特許第5964554号(P5964554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964554操作装置及びその操作装置を備える移動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964554
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】操作装置及びその操作装置を備える移動装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/40 20060101AFI20160721BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B66C13/40 A
   B66C13/22 F
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2011-108662(P2011-108662)
(22)【出願日】2011年5月13日
(62)【分割の表示】特願2010-540752(P2010-540752)の分割
【原出願日】2010年7月2日
(65)【公開番号】特開2012-12222(P2012-12222A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年7月1日
【審判番号】不服2015-4584(P2015-4584/J1)
【審判請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】505199739
【氏名又は名称】株式会社五合
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 宏二
(72)【発明者】
【氏名】山口 藤起
【合議体】
【審判長】 伊藤 元人
【審判官】 加藤 友也
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/099611(WO,A1)
【文献】 特開2007−130485(JP,A)
【文献】 特開平1−103278(JP,A)
【文献】 特開昭59−166496(JP,A)
【文献】 実公昭48−35886(JP,Y1)
【文献】 実開平1−90790(JP,U)
【文献】 特開平9−282904(JP,A)
【文献】 実公昭46−26735(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C13/40
B66C13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体との間の相対的回動の回動量又は回動方向を変更することにより、物体の移動に利用される駆動装置の動作を遠隔操作により指示することができる操作装置であって、
前記操作装置はリモコンであり、
前記第1の筐体及び前記第2の筐体は、それぞれ、前記リモコンの筐体の一部であり、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とは、前記相対的回動における回動軸に沿って隣接するように配置されており、
前記第1の筐体及び/又は、前記第2の筐体は、前記相対的回動の回動軸周りに沿って、前記相対的回動の回動量又は回動方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を備えており、
前記標示部は、前記第1の筐体の外表面のうち、前記第2の筐体側の端部の近傍、及び/又は、前記第2の筐体の外表面のうち、前記第1の筐体側の端部の近傍に配置されている
ことを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記第1の筐体を操作者が保持したとき操作者の側とは反対側に位置する、前記第1の筐体及び/又は前記第2の筐体の面に、操作者により指示された前記駆動装置の動作の方向を報知するための報知部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記第1の筐体が備えており前記第1の筐体と前記第2の筐体は垂直な回動軸に沿って内部に信号ケーブルを挿通した管状部材で繋がれており、
前記第1の筐体に前記標示部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項4】
物体の移動に利用される駆動装置と、該駆動装置の動作を指示する操作装置とを備える移動装置であって、
前記操作装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の操作装置である
ことを特徴とする移動装置。
【請求項5】
操作者の視界に入る領域のうち前記操作装置を除く場所に、前記相対的回動の回動量若しくは回動方向に関する情報又は前記物体の進行方向を表示する表示部を備え、
前記表示部による表示の少なくとも一部は、前記相対的回動の回動量若しくは回動方向の変化又は前記第1の筐体の前記標示部における標示の変化に同期して変化する構成である
ことを特徴とする請求項4に記載の移動装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、操作者の視界上方のX方向に配置されるX方向レールと、X方向に垂直なY方向に配置されるとともに前記X方向レールに沿って移動するY方向レールと、該Y方向レールに沿って移動するとともにX及びYの両方向に垂直なZ方向に物体を移動させることができる走行体とを備えており、
前記表示部が前記Y方向レールに配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の移動装置。
【請求項7】
前記X方向レールが平行に配置される一対のレールを備え、前記表示部が前記一対のレール間の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の移動装置。
【請求項8】
前記駆動装置の制御部と、前記操作装置とが非接触で送受信可能に構成されている
ことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の移動装置。
【請求項9】
前記第1の筐体には少なくとも前記走行体による物体のZ方向の移動を指示するためのボタンが設けられており、前記第2の筐体には、前記相対的回動を検出する回動検出部と、該回動検出部からの出力信号及び前記ボタンの操作に基づく信号を処理するための回路基板と、設けられている
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の移動装置。
【請求項10】
前記第1の筐体には少なくとも前記走行体による物体のZ方向の移動を指示するためのボタンと該ボタンの操作に基づく信号を第2の筐体側に出力するための信号線の本数を減じるために、前記信号を処理する第1の回路基板とが設けられており、
前記第2の筐体には、前記相対的回動を検出する回動検出部と、該回動検出部からの出力信号及び前記第1の回路基板からの出力信号を処理するための第2の回路基板と、前記第1の回路基板からの出力信号を前記第2の回路基板に伝達する接続用部材とが設けられている
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の移動装置。
【請求項11】
前記操作装置とは非接触で離間した場所に設けられ、前記操作装置の特定の位置及び/又は方向に適合させた参照信号を生成する生成手段と、該生成手段により生成される参照信号を受けて、前記操作装置が前記特定の位置及び/又は方向となった際に基準位置及び/又は基準方向の調整を行う基準位置調整部を備える
ことを特徴とする請求項4ないし10のいずれかに記載の移動装置。
【請求項12】
前記操作装置には、互いに所定距離をおいて配置され、それぞれが参照信号を生成する複数個の信号生成手段が設けられており、
前記操作装置とは非接触で離間した場所に互いに距離をおいて配置され、それぞれが前記参照信号を検出する3個以上の受信部と、各受信部からの検出信号に基づいて前記操作装置の位置及び/又は方向を演算する演算部とを有する基準位置構成部を備える
ことを特徴とする請求項4ないし10のいずれかに記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が物体の移動に利用される駆動装置の動作を操作することができる操作装置及びその操作装置を備える移動装置に関し、より詳しくは、操作者が第1の装置要素の筐体と第2の装置要素の筐体との間の相対的回動の回動量を変更することにより、物体の移動に利用される駆動装置の動作する方向等を操作することができる操作装置及びその操作装置を備える移動装置に関する。
なお、本発明において操作装置を持って駆動装置の動作を操作する者を「操作者」という。また、本発明において、操作者の周囲(操作者が操作装置を操作する場合における操作作業の範囲内、操作者が操作装置を操作することにより物体が移動する場合における当該物体の移動範囲内及び操作者が操作装置を操作することにより操作者以外の人間に危険が及ぶか又は及ぶおそれがある場合における当該人間が居る範囲を含む)に居る人間のうち少なくとも一部を操作者の「周囲の人間」という。
【背景技術】
【0002】
操作者が物体の移動に利用される駆動装置の動作を指示するための操作装置の例として、操作者が、回動接続部を介して接続された長尺部材と筐体との間の相対的回動の回動量を変更することにより、物体の移動に利用される駆動装置の動作を指示することができる操作装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記のような操作装置又はそれを備える移動装置において、操作装置の筐体を手に持ち、物体の移動を操作する操作者が目視可能な場所(たとえば操作者が手元を一瞥したときに視界に入る操作装置の筐体)に、筐体が向いている方向、従って操作者が選択した物体の移動方向を表示する表示部を備える例が知られている(特許文献2)。この例では、操作者の周囲の人間が視認又は目視できる場所(例えば操作者が移動する物体を眺めたときに視界に入る天井、壁面等など)に表示部を設置すれば、その周囲の人間も物体の移動方向を察知することができ、危険回避ができるとされている。また、その表示部の典型例は、筐体が向いている方向を文字、記号、数字、矢印、色の種類や濃淡、光の点滅などで表示する電光掲示板や方向指示器であるが、特に制限はないとされている(特許文献2の段落0082乃至0084,段落0226,0268参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−39232
【特許文献2】WO2008/099611 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後者の従来例(特許文献2)には、操作者が手元を一瞥したときに視界に入る操作装置の筐体に当該筐体が向いている方向を表示する表示部を設けること、及び、操作者の周囲の人間が視認できる操作装置の筐体以外の場所に物体の移動方向を表示する表示部を設けることが開示されている。
しかし、その開示内容は具体的なものとはいえず、各表示部を眺める操作者及びその周囲の人間の立ち位置、姿勢、行動等を考慮した構成や、コンパクトに形成したり、操作精度を高めるための操作装置やそれを備える移動装置の具体的構成についての教示や示唆を与える記載は見あたらない。
【0006】
