特許第5964515号(P5964515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964515高温で改良されたレオロジー安定性を有する、炭酸カルシウムを含む材料の高固形分低粘度水性スラリー
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  • 特許5964515-高温で改良されたレオロジー安定性を有する、炭酸カルシウムを含む材料の高固形分低粘度水性スラリー 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964515
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】高温で改良されたレオロジー安定性を有する、炭酸カルシウムを含む材料の高固形分低粘度水性スラリー
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20160721BHJP
   D21H 17/69 20060101ALI20160721BHJP
   D21H 19/38 20060101ALI20160721BHJP
   D21H 19/44 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20160721BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20160721BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20160721BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08L101/00
   D21H17/69
   D21H19/38
   D21H19/44
   C08K3/26
   C09D17/00
   C09D11/037
   C09D11/326
   C09D201/00
   C09D7/12
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-520966(P2015-520966)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公表番号】特表2015-529702(P2015-529702A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2013064537
(87)【国際公開番号】WO2014009396
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年3月12日
(31)【優先権主張番号】12176392.4
(32)【優先日】2012年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/673,811
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンチュ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ブリ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4741240(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0174012(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C09D
C09C
B01F17
D21H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーであって、
炭酸カルシウム含有材料と、
少なくとも1種類のくし形ポリマーと
を含み、
ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gであり、
水性スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sであり、
ここで、当該くし形ポリマーは、アニオン性に帯電したくし形ポリマーであり、当該アニオン性に帯電したくし形ポリマーの主鎖は、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸または他の酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、アリルエステルまたはビニルエーテルのコポリマーを含むか、あるいは、カルボキシル基を含有する多糖から誘導されるポリマー、または他の酸基を含有する多糖から誘導されるポリマーであり、
当該アニオン性に帯電したくし形ポリマーの側鎖は、重合したエポキシド含有化合物を含み、
当該エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブチレンオキシド、フェニル−エチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される、水性スラリー。
【請求項2】
炭酸カルシウム含有材料中の炭酸カルシウムの量は、炭酸カルシウム含有材料の合計重量を基準として、少なくとも80重量%である、請求項1に記載の水性スラリー。
【請求項3】
炭酸カルシウム含有材料は、重量メジアン径d50が、0.1から100μmである、請求項1または2に記載の水性スラリー。
【請求項4】
炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、またはこれらの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項5】
水性スラリーは、固体含有量が、水性スラリーの合計重量を基準として45から82重量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項6】
水性スラリーは、pHが7から12である、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項7】
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、比電荷が、pH8で−10C/gから−500C/gである、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項8】
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、固有粘度が、5から100ml/gである、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項9】
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、25℃から90℃で曇点を有さない、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項10】
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、スラリー中の固形分の合計重量を基準として0.01から10重量%の量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項11】
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、得られる水性スラリーが、20℃および90℃で測定すると粘度が25から800mPa・sであるような量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項12】
水性スラリーは、pH8での比電荷が−500C/gを超える添加剤を含有しない、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項13】
40℃での水性スラリーの粘度が、90℃での粘度と等しいか、またはもっと大きい、請求項1から12のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項14】
水性スラリーは、高温で少なくとも30分、改良されたレオロジー安定性を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の水性スラリー。
【請求項15】
高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための方法であって、
(a)炭酸カルシウム含有材料を与える工程と、
(b)水を与える工程と、
(c)少なくとも1種類のくし形ポリマーを与え、
ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである、工程と、
(d)工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と工程(b)の水とを混合する工程と、
(e)工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーと、炭酸カルシウム含有材料とを、工程(d)の前および/または工程(d)の間および/または工程(d)の後に混合し、
水性スラリーの粘度、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sであるような量で少なくとも1種類のくし形ポリマーを加える工程と
を含む、
ここで、当該くし形ポリマーは、アニオン性に帯電したくし形ポリマーであり、当該アニオン性に帯電したくし形ポリマーの主鎖は、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸または他の酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、アリルエステルまたはビニルエーテルのコポリマーを含むか、あるいは、カルボキシル基を含有する多糖から誘導されるポリマー、または他の酸基を含有する多糖から誘導されるポリマーであり、
当該アニオン性に帯電したくし形ポリマーの側鎖は、重合したエポキシド含有化合物を含み、
当該エポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブチレンオキシド、フェニル−エチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される
方法。
【請求項16】
工程(d)および/または工程(e)の間および/または工程(d)および/または工程(e)の後に、工程(d)および/または(e)の混合物を50℃から120℃に加熱するさらなる工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)および/または(e)の混合物は、加熱中に濃縮および/または粉砕される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(d)の水性スラリーに分散剤を加えない、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
、プラスチック、塗料、コーティング、コンクリートおよび/または農業用途での請求項1から14のいずれか一項に記載の水性スラリーの使用。
【請求項20】
請求項15から18の方法に記載の工程(a)から(e)と、得られたスラリーを乾燥するさらなる工程(f)とを含む、コンポジット粒子を製造するための方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム含有材料の水性スラリーに関し、さらに具体的には、炭酸カルシウム含有材料と少なくとも1種類のくし形ポリマーとを含む、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
