【実施例】
【0050】
(実施例1)
本実施例のマイクロチップ1を用いた流体処理の概要を、
図4(a)〜(d)を参照して説明する。
図4(a)〜(d)は、実施例1の測定方法の各工程におけるマイクロチップの上面模式図である。
【0051】
(1)混合工程
まず、
図4(a)に示される状態にあるマイクロチップ1に対して、下向き(
図4(a)の矢印の方向)に遠心力を印加する。これにより、試薬保持部10に内蔵された検査試薬11と、検体保持部20に導入された検体21とが、混合部30に導入され、混合液31となる(
図4(b))。なお、検査試薬11は、インフルエンザAウィルス抗体が固定化されたラテックス試薬と、インフルエンザBウィルス抗体が固定化された金コロイド試薬との混合液である。
【0052】
(2)検出部導入工程
次に、右向き(
図4(b)の矢印の方向)に遠心力を印加する。これにより、混合液31は、接続流路を通って検出部40に導入される(
図4(c))。
【0053】
(3)検出工程
検出部に充填された混合液31は、光学測定に供され、検査・分析が行なわれる。たとえば、
図4(d)に示される矢印の方向から光を照射し、その透過光を測定することにより、混合液中の特定成分の検出等がなされる。
【0054】
本実施例では、インフルエンザA陽性の罹患者およびインフルエンザB陽性の罹患者の各々から採取した鼻汁(鼻をかむことによって排出された液)、両者の等量混合液を検体として用いた。また、対照として、インフルエンザAおよびBに陰性の健常人から採取した鼻汁を用いた。
【0055】
被測定物であるインフルエンザAウィルスに対する検査試薬としては、インフルエンザAウィルス抗体が固定化されたラテックス試薬を用いた。インフルエンザBウィルスに対する検査試薬としては、インフルエンザBウィルス抗体が固定化された金コロイド試薬を用いた。測定に用いた光の波長は505nmとし、各検体につき3回の測定を行った。
【0056】
図5は、実施例1の測定結果を示すグラフである。なお、
図5では、全ての測定結果を重ねて表示している。
図5に示されるように、インフルエンザA陽性、インフルエンザB陽性、両陽性、および、両陰性の全てを吸光度のタイムコースから判別できることが分かる。ここで、インフルエンザA陽性の検体についてのタイムコースは正のタイムコースであり、インフルエンザB陽性の検体についてのタイムコースは負のタイムコースである。なお、通常はインフルエンザAとインフルエンザBの両方に罹患すること(両陽性)はないと考えられているが、両陽性の場合も考慮して、インフルエンザA罹患者の鼻汁とインフルエンザB罹患者の鼻汁の等量混合液についても測定を行った。
図5に示されるように両陽性の検体のタイムコースは、吸光度の変化速度が正から負に変化するという特徴を有している。これに対して、インフルエンザAまたはインフルエンザBのいずれかにのみ陽性の検体のタイムコースは、吸光度の変化速度が常に正であるか、または、常に負であるという特徴を有している。このタイムコースの違いに基づいて、両陽性の検体と、インフルエンザAまたはインフルエンザBのいずれかにのみ陽性の検体とを判別することが可能である。
【0057】
(実施例2)
図6(a)〜(d)は、実施例2の測定方法の各工程におけるマイクロチップの上面模式図である。本実施例では、
図6(a)に示されるように、検査試薬11a,11bが別々の試薬保持部10a,10bに内蔵されている。それ以外の点は、実施例1と同様であるため説明は省略する。このような形態は、複数種の検査試薬を測定時まで分離して保持する必要がある場合に有効である。
【0058】
(実施例3)
本実施例では検出部における光学測定を、450nmおよび505nmの2波長を用いて行った。測定は、インフルエンザA陽性の検体(インフルエンザA罹患者の鼻汁)、インフルエンザB陽性の検体(インフルエンザB罹患者の鼻汁)、陰性の検体(健常人の鼻汁)について行った。それ以外の点は、実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0059】
図7に、波長450nmの光の吸光度(A
450)のグラフを示す。なお、インフルエンザB陽性の検体については、1/2希釈液、1/4希釈液についての測定結果も示す。
図7から、波長450nmの光を用いた光学測定により、インフルエンザAウィルスのみを測定できることが分かる。
【0060】
一方、
図8は、波長505nmの光の吸光度(A
505)から、波長450nmの光の吸光度(A
450)×a(定数)を差し引いた値(A
505−a×A
450)のグラフである。ここで、定数aは、0.79である。この定数aは、ラテックス試薬とインフルエンザAウィルスの反応液についての、波長450nmの光の吸光度に対する波長505nmの光の吸光度の比率であり、ラテックス試薬に固有の値である。インフルエンザウィルスの濃度が変化してもこの比率aは一定である。なお、インフルエンザB陽性の検体については、1/2希釈液、1/4希釈液についての測定結果も示す。
図8から、波長450nmおよび505nmの光を用いた光学測定により、インフルエンザBウィルスのみを測定できることが分かる。このように、複数の波長を用いて測定した場合、全体の測定結果(個々のタイムコースが合成されたタイムコース)から個々の測定結果(個々のタイムコース)を分離して、被測定物の濃度等を調べることができる。
【0061】
(実施例4)
本実施例のマイクロチップ1を用いた流体処理の概要を、
図9(a)〜(e)を参照して説明する。
図9(a)〜(e)は、実施例4の測定方法の各工程におけるマイクロチップの上面模式図である。
【0062】
(1)第1混合工程
まず、
