特許第5964530号(P5964530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5964530
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】土壌成分の簡易測定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20160721BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   G01N33/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-79149(P2016-79149)
(22)【出願日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年4月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304022632
【氏名又は名称】株式会社 イチキン
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】川口 嘉美
(72)【発明者】
【氏名】大山 超
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138(JP,A)
【文献】 特開2010−46020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−1/70
G01N 33/24
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に含有される成分を簡易に測定する土壌成分の簡易測定方法であって、
前記土壌と水を混合し、この水の中へ前記成分を抽出して抽出液を作成する抽出工程と、
この抽出液を、それぞれ同一容量に分注して基準検体及び測定検体を作成する分注工程と、
この測定検体へ、少なくとも一種類の元素又は化合物から構成される試薬を、その種類毎に投与して試薬検体を作成する試薬投与工程と、
前記基準検体及び前記試薬検体へ、同一の投入数量の植物性微小生物をそれぞれ投入して微小生物基準検体及び微小生物試薬検体を作成する植物性微小生物投入工程と、
前記微小生物基準検体及び前記微小生物試薬検体中の前記植物性微小生物を、いずれも同一の条件下で培養して培養基準検体及び培養試薬検体を作成する植物性微小生物培養工程と、
前記培養基準検体の一定量当たりにおける前記植物性微小生物の第1の物理量と、前記培養試薬検体の一定量当たりにおける前記植物性微小生物の第2の物理量を、測定手段を用いてそれぞれ測定する測定工程と、
前記第2の物理量が前記第1の物理量を超える場合における前記培養試薬検体中の前記元素又は化合物は、前記成分のうち、前記植物性微小生物の増殖において前記土壌中で不足した状態にある不足成分であると推定する推定工程を備えることを特徴とする土壌成分の簡易測定方法。
【請求項2】
前記植物性微小生物は、クロレラであることを特徴とする請求項1記載の土壌成分の簡易測定方法。
【請求項3】
前記試薬は、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素、鉄及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の土壌成分の簡易測定方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の物理量は、それぞれ前記植物性微小生物の個体数であり、
前記測定手段は、顕微鏡と、この顕微鏡を用いて前記第1及び第2の物理量をそれぞれ計数するためのセルカウンターからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の土壌成分の簡易測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に含有される成分を測定する土壌成分の測定方法に係り、特に、植物性微小生物を成分の相対的な含有量を示す指標として用いることで、高価な分析機器が不要でありながら、成分を簡易に測定可能な土壌成分の簡易測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を生育させるための施肥方法としては、土壌に含有される植物の必須元素の成分を実際に分析することなく、市販の肥料を一律に投与することが行われてきた。
しかし、肥料を一律に投与することで、その成分によっては、土壌に既に含有されている成分と重複するために過剰投与となり、植物が病害虫に罹患し易くなるほか、富栄養化の原因ともなり得る。その一方で、特定の必須元素が不足し、植物の生育が不十分になってしまう場合もある。このように、従来の施肥方法によれば、作物の収量が低下したり、環境が悪化したりするという課題があった。
