(54)【発明の名称】貫通孔を有する歯科用被切削体から歯科修復物を製造する歯科修復物製造システム、該システムの動作方法、該システム用プログラム、及び、該システムで使用する歯科用被切削体
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、歯科修復物の切削加工のスピード化が図られ、できるだけ早く歯科修復物を切削加工する方法が求められている。しかしながら、特許文献1乃至特許文献3には、切削時間を短縮するための知見についての記載はない。これらの従来技術における歯科修復物の切削加工の手法においては、特に特許文献3のような、円柱や四角柱の形態の従来の歯科用被切削体では、切削加工するにあたり、特に、穿孔時に時間を要しており、また切削工具の破損も発生していた。そのため、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体から歯科修復物を製造する歯科修復物製造システムであって、前記1以上の貫通孔の位置データを含む歯科用被切削体の形状の歯科用被切削体形状データと、製造する歯科修復物の形体の歯科修復物形体データとを取り込むデータ取り込み部と、前記歯科用被切削体形状データと前記歯科修復物形体データとに基づいて、前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する重ね合わせデータ作成部と、前記重ね合わせデータに基づいて歯科用被切削体の切削を制御する制御部と、を備え、前記重ね合わせデータ作成部は、前記歯科修復物が貫通孔を有さない場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記重ね合わせデータ作成部は、前記歯科修復物が貫通孔を有する場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体及び前記歯科修復物が有する貫通孔が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせるか、または、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分が、当該少なくとも一つの貫通孔よりも大きい、前記歯科修復物が有する貫通孔内に含まれるように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記制御部は、前記歯科用被切削体の貫通孔から切削加工を開始するように切削を制御する歯科修復物製造システムである。本発明の歯科修復物製造システムによれば、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができる。
本明細書において歯科修復物とは、歯科修復物としての最終形態を有するものだけではなく、歯科修復物の製造における中間体の形体を有するものを含みうるものである。
本明細書において貫通孔部分に、歯科修復物の形体及び歯科修復物が有する貫通孔が「重ならない」とは、貫通孔部分に歯科修復物の形体及び歯科修復物が有する貫通孔が外接する態様を含みうるものである。
【0007】
本発明は、上述の歯科修復物製造システムで使用される1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体であって、前記歯科用被切削体は、高さ1.0〜3.0cm、直径6.0〜15.0cmの大きさの円柱形状を有し、円形状の面の中心を含む位置に前記貫通孔が設けられた円柱ディスク形状、又は、高さ1.0〜3.0cm、一辺6.0〜15.0cmの大きさの四角柱形状を有し、一辺6.0〜15.0cmの四角形状の中心を含む位置に前記貫通孔が設けられた四角柱ディスク形状を有する歯科用被切削体とすることができる。本発明の歯科用被切削体によれば、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができる。
【0008】
本発明は、上述の歯科修復物製造システムで使用される1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体であって、前記歯科用被切削体は、1〜2×1〜2×1〜6cmの大きさの四角柱形状を有し、長手方向の一端から、長手方向の寸法の1〜10%離れた位置に前記貫通孔が設けられた四角柱ブロック形状、又は、高さ1〜6cm、直径1〜2cmの大きさの円柱形状を有し、高さ方向の一端から、高さ方向の寸法の1〜10%離れた位置に前記貫通孔が設けられた円柱ブロック形状を有する歯科用被切削体とすることができる。本発明の歯科用被切削体によれば、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができる。