図9(a)に示される状態にあるマイクロチップ1に対して、左向き(
図9(a)の矢印の方向)に遠心力を印加する。これにより、試薬保持部10aに内蔵された検査試薬11a(インフルエンザAウィルス抗体が固定化されたラテックス試薬)と、検体保持部20に導入された検体21とが、混合部30aに導入され、混合液31aとなる(
図9(b))。
【0063】
(2)第2混合工程
検査試薬11aと検体21とが混合されてから60秒後に、
図9(b)に示される状態にあるマイクロチップ1に対して、下向き(
図9(b)の矢印の方向)に遠心力を印加する。これにより、混合物30aに導入された混合液31aと、試薬保持部10bに内蔵された検査試薬11b(インフルエンザBウィルス抗体が固定化された金コロイド試薬)とが、混合部30bに導入され、混合液31bとなる(
図9(c))。
【0064】
(3)検出部導入工程
次に、右向き(
図9(c)の矢印の方向)に遠心力を印加する。これにより、混合液31bは、接続流路を通って検出部40に導入される(
図9(d))。
【0065】
(4)検出工程
検出部に充填された混合液31bは、光学測定に供され、検査・分析が行なわれる。たとえば、
図9(d)に示される矢印の方向から光を照射し、その透過光を測定することにより、混合液中の特定成分の検出等がなされる。本実施例では波長505nmの光の吸光度を測定した。
【0066】
本実施例では、インフルエンザA罹患者の鼻汁またはその希釈液と、インフルエンザB罹患者の鼻汁またはその希釈液とを、組み合わせた液を検体として用いた。
【0067】
被測定物であるインフルエンザAウィルスに対する検査試薬としては、インフルエンザAウィルス抗体が固定化されたラテックス試薬を用いた。インフルエンザBウィルスに対する検査試薬としては、インフルエンザBウィルス抗体が固定化された金コロイド試薬を用いた。測定に用いた光の波長は505nmとし、各検体につき1回の測定を行った。
【0068】
測定結果を
図10に示す。
図10において、A0は、健常人の鼻汁のみの測定結果であり、A1は、インフルエンザB罹患者の鼻汁の1/2希釈液のみの測定結果であり、A2は、インフルエンザB罹患者の鼻汁のみの測定結果である。E0は、インフルエンザA罹患者の鼻汁のみの測定結果であり、D0、C0、B0は、それぞれ、インフルエンザA罹患者の鼻汁の1/2希釈液、1/4希釈液、1/8希釈液のみの測定結果である。E1は、インフルエンザA罹患者の鼻汁とインフルエンザB罹患者の鼻汁の1/2希釈液との等量混合液の測定結果であり、E2は、インフルエンザA罹患者の鼻汁とインフルエンザB罹患者の鼻汁との等量混合液の測定結果である。
【0069】
図11は、
図10に示す測定結果から、ラテックス試薬(検査試薬11a)の混合時から金コロイド試薬(検査試薬11b)の混合時までのグラフを外挿したグラフである。このように、
図10の0時間の吸光度(
図10の矢印で示す部分)に基づいてインフルエンザAウィルスの測定が可能であることが分かる。
【0070】
図12の「E1−E0」は、
図10に示すE1の吸光度からE0の吸光度を引いた値のグラフであり、「E2−E0」は、
図10に示すE2の吸光度からE0の吸光度を引いた値のグラフである。このようにして、インフルエンザBウィルスの測定が可能であることが分かる。
【0071】
(実施例5)
本実施例では、実施例1で用いた金コロイド試薬に(金粒子の表面にインフルエンザAウィルス抗体が固定化された金粒子のコロイド分散液)に代えて、
図13に示すような2層構造の粒子の表面に抗体が固定化された粒子のコロイド分散液を使用する。
図13では、比重1程度の材料(樹脂など)からなるコア粒子50の表面に薄い金属コーティング51が形成されている。そして、該金属コーティング51の表面には、インフルエンザAウィルス抗体などの抗体52が固定化されている。
【0072】
遠心力を利用して流体処理を行うマイクロチップにおいて、検査試薬として金属コロイド試薬を用いる場合、金属の比重(たとえば、Au:19.3、Pt:21.45、Ag:10.49)は水の比重1に比べて重いため、流体処理における遠心力の印加により、
図14に示すように、金コロイド試薬を含む混合液31中で金属5が分離してしまう場合があった。
【0073】
これに対して、本実施例では、試薬中の粒子の比重は、コア材料50の比重と同程度であるため、流体処理における遠心力の印加によりバイオチップ内の混合液中で抗体が固定化された粒子が分離してしまう現象を抑制することができる。
【0074】
また、比重1程度の材料が樹脂である場合、該樹脂からなるコア粒子50は、種々公知の方法により容易に粒子径を制御することが可能であるため、これにより測定感度を向上させることが可能である。樹脂としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(PMP)が挙げられる。金属コーティング51の材料としては、たとえば、金、白金、銀が挙げられる。
【0075】
なお、金属コロイド試薬を用いる場合、光と金属表面に存在する自由電子と相互作用による表面プラズモン共鳴を利用して測定が行われる。本実施例の金属コロイド試薬においても、金属コーティングの表面に自由電子が存在し、表面プラズモン現象が発現するため、免疫反応等の体外診断用の検査試薬として必要な特性は維持している。このように、本実施例の金属コロイド試薬は、検査試薬としての特性は維持したまま、遠心力を印加しても分離しないという好ましい特性を有しており、特に遠心力を利用して流体処理を行うマイクロチップに好適に用いることができる。
【0076】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。