(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、上端に開口部と、開口部の端部または開口部の周縁に形成されるフランジ部を有する容器本体の上端部またはフランジ部をシール等で密封するプラスチックフィルムや紙を主体とした基材、その下側にアルミニウム箔、シーラント層を積層したものが蓋材として用いられている。この蓋材は、容器上端の開口部の端部または開口部の周縁に形成されるフランジ部にシールされており、この蓋材の開封は、蓋材の周縁に形成されている開封用タブを持ち上げて、容器から引き剥がすように蓋材を剥離させる。とくに即席麺等を収納した食品容器の場合は、蓋材の略中心部まで剥がすと、上述のアルミニウム箔を介在させた構成の蓋材は、剥がしたままの状態を維持できるとする特性(デッドホールド性)を示す。
【0003】
このデッドホールド性を有する蓋材は、例えば熱湯で食することが可能な状態に戻す即席麺などでは、蓋材を容器本体から剥がして、蓋材が半開きの状態となったままの開口部から容易に熱湯を注ぐことができ、次いで半開き状態の蓋材を一旦再封して麺を温めほぐし柔らかくする場合、蓋材が元の状態に戻すことができる再封性も有するもので、開封用タブを容器本体の端部又はフランジ部に巻き付けるようにして止めるか、または蓋材が半開きの状態から再封状態に戻す際にカールすることなく、平坦になる性質を有する構成とすることができる。
【0004】
しかしながら、蓋材の構成中にアルミニウム箔等の金属箔を使用している場合は、金属性の異物混入等を検査する金属探知機等を用いた検査ができないため、安全性の確保が難しい問題があり、また環境面から焼却処理できない場合や廃棄のための分別が執拗な場合などゴミ処理の条件が地域によって異なるため、環境問題も有している。
【0005】
そこで環境を考慮したものとして、アルミニウム箔を使用することなく、基材に紙基材やプラスチックフィルムを主体とする蓋材が検討されてきていた。このような蓋材は剥離すると容易にカールするため、蓋材を半開き状態に開封したのち、再封するために元の平らな状態に戻そうとすると、蓋材がカール(反った)状態となり、また開封用タブを容器本体の端部又はフランジ部に巻き付けるようにして止めようとしても、巻き付ける力が弱く、直ぐにカール状態に戻るため、再封する蓋材の開封用タブに容器本体の縁に引っ掛ける折り込みフックを形成すること(特許文献1、2)や、開封用タブ以外に容器本体の端部又はフランジ部に巻き付ける折り込み片等を設け、引っ掛けて固定すること(特許文献3、4)や、容器本体のフランジの一部に蓋材用係止部を設けること(特許文献5)や、蓋材にハーフカット等の切り込み線を1つ又は複数設けることにより、カール状態になりにくくする手法(特許文献6、7、8、9、10)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2の開封用タブに容器本体の縁に折り込みフックを形成することでは、カールによる蓋材に反りがあるため容器本体の縁にフックを止めることが難しく、容器の縁に切り込みを入れたり、或いは咬み込み部を形成するなど、容器の形状に手を加える必要があった。また、特許文献3、4の開封用タブとは別に折り込み片等による固定も蓋材の反りが強く、蓋材を固定できないことが多い。さらに、特許文献5の容器に形成される蓋材用蓋材用係止部は、容器の形状が特定あれるため、蓋材との位置決めが必要となる。次に特許文献6、7、8、9は、蓋材に切り込みなどを入れ、また特許文献10は、蓋材の一部を剥離することで、曲げたり、元に戻り易い状態になるようにしたものであるが、前者は切れ目を入れる深さや数によって作用が異なってくるため、蓋材に簡易かつ確実にデッドホールド性を持たせることに困難性や蓋材に切れ目が入ることによる不安があり、後者は剥離する部分の切れ目が表面に露出しているため、デザインや見栄えに難があると言える。とくに特許文献1−5は、消費者に利用者に煩雑な操作を強いることになり、また特許文献6−9は、確実にデッドホールド性と再封性を発揮するための蓋材を製造する際のより高い管理が必要である。
【0008】
とくに、アルミニウム箔を除いた紙層、シーラント層等で構成された積層材料を用いた蓋材の場合は、デッドホールド性がなく簡単に蓋が簡単に閉じてしまい、熱湯を注ぎ難いことや、閉じた蓋材に熱湯がかかり、周囲にこぼれることで火傷などの危惧があり、また熱湯を注いだ後の半開きに剥離した蓋材を再封する際にし、熱湯に熱等で蓋がカールして閉まらず、再封しにくいという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、使用済容器の廃棄に際して環境問題の危惧がなく、かつ製品の異物混入対策としての金属探知機による製品の検査を可能にするために、アルミニウム箔を用いない構成の積層体であり、さらに十分な開封状態(デッドホールド性)と再封性を有する即席食品用容器の蓋材およびその蓋材を用いた容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべくなされた本発明は、