そこで、近年、土壌に含有される成分を正確に分析する技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「土壌養分分布解析方法」という名称で、圃場内各所毎の土壌養分の分布を解析する土壌養分分布解析方法に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、測定対象である圃場領域から複数点の土壌採取位置を特定し、各位置に対応する土壌サンプルを採取した後に、採取した土壌サンプルの質量を測定し、一定の倍率の水を加えて攪拌し、一定時間静止した後に、土壌サンプルが溶解した水の上澄みを各々分析計で分析することにより、各位置における土壌養分の分布を解析することを特徴とする。
このような特徴を有する土壌養分分布解析方法によれば、土壌養分の分布を正確に解析できるので、圃場領域のどの部分にどれだけの養分が不足しているかを確認することができ、これに伴った過不足のない土壌養分または防除用薬品の散布を行うことができる。さらに、例えば、カリウム、リン、窒素、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、苦土などを各要素別に表示できるので、圃場の管理者は各土壌養分の分布を容易に確認できる。
【0004】
次に、特許文献2には「土壌分析システム」という名称で、植生可能な土壌に改良するための土壌分析システムに関する発明が開示されている。
以下、特許文献2に開示された発明について説明する。特許文献2に開示された発明は、植生可能な土壌に改良するための土壌分析システムであって、土壌採取方法が定まっており、土壌の分析項目数が15項目以上あって、それぞれの項目について適正範囲値が設定されており、その結果、すべての分析値について解析を行って、適正値になるように肥料や土壌改良材の種類、施肥量の設定ができ、更に適正な土壌改良方法や植生工法を設定できることを特徴する。 このような特徴を有する土壌分析システムによれば、植生が困難な土壌においても、土壌の状態を正確に把握し、解析することで、必要な肥料や土壌改良材の種類や施肥量を設定することができる。更に土壌改良方法や植生工法の設定もできるため、適切な改良を実施することができ、土壌が健康な状態になり、植物も健康に育つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−316221号公報
【特許文献2】特開2006−343303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、切断部、質量測定部等からなる土壌養分分析システムを必要とすることから、比較的規模の小さい農家がこのシステムを導入することは費用面等から困難である場合が多い。たとえ導入した場合であっても、使用に習熟することや日々のメンテナンスを行うことは容易でないものと考えられる。
【0007】
次に、特許文献2に開示された発明においても、具体的な土壌分析システムの構成は不明であるが、15項目以上の項目について分析を行うことから、専ら分析の専門機関においてこの土壌分析システムが使用されるものと考えられる。したがって、例えば規模の小さな農家は、このような専門機関へ依頼を行うことになるので、分析結果を得るまでに時間がかかる上、依頼のための費用が嵩む可能性がある。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、大掛かりな分析機器が不要でありながら、土壌に含有される成分を簡易に測定可能な土壌成分の簡易測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、土壌に含有される成分を簡易に測定する土壌成分の簡易測定方法であって、土壌と水を混合し、この水の中へ成分を抽出して抽出液を作成する抽出工程と、この抽出液を、それぞれ同一容量に分注して基準検体及び測定検体を作成する分注工程と、この測定検体へ、少なくとも一種類の元素又は化合物から構成される試薬を、その種類毎に投与して試薬検体を作成する試薬投与工程と、基準検体及び試薬検体へ、同一の投入数量の植物性微小生物をそれぞれ投入して微小生物基準検体及び微小生物試薬検体を作成する植物性微小生物投入工程と、微小生物基準検体及び微小生物試薬検体中の植物性微小生物を、いずれも同一の条件下で培養して培養基準検体及び培養試薬検体を作成する植物性微小生物培養工程と、培養基準検体の一定量当たりにおける植物性微小生物の第1の物理量と、培養試薬検体の一定量当たりにおける植物性微小生物の第2の物理量を、測定手段を用いてそれぞれ測定する測定工程と、第2の物理量が第1の物理量を超える場合における培養試薬検体中の元素又は化合物は、成分のうち、植物性微小生物の増殖において土壌中で不足した状態にある不足成分であると推定する推定工程を備えることを特徴とする。
このような構成の発明において、水は、土壌に含有される成分が抽出され易く、かつ植物性微小生物の生息を妨害しないという理由によって使用される。また、試薬を構成する第2の元素又は化合物の種類は、土壌に含有され、植物の生長と何らかの関連性があると考えられるものであれば、特に限定されない。より具体的には、第2の元素又は化合物としては、例えば植物水耕栽培培養液であるクノップ液や、MS(ムラシゲスクーグ)培地を構成する植物の栄養素と共通する元素又は化合物が考えられる。
また、本発明において、植物性微小生物とは、光合成を行う植物性微小生物を指す。
【0010】
