特許第5964528号(P5964528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許59645284−アルコキシシンナムアルデヒドを有効成分とする香味変調剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5964528
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】4−アルコキシシンナムアルデヒドを有効成分とする香味変調剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20160721BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20160721BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20160721BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20160721BHJP
   A23C 9/152 20060101ALN20160721BHJP
   A23G 9/32 20060101ALN20160721BHJP
   A23G 9/44 20060101ALN20160721BHJP
   A23G 9/52 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   A23L27/00 C
   A23L27/00 F
   A23L27/20 F
   A23L27/30 Z
   A23L5/00 H
   !A23C9/152
   !A23G9/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-44461(P2016-44461)
(22)【出願日】2016年3月8日
【審査請求日】2016年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聡
(72)【発明者】
【氏名】原口 賢治
(72)【発明者】
【氏名】福本 陽
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 寛子
(72)【発明者】
【氏名】川畑 和也
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−507227(JP,A)
【文献】 特表2005−517737(JP,A)
【文献】 国際公開第99/52937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
A23L 5/00
A23L 27/20
A23L 27/30
A23C 9/152
A23G 9/32
A23G 9/44
A23G 9/52
WPI
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)に示される化合物を有効成分とする香味変調剤。
【化1】
上記式(1)中、Rは炭素数2乃至4の炭化水素基を示す。
【請求項2】
香味変調が香気の付与乃至増強である、請求項1に記載の香味変調剤。
【請求項3】
香味変調が甘味の付与乃至増強である、請求項1に記載の香味変調剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の香味変調剤を有効成分として含有する飲食品用香料組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の香味変調剤または請求項4の飲食品用香料組成物を含有させた飲食品。
【請求項6】
請求項1に記載の式(1)に示される化合物を飲食品に含有させる、飲食品の香気付与乃至増強方法。
【請求項7】
請求項1に記載の式(1)に示される化合物を飲食品に含有させる、飲食品の甘味付与乃至増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特異な香気と甘味を有する、4−アルコキシシンナムアルデヒドを有効成分とする香味変調剤に関する。さらに詳しくは、該化合物を有効成分とする、香気付与乃至増強剤、甘味付与乃至増強剤、および、該化合物を有効成分として含有する香料組成物、ならびに、これらの香味変調剤または香料組成物を配合した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品用香料において、消費者の嗜好性の多様化とともに、従来にない新しいタイプの香気・香味を有する香料に対するニーズが高まり、マイルドで新鮮な香質を有し、持続性に優れたユニークな香料素材の開発が望まれている。このような背景にあって、香料素材を適宜に、またその配合量を変えて組合せ、できるだけ天然らしさを有するように調合する研究等が行われているが、未だ充分とはいえない。そこで、新たな香料素材として様々な有機化合物の探索が行われている。
【0003】
香料化合物は嗅覚を刺激する化合物であるが、その種類は数万あるとされる。一方、飲食品の風味は嗅覚刺激と味覚刺激が脳で統合された感覚と考えられている。すなわち、嗅覚刺激は香料化合物などの主に嗅覚を刺激する化合物と、主に味覚を刺激する化合物(食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウムなど)とが組み合され、飲食品全体の風味が形成されている。近年では、香気を有する化合物の中から、嗅覚と同時に味覚を刺激する化合物について探索が盛んとなり、飲食品の総合的な風味の向上に用いられている。
【0004】