また、後者の従来例には操作装置の筐体に表示部を設けることが開示されているとはいえ、そこに具体的に記載されている表示部は、筐体の向きに対応するエンコーダからの角度情報に基づき筐体が向いている方向や物体の移動方向を演算して表示するものとされている(特許文献2の段落0266、0268及び図24参照)。
この場合、当該演算を行うための電気信号処理装置の存在を前提としている分だけ操作装置の構成(特に操作装置の筐体内に収容される電気回路)が複雑にならざるを得ず、筐体の大型化を招き、操作者にとって使い勝手が良くないものとなる。筐体を小型化するには、操作装置の構成に格段の工夫が必要になってくる。
【0007】
本発明は、以上を背景としてなされたものであり、操作装置の操作者が扱いやすいように又はコンパクトに形成することができると共に、精度よく操作指示を出すことができ、同時にクレーン等の物体の移動に用いられる駆動装置の動作を手元で容易に確認できる操作装置及びその操作装置を備える移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る操作装置は、第1の筐体と第2の筐体との間の相対的回動の回動量又は回動方向を変更することにより、物体の移動に利用される駆動装置の動作を遠隔操作により指示することができる操作装置であって、前記第1の筐体と前記第2の筐体とは、前記相対的回動における回動軸に沿って隣接するように配置されており、
前記第1の筐体及び/又は、前記第2の筐体は、前記相対的回動の回動軸周りに沿って、前記相対的回動の回動量又は回動方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を備えており、前記標示部は、前記第1の筐体の外表面のうち、前記第2の筐体側の端部の近傍、及び/又は、前記第2の筐体の外表面のうち、前記第1の筐体側の端部の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0009】
この操作装置においては、第1の筐体が第2の筐体に対して相対的回動が可能に構成されているので、操作者が例えば第1の筐体を手にして操作を行う際、操作者の立ち位置、操作姿勢或いは操作行為により第1の筐体と第2の筐体との間にねじり力が加わっても、第2の筐体に対する第1の筐体の配向は変わるものの操作者に対する第1の筐体の配向は変わらないで済む。それ故、この操作装置は、操作者にとって扱い易いものとなる。また、操作者にとっては第1の筐体のみを手にして操作すればよいので、操作に直接関係する部品(例えば操作用スイッチ)は第1の筐体に、そうでない部品(例えば信号処理のための回路基板や前記相対的回動を検出するための電子機器)は極力第2の筐体に配置するように設計することができるので実質的にコンパクトにできる。もしくは、二つの筐体間で重量バランスが良好な造りを実現することができる。
しかも、この操作装置においては、第1の筐体及び/又は第2の筐体に前記相対的回動の程度又は回動した方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を形成しているので、操作者は、その標示部に標示される情報を目視することにより、操作者自身が行った操作の量や方向、別の見方をすれば自身の立ち位置、操作姿勢或いは操作行為を認識することができる。これにより、操作者は、物体の移動に用いられる駆動装置の動作、或いは当該物体や当該駆動装置と自己との位置関係や距離感覚、場合によっては更に自分以外の人間(周囲の人間)や自分を取り巻く環境内にあるその他の機器、装置その他の物品と自身との位置関係や距離感覚を手元で容易に確認又は予測することができ、同時に精度よく操作指示を出すことができ、操作をより安全に行うことができるようになる。総じて、この操作装置を用いれば、操作者は、迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができる。
【0010】
以上により、本発明によれば、操作者が扱いやすいように又はコンパクトに形成することができると共に、精度よく操作指示を出すことができ、同時に物体の移動に用いられる駆動装置の動作を手元で容易に確認又は予測することができ、ひいては操作者が迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができる操作装置を提供することができる。
なお、本発明で「回動」とは「回転」よりも広義に用いられ、「正逆に」回転することと同じ意味である。
【0011】
本発明に係る操作装置では、好ましくは、(1)第1の筐体及び第2の筐体が、前記標示部が設けられている場所又はその近傍において、前記相対的回動の回転軸周りで略同径又は前記相対的回動の回転軸に垂直な断面がいずれも略円形とする。
また、(2)第1の筐体及び第2の筐体が、前記相対的回動の回転軸に沿って互いに近接し、その近接位置又はその近傍において、前記相対的回動の回転軸周りで略同径又は前記相対的回動の回転軸に垂直な断面がいずれも略円形とし、第1の筐体及び/又は第2の筐体に前記標示部を備える構成にする。
また、(3)第1の筐体及び第2の筐体が、それぞれが有する前記相対的回動の回動軸に垂直な表面が互いに近接して対面するとともに、それぞれがその対面位置及びその近傍においてそれぞれ略同径の略円柱状とする。
更に、(4)第1の筐体及び第2の筐体のうち少なくとも一方の表面のうち、前記対面位置及びその近傍における前記相対的回動の回動軸周りの少なくとも一部の範囲に、前記相対的回動の程度又はその程度に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を備える構成にする。
【0012】
上記(1)の構成では、第1の筐体及び第2の筐体が、少なくとも標示部がある場所及びその近傍において、前記相対的回動の回転軸周りで略同径又は前記相対的回動の回転軸に垂直な断面がいずれも略円形であるのに対して、上記(2)の構成では、第1の筐体及び第2の筐体が、標示部がある場所及びその近傍であると否とに拘わらず、少なくとも前記相対的回動の回転軸に沿って互いに近接する位置又はその近傍において、前記相対的回動の回転軸周りで略同径又は前記相対的回動の回転軸に垂直な断面がいずれも略円形であるという点で異なるものの、いずれの構成であれ、前記相対的回動の回転軸周りで略同径であれば両筐体を相対的に回動させても、一方の筐体が他方の筐体の表面に影を作ることはなく、また、前記相対的回動の回転軸に垂直な断面がいずれも略円形であれば回動により筐体の表面に影を作ることがあっても影は均一であり、影の濃淡や長短が生じないので、当該他方の筐体表面に配置する標示部が標示する情報が読みにくくなるような事態は生じない又は生じにくくなる。
なお、上記(1)の構成よりも上記(2)の構成の方が製造し易いという違いがある。また、第1の筐体と第2の筐体とが制限された範囲内で相対的に回動するように設計する場合には、上記(1)及び(2)のいずれの構成であってもよいが、上記(2)の構成でする必要はなく、上記(1)の構成で足りる。
【0013】
また、上記(3)の構成により、両筐体を相対的に回動させても、一方の筐体が他方の筐体の表面に影を作ることはなくなり、当該他方の筐体表面に配置する標示部が標示する情報が読みにくくなるような事態は生じない。
さらに、上記(4)の構成により、第1の筐体及び第2の筐体のうち一方に設けられた標示部による標示が、近接して対面する他方の筐体の相対的回動により視覚的に強調されるので、その相対的回動の程度又はその程度に関する情報を操作者が目視又は視認し易くなり、見落としもなくなる。それ故、本発明によれば、上記の問題の発生が防止又は低減されるので、操作者は迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができるようになる。
なお、第1の筐体及び第2の筐体の両方に標示部が設けられていた方が、近接して対面する他方の筐体の相対的回動による視覚的強調の効果は大きいので、好ましい。
【0014】
次に、本発明に係る移動装置は、 物体の移動に利用される駆動装置と、第1の筐体と第2の筐体との間の相対的回動の回動量又は回動方向を変更することにより、前記物体の移動に利用される駆動装置の動作を指示する操作装置とを備える移動装置であって、前記第1の筐体及び/又は前記第2の筐体には、前記相対的回動の回動軸周りに沿って、前記相対的回動の回動量又は回動方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を備え、さらに、操作者の視界に入る領域のうち前記操作装置を除く場所に、前記相対的回動の回動量若しくは回動方向に関する情報又は前記物体の進行方向を表示する表示部を備え、前記表示部による表示の少なくとも一部は、前記第1の筐体の前記標示部による標示の変化に同期して変化する構成としたことを特徴とする。
【0015】
この移動装置は、操作者の視界に入る領域のうち前記操作装置を除く場所に、前記相対的回動の回動量若しくは回動方向に関する情報又は前記物体の進行方向を表示する表示部を備えている。すると、操作者のみならず、その周囲の人間も表示部に表示される情報を目視することができ、従って物体の移動に用いられる駆動装置の動作、或いは当該物体や当該駆動装置と各自との位置関係や距離感覚、場合によっては更に各自以外の人間や各自を取り巻く環境内にあるその他の機器、装置その他の物品と自身との位置関係や距離感覚を容易に確認又は予測することができるようになるので、操作者及びその周囲の人間は、それぞれの作業を安全に行うことができる。
また、この移動装置は、本発明に係る操作装置と同様の操作装置を備えている。この操作装置を用いれば、既に説明した理由により、操作者は、迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができる。
このような移動装置を用いれば、操作者は、効率的に作業を行うことができるし、その周囲の人間も安心して効率的に各自の作業を行うことができる。
従って、本発明によれば、操作装置の操作者が迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができ、同時に操作者及びその周囲の人間がそれぞれの作業を安全に(特に操作者においては、その周囲の人間に危険を及ぼすことなく)、ひいては効率的に行うことができる移動装置を提供することができる。
【0016】
なお、本発明において「標示部」と「表示部」とは区別される。
本発明における「表示部」は、操作者が操作装置を用いて駆動装置の動作を操作して物体を移動させる場合において、当該操作装置の筐体以外の場所に設置され、当該物体の移動方向に関する情報を、必要があれば他の情報とともに、操作者やその周囲の人間が目視又は視認できる態様で操作者及び/又は周囲の人間に対して当該情報を伝達するための手段をいう。第2の従来例における表示部は、本発明における「表示部」に該当する。
これに対して、本発明における「標示部」は、操作者が操作装置を用いて駆動装置の動作を操作して物体を移動させる場合において、当該操作装置の筐体に設置され、当該筐体が向いている方向に関する情報を、必要があれば他の情報とともに、操作者が目視又は視認できる態様で操作者に対して当該情報を伝達するための手段をいう。
本発明において「標示部」と「表示部」とが区別されるのと同様に、「標示」と「表示」とは区別される。
因みに、たとえば、刻印、印刷、表面加工、表面処理、発光素子の据え付け等の手法を適用することにより、伝達すべき情報として形成した文字、記号、数字、矢印、目盛、図形、色の種類や濃淡、光の点滅などが、操作装置の筐体の外表面のうち操作者が操作作業中に容易に視認できる適当箇所に取り付けた場合、その取り付けによる情報伝達は「標示」に該当する。
【0017】