【0009】
本発明は、1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体から歯科修復物を製造する歯科修復物製造システムの動作方法であって、前記1以上の貫通孔の位置データを含む歯科用被切削体の形状の歯科用被切削体形状データと、製造する歯科修復物の形体の歯科修復物形体データとを取り込むデータ取り込み工程と、前記歯科用被切削体形状データと前記歯科修復物形体データとに基づいて、前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する重ね合わせデータ作成工程と、前記重ね合わせデータに基づいて歯科用被切削体を切削する切削工程と、を含み、前記重ね合わせ工程は、前記歯科修復物が貫通孔を有さない場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記重ね合わせ工程は、前記歯科修復物が貫通孔を有する場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体及び前記歯科修復物が有する貫通孔が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせるか、または、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分が、当該少なくとも一つの貫通孔よりも大きい、前記歯科修復物が有する貫通孔内に含まれるように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記切削工程は、前記歯科用被切削体の貫通孔から切削加工を開始する歯科修復物製造システムの動作方法である。本発明の歯科修復物製造システムの動作方法によれば、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができる。
【0010】
本発明は、1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体から歯科修復物を製造する歯科修復物製造システム用プログラムであって、前記1以上の貫通孔の位置データを含む歯科用被切削体の形状の歯科用被切削体形状データと、製造する歯科修復物の形体の歯科修復物形体データとを取り込むデータ取り込み部と、前記歯科用被切削体形状データと前記歯科修復物形体データとに基づいて、前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する重ね合わせデータ作成部と、前記重ね合わせデータに基づいて歯科用被切削体の切削を制御する制御部と、をコンピュータ内に実現し、前記重ね合わせデータ作成部は、前記歯科修復物が貫通孔を有さない場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記重ね合わせデータ作成部は、前記歯科修復物が貫通孔を有する場合には、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分に、前記歯科修復物の形体及び前記歯科修復物が有する貫通孔が重ならないように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせるか、または、前記歯科用被切削体の少なくとも一つの貫通孔部分が、当該少なくとも一つの貫通孔よりも大きい、前記歯科修復物が有する貫通孔内に含まれるように前記歯科用被切削体中に前記歯科修復物を重ね合わせ、前記制御部は、前記歯科用被切削体の貫通孔から切削加工を開始するように切削を制御する歯科修復物製造システム用プログラムである。本発明の歯科修復物製造システム用プログラムによれば、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
