(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグロープラグに用いられる絶縁体は、径方向において、絶縁体と軸孔との間および絶縁体と中軸との間にそれぞれクリアランスを確保できる大きさに形成され、製造時の組立容易性が確保されている。ゆえに中軸は、主体金具の後端部において、封止部材によって軸孔内で径方向に保持される形態となる。エンジンの駆動に伴う振動や、通電のためのコネクタの取り付けなどによって中軸に負荷がかかった場合に、封止部材が弾性変形して軸孔内で中軸が振れたり曲がったりすると、中軸の一端部に接続されたヒータに応力がかかってしまう虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、主体金具の軸孔内で中軸を確実に保持して径方向の振れや曲がりを防止することができるグロープラグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、通電によって発熱する発熱抵抗体を自身の先端部に有するヒータと、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状に形成され、自身の先端部において前記ヒータを直接または保持部材を介して間接的に保持する主体金具と、棒状に形成され、前記主体金具の前記軸孔内に当該軸孔の内周面に対し間隙をおいて配置されると共に、自身の一端部が前記ヒータの後端部に接続され、自身の他端部が前記主体金具の後端から突出される中軸と、前記主体金具の前記軸孔と前記中軸との間に配置され、前記中軸の前記他端部に設けた固定部により前記軸線方向の先端向きに付勢されて位置決めされる円筒状の絶縁体と、を備えるグロープラグであって、前記主体金具の前記軸孔と前記中軸との間のうち前記絶縁体の先端側には、前記軸孔内の気密性を保つための封止部材が設けられており、前記主体金具の前記軸孔の後端部における前記内周面に設けられ、前記軸孔内から前記軸孔の開口にかけてテーパ状に広がる第1テーパ部と、前記絶縁体の外周面に設けられ、前記絶縁体の先端側から後端側へ向けてテーパ状に広がり、前記絶縁体が前記軸孔と前記中軸との間に配置された場合に前記第1テーパ部に当接する第2テーパ部と、をさらに備
え、前記絶縁体は、前記中軸に対して密着した状態で、前記軸孔と前記中軸との間に配置されるグロープラグが提供される。
【0008】
第1態様によれば、主体金具の軸孔と中軸との間に配置される絶縁体は、後端側から先端向きへ付勢されているので、第2テーパ部が主体金具の第1テーパ部に当接し、当接面において、面の垂線方向に(すなわち径方向の成分を有する)抗力を生ずる。これにより、絶縁体は主体金具に対し、径方向の抗力を有した状態(言い換えると密着状態)で配置され、主体金具の後端部における軸孔内で、中軸の他端部が絶縁体によって確実に保持されるので、中軸の振れや曲がりを防止することができる。また、中軸が後端部において絶縁体に保持されることによって、一端部に接続されたヒータにかかる応力(負荷)を低減することができる。従来の絶縁体は、その先端側にOリング等の封止部材を設けることを前提として、これを押圧する役目を担うだけのものであるから、絶縁体が中軸を径方向に支持することは目的とされていなかった。このため、従来の絶縁体の中軸側と主体金具の軸孔との間にはそれぞれクリアランスが存在していたところ、第1態様によれば、少なくとも絶縁体と軸孔との間は密着する部位を有することとなり、従来に比較して、中軸の振れ、揺れ、曲がり等を抑制することが可能である。
【0009】
第1態様
は、絶縁体と中軸との間にすき間が生じないので、絶縁体が主体金具の後端部における軸孔内で位置決め固定されることによって、中軸の他端部を確実に保持することができる。
【0010】
第1態様において、前記絶縁体の後端面は、前記固定部の先端面に当接し、前記主体金具の前記第1テーパ部における最大外径をD1、前記絶縁体の前記第2テーパ部における最大外径をD2、前記絶縁体の前記後端面における最大外径をD3、前記固定部の前記先端面における最大外径をD4、としたときに、D1>D2、かつ、D3<D4を満たしてもよい。
【0011】
D1>D2が満たされることで、主体金具の後端面と第1テーパ部とがなす稜角部分(エッジ)は、絶縁体の第2テーパ部よりも径方向外側に配置される。このため、主体金具の後端面と第1テーパ部とがなす稜角部分が絶縁体(特に第2テーパ部)に突き当たって応力を与えてしまうことがないので、応力集中による絶縁体の削れや摩耗を防止することができる。また、D3<D4が満たされることで、固定部の側面と先端面とがなす稜角部分は、絶縁体の後端面よりも径方向外側に配置される。したがって、固定部の側面と先端面とがなす稜角部分が絶縁体の後端面に突き当たって応力を与えてしまうことがないので、応力集中による削れや摩耗によって絶縁体が劣化することを防止できる。
【0012】