新しく粉砕し、分散していない炭酸カルシウムは、弱く正に帯電した表面を有し、pH値は、約8から9である。しかし、炭酸カルシウム含有材料の水性スラリーの調製において、当業者は、これらのスラリーの1つ以上の特徴を制御するために、添加剤を選択し、導入することを必要とすることが多い。例えば、固体含有量が高く、粘度が低いスラリーは、対応する分散剤を加えなければ処理することができない。添加剤を選択する際に、当業者は、この添加剤は費用対効果が高くなければならず、スラリーの輸送、処理および適用の間に望ましくない相互作用または悪い影響を生じるべきではないことを考慮しなければならない。
【0003】
ポリアクリル酸ナトリウムまたはポリリン酸ナトリウムのような分散剤の添加は、特に、スラリー中の炭酸カルシウム粒子の表面電荷に影響を与え、粒子上に負電荷を生じる。US5,171,409A1に記載されるように、この影響を利用し、スラリーから固体粒子を分離することができる。さらに、この効果は、例えば、EP0542643A1およびEP0380430A1にも記載されている。
【0004】
しかし、このような分散した炭酸カルシウムを含むスラリーは、後の適用、例えば、紙製造または紙コーティングの間に問題を引き起こすことがある。紙の製造において、専門家は、紙製造中に紙ウェブ中のフィラー保持の問題に直面する。ポリアクリル酸ナトリウムを用いて分散させた顔料粒子の表面にある多くのアニオン性電荷は、アニオン性の木材またはセルロース繊維にこれらの粒子を固定するときに問題を引き起こす場合がある。従って、カチオン性添加剤を加えることによって粒子を中和することが必要であるが、同時に、生成した紙の不均一さおよび濁りといった悪い紙を生成し得るようなセルロース繊維の凝集を起こさないことが必要である。
【0005】
この問題は、炭酸カルシウムを含むスラリーの固体含有量が増すと、悪化し、特に、固体含有量が高い炭酸カルシウム含有スラリー、即ち、固体含有量が、スラリーの合計重量を基準として45重量%より多いスラリーでは顕著である。スラリーの固体含有量が高いほど、スラリー中で、さらなる使用および製造に適した粘度値に達するための分散剤の需要が高くなり、ひいては、粒子表面に高いアニオン性電荷が生じる。紙コーティングにおいて、イオン性電荷が多く、固体量が多い炭酸カルシウム含有スラリーは、ポリマーバインダー存在下で凝集する危険性が生じることが当業者に知られている(枯渇凝集としても知られる。)。この結果、凝集したコーティング色から結合力および光沢が失われる。
【0006】
高度に帯電した粒子表面のこのような問題を制御し、克服するために当該技術分野で知られている可能性の1つは、くし形ポリマーを用いた粉砕した鉱物物質、例えば、炭酸カルシウムの弱イオン性水性スラリーを開示するWO2004/041882A1およびWO2004/041883A1に記載される。さらに、低帯電アクリレートまたはマレイネートを含有するくし形ポリマーを実装する沈降炭酸カルシウムを調製するための方法は、WO2010/018432A1に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5171409号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0542643号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0380430号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/041882号
【特許文献5】国際公開第2004/041883号
【特許文献6】国際公開第2010/018432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなくし形ポリマーを用い、固形分が多い炭酸カルシウム含有スラリーの粘度を安定化させてもなお、専門家は、これらのスラリーの高温でのレオロジー安定性がないという問題に直面する。今日の産業は、粉砕および分散によって炭酸カルシウム含有材料を工業的に製造することが必要なため、スラリーは、グラインダおよびディスペンサによる剪断によって誘発されるエネルギーに起因して非常に熱くなる。この温度は、65℃を越えることがあり、例えば、70℃から105℃になることがある。さらに、例えば、スラリーを滅菌するために保存前または保存中にスラリーを加熱しなければならない可能性があり、または、後の処理中にスラリーが高温に達する可能性がある。これらの状況によっては、スラリーは、65℃以上の温度に達することがある。このような温度では、粘度は顕著に増加するだろう。しかし、製造中に粘度を制御するために用いられる添加剤が、この温度で劣化する場合には、機械が閉塞し、製造ユニット、例えば、粉砕ユニットを損傷する高い危険性がある。この場合には、減らさなければならない装置または生産能力の閉塞および損傷を克服するために、生成物を連続して冷却しなければならない。このことは、非常にエネルギー集約的であり、費用がかかる。さらに、水性スラリーを安定化させるために用いられる添加剤が高温で劣化する場合、粒子が凝集し、いわゆる枯渇凝集が起こることがある。
【0009】
従って、高温で、例えば、65℃を超える温度で、炭酸カルシウムを含む材料を含むスラリーの粘度上昇を制御し、減らし、または予防する優れた添加剤が必要とされている。さらに、固形分が多い炭酸カルシウム含有材料の水性スラリーを高温で安定化させる添加剤を提供することが望ましい。
【0010】
さらに、スラリーの他の物理特性、例えば、電気伝導性および粒子表面の表面電荷に受け入れられない様式で影響を与えない添加剤を提供することが望ましい。高温でさえも、流体で、従って、非常に多量の炭酸カルシウム固形分を含有し得る炭酸カルシウム含有材料の水性スラリーを提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、上の目的および他の目的は、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーに少なくとも1種類のくし形ポリマーを使用することによって解決することがわかり、ここで、ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、同じポリマー濃度で、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである。
【0012】
本願発明者らは、驚くべきことに、上述の3つの特徴の組み合わせ(比粘度の差Δηsp、所定温度範囲に曇点がない、所定範囲の比電荷)を有する少なくとも1種類のくし形ポリマーの使用が、特に、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性炭酸カルシウム含有スラリーを与えるのに有利であることを発見した。上述の特徴を有するくし形ポリマーは、このようなスラリーの熱感受性を減らすことができ、このため、高温、例えば、65℃を超える温度での製造中および適用中にスラリーの望ましくない粘度上昇を防ぐことができる。
【0013】
本発明の一態様によれば、
炭酸カルシウム含有材料と、
少なくとも1種類のくし形ポリマーと
を含み、
ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gであり、
水性スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sである、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーが提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、
(a)炭酸カルシウム含有材料を与える工程と、
(b)水を与える工程と、
(c)少なくとも1種類のくし形ポリマーを与え、
ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである、工程と、
(d)工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と工程(b)の水とを混合する工程と、
(e)工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーと、炭酸カルシウム含有材料とを、工程(d)の前および/または工程(d)の間および/または工程(d)の後に混合し、
水性スラリーの粘度が、20℃および90℃で測定すると25から1000mPa・sであるように少なくとも1種類のくし形ポリマーを添加する工程と
を含む、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための本発明の方法の工程(a)から(e)と、得られたスラリーを乾燥させるさらなる工程(f)とを含む、コンポジット粒子を製造するための方法が提供される。この方法によって製造されるコンポジット粒子は、水に再分散させたときに、熱感受性の低下を示す。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、これらの製造のための本発明の方法によって得ることができるコンポジット粒子が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、紙、プラスチック、塗料、コーティング、コンクリートおよび/または農業用途での本発明の水性スラリーの使用が提供され、好ましくは、水性スラリーを、抄紙機のウェットエンド法で使用し、タバコ紙、厚紙および/またはコーティング用途で使用するか、またはロトグラビア印刷および/またはオフセット印刷および/またはインクジェット印刷および/または連続インクジェット印刷および/またはフレキソグラフィーおよび/または電子写真および/または化粧加工表面のための支持材として使用するか、または水性スラリーを使用し、植物の葉の日光およびUVの曝露を減らす。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、紙、プラスチック、塗料、コーティング、コンクリートおよび/または農業用途での本発明のコンポジット粒子の使用が提供され、好ましくは、コンポジット粒子を、抄紙機のウェットエンド法で使用し、タバコ紙、厚紙および/またはコーティング用途で使用するか、またはロトグラビア印刷および/またはオフセット印刷および/またはインクジェット印刷および/または連続インクジェット印刷および/またはフレキソグラフィーおよび/または電子写真および/または化粧加工表面のための支持材として使用するか、またはコンポジット粒子を使用し、植物の葉の日光およびUVの曝露を減らす。
【0019】
本発明の有利な実施形態は、対応するサブクレームに定義される。
【0020】
一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料中の炭酸カルシウムの量は、炭酸カルシウム含有剤量の合計重量を基準として、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも95重量%、さらに好ましくは、97から100重量%、最も好ましくは、98.5から99.95重量%である。
【0021】
別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、重量メジアン径d50が、0.1から100μm、好ましくは、0.25から50μm、さらに好ましくは、0.3から5μm、最も好ましくは、0.4から3.0μmである。別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、またはこれらの混合物である。
【0022】
別の実施形態によれば、水性スラリーは、固体含有量が、水性スラリーの合計重量を基準として45から82重量%、好ましくは、60から78重量%、さらに好ましくは、70から78重量%である。別の実施形態によれば、水性スラリーは、pHが7から12、好ましくは、7.5から11、さらに好ましくは、8.5から10である。