本発明に係る移動装置が備える操作装置は、好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成にすることができ、これにより、既述の各構成に対応した効果を得ることができる。
【0018】
また、本発明に係る移動装置は、物体の移動に利用される駆動装置と、前記物体の移動に利用される駆動装置の動作を指示する操作装置とを備える移動装置であって、前記駆動装置の制御部と、前記操作装置とが電波信号または光信号により非接触で送受信可能に構成されており、さらに、操作者の視界に入る領域のうち前記操作装置を除く場所に、前記物体の進行方向を表示する表示部を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、前記操作装置と前記駆動装置との間の信号のやりとりが作業空間内を移動する物体、作業空間内の設置物、人の往来などにより邪魔されることなく、ケーブルの複雑な取り回し等が不要となる。また、クレーン等の移動装置に近接して操作者の周囲の人間は、表示部に表示される情報により物体の移動方向や駆動装置の挙動を容易に認識もしくは予測することできるので、迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができる。
【0019】
本発明に係る移動装置の好ましい形態では、前記駆動装置は、操作者の視界上方のX方向に配置されるX方向レールと、X方向に垂直なY方向に配置されるとともに前記X方向レールに沿って移動するY方向レールと、該Y方向レールに沿って移動するとともにX及びYの両方向に垂直なZ方向に物体を移動させることができる走行体とを備えており、前記表示部が前記Y方向レールに配置されている。
この形態の構成によれば、前記表示部が作業空間内の高い位置に配置するので、作業空間内を移動する物体、作業空間内の設置物などにより、前記表示部を眺める操作者及び/又は周囲の人間の視界が遮られることがないので、作業員は迅速・確実、且つ安全にそれぞれの作業を行うことができる。
【0020】
その場合、前記X方向レールは平行に配置される一対のレールを備えており、前記表示部は前記一対のレール間の位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、前記表示部が前記一対のレール間の位置に配置されていると、操作者及び/又は周囲の人間は、表示部が最も高い位置にあるから作業空間内の荷物や配置物等に遮蔽されにくく、かつ、前記走行体の近傍において、しかも作業空間のほぼいずれの位置においても、該走行体の走行する方向を容易に確認することができる。
【0021】
本発明に係る移動装置の別の好ましい形態では、前記第1の筐体には少なくとも前記走行体による物体のZ方向の移動を指示するためのボタンが設けられており、前記第2の筐体には、前記相対的回動を検出する回動検出部と、該回動検出部からの出力信号及び前記ボタンの操作に基づく信号を処理するための回路基板と、前記第1の回路基板からの出力信号を前記回路基板に伝達する接続用部材とが設けられている。
この形態の構成によれば、操作者は第1の筐体のみを手にして操作すればよいので、操作に直接関係する部品(ボタン)は第1の筐体に、そうでない部品(少なくとも、前記相対的回動を検出する回動検出部と、該回動検出部からの出力信号及び前記ボタンの操作に基づく信号を処理するための回路基板と、前記第1の回路基板からの出力信号を前記回路基板に伝達する接続用部材)は極力第2の筐体に配置するように設計することができるので、実質的にコンパクトな又は二つの筐体間で重量分配が適切になされた造りの操作装置及びこれを備える移動装置を提供することができる。
【0022】
また、第1の筐体に設置されるボタンが防塵構造若しくは防水構造又は多段式のスイッチである場合には、当該スイッチが占める空間は通常のスイッチに比して大きくなり、限られた筐体の空間内に設置することが難しくなってくる。しかし、操作者による操作に直接関係しない部品が第2の筐体に設置されるので、第1の筐体に空間的な余裕を作り出すことができる。それ故、この形態の構成によれば、占有空間の大きなスイッチであっても第1の筐体に設けることができるので、防塵性や防水性の高い又は高機能なボタン操作が可能な操作装置及びこれを備える移動装置を提供することができる。
更に、操作者が保持して操作をしない第2の筐体側に振動や衝撃に弱い部品を内蔵するようにしているので、操作や保持の際などに、不用意に衝撃を受けやすい第1の筐体内に当該部品の少なくとも一部を収容する場合と比べると、外部からの振動や衝撃を受けても故障や不具合が生じにくい操作装置になる。また、この操作装置は、第2の筐体だけを取り外してこれら内蔵されている部品の故障や不具合を修理したり、必要な部品交換したりすることができるので、保守性にも優れている。従って、この構成によれば、故障や不具合が比較的生じにくく、保守しやすい操作装置及びこれを備える移動装置を提供することができる。
【0023】
本発明に係る移動装置の更に別の好ましい形態では、第1の筐体及び/又は第2の筐体の外表面の少なくとも一部に、衝撃低減部材を備えている。この構成によれば、外部からの振動や衝撃を受けても故障や不具合が生じにくい操作装置及びこれを備える移動装置を提供することができる。
なお、衝撃低減部材とは、第1の筐体及び/又は第2の筐体に外部から加わる衝撃や振動により、第1の筐体及び/又は第2の筐体の内部に設置された電子部品に悪影響が及ぶ事態を起こりにくくする機能を有する部材をいう。その機能を有する部材である限り、その名称は問わず、故に、耐衝撃部材、衝撃吸収材、振動吸収部材、振動低減部材なども、衝撃低減部材に該当する。
【0024】
本発明に係る移動装置の更に別の好ましい形態では、前記第1の筐体には少なくとも前記走行体による物体のZ方向の移動を指示するためのボタンと該ボタンの操作に基づく信号を第2の筐体側に出力するための信号線の本数を減じるために、当該信号を処理する第1の回路基板とが設けられており、前記第2の筐体には、前記相対的回動を検出する回動検出部と、該回動検出部からの出力信号及び前記第1の回路基板からの出力信号を処理するための第2の回路基板と、前記第1の回路基板からの出力信号を前記第2の回路基板に伝達する接続用部材とが設けられている。
この形態の構成によれば、第1の筐体に設けられたボタンの操作に基づく信号を第2の筐体側に出力する際、第1の回路基板による信号処理により、第1の筐体側から第2の筐体側に引き回される信号線の本数を低減することができるので、その分、第2の筐体に設置される接続用部材をより小型にすることができる、又は、同じ接続用部材であっても、第1の筐体側から第2の筐体側へより多くの信号を伝達することできる。従って、信号数が多くてもその割にコンパクトな操作装置及びこれを備える移動装置を提供することができる。操作装置の高機能化が求められる場合、信号数は往々にして増加しがちであるので、この利点は特に有益である。
【0025】
前記第1の筐体には、非常停止を指示するための非常停止スイッチが設けられていてもよい。
この構成によれば、操作装置を操作している際に操作者が何らかの危険を察知したときに、迅速に装置を停止し安全を図ることができる。また、第1の筐体に非常停止スイッチを設けた結果、第2の筐体側へ出力すべき信号の数が増えても、第1の回路基板による信号処理により、第1の筐体側から第2の筐体側に引き回される信号線の本数を低減することができるので、安全な操作装置を無理なく設計し、構成することができる。
【0026】
本発明に係る移動装置の更に別の好ましい形態では、前記第1の筐体を操作者が保持したとき操作者の側とは反対側に位置する、前記第1の筐体及び/又は前記第2の筐体の面に、操作者により指示された前記駆動装置の動作の方向を報知するための報知部を備えている。
この形態の構成によれば、操作者自身にあっては、自己が操作する際に前記走行体が向かう方向をあらためて報知されるので、報知内容を確認しながら安心して安全な操作を行うことができるとともに、前記走行体や前記走行体による物体の移動方向の先や周囲にいる人間(操作者の周囲の人間)に注意を払うことができるので、事故の発生を未然に防ぐことができる。また、その周囲の人間にあっては、表示部による表示を確認せずとも報知部の報知により前記走行体の向かう方向、即ち移動される物体が向かう方向を知ることができ、前記走行体や物体の接近による身の危険を早期に察知することができる。
【0027】
前記報知部は、操作者により指示された前記駆動装置の動作の方向を照らすための照明装置であってもよい。
この構成によれば、操作装置から照射される光により、操作者が操作装置により指示した前記走行体や前記走行体による物体の移動方向が照らし出されるので、操作者及び周囲の人間は当該移動方向を視覚的に又は直感的に認識できる。
【0028】
本発明に係る移動装置の更に別の好ましい形態では、前記操作装置とは非接触で離間した位置に設けられ、前記操作装置の特定の位置及び/又は方向に適合させた参照信号を生成する生成手段と、該生成手段により生成される参照信号を受けて、前記操作装置が前記特定の位置及び/又は方向となった際に基準位置及び/又は基準方向の調整を行う基準位置調整部を備えている。
【0029】
操作装置が、該操作装置により指令を受ける駆動装置の制御部側から非接触で離れた場所にある場合、操作装置がそれ自体の位置を、ジャイロなどの位置検知手段により自立的に検出し、検出された位置に関する情報に基づいて前記制御部に対して移動指示の指令を無線又は有線により出力することになる。しかしながら、操作者が操作装置を持ち歩きながら操作していると、当該位置検出手段による検知される操作装置の位置に関する情報に誤差が累積し、前記制御部による移動指示が不正確になる場合がある。これに対して、上記の形態の構成によれば、操作装置の特定の位置及び/又は方向に適合させた参照信号を外部から受け取るようにし、当該参照信号に基づき操作装置の基準位置及び/又は基準方向を調整するので、操作装置の位置に関する情報に誤差が累積しても定期的又は不定期にその誤差を解消することができ、前記制御部による移動指示の正確性を維持することができる。
【0030】
本発明に係る移動装置の更に別の好ましい形態では、前記操作装置には、互いに所定距離をおいて配置され、それぞれが参照信号を生成する複数個の生成手段が設けられており、前記操作装置とは非接触で離間した位置に互いに距離をおいて配置され、それぞれが前記参照信号を検出する3個以上の受信部と、各受信部からの検出信号に基づいて前記操作装置の位置及び/又は方向を演算する演算部とを有する基準位置構成部を備えている。
この形態の構成によれば、操作装置の外面から複数の参照信号を出し、当該参照信号を前記操作装置とは非接触で離間した位置であって、互いに離れた3個以上の受信部と各受信部が検出した検出した検出信号に基づいて、前記演算部により、前記操作装置の位置及び/又は方向を求め基準位置調整を行うので、移動指示情報に誤差が生じないようにすることができるので、既述の問題、即ち、操作者が操作装置を操作者が保持して持ち歩きながら操作していると、ジャイロなどの位置検出手段による検知される操作装置の位置に関する情報に誤差が累積し、前記制御部による移動指示が不正確になる場合があるという問題の発生を防止することができる。
【0031】