本発明の第2態様によれば、第1態様に係るグロープラグの製造方法であって、前記中軸は、前記他端部よりも前記一端部側に、前記他端部と比べて外径の大きな接続基部と、前記他端部と前記接続基部との間をテーパ状に接続する肩部と、を有しており、前記絶縁体を前記主体金具の前記軸孔と前記中軸との間に配置する前の状態では、前記絶縁体の筒孔の内径A1と、前記中軸の前記他端部の外径A2と、前記接続基部の外径A3とが、A2<A1<A3を満たすとともに、前記中軸の前記肩部の先端位置B1が、前記主体金具の前記第1テーパ部の先端位置B2よりも、軸線方向の後端側に位置されており、前記絶縁体を前記主体金具の前記軸孔と前記中軸との間に配置する過程において、前記絶縁体を前記中軸の前記他端部に挿通する挿通工程と、前記絶縁体を前記肩部に押し付けて前記筒孔を広げつつ、前記絶縁体をさらに押し込んで前記接続基部に配置する配置工程と、前記絶縁体をさらに押し込んで前記第
2テーパ部を前記主体金具の前記第
1テーパ部に当接する当接工程と、を備えるグロープラグの製造方法が提供される。
【0013】
中軸の他端部には固定部を設けるための表面加工等が施される場合があるが、A2<A1であることによって、挿通工程において絶縁体を中軸の他端部に挿通する際に、絶縁体の筒孔の内周面が他端部の外周面に擦れて傷付いてしまうことを防止できる。配置工程では、A1<A3であることによって、肩部において筒孔の内径を広げた絶縁体を接続基部に配置させることができるので、絶縁体の筒孔の内周を、接続基部の外周に密着させることができる。これにより、絶縁体と接続基部との間にすき間が生じない。また、軸線方向においてB2がB1よりも先端側に位置するので、当接工程において絶縁体の第
2テーパ部が主体金具の第
1テーパ部に当接するまでに、絶縁体を、接続基部の、より先端側に配置することができる。これにより、中軸の接続基部の外周面と絶縁体の筒孔の内周面との間の当接面積を、より広く確保することができる。そして、当接工程で絶縁体の第
2テーパ部が主体金具の第
1テーパ部に当接した際には、当接面において、面の垂線方向に抗力を生ずる。抗力は径方向の成分を有し、また、上記のように筒孔の内周が接続基部の外周に密着状態にあるため、絶縁体を、中軸の接続基部と、主体金具の第
1テーパ部とのそれぞれに対し、径方向の抗力を有した状態(密着状態)で配置することができる。したがって、主体金具の後端部における軸孔内で、中軸の他端部が絶縁体によって確実に保持されるので、中軸の振れや曲がりを防止することができる。また、中軸が後端部において絶縁体に保持されることによって、一端部に接続されたヒータにかかる応力(負荷)を低減することができる。さらには、製造過程において中軸の軸心と主体金具、すなわちグロープラグ本体との軸心とを容易に一致させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したグロープラグおよびその製造方法の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1,
図2を参照して、一例としてのグロープラグ1の全体の構造について説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、軸線O方向において、セラミックヒータ2の配置された側(
図1における下側)をグロープラグ1の先端側とする。
【0016】
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、Oリング7とを備える。
【0017】
まず、セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は丸棒状をなし、先端部22が半球状に曲面加工された絶縁性セラミックからなる基体21を有する。基体21の内部には、導電性セラミックからなる断面略U字状の発熱素子24が埋設されている。発熱素子24は、発熱抵抗体27と、リード部28,29とからなる。発熱抵抗体27はセラミックヒータ2の先端部22に配置され、先端部22の曲面にあわせて両端が略U字状に折り返されている。リード部28,29は発熱抵抗体27の両端にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱抵抗体27の断面積は、リード部28,29の断面積よりも小さくなるように成形されており、通電時、主に発熱抵抗体27において発熱が行われる。また、セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28,29のそれぞれから電極取出部25,26が径方向に突出されている。電極取出部25,26は、軸線O方向において互いにずれた位置にて、セラミックヒータ2の外周面に露出されている。
【0018】