【0023】
別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、比電荷が、pH8で−10C/gから−500C/g、好ましくは、pH8で−10C/gから−300C/g、さらに好ましくは、pH8で−10C/gから−100C/gである。別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、固有粘度が、5から100ml/g、好ましくは、7から80ml/g、最も好ましくは、8から20ml/gである。別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、25℃から90℃に曇点を有さず、好ましくは、30℃から85℃に曇点を有さない。
【0024】
別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、スラリーの固形分の合計重量を基準として、0.01から10重量%、好ましくは、0.05から5重量%、さらに好ましくは、0.1から3.0重量%、さらになお好ましくは、0.2から2.0重量%、最も好ましくは、0.25から1.5重量%、または0.5から1.25重量%の量で存在する。別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、得られる水性スラリーが、20℃および90℃で測定すると粘度が25から800mPa・s、好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が30から500mPa・s、最も好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が35から300mPa・sであるような量で存在する。
【0025】
別の実施形態によれば、水性スラリーは、pH8での比電荷が−500C/gを超える添加剤を含有しない。別の実施形態によれば、40℃での水性スラリーの粘度は、90℃での粘度と等しいか、またはもっと大きい。別の実施形態によれば、水性スラリーは、高温で少なくとも30分、好ましくは、少なくとも1時間、さらに好ましくは、少なくとも12時間、さらになお好ましくは、少なくとも24時間、最も好ましくは、少なくとも1週間、改良されたレオロジー安定性を有する。
【0026】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、工程(d)および/または工程(e)の間および/または工程(d)および/または工程(e)の後に、工程(d)および/または(e)の混合物を50℃から120℃、好ましくは、60℃から110℃、最も好ましくは、70℃から105℃に加熱するさらなる工程をさらに含む。別の実施形態によれば、工程(d)および/または(e)の混合物は、加熱中に濃縮および/または粉砕される。さらに別の実施形態によれば、工程(d)の水性スラリーに分散剤を加えない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】温度の関数としてのポリマーAからDの比粘度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的のために、「炭酸カルシウム含有材料」という用語は、炭酸カルシウム含有材料の合計重量を基準として、少なくとも80重量%の炭酸カルシウムを含む材料を指す。
【0029】
「炭酸カルシウム」は、本発明の意味において、粉砕炭酸カルシウム(GCC)および沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む。
【0030】
「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、本発明の意味において、天然源、例えば、石灰岩、大理石、方解石または白亜から得られ、湿式処理および/または乾式処理、例えば、粉砕、ふるい分けおよび/または分画、例えば、サイクロンまたは分級機による分画によって処理される炭酸カルシウムである。
【0031】
「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、本発明の意味において、一般的に、水系環境での二酸化炭素と水酸化カルシウム(消石灰)の反応後の沈殿、または水中のカルシウム源および炭酸源の沈殿によって得られる合成材料である。さらに、沈降炭酸カルシウムは、カルシウムおよび炭酸塩、塩化カルシウムおよび炭酸ナトリウムを、例えば、水系環境に導入する生成物であってもよい。PCCは、バテライト、方解石またはアラゴナイトであってもよい。
【0032】
「懸濁物」または「スラリー」は、本発明の意味において、不溶性固体および水と、場合により、さらに添加剤と、通常は、大量の固体を含み、従って、これが形成される元の液体よりも粘度が高く、密度がより大きい場合がある。
【0033】
本書類全体で、炭酸カルシウム含有材料の「粒径」は、その粒径分布によって記述される。d値は、粒子のx重量%がd未満の直径を有する相対的な直径をあらわす。このことは、d20値は、全粒子の20重量%がこれより小さい粒径であり、d75値は、全粒子の75重量%がこれより小さい粒径であることを意味する。従って、d50値は、重量メジアン粒径であり、即ち、全顆粒の50重量%がこの粒径より大きいか、または小さい。本発明の目的のために、特に指示のない限り、粒径は、重量メジアン粒径d50として明記される。d50値が0.4から2μmの粒子の重量メジアン粒径d50値を決定するために、Micromeritics(USA)社製のSedigraph 5120デバイスを使用することができる。
【0034】
炭酸カルシウム製品の「比表面積(SSA)」は、本発明の意味において、鉱物粒子の表面積を鉱物粒子の質量で割ったものであると定義される。本明細書で使用する場合、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:1995)を用いた吸収によって測定され、m/gで明記される。
【0035】
本発明の「導電性」は、以下の実施例の章に定義する測定方法に従って測定した水性カーボネート含有材料懸濁物の電気伝導性を意味する。導電性は、μS/cmで明記され、25℃で測定されてもよい。
【0036】
本発明の目的のために、「くし形ポリマー」という用語は、分枝鎖ポリマーの副分類を形成するくし形ポリマーを指す。くし形ポリマーは、主鎖(骨格と呼ばれる。)と複数の三官能分岐点とを含み、これらの分岐点それぞれから直鎖の側鎖が出ており、従って、平面投影でくし形の形状に似ているくし形高分子で構成される。(参考。IUPAC、Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」))。
【0037】
「比電荷」という用語は、C/gで明記され、pH値8での所定量のポリマー中の電荷量を指す。アニオン性帯電ポリマーの場合には、比電荷は、比電荷がpH8で0になるまでカチオン性ポリマーで滴定することによって決定することができる。
【0038】
本発明によれば、「高温で改良されたレオロジー安定性」という用語は、水性スラリーのレオロジー安定性、好ましくは、このようなスラリーの粘度が、スラリーが高温にさらされても顕著に変化しないことを意味する。好ましくは、水性スラリーの粘度は、高温で25から1000mPa・sのままである。「高温」は、本発明の意味において、室温より高い温度、即ち、20±2℃より高い温度を指す。例えば、「高温」という用語は、60℃を超える温度、さらに好ましくは、65から105℃の温度を指す。例えば、水性スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sである。
【0039】
「比粘度」という用語は、本発明の意味において、相対粘度の差マイナス1として定義される。相対粘度は、本明細書で使用する場合、溶液粘度と溶媒粘度の商である。溶媒粘度は、純粋な溶媒の粘度であると定義され、溶液粘度は、純粋な溶媒に溶解したくし形ポリマーの粘度であると定義される。
【0040】
「比粘度の差」という用語は、本発明の意味において、水中のポリマー濃度45g/lで、それぞれ70℃および20℃で測定したポリマー水溶液の比粘度の差であると定義される。
【0041】
本発明の目的のために、「粘度」という用語は、剪断粘度としても知られる動的粘度を指す。動的粘度は、流体から単位距離だけ離れた状態で維持したとき、単位速度でその他の面に対して1つの水平面を移動させるのに必要な単位面積あたりの接線力であると定義される。この定義によれば、2つの平面の間に配置され、片方の平面が剪断応力1Paで横に押される粘度が1Pa・sの流体は、1秒間にこれらの平面の間の層の厚みと等しい距離だけ移動するだろう(The Rheology Handbook、Thomas G.Mezger、Vincentz Verlag 2002、S.21)。動的粘度を、同軸円筒測定システム、例えば、測定温度制御セルTEZ 150 P−Cおよび同軸円筒CC 27測定システムを取り付けたPaar Physica製のPhysica MCR 300レオメーターを用いて100L/分の一定回転速度で測定してもよい。
【0042】
Brookfield粘度は、20℃±2℃、100rpmでBrookfield粘度計によって測定される粘度であると定義され、mPa・sで明記される。
【0043】
本発明によれば、実数の「絶対値」または「弾性率」は、その符号を問わず実数の数値である。
【0044】
本発明の「固有粘度」は、希釈した溶液の濃度cをゼロまで外挿することによって得られ、以下のように定義される。
【0045】
【数1】
式中、[η]は、c=0およびG=0のときに低下した粘度の境界であり、Gは、速度勾配であり、ηspは、比粘度である。「固有粘度」という用語は、文献ではStaudinger指数としても知られる。
【0046】
本発明の流体の「曇点(CP)」は、水に溶解した固体が、周囲圧力、即ち、101325Paでもはや完全には可溶性でないが、第2の相として沈殿し、濁った外観の流体を与える温度である。
【0047】
「〜を含む(comprising)」という用語が、本記載および特許請求の範囲で使用されるとき、これは他の要素を除外しない。本発明の目的のために、「〜からなる(consisting of)」という用語は、「〜で構成される(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、ある基が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、好ましくは、これらの実施形態のみからなる基を開示するとも理解すべきである。
【0048】
単数形を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その(the)」を使用する場合、何か他の意味であると具体的に述べられていない限り、その名詞の複数形も含む。
【0049】
「得ることができる」または「定義することができる」および「得られる」または「定義される」のような用語は、相互に置き換え可能に用いられる。このことは、例えば、他の意味であると明確に示されていない限り、「得られる」という用語は、例えば、ある実施形態が、例えば、「得られる」という用語に従う一連の工程によって得られなければならないことを示すことを意味しないことを意味するが、このような限定される理解は、好ましい実施形態として「得られる」または「定義される」という用語によって常に含まれる。
【0050】
高温で改良されたレオロジー安定性を有する本発明の水性スラリーは、炭酸カルシウム含有材料と、少なくとも1種類のくし形ポリマーとを含み、水性スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると、25から800mPa・sである。ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した本発明の少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5である。さらに、本発明の少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである。