従来、ディスク状の歯科用被切削体では、切削加工機に装着されたときは周囲全てをジグで固定することから周囲から歯科用被切削体を切削加工することができなかった。しかし、本発明によれば、歯科用被切削体が有する貫通孔から切削を開始できるため、切削作業を短時間にすることができる。また、切削工具の先端部への負担が減り、切削工具を長時間使用できる。
外周壁を残して歯科用修復物を加工した場合は、より正確な歯科用修復物を得ることができる。
更にまた、角柱、円柱形のブロック状の歯科用被切削体の四角柱ブロックにおいても、従来は切削加工機に密着させて複数装着した場合でも周囲から歯科用被切削体を削ることができなかったが、本発明によれば、歯科用被切削体が有する貫通孔から切削を開始できるため、切削作業を短時間にすることができる。また、切削工具の先端部への負担が減り、切削工具を長時間使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の歯科修復物製造システム及び該システムで使用される1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体の一実施形態について詳細に説明をする。
図1には、本実施形態で使用される1以上の貫通孔を有する歯科用被切削体としての円柱ディスク形状の歯科用被切削体1が示されている。本発明の歯科修復物製造システムで使用される歯科用被切削体1は、どのような形状でも良く、例えば、四角柱ディスク、四角柱ブロック、円柱形ブロックなどの形状とすることができる。
図1の円柱ディスク形状の歯科用被切削体1の大きさは、高さ15mmで、直径98mmである。円柱ディスク形状の場合の歯科用被切削体1の大きさは、例えば、高さ1.0〜3.0cm、直径6.0〜15.0cmとすることができる。
【0014】
歯科用被切削体1は、貫通孔2を有している。本実施形態では、この貫通孔2は、製造する歯科修復物の最終形態に含まれないものである。すなわち、本実施形態における貫通孔2は、歯科修復物の製造における歯科用被切削体1の切削の際に、貫通孔2を構成する壁面の全てが切削されて、製造する歯科修復物の外面に残存しない。本実施形態では、円形状の上面1aの中央に、上面1aに対して垂直な直径3mmの貫通孔2を設けた。その結果、歯科用被切削体1の円周方向における設置方向を変更しても、同じ位置に貫通孔を維持することができる。特に、貫通孔の重心と歯科用被切削体の重心とが一致する様に貫通孔2を設けることがより好ましい。
【0015】
図2は、
図1と同様の円柱ディスク形状の歯科用被切削体1を示しているが、
図2の歯科用被切削体1では、円周面1bにCADCAM装置等の切削装置(図示せず)への取り付け溝3が設けられている。
【0016】
なお、歯科用被切削体1が、四角柱ディスク形状である場合には、例えば、高さが1.0〜3.0cm、一辺6.0〜15.0cmの大きさとすることができる。この場合も、四角柱ディスクの上面の中心付近に貫通孔を設けることが好ましく、貫通孔の重心と歯科用被切削体の重心とが一致する様に貫通孔を設けることがより好ましい。
【0017】
図1及び
図2においては、貫通孔2は、円柱状に形成されているが、例えば、円錐台形状とすることができる。このような貫通孔2の直径は、0.5mm〜20.0mmとすることができ、好ましくは1.0〜12.0mmであり、更に好ましくは2.0mm〜4.0mmである。容易に貫通孔に切削工具を挿入でき、切削工具の側面を用いて切削加工することができる。なお、貫通孔2は、三角柱、四角柱、多角柱形状としてもよい。
【0018】
図3には、四角柱ブロック形状の歯科用被切削体1が示されている。歯科用被切削体1が四角柱ブロック形状である場合には、例えば長手方向が18mm、その他は11×11mmの大きさとすることができる。なお、四角柱ブロック形状の場合には、一辺が1〜2×1〜2×1〜6cmの大きさとすることができる。なお
図3の四角柱ブロック形状の歯科用被切削体1には、
図3を見て右手方向の側面1cに切削装置に取り付けるためのジグZを設けている。また、
図3を見た上面1aに、上面1aに対して垂直な直径3mmの貫通孔2を、ジグZを設けた側面1cと対向する側面1dから1mm離れた部分に設けた。このように、ジグZを設けた面1dに対向する面1eの近傍、具体的には、面1eから被切削体1の長手方向の寸法の1〜10%離れた位置に貫通孔2を設けた結果、切削装置から離れた部分から切削を開始することができ、切削を容易に実施することができる。なお、歯科用被切削体1が円柱ブロック形状である場合には、高さ1〜6cm、直径1〜2の大きさとすることができる。この場合の、貫通孔の大きさ及び位置は、四角柱ブロック形状の場合と同様のものとすることができる。
