【実施例】
【0021】
本発明の実施の形態に係る土壌成分の簡易測定方法について、
図1乃至
図8を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の工程図である。
図2及び
図3は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法を構成する各工程において、それぞれ作成される試料を示す流れ図である。
図1に示すように、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法1は、土壌に含有される成分を簡易に測定する土壌成分の簡易測定方法であって、ステップS1の抽出工程と、ステップS2の分注工程と、ステップS3の試薬投与工程と、ステップS4の植物性微小生物投入工程と、ステップS5の植物性微小生物培養工程と、ステップS6の測定工程と、ステップS7の推定工程を備える。
これに加え、土壌成分の簡易測定方法1は、ステップS1の抽出工程とステップS2の分注工程の間に、ステップS1−1の加熱工程とステップS1−2の濾過工程を備える。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0022】
図2に示すように、まず、ステップS1の抽出工程においては、1(kg)の土壌2と、3(L)の水3を混合し、この水3の中へ土壌2に含有される水可溶性の成分を抽出して抽出液Aを作成する。
【0023】
次に、ステップS1−1の加熱工程において、抽出液Aを80(℃)で約5分間加熱する。これにより、水3への成分の溶出が促進されるとともに、土壌2中の微生物や原虫等の小動物が死滅し、その影響が排除される。
【0024】
さらに、ステップS1−2の濾過工程において、フィルターを用いる等の公知技術によって抽出液Aを濾過し、原液Bと、これを水3で10倍に希釈した希釈液Cを作成する。なお、この希釈液Cは、ステップS5の植物性微小生物培養工程において、植物性微小生物の培養に適した原液Bの濃度と、後述する試薬R
1〜R
8の濃度の組み合わせを決定するための予備実験用液として作成されるものであるため、最適な上記組み合わせが既知である場合は、必ずしも作成されなくても良い。
【0025】
続いて、ステップS2の分注工程において、常温に冷却した原液Bを、それぞれ100(mL)の同一容量に分注して基準検体B
0及び測定検体B
1〜B
n(nは、自然数)を作成する。常温に冷却した希釈液Cについても同様に、これを、それぞれ100(mL)の同一容量に分注して希釈基準検体C
0及び希釈測定検体C
1〜C
nを作成する。さらに、水3を80(℃)で約5分間加熱後、常温に冷却した100(mL)の水検体W(図示せず)も作成する。なお、測定検体B
1〜B
n及び希釈測定検体C
1〜C
nの個数は、後のステップS3の試薬投与工程で投与する試薬の種類以上がそれぞれ必要である。
【0026】
そして、
図3に示すように、ステップS3の試薬投与工程において、測定検体B
1〜B
nへ、8種類(n=8)の化合物から構成される試薬R
1〜R
8(図示せず)を、その種類毎にそれぞれ投与して試薬検体D
1〜D
8を作成する。また、試薬R
1〜R
8の種類及び濃度は、
図4(a)に示すクノップ液やMS培地の構成及び濃度を参考とした。
【0027】
図4は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法で使用した試薬の種類及び投与量等を示す表である。
図4に示すように、試薬R
1〜R
8をそれぞれ構成する元素又は化合物は、NaNO
3,NH
4NO
3,KH
2PO
4,KCl,CaCl
2・2H
2O,MgSO
4・7H
2O,灰,Fe
2+である。
また、測定検体B
1〜B
8へ投与する試薬R
1〜R
8の投与量は、「試薬R
1〜R
8の投与量(希釈せず)」に示すとおりである。このうち、試薬R
7(灰を含む)は、10(g)の植物木灰を100(mL)の水に溶解して作成される。この植物木灰とは、植物の多量必須元素であるカリウム、カルシウム、マグネシウム、等や、微量必須元素であるマンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素、鉄等を含有する混合物である。そして、試薬R
8(Fe
2+を含む)は、鉄材と少量のクエン酸を混ぜ、糊で封じたものである。
【0028】
さらに、
図3に示すように、ステップS3の試薬投与工程においては、測定検体B
1〜B
8へ、試薬R
1〜R
8を水3で10倍希釈した試薬R
1´〜R
8´を、その種類毎にそれぞれ投与して試薬検体D´
1〜D
8´を作成する。試薬R
1´〜R