容器本体の開口部周囲に形成されたフランジ部と接着密封され、開封時に前記容器本体から剥離される蓋材であって、
該蓋材は、プラスチックフィルムと上部基材とを有する上部シートと、熱可塑性プラスチックフィルムと下部基材とシーラント層を有する下部シートとが積層され、
前記蓋材の外周縁に開封するための開封用タブと前記蓋材の一部を剥離するための剥離用タブと、
前記上部シートと前記下部シートとの間には前記剥離用タブの対向する端部に向けて剥離部分と非剥離部分に区画する帯状の剥離層と、
前記上部シートには前記剥離用タブと連接する前記剥離層部分に対応する剥離領域と剥離領域以外の接着領域に区画する切り目を刻設した切断線とを有し、
前記剥離用タブの近傍に剥離開始用のノッチを対向する2箇所に設け、該ノッチ間を結び、かつ前記切断線と交差する切れ込み線を前記下部シートの裏面に設けてなり、
前記ノッチが剥離方向から見て、末広がり形状としてなる蓋材であり、
前記剥離用タブを引くとともに前記上部シートを前記切断線に沿って帯状に剥離除去し、前記開封用タブを持ち上げ前記蓋材を一部剥離開封したときに上部シートの除去部分において、蓋材が折れ曲がった状態に保持可能とし
、
前記プラスチックフィルムが直線カット性を有し、かつその易カット方向を剥離用タブの剥離方向に略一致させてなり、
前記切断線は、前記上部基材のみに切り込みを入れてなり、前記プラスチックフィルムには切り目を作らず、切断線が外部に露出せず、
かつ、前記切断線は、連続する複数の切り目を有する列からなり、剥離領域と接着領域の境界の両側にそれぞれ複数列を刻設してなり、 前記ノッチが、複数列からなる前記切断線の領域内に配置されていることを特徴とする蓋材である。
【0011】
これにより、蓋材の上部シートの剥離用タブを持ち上げ、反対方向に引っ張ると、上部シートの帯状の剥離層に相当する部分が切断線に沿って下部シートから剥離するため、上部シートが剥離された部分が、熱可塑性プラスチックフィルムと下部基材とシーラント層等からなる下部シートの薄いフィルムであるため、続いて開封用タブを引っ張り、上部シートが剥離された部分まで蓋材を剥がした半開き状態とし、剥がした蓋材を折り曲げると、その剥離された部分が折り曲げられたままの状態を維持できる、デットホールド性を有し、さらに半開き状態とした蓋材を再封するために、折り曲げられた部分を元に戻すと、この部分に形状を反らせる剛性を有する層がないので蓋材にカールが発生せず、蓋材が平坦な状態に戻り易く、容器の開口部に蓋をすることができ、十分な開封状態(デッドホールド性)と再封性を呈するものである。
【0012】
また、上部
基材が紙基材単体とすることにより、廃棄物からプラスチックを削減することができる。
【0013】
また、直線カット性を有するプラスチックフィルムの易カット方向を剥離用タブの剥離方向に略一致させることにより、直線カット性を有するプラスチックフィルムが上部基材の切断とともに容易に切れ、剥離できる。
なお、上部シートに形成される切断線が直線カット性を有するプラスチックフィルムの下にあるため、切断線が外部に露出することがない。
【0014】
また、熱可塑性プラスチックフィルムと下部基材との間に遮光層を設けることにより、蓋材の外側からの太陽光や室内等などの照射を防ぐことができる。
【0015】
また、上部シートと下部シートのいずれか片方又は両方に遮光層を有することにより、蓋材により密封する容器本体内に収納される即席麺等の食材などが酸素や水蒸気などの気体成分による劣化することを防止できる。
【0016】
また、蓋材の切断線は、連続する複数の切り目を有する列からなり、剥離領域と接着領域の境界の両側に複数列を刻設することにより、複数の切り目の列が複数形成されていることにより、上部基材の切断が容易となる。
【0017】
また、切断線を上部基材のみに切り込みを入れることにより、直線カット性を有するプラスチックフィルムに切り目を作らないため、フィルムの強度が低下することがなく、バリア性が向上する。
【0018】
剥離用タブの近傍に剥離開始用のノッチを対向する2箇所に設け、ノッチ間を結び、かつ切断線と交差する切れ込み線を下部シートの裏面に設けることにより、切れ込み線により剥離用タブが剥離しやすくなり、剥離用タブの両側のノッチから切断線に誘導することにより剥離しやすくできる。
【0019】
ノッチが剥離方向から見て、末広がり形状(逆ハの字形状)とすることにより、剥離用タブがつまみ易くなる。