更に、本発明に係る移動装置は、第1の筐体と第2の筐体との間の相対的回動の回動量又は回動方向を変更することにより、物体の移動に利用される駆動装置の動作方向を操作することができる操作装置であって、前記第1の筐体と前記第2の筐体は垂直な回動軸に沿って内部に信号ケーブルを挿通した管状部材で繋がれており、前記第2の筐体は前記駆動装置の一部として上方に配置された走行体に設けられており、前記第1の筐体は、前記第2の筐体に対して相対的に回動自在とされており、前記第1の筐体には、前記相対的回動の回動軸周りに沿って、前記相対的回動の回動量又は回動方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を備えていることを特徴とする。
【0032】
この移動装置においては、第2の筐体が第1の筐体から離れて上方に配置され、操作者が保持して操作するのは第1の筐体だけとなるので、操作装置は、操作者が操作する操作装置は実質的に第1の筐体に相当するものとなる。これにより、操作者が実質的に操作する操作装置をコンパクトに形成することができ、軽量で扱いやすいものにすることができる。また、第1の筐体を手にする操作者の視界に第2の筐体が入らない又は入りにくくなるので、軽量化の効果と相まって操作性がより向上がする。更に、第2の筐体は、第1の筐体に外部から加わる振動や衝撃の影響が及びにくい、或いは外部から加わる振動や衝撃が加わりにくい上方の場所に配置しているので、当該操作装置は、故障や不具合が生じにくく、長期の使用に耐えうるものとなる。
【0033】
また、この移載装置においては、第1の筐体及び/又は第2の筐体に前記相対的回動の程度又は回動した方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部を形成しているので、操作者は、その標示部に標示される情報を目視することにより、操作者自身が行った操作の量や方向、別の見方をすれば自身の立ち位置、操作姿勢或いは操作行為を認識することができる。これにより、操作者は、物体の移動に用いられる駆動装置の動作、或いは当該物体や当該駆動装置と自己との位置関係や距離感覚、場合によっては更に周囲の人間や自分を取り巻く環境内にあるその他の機器、装置その他の物品と自身との位置関係や距離感覚を手元で容易に確認又は予測することができ、同時に精度よく操作指示を出すことができ、操作をより安全に行うことができるようになる。
【0034】
なお、上記の構成、即ち第2の筐体が第1の筐体から離れて上方に配置されることは、第2の筐体に外部からの衝撃に比較的弱い部品(例えば、(例えば信号処理のための回路基板や前記相対的回動を検出するための電子機器)を偏在させる場合に、特に有益である。第1の筐体に外部から加わる振動や衝撃の影響が第2の筐体に及びにくくなり、故障や不具合が生じにくくなる効果が顕著になるからである。また、上記の構成は、操作装置の耐衝撃性を高める手段を設ける際にも、第1の筐体にその手段を設ければ足りることになるので、操作装置の設計の自由度を高めることができるという点においても有益である。
【発明の効果】
【0035】
以上述べたように、本発明によれば、操作装置の操作者が扱いやすいように又はコンパクトに形成することができると共に、精度よく操作指示を出すことができ、同時にクレーン等の移動装置の移動方向を手元で容易に確認又はできる操作装置及びその操作装置を備える移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの昇降機としての巻上機の構造を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る操作装置の概略斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る操作装置の縦断断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの電気的構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係る移動装置に設ける表示部の構成例を示す概略正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る移動装置に設ける表示部の構成例を示す概略正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る操作装置(第1の変形例)を示す概略側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る操作装置(第1の変形例)の筐体部分の第1の内部構成例を示す部分拡大断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る操作装置(第1の変形例)の筐体部分の第2の内部構成例を示す部分拡大断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る操作装置(第1の変形例)の筐体部分の第3の内部構成例を示す部分拡大断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る操作装置の電気的構成例を示すブロック図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンを無線により操作する操作装置を用いた場合の電気的構成例を示すブロック図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンに用いる操作装置の基準位置調整機構の概略構成例を示すブロック図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンに用いる操作装置の基準位置調整機構の他の概略構成例を示すブロック図である。
図16】本発明の他の実施形態に係る操作装置の基準位置調整機構の構成を模式的に示す図である。
図17】本発明の他の実施形態に係る操作装置の基準位置調整機構による基準位置調整の手法の概略を示すタイムチャートである。
図18】本発明の他の実施形態に係る操作装置の基準位置調整機構による基準位置調整の手法を実行する際の各構成部の処理を示すフローチャートである。
図19】本発明の他の実施形態に係る操作装置の基準位置調整機構の他の構成を模式的に示す図である。
図20】本発明の他の実施形態に係る操作装置の基準位置調整機構の他の構成による基準位置調整の手法を実行する際の各構成部の処理を示すフローチャートである。
図21】本発明の他の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの全体構成を示す斜視図である。
図22】本発明の他の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンに好適に使用される操作装置の筐体部分の内部構成例を示す部分拡大断面図である。
図23】本発明の他の実施形態に係る操作装置(第2の変形例)の概略斜視図である。
図24】本発明の他の実施形態に係る操作装置(第2の変形例)の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明の好適な実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。その際、必要に応じて図表を参照しつつ説明するが、各図表において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0038】
(第1の実施形態)
図1は本発明の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの全体構成を示す斜視図である。図2は本発明の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンの昇降機としての巻上機の構造を示す図である。
【0039】
図1に示されるように、本実施形態に係る移動装置としての天井クレーン1は、建物の天井付近に所定の間隔をあけてX方向に平行に配置される少なくとも一対のX方向レールである行レール2A,2Bを有している。これらX方向レール2A,2Bを介に対してそれぞれ車輪で接してX方向に走行する1対のサドル3A,3Bが設けられている。サドル3A,3Bの間には、X方向に対して垂直なY方向に配置されるY方向レールであるクレーンガーダ4が設けられている。そして、該クレーンガーダ4に沿ってY方向に移動するとともに前記XおよびYの各方向に垂直なZ方向に沿って、荷物等の昇降を行う巻き揚げ機を備えた走行体5を有している。
即ち、走行体5は走昇降機であり、走行体5に巻き上げられる支持ワイヤロープ6の先端に移動体としてのフック7を固定して構成されている。
【0040】
このように、天井クレーン1は、走行レール2A,2Bに対してほぼ垂直にクレーンガーダ4を横架して、このクレーンガーダ4上を先端にフック7を有する走行体5が移動するように構成されているので、移動体としてのフック7を上下方向に移動させるZ軸モータ、及び水平面内で移動させるX軸モータ及びY軸モータとを具備する三次元の移動機構を中心とした本発明に係る移動装置として適している。
【0041】
走行体5からは、長尺部材としての撓みはするが捩れない通信ケーブル8が床面近傍まで垂下しており、通信ケーブル8の下端は通信ケーブル8に対して相対的に回動変位しない第2の筐体30と該第2の筐体に対して回動可能な第1の筐体20を有する操作装置であるリモートコントローラ(以下「リモコン」という場合がある)10に接続されている。
ここで、撓みはするが捩れない通信ケーブル8は、撓みはするが捩れないケーブルチューブ内に通信線を内蔵してリモコン10と電気的に接続されている。「撓みはするが捩れないケーブルチューブ」としては、具体的にはJIS−C8309に規定される金属製可とう電線管及び樹脂被覆金属製可とう電線管があり、例えば株式会社三桂製作所製の商品名プリカチューブ或いは防水プリカチューブを用いることができる。
【0042】
図2に示されるように、走行体5はクレーンガーダ4を挟んで設けられた1対の車輪14を有しており、これらの車輪14が横行用モータ(Y軸モータ)13で駆動されて回動することによって、走行体5がクレーンガーダ4に沿って横行する。これらの横行ユニットには支持部材15によって巻上機本体17が吊り下げ支持されており、巻上機本体17には支持ワイヤロープ6を巻き上げ、又は伸ばすための巻上用モータ(Z軸モータ)16が取り付けられている。
【0043】
そして、図1に示されるクレーンガーダ4を両端で支持して走行レール2A,2Bの上を走行するサドル3A,3Bには、それぞれ図示しない走行用車輪と走行用モータ(X軸モータ)が設けられている。また、図2に示される巻上機本体17には、これらのX軸モータ、Y軸モータ27、Z軸モータ29を、リモコン10の操作に応じて駆動させるためのモータ駆動制御回路が内蔵されている。
【0044】
本実施形態では、操作者の視界に入る場所であって、リモコン10の第1の筐体20及び第2の筐体30の各表面を除く領域に、第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的方向又は前記物体の進行方向を表示する表示部を備え、前記表示部による表示の少なくとも一部は、後述する第1の筐体の前記標示部による標示の変化に同期して変化する構成とされている。
図1および図2では、表示部50は方向表示装置として構成されており、走行体5がリモコン10からの指令により走行する際に向かう方向をできるだけ大きな文字や記号で広範囲に存在する人に視認させるものである。表示部50の方向報知の手法には光や音、カラー表示による色違いの表示、文字等が適宜選択される。
【0045】