次に、保持部材8について説明する。保持部材8は軸線O方向に延びる円筒状の金属部材からなり、自身の筒孔84内にてセラミックヒータ2の胴部分を径方向に保持する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の胴部81の後端側には、肉厚の鍔部82が形成されている。鍔部82の後端には、後述する主体金具4の先端部41に係合する段状の金具係合部83が形成されている。セラミックヒータ2の電極取出部25,26のうち先端側に形成された電極取出部25は、保持部材8の筒孔84内周面に接触されており、電極取出部25と保持部材8とが電気的に接続されている。
【0019】
また、保持部材8の金具係合部83から後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング75が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2の電極取出部26は接続リング75の内周面に接触されており、電極取出部26と接続リング75とが電気的に接続されている。後述する主体金具4の先端部41が保持部材8の金具係合部83に接合されることによって、電極取出部25は、主体金具4と電気的に接続される。電極取出部26に接続された接続リング75は主体金具4内に配置されるが、保持部材8によってセラミックヒータ2と主体金具4とが位置決められ、接続リング75と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
【0020】
次に、主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4の先端部41は、その内周が前述した保持部材8の金具係合部83の外周に係合され、保持部材8を介してセラミックヒータ2の電極取出部25と電気的に接続されている。先端部41と金具係合部83との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、主体金具4と保持部材8とが一体に接合されている。主体金具4の先端部41と後端部45との間の中胴部44は軸線O方向に長く形成されており、後端側外周面に、グロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成された取付部42が設けられている。取付部42よりも後端側には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する工具係合部46がその断面形状を六角形状にして形成されている。
図2に示すように、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、軸孔43内から後端面48の開口にかけてテーパ状に広がるテーパ部47が形成されている。なお、このテーパ部47が軸線Oとなす狭角は20度以上70度以下であるとよく、本実施の形態では30度としている。この範囲の角度を設定することで、後述する絶縁部材6が配置された際の、絶縁部材6自身の装着時の安定性と、絶縁部材6により中軸3を中心に位置決めする効果をより有効に発揮することができる。
【0021】
次に、中軸3について説明する。
図1に示すように、中軸3は軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43内に挿通される。中軸3の先端部31と後端部32との間の中胴部33は、先端部31および後端部32と比べ、外径が細く形成されている。先端部31には、その先端に、接続リング75の内周に係合するため小径のリング係合部34が形成されている。リング係合部34が接続リング75に係合することで、セラミックヒータ2と中軸3とが接続リング75を介して軸線Oに沿って一体に連結される。なお、図示しないが、先端部31と接続リング75との合わせ部位にはレーザ溶接が施されており、先端部31と接続リング75とが一体に接合されている。これにより、中軸3は、接続リング75を介し、セラミックヒータ2の電極取出部26と電気的に接続されている。上記したように、セラミックヒータ2と主体金具4とが保持部材8に位置決められるので、軸孔43内で、中軸3と主体金具4とは直接的には絶縁状態に維持される。
【0022】
図2に示すように、中軸3の後端部32は、主体金具4の後端面48から突出される接続端部36と、接続端部36と中胴部33との間を接続する接続基部37とを有する。接続端部36には、外周面にローレット状の表面加工(
図3参照)を施した係止部39が形成されている。係止部39を含め、接続端部36の外径は、接続基部37の外径と比べて小さい。接続端部36と接続基部37との間には、接続端部36と接続基部37とをテーパ状に接続する肩部38が形成されている。
【0023】
中軸3の後端部32にはOリング7と絶縁部材6とが配置される。Oリング7は、主体金具4の軸孔43内の気密性を保つため設けられ、軸孔43と中軸3の接続基部37との間に配置される。Oリング7は、耐熱性、絶縁性および弾性を有する部材、例えばフッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等を材料に、円環状に形成される。