【0051】
以下に、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーの詳細および好ましい実施形態をさらに詳細に記載する。さらに、本発明の水性スラリーを製造するための方法の詳細および好ましい実施形態をさらに詳細に記載する。
【0052】
炭酸カルシウム含有材料
本発明の水性スラリーは、炭酸カルシウム含有材料を含む。
【0053】
一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)、またはこれらの混合物である。
【0054】
粉砕した(または天然の)炭酸カルシウム(GCC)は、堆積岩、例えば、石灰岩または白亜から、または変性大理石から採掘された天然に存在する形態の炭酸カルシウムであると理解される。炭酸カルシウムは、方解石、アラゴナイトおよびバテライトの3種類の結晶多型として存在することが知られている。方解石は、最も一般的な結晶多型であり、炭酸カルシウムの最も安定な結晶形態であると考えられる。アラゴナイトはそれほど一般的ではなく、別個の、またはクラスター状の針状斜方晶結晶構造を有する。バテライトは、最もまれな炭酸カルシウム多型であり、一般的に不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、ほとんどが、方解石の多型のみであり、三角形の菱面体であると言われ、最も安定な炭酸カルシウム多型をあらわす。炭酸カルシウム「源」という用語は、本出願の意味において、これらから炭酸カルシウムが得られる天然に存在する鉱物材料を指す。炭酸カルシウム源は、天然に存在する要素、例えば、炭酸マグネシウム、アルミノシリケートなどをさらに含んでいてもよい。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、粉砕炭酸カルシウム(GCC)源は、大理石、白亜、方解石、ドロマイト、石灰岩、またはこれらの混合物から選択される。好ましくは、粉砕炭酸カルシウム源は、大理石から選択される。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、GCCは、乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは、湿式粉砕およびその後の乾燥によって得られる。
【0057】
一般的に、粉砕する工程は、任意の従来の粉砕デバイス、例えば、第2の本体、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、縦型ビーズミル、アトライタミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、または当業者に既知の他のこのような装置のうち1つ以上と衝突した結果、優先的に粉砕されるような条件下で行うことができる。炭酸カルシウムを含有する鉱物粉末が、濡れた状態の粉砕炭酸カルシウムを含有する鉱物材料を含む場合、粉砕する工程は、自発的な粉砕が起こる条件下で行われてもよく、および/または水平ボールミルによる粉砕、および/または当業者に既知の他のこのような方法によって行われてもよい。このようにして得られる湿式処理された粉砕炭酸カルシウムを含有する鉱物材料を洗浄し、乾燥前に、よく知られた方法によって、例えば、フロック形成、濾過または強制蒸発によって脱水してもよい。その後の乾燥工程を、例えば、スプレー乾燥として1工程で行ってもよく、または少なくとも2工程で行ってもよい。このような鉱物材料に、不純物を除去するのに有利な工程(例えば、浮遊、漂白または磁気による分離工程)を行うことも一般的である。
【0058】
一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、1種類の粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、異なる粉砕炭酸カルシウム源から選択される2種類以上の粉砕炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの粉砕炭酸カルシウムは、ドロマイトから選択される1種類のGCCと、大理石から選択される1種類のGCCとを含んでいてもよい。
【0059】
別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、たった1種類の粉砕炭酸カルシウムからなる。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、異なる粉砕炭酸カルシウム源から選択される2種類以上の粉砕炭酸カルシウムの混合物からなる。
【0060】
「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、本発明の意味において、一般的に、水系環境での二酸化炭素と消石灰の反応後の沈殿、または水中のカルシウム源および炭酸イオン源の沈殿によって、または例えば、CaClおよびNaCOに由来するカルシウムイオンと炭酸イオンが溶液から析出することによって得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる可能な様式は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるSolvay方法である。沈降炭酸カルシウムは、方解石、アラゴナイトおよびバテライトの3種類の結晶多型として存在し、これらそれぞれの結晶形態について、多くの異なる多型(晶癖)が存在する。方解石は、例えば、偏三角面体(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六角柱の卓面コロイド(C−PCC)、立方体で角柱状(P−PCC)といった典型的な晶癖を有する三角形構造である。アラゴナイトは、対になった六角柱状結晶、および薄く延びた円柱状、湾曲した刀状、鋭い錐体、チゼル形状の結晶、分岐した樹状および珊瑚状または虫のような形態といった多様な雑多な集まりの典型的な晶癖を有する斜方晶構造である。バテライトは、六方晶系の結晶系に属する。得られたPCCスラリーを機械的に脱水し、乾燥させてもよい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、1種類の沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態および異なる多形から選択される2種類以上の沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1種類の沈降炭酸カルシウムは、S−PCCから選択される1種類のPCCと、R−PCCから選択される1種類のPCCとを含んでいてもよい。
【0062】
別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、たった1種類の沈降炭酸カルシウムからなる。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態および異なる多形から選択される2種類以上の沈降炭酸カルシウムの混合物からなる。
【0063】
別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムと沈降炭酸カルシウムの混合物である。
【0064】
炭酸カルシウムに加え、炭酸カルシウム含有材料は、マグネシウムと会合したカルシウムの粒子、および類似体または誘導体、種々のシリケート、例えば、クレイ、例えばカオリンクレイおよび/またはタルクマイカおよび/または類似体または誘導体、およびこれらのフィラーの混合物、例えば、タルク−炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウム−カオリン混合物を含んでいてもよく、または、金属酸化物、例えば、二酸化チタンおよび/または三酸化アルミニウム、金属水酸化物、例えば、三水酸化アルミニウム、金属塩、例えば、硫酸炭酸塩、例えば、炭酸マグネシウムおよび/または石膏、サチンホワイトおよびこれらの混合物をさらに含んでいてもよい。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料中の炭酸カルシウムの量は、炭酸カルシウム含有材料の合計重量を基準として、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも95重量%、さらに好ましくは、97から100重量%、最も好ましくは、98.5から99.95重量%である。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは、炭酸カルシウムは、重量メジアン径d50が、0.1から100μm、好ましくは、0.25から50μm、さらに好ましくは、0.3から5μm、最も好ましくは、0.4から3.0μmである。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウム含有材料、好ましくは、炭酸カルシウムは、比表面積が、ISO 9277:1995に従う窒素およびBET法を用いて測定すると、0.1から200m/g、好ましくは、1から25m/g、さらに好ましくは、2から15m/g、最も好ましくは、3から12m/gである。
【0068】
くし形ポリマー
炭酸カルシウム含有材料に加え、本発明の水性スラリーは、少なくとも1種類のくし形ポリマーを含み、ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、同じ濃度、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである。
【0069】
本願発明者らは、驚くべきことに、上述の特徴を有するくし形ポリマーが、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーの高温でのレオロジー安定性を改良することができ、このため、高温、例えば、65℃以上での製造中および適用中にスラリーの望ましくない粘度上昇を防ぐことができることを発見した。炭酸カルシウム含有材料のスラリーは、通常、粉砕および/または分散によって製造され、従って、スラリーは、グラインダおよびディスペンサによる剪断によって誘発されるエネルギーに起因して非常に熱くなり得るため、感受性が低いか、または高温での改良されたレオロジー安定性は、重要な特徴である。
【0070】
何らかの理論に束縛されないが、本願発明者らは、上述の3つの特徴の組み合わせを有するくし形ポリマーは、負に帯電した主鎖(ポリマー骨格とも呼ばれる。)に起因して、弱く正に帯電した炭酸カルシウム含有材料粒子に吸着すると考えられる。さらに、吸着したくし形ポリマーの側鎖は、粒子との間に立体的反発および/または浸透圧による反発を引き起こすことがあり、炭酸カルシウム含有材料スラリーの立体的安定化および/または浸透圧による安定化を生じる場合がある。
【0071】
さらに、本願発明者らは、驚くべきことに、炭酸カルシウム含有材料の酸処理によって、炭酸カルシウム含有材料粒子に対するくし形ポリマーの吸着をさらに改良することができることを発見した。
【0072】
本発明の意味において、くし形ポリマーは、分枝鎖ポリマーの副分類を形成するくし形ポリマーであると定義される。くし形ポリマーは、主鎖(骨格とも呼ばれる。)と複数の三官能分岐点とを含み、これらの分岐点それぞれから直鎖の側鎖が出ており、従って平面投影でくし形の形状に似ているくし形高分子で構成されるポリマーである(参考。IUPAC、Compendium of Chemical Terminology、第2版(「Gold Book」))。
【0073】