【0020】
また、剥離層を開封用タブから見て中央部より奥側に設けることで、とくに剥離された部分が開封用タブから離れた位置となるため、蓋材の剥離により、湯を注ぐ開口部を広くすることができ、その剥離部分の蓋材の自重により未剥離部分の蓋材面に重なるため、デッドホールド性が高い。
【0021】
また、剥離用タブと開封用タブとは、蓋材の中心より略90°以上の角度で設けてもよい。
【0022】
さらに、本発明の蓋材を、上部に開口部を有する容器本体の、開口部の上端部または開口部の周縁に形成されるフランジ部にシールしてなる容器であり、内容物の保存安定性と、食する際に、蓋材が平坦な状態に戻り易くなるように十分な開封状態(デッドホールド性)と再封性を有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、各種プラスチック及び紙などからなる容器に用いることができ、十分な開封状態(デッドホールド性)と再封性を有する即席食品用容器の蓋材として、熱湯の注ぐ際には十分な開口とすることができるとともに、半開きの開封状態とすることで、安心して湯を注ぐことができる。また、半開き状態とした蓋材を再封するために、折り曲げられた部分を元に戻すと、蓋材が平坦な状態に戻るため、蓋材を押えることも必要がない。さらに蓋材構成中にアルミニウム箔等の金属箔を含まないため、異物混入検査に用いる金属探知機にかけることが可能となり、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、
図1の斜視図に示す容器本体(2)の開口部(3)の上端部または開口部の周縁に形成されるフランジ部(4)にシールにより密封する蓋材(5)であり、蓋材(5)は容器本体(2)の開口部(3)をシール密封し容器(1)となる。とくに即席食品(インスタント食品)容器の蓋材として用いられる。容器本体(2)の内側、とくにフランジ部(4)には、ポリエチレン樹脂層を有する
【0026】
図2(a)に示すように、蓋材(5)の外周縁には開封するための開封用タブ(6)と蓋材(5)の一部を剥離するための剥離用タブ(7)がある。開封用タブ(6)と剥離用タブ(7)の位置は、45°から135°の範囲の角度を有するように設けることができるが、開封し易さを考慮すれば、略90°が好ましい。
【0027】
剥離用タブ(7)は開封用タブ(6)の中央部よりも反対側寄りに設けられており、剥離用タブ(7)は、上部シート(10)に刻設されている切断線(9)を切断し剥離部分の上部シート(10)を剥離するものであり、開封用タブ(6)は、容器のフランジ部(4)から蓋材(5)を剥離し開封するためのものである。
【0028】
剥離用タブ(7)の近傍に設けられたノッチ(8)と、蓋材(5)に刻設された切り目からなる切断線(9)があり、剥離用タブ(7)を持ち上げ、反対方向へ引っ張ることにより、
図2(b)に示すように切断線(9)に沿って、蓋材(5)の一部が剥離する。これにより、蓋材(5)は剥離した部分から折り曲がり易くなる。
【0029】
この蓋材(5)は、
図2(a)のA−A線の断面である
図3に示すように、従来のアルミニウム箔を使用しない積層体であり、プラスチックフィルム(11)と上部基材(12)を有する上部シート(10)と、熱可塑性プラスチックフィルム(13)、下部基材(14)およびシーラント層(15)を有する下部シート(16)とが積層された積層体であり、蓋材(5)のシーラント層(15)と容器本体(2)のフランジ部(4)にヒートシール等によりシールされ、密封される。
【0030】
この上部シート(10)と下部シート(16)との間には剥離用タブ(6)の対向する端部に向けて剥離部分と非剥離部分に区画する帯状の剥離層(17)があり、上部シート(10)の裏面側には、剥離層(19)部分に対応する剥離領域(18)と剥離領域以外の接着領域(19)に区画するハーフカットの切り目(20)を刻設した切断線(9)を有する。
【0031】
図3では、切断線(9)は上部シート(10)を貫通し
ないで切り目(20)が設けられて
おり、切断線(9)をプラスチックフィルム(11)に設けないことも可能であり、例えば、一軸延伸フィルムなど直線カット性を有するプラスチックフィルム(一軸延伸ポリプロピレン、一軸延伸高密度ポリエチレンなど)を用いる場合は、切断線を設けなくてもよい。直線カット性を有するプラスチックフィルムに切り目を作らなければ、フィルムの強度が低下することがなく、バリア性が向上し、切断線が外部に露出することがないので、デザインとしても優れる。
また、剥離層(17)は2つの切断線(9)の間の幅より広く形成されていると剥離部分が剥離し易い。
【0032】