表示部50の設置場所は、広い範囲からの視認を可能とするために、天井その他の高い場所とするのが好ましい。例えば、表示部50を天井クレーンに適用する場合には、これをクレーンガーダ4の走行体5と衝突しない適当な場所に設置してもよい。表示部50をクレーンガーダ4に設置するのであれば、クレーンガーダ4の長さ方向の中央部付近(走行体5と衝突しない適当な場所に限る)に該クレーンガーダ4に設置するのがより好ましい。クレーンガーダ4は走行体5の移動経路であるので、クレーンガーダ4に表示部50を設置すれば、走行体5の動きを注視する操作者やその周囲の人間は表示部50を視認しやすく、仮に一瞬視界から外れて見失っても速やかに在処を把握することができる。
本実施形態では、図2から理解されるように、走行体5である巻上げ機本体17の上面に、ステー51を固定し、該ステー51に表示部50を、その表示面53を下に向けて取り付けている。なお、符号52は表示部50の駆動回路である。
表示部50を広い施設内に設置された天井クレーンに適用する場合には、走行体5にこれを設置するより、即ちクレーンガーダ4に設置するのが好ましく、グレーンガータ4の長さ方向の中央付近に固定するのがより好ましい。広い施設内で移動する走行体5とともに移動する表示部50を眼で追い続けるのは危険であり、表示部50を定位置に固定しておく方が却って危険が少ないからである。
【0046】
なお、表示部50は一つだけでなく、複数設けてもよい。例えば、もう一つの表示部50aを設けて、これを天井クレーンとは離れた箇所にある図示しない管理室内に配置してもよい。これにより、施設管理者も現在のクレーンの動きを知ることができ、管理上便利である。
また、複数の表示部50は、管理室以外にも、工場の天井、工場の柱、工場の壁面等、リモコン10以外の外面以外のあらゆる場所、即ち、操作者の周囲の人間に視認され得るあらゆる場所に設置可能である。
さらに、表示部の表示内容は、形状や色だけでなく、これに替え、これに加えて、音声でクレーンの走行体5の走行方向を知らせるガイド部34を設けて操作者やその周囲の人間の聴覚を通じてその情報を知らせるようにすることもできる。
表示部50の詳しい構成例は後述する。
【0047】
次に、本実施形態に係るリモコン10の構造について、図3および図4を参照して説明する。
これらの図に示されているように、リモコン10は、第1の筐体20と第2の筐体30との間の相対的回動の回動量を変更することにより、物体(荷物等)の移動に利用される駆動装置の動作方向を操作することができるようにされている。第2の筐体30は通信ケーブル8を介して駆動装置側に固定されている。これら第1の筐体20と第2の筐体30は相対的に回動可能なように、互いに当接状態で接続されている。第1の筐体20と第2の筐体30は、この実施形態では、後述するベアリング等により、それぞれ円筒形による対面接続されて一体に接続されている。第1の筐体20及び第2の筐体30の表面であって、これらの当接位置近傍における前記相対的回動の回動軸周りに沿って、該相対的回動の程度(回動量)又は回動した方向(回動方向)に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部41を備えている
【0048】
標示手段41は、この実施形態では、通信ケーブル8と一体で水平方向に回動変位することのない第2の筐体30の第1が、筐体20と接する領域の外延に沿った細い帯状の領域にて、少なくとも定間隔で記録配置された短い縦の線からなる目盛を含んで形成されている。標示部41は、この実施形態では、目盛および文字で形成されているが、必ずしも文字を必要とせず、東西南北を記号化した幾何学模様等を記録してもよい。この実施形態では、「漢字」で東西南北の各位置に対応する文字を記録しているが、英語の頭文字を取って「EWSN」の各文字を漢字に替え、あるいは漢字に英文字を加えて記録してもよい。
操作者は、第1の筐体20を把持して、手前に「南」の文字がある状態で後述する走行ボタン22を押すと、走行体5は「北」の方向に移動することになる。
また、そうでなく、逆に操作者が視認した文字や記号が意味する方向自体へ移動させるということが、操作実感の上で便宜であり、あるいは安全であるという認識のもとでは、手前に「南」の文字がある状態で後述する走行ボタン22を押すと、走行体5は「南」の方向に移動するように設置することも可能である。
【0049】
図3および図4において、この実施形態では、リモコン10の第1の筐体20と、第2の筐体30は共に円筒型であり、それぞれ中空な内部に後述する必要な部品が収容できるようにされている。なお、筐体の形状は後述するように円筒型に限るものではなく、一方もしくは円錐筒型等適宜の形態を採用することができる。
第1の筐体20は、第2の筐体30よりも細い円筒とされ、操作者が握り保持し易い形状とされている。第2の筐体30は第1の筐体よりやや太い円筒形であり、収容部品のサイズが大きさに適した寸法とされている。
【0050】
第2筐体30の両端部において、その外周には、それぞれリブ状もしくは短いフランジ状に突出した幅広の凸状部でなる衝撃低減部材36,36を有している。衝撃低減部材36は、例えば、弾性樹脂などにより第2の筐体30と二色成形されることにより形成されている。このため、リモコン10が外部に存在するものに接触又は衝突しそうになっても、保護部36により接触又は衝突を回避する、或いは、接触又は衝突による衝撃を低減することができる。これにより、リモコン10の筐体の内部の構造(特に衝撃や振動に弱い電子部品)のみならず、その外観も保護することができる。
【0051】
図4において、第2の筐体30は、ケーブルチューブである通信ケーブル8とシャフト33を介して、該通信ケーブル8の回動方向に関しては実質的に不動である。第1の筐体20は、ベアリング37により第2の筐体30に対して矢印に示すように回動可能に接続されている。さらに、第2の筐体30と第1の筐体20の径方向の中心に沿って後述する管状部が貫通している。
また、第2の筐体30内には、後述する回動検出部としての例えばロータリエンコーダ35と、第1の筐体20からの信号を中継して、走行装置の駆動制御装置側に伝えるための接続用部材としての例えばスリップリング32とを有している。
即ち、回動検出部は、第1の筐体20の第2の筐体30に対する相対的回動変位を検出するものであり、そのような機能を発揮するものであれば、ロータリエンコーダ以外の手段を用いてもよい。接続用部材は、第2の筐体30内で、これに対して、相対的に回動変位する第1の筐体20側からの信号を接触状態で駆動制御装置側へ伝えることができれば、スリップリング32以外の手段を用いてもよい。
【0052】
第1の筐体20の内部には、図示しない回路基板の回路に形成した接点に対応して、押しボタン(スイッチ)21,22,23,24が形成されている。符号21は、走行体5(図1参照)を移動するための指令を出すための操作ボタンである。
即ち、これら操作ボタンは、例えば、走行体5に指令を出して、巻上げ機を動作させて、物体(荷物等)上昇させるための上昇ボタン21と、走行ボタン22と、下降ボタン23とを有している。さらに、これらのボタンに加えて、装置の非常停止スイッチ24を備えている。
そして、これら各ボタンは、例えば、第1の筐体20の一つの側面に縦方向に沿って一列に並んで配置されている。特に本実施形態では、第1の筐体20の一つの側面には、縦方向に長い凹所が形成されており、該凹所21aに各ボタンが収容されることにより、第1の筐体20の外面に大きく突出ないしは露出することがない。このため、予期しないいずれかのボタンの接触による押下に基づく誤操作の事故が防止されている。非常停止ボタン24は、最下段で他のボタンよりも大きく形成されており、非常時に認識し易く、操作し易いようになされている。また、第1の筐体20の少なくとも上記ボタン類が形成されている箇所は防水シートやビニール等で被覆されることにより、防水・防塵構造にしてある。
【0053】
第1の筐体のボタンが配列されている反対の外面21bには全体として太さ径が縮径された縮径部を設けており、これにより、第1の筐体を掴み易い又は把持し易いものにしている。
【0054】
また、リモコン10には、その内部に第1の筐体20方向判別手段としての回動検出部としての光学式ロータリエンコーダ35が設けられており、リモコン10が基準となる方向(本実施形態においては例えば、図1に示されるようにリモコン筐体10がクレーンガーダ4に対して3次元的に垂直に向いた方向)に対して、どちら側に何度回動したかを測定して、この回動角度のデータを電気信号として通信ケーブル8に内蔵されている通信線を通じて、巻上機本体17に内蔵されているモータ駆動制御回路に伝達される。
【0055】
ここで、走行ボタン22を軽く押すと、走行ボタン22が軽く押されたという電気信号は、接続用部材としての、例えばスリップリング32を介して通信ケーブル8に内蔵されている通信線を通じ、巻上機本体17に内蔵されているモータ駆動制御回路に伝達され、モータ駆動制御回路の制御によってX軸モータ及び/又はY軸モータ27が作動して、移動体としてのフック7がリモコン筐体10の方向、即ちリモコン筐体10の正面と正反対の方向へ水平移動する。
【0056】
このモータ駆動制御回路における制御について、図5を参照して説明する。
図3ないし図5において、リモコン10の第1の筐体20には、走行ボタン22、上昇ボタン21、下降ボタン23、非常停止ボタン24が設けられており、これらに必要とされる回路基板(図示せず)等を収容している。また、第1筐体20には、好ましくは、後述する報知部または作業補助部が収容されており、本実施形態では、例えば照明部20aである。各ボタンや照明部は、通信ケーブル8に内蔵されている通信線を通じ、巻上機本体17に内蔵されているモータ駆動制御回路18もしくはそのマイコン25と接続されている。
【0057】
図5において、符号18はモータ制御回路、符号42は、モータ制御回路とリモコン10、後述する表示部50、通信ケーブル8等を含んで移動制御装置、符号45は移動機構を示している。
リモコン10の第2の筐体30には、後で詳しく説明する操作者による操作による第1の筐体20の方向の判別手段としての回動検出部として、ロータリエンコーダ(光学式ロータリエンコーダ)(後述)が内蔵されている。また、接続を維持して電気信号を伝達するための接続部として、例えばスリップリング32とを収容しており、これらは通信ケーブル8に内蔵されている通信線を通じ、巻上機本体17に内蔵されているモータ駆動制御回路もしくはそのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」ともいう。)25と接続されている。
さらに、そして、巻上機本体17に内蔵されているモータ駆動制御回路18は、マイコン25、インバータ及びコンタクタ26を備えている。
【0058】
ここで、マイコン25は、CPU(中央処理装置)、ROM、RAM等のメモリ装置、入出力(I/O)装置を具備しており、リモコン筐体10から通信ケーブル8内の通信線を通じて送信される電気信号を受信して必要な演算処理を行い、その処理結果を電気信号としてインバータ及びコンタクタ26に出力する。マイコン25は、所謂ワンチップマイコンでも良いし、複数のチップ又は素子・部品から構成されるものでも良い。
マイコン20は、図1および図2で説明した表示部50の駆動回路と接続されており、後述するリモコン10の操作結果に基づくそう後退5の走行方向を表示するようになっている。
【0059】
光学式ロータリエンコーダ35は、図4において、リモコン10の第1の筐体20が、ケーブル8に対して原位置からどちら側に何度回動したかを測定して、その測定値を電気信号として通信ケーブル8内の通信線を通じてマイコン25に送信する。そして、走行ボタン22が押された場合には、所定の電気信号が通信ケーブル8内の通信線を通じてマイコン25に送信され、マイコン25はインバータ及びコンタクタ26に制御信号を送信して、該インバータ及びコンタクタ26は制御信号にしたがってX軸モータ28及び/又はY軸モータ27に駆動電流を供給し、X軸モータ28及び/又はY軸モータ27を駆動させて、走行体5を移動させることにより、これに付属するフック7をリモコン筐体10が向いている方向に移動させる。