例えば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、正確にくし形のポリマー、規則的なくし形ポリマーまたは二重のくし形ポリマーであってもよい。正確にくし形のポリマーは、分岐の位置が公知であるくし形ポリマーであると定義される。規則的なくし形ポリマーは、主鎖の分岐点間の副鎖と主鎖の末端副鎖が、構成および重合度について同一であり、各側鎖が、構成および重合度について同一であるくし形ポリマーであると定義される。二重のくし形ポリマーは、2種類の異なるポリマー側鎖を有する直鎖骨格を有するくし形ポリマーであると定義される。
【0074】
しかし、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、2種類より多い異なるポリマー側鎖を有していてもよい。さらに、側鎖は、カチオン性またはアニオン性の帯電した残基を含んでいてもよい。
【0075】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、曇点が25℃から90℃にはなく、好ましくは、曇点が30℃から85℃にはない。
【0076】
本発明で使用する少なくとも1種類のくし形ポリマーは、比電荷が−10C/gから−600C/gであり、即ち、アニオン性の帯電したくし形ポリマーである。
【0077】
「アニオン性の帯電した」という用語は、本発明で使用される場合、くし形ポリマーが、全体で負であるか、または正味の電荷が負である、即ち、すべての正電荷および負電荷の合計が負であることを意味すると理解すべきである。言い換えると、ポリマーは、過剰なアニオン性の帯電した官能基または残基を有していなければならない。このことは、本発明のアニオン性の帯電したくし形ポリマーが、全体で負であるか、または正味の電荷が負である(即ち、くし形ポリマーは、アニオン性である)限り、正および負に帯電した官能基または残基、即ち、カチオン性およびアニオン性の官能基または残基の両方を含んでよいことを意味する。例えば、アニオン性の帯電したくし形ポリマーは、アニオン性の帯電した官能基または残基のみを含んでいてもよく、またはアニオン性およびカチオン性の帯電した官能基または残基を含んでいてもよく、従って、両性の特徴を有していてもよい。
【0078】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8で−10から−500C/g、好ましくは、pH8で−10C/gから−300C/g、さらに好ましくは、pH8で−10C/gから−100C/gの負の比電荷を有する。
【0079】
別の実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、実施例に記載する方法によって決定される場合、固有粘度が、5から100ml/g、好ましくは、7から80ml/g、最も好ましくは、8から20ml/gである。
【0080】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアニオン性の帯電したくし形ポリマーの主鎖は、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸または他の酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、アリルエステルまたはビニルエーテルのコポリマーを含んでいてもよい。または、アニオン性の帯電したくし形ポリマーの主鎖は、カルボキシル基を含有する多糖から誘導されるポリマー、または他の酸基を含有する多糖から誘導されるポリマー、好ましくは、カルボキシメチルセルロースであってもよい。
【0081】
アニオン性の帯電したくし形ポリマーの側鎖は、重合したエポキシド含有化合物、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1−ブチレンオキシド、フェニル−エチレンオキシドなどを含んでいてもよい。ポリエーテル側鎖が、ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドを含む混合コポリマーを含み、遊離末端にヒドロキシル基、一級アミノ基または1から40個の炭素原子を含むアルキル基を有し、直鎖、分枝鎖または環状であり、好ましくは、1から4個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0082】
本発明で使用する少なくとも1つのアニオン性の帯電したくし形ポリマーは、不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸と、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、アリルエーテルまたはビニルエーテルとの共重合によって得られてもよく、カルボン酸は、遊離酸の形態および/またはこの塩の形態で存在していてもよい。または、アニオン性の帯電したくし形ポリマーは、ポリマー類似反応によって製造されてもよく、この場合、部分的なアミド化を促進する条件下で、または、状況に応じて、カルボキシル基のエステル化を促進する条件下で、潜在的なカルボキシル基または遊離カルボキシル基を含むポリマーを、アミン官能基またはヒドロキシル官能基を含む1つ以上の化合物と反応させる。
【0083】
このようなアニオン性の帯電したくし形ポリマーは、固有粘度が、実施例に記載する方法によって決定される場合、5から100ml/g、好ましくは、7から80ml/g、最も好ましくは、8から20ml/gであってもよい。ポリマー中のカルボン酸基または他の酸基を、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属または他の2電子価または3電子価の金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウム基の塩、またはこれらの混合物によって部分的または完全に中和することができる。
【0084】
本発明で使用可能なくし形ポリマーは、US2009/0199741A1、US6,387,176B1、EP1136508A1、EP1138697A1、EP1189955A1およびEP0736553A1に記載される。これらの書類は、アニオン性の帯電したくし形ポリマーを製造するための方法および鉱物由来バインダー(例えば、セメント)でのこれらの使用を開示する。アニオン性の帯電したくし形ポリマーは、www.sika.com.のウェブサイトで入手可能な「SIKA ViscoCrete(登録商標)、selbstverdickender Beton SCC」の製品にも記載されている。
【0085】
フィラーおよび顔料の分散剤として、骨格にアニオン性電荷を有し、帯電していない側鎖を有する合成ポリマーは、商標名MelPers(登録商標)でBASF、ドイツから入手可能である。前記合成ポリマーのアニオン性の特徴および立体的な特徴を有するアンカー基は、以下に静電的な分散機構として記載することができる効果を導く。これらの分散剤は、好ましくは、ナノスケールの固体系で使用される。
【0086】
EP1761609B1は、アクリル酸を含有するポリマー骨格と、ポリ−(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)側鎖とを含むくし形分枝鎖コポリマー分散剤を記載する。この添加剤の分子量は、90000g/molであり、ポリアルキレンオキシド側鎖の分子量は、3000g/molであり、エチレンオキシド/プロピレンオキシド比は、66.8/28.7である。
【0087】
US2011/031652A1は、石膏のための分散剤としてのエトキシル化アクリル酸ポリマーである市販のくし系コポリマーを記載する。このようなくし形ポリマーのさらなる例は、WO2011/028817A1中に見出すことができる。
【0088】
これらの書類では、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーのレオロジー安定性を高温で改良するためのこのようなポリマーの使用は述べられていない。対照的に、これらの書類は、大部分が、コンクリートおよび石膏の調製に関係がある。従って、本願発明者らは、このような特定のくし形ポリマーを使用し、炭酸カルシウム含有材料の水性スラリーを低温および高温で製造することができ、さらに、このポリマーを使用し、高温、例えば、65℃から105℃の温度でこのようなスラリーの粘度を安定化することができることを発見したとき、非常に驚いた。
【0089】
本発明によれば、「少なくとも1種類の」くし形ポリマーという表現は、1種類以上のくし形ポリマーが、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーに存在していてもよいことを意味する。一実施形態によれば、たった1種類のくし形ポリマーが、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーに存在する。別の実施形態によれば、少なくとも2種類のくし形ポリマーの混合物が、炭酸カルシウム含有材料を含む水性スラリーに存在する。
【0090】
高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリー
本発明の高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーは、上に定義したような炭酸カルシウム含有材料と、上に定義したような少なくとも1種類のくし形ポリマーとを含む。水性スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると25から1000mPa・sである。
【0091】
低い粘度を有する水性スラリーを与えることが利点である。1000mPa・sを超える値では、製造ユニット、例えば、粉砕ユニットの閉塞および損傷の高い危険性が存在するため、理想的には、水性スラリーの粘度は、1000mPa・s未満である。しかし、上にすでに説明したように、今日の産業は、粉砕および分散によって工業的に炭酸カルシウム含有材料を製造するため、グラインダおよびディスペンサによる剪断によって誘発されるエネルギーに起因してスラリーが非常に熱くなるという問題に直面するため、室温、即ち、20℃±2℃での粘度だけではなく、もっと高い温度での粘度が1000mPa・s未満であることがさらに重要である。
【0092】
一実施形態によれば、スラリーの粘度は、20℃および90℃で測定すると、25から800mPa・sであり、好ましくは、20℃および90℃で測定すると、30から500mPa・sであり,最も好ましくは、20℃および90℃で測定すると、35から300mPa・sである。好ましくは、この粘度は、同軸円筒測定システム、例えば、測定温度制御セルTEZ 150 P−Cおよび同軸円筒CC 27測定システムを取り付けたPhysica MCR 300レオメーター(Paar Physica)を用いて、100L/分の一定回転速度で測定される。
【0093】
好ましい実施形態によれば、本発明のくし形ポリマーは、得られる水性スラリーが、20℃および90℃で測定すると粘度が25から800mPa・s、好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が30から500mPa・s、最も好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が35から300mPa・sであるような量で存在する。好ましくは、粘度は、同軸円筒測定システム、例えば、測定温度制御セルTEZ 150 P−Cおよび同軸円筒CC 27測定システムを取り付けたPhysica MCR 300レオメーター(Paar Physica)を用いて100L/分の一定回転速度で測定される。
【0094】