【0019】
図4は、本実施形態の貫通孔2を有する歯科用被切削体1を切削する歯科修復物製造システムの機能を概略的に示すブロック図であり、
図5は、貫通孔2を有する歯科用被切削体1を切削する歯科修復物製造システムの処理工程の概要を示すフローチャートの一例である。
【0020】
図4に示すように、本実施形態の歯科修復物製造システム10は、インターネット回線等の通信回線に接続された複数のクライアント端末20及びデータベースサーバ(外部記憶装置)30を備えている。まず、クライアント端末20及びデータベースサーバ30の構成について説明する。
【0021】
本実施形態のクライアント端末20は、技工士や歯科医師等のクライアントにより操作されるものであり、任意の情報処理装置を使用することができるものである。本実施形態のクライアント端末20は、一般的なコンピュータであるパーソナルコンピュータとして構成されており、CPU(コンピュータプロセッサ)と、メインメモリと、ユーザI/Fと、通信I/Fと、ストレージと、を含み、これらの各構成要素がバスを介して互いに電気的に接続されている。クライアント端末20を構成するこれらの構成要素は、公知のものを使用することができる。
【0022】
本実施形態のデータベースサーバ30は、一般的なコンピュータとして構成されており、CPU(コンピュータプロセッサ)と、メインメモリと、ユーザI/Fと、通信I/Fと、ストレージと、ディスクドライブとを含み、これらの各構成要素がバスを介して互いに電気的に接続されている。データベースサーバ30を構成するこれらの構成要素は、公知のものを使用することができる。
【0023】
次に
図4に示す歯科修復物製造システムの機能の概略について説明をする。本実施形態のクライアント端末20は、技工士や歯科医師等のクライアント端末20の使用者が操作する入力部21と、データ記憶部22と、データ取り込み部23と、重ね合わせデータ作成部24と、制御部25と、表示部26と、通信部27と、を有する。これらの各機能は、クライアント端末20を構成する各構成要素が協働して動作することにより、例えば本発明の歯科修復物製造システム用プログラムを実行することによりクライアント端末20内に実現されるものである。
また、本実施形態のデータベースサーバ30は、データ記憶部31と、通信部32と、を有する。これらの各機能は、データベースサーバ30を構成する各構成要素が協働して動作することにより、データベースサーバ30内に実現されるものである。
【0024】
データ記憶部22は、貫通孔2の位置データを含む歯科用被切削体1の形状の歯科用被切削体形状データと、製造する歯科修復物の形体の歯科修復物形体データとを記憶する。データ記憶部22は、後述する重ね合わせデータを記憶してもよい。これらのデータは、通信部27を介して他のクライアント端末20及び/又はデータベースサーバ30から取得してもよく、各種記録媒体から読み込んでおくことにより、事前にデータ記憶部22に記憶させておいてもよい。
本明細書において歯科用被切削体形状データとは、貫通孔の位置データを含む歯科用被切削体の形体を示すデータであり、貫通孔の形体を示すデータを含むことが好ましい。
本明細書において歯科修復物形体データとは、歯科用被切削体から切削加工する歯科修復物の形状を示すデータである。歯科修復物形体データは、例えば、ワックスで作成した形状を3Dスキャナーで読み取ることや、標準的な形態の中から任意の形態を選び患者に合わせて修正することにより作成される。
【0025】
データ取り込み部23は、入力部21からの入力に基づいて歯科用被切削体形状データと、歯科修復物形体データとを取り込む。データ取り込み部23がデータを取り込む態様としては、例えば、使用者が歯科用被切削体形状データと、歯科修復物形体データとを指定し、指定された歯科用被切削体形状データと、歯科修復物形体データとを取り込むようにすることができる。この場合、歯科用被切削体形状データ及び歯科修復物形体データは、データ記憶部22から取り込むことができる。また、データ記憶部22に該当するデータが記憶されていない場合には、通信部27を介して他のクライアント端末20及び/又はデータベースサーバ30から歯科用被切削体形状データ及び歯科修復物形体データを取り込んでもよい。この場合、通信部27を介して取り込んだ歯科用被切削体形状データ及び歯科修復物形体データは、記憶部22に記憶させてもよい。