ここで、「インバータ及びコンタクタ」26は、インバータだけを備えてもよいし、好ましくは、インバータとコンダクタを両方備え、駆動対象の特性に応じて、マイコン25が指令を出してどちらかを選んで使用すると好ましい。
インバータ26およびマイコン25を含むモータ駆動制御回路18は、X軸モータ28、Y軸モータ27、Z軸モータ29の駆動を制御する。
このように、モータ駆動制御回路備えることにより移動装置1の駆動制御装置40が構成されている。X軸モータ28とY軸モータ27とZ軸モータ29を備えることで移動機構45を構成し、これらは、リモコン10を介して操作者により操作されるようになっている。
【0060】
ここで、インバータ26を用いた場合には、X軸モータ28及びY軸モータ27に供給する駆動電流の大きさを無段階で制御できるため、走行体5をリモコン筐体10が向いている方向に直線的に移動させることができるが、インバータに替えてコンタクタ26を用いた場合はX軸モータ28及びY軸モータ27に供給する駆動電流の大きさは常に一定値になるため、走行体5のフック7の移動方向は走行レール2A,2Bに平行な方向とクレーンガーダ4に平行な方向、及びそれらの中間の方向の合計8方向にしか移動させることができない。したがって、走行体5のフック7は細かく見るとジグザグに走行してリモコン筐体10が向いている方向に移動することになる。
【0061】
なお、リモコン10に設けられている上下スイッチとしての上昇ボタン21及び下降ボタン23が押された場合には、所定の電気信号が通信ケーブル8内の通信線を通じて、モータ駆動制御回路18と同じく巻上機本体17に内蔵されているコンタクタ26に伝達され、コンタクタ26からZ軸モータ29に駆動電流が供給されて、上昇ボタン21が押された場合にはZ軸モータ29が支持ケーブル6を巻き上げてフック7を上昇させるように作動し、上昇スイッチ23が押された場合にはZ軸モータ29が支持ケーブル6を伸ばしてフック7を下降させるように作動する。
【0062】
図6図7は、図1および図2で説明した表示部50について説明する。
表示部50は、比較的大きく方向を表示できるものであれば、特定の技術手段に限定されるものではないが、好ましくは、液晶表示装置、LED(発光ダイオード)を用いて矢印表示等により光学的に方向を示す表示装置、EL、光電管などによるセグメントを利用したものなど種々適用することができる。
【0063】
具体的には、図6の表示部50−1や図7の表示部50−2等に示すように、矢印による方向表示と、符号50−1a,50−1b,50−2a,50−2bのように、文字(この場合、英語による「UP」と「DOWN」)による表示部分を組み合わせた表示手法を採用することができる。
例えば、リモココン10からの信号が、マイコン25を介して入力されると、例えば図7の表示部50−2では、方向が選択された段階の表示色(例えば青色)と、走行体5の移動(巻上げ機の駆動を含む)が実行されている場合の表示色(例えば赤色)とを変えて表示する。これにより、周囲に実際の移動タイミングを知らせて、段階的な注意喚起をすることができる。
また、例えば、リモコン10からの指令により走行体5の移動等が指示された場合には、矢印を点滅表示し、移動が実行に移されると矢印を点灯状態に変更表示するようにしてもよい。
【0064】
特に重要なのは、図5のマイコン25の指示により、表示部50による表示の少なくとも一部、例えば、文字表示を除く方向表示は、図3で説明した第1の筐体20の標示部41による標示の変化に同期して変化する構成とされている。
これにより、操作者のリモコン10の操作における操作者自身の認識と、表示部50を参照した操作者の周囲の人間が、走行体5の移動等の情報とが完全に一致し、操作者と周囲の人間の認識の相違による現場の事故等が有効に防止される。
特に、現場において、クレーンが大きな荷物等の搬送物を運んでいる場合などでは、現場の低い位置においては、操作者の周囲の人間の視界が遮られることがあり、荷物の移動方向が予測できずに危険な状態となる場合がある。
しかしながら、表示部50は既に説明したように、作業現場の最も高い位置に配置されることにより、操作者とその周囲の人間が荷物の移動方向等に関するリアルタイムで共有することができ、危険回避の実効を図ることができる。
また、特に図6の場合は、表示部の表示面が平面ではなく、下方に向かってドーム状の突出湾曲面で構成されている。これにより、天井クレーンが設備された空間内のより広い範囲において視認することを可能としている。
さらに、図1に符号50−3で示すように、Y方向レール4の長さ方向の中間付近に表示部を設けてもよい。
これにより、作業エリアの最も広い範囲から操作者及びその周囲の人間が表示部50−3を視認することができ、安全性を向上し得る。
【0065】
以上の構成によれば、図1に記される天井クレーン1を操作する操作者は、まずリモコン10の上昇スイッチ23を押してZ軸モータ29を作動させてフック7を下降させ、床面に置かれている搬送物にフック7を掛け、上昇ボタン21を押してZ軸モータ29を作動させ、支持ワイヤロープ6を巻き上げて搬送物を水平方向の移動に支障のない高さまで吊り上げる。続いて、搬送物を移動させたい方向にリモコン筐体10を向けて、走行ボタン22を軽く押し、フック7に掛けられて移動する搬送物の移動方向を見ながらリモコン筐体10の向きを微調整することによって、所望の方向へ搬送物を平行移動させることができる。
【0066】
走行ボタン22を押すのを止めると走行ボタン22はばね力で戻って、走行体5のフック7は停止する。また、搬送物が所望の方向に移動しているのを確認したら、走行ボタン22を強く押し込むことによって走行ボタン22は押し込んだ状態で保持され、以後リモコン筐体10の方向の電気信号は伝達されなくなり、リモコン筐体10の向きを変えても走行体5のフック7の移動する方向は変化しない。
【0067】
このようにして、走行体5のフック7に吊り下げられた搬送物を所望の位置まで水平移動させたら、走行ボタン22を離して(軽く押し続けた場合)又は再度強く押し込んで(走行ボタン22を固定させた場合)走行ボタン22を戻して走行体5のフック7を停止させ、上昇スイッチ23を押すことによって、Z軸モータ29がフック7を下降させる方向に作動し、支持ワイヤロープ6が伸ばされて搬送物が自重で下降して所定の位置に降ろされる。
【0068】
このように、本実施形態に係る天井クレーン1においては、主として、前記操作子とこれに必要とされる基板や手の動きに追従する回動軸などだけを収容してコンパクト化した第1の筐体20と、前記伝達のための手段を収容した第2の筐体30を設けている。この第1の筐体と第2の筐体は、第1の筐体が回動操作可能な状態で当接状態で接続されるようにし、操作部分をコンパクト化しつつ、必要な機能を発揮できる構成を得たものである。
このことから、操作者の操作行為により位置を変えることがない第2の筐体30に相対的回動の程度又は回動した方向に関する情報を操作者が目視できる態様で標示する標示部41を形成している。これにより、例えば、天井クレーン1等の設備において、走行体5等の移動の方位等を示すことで、操作者に、常に目視により正しい方位を認識させることがでる。操作者は、当該標示部41を見ながら、第1の筐体20側を動かすことで、常に駆動方向を容易に確認及び意識させることができる。
以上により、操作装置の操作者が扱いやすいようにコンパクトに形成することができると共に、精度よく操作指示を出すことができ、同時にクレーン等の移動装置に近接してその周囲の人間が、移動装置の挙動を容易に認識もしくは予測することでき、迅速・確実、且つ安全に作業を行うことができる。
【0069】
図8は、リモコンの好ましい変形例を示している。
図8は第1の変形例であるリモコン10−1の概略側面図である。この図第1の筐体20には、該第1の筐体20を操作者が保持した際に、該第1の筐体20の前記操作者と反対の側に相当する面に、走行体5の動作の方向として操作指示された方向を報知するための報知部20aを備えている。
本実施形態では、報知部20aはリモコン10の操作者の作業補助手段としての機能を発揮するもので、例えば、走行体5の走行していく方向に向かって、図示のように指向性の光ビームを照射し、光スポットを形成する照明装置である。
照明装置は、比較的パワーの大きいLEDや、赤色レーザ光、バルブ球による照明光、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の強い光ビームを所定の光学系により集光するもの等を用いることができる。
これによって、操作者の周囲の人間にあっては、表示部50による表示を確認しないでも報知部20aの教示により走行体5の向かう方向、即ち荷物等が向かう方向を知ることができる。また、操作者自身にとっても、自己が操作する際に、走行部5が向かう方向をあらためて報知されることで、報知内容を確認しながら安心して安全な操作を実現できる。
【0070】
図9ないし図11は、第1の筐体20と第2の筐体30の形態および内部構造についての好ましいいくつかの形態を示すものである。なお、図12は、第1の筐体20と第2の筐体30の内部に収容された主要な電気的構造についてのブロック図である。
先ず、リモコン10の電気的構成について説明する。
図12において、図5と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから重複する説明は省略する。
第1の筐体20には、各操作ボタン(符号21,22,23,24)と接続された回路基板55を収容しており、該回路基板55には、操作ボタンに対応したマトリクス回路が形成されていて、該回路基板を中継して、接続部材としてのスリップリング32に信号が入力されるようになっている。
回路基板55からの信号線は、スリップリング32の回動軸62とともにつれ回りする管状部60内を通り、該スリップリング32と接続されている。管状部60の回動は回動検出部としてのロータリエンコーダ35により検出されるようになっている。スリップリング32から延びる信号線63は、信号処理回路(基板)56を介して、信号ケーブル8により、図5のマイコン25に接続されている。
【0071】
図9において、第1の筐体20は先端付近の内部において、第2の筐体30の下端を貫通して内部に向かって突出する管状部60を備えており、該管状部60は固定フランジ部64により、第1の筐体20に固定されている。管状部60は第1の筐体20と第2の筐体30の径寸法のほぼ中心位置を貫通している。管状部60は、第2の筐体30内では、ベアリング30により回動自在に支持されている。
【0072】
好ましくは、前記回動検出部がエンコーダであり、図9において、スリップリング32は、第2の筐体30の内部に設置される外套部32aと、該外套部32aにより回転自在に保持される回転軸部62とを備えている。この回転軸部62は、第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的回動における回転軸である管状部60の仮想の中心軸と同軸に配置し、しかも信号線61からのリモコン操作に対応する信号を回転軸部側から外套部32a側に伝達するように構成されている。