上記構成の発明においては、抽出工程から試薬投与工程までによって、土壌から抽出された成分と試薬がそれぞれ混合され、以降の植物性微小生物投入工程で投入される植物性微小生物を培養する際に用いる基準検体及び測定検体が作成される。なお、この測定検体は、例えば試薬が一種類の元素から構成される場合は、一種類作成される。また、試薬が複数種類の元素又は化合物からなる場合は、測定検体は、元素又は化合物の種類毎に複数種類作成される。したがって、試薬検体も、測定検体の種類に対応して作成される。
【0011】
次に、植物性微小生物培養工程において、微小生物基準検体中の植物性微小生物は、抽出された成分の影響を受けて増殖又は減少する可能性がある。一方、微小生物試薬検体中の植物性微小生物は、この成分と試薬の影響をそれぞれ受けて増殖又は減少する可能性がある。
そこで、測定工程において、培養基準検体の第1の物理量と、培養試薬検体の第2の物理量を測定することにより、前述した増殖又は減少を、試薬の種類と関連付けて知ることができる。
なお、第1及び第2の物理量とは、それぞれ植物性微小生物の個体数や重さ、色調等が考えられる。また、測定手段としては、植物性微小生物の個体数を計数する計数装置や、植物性微小生物の重さを計量する計量装置、あるいは植物性微小生物の色調あるいは葉緑素量を分析する比色分析装置等が考えられる。
【0012】
さらに、推定工程において、第2の物理量が第1の物理量を超える場合とは、第2の物理量−第1の物理量>0と表現される場合や、第2の物理量/第1の物理量>1と表現される場合をいう。
そして、第2の物理量が第1の物理量を超えるという結果は、土壌に含有される成分によってはそれほど増殖できなかった植物性微小生物が、試薬が投与されることによって、より多く増殖できたという事実を示すものである。すなわち、この場合の試薬を構成する元素又は化合物は、成分のうち、土壌中で不足した状態にある不足成分であると推定することができる。
【0013】
次に、第2の発明は、第1の発明において、植物性微小生物は、クロレラであることを特徴とする。
このような構成の発明において、クロレラは、淡水性単細胞緑藻類の総称であって、分裂速度は24時間で4分裂と速く、直径が2〜10μmのほぼ球形である。また、細胞中に葉緑素を有するために緑色を呈しており、特定が容易である。
したがって、上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、植物性微小生物培養工程において必要な培養時間が比較的短くなり、その大きさや色から、測定手段が光学顕微鏡の場合であっても簡単に計数される。
【0014】
続いて、第3の発明は、第1又は第2の発明において、試薬は、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素、鉄及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする。
このような構成の発明において、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムは、植物の多量必須元素である。一方、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素、鉄は、植物の微量必須元素である。なお、植物種によって必須元素は多少異なるものの、基本となる光合成活動は全く同じである。そして、植物性微小生物も光合成活動を行うことから、植物性微小生物の生育に必要な元素は、上記の多量必須元素及び微量必須元素と同一である。
したがって、上記構成の発明においては、第1又は第2の発明の作用に加えて、多量必須元素及び微量必須元素の種類毎の、植物性微小生物の増殖の有無が把握される。
【0015】
さらに、第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、第1及び第2の物理量は、それぞれ植物性微小生物の個体数であり、測定手段は、顕微鏡と、この顕微鏡を用いて第1及び第2の物理量をそれぞれ計数するためのセルカウンターからなることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第1乃至第3のいずれかの発明の作用に加えて、セルカウンター上に培養基準検体と培養試薬検体をそれぞれ同一量滴下し、これらの中に含まれる植物性微小生物の個数を、顕微鏡下で計数することにより、これらの個数が簡易に測定される。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、第1及び第2の物理量を測定することにより、土壌中で不足した状態にある不足成分を推定することができる。すなわち、従来は容易に知ることが困難であった土壌の成分同士の相対的含有量を把握することが可能になったため、追加投与すべき成分の種類や、投与すべきでない成分の種類を知ることが可能である。したがって、前述した肥料成分の過不足による問題を解消することができる。
さらに、第1の発明によれば、抽出工程乃至推定工程までの、高度な操作技術を要しない7工程によって不足成分を推定することができる。しかも、測定工程において用いられる測定手段は、植物性微小生物の個体数を計数する計数装置等といった比較的簡易な装置が使用されるため、必ずしも専門機関に分析を依頼する必要がない。したがって、第1の発明によれば、大掛かりな分析機器が不要でありながら、土壌に含有される成分を簡易に測定することができる。