甘味は、味の基本的な要素である五味のひとつであり、食全体の風味の形成に有用な要素となっている。甘味を含めた五味は味蕾(みらい)と呼ばれる味細胞の集合体によって感知され、それが味覚刺激として脳に伝わって感知されるものである。甘味は、呈味改善の要素として近年注目され、甘味の付与や増強をするためにさまざまな甘味料が利用されている。
【0005】
従来、飲食品に用いる甘味料として砂糖(ショ糖)、ぶどう糖、果糖などの糖類が広く利用されている。その中でも特にショ糖は極めて良質な甘味を有する他、飲食品にコク味やボディー感などを付与することができるという呈味特性を有する。さらにまた、保湿性、粘度の付与、水分活性の低減などの物性の面でも優れている。しかし、ショ糖は、古くから虫歯の原因の1つとも考えられており、また近年では過剰摂取によって生活習慣病の原因ともなり得るため、最近の健康志向や低カロリー志向から、使用が控えられる傾向がある。特に、飲料や菓子などの嗜好品においてはその傾向が強く、低カロリー化の傾向が進んでいる。
【0006】
こうした一般消費者の需要傾向に応え、ショ糖に代わる甘味料として用いられているのが、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、アドバンテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、甘草、ネオテームなどのいわゆる「高甘味度甘味料」である。これらの高甘味度甘味料は、ショ糖と比べはるかに強い甘味を有し、微量の添加で飲食品に甘味を付与することができる「低カロリー甘味料」としての特徴を併せ持っている。
【0007】
しかしながら、高甘味度甘味料の多くは、甘味の質に厚みやこく味が不足しており、また後味に苦味やえぐ味などの嫌味が尾を引くといった、いわゆる「後引き感」を有している。これらを改善するためには、別途他の添加剤によって苦味、渋味またはえぐ味といった後味の嫌味を改良することが必要であるため、砂糖のように一般消費者が料理等に通常に使用することは少ないのが現状である。
【0008】
そのために、いわゆる「後引き感」を有していなくて、かつ低カロリーな甘味料が望まれていた。
【0009】
香料化合物の中にはシンナムアルデヒドや4−メトキシシンナムアルデヒド等が低カロリーで香味および甘味を有する化合物として知られている(特許文献1)。また、甘味受容体への作用が認められ(特許文献2)、甘味物質との相乗効果が認められている(特許文献3)。しかしながら、甘味において後引き感は有していないものの、従来の高甘味度甘味料と比較して甘味が弱いため、さらに甘味が強い化合物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許3908028号公報
【特許文献2】特開2011−116693号公報
【特許文献3】特開2013−127377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、摂取する際に低カロリーであり、飲食品に使用するのに充分な香味と甘味を有し、雑味を有さない、さらに、高甘味度甘味料のようないわゆる「後引き感」を有していない、飲食品に添加した場合に好ましい香気を付与乃至増強し、また飲食品に添加した場合には香気に加え、呈味として甘味の付与乃至増強する香料化合物および、その化合物を有効成分として含有する香料組成物、ならびに、その化合物を有効成分として含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、数多くの有機化合物について鋭意探索した結果、下記式(1)に示される化合物である、4−アルコキシシンナムアルデヒドが、スパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様といった香気を有し、また、飲食品に配合した場合に苦味、渋味またはえぐ味を有さず、飲食品の甘味を付与乃至増強する効果を有し、その増強効果が4−メトキシシンナムアルデヒドより大幅に増大したことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明は以下のものを提供する。
(a)下記式(1)に示される化合物を有効成分とする香味変調剤。
【0014】
【化1】
【0015】
上記式(1)中、Rは炭素数2乃至4の炭化水素基を示す。
(b)香味変調が香気の付与乃至増強である、(a)の香味変調剤。
(c)香味変調が甘味の付与乃至増強である、(a)の香味変調剤。
(d)(a)〜(c)のいずれかの香味変調剤を有効成分として含有する飲食品用香料組成物。
(e)(a)〜(c)のいずれかの香味変調剤または(d)の飲食品用香料組成物を含有させた飲食品。
(f)(a)の式(1)に示される化合物を飲食品に含有させる、飲食品の香気付与乃至増強方法。
(g)(a)の式(1)に示される化合物を飲食品に含有させる、飲食品の甘味付与乃至増強方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物である上記式(1)に示される化合物である、4−アルコキシシンナムアルデヒドが、スパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様といった香気を有し、また、飲食品に配合した場合に苦味、渋味またはえぐ味を有さず、飲食品の甘味を付与乃至増強する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る、下記式(1)に示される化合物である、4−アルコキシシンナムアルデヒドは、前述の通り、スパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様といった香気を有し、また、飲食品に配合した場合に苦味、渋味またはえぐ味を有さず、飲食品の甘味を付与乃至増強する効果を有する。