【0024】
絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から形成され、軸線O方向に延びる筒孔64を有する円筒状に形成される。絶縁部材6は、軸線O方向の先端側の先端胴部61の外径と、後端側の後端胴部62の外径とが異なり、先端胴部61の外径は、後端胴部62の外径に比べて小さく形成されている。先端胴部61と後端胴部62との間の部位は、先端側(先端胴部61側)から後端側(後端胴部62側)へ向けてテーパ状に広がるテーパ部63として形成されている。絶縁部材6の筒孔64に中軸3の後端部32が挿通された場合に、絶縁部材6のテーパ部63は、主体金具4のテーパ部47に当接した状態に配置され、主体金具4と中軸3とが絶縁状態に維持される。
【0025】
中軸3の接続端部36には、接続端子5が固定される。接続端子5は、接続端部36に覆い被せるキャップ状の胴部52を有し、胴部52から後端側にピン状の突起部53が突設されている。胴部52の先端の開口端には、一周にわたって径方向に突設する鍔部51が形成されている。接続端子5を中軸3の接続端部36に被せた場合に、絶縁部材6の後端面65に鍔部51が当接するように接続端子5は配置され、主体金具4と接続端子5とが絶縁状態に維持される。また、接続端子5を軸線O方向の先端向きに押圧した状態で、胴部52の外周から内向きに加締められ、胴部52の内周面が接続端部36の係止部39に強固に係止される。係止部39はローレット形状であるため、加締めにより圧着される胴部52の係止部39への固着力が高められ、接続端子5と中軸3とが一体に固定されると共に、両者が電気的に接続される。接続端子5の突起部53には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱素子24(
図1参照)は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地される発熱抵抗体27の一端側と、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される他端側との間に通電されることによって、発熱する。
【0026】
このような構造を有するグロープラグ1は、概略、以下のように組み立てられる。導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱素子24の原形となる素子成形体が形成される。また、絶縁性セラミック粉末を原料として金型プレス成形によって、セラミックヒータ2の基体21の原形となる基体成形体が、2分割の成形体として形成される。基体成形体で素子成形体を挟んで収容した状態で、プレス圧縮される。脱バインダ処理、ホットプレス等の焼成工程を経て、外周面の研磨によって、棒状で先端が半球状のセラミックヒータ2が形成される。
【0027】
ステンレス等の鋼材をパイプ状に成形した接続リング75に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、接続リング75と電極取出部26とが導通される。同様に、所定の形状に成形された保持部材8に、セラミックヒータ2が圧入により嵌められて、保持部材8と電極取出部25とが導通される。一方、中軸3は、一定の寸法に切断された鉄系材料(例えば、Fe−Cr−Mo鋼)からなる棒状部材に塑性加工や切削等が施されて形成される。中軸3のリング係合部34を、セラミックヒータ2に嵌められた接続リング75に係合させた状態で、合わせ部位がレーザ溶接されて、中軸3とセラミックヒータ2とが一体に接合される。
【0028】
S45C等の鉄系素材から筒状の主体金具4が形成され、取付部42にねじ山が転造される。さらに切削加工等により、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に、軸孔43内から後端面48の開口にかけてテーパ状に広がるテーパ部47が形成される。主体金具4の軸孔43内に、セラミックヒータ2等と一体となった中軸3が挿通される。主体金具4と保持部材8との合わせ部位がレーザ溶接され、両者が一体に接合される。
【0029】
主体金具4の後端面48から突出する中軸3の後端部32にOリング7が嵌められ、主体金具4の軸孔43と接続基部37との間に配置される。中軸3の後端部32に絶縁部材6の筒孔64が挿通される。後述するが、筒孔64の内径A1は接続端部36の外径A2よりも大きく(
図3参照)、絶縁部材6は、接続端部36の係止部39の表面加工によって筒孔64の内周面が擦れて傷付くことが防止され、接続端部36を挿通されて(挿通工程)、肩部38に達する。後述するが、筒孔64の内径A1は接続基部37の外径A3よりも小さく(