【0017】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、必要な培養時間が比較的短くなることから、迅速に成分の測定結果を得ることができる。また、測定手段が光学顕微鏡の場合であっても容易に計数されるので、数え落としが発生せず、精度良く第1及び第2の物理量を測定することができる。
また、クロレラは、安価かつ容易に入手可能であるから、この点につき第2の発明を導入することに困難性はない。
【0018】
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、多量必須元素及び微量必須元素の種類毎の、植物性微小生物の増殖の有無が把握されることから、より詳細かつ正確に、土壌に含有される成分の構成を知ることができる。
【0019】
第4の発明によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加えて、顕微鏡とセルカウンターを用いて、植物性微小生物の個数を簡易に測定されるため、例えば、分析の専門家でない個人であっても第4の発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の工程図である。
図2】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法を構成する各工程において、それぞれ作成される試料を示す流れ図である。
図3】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法を構成する各工程において、それぞれ作成される試料を示す流れ図である。
図4】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法で使用した試薬の種類及び投与量等を示す表である。
図5】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す表である。
図6】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す折れ線グラフである。
図7】実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す折れ線グラフである。
図8】(a)及び(b)は、それぞれ実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果の相関を示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0021】
本発明の実施の形態に係る土壌成分の簡易測定方法について、図1乃至図8を用いて詳細に説明する。図1は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の工程図である。図2及び図3は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法を構成する各工程において、それぞれ作成される試料を示す流れ図である。
図1に示すように、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法1は、土壌に含有される成分を簡易に測定する土壌成分の簡易測定方法であって、ステップS1の抽出工程と、ステップS2の分注工程と、ステップS3の試薬投与工程と、ステップS4の植物性微小生物投入工程と、ステップS5の植物性微小生物培養工程と、ステップS6の測定工程と、ステップS7の推定工程を備える。
これに加え、土壌成分の簡易測定方法1は、ステップS1の抽出工程とステップS2の分注工程の間に、ステップS1−1の加熱工程とステップS1−2の濾過工程を備える。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0022】
図2に示すように、まず、ステップS1の抽出工程においては、1(kg)の土壌2と、3(L)の水3を混合し、この水3の中へ土壌2に含有される水可溶性の成分を抽出して抽出液Aを作成する。
【0023】
次に、ステップS1−1の加熱工程において、抽出液Aを80(℃)で約5分間加熱する。これにより、水3への成分の溶出が促進されるとともに、土壌2中の微生物や原虫等の小動物が死滅し、その影響が排除される。
【0024】
さらに、ステップS1−2の濾過工程において、フィルターを用いる等の公知技術によって抽出液Aを濾過し、原液Bと、これを水3で10倍に希釈した希釈液Cを作成する。なお、この希釈液Cは、ステップS5の植物性微小生物培養工程において、植物性微小生物の培養に適した原液Bの濃度と、後述する試薬R〜Rの濃度の組み合わせを決定するための予備実験用液として作成されるものであるため、最適な上記組み合わせが既知である場合は、必ずしも作成されなくても良い。
【0025】