【0019】
【化2】
【0020】
上記式(1)中、Rは炭素数2乃至4の炭化水素基を示す。
【0021】
特に、上記式(1)中、Rは炭素数2乃至4のアルキル基である場合に、飲食品の甘味を付与乃至増強する効果を有する。
【0022】
具体的な化合物としては、4−エトキシシンナムアルデヒド、4−プロポキシシンナムアルデヒド、4−イソプロポキシシンナムアルデヒド、4−(2−プロペニルオキシ)シンナムアルデヒド、4−ブトキシシンナムアルデヒド、4−イソブトキシシンナムアルデヒド、4−(sec−ブトキシ)シンナムアルデヒド、4−(tert−ブトキシ)シンナムアルデヒド、4−(3−ブテニルオキシ)シンナムアルデヒドを挙げることができる。さらにこれらの化合物は、飲食品の甘味を付与乃至増強する効果を有する。
【0023】
例えば、4−エトキシシンナムアルデヒドついては公知化合物であり、特許第3959964号にはアスパルチルジペプチドエステル誘導体の合成原料として記載されている。しかしながら、香味や甘味といった効能は記載されていない。
【0024】
また、4−イソプロポキシシンナムアルデヒドについても公知化合物であり、例えば、特許第3300869号には5−〔3−〔4−(5−メチル−2−フェニル−4−チアゾリルメトキシ)フェニル〕プロピル〕−2,4−オキサゾリジンジオンの合成中間体として記載されている。しかしながら、香味や甘味といった効能は記載されていない。
【0025】
4−アルコキシシンナムアルデヒドついては特表2000−507227号に記載されている合成反応を利用して調製することが可能である。すなわち、4−アルコキシベンズアルデヒドジメチルアセタール(2)とメチルビニルエーテル(3)とを、ルイス酸触媒を用いて反応させることにより化合物(4)を生成させ、その化合物を加水分解することにより、4−アルコキシシンナムアルデヒド(1)が得られる。
【0026】
【化3】
【0027】
これら得られた化合物は、減圧蒸留やカラムクロマトグラフィーなどの手段を用いることで高純度化することも可能である。
【0028】
本発明は、上記式(1)に示される4−アルコキシシンナムアルデヒドを有効成分とすることを特徴とする香気付与乃至増強剤、甘味付与乃至増強剤、および、該化合物を有効成分として含有する飲食品用香料組成物、ならびにこれらを含有させた飲食品である。
【0029】
本発明の有効成分である上記式(1)に示される化合物は、スパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様な香気を有しており、上記式(1)に示される化合物を香気付与目的で使用する場合は、飲食品に対し、質量基準で、上記式(1)に示される化合物として、一般に1ppm〜10000ppm、好ましくは5ppm〜5000ppm、より好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲で添加することができる。この濃度範囲で添加することにより、飲食品に香気を付与することができる。
【0030】
また、上記式(1)に示される化合物は、単独で使用した場合、またはショ糖などの甘味物質と併用した場合には、甘味付与乃至増強作用を有し、その効果が発揮される濃度は、飲食品の質量を基準として、1ppm〜10000ppm、好ましくは5ppm〜5000ppm、より好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲である。
【0031】
本発明の上記式(1)に示される化合物が相乗効果により甘味が増強される呈味素材としては、ショ糖(砂糖)、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、ガラクトース、マルチトース、トレハロースなどの糖類;アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム、グリチルリチン酸二ナトリウム、ソーマチン、サッカリンおよびその塩、羅漢果抽出物、甘草抽出物、レバウディオサイドA、ステビア抽出物、酵素処理ステビア抽出物、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどの高甘味度甘味料類;キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニット、還元水あめなどの糖アルコール類、およびこれらの任意の混合物などが例示できる。
【0032】
上記式(1)に示される化合物を飲食品に添加するには、上記式(1)に示される化合物そのもの、または、そのものの希釈液を飲食品に添加することもできるが、上記式(1)に示される化合物を有効成分として含有する香料組成物を調製し、その香料組成物を飲食品に添加することにより、飲食品に香気を付与することができる。また、飲食品に香気を付与し、かつ、香料組成物中に上記式(1)に示される化合物を有効成分として含有させ、その香料組成物を飲食品に添加することにより、飲食品に対し甘味を増強することができる。
【0033】
本発明の香料組成物は、上記式(1)に示される化合物を該香料組成物の質量を基準として、一般に1000ppm〜20%、好ましくは2000ppm〜10%、より好ましくは5000ppm〜5%の濃度で含有させことができる。
【0034】
さらに、この香料組成物を、飲食品に対し香気を付与する場合には、0.01%〜1%程度添加して、飲食品に対する上記式(1)に示される化合物の添加濃度として、その飲食品中に、質量を基準として1ppm〜10000ppm、好ましくは5ppm〜5000ppm、より好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲となるように添加することができる。その結果、飲食品に、上記式(1)に示される化合物が有効成分として作用し、飲食品にスパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様といった香気を付与できる。