この蓋材(5)は、剥離剤の塗布により形成される剥離層(17)の剥離領域(18)とこの剥離層(17)以外の接着領域(19)とに区画され、上側の上部シート(10)と下側の下部シート(16)が積層接着されており、上部シート(10)の裏面には、剥離領域(18)と接着領域(19)との境界線の近傍には、ハーフカットによる切り目(20)を複数個の刻設した切断線(9)がそれぞれ複数列(
図2ではそれぞれ3列づつ)形成されている。
蓋材(5)のハーフカットによる切り目(20)は、上部基材(12)を貫通、あるいは貫通していなくてもよく、切断線(9)による上部シート(10)の切断が確実に行えればよい。
【0033】
本発明の切断線(9)は、その数を規定するものではないが、切断線(9)から外れて、上部シート(10)の他の部分が破れるようなことがなく、かつ直線的に切断し易くできればよく、複数列が好ましい。切断線(9)の切れ目は「ミシン目」、剥離用タブ(7)側から見て剥離方向に直線的に多数のハの字が連続する「ハの字切れ目」や剥離方向に短い斜線「ノの字切れ目」、あるいはそれらに類似する切れ目とすることもできる。また、連続する直線としてもよい。
【0034】
さらに
図2(a)、
図4、
図5に示すように剥離用タブ(7)の基部近傍に剥離開始用のノッチ(8)をその両側に2箇所に設け、これらノッチ間を結び、かつ切断線(9)と上下で交差する切れ込み線(21)(
図5の点線で示す)を下部シート(16)の裏面に設けることにより、剥離用タブ(7)からノッチ(8)に沿って切断線(9)まで剥離を誘導することできる。
【0035】
ノッチ(8)は、剥離用タブ(7)の外周方向に広がる「逆ハの字」形状に形成することが好ましい。すなわち、剥離用タブ(7)を剥離方向から見て「末広がり」形状、あるいは「ラッパ」形状にすることにより、大きくつまみ易くなり、剥離用タブ(7)をつまみ、剥離方向に引っ張るときのノッチ(8)から切断線(9)での切断が容易となる。加えて、この切れ込み線(21)を設けることによって、剥離用タブ(7)は、さらにつまみ易く、容易に切断線(9)まで剥離が進ませることができる。
後は切断線(9)に沿って切断が進み、剥離層(17)から上部シート(10)の剥離領域(18)が剥離し、凹部(24)が形成される。
なお、切れ込み線(21)は下部シート(16)から上部シート(10)の上部基材(12)の途中までのハーフカットでもよい。
【0036】
また、本発明では、
図3乃至
図5に示すように、プラスチックフィルム(11)、印刷層(22)、上部基材(12)を有する上部シート(10)と、熱可塑性プラスチックフィルム(13)、遮光層(23)、下部基材(14)およびシーラント層(15)を有する下部シート(16)とを積層された積層体である。
【0037】
上部基材(12)は紙基材や熱可塑性プラスチックフィルムでもよく、必要に応じてガスバリア層(図示しない)や、上部基材(12)に遮光材料を添加するなど遮光機能を保持させることができる。下部基材(14)も同様に紙基材や熱可塑性プラスチックフィルムでもよく、熱可塑性プラスチックフィルム(13)は、上部シート(10)との接着性を持たせるためであり、例えば押出し形成されたポリエチレン層である。
なお、遮光を必要としない内容物を収納する場合は、遮光層(23)がない構成であってもよい。
【0038】
また、下部基材(14)にガスバリア性を持たせてもよく、アルミニウムなどの金属蒸着層や酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機金属酸化物蒸着層をポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により蒸着層を形成してもよい。
【0039】
さらに上記蒸着層に下記の(A)と(B)とを含む化合物からなるオーバーコート層が積層し、ガスバリア性を向上させることも可能である。
(A):水溶性高分子。
(B):一般式R‐Si(OR’)3で表されるシランモノマー又はその加水分解物、一般式M(OR’)nで表される1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解物、シランカップリング剤又はその加水分解物、またはこれらの混合物[但し、Rはアルキル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基から選ばれる官能基であり、R’はアルキル基などであり、Mは金属イオンであり、nはそのイオンの価数である。]。
【0040】
以上、