続いて、ステップS2の分注工程において、常温に冷却した原液Bを、それぞれ100(mL)の同一容量に分注して基準検体B及び測定検体B〜B(nは、自然数)を作成する。常温に冷却した希釈液Cについても同様に、これを、それぞれ100(mL)の同一容量に分注して希釈基準検体C及び希釈測定検体C〜Cを作成する。さらに、水3を80(℃)で約5分間加熱後、常温に冷却した100(mL)の水検体W(図示せず)も作成する。なお、測定検体B〜B及び希釈測定検体C〜Cの個数は、後のステップS3の試薬投与工程で投与する試薬の種類以上がそれぞれ必要である。
【0026】
そして、図3に示すように、ステップS3の試薬投与工程において、測定検体B〜Bへ、8種類(n=8)の化合物から構成される試薬R〜R(図示せず)を、その種類毎にそれぞれ投与して試薬検体D〜Dを作成する。また、試薬R〜Rの種類及び濃度は、図4(a)に示すクノップ液やMS培地の構成及び濃度を参考とした。
【0027】
図4は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法で使用した試薬の種類及び投与量等を示す表である。
図4に示すように、試薬R〜Rをそれぞれ構成する元素又は化合物は、NaNO,NHNO,KHPO,KCl,CaCl・2HO,MgSO・7HO,灰,Fe2+である。
また、測定検体B〜Bへ投与する試薬R〜Rの投与量は、「試薬R〜Rの投与量(希釈せず)」に示すとおりである。このうち、試薬R(灰を含む)は、10(g)の植物木灰を100(mL)の水に溶解して作成される。この植物木灰とは、植物の多量必須元素であるカリウム、カルシウム、マグネシウム、等や、微量必須元素であるマンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素、鉄等を含有する混合物である。そして、試薬R(Fe2+を含む)は、鉄材と少量のクエン酸を混ぜ、糊で封じたものである。
【0028】
さらに、図3に示すように、ステップS3の試薬投与工程においては、測定検体B〜Bへ、試薬R〜Rを水3で10倍希釈した試薬R´〜R´を、その種類毎にそれぞれ投与して試薬検体D´〜D´を作成する。試薬R´〜R´の投与量は、図4に示す「試薬R´〜R´の投与量(10倍希釈)」に示すとおりである。
【0029】
同様に、ステップS3の試薬投与工程においては、希釈測定検体C〜Cへ、試薬R〜Rを、その種類毎にそれぞれ投与して希釈試薬検体E〜E(図示せず)を作成する。さらに、試薬R´〜R´を、その種類毎にそれぞれ投与して希釈試薬検体E´〜E´(図示せず)を作成する。
したがって、以下の表1に示すように、原液Bと、希釈液Cと、試薬R〜Rと、試薬R´〜R´の組み合わせによって、試薬検体D〜D,D´〜D´と、希釈試薬検体E〜E,E´〜E´が作成される。
【0030】
【表1】
【0031】
続いて、ステップS4の植物性微小生物投入工程においては、基準検体B及び試薬検体D〜D,D´〜D´と、希釈基準検体C及び希釈試薬検体E〜E,E´〜E´へ、同一の投入数量の植物性微小生物をそれぞれ投入して微小生物基準検体AB及び微小生物試薬検体AD〜AD,AD´〜AD´と、微小生物希釈基準検体AC及び微小生物希釈試薬検体AE〜AE(図示せず),AE´〜AE´(図示せず)を作成する。また、水検体Wに対しても、上記の同一の投入数量の植物性微小生物を投入し、微小生物水検体AW(図示せず)を作成する。この植物性微小生物は、具体的には市販のクロレラ原液に含まれるクロレラ4である。また、投入数量は、いずれも1.0(mL)である。
【0032】
そして、ステップS5の植物性微小生物培養工程においては、微小生物基準検体AB及び微小生物試薬検体AD〜AD,AD´〜AD´と、微小生物希釈基準検体AC及び微小生物希釈試薬検体AE〜AE,AE´〜AE´と、微小生物水検体AW中の植物性微小生物を、いずれも同一の日照量と同一の気温10℃〜30℃の条件下で培養して培養基準検体BB及び培養試薬検体BD〜BD,BD´〜BD´と、培養希釈基準検体BC及び培養希釈試薬検体BE〜BE(図示せず),BE´〜BE´(図示せず)と、培養水検体BW(図示せず)を作成する。
【0033】
その後、ステップS6の測定工程において、培養基準検体BBの一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NB(個)と、培養試薬検体BD〜BD,BD´〜BD´の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数ND〜ND,ND´〜ND´(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
同様に、培養希釈基準検体BCの一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NC(個)と、と、培養希釈試薬検体BE〜BE,BE´〜BE´の一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NE〜NE,NE´〜NE´(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
さらに、培養水検体BWの一定量L(mL)当たりにおけるクロレラ4の個体数NW(個)を、測定手段を用いてそれぞれ測定する。