また、エンコーダは、ハウジング部35aと該ハウジング部35aにより回転自在(回動自在)に保持される回転部69とを備えている。この回転部69は、管状部60の長軸とは同軸でなく且つ並行に配置されるとともに第2の筐体30に対する管状部60回転フランジ65とピニオン67等により連動して回転するように構成されている。
【0073】
これにより、エンコーダ35の回転部69が、第1の筐体20の一部として第2の筐体30の内部に向かって突出する管状部60の長軸とは同軸でなく且つ並行に配置されるとともに第2の筐体30に対する当該管状部60の相対的回動に連動して回転するように構成されているので、エンコーダ35の回転部69を当該管状部60の長軸と同軸に配置させた場合に比べて、当該管状部60の長軸方向の長さがより短い装置構成にすることができ、コンパクト化が可能になる。
【0074】
この構成のもとにおいて、図5で説明したように、好ましくは、第1の筐体20内では回路基板55にマトリクス回路を採用している。
このため、スリップリング35が回転軸部69側から外套部35a側に伝達する信号の配線の本数には限りがあるので、第1の筐体20の一部として第2の筐体30の内部に向かって突出する管状部60を通過させることができる配線の本数にも限りがある。
したがって、第1の筐体20に設置されている複数個のボタンの個数が多い場合には、その分配線の本数が増える。このため、第1の筐体20に設置される複数個のボタンを当該管状部60を通じて第2の筐体30の内部に設置されるスリップリング35の回転軸69側に接続することができなくなる。
これに対し、上記構成のように、第1の筐体20の内部に設置されたマトリクス回路により複数個のボタン(スイッチ)の配線の本数を減じることができるので、複数個のボタンの個数が多い場合であっても、当該管状部60を通じて、ボタンの操作に対応する信号をスリップリング35の回転軸部側へ伝達することが可能となる。
【0075】
また、図9においては、第1の筐体20と第2の筐体30が円柱状で、これら円柱の少なくとも互いに近接する部分はほぼ同径とされて、この同径部分に図3で説明した標示部41が形成されている。しかも第1の筐体20と第2の筐体30の互いに対向する面20a,30aは、管状部60の中心をとおる仮想の回動軸Cと垂直である。
したがって、第1の筐体と第2の筐体の外径が図示のように、ほぼ同一であれば、標示部41が大きい方の径の陰になって視認しにくくなるということがない。
【0076】
図10を参照する。
この形態では、スリップリング32の回転軸部が、前記外套部の第2の筐体側に突出する突出部を備えており、前記エンコーダの回転部が、前記突出部の回転に連動して回転するように構成されていることを特徴とする。
【0077】
上記構成によれば、スリップリングの回転軸部がその外套部32aの第2の筐体30側に突出する突出部68を備えており、エンコーダ35の回転部69が当該突出部68の回転に連動して回転するようにリンク構成されている。
このような構成の場合、図10に示すように、回転軸方向の長さがより短くなるように装置構成を設計しようとする限り、エンコーダ35の回転部69の先端の方向(第2の筐体30側に突出する方向)とスリップリング32の回転軸部62の先端の方向(第1の筐体20側に突出する方向)とが逆向きに配置させることになるので、エンコーダ35のハウジング部35aとスリップリング32の外套部32aとをより近接して、全体としてよりコンパクトに配置させることが可能になる。
【0078】
既に説明したように、リモコン10においては、物体(荷物等)の移動を操作する操作者の手元側に第1の筐体20が配置し、長尺物(信号ケーブル8)の一端に第2の筐体30が接続している。
このため、荷物等の物体の移動を操作する操作者の手元側に第1の筐体20が配置し、長尺物の一端に第2の筐体30が接続している場合、当該一端のよりもさらに先に第1の筐体20が配置することになる。この配置状態の場合、先端に配置する第1の筐体20により大きな衝撃や振動が外部から加わりやすく、電子部品への悪影響が懸念される。例えば、この状態で、操作者が手元の第1の筐体20を手放すと、信号線ケーブル8に接続している第2の筐体30及びその先の第1の筐体20が恰も振り子の錘のように振れて、周囲に衝突して打撃を受けるおそれがあり、より先端に配置する第1の筐体20ほどより大きな打撃を受けることになる。
これに対し、上記構成によれば、外部からの衝撃や振動に弱い電子部品、例えば、第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的回動を検出するエンコーダ35と、ボタンの操作に対応する信号を第1の筐体20側から第2の筐体30側に伝達するスリップリング32の少なくとも一部が第2の筐体30の内部に設置され、より先端側に配置する第1の筐体20の内部には設置されないので、外部からの衝撃等による電子部品への悪影響を防止又は軽減することができる。
【0079】
しかもエンコーダ35と第2の筐体30の内壁との間にエンコーダ35を保護するための保護部材57が設置されている。
これにより、エンコーダが第2の筐体の内壁近くに設置されても、保護部材により保護されるので、エンコーダ35の機能を阻害することなく第2の筐体30の内部にこれを設置することが可能になる。そして、筐体の外部からの衝撃や振動による電子部品への悪影響が懸念される場合において、当該悪影響を防止又は軽減することができるので、特に有益である。
【0080】
図11では、第2の筐体30において、管状部60の長軸がスリップリング35の回転軸部62と同軸になるように管状部60を回動可能に支承する軸受部材32bを備えている。管状部60は、第1の筐体20の内部と第2の筐体30の内部との間をわたる配線の貫通路を備えるとともに、第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的回動をスリップリング32の回転軸部62に伝達可能に構成されている。
【0081】
これにより、第1の筐体20の一部として第2の筐体30の内部に向かって突出する管状部60の第2の筐体30に対する相対的回動をエンコーダ35により検出することは、当該エンコー35ダにより第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的回動を検出することと実質的に同じになる。
従って、この構成によれば、第1の筐体20の一部として第2の筐体30の内部に向かって突出する管状部60とエンコーダ35との組み合わせにより、換言すれば第2の筐体30の内部に設置される電子部品により、第1の筐体20に対する第2の筐体30の相対的回動を検出することが可能になり、内部構造の簡素化とコンパクト化が可能になる。
【0082】
さらに、図11の例では、スリップリング32とエンコーダ35を回転軸に沿って縦に配置することができるため、第2の筐体30の外径をその分縮径することができ、コンパクトにすることができる。また、各筐体の当接領域をさらに細くして、円筒型どうしで接触するのではなく、円錐もしくは円錐台どうしで当接するようにすれば、回動時の摺動抵抗も低減できる。
【0083】
第1の筐体20に設置されるボタンが防塵構造若しくは防水構造又は多段式のスイッチである場合には、当該スイッチが占める空間は通常のスイッチに比して大きくなり、限られた第1の筐体20内に設置することが難しくなってくる。これに対し、回動検出部や接続用部材のような、操作者によるボタン操作に直接関係しない部品が第2の筐体30に設置されていれば、第1の筐体20に空間的な余裕を確保することができるので、占有空間の大きなスイッチであっても第1の筐体20内に設けることができる。これにより、防塵性や防水性の高い或いは高機能なボタン操作が可能な操作装置を構成することができる。
また、操作者によるボタン操作に直接関係する部品(ボタン21,22,23,24、マトリクス回路が形成された回路基板55など)及びそうでない部品(スリップリング32、エンコーダ35など)をそれぞれ第1の筐体20内と第2の筐体30内に設置すると、二つの筐体間で重量分配が適切になされた重量バランスが良好な造り、ひいては操作者にとって使い勝手のよい操作装置10になる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態に係る移動装置としての天井クレーンについて説明する。
第2の実施形態に係る天井クレーンは、図1および図2の機械的構造はほぼ同じであり、図13を参照しながらその電気的構成について説明する。
図13は、第1の実施形態について説明した図5に相当するものであり、図13において、符号18はモータ制御回路、符号42は、モータ制御回路とリモコン10、後述する表示部50、通信ケーブル8等を含んで移動制御装置、符号45は移動機構を示している。このように図13において、図5と同一の符号を付した箇所は共通の構成であるから、重複する説明は省略し、以下相違点を中心に説明する。
【0085】
なお、第2の実施形態では、操作装置10−1は、一つの筐体で形成されており、互いに相対的に回動することで、走行方向を指示する第1の実施形態の操作装置10とは異なる。この実施形態では、操作者が保持した操作装置10−1自体位置と動きを発振装置74から送信し、駆動制御装置側の受信部43で受けることにより、無線で操作するようにされている。
操作信号は、各種バント体の無線電波以外にも、赤外線光通信など種々の遠隔通信手段を利用することができる。
また、好ましくは、例えば、Bluetooth(ブルートゥース)等の近距離無線通信技術を利用して、リモコン10−1が、天井クレーンが設備された部屋に持ち込まれ、受信部43に近接した時に、該近距離無線通信が起動し、それにより互いのプロトコルを確立後に操作装置10−1による操作が可能となるようになっている。
これにより、専用プロトコルを用いてリモコン10−1による操作を実行するようにすれば、無線ノイズなどによる誤動作を確実に防止することができる。
ここで、上記Bluetooth(ブルートゥース)等の近距離無線通信手段は、発振装置74と受信部43に組み込まれている。
あるいは、指示ボタン75に、基準位置の調整、即ちキャリブレーションを開始させるボタンを設けて、上記のように自動的に基準位置設定をするのではなく、操作者が使用開始時に、当該基準位置設定のボタンを操作することにより、後述する基準位置設定が行われるようにしてもよい。
【0086】
図13に示されるようにリモコン10−1内には電波の発信装置74が内蔵されており、巻上機内には電波の受信部43が内蔵されていて、リモコン10−1の操作ボタン75を操作することで、そのデータが無線信号に変換されて発信装置74から電波として発信され、受信部43がその電波を受信して電気信号に変換し、モータ駆動制御回路18内のマイクロコンピュータ25の入出力(I/O)ポートに入力させて移動体としての走行体5及びフック7の移動制御が行われる。
ここで、リモコン10−1の指示ボタン75は、図5で説明した上昇ボタン21と、下降ボタン23と操作ボタン22と非常停止ボタン24とを含んでいる。
【0087】
本実施形態では、リモコン10−1にもマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」ともいう。)73が内蔵されており、このマイコン73はマイコン25と同様に、CPU(中央処理装置)、ROM、RAM等のメモリ装置、入出力(I/O)装置を具備している。さらに、リモコン10−1には、圧電ジャイロ91及び地磁気センサ95が内蔵されており、圧電ジャイロ91によってリモコン10−1の向いている方角が操作者による該リモコン10−1の回動によって検出される。
【0088】
さらに、本実施形態においては、基準位置調整部70を備えている。