一実施形態によれば、水性スラリーは、炭酸カルシウム含有材料および少なくとも1種類のくし形ポリマーからなり、ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、同じ濃度、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、実験部分(濁度測定)で記載されるように、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである。
【0095】
一実施形態によれば、本発明の水性スラリーは、多量の固形分を含有する水性スラリー、例えば、固体含有量が、水性スラリーの合計重量を基準として少なくとも45重量%のスラリーである。好ましい実施形態によれば、本発明の水性スラリーは、固体含有量が、水性スラリーの合計重量を基準として、45から82重量%、好ましくは、60から78重量%、さらに好ましくは、70から78重量%である。
【0096】
一実施形態によれば、本発明の水性スラリーは、pHが、7から12、好ましくは、7.5から11、さらに好ましくは、8.5から10である。好ましい実施形態によれば、本発明の水性スラリーのpH調整は不要である。別の実施形態によれば、本発明の水性スラリーのpHを、酸および/または塩基によって、7から12、好ましくは、7.5から11、さらに好ましくは、8.5から10のpHに調整する。pHを調整するための可能な塩基は、例えば、NaOHおよびアンモニア、トリメチルアミンまたはトリエチルアミンのようなアミン化合物である。pHを調整するための可能な酸は、例えば、クエン酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、ヒ酸およびヨウ素酸である。好ましくは、pHを調整するための酸は、例えば、pK値がゼロより大きいクエン酸のような弱酸である。
【0097】
一実施形態によれば、くし形ポリマーは、スラリーの固形分の合計重量を基準として、0.01から10重量%、好ましくは、0.05から5重量%、さらに好ましくは、0.1から3.0重量%、さらになお好ましくは、0.2から2.0重量%、最も好ましくは、0.25から1.5重量%、または0.5から1.25重量%の量で存在する。
【0098】
別の実施形態によれば、本発明の水性スラリーは、添加剤、例えば、比電荷がpH8で−500C/gより大きい分散剤を含まない。
【0099】
本発明の別の実施形態によれば、得られる水性スラリーの40℃での粘度は、同じスラリーの90℃での粘度と等しいか、またはもっと大きい。
【0100】
本発明の別の実施形態によれば、水性スラリーは、高温で少なくとも30分、好ましくは、少なくとも1時間、さらに好ましくは、少なくとも12時間、さらになお好ましくは、少なくとも24時間、最も好ましくは、少なくとも1週間、改良されたレオロジー安定性を有する。例えば、水性スラリーの粘度は、少なくとも30分、好ましくは、少なくとも1時間、さらに好ましくは、少なくとも12時間、さらになお好ましくは、少なくとも24時間、最も好ましくは、少なくとも1週間、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sである。水性スラリーは、高温で少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、16時間、20時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、2週間、3週間、1ヶ月間、または6ヶ月間、改良されたレオロジー安定性を有することもできる。
【0101】
高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための方法
高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための方法であって、
(a)炭酸カルシウム含有材料を与える工程と、
(b)水を与える工程と、
(c)少なくとも1種類のくし形ポリマーを与え、
ポリマー濃度45g/l、20℃で測定した少なくとも1種類のくし形ポリマーの比粘度は、70℃で測定した前記ポリマーの比粘度とは、比粘度差Δηspだけ異なり、Δηspの絶対値は、0.15から0.5であり、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、水中で測定すると、20℃から95℃で曇点を有さず、
少なくとも1種類のくし形ポリマーは、pH8での比電荷が−10C/gから−600C/gである、工程と、
(d)工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と工程(b)の水とを混合する工程と、
(e)工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーと、炭酸カルシウム含有材料とを、工程(d)の前および/または工程(d)の間および/または工程(d)の後に混合し、
水性スラリーの粘度が、20℃および90℃で測定すると、25から1000mPa・sであるように少なくとも1種類のくし形ポリマーを加える工程と
を含む、方法が提供される。
【0102】
この方法の工程(d)によれば、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料を、工程(b)の水と混合する。
【0103】
この方法の工程(e)によれば、工程(d)の前および/または工程(d)の間および/または工程(d)の後に、工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーを、炭酸カルシウム含有材料と混合する。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーを、第1の工程において、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と混合し、第2の工程において、工程(b)の水と混合する。
【0105】
本発明の例示的な一実施形態によれば、工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーを、工程(d)の炭酸カルシウム含有材料と混合する。
【0106】
本発明の別の実施形態によれば、工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーを、第1の工程において、工程(b)の水と混合し、次いで、得られた溶液を、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料と混合する。
【0107】
本発明の別の実施形態によれば、工程(c)の少なくとも1種類のくし形ポリマーおよび工程(a)の炭酸カルシウム含有材料を、一工程で工程(b)の水と混合する。
【0108】
例示的な実施形態によれば、工程(a)の炭酸カルシウム含有材料は、炭酸カルシウム含有材料の湿式研磨によって得られる粉砕炭酸カルシウムを含有し、炭酸カルシウム含有材料の湿式研磨の前、および/または湿式研磨の間、および/または湿式研磨の後に工程(e)を行う。
【0109】
混合条件および/または均質化条件および/または粒子を分割する条件下で混合工程を行ってもよい。当業者は、これらの混合条件および/または均質化条件、例えば、その処理装置の混合速度および温度を適用するであろう。例えば、混合および均質化は、プロシェアミキサーを用いて行ってもよい。プロシェアミキサーは、機械的に作られる流動床の原理によって機能する。プロシェアブレードは、水平の円筒形ドラムの内側壁付近を回転し、生成物の床から離れた混合物の成分を開いた混合空間に運ぶ。機械的に作られた流動床は、非常に短時間でさらに大きなバッチでの密な混合を確保する。チョッパーおよび/またはディスペンサを使用し、乾燥操作で塊を分散させる。本発明の方法で使用可能な装置は、例えば、Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH(ドイツ)から入手可能である。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、流動床ミキサーまたはプロシェアミキサーを用いて混合が行われる。
【0111】
本発明の別の実施形態によれば、混合は、粉砕デバイス、好ましくは、ボールミルを、好ましくは、混合中に生成した集塊物および/または凝集物を粉砕デバイスの投入口に戻して再循環させるサイクロンデバイスと組み合わせて行われる。サイクロンデバイスによって、粒子、集塊物または凝集物のような粒状材料を、もっと小さな粒状物のフラクションまたはもっと大きな粒状物のフラクションに重力に基づいて分離することができる。
【0112】
例示的な実施形態によれば、この方法の工程(d)および/または(e)の間に作られた炭酸カルシウムを含有するコンポジット粒子を、もっと小さな粒子に分割する。「分割する」という用語は、本発明で使用する場合、粒子をもっと小さな粒子に分けることを意味する。この分割は、粉砕、例えば、ボールミル、ハンマーミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心分離衝撃ミル、縦型ビーズミル、アトライタミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパーまたはナイフカッターによって行ってもよい。しかし、この方法の工程(d)および/または(e)の間に作られた炭酸カルシウムを含有するコンポジット粒子をもっと小さな粒子に分割することができる任意の他のデバイスを使用してもよい。
【0113】
混合は、室温、即ち、20℃±2℃、または他の温度で行われてもよい。一実施形態によれば、混合を、5から140℃、好ましくは、10から110℃、最も好ましくは、20℃から105℃の温度、または他の温度で行う。本発明の別の実施形態によれば、70℃から105℃の高温で混合を行う。内部の剪断によって、または外部の熱源によって、またはこれらの組み合わせによって熱を導入してもよい。
【0114】
本発明の別の実施形態によれば、工程(d)の炭酸カルシウム含有材料と混合する前に、工程(b)の水をあらかじめ加熱しておく。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1秒間、好ましくは、少なくとも1分間、例えば、少なくとも15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、または10時間、混合を行う。
【0116】
本発明の任意選択による実施形態によれば、この方法は、例えば、内部の剪断の使用によって、または外部の熱源によって、またはこれらの組み合わせによって、工程(d)および/または工程(e)の間および/または工程(d)および/または工程(e)の後に、工程(d)および/または(e)の混合物を50℃から120℃、好ましくは、60℃から110℃、最も好ましくは、70℃から105℃に加熱するさらなる工程を含む。
【0117】
本発明の方法によって得られる水性スラリーの固体含有量は、当業者に既知の方法によって調整することができる。水性鉱物材料を含むスラリーの固体含有量を調整するために、スラリーを、濾過、遠心分離または加熱分離方法によって部分的または完全に脱水してもよい。例えば、スラリーを、ナノ濾過のような濾過方法、またはエバポレーション法のような加熱分離方法によって部分的または完全に脱水してもよい。または、望ましい固体含有量が得られるまで、固体鉱物材料に水を加えてもよい。さらに、またはこれに代えて、望ましい固体含有量が得られるまで、適切な低い含有量の固体粒子を含むスラリーを、混合したスラリーの粒状材料に加えてもよい。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の方法によって得られた混合スラリーの固体含有量を、水性懸濁物の合計重量を基準として、45から82重量%、好ましくは、60から78重量%、さらに好ましくは、70から78重量%の高い固体含有量になるように調整する。一実施形態によれば、工程(e)の間および/または工程(e)の後に濃縮工程を行うことができる。