この測定手段は、顕微鏡(図示せず)と、この顕微鏡を用いてクロレラ4の個体数をそれぞれ計数するためのセルカウンター5からなる。このセルカウンター5は、プレパラートに複数本のグリッド線が格子状に刻設されたものである。
具体的には、セルカウンター5上に、培養基準検体BB及び培養試薬検体BD〜BD,BD´〜BD´と、培養希釈基準検体BC及び培養希釈試薬検体BE〜BE,BE´〜BE´と、培養水検体BWを、それぞれ同一の一定量Lとして0.02(mL)滴下し、その中に含まれるクロレラ4の個体数を顕微鏡下で計数する。その結果を、図5乃至図8に示す。
【0034】
図5は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す表である。図6及び図7は、それぞれ実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果を示す折れ線グラフである。
なお、比較例1は、試薬検体D´,D´〜D´にそれぞれ含まれる試薬R´,R´〜R´の濃度(mg/L)を、機器分析で分析した結果である。比較例2は、試薬検体D〜Dに含まれる試薬R〜Rの濃度(mg/L)を、機器分析で分析した結果である。このように、比較例を試薬検体D´,D´〜D´と試薬検体D〜Dに分けて測定した理由は、試薬R´〜R´の濃度が、機器分析の検出限界以下(ND)となったため、その代わりとして試薬R〜Rの濃度を測定したことによる。
また、比較例1,2において、それぞれ試薬R,R´の濃度が測定されていないが、これは試薬Rと試薬Rはいずれも窒素化合物であるため、試薬Rの濃度の測定を省略したものである。試薬R´と試薬R´においても同様の理由により、試薬R´の濃度の測定を省略した。そして、試薬Rに含まれる植物木灰は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄といった複数種類の元素を含有する混合物であるため、これらの元素毎に測定した濃度を合計して試薬Rの濃度とした。
図5に示すように、水3における個体数NWは17(個)であって、クロレラ4は殆ど増殖していない。また、原液Bにおける個体数NBは、161(個)である。そして、希釈液Cにおける個体数NCは、261(個)である。
また、比較例2の試薬検体D,D〜Dにおける試薬R,R〜Rの濃度は、比較例1における試薬検体D´,D´〜D´における試薬R´,R´〜R´の濃度を、いずれも10倍して得られた計算値である。
【0035】
また、図6は、横軸は試薬R〜R又は試薬R´〜R´を構成する元素又は化合物を表し、一方の縦軸はクロレラ4の個体数を表し、他方の縦軸は比較例1の測定結果を表わす。
図6に示すように、試薬R〜R又は試薬R´〜R´において、培養試薬検体BD〜BDの個体数ND〜ND(実線)と、培養試薬検体BD´〜BD´の個体数ND´〜ND´(点線)は、折れ線の形状が同様な傾向を示している。しかし、培養希釈試薬検体BE〜BEの個体数NE〜NE(破線)と、培養希釈試薬検体BE´〜BE´の個体数NE´〜NE´(1点鎖線)は、上記の2グループよりも試薬R〜Rにおいていずれも少ない傾向にある。また、比較例1の測定結果(長破線)は、培養試薬検体BD〜BD,BD´〜BD´と同様な傾向を示している。
【0036】
さらに、図7は、横軸は試薬R〜R又は試薬R´〜R´を構成する元素又は化合物を表し、一方の縦軸はクロレラ4の個体数を表し、他方の縦軸は比較例2の測定結果を表わす。
図7に示すように、試薬R〜R又は試薬R´〜R´において、培養試薬検体BD〜BDの個体数ND〜ND(実線)と、培養試薬検体BD´〜BD´の個体数ND´〜ND´(点線)と、培養希釈試薬検体BE〜BEの個体数NE〜NE(破線)は、折れ線の形状が同様に上に凸となっている。しかし、培養希釈試薬検体BE´〜BE´の個体数NE´〜NE´(1点鎖線)は、折れ線の形状が逆の下に凸となっている。また、比較例2の測定結果(長破線)は、培養試薬検体BD〜BD,BD´〜BD´、培養希釈試薬検体BE〜BEと同様に上に凸となっている。
【0037】
そこで、次に、培養試薬検体BD,BD〜BDのクロレラ4の個体数ND,ND〜NDと比較例2の測定結果との相関、及び培養試薬検体BD´,BD´〜BD´のクロレラ4の個体数ND´,ND´〜ND´と比較例1の測定結果との相関を求めてみる。
図8(a)は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果の相関を示す散布図であって、横軸を比較例1,2の測定結果とし、縦軸にクロレラ4の個体数ND,ND〜ND,ND´,ND´〜ND´をプロットしたものである。
図8(a)に示すように、個体数ND,ND〜NDと比較例2の測定結果との相関係数(Rの平方根)は、0.99であって、これらの間には、完全な相関がある。一方、個体数ND´,ND´〜ND´と比較例1の測定結果との相関係数は、0.37であって、これらの間には、弱い相関がある。
したがって、培養試薬検体BD〜BDの個体数ND,ND〜NDは、培養試薬検体BD,BD〜BDの微小生物投入前に対応する試薬検体D,D〜Dに含まれる試薬R〜Rの濃度を、正確に反映していることが分かった。
【0038】