8´の投与量は、
図4に示す「試薬R
1´〜R
8´の投与量(10倍希釈)」に示すとおりである。
【0029】
同様に、ステップS3の試薬投与工程においては、希釈測定検体C
1〜C
8へ、試薬R
1〜R
8を、その種類毎にそれぞれ投与して希釈試薬検体E
1〜E
8(図示せず)を作成する。さらに、試薬R
1´〜R
8´を、その種類毎にそれぞれ投与して希釈試薬検体E
1´〜E
8´(図示せず)を作成する。
したがって、以下の表1に示すように、原液Bと、希釈液Cと、試薬R
1〜R
8と、試薬R
1´〜R
8´の組み合わせによって、試薬検体D
1〜D
8,D
1´〜D
8´と、希釈試薬検体E
1〜E
8,E
1´〜E
8´が作成される。
【0030】
【表1】
【0031】
続いて、ステップS4の植物性微小生物投入工程においては、基準検体B
0及び試薬検体D
1〜D
8,D
1´〜D
8´と、希釈基準検体C
0及び希釈試薬検体E
1〜E
8,E
1´〜E
8´へ、同一の投入数量の植物性微小生物をそれぞれ投入して微小生物基準検体AB
0及び微小生物試薬検体AD
1〜AD
8,AD
1´〜AD
8´と、微小生物希釈基準検体AC
0及び微小生物希釈試薬検体AE
1〜AE
8(図示せず),AE
1´〜AE
8´(図示せず)を作成する。また、水検体Wに対しても、上記の同一の投入数量の植物性微小生物を投入し、微小生物水検体AW(図示せず)を作成する。この植物性微小生物は、具体的には市販のクロレラ原液に含まれるクロレラ4である。また、投入数量は、いずれも1.0(mL)である。
【0032】
そして、ステップS5の植物性微小生物培養工程においては、微小生物基準検体AB
0及び微小生物試薬検体AD
1〜AD
8,AD
1´〜AD
8´と、微小生物希釈基準検体AC
0及び微小生物希釈試薬検体AE
1〜AE
8,AE
1´〜AE
8´と、微小生物水検体AW中の植物性微小生物を、いずれも同一の日照量と同一の気温10℃〜30℃の条件下で培養して培養基準検体BB
0及び培養試薬検体BD
1〜BD
8,BD
1´〜BD
8´と、培養希釈基準検体BC
0及び培養希釈試薬検体BE
1〜BE
8(図示せず),BE
1´〜BE
8´(図示せず)と、培養水検体BW(図示せず)を作成する。
【0033】
その後、ステップS6の測定工程において、培養基準検体BB
0の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NB
0(個)と、培養試薬検体BD
1〜BD
8,BD
1´〜BD
8´の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数ND
1〜ND
8,ND
1´〜ND
8´(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
同様に、培養希釈基準検体BC
0の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NC
0(個)と、と、培養希釈試薬検体BE
1〜BE
8,BE
1´〜BE
8´の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NE
1〜NE
8,NE
1´〜NE
8´(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
さらに、培養水検体BWの一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NW(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
この測定手段は、顕微鏡(図示せず)と、この顕微鏡を用いてクロレラ4の個体数をそれぞれ計数するためのセルカウンター5からなる。このセルカウンター5は、プレパラートに複数本のグリッド線が格子状に刻設されたものである。
具体的には、セルカウンター5上に、培養基準検体BB
0及び培養試薬検体BD
1〜BD
8,BD
1´〜BD
8´と、培養希釈基準検体BC
0及び培養希釈試薬検体BE
1〜BE
8,BE
1´〜BE
8´と、培養水検体BWを、それぞれ同一の一定量Lとして0.02(mL)滴下し、その中に含まれるクロレラ4の個体数を顕微鏡下で計数する。その結果を、
図5乃至
図8に示す。
【0034】
図5は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す表である。
図6及び
図7は、それぞれ実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す折れ線グラフである。
