nm間の透過率を測定した。
A:400nm〜600nm間で透過率が90%以上
B:400nm〜600nm間での透過率80%以上〜90%未満
C:400nm〜600nm間での透過率80%未満
(3)耐擦傷性試験
本実施形態の耐擦傷性は、石英ガラス上に形成したサンプルについて、♯0000のスチールウール(日本スチールウール(株)製)で1000g及び500gの荷重をかけ、10往復、表面を摩擦し、傷のついた程度を目視で次の段階で判断した。
A:500g荷重で摩擦した範囲に全く傷がつかない。
B:500g荷重で摩擦した範囲内に1〜9本の傷がつく。
C:500g荷重で摩擦した範囲内に10〜30本の傷がつく。
D:500g荷重で摩擦した範囲内に無数の(30本を超える)傷がつく。
【0246】
実施例b2
10重量%まで濃縮した調製例b1のシリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液を20g、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを1.0g、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテルを3.0g混合後、ポリエチレングリコールメチルエーテル3gを加えた。さらに光開始剤としてアデカオプトマ−SP−150を0.15g、Si系界面活性剤(日本ユニカー(株)製 商品名FZ−2110)を0.01g添加し、充分攪拌しコーティング用組成物を調製した。調製したコーティング用組成物を用い、Si−ウェハー上、石英ガラス上にコートし、高圧水銀ランプ(強度100W/cm)を60秒間照射し、コート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0247】
実施例b3
10重量%まで濃縮した調製例b1のシリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液を20g、シラン化合物および/またはそれが部分的に縮合した化合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン4.2gに0.1N塩酸水1.3gを攪拌しながら添加し、さらに2時間攪拌した。ポリエチレングリコールメチルエーテル7gを加え充分攪拌した後、金属キレート化合物として、Al(III)アセチルアセトネート0.2g、ジメチルシロキサン骨格を有する化合物として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK333(BYKケミー製、製品名)0.01gを添加し4時間攪拌後、一昼夜熟成させてハードコート剤組成物を調製した。調製したコーティング用組成物を用い。Si−ウェハー上、石英ガラス上にコートし、120℃で120分間焼成を行い、コート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0248】
比較例b1
調製例b1のシリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液の代わりに、10重量%まで濃縮した調製例b2のシリカ多孔質粒子ダイアセトンアルコール分散液を20g加える以外実施例b3と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
なお、比較例b1によって得られたコート膜は、膜の透明性が低いため、正確に屈折率を測定することができなかった。
【0249】
比較例b2
多孔質ではないシリカ粒子(日産化学社製 オルガノシリカゾル 70−100nm ZLタイプ)を用いる以外実施例b1と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0250】
比較例b3
多孔質ではないシリカ粒子(日産化学社製 オルガノシリカゾル 70−100nm ZLタイプ)を用いる以外実施例b2と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0251】
比較例b4
多孔質ではないシリカ粒子(日産化学社製 オルガノシリカゾル 70−100nm ZLタイプ)を用いる以外実施例b3と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0252】
比較例b5
シリカ多孔質粒子を加えない以外実施例b1と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0253】
比較例b6
シリカ多孔質粒子を加えない以外実施例b2と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0254】
比較例b7
シリカ多孔質粒子を加えない以外実施例b3と同様の方法でコート膜を形成した。評価結果を表1に載せた。
【0255】
【表1】
【0256】
表1の結果からも分かるように、実施例b1−b3で得られたコート膜は屈折率、透明性、耐擦傷性のいずれの評価項目においても高い性能を示すものであった。