【0026】
データ取り込み部23がデータを取り込む他の態様としては、使用者が歯科修復物形体データのみを指定し、データ取り込み部23は、指定された歯科修復物形体データを取り込むとともに、この指定された歯科修復物形体データに基づいて、歯科修復物の製造に適切な1以上の歯科用被切削体を抽出し、抽出した1以上の歯科用被切削体の中から使用者が選択した歯科用被切削体形状データを取り込むようにすることができる。歯科修復物の製造に適切な歯科用被切削体の抽出は、データ記憶部22にデータが記憶された歯科用被切削体の中から行ってもよいし、他のクライアント端末20及び/又はデータベースサーバ30の記憶部にデータが記憶された歯科用被切削体を含めて行ってもよい。
【0027】
重ね合わせデータ作成部24は、データ取り込み部23が取り込んだ歯科用被切削体形状データと、歯科修復物形体データとに基づいて、歯科用被切削体1中に歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する。ここで、歯科用被切削体1の貫通孔2と、歯科修復物の形体が重なると、歯科用被切削体1の切削後に正しい形体の歯科修復物を得ることができない場合が生じうる。そこで、
図6及び
図7を用いて、重ね合わせデータ作成部24は、貫通孔2部分に歯科修復物の形体が重ならない様に、歯科用被切削体1の中に歯科修復物を重ね合わせる場合の重ね合わせデータの具体例について説明する。
【0028】
図6は、製造する歯科修復物が貫通孔を有さない場合の重ね合わせデータの一例を示す図である。
図6の例では、実線で示す円柱ディスク形状の歯科用被切削体1中に、貫通孔を有さない破線で示す歯科修復物Aが複数重ね合わされている。
図6の例のように、重ね合わせデータ作成部24は、製造する歯科修復物が貫通孔を有さない場合には、歯科用被切削体1の貫通孔2の部分に、製造する歯科修復物の形体が重ならないように歯科用被切削体1中に歯科修復物を重ね合わせる。
【0029】
図7は、製造する歯科修復物が貫通孔を有する場合の重ね合わせデータの一例を示す図である。
図7の例では、実線で示す四角柱ブロック形状の歯科用被切削体1中に、貫通孔Hを有する破線で示す歯科修復物Aが重ね合わされている。なお、
図7においては、一点鎖線で貫通孔2の位置及び形体を示している。
図7の例のように、重ね合わせデータ作成部24は、製造する歯科修復物が貫通孔を有する場合には、歯科用被切削体1の貫通孔2部分に、製造する歯科修復物の形体及び製造する歯科修復物の貫通孔が重ならないように歯科用被切削体1中に歯科修復物を重ね合わせる。
【0030】
図6及び
図7に示すように、歯科用被切削体1の貫通孔2部分を避けるように、製造する歯科修復物の形体及び製造する歯科修復物の貫通孔を歯科用被切削体1に重ね合わせた重ね合わせデータを作成し、この重ね合わせデータを、切削用の切削データとすることができる。なお、
図6及び
図7においては、貫通孔2と間隔を空けて歯科修復物Aを配置しているが、歯科修復物Aの一部が貫通孔2と接するように歯科修復物Aを配置してもよい。この場合、貫通孔2の一部が製造する歯科修復物Aに残存することとなる。
【0031】
図8は他の実施形態における、製造する歯科修復物が貫通孔を有する場合の重ね合わせデータの一例を示す図である。
図8の例では、実線で示す円柱ディスク形状の歯科用被切削体1中に、貫通孔Hを有する破線で示す歯科修復物Aが重ね合わされている。
図8の例では、歯科用被切削体1の貫通孔2部分が、貫通孔Hよりも大きい、歯科修復物Aが有する貫通孔H内に含まれるように歯科用被切削体1中に歯科修復物Aを重ね合わせている。この場合にも、歯科修復物Aの一部が貫通孔2と接するように歯科修復物Aを配置してもよい。
【0032】