なお、比較例1は、試薬検体D
1´,D
3´〜D
5´にそれぞれ含まれる試薬R
1´,R
3´〜R
5´の濃度(mg/L)を、機器分析で分析した結果である。比較例2は、試薬検体D
6〜D
8に含まれる試薬R
6〜R
8の濃度(mg/L)を、機器分析で分析した結果である。このように、比較例を試薬検体D
1´,D
3´〜D
5´と試薬検体D
6〜D
8に分けて測定した理由は、試薬R
6´〜R
8´の濃度が、機器分析の検出限界以下(ND)となったため、その代わりとして試薬R
6〜R
8の濃度を測定したことによる。
また、比較例1,2において、それぞれ試薬R
2,R
2´の濃度が測定されていないが、これは試薬R
1と試薬R
2はいずれも窒素化合物であるため、試薬R
2の濃度の測定を省略したものである。試薬R
1´と試薬R
2´においても同様の理由により、試薬R
2´の濃度の測定を省略した。そして、試薬R
7に含まれる植物木灰は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄といった複数種類の元素を含有する混合物であるため、これらの元素毎に測定した濃度を合計して試薬R
7の濃度とした。
図5に示すように、水3における個体数NWは17(個)であって、クロレラ4は殆ど増殖していない。また、原液Bにおける個体数NB
0は、161(個)である。そして、希釈液Cにおける個体数NC
0は、261(個)である。
また、比較例2の試薬検体D
1,D
3〜D
5における試薬R
1,R
3〜R
5の濃度は、比較例1における試薬検体D
1´,D
3´〜D
5´における試薬R
1´,R
3´〜R
5´の濃度を、いずれも10倍して得られた計算値である。
【0035】
また、
図6は、横軸は試薬R
1〜R
5又は試薬R
1´〜R
5´を構成する元素又は化合物を表し、一方の縦軸はクロレラ4の個体数を表し、他方の縦軸は比較例1の測定結果を表わす。
図6に示すように、試薬R
1〜R
5又は試薬R
1´〜R
5´において、培養試薬検体BD
1〜BD
5の個体数ND
1〜ND
5(実線)と、培養試薬検体BD
1´〜BD
5´の個体数ND
1´〜ND
5´(点線)は、折れ線の形状が同様な傾向を示している。しかし、培養希釈試薬検体BE
1〜BE
5の個体数NE
1〜NE
5(破線)と、培養希釈試薬検体BE
1´〜BE
5´の個体数NE
1´〜NE
5´(1点鎖線)は、上記の2グループよりも試薬R
1〜R
5においていずれも少ない傾向にある。また、比較例1の測定結果(長破線)は、培養試薬検体BD
1〜BD
5,BD
1´〜BD
5´と同様な傾向を示している。
【0036】
さらに、
図7は、横軸は試薬R
6〜R
8又は試薬R
6´〜R
8´を構成する元素又は化合物を表し、一方の縦軸はクロレラ4の個体数を表し、他方の縦軸は比較例2の測定結果を表わす。
図7に示すように、試薬R
6〜R
8又は試薬R
6´〜R
8´において、培養試薬検体BD
6〜BD
8の個体数ND
6〜ND
8(実線)と、培養試薬検体BD
6´〜BD
8´の個体数ND
6´〜ND
8´(点線)と、培養希釈試薬検体BE
1〜BE
5の個体数NE
1〜NE
5(破線)は、折れ線の形状が同様に上に凸となっている。しかし、培養希釈試薬検体BE
1´〜BE
5´の個体数NE
1´〜NE
5´(1点鎖線)は、折れ線の形状が逆の下に凸となっている。また、比較例2の測定結果(長破線)は、培養試薬検体BD
1〜BD
5,BD
1´〜BD
5´、培養希釈試薬検体BE
1〜BE
5と同様に上に凸となっている。
【0037】
そこで、次に、培養試薬検体BD
1,BD
3〜BD
5のクロレラ4の個体数ND
1,ND
3〜ND
5と比較例2の測定結果との相関、及び培養試薬検体BD
1´,BD
3´〜BD
5´のクロレラ4の個体数ND
1´,ND
3´〜ND
5´と比較例1の測定結果との相関を求めてみる。
図8(a)は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果の相関を示す散布図であって、横軸を比較例1,2の測定結果とし、縦軸にクロレラ4の個体数ND
1,ND
3〜ND
5,ND
1´,ND
3´〜ND
5´をプロットしたものである。
図8(a)に示すように、個体数ND
1,ND
3〜ND
5と比較例2の測定結果との相関係数(R
2の平方根)は、0.99であって、これらの間には、完全な相関がある。一方、個体数ND
1´,ND
3´〜ND
5´と比較例1の測定結果との相関係数は、0.37であって、これらの間には、弱い相関がある。
したがって、培養試薬検体BD
1〜BD
5の個体数ND
1,ND
3〜ND
5は、培養試薬検体BD
1,BD
3〜BD