さらに、培養試薬検体BD〜BDのクロレラ4の個体数ND〜NDと比較例2の測定結果との相関を求めてみる。
図8(b)は、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法の測定結果と、比較例の測定結果の相関を示す散布図であって、横軸を比較例2の測定結果とし、縦軸にクロレラ4の個体数ND〜NDをプロットしたものである。
図8(b)に示すように、個体数ND〜NDと比較例2の測定結果との相関係数(Rの平方根)は、0.95であって、これらの間には、完全な相関がある。
よって、以降のステップS7の推定工程においては、培養試薬検体BD〜BDのクロレラ4の個体数ND〜NDを選択して不足成分の推定を行うこととする。
【0039】
最後に、ステップS7の推定工程においては、培養試薬検体BD〜BDのクロレラ4の個体数ND〜NDが培養基準検体BBのクロレラ4の個体数NBを超える場合における培養試薬検体BD〜BD中の元素又は化合物は、土壌に含有される成分のうち、クロレラ4の増殖において土壌中で不足した状態にある不足成分であると推定する。
図6及び図7に示すように、個体数ND〜ND−個体数NB>0となり、土壌中で不足した状態にある不足成分と推定される元素又は化合物は、不足すると考えられる順に、R:灰(R:KClはRと同等),R:MgSO・7HOである。
一方、クロレラ4の個体数ND〜NDが培養基準検体BBのクロレラ4の個体数NBより小さい場合(個体数ND〜ND−個体数NB<0)における培養試薬検体BD〜BD中の元素又は化合物は、何らかの理由からクロレラ4の増殖に寄与しないものと考えられる。このような化合物は、増殖に寄与しないと考えられる順に、R:KHPO,R:NHNO,R:CaCl・2HO,R:NaNO,R:Fe2+である。
【0040】
以上説明したように、実施例に係る土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4の増殖能力を利用することで、土壌中で不足した状態にある不足成分の種類と量を推定することができる。加えて、従来では、土壌の成分同士の相対的含有量を知るためには、専ら高価な分析機器を有する専門機関に依頼しなければならず費用と手間が嵩み、分析結果を得るまでに時間もかかるという不利益があったが、土壌成分の簡易測定方法1によれば、ステップS1の抽出工程乃至ステップS7の推定工程から、上記の依頼をすることなく土壌の成分を詳細に把握することが可能である。したがって、土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4を成分の相対的な含有量を示す指標として用いることで、高価な分析機器が不要でありながら、成分を簡易に測定可能である。
【0041】
さらに、土壌成分の簡易測定方法1によれば、ステップS5の植物性微小生物培養工程において、クロレラ4の培養は、クロレラ4の光合成が可能となるように一定量の光を照射することで足り、厳密な温度管理は不要である。また、ステップS6の測定工程において用いられる顕微鏡とセルカウンター5は、簡単に使用することができる。そのため、小規模農家であっても土壌成分の簡易測定方法1の導入が容易である。
【0042】
加えて、土壌成分の簡易測定方法1によれば、クロレラ4の個体数は、試薬R〜Rの濃度を正確に反映しているため、土壌に含有される成分やその相対的な含有量を精度良く把握することが可能である。したがって、土壌成分の簡易測定方法1によれば、作物を植え付ける都度、土壌中で不足する成分の種類を把握し、適切量を補充することができるので、作物の収量を増加させるとともに、海や湖沼における富栄養化を防止し、環境悪化の防止に寄与することが可能である。
【0043】
なお、本発明の土壌成分の簡易測定方法1は、本実施例に示すものに限定されない。例えば、クロレラ4以外の光合成を行う植物性微小生物が使用されても良い。具体的には、この植物性微小生物としては、ラン藻類、ケイ藻類のうち、単独生活をするものであれば特に限定されない。また、測定手段として、顕微鏡と、この顕微鏡の静止画像を撮影し、この画像上で自動的に植物性微小生物を計数する自動計数装置が使用されても良い。さらに、試薬R〜R以外の成分を有する試薬が使用されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、土壌に含有される成分を簡易に測定可能な土壌成分の簡易測定方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…土壌成分の簡易測定方法 2…土壌 3…水 4…クロレラ 5…セルカウンター
【要約】
【課題】大掛かりな分析機器が不要でありながら、土壌に含有される成分を簡易に測定可能な土壌成分の簡易測定方法を提供する。
【解決手段】土壌成分の簡易測定方法1は、土壌に含有される成分を簡易に測定する土壌成分の簡易測定方法であって、ステップS1の抽出工程と、ステップS2の分注工程と、ステップS3の試薬投与工程と、ステップS4の植物性微小生物投入工程と、ステップS5の植物性微小生物培養工程と、ステップS6の測定工程と、ステップS7の推定工程を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8