【0119】
本発明の別の任意選択による実施形態によれば、この方法は、工程(d)および/または工程(e)の間および/または工程(d)および/または工程(e)の後に、工程(d)および/または(e)の混合物を50℃から120℃、好ましくは、60℃から110℃、最も好ましくは、70℃から105℃に加熱するさらなる工程を含み、さらに、加熱中に、工程(d)および/または(e)の混合物を濃縮および/または粉砕する。内部の剪断によって、または外部の熱源によって、またはこれらの組み合わせによって加熱を行うことができる。当業者に既知の方法によって、例えば、濾過、遠心分離または加熱分離方法によって、濃縮を行うことができる。例えば、ボールミル、ハンマーミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、縦型ビーズミル、アトライタミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパーまたはナイフカッターを用い、当業者に既知の方法によって、粉砕を行うことができる。
【0120】
好ましい実施形態によれば、工程(d)の水性スラリーに分散剤を加えない。
【0121】
一実施形態によれば、混合する工程(d)および/または(e)の後に、水性スラリーは、pHが、7から12、好ましくは、7.5から11、さらに好ましくは、8.5から10である。
【0122】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーを、この方法の工程(e)において、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.01から10重量%、好ましくは、0.05から5重量%、さらに好ましくは、0.1から3.0重量%、さらになお好ましくは、0.2から2.0重量%、最も好ましくは、0.25から1.5重量%、または0.5から1.25重量%の量で加える。
【0123】
一実施形態によれば、少なくとも1種類のくし形ポリマーを、この方法の工程(e)において、得られる炭酸カルシウム含有水性スラリーが、20℃および90℃で測定すると粘度が25から800mPa・s、好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が30から500mPa・s、最も好ましくは、20℃および90℃で測定すると粘度が35から300mPa・sであるような量で加える。
【0124】
一実施形態によれば、pH8での比電荷が−500C/gを超える添加剤、例えば、分散剤を水性スラリーに添加しない。
【0125】
本発明の別の実施形態によれば、水性スラリーを、紙、プラスチック、塗料、コーティング、コンクリートおよび/または農業用途で使用し、好ましくは、水性スラリーを、抄紙機のウェットエンド法で使用し、タバコ紙、厚紙および/またはコーティング用途で使用するか、またはロトグラビア印刷および/またはオフセット印刷および/またはインクジェット印刷および/または連続インクジェット印刷および/またはフレキソグラフィーおよび/または電子写真および/または化粧加工表面のための支持材として使用するか、または水性スラリーを使用し、植物の葉の日光およびUVの曝露を減らす。
【0126】
本発明の別の実施形態によれば、高温で改良されたレオロジー安定性を有する水性スラリーを製造するための本発明の方法の工程(a)から(e)と、得られたスラリーを乾燥するさらなる工程(f)とを含む、コンポジット粒子を製造するための方法が提供される。本発明のスラリーを、例えば、熱によって、例えば、スプレー乾燥器またはマイクロ波によって、または乾燥器中、または機械的に、例えば、濾過によって、または水分量を下げることによって乾燥させてもよい。高温で改良されたレオロジー安定性に起因して、本発明の水性スラリーを、高固体含有量で、例えば、水性懸濁物の合計重量を基準として45重量%を超える固体含有量であっても、高温で、例えば、60℃を超える温度で、スプレー乾燥によって乾燥させてもよい。このような方法によって、炭酸カルシウム含有材料と少なくとも1種類のくし形ポリマーを含むコンポジット粒子を得ることができる。その後、コンポジット粒子を水と再び混合してもよい。本発明の方法によって製造されるコンポジット粒子は、水に再分散させたときに、熱感受性の低下を示す。
【0127】
本発明の別の実施形態によれば、さらなる工程(f)でスラリーを乾燥させることによって得ることができるコンポジット粒子を、紙、プラスチック、塗料、コーティング、コンクリートおよび/または農業用途に使用し、好ましくは、コンポジット粒子を、抄紙機のウェットエンド法で使用し、タバコ紙、厚紙および/またはコーティング用途で使用するか、またはロトグラビア印刷および/またはオフセット印刷および/またはインクジェット印刷および/または連続インクジェット印刷および/またはフレキソグラフィーおよび/または電子写真および/または化粧加工表面のための支持材として使用するか、またはコンポジット粒子を使用し、植物の葉の日光およびUVの曝露を減らす。
【0128】
本発明の特定の実施形態を説明することを意図し、非限定的である以下の実施例に基づき、本発明の範囲および関心がよりよく理解されるだろう。
【実施例】
【0129】
1.測定方法
pH測定
Mettler Toledo Seven Easy pH計およびMettler Toledo InLab(登録商標)Expert Pro pH電極を用い、25℃でpHを測定した。第1に、20℃でpH値が4、7および10の市販のバッファー溶液(Aldrich製)を用い、この装置の3点較正(このセグメントの方法に従う)を行った。報告されるpH値は、この装置によって検出される終点値であった(終点は、測定したシグナルが、直近の6秒間にわたって平均で0.1mV未満しか違わない時点であった。)。
【0130】
粒状材料の粒度分布(直径がX未満の粒子の質量%)および重量メジアン粒子径(d50
粒状材料の重量メジアン粒子直径および粒子径の質量分布を、沈降方法によって、即ち、重力場での沈降挙動の分析によって決定した。Sedigraph(商標)5120を用いて測定を行った。
【0131】
この方法および装置は、当業者に既知であり、フィラーおよび顔料の粒子径を決定するために一般的に用いられる。測定は、0.1重量%のNa水溶液中で行った。高速撹拌機および超音波を用い、サンプルを分散させた。
【0132】
スラリー中の材料の固形分重量(重量%)
固体材料の重量を水性スラリーの合計重量で割ることによって、固形分重量を決定した。固形内容物の重量は、Moisture Analyser MJ 33、Mettler Toledoを用いて決定した。
【0133】
比表面(BET)測定
鉱物フィラーの比表面積(単位m/g)を、当業者によく知られた窒素およびBET法(ISO 9277:1995)を用いて決定した。次いで、鉱物フィラーの比表面積と質量(単位g)とを掛け算することによって、鉱物フィラーの合計表面積(単位m)を得た。方法および装置は、当業者に既知であり、フィラーおよび顔料の比表面を決定するために一般的に用いられる。
【0134】
比電荷(C/g)
ゼロの電荷値を達成するのに必要なカチオン性ポリマーの要求を、カチオン滴定法を用いることによって、Mettler DL 77滴定装置およびMutec PCD−02検出器を用いて滴定した。カチオン性試薬は、N/200(0.005N)メチルグリコールキトサン(キトサン)であり、アニオン性試薬は、N/400(0.0025N)K−ポリビニル−サルフェート(KPVS)であり、両方とも、WAKO Chemicals GmbHによって販売されている。
【0135】
必要な場合、測定前に、NaOH(0.1M)を用い、サンプルをpH8.0±0.1に調整した。
【0136】
実験から、第1の滴定が正しくないことが示されたため、第1に、検出器内で10mlの水を調製し、その後、0.5mlのKPVSを添加した。その後、当量点をわずかに過ぎるところまで戻るまで、キトサンを用いた滴定を行った。その後、測定を開始した。滴定中に、再現可能な値が得られるまで、0.5mlから2.0mlの0.005モル濃度の試薬を使用した。
【0137】
すぐに沈降するのを避けるために、計量したシリンジを用い、サンプルを攪拌状態で抜き取った。次いで、シリンジの内容物を蒸留水で洗いつつサンプル容器に入れた。その後で、検出器を下側の縁まで蒸留水で満たし、ピストンを注意深く挿入した。その後、カチオン性滴定溶液をメモタイトレータ(memotitrator)に入れ、ビュレットの上部を検出器に固定し、検出器または液体に接触しないようにした。それぞれの滴定の後、滴定曲線を用いつつ、滴定の進行を確認した。
【0138】
電気化学的電荷の計算
【0139】
【数2】
式中、K=+1000
V:消費キトサン[ml]
c:キトサンの濃度[mol/l]
t:キトサンの力価
E:量り減り[g]
F:固形分の質量分率[g/g]
z:価数(当量数)
【0140】
以下のように、ファラデー定数を掛け算することによって、得られたμVal/gの電荷値をC/gに変換した。
[C/g]=[μVal/g]・0.096485
【0141】
電気伝導性の測定
対応するMettler Toledo導電性拡大ユニットおよびMettler Toledo InLab(登録商標)730導電性プローブを取り付けたMettler Toledo Seven Multi装置を用い、懸濁物の導電性を25℃で測定し、その後、Pendraulik歯形板攪拌器を用い、懸濁物を直接、1500rpmで攪拌した。
【0142】
第1に、Mettler Toledo製の市販の導電性較正溶液を用い、関連する導電性範囲で較正を行った。導電性に対する温度の影響を直線補正モードによって自動的に補正した。
【0143】
測定した導電性を25℃の参照温度で報告する。報告される導電性値は、この装置によって検出される終点値であった(終点は、測定した導電性が、直近の6秒間の平均から0.4%未満しか違わない時点であった。)。
【0144】
Brookfield粘度
RVT型のBrookfield(商標)粘度計を用いることによって、温度20℃(±2℃)、回転速度100rpm(毎分の回転数)で、1番から5番の適切な円板スピンドルを用い、攪拌して1分後にBrookfield粘度を測定した。以下の実施例において、ポリマーを水性スラリーに加えている間および加えた後にBrookfield粘度を測定し、所定の範囲内のBrookfield粘度を得るのに実際に必要なポリマー量を決定した。
【0145】
固有粘度
Schott AVS 350システムによって、固有粘度を決定した。サンプルを0.2mol/l NaCl水溶液に溶解し、NaOHを用いてpH10に調整した。キャピラリー0a型を用い、25℃で測定を行い、Hagenbach補正を用いて補正した。
【0146】
異なる温度での動的粘度
測定温度制御セルTEZ 150 P−Cおよび同軸円筒CC 27測定システムを取り付けたPhysica MCR 300レオメーター(Paar Physica)を用い、粘度を測定した。報告された粘度値は、100L/分の一定の回転速度で測定された。温度は手動で変更した。温度は、概算精度が±0.2℃の範囲内の一定値に維持した。温度が安定したら、粘度の測定を開始した。特定の温度について、報告した粘度値は、10測定点の平均であった(6s/測定点)。温度を20℃から90℃に変えた。蒸発を避けるために、スラリー表面を、ノナン(Aldrich物品番号:N29406)の薄層で覆った。以下の実施例において、前記Physica MCR 300レオメーターを用い、室温より高い温度で、特に、40℃、60℃および90℃の温度で動的粘度を決定した。
【0147】
比粘度および比粘度の差
「比粘度」という用語は、本発明の意味において、相対粘度の差マイナス1として定義される。
【0148】
ηsp=ηrel−1
【0149】
相対粘度は、本明細書で使用する場合、溶液粘度と溶媒粘度の商である。
【0150】