図6に示すように本発明の蓋材(5)を用いた容器(1)の開封は、先端の剥離用タブ(7)をつまみ、ノッチ(8)を介して、剥離用タブ(7)の裏面の基部に施されている切れ込み線(21)から剥離用タブ(7)を上側に折り曲げ、続いて矢印方向に引っ張り、切り込み線(21)と連続してつながる切断線(9)に沿って、切断しながら剥離領域の剥離層(17)から帯状に上部シート(10)の剥離部分を剥離して、剥離用タブ(7)とともに剥離領域にある上部シート(10)の一部を取り除くと、その部分は、
図7に示すように薄い下部シート(16)のみとなり、凹部(24)が形成される。
【0041】
次に、
図7に示すように、開封用タブ(6)を矢印のように引っ張り上げながら、容器(1)のフランジ部(4)から蓋材(5)を上部シート(10)が剥離された部分まで剥がし、半開き状態で、剥がした蓋材(5)、つまり下部シート(16)のみの凹部(24)において、容易に折り曲げることができ、剥離された蓋材(5)の自重によって凹部(24)で折り曲げられたままの状態を維持でき、デットホールド性に優れる。
【0042】
また、
図8に示す半開き状態に開封した蓋材(5)の再封は、矢印のように
図7に示す元の平坦な状態に戻すと、凹部(24)に上部シート(10)がないため、熱湯によるカール等の反りもなく、平坦な状態となり、この平坦な状態を維持できる再封性に優れる。
このように即席食品用容器の蓋材としては、折り曲げられた状態で容易に安全に熱湯を開口部から容器内に注ぐことができ、しかも平坦な状態を維持できるため、麺等を温めほぐすために、蓋材が反らないよう蓋材上に重し等を乗せるか、蓋材を容器に留める手段を新たに設ける必要がない。
【0043】
本発明の蓋材(5)を構成する上部シート(10)として、プラスチックフィルム(11)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、厚さは6から16μmが好ましい。上部基材(12)は、紙であり、少なくとも表面が白色で多色印刷適性を有するものが好ましく、坪量50g/m
2 〜150g/m
2 程度の両アート紙、片アート紙あるいは両面コート紙、片面コート紙、合成紙などを用いることができる。
【0044】
なお、上部基材(12)の下部シート(16)側には、目止めニス層を用いることができる。目止めニスとしては、(ウレタン系樹脂、硝化綿(セルロース)系樹脂、硝化綿(セルロース)とウレタン系樹脂とのブレンド樹脂などや、これらの樹脂にポリエチレン系、ポリエステル系、脂肪酸アマイド系等のワックスを5%以上添加したがあり、好ましくは、硝化綿(セルロース)とウレタン系樹脂とのブレンド樹脂であり、塗布厚は0.2から20μmが好ましい。
【0045】
また、下部シート(16)を構成するシーラント層(15)としては、ヒートシール性に優れる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリオレフィン樹脂あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン共重合樹脂のフィルムを用いることができる。さらに、これらポリオレフィン樹脂にポリスチレンやポリブデン等からなるポリオレフィン樹脂に対し不相溶性成分を混合したものとすることもできる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂等からなるホットメルト接着剤を厚さ20〜100μmの範囲に設けることができる。これにより、これらシーラント層(15)によって容器本体(2)のフランジ部(4)との十分な密封性と剥離性、開封性を有する。
【0046】
下部基材(14)としては、厚さ6〜16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ15〜25μmの二軸延伸ポリエチレン(0PE)フィルム、二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、厚さ10〜25μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムなど、好ましくは、比較的薄く、腰のないフィルムが挙げられ、適宜選定することができる。
【0047】
熱可塑性フィルム層(13)としては、熱溶融された低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)とエチレン−メタアクリル酸共重合樹脂(EMAA)の混合樹脂等が挙げられ、これらを厚さ5〜20μmに押出してラミネートにより形成できる。
【0048】
必要に応じて設ける遮光層(23)には、ウレタン系インキのスミ/シロ/スミの三色刷とすることができ、またカーボン入りのインキを用いることもでき、さらに下部基材(14)と熱可塑性プラスチックフィルム(13)とを接着させる目的からエチレン−メタアクリル酸共重合樹脂(EMAA)やウレタン等のアンカーコート剤を混合したものを用いることができ、グラビア法等で公知の塗布方法により形成できる。