本実施形態では、重ね合わせデータ作成部24が、歯科用被切削体1中における、製造する歯科修復物の位置を自動的に決定して、重ね合わせデータを作成している。しかしながら、技工士や歯科医師等のクライアント端末20の使用者が、入力部21を操作することにより、歯科用被切削体1における、製造する歯科修復物の位置を決定し、この決定に従って重ね合わせデータ作成部24が重ね合わせデータを作成してもよい。また、重ね合わせデータ作成部24が決定した製造する歯科修復物の位置を、クライアント端末20の使用者が入力部21を操作することにより変更して、重ね合わせデータを作成してもよい。さらに、入力部21の操作により決定した歯科修復物の位置を、重ね合わせデータ作成部24が適宜変更して重ね合わせデータを作成してもよい。
【0033】
本実施形態では、重ね合わせデータ作成部24は、作成した重ね合わせデータを表示部26に出力し、表示部26は、重ね合わせデータに基づいて、モニター等の表示画面に、例えば
図6及び
図7に示すような、歯科用被切削体1中に製造する歯科修復物を重ね合わせた画像を表示する。技工士や歯科医師等のクライアント端末20の使用者は、表示された画像に基づいて、歯科用被切削体1中における製造する歯科修復の位置が適切であるか否かを判断し、必要な場合には、歯科用被切削体1中における、製造する歯科修復物の位置を変更するように重ね合わせデータを修正し、切削用のデータとして確定することができる。
【0034】
本実施形態の重ね合わせデータ作成部24は、製造する歯科修復物の一つが、貫通孔2の近傍に位置する重ね合わせデータを作成するように構成されている。具体的には、製造する歯科修復物の一つと、貫通孔2との距離が0mm〜10mmより好ましくは0.1mm〜5mmとなるように、重ね合わせデータを作成するように構成されている。製造する歯科修復物の一つと、貫通孔2との距離が0mmの場合、歯科修復物の切削を速やかに開始できる。0.1mm程度の距離を有する場合、切削シロを有することとなり、貫通孔2から切削加工を開始した切削工具の動作が安定する。このような切削シロがない場合は、実物との誤差が生じ、歯科修復物の形体の切削が始まるため、所望の形体の歯科修復物が得られない場合が生じうる。製造する歯科修復物の一つと、貫通孔2との距離が10mmより大きいと、歯科修復物の形体を切削するまでに、貫通孔2からの切削量が多くなり、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができない場合が生じうる。
【0035】
本実施形態の重ね合わせデータ作成部24は、製造する歯科修復物が2以上ある場合には、2以上の歯科修復物が互いに近傍に位置する重ね合わせデータを作成するように構成されている。具体的には、隣接する二つの歯科修復物の距離が2mm〜10mmとなるように、重ね合わせデータを作成するように構成されている。隣接する二つの歯科修復物の距離が2mmより小さいと、隣接する歯科修復物の形体の切削加工に干渉して、所望の形体の歯科修復物が得られない場合が生じうる。隣接する二つの歯科修復物の距離が10mmより大きいと、隣接する歯科修復物の形体を切削するまでに必要な移動量が多くなり、切削量が多くなるため、歯科修復物の切削加工のスピード化を十分に達成することができない場合が生じうる。3.5mm以上あると、切削加工の刃物を効率よく用いることができる。
【0036】
本実施形態の重ね合わせデータ作成部24は、歯科用被切削体1の貫通孔2部分に、製造する歯科修復物の形体が重なっている場合には、表示部26に警告を表示するように構成されている。そのため、クライアント端末20の使用者は、表示された警告により、歯科用被切削体1中における、製造する歯科修復物の位置を変更する必要があることを認識して、重ね合わせデータを修正することが可能となっている。
【0037】
制御部25は、切削用データとして確定した重ね合わせデータに基づいて、切削体による歯科用被切削体1の切削を制御する。本実施形態の制御部25は、歯科用被切削体1の貫通孔2から切削体が切削加工を開始するように切削を制御する。制御部25は、例えば切削体を備えるCADCAM装置に、切削体の制御信号を出力することにより、歯科用被切削体1の切削を制御する。
【0038】
次に、