【数3】
式中、溶媒粘度ηは、純粋な溶媒の粘度であると定義され、溶液粘度ηは、純粋な溶媒に溶解したくし形ポリマーの粘度であると定義される。
【0151】
しかし、相対粘度を決定するために、境界条件が一定である場合には、所与の温度で(溶液の)溶出時間tおよび(溶媒の)溶出時間tを測定すれば十分である。従って、相対粘度は、以下のように定義されるだろう。
【0152】
【数4】
【0153】
従って、比粘度は、以下のように定義されるだろう。
【0154】
【数5】
【0155】
「比粘度の差」という用語は、本発明の意味において、70℃および20℃で測定した比粘度の差であると定義される。
【0156】
Δηsp=ηsp70℃−ηsp20℃
水中にポリマー濃度45g/lを含むポリマー水溶液から、ポリマーの比粘度を得た。溶出時間tおよびtを20℃および70℃で測定し、ηspおよびΔηspを上述の式に従って計算した。
【0157】
Schott AVS 350システムによって比粘度を決定した。サンプルを0.2mol/l NaCl水溶液に溶解し、NaOHを用いてpH10に調整した。キャピラリー0a型を用い、25℃で測定を行い、Hagenbach補正を用いて補正した。
【0158】
濁度測定(曇点)
NaOHでpH10に調整した0.2mol/l NaCl水溶液で、ポリマー溶液の濁度または曇点を測定した。ポリマー濃度は、45g/lであった。
【0159】
溶液10mlを20mlの試験管に充填し、上部をアルミニウム箔で閉じた。試験管の長さの2/3を油浴に浸し、温度を調整した。目標温度に達したら、温度を一定レベルに少なくとも15分間維持した。15分後、試験管を油浴から持ち上げ、濁度をすぐに目視によって評価した。油浴の温度を10℃ずつ40℃から100℃まで徐々に上げた。
【0160】
肉眼によって濁度を評価した。濁度または曇点がないとは、ポリマー溶液が無色透明のままであることを意味する。
【0161】
2.添加剤
ポリマーA(比較例)
BASF、ドイツから入手可能なMelPers 0045。
【0162】
比電荷:pH5.9で測定すると−49C/g、pH8で測定すると−69C/g。
固有粘度:25.6ml/g。
【0163】
ポリマーB(本願)
BASF、ドイツから入手可能なMelPers 4343。
【0164】
比電荷:pH8で−92C/g。
固有粘度:12.5ml/g。
【0165】
ポリマーC(本願)
BASF、ドイツから入手可能なMelPers 2450。
【0166】
比電荷:pH8で測定すると−97C/g。
固有粘度:10.9ml/g。
【0167】
ポリマーD(比較例)
US4,868,228に記載されるようなナトリウム/マグネシウムポリアクリレート。
【0168】
比電荷:pH8で測定すると−931C/g。
【0169】
Mw=6000g/mol(多分散性:2.6)。
固有粘度:6.8ml/g。
【0170】
温度の関数としてのポリマーAからDの比粘度を図1に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
3.実施例
実施例1(比較例)
最初に、ハンマーミルによって、10から300mmの炭酸カルシウム石を、d50値が42から48μmに対応する微粉度になるまで自発的に乾燥粉砕し、その後、この乾燥状態で粉砕した生成物を、1.4リットルの縦型アトライタミル(Dynomill)中、スラリーの合計重量を基準として72から73重量%の重量固体含有量で、粒子の98%が2.7μm未満の直径を有し、90%が2μm未満の直径を有し、d50が0.80μmに等しくなるまで、水中、30から35℃で湿式粉砕することによって、Norwegian由来の天然炭酸カルシウムを得た。粉砕方法中、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.70重量%のポリマーAを加え、100から500mPa・sのBrookfield粘度を得た。
【0173】
温度の関数としてのスラリーの粘度を以下の表に示す。温度が上昇するにつれて、スラリーの粘度は低下した。
【0174】
【表2】
【0175】
実施例2(本発明の実施例)
最初に、ハンマーミルによって、10から300mmの炭酸カルシウム石を、d50値が42から48μmに対応する微粉度になるまで自発的に乾燥粉砕し、その後、この乾燥状態で粉砕した生成物を、1.4リットルの縦型アトライタミル(Dynomill)中、スラリーの合計重量を基準として75から76重量%の重量固体含有量で、粒子の98%が2.9μm未満の直径を有し、89%が2μm未満の直径を有し、d50が0.79μmに等しくなるまで、水中、52から58℃で湿式粉砕することによって、Norwegian由来の天然炭酸カルシウムを得た。粉砕方法中、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.6重量%のポリマーBを加え、200から300mPa・sのBrookfield粘度を得た。最終的なスラリーは、固体含有量が、スラリーの合計重量を基準として75.6重量%であり、pHが8.6であり、導電性が550μS/cmであり、Brookfield粘度(100rpm;5s/60s/120s)が238/241/246mPa・sであった。
【0176】
温度の関数としてのスラリーの粘度を以下の表に示す。温度が上昇するにつれて、スラリーの粘度は低下した。
【0177】
【表3】
【0178】
実施例3(本発明の実施例)
最初に、ハンマーミルによって、10から300mmの炭酸カルシウム石を、d50値が42から48μmに対応する微粉度になるまで自発的に乾燥粉砕し、その後、この乾燥状態で粉砕した生成物を、1.4リットルの縦型アトライタミル(Dynomill)中、スラリーの合計重量を基準として75から76重量%の重量固体含有量で、粒子の98%が3.05μm未満の直径を有し、89%が2μm未満の直径を有し、d50が0.78μmに等しくなるまで、水中、54から58℃で湿式粉砕することによって、Norwegian由来の天然炭酸カルシウムを得た。粉砕方法中、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.94重量%のポリマーCを加え、100から200mPa・sのBrookfield粘度を得た。最終的なスラリーは、固体含有量が、スラリーの合計重量を基準として75.6重量%であり、pHが8.4であり、導電性が452μS/cmであり、Brookfield粘度(100rpm;5s/60s/120s)が162/168/175mPa・sであった。
【0179】
温度の関数としてのスラリーの粘度を以下の表に示す。温度が上昇するにつれて、スラリーの粘度は低下した。
【0180】
【表4】
【0181】
実施例4(比較例)
Molde、Norway地域の直径が10から300mmのNorwegian大理石を、d50値が42から48μmの範囲の微粉度になるまで自発的に(即ち、研磨媒体非存在下)乾燥粉砕した。
【0182】
縦型アトライタミル(Dynomill)中、添加剤(例えば、分散助剤および/または研磨助剤)を加えずに再循環モードで、粒子の75重量%が、1μ未満の直径を有し、粒子の12重量%が、0.2μm未満の直径を有する微粉度まで、この鉱物を水道水中で10から15重量%の固体含有量で湿式粉砕した。粉砕後、この生成物は、メジアン直径d50が0.60μmであった。
【0183】
得られた鉱物スラリーを加圧濾過し、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.15重量%のリン酸および0.4重量%のポリマーAを用い、水に再分散させた。このスラリーの固体含有量は、スラリーの合計重量を基準として51重量%であった。
【0184】
周囲圧力で動くエバポレーターによって、得られた鉱物をさらに熱によって濃縮した。170℃で動く熱交換器によってスラリーを圧送した。
【0185】
スラリーを沸点まで加熱すると、スラリーは濃くなり、ポンプを詰まらせた。濃縮手順を止めなければならなかった。室温まで冷却した後、スラリーは、Brookfield粘度が1000mPa・s未満であり、固体含有量は、スラリーの合計重量を基準として60.2重量%であった。
【0186】
実施例5(本発明の実施例)
Molde、Norway地域の直径が10から300mmのNorwegian大理石を、d50値が42から48μmの範囲の微粉度になるまで自発的に(即ち、研磨媒体非存在下)乾燥粉砕した。
【0187】
縦型アトライタミル(Dynomill)中、添加剤(例えば、分散助剤および/または研磨助剤)を加えずに再循環モードで、粒子の75重量%が、1μ未満の直径を有し、粒子の12重量%が、0.2μm未満の直径を有する微粉度まで、この鉱物を水道水中で10から15重量%の固体含有量で湿式粉砕した。粉砕後、この生成物は、メジアン直径d50が0.60μmであった。
【0188】
得られた鉱物スラリーを加圧濾過し、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.15重量%のリン酸および0.4重量%のポリマーCを用い、水道水(硬度33fH°)に再分散させた。このスラリーの固体含有量は、スラリーの合計重量を基準として52重量%であった。
【0189】
周囲圧力で動くエバポレーターによって、得られた鉱物をさらに熱によって濃縮した。170℃で動く熱交換器によってスラリーを圧送した。
【0190】
4時間濃縮した後、スラリーは、固体含有量が66.5重量%であり、Brookfield粘度(20℃±2℃;100rpm;60sで測定)は420mPa・sであった。
【0191】
実施例6(比較例)
最初に、10から300mmの炭酸カルシウム石を、d50値が42から48μmに対応する微粉度になるまで自発的に乾燥粉砕し、その後、この乾燥状態で粉砕した生成物を、1.4リットルの縦型アトライタミル(Dynomill)中、スラリーの合計重量を基準として75から76重量%の重量固体含有量で、粒子の60重量%が2μm未満の直径を有し、33重量%が1μm未満の直径を有し、8重量%が0.2μm未満の直径を有し、d50が1.4μmに達するまで、水中、30から35℃で湿式粉砕することによって、Norwegian由来の天然炭酸カルシウムを得た。
【0192】
粉砕方法中、スラリーの固形分の合計重量を基準として0.45重量%のポリマーDを加え、100から500mPa・sのBrookfield粘度を得た。ポリマーDの70mol%のカルボン酸基は、対イオンとしてナトリウムイオン、および30mol%のカルシウムイオンを含んでいた。最終的な粉砕炭酸カルシウムの比表面は、6.9m/gであった。
【0193】
温度の関数としてのスラリーの粘度を以下の表に示す。温度が上昇するにつれて、スラリーの粘度は低下した。
【0194】
【表5】
【0195】
【表6】
【0196】
【表7】
【0197】
表6からわかるように、比較例1のスラリーは、温度が上昇すると、非常に粘性が高くなった。90℃の温度で、このスラリーは、粘度が1000mPa・sより大きく、従って、製造ユニットの閉塞および損傷の高いリスクが存在するだろう。このことは、実施例4のスラリーによって印象深く示された。スラリーを沸点まで加熱すると、スラリーは濃くなり、ポンプを詰まらせた(表7を参照)。濃縮手順を止めなければならなかった。この問題は、本発明のスラリー2、3および5では観察されなかった。実施例4とは対照的に、実施例5の本発明のスラリーは、濃くならず、従って、沸点まで加熱したとき、ポンプを詰まらせなかった。4時間後であっても、約95℃の濃縮温度でのスラリーの粘度は、500mPa・s未満であった。比較例6は、一目で非常に低い粘度を有するようである。40℃での値は40mPa・sであり、90℃では28mPa・sである。しかし、このことは、実施例6で使用されるポリマーの比電荷が−931C/gであり、従って、非常に高いという事実によって生じる。このことにより、コーティング色での例えば凝集といった顕著な欠点を生じる場合がある。
図1