【0049】
剥離層(17)としては、ポリエチレン系ワックス、ポリエステル系ワックス、脂肪酸アミド系ワックスもしくはこれらの混合物などが挙げられる。これらを剥離ニスとしてグラビア法あるいはスクリーン法等の公知の塗布方法により網目状パターン(又は網点パターン状、あるいは市松模様パターン状又は砂目パターン状)の部分的に塗布して得ることができる。
【0050】
なお、目止めニス層に剥離層(17)を形成すると、剥離層(17)の剥離剤の浸透(剥離剤が浸透するとその役目を果たさず接着強度が大きくなる)を防ぐことができ、その結果、剥離性が向上する。
印刷層(22)は、一般的に用いられている紙用の印刷インキを用いて、公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などにより、所望の文字、絵柄などのデザインが形成される。
【実施例】
【0051】
プラスチックフィルム(11)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、厚さ12μmのエンプレットPC(商品名 ユニチカ株式会社製)を積層し、上部基材(12)は、表面に絵柄等が印刷された坪量104.7g/m
2 の片アート紙を用い、その裏面に、目止めニスとして、硝化綿にウレタン系樹脂を混合したものを形成した。さらに剥離層(17)をポリエチレン系ワックスからなる剥離剤を幅20mmの帯状の剥離領域(好ましくは、ミシン外端から2mm外まで)に塗布・乾燥し形成し、上部シート(10)を得た。
【0052】
下部基材(12)は厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、厚さ45μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムを押し出しラミネートし、他方の片面にウレタン系インキのスミ/シロ/スミの三色刷の遮光層(23)、上記上部シート(10)の剥離層(17)との間に熱溶融された低密度ポリエチレン(LDPE)を厚さ15μmの熱可塑性プラスチックフィルム(13)として押し出してラミネートし、下部シート(16)を得た。
【0053】
上記で得た上部シート(10)の裏側の剥離領域に、それぞれ3列の「ハの字切り目」の切断線(9)(「ハ」の字のミシン目の場合は、「ハ」の字が3列で一組、幅5mm、中心間11mm(ミシン目内端〜内端6mm)で2組加工し、その間が剥離するようにした。また剥離ニスは、幅20mm(ミシン目の外端から2mm外まで)、ベタで塗工した)を施し、その帯状の剥離領域方向の外周縁に剥離用タブ(7)と、その帯状の剥離領域と略90°方向の周縁に開封用タブ(6)と、剥離用タブ(7)の裏面に下部シート(16)に切れ込み線(21)を施した直径100mmの蓋材(5)を得た。
【0054】
この蓋材(5)を紙製カップ容器のポリエチレンが形成されたフランジ部にヒートシールして密封し、容器(1)を作製した。
【0055】
この容器(1)を金属探知機による金属異物の有無の検査を行ったところ、何ら支障なく検査を実施することができた。
【0056】
このカップ容器の開封は、
図6に示すように、開封用タブ(6)を引っ張り上げながらカップ容器のフランジ部(4)から蓋材(5)を剥離したところ、剥離層(17)から上部シート(10)が良好に剥離し剥離領域(18)まで剥離し、上部シート(10)が切断線から除去された剥離領域(18)の凹部(24)で折り曲げると、
図8に示すように、略180°に完全に折り曲げたままの状態を維持することができ、また容器に湯を入れて
図7に示すように蓋材(5)を元の平坦な状態に戻した状態を維持することができた。蓋材(5)はデッドホールド性と再封性の両方に優れることが確認された。
【0057】
また、下部基材(12)のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの代わりに、ガスバリアフィルム(商品名「GLフィルム」凸版印刷社製)を用いて、蓋材(5)を作成したところ、酸素透過度5ml/m2/day/MPa、水蒸気透過度0.6g/m2/dayであり、この蓋材を用いた容器に保存した即席麺は、6ヶ月保存後も品質に異常はなく、保存性良好であることが確認できた。
【0058】
なお、切断線を上記と同様にそれぞれ3列の「ハの字切り目」としたときに、剥離幅が2mmとした場合、3列のハの字の最内で切れて剥離させると、蓋材にデッドホールド性は機能しなかったが、剥離幅をミシン目の内端から内端を2mm以下に設定すると十分なデッドホールド性を発揮せず、剥離幅2mmを超えるとデッドホールド性の発揮に有効である。