5の微小生物投入前に対応する試薬検体D
1,D
3〜D
5に含まれる試薬R
1〜R
5の濃度を、正確に反映していることが分かった。
【0038】
さらに、培養試薬検体BD
6〜BD
8のクロレラ4の個体数ND
6〜ND
8と比較例2の測定結果との相関を求めてみる。
図8(b)は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果の相関を示す散布図であって、横軸を比較例2の測定結果とし、縦軸にクロレラ4の個体数ND
6〜ND
8をプロットしたものである。
図8(b)に示すように、個体数ND
6〜ND
8と比較例2の測定結果との相関係数(R
2の平方根)は、0.95であって、これらの間には、完全な相関がある。
よって、以降のステップS7の推定工程においては、培養試薬検体BD
1〜BD
8のクロレラ4の個体数ND
1〜ND
8を選択して不足成分の推定を行うこととする。
【0039】
最後に、ステップS7の推定工程においては、培養試薬検体BD
1〜BD
8のクロレラ4の個体数ND
1〜ND
8が培養基準検体BB
0のクロレラ4の個体数NB
0を超える場合における培養試薬検体BD
1〜BD
8中の元素又は化合物は、土壌に含有される成分のうち、クロレラ4の増殖において土壌中で不足した状態にある不足成分であると推定する。
図6及び
図7に示すように、個体数ND
1〜ND
8−個体数NB
0>0となり、土壌中で不足した状態にある不足成分と推定される元素又は化合物は、不足すると考えられる順に、R
7:灰(R
4:KClはR
7と同等),R
6:MgSO
4・7H
2Oである。
一方、クロレラ4の個体数ND
1〜ND
8が培養基準検体BB
0のクロレラ4の個体数NB
0より小さい場合(個体数ND
1〜ND
8−個体数NB
0<0)における培養試薬検体BD
1〜BD
8中の元素又は化合物は、何らかの理由からクロレラ4の増殖に寄与しないものと考えられる。このような化合物は、増殖に寄与しないと考えられる順に、R
3:KH
2PO
4,R
2:NH
4NO
3,R
5:CaCl
2・2H
2O,R
1:NaNO
3,R
8:Fe
2+である。
【0040】
以上説明したように、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4の増殖能力を利用することで、土壌中で不足した状態にある不足成分の種類と量を推定することができる。加えて、従来では、土壌の成分同士の相対的含有量を知るためには、専ら高価な分析機器を有する専門機関に依頼しなければならず費用と手間が嵩み、分析結果を得るまでに時間もかかるという不利益があったが、土壌成分の簡易測定方法1によれば、ステップS1の抽出工程乃至ステップS7の推定工程から、上記の依頼をすることなく土壌の成分を詳細に把握することが可能である。したがって、土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4を成分の相対的な含有量を示す指標として用いることで、高価な分析機器が不要でありながら、成分を簡易に測定可能である。
【0041】
さらに、土壌成分の簡易測定方法1によれば、ステップS5の植物性微小生物培養工程において、クロレラ4の培養は、クロレラ4の光合成が可能となるように一定量の光を照射することで足り、厳密な温度管理は不要である。また、ステップS6の測定工程において用いられる顕微鏡とセルカウンター5は、簡単に使用することができる。そのため、小規模農家であっても土壌成分の簡易測定方法1の導入が容易である。
【0042】
加えて、土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4の個体数は、試薬R
1〜R
8の濃度を正確に反映しているため、土壌に含有される成分やその相対的な含有量を精度良く把握することが可能である。したがって、土壌成分の簡易測定方法1によれば、作物を植え付ける都度、土壌中で不足する成分の種類を把握し、適切量を補充することができるので、作物の収量を増加させるとともに、海や湖沼における富栄養化を防止し、環境悪化の防止に寄与することが可能である。
【0043】
なお、本発明の土壌成分の簡易測定方法1は、本実施例に示すものに限定されない。例えば、クロレラ4以外の光合成を行う植物性微小生物が使用されても良い。具体的には、この植物性微小生物としては、ラン藻類、ケイ藻類のうち、単独生活をするものであれば特に限定されない。また、測定手段として、顕微鏡と、この顕微鏡の静止画像を撮影し、この画像上で自動的に植物性微小生物を計数する自動計数装置が使用されても良い。さらに、試薬R
1〜R
8以外の成分を有する試薬が使用されても良い。