図3参照)、絶縁部材6は、肩部38に押し付けられて、肩部38のテーパに沿って筒孔64が押し広げられる。絶縁部材6はさらに押し込まれて、接続端部36に比べて外径の大きな接続基部37に配置される(配置工程)。接続端子5の胴部52が中軸3の接続端部36に被せられ、絶縁部材6の後端面65に鍔部51の先端面55が当接する。接続端子5が軸線O方向の先端側へ押圧されることによって、絶縁部材6のテーパ部63が主体金具4のテーパ部47に当接し、テーパ部47,63同士の当接面において抗力を生ずる(当接工程)。この状態で、接続端子5の胴部52が加締められ、接続端子5が中軸3の接続端部36に固定されて、グロープラグ1が完成する。
【0030】
このように組み立てられるグロープラグ1の中軸3は、上記のように、先端部31が接続リング75を介してセラミックヒータ2に固定される。セラミックヒータ2は主体金具4の先端部41に接合される保持部材8に保持される。よって中軸3は、主体金具4の先端部41内において、位置決められて保持される。一方、中軸3の後端部32は、主体金具4の後端部45に配置される。後端部45における軸孔43の内周面と、中軸3の後端部32の外周面との間に絶縁部材6が配置されることで、主体金具4と中軸3とは絶縁状態に維持される。主体金具4の軸孔43内で絶縁部材6が中軸3の後端部32を確実に保持できるように、本実施の形態では、絶縁部材6、主体金具4、接続端子5および中軸3の形状や寸法に、以下の規定を設けている。
【0031】
図3に示すように、絶縁部材6の筒孔64の内径A1は、中軸3の接続端部36の外径A2(係止部39を含む最大径)に比べて大きく形成されている。これにより、グロープラグ1の組み立て時に絶縁部材6の筒孔64を接続端部36に挿通させた場合に、筒孔64の内周がローレット状の表面加工が施された係止部39と擦れて傷付いてしまう虞がない。
【0032】
一方、中軸3の接続基部37の外径A3は、接続端部36の外径A2に比べて大きく形成されるとともに、絶縁部材6を取り付ける前の状態(すなわち、
図3の状態である)において、絶縁部材6の筒孔64の内径A1に比べて大きく形成されている。絶縁部材6が接続端部36を挿通されて肩部38に達したときに、肩部38のテーパによって、絶縁部材6の筒孔64の内径が押し広げられる。絶縁部材6をさらに押し込み、
図2に示すように、接続基部37の周囲に配置させたときに、上記A1<A3の関係を有していることによって、絶縁部材6の筒孔64の内周を、接続基部37の外周に密着させることができる。これにより、絶縁部材6と接続基部37との間にすき間が生じないので、絶縁部材6が主体金具4の後端部45における軸孔43内で位置決め固定されれば(後述)、中軸3の後端部32を確実に保持することができる。
【0033】
また、
図2,
図3に示すように、軸線O方向において、中軸3の肩部38の先端位置B1(肩部38と接続基部37との境目が相当する)よりも、主体金具4のテーパ部47の先端位置B2(軸孔43内におけるテーパ部47の広がりの開始位置が相当する)が、先端側に配置されている。上記のように、絶縁部材6を接続基部37に配置してさらに押し込むと、主体金具4の後端部45における軸孔43の内周面に設けられたテーパ部47に、絶縁部材6の外周面に設けられたテーパ部63が当接する。先端位置B2が先端位置B1よりも先端側に配置されることによって、絶縁部材6のテーパ部63が主体金具4のテーパ部47に当接するまでに、絶縁部材6を、接続基部37の、より先端側に配置することができる。これにより、中軸3の接続基部37の外周面と絶縁部材6の筒孔64の内周面との間の当接面積を、より広く確保することができる。
【0034】
そして、絶縁部材6が中軸3に沿って軸線O方向に押し込まれ、絶縁部材6のテーパ部63が主体金具4のテーパ部47に当接した際には、当接面において、面の垂線方向に抗力を生ずる。抗力は径方向の成分を有し、また、上記のように筒孔64の内周が接続基部37の外周に密着状態にあるため、絶縁部材6は、中軸3の接続基部37と、主体金具4のテーパ部47とのそれぞれに対し、径方向の抗力を有した状態(言い換えると密着状態)で配置される。そして上記したように、絶縁部材6は接続端子5によって軸線O方向の先端側へ押圧された状態で、接続端子5が中軸3の接続端部36に加締められることで、テーパ部47とテーパ部63とが密着状態に維持される。主体金具4の後端部45における軸孔43内で絶縁部材6が固定され、中軸3の後端部32が絶縁部材6によって確実に保持されるので、中軸3の振れや曲がりを防止することができる。また、中軸3が後端部32において絶縁部材6に保持されることによって、先端部31に接続されたセラミックヒータ2にかかる応力(負荷)を低減することができる。
【0035】
また、