【0035】
また、この香料組成物を、飲食品に対し、甘味を増強する場合には、0.01%〜1%程度添加して、飲食品に対する上記式(1)に示される化合物の添加濃度として、その飲食品の質量を基準として、1ppm〜10000ppm、好ましくは5ppm〜5000ppm、より好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲となるように添加することができる。その結果、飲食品に対する、上記式(1)に示される化合物が有効成分として作用し、飲食品の甘味を増強することができる。
【0036】
飲食品に対する上記式(1)に示される化合物の添加濃度が1ppm未満である場合には飲食品に対する香気付与効果や飲食品に対する甘味の増強効果が乏しく、また、飲食品に対する上記式(1)に示される化合物の添加濃度が10000ppmを超えると、飲食品における、本化合物独特の香気が強すぎて好ましくない場合がある。また、飲食品としての呈味のバランスが崩れ、好ましくない可能性がある。
【0037】
前記香料組成物には上記式(1)に示される化合物以外にも一般的に使用できる他の香料成分を配合することができる。上記式(1)に示される化合物と共に含有し得る他の香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、動植物エキスなどを挙げることができる。他の香料成分としては「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、頁8−87、平成12年1月14日発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等を挙げることができる。
【0038】
これらの成分として、飲食品用香料の素材として、例えば、炭化水素化合物としてα−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなどの不飽和炭化水素;アルコール化合物としてブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの直鎖・飽和アルカノール類、プレノール、(Z)−3−ヘキセノール、2,6−ノナジエノール、(Z)−6−ノネノールなどの直鎖・不飽和アルコール類、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール類、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールなどの芳香族アルコール類;アルデヒド化合物としてアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、(Z)−3−ヘキセナール、2,4−オクタジエナール、(Z)−6−ノネナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド類、シトロネラール、シトラールなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピンなどの芳香族アルデヒド類、ケトン化合物として2−ヘプタノン、2−ヘキサノン、2−オクタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オンなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン類、アセトイン、ジアセチル、2,3−ペンタジオンなどの直鎖ジケトン類、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン類、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン類、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトン類;フラン・エーテル化合物としてフルフリルアルコール、フルフラール、ソトロン、ホモフラネオール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノンなどのフラン類、マルトール、エチルマルトールなどのピラン類、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどの環状エーテル類;エステル化合物として酢酸エチル、酢酸イソアミルなどの脂肪族アルコールの酢酸エステル類、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリルなどのテルペンアルコール酢酸エステル類、酪酸エチル、カプロン酸エチルなどの脂肪酸と低級アルコールエステル類、酢酸ベンジル、サリチル酸メチルなどの芳香族エステル類;ラクトン化合物としてγ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン類、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトン類;酸化合物として酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸類;含窒素化合物としてインドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチルなど;含硫化合物としてメタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。また、各種のエキスとしてハーブ・スパイス抽出物、コーヒー・緑茶・紅茶・ウーロン茶抽出物、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼ・プロテアーゼなどの酵素分解物も挙げられる。