図5のフローチャートを用いて、本実施形態の歯科修復物製造システムが歯科修復物を製造する具体的な流れの一例について説明をする。クライアント端末20の使用者が入力部21を操作して、少なくとも歯科修復物形体データを指定する(ステップST1)。データ取り込み部23は、データ記憶部22から、または通信部27を介して他のクライアント端末20、及び/または、データベースサーバ30から、指定された歯科修復物形体データ及び歯科用被切削体形状データを取り込む(ステップST2)。重ね合わせデータ作成部24は、データ取り込み部23が取り込んだ歯科修復物形体データの歯科修復物形体が貫通孔を有するものであるか否かを判定する(ステップST3)。製造する歯科修復物が貫通孔を有さない場合には、重ね合わせデータ作成部24は、歯科用被切削体1の貫通孔2の部分に、製造する歯科修復物の形体が重ならないように歯科用被切削体1中に歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する(ステップST4)。製造する歯科修復物が貫通孔を有する場合には、ステップST5で、貫通孔2の位置及び大きさ並びに被切削体の大きさに基づいて歯科用被切削体1の貫通孔2が、歯科修復物Aが有する貫通孔H内に含まれる態様で歯科用被切削体1中に歯科修復物Aを重ね合わせられるか否かを判定する。重ね合わせ可能な場合には、重ね合わせデータ作成部24は、歯科用被切削体1の貫通孔2部分が、貫通孔2よりも大きい、歯科修復物Aが有する貫通孔2内に含まれるように歯科用被切削体1中に歯科修復物Aを重ね合わせた重ね合わせデータを作成する(ステップST6)。ステップST5で重ね合わせできない場合には、重ね合わせデータ作成部24は、歯科用被切削体1の貫通孔2の部分に、製造する歯科修復物の形体及び製造する歯科修復物の貫通孔が重ならないように歯科用被切削体1中に歯科修復物を重ね合わせた重ね合わせデータを作成する(ステップST7)。重ね合わせデータ作成部24は、作成した重ね合わせデータを表示部26に出力し、表示部26は、重ね合わせデータに基づいて、モニター等の表示画面に重ね合わせデータを表示する(ステップST8)。使用者は、歯科用被切削体1中における、製造する歯科修復物の位置について必要な変更をしてに重ね合わせデータを修正し、切削用のデータとして確定する。ここで、修正した重ね合わせデータにおいて、歯科用被切削体1の貫通孔2部分に、製造する歯科修復物の形体が重なっている場合には、表示部26に警告を表示する(ステップST9)。制御部25は、切削用データとして確定した重ね合わせデータに基づいて、歯科用被切削体1の貫通孔2から切削加工を開始するように切削体を制御して、歯科用被切削体を切削する(ステップST10)。
【0039】
次に本実施形態の歯科修復物製造システムの作用・効果について、従来の歯科修復物製造システムと比較して説明する。
図9(A)は、従来の被切削体1を従来の歯科修復物製造システムを用いて切削する場合における、切削を開始する直前の概念を示す被切削体の断面図であり、(B)は切削を開始後の概念を示す断面図である。
図9(A)に示すように、従来の被切削体1を従来の歯科修復物製造システムを用いて切削する場合、切削効率の悪い切削工具4の先端を歯科用被切削体1と接触させて、穿孔するように切削を開始する。そのため、歯科修復物の切削加工に多くの時間が必要となっている。また、穿孔時の切削クズは、切削工具側にしか排出することができず、切削効率が低下してしまう。なお、切削効率を向上させるために、切削工具を回動させた場合には、穿孔する穴が大きくなり所望の形状を得ることが困難となる問題が生じる。
【0040】
図10は、本実施形態の被切削体を本実施形態の歯科修復物製造システムを用いて切削する場合における、切削中の概念を示す被切削体の断面図である。
図10のように、本実施形態では、貫通孔2内に切削工具4を挿入し、貫通孔2の壁面を切削体の壁面で切削することで切削工程を開始させることができる。そのため、切削工具4の先端による穿孔作業が不要となるため、歯科修復物の加工速度を上げることができる。
【0041】
上記実施形態においては、歯科用被切削体が貫通孔を1つ有する場合について説明したが、本発明においては、歯科用被切削体は2以上の貫通孔を有することができるものである。
歯科分野において、CADCAM技術を用いて、被切削体であるブロック、ディスクなどを切削して歯科修復物を製造する方法が知られており、近年、切削のスピード化が望まれ、できるだけ早く歯科修復物を切削する方法が求められていた。
切削初期に時間を要していた貫通孔の形成する時間を短縮する為に、予め、歯科用被切削体に貫通孔を設ける。更に、貫通孔部分に切削加工する歯科修復物の形態が重ならない様に歯科用被切削体形状データを重ね合せる工程を有する配置方法やそのプログラムについても提供する。