図2に示すように、グロープラグ1を組み立てた状態において、主体金具4のテーパ部47の最大外径D1は、絶縁部材6のテーパ部63の最大外径D2に比べて大きく形成されている。絶縁部材6のテーパ部63が主体金具4のテーパ部47に当接した状態において、D1>D2が満たされることで、主体金具4の後端面48とテーパ部47とがなす稜角部分(エッジ)は、絶縁部材6のテーパ部63よりも径方向外側に配置される。このため、後端面48とテーパ部47とがなす稜角部分が絶縁部材6(特にテーパ部63)に突き当たって応力を与えてしまうことがないので、応力集中による絶縁部材6の削れや摩耗を防止することができる。
【0036】
また、グロープラグ1を組み立てた状態において、絶縁部材6の後端面65の最大外径D3は、接続端子5の先端面55の最大外径D4に比べて小さく形成されている。上記同様に、接続端子5の先端面55が絶縁部材6の後端面65に当接した状態において、D3<D4が満たされることで、鍔部51の側面と先端面55とがなす稜角部分(エッジ)は、絶縁部材6の後端面65よりも径方向外側に配置される。したがって、鍔部51の側面と先端面55とがなす稜角部分が絶縁部材6の後端面65に突き当たって応力を与えてしまうことがないので、応力集中による絶縁部材6の削れや摩耗を防止することができる。
【0037】
なお、本発明は各種の変形が可能である。例えば、
図4に示すグロープラグ101のように、接続端子5(
図1参照)を用いず、中軸103の後端部132に丸ナット105を挿通させて、絶縁部材6を軸線O方向の先端側に押圧しつつ、胴部152において径方向に加締めて接続端部136に固定してもよい。本実施の形態と同様に、グロープラグ101を組み立てた状態において、絶縁部材6の後端面65の最大外径D3が、丸ナット105の先端面155の最大外径D5に比べて小さければよい。なお、上記変形例では中軸103は接続端部136にねじ山を設けているが、丸ナット105を加締め固定する部位付近には、ねじ山を設けていない。これに限らず、加締め固定する部位にもねじ山を有し、加締めではなくねじ止めにより丸ナット105を固定してもよい。あるいは、接続端子5や丸ナット105などの別部材を用いず、例えば中軸3の接続端部36の一部を変形させることで、テーパ部47とテーパ部63とが密着状態に維持されるように、絶縁部材6を、軸線O方向の先端側に押圧しつつ位置決め固定してもよい。
【0038】
また、絶縁部材6の後端面65は平面に形成したが、例えば、円弧状の断面を有し周方向に一周する曲面状をなす面や、複数の凹凸が形成された面などであってもよい。このような場合の後端面と接続端子5の先端面55とは線接触や点接触する形態となるが、本発明においては、面同士の接触に限らず、面と線、あるいは面と点の接触についても「当接」と呼ぶこととする。また、絶縁部材の後端面における最大外径D3は、後端面を構成する曲面全体における最大外径で捉えるのではなく、曲面のうち接続端子5の先端面55に当接しうる部位(後端面のうちでも軸線O方向の後端に位置する部位)における最大外径で捉えるものとする。言い換えると、絶縁部材の後端面が接続端子5の先端面55に当接しうる部位が、その先端面55の範囲よりも径方向内側にあればよい。なお、当接しうる部位には、絶縁部材の後端面が弾性変形によって接続端子5の先端面55に接触しうる部位も含まれる。
【0039】
また、絶縁部材6は、先端胴部61と後端胴部62との間にテーパ部63を有する構成としたが、例えば、
図5に示す絶縁部材206のように、先端胴部261と同径の末端部264を後端胴部262の後端側に設け、先端胴部61から末端部264に延びる筒状の部材において、テーパ部263と後端胴部262とがフランジ状をなす形態であってもよい。または、
図6に示す絶縁部材306のように、先端胴部を有さず、筒状の後端胴部362よりも先端側をテーパ部363として形成してもよい。あるいは、
図7に示す絶縁部材406のように、先端胴部や後端胴部を有さずテーパ部463のみを有する形態、例えば円錐体に筒孔が形成された形状としてもよい。また、
図7の絶縁部材406は、後端面465が、上記したように、円弧状の断面を有し周方向に一周する曲面状をなす面である場合を示す例でもある。
【0040】
また、グロープラグ1はセラミックヒータ2を備えたが、これに限られず、先端部が半球状に閉塞した金属製のシースチューブ内にコイル状の発熱抵抗体や制御抵抗体を配したシーズヒータを備えてもよい。
【0041】
なお、本実施の形態においては、セラミックヒータ2が「ヒータ」に相当する。中軸3の先端部31が中軸の「一端部」に相当し、後端部32のうちの接続端部36が「他端部」に相当する。接続端子5や丸ナット105が「固定部」に相当する。絶縁部材6が「絶縁体」に相当する。主体金具4のテーパ部47が「第1テーパ部」に相当し、絶縁部材6のテーパ部63が「第2テーパ部」に相当する。これらのテーパは、そのテーパ同士の全てが完全に当接することを必要とはしない。したがって、第1テーパ部に対して第2テーパ部が大きい構成であってもよい。さらに、それぞれのテーパ部が軸線Oとなす角が完全に一致せず、例えば両テーパ部がなす角に5度程度の差異があってもよい。