【0039】
また、前記香料組成物には、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている保留剤として、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、グリセリン、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ハーコリン、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセリドなどを配合することができる。
【0040】
また、前記香料組成物に、例えば、キラヤ抽出物、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アラビアガムなどの乳化剤ないし安定剤の1種以上を配合して、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化することにより乳化香料製剤の形態とすることもできる。かかる乳化剤ないし安定剤の使用量は乳化剤ないし安定剤の種類等により異なるが、例えば、乳化香料製剤の質量を基準として0.1〜25重量%の範囲、好ましくは5〜20重量%の範囲内を挙げることができる。
【0041】
さらに、例えば、前記乳化香料製剤に砂糖、乳糖、ブドウ糖、トレハロース、セロビオース、水飴、還元水飴等の糖類;糖アルコール類;デキストリン等の各種デンプン分解物およびデンプン誘導体、デンプン、ゼラチン、アラビアガム等の天然ガム類などの賦形剤を適宜配合した後、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥などの適宜な乾燥手段により乾燥して粉末香料製剤の形態とすることもできる。これらの賦形剤の配合量は粉末香料製剤に望まれる特性等に応じて適宜に選択することができる。
【0042】
本発明の上記式(1)に示される化合物を単独で、または上記式(1)に示される化合物を有効成分とする香料組成物によって、スパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様な香気の増強、および苦味、渋味またはえぐ味を有さない甘味を増強することができる飲食品の具体例としては、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、ジンジャーエール、サイダーなどの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、ココア飲料、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、シャーベット、プリン、ゼリー、ムース、デイリーデザートなどのデザート類及びそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、チューインガム、ゼリービーンズ、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類及びそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;果実フレーバーソースやチョコレートソースなどのソース類;バタークリームや生クリームなどのクリーム類;イチゴジャムやマーマレードなどのジャム;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類、歯磨きなどの口腔用組成物を挙げることができる。
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:4−アルコキシシンナムアルデヒドの香気評価
4−エトキシシンナムアルデヒド(本発明品1)および4−イソプロポキシシンナムアルデヒド(本発明品2)を特表2000−507227号に記載されている合成反応に従って調製し、これらの1%エタノール溶液を香気評価の評価液として調製した。評価液をサンプル瓶に用意し、瓶口からの香気評価および評価液を含浸させたにおい紙により、よく訓練された5名のパネラーにより香気評価をおこなった。その平均的な評価を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例2:ストロベリー様の調合香料組成物
下記表2の処方により、ストロベリー様の調合香料組成物を調合した。
【0047】
【表2】
【0048】
上記ストロベリー様香料組成物(比較品1)98.0gに本発明品1または2を2.0g(2.0質量%)混合して新規なストロベリー様の調合香料組成物を調製した。比較品1に本発明品1を混合したものを本発明品3、比較品1に本発明品2を混合したものを本発明品4とした。本発明品1または2と比較品1について、専門パネラー5人により比較した。香気評価は香料組成物をサンプル瓶(30ml)に10ml用意し、瓶口からの香気評価、および、香料組成物を含浸させたにおい紙により、よく訓練された5名のパネラーにより比較を行った。その結果、専門パネラー5人の全員が、本発明品3または4は比較品1と比べて、いずれもフレッシュなストロベリーの特徴をとらえており、また、持続性の点でも格段に優れているとした。
【0049】
実施例3:ストロベリー様の調合香料組成物のシャーベットへの配合
実施例2で得られたストロベリー様調合香料組成物(比較品1または本発明品3)を下記処方のシャーベットに添加し、常法によりシャーベットを調製し、よく訓練された5名のパネラーが食して、官能評価を行った。
シャーベット配合処方(質量部)