即ち、駆動制御装置42側からの指示により、参照信号を出す参照信号生成部71が設けられている。この参照信号生成部からの参照信号はリモコン10−1内の参照信号受信部72で受信するようになっている。参照信号受信部で受けた信号は、マイコン73を介して基準位置設定部76に入力され、リモコン10−1の方向・向き等、上記した圧電ジャイロ91及び地磁気センサ95で求めた位置情報誤差が補正されて、基準位置が求められ、当該基準位置設定後にリモコン10−1は、走行体5やフック7への駆動指示を出すようになっている。
【0089】
図14を参照して、基準位置調整機構としての基準位置調整部70の構成を説明する。
図において、参照信号生成部71は、例えば後述するように所定の直線偏光生成手段である。決められた向きで偏波面を持つ直線偏光を参照信号として生成する参照信号の生成部71と、この参照信号の生成部71からの参照信号を受ける参照信号の受信部72と、受信部72が取り入れた光信号を受けて信号を生成する受光部82と、受光部82からの信号をマイコン73に送り、マイコン73を備えている。マイコン73からの指令を受けて、図13の基準位置設定部はLEDランプ等で構成することができる。このLEDは、リモコン10−1が基準位置に配置されたことを確認して点灯する。これにより、その位置で、リモコン10−1による走行指示の操作を開始可能とするものである。
【0090】
即ち、図16に示されているように、参照信号生成部71は、例えば図1のクレーンX方向レール2A,2BまたはY方向レール4に配置し、下向きに参照信号としての光を照射する。この場合、参照光の照射部には、例えば偏光フィルタ71aを設けて、背後の図示しない光源からの光、または自然光を、Y方向の偏波面を持つ直線偏光に変換する。
リモコン10−1の外面には、Y方向の直線偏光だけを透過するフィルタ72を配置しておき、透過した光は、受光素子82に入射すると、光電変換作用により電気信号を生成し、当該電気信号をマイコン73に伝える。
この過程は、図17に示す通りで、装置側では、天井付近の参照信号生成手段71から直線偏光を出し、リモコン10−1には、直線偏光だけを通すフィルタと、透過光を受ける受光素子を設ける。操作者は、クレーンの下でリモコンの向きを変えながら、上記した基準位置設定部としての例えばLEDの点灯を待つ。
【0091】
図18は、この手法をさらに詳しく説明するものであり、参照信号生成部は、光源としてパルス制御により発光されるものを使用すると好ましい。リモコン10−1側のマイコン73が、所定のパルス周期の信号により、基準位置設定するようにすれば、外乱光などの迷光によるノイズを除去できる。
操作者は、リモコン10−1をY方向(図16参照)に沿って水平に回転させると、参照光の偏波面と合った向きの時に基準位置の設定ができる。この場合、受光部は180度回転ごとに信号強度のピークを迎えるが、図13で説明した内蔵ジャイロ91等により南北方向などの判別は容易に行うことができる。
なお、リモコン10−1のマイコン73は、計時手段(タイマ)を内蔵していて、一定時間ごとにキャリブレーション、即ち基準位置の設定がない時は、操作者にリモコン10−1の移動をLEDランプ76の点滅などで知らせることで、常にリモコンによる操作指示を正確なものとすることができる。
【0092】
図19は、基準位置調整部70の別の構成を示す模式図であり、図20はその説明図である。
この場合、リモコン10−1は、一方向に長い形状である。このリモコン10−1の外面であって、互いに所定距離をおいた箇所にそれぞれ参照信号生成部71−1,71−2を配置する。具体的には参照信号生成部はこの場合、発光素子や特定の色の発色部、特定形状部等である。
天井クレーンを設備した部屋内には、複数組、好ましくは3組以上の参照信号の受信部81a,81a,81b,81b,81c,81c・・・・・が配置されている。
これら参照信号の受信部は、この場合CCD(電荷結合素子)である。
【0093】
既に説明したように、リモコン10−1と、該リモコン10−1により指令を受けるクレーンなどの駆動装置の制御部側が非接触で離れた箇所にある場合、リモコン10−1がジャイロ91等により自律的に自己の位置を特定し、当該特定した位置に基づいて移動指示の指令を無線等で出すことになる。
しかしながら、当該リモコン10−1を操作者が保持して持ち歩くことで、リモコン10−1が常に存在位置を変えていると、自己の位置の特定にずれや狂いが生じるために、前記制御部に正確な移動指示ができなくなる。
【0094】
そこで、図19および図20で示すように、設備内の数カ所に参照信号の受信部72(図13参照)としての例えば、複数組のCCD81a,81a,81b,81b,81c,81c・・・・・を設ける。好ましくは、3組以上のCCDを設ける。最低3方向から撮像できるようにするためである。
リモコン10−1はこの場合、持ち運びに不便にならない程度に一方向に長い形態が好ましく、例えば、グリップと、これに直交して長い本体を備えた拳銃型の形態などが好ましい。この長い本体の両端に発光素子などで参照信号生成部71−1、71−2を設ける。各発光素子は発光パターンを異ならせたり、発光強度を変えたりして、撮像による区別を容易にすると好ましい。
これにより、マイコン73は、モーションキャプチャー方式によって、参照信号生成部71−1、71−2の位置を求め、これを結ぶ仮想の線分の向きや距離を測定することにより、内蔵ジャイロ91の数値を補正し基準位置を調整し、基準位置設定を行うことができる。
【0095】
(第3の実施形態)
図21は、本発明に係る移動装置の一例としての天井クレーンの第3の実施形態を示しており、図22は、図21の天井クレーンに好適に使用される操作装置の筐体部分の内部構成例を示す部分拡大断面図である。
これらの図において、図1図2と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから重複した説明は省略して、援用し、以下、相違点を中心に説明する。
【0096】
この実施形態では、図21に示されているように、操作者の位置にある第1の筐体20に対して、第2の筐体30は大きく離れて天井付近に設置されている。
第1の筐体20と第2の筐体30とは図21に示すように垂直な回動軸に沿って内部に信号ケーブルを挿通した管状部材60で繋がれている。
即ち、第2の筐体は、移動装置が天井クレーンである場合、走行体5であるホイストに固定されている。これに対して、第1の筐体20は、第2の筐体30から図22に示すように垂下される長い管状部60に接続されており、操作者の手の動きに従って、管状部60と共に図21の矢印に示すように回動変位するようになっている。この動きが、第1の実施形態と同様に第2の筐体30のロータリエンコーダ35により検出され、検出信号はスリップリング32により信号線63から駆動制御部に送られるようになっている。
【0097】
また、第1の筐体20には、例えば操作ボタンの配置されている領域の上の領域に図21に示すように、標示部41−1が設けられている。標示部41−1は、方向を示す標示部50と同期して、同じ標示が小型の液晶標示装置等を組み込むことにより示されるようになっている。標示部41−1は、液晶に限らず、EL,LED,光電管等の種々の表示手段を用いて形成することができる。
【0098】
このように、第3の実施形態によれば、第2の筐体30が第1の筐体20から離れて上方に配置されている。
このため、操作者が保持して使用するのは第1の筐体20だけとなるので、リモコンがコンパクトに形成でき、重量も軽く扱いやすい。しかもロータリエンコーダ32等の精密部品を、常に持ち運び移動される第1の筐体20に備えなくていいから、外部からの衝撃等に対しても強く、丈夫で長期間の使用に耐えられる。
また、第2の筐体30は、第1の筐体20よりも上方にあって例えば天井付近に配置できるから、ロータリエンコーダ32等の外部からの衝撃に比較的弱い精密計測装置を安全に設置し保持することができる。
【0099】
図23及び図24は、本発明に係る操作装置の第2の変形例の概略斜視図及び概略側面図をそれぞれ示している。これらの図において、図3図8と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから重複する説明は省略・援用し、以下、相違点を中心に説明する。
操作装置であるリモコン10−2において、この第2の変形例では、第1の筐体20−2と第2の筐体30は、例えば、円柱状もしくは円筒状に形成されている。そして、第1の筐体20−2と第2の筐体30は互いの外径が異なり、第1の筐体20−2の外径は、第2の筐体30の外径よりも小さい。
また、この場合、第1の筐体20−2と第2の筐体30は、図9で説明したような有底の筒体どうしが底面どうしを対面させる構造としてもよいが、これに限らず、第1の筐体20−2が、それより大きい第2の筐体30内に一部入り込んだような構造とすることもできる。
【0100】
第1の筐体20−2と第2の筐体30の断面(相対的回動の回転軸に垂直な断面)は、外観上近接している部分近辺において同径ではないが、いずれも円形である。このような場合、より大きな断面の方の筐体(第2の筐体30)が他方の筐体(第1の筐体20−2)の表面に影を作ることがあるが、その影は均一であり、影の濃淡や長短が生じないので、当該他方の筐体表面に配置する標示部41が標示する情報が読みにくくなるような事態は生じにくい。
【0101】
好ましくは、第1の筐体20−2の上端、即ち、第1の筐体20−2と近接する箇所に第2の筐体30の現在の回動位置を標示部41に対して示す、指示部41cを有している。
即ち、図23の矢印に示すように、第1の筐体20−2は、第2の筐体30に対して回動することができ、指示部41cは、第1の筐体20−2に固定されているため、第1の筐体20−2と共に回動方向に移動するようになっている。
図示の場合、第1の筐体20−2の外径は第2の筐体30の外径より小さいので、指示部41cは第1の筐体20−2の露出している上端付近から径方向外方に向かって所定長さ延びる指針上のピン形状とされている。指示部41cはこのような細い円柱状もしくはピン形状に限らず、三角柱・多角柱・三角錐・多角錐などの形態を採用することができるし、途中で所定角度、例えば90度曲がった曲り指針とすることもできる。
これにより、指示部41cの先端が標示部41の文字やマーク、指針と近接され、読み取りやすくなる。また、第2の筐体30が第1の筐体20−2の表面に影を作ることがあっても、操作者は標示部41を支障なく視認することができる。
【0102】
以上の構成とすることにより、リモコン10−2では、第1の筐体20−2をよりコンパクトにし、操作者が握りやすく、取り扱いを容易にできる利点がある。
【0103】
本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。また、上述の各実施形態を互いに組み合わせてもよく、また、その一部を省略して、組み合わせることも可能であり、さらには、説明しない他の技術的要素を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0104】
1,1−1・・・移動装置(天井クレーン)、2A,2B・・・X方向レール、3A,3B・・・サドル、4・・・クレーンガーダ(Y方向レール)、5・・・走行機、7・・・フック、8・・・通信ケーブル,10,10−1・・・リモートコントローラ(操作装置)、20・・・第1の筐体、30・・・第2の筐体、32・・・スリップリング、35・・・ロータリエンコーダ、41・・・標示部、50・・・表示部
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