砂糖:10、 水飴(75%):6、 果糖ぶどう糖液糖(75%):5、クエン酸(結晶):0.1、 1/5ストロベリー果汁: 10、 本発明品3(または比較品1):0.2、 水にて合計量を100とする。
【0050】
これらのシャーベットを、パネラー5人により官能評価を行った。その結果、パネラー5人全員が、本発明品3を添加したシャーベットは比較品1を添加したシャーベットに比べて、フレッシュなストロベリーの特徴が強調されており、呈味についても甘味が強いと評価した。
【0051】
実施例4:甘味の確認
4−エトキシシンナムアルデヒド(本発明品1)および4−イソプロポキシシンナムアルデヒド(本発明品2)をエタノールに希釈して10質量%エタノール溶液とし、これを水で希釈して表3に示す濃度の本発明品1および2を溶解した溶液を調製した。また、比較品として4−メトキシシンナムアルデヒド(比較品2)を、本発明品1および2と同様の方法で希釈し、表3に示す濃度の溶液を調製した。無添加の水をコントロール品として、本発明品1、2および比較品2を溶解した溶液を、よく訓練された10名のパネラーにより味わうことにより、甘味についての官能評価を行った。
【0052】
甘味評点は、水をコントロール品として、0:コントロールと変化なし、1:コントロールより少し甘味を感じる、2:コントロールより甘味を感じる、3:コントロールより強く甘味を感じる、4:甘味が強すぎるため呈味のバランスが悪い、として採点した。そのパネラー10名の平均点を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示した通り、本発明品1および2の10質量%エタノール溶液を水に希釈した場合に、その水溶液は甘味を有していた。また、その濃度としては、質量を基準として、10ppm〜5000ppmの範囲内で甘味が感じられ、特に25ppm〜1000ppm程度で良好な甘味が感じられることが分かった。
【0055】
一方、比較品2の10質量%エタノール溶液を水に希釈した場合も、その水溶液は甘味を有していた。また、その濃度としては、質量を基準として、50ppm〜10000ppmの範囲内で甘味が感じられ、特に100ppm〜5000ppm程度で良好な甘味が感じられることが分かった。
【0056】
実施例5:砂糖水との比較
実施例4と同様の方法で、本発明品1、2および比較品2の50ppm水溶液を調製し、また別途1−10質量%の砂糖水を0.5質量%きざみで用意した。本発明品1、2および比較品2の50ppm水溶液が、1−10質量%の砂糖水のどれと同等の甘さであるかを、よく訓練された10名のパネラーにより判定した。その結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4の結果より、比較品2にくらべて本発明品1および2は、より強い甘味を有することが分かった。比較品2については、砂糖水1質量%より低濃度であるとするパネラーも存在した。また、本発明品1および2は砂糖と比べて1/200−1/1000程度の低濃度で甘味を有することも立証された。
【0059】
実施例6:甘味増強効果の確認
3質量%砂糖水溶液と、これに、本発明品1および2を50ppm加えた砂糖水溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、甘味についての官能評価を行った。その結果、5名全員が、本発明品1および2を50ppm加えた砂糖水溶液の方が、3質量%砂糖水溶液と比較して甘味が強いという評価であった。
【0060】
実施例7:オレンジジュースの甘味増強
市販の果汁100%のオレンジジュースに、本発明品1および2を50ppmとなるように添加したオレンジジュースを得た。これらをよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、甘味についての官能評価を行った。その結果、本発明品1および2を50ppmとなるように添加したオレンジジュースの方が無添加の果汁100%のオレンジジュースと比較して甘味が強いという評価であった。
【0061】
実施例8:加糖牛乳による甘味評価
以下の表5に示すように、加糖牛乳基材に本発明品1、2および比較品2の10質量%エタノール溶液を配合し、加糖牛乳を調製した。加糖牛乳については、無添加品を参考品1、本発明品1を配合したものを本発明品5、本発明品2を配合したものを本発明品6、比較品2を配合したものを比較品3とした。
【0062】
【表5】
【0063】
前記の方法で調製した加糖牛乳について、参考品1を対象としてよく訓練されたパネラー10名により甘味評価を行った。甘味評価は、参考品1、本発明品5、6および比較品3を試飲することにより評価した。甘味評点は、参考品1と比較して、−1:甘味が劣化している、0:大差なし、1:わずかながら甘味が強い、2:甘味が強い、3:著しく甘味が強い、として採点した。パネラー10名の平均点を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
表6の結果より、加糖牛乳基材に本発明品1および2を添加した、本発明品5および6は加糖牛乳の甘味を増強する効果があることが示され、よって本発明品1および2の甘味増強効果が示された。一方で、加糖牛乳基材に比較品2を添加した比較品3は、加糖牛乳の甘味を増強する効果がほとんどないことが示された。
【要約】
【課題】飲食品に添加した場合に好ましい香気を付与乃至増強し、また、飲食品に添加した場合には香気に加え、甘味を付与乃至増強する香料化合物を提供すること。
【解決手段】4−アルコキシシンナムアルデヒドは該化合物を有効成分として飲食品に添加することによりスパイシー、ワキシー、ファッティー、グリーン、メタリック様といった香気が付与される。さらに、該化合物を有効成分として飲食品に添加した場合には甘味の付与乃至増強効果を有する。
【選択図】なし