特許第5964583号(P5964583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964583
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】積層コイル及びそれを利用した電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H01F17/00 B
   H01F17/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-289076(P2011-289076)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138146(P2013-138146A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 巧
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080550(JP,A)
【文献】 特開2004−072006(JP,A)
【文献】 特開2002−373810(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3093443(JP,U)
【文献】 特開2005−150168(JP,A)
【文献】 特開2005−079286(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0134010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に周回したコイルが表面に形成された絶縁層を複数積層した積層コイルであって、
1層目のコイルと2層目のコイルが同一方向に周回し、3層目のコイルと4層目のコイルが前記1層目及び2層目のコイルと逆方向に周回しており、
前記1層目から4層目のコイルの周回部の内側に、絶縁層の厚み方向に2列の接続導体を配置し、
前記1層目のコイルの内周端は、前記2層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、一方の接続導体によって前記3層目のコイルの内周端と接続し、
前記4層目のコイルの内周端は、前記3層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、他方の接続導体によって前記2層目のコイルの内周端と接続するとともに、
前記2列の接続導体を、前記コイルの周回部の内側であって、コイルの巻きの少ない部分の幅の中央位置に配置したことを特徴とする積層コイル。
【請求項2】
平面状に周回したコイルが表面に形成された絶縁層を複数積層した積層コイルであって、
1層目の絶縁層上のコイルの内周端と3層目の絶縁層上のコイルの内周端とが、1層目及び2層目の絶縁層を貫通する第1のビアホール導体で接続された一対のコイルと、
2層目の絶縁層上のコイルの内周端と4層目の絶縁層上のコイルの内周端とが、2層目及び3層目の絶縁層を貫通する第2のビアホール導体で接続された他の一対のコイルとを有し、
前記1層目及び2層目の絶縁層上の各コイルが同一方向に周回され、前記3層目及び4層目の絶縁層上の各コイルが前記1層目と2層目の絶縁層上の各コイルと逆方向に周回されており、
前記第1のビアホール導体は、前記2層目の絶縁層上のコイルの内周部の巻きが少ない部分の幅の中央位置を通過し、
前記第2のビアホール導体は、前記3層目の絶縁層上のコイルの内周部の巻きが少ない部分の幅の中央位置を通過しており、
前記1層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが深い位置で、前記第1のビアホール導体に接続され、
前記2層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが浅い位置で、前記第2のビアホール導体に接続され、
前記3層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが浅い位置で、前記第1のビアホール導体に接続され、
前記4層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが深い位置で、前記第2のビアホール導体に接続されていることを特徴とする積層コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層コイルを利用したことを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルパターンが積層された積層コイル及びそれを利用した電子部品に関し、コモンモードチョークコイルなどに好適な積層コイルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、携帯用のパーソナルコンピュータ、中でもタブレットタイプのパーソナルコンピュータが急速に普及しつつある。また、同時に、HDD互換のSSD記憶装置の採用などにより、高速なデータの書込みや読出しが行われるようになってきている。このように、データの転送速度は更に高速化され、動作モードとしてスーパースピードモードも追加になるなど、目まぐるしい進展がある。この進展に伴い、信号線に伝送される信号の周波数が高速化され、従来から使用されているコモンモードチョークコイルにおいても、十分な信号品位を保ちながらノイズ対策を行うことが要求される。例えば、0.6mm×0.5mm程度の大きさでありながら、100MHzで80〜100Ωのような高いインピーダンスの仕様が要望されるに至っている。
【0003】
コモンモードチョークコイルは、一般的に一つのコイルを二層に分けて接続した構成となっており、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。該特許文献1では、高いノイズ抑制効果を有する小型で生産効率の良い積層コモンモードノイズフィルタを提供するため、以下のような構造を採用している。すなわち、一方のコイルの内部導体が他方のコイルの内部導体を挟み込むように互い違いに積層し、コイル内部導体の内側に、この内部導体と組みとなる他の内部導体とを連結するための導体スルーホールの他に、このコイル内部導体との連結には関係しない導体スルーホールを貫通させている。
【0004】
図6には、背景技術と同様の接続構造を有する積層コモンモードチョークコイルを構成する4つのコイル層が示されている。図6(A)は1層目の絶縁層100上に形成された1層目のコイル層110を示している。コイル層110は、内周側の端部110Aに接続用のランド110Cが形成され、外周側の端部110Bに引出部110Dが形成されている。図6(B)には2層目の絶縁層102上に形成された2層目のコイル112が示されている。コイル層112は、1層目のコイル層110と同一方向に周回しており、内周側の端部112Aにはランド112Cが形成され、外周側の端部112Bには引出部112Dが形成されている。また、周回部内側には、前記ランド112Cと並んで他のランド112Eが形成されている。
【0005】
図6(C)には3層目の絶縁層104上に形成された3層目のコイル層114が示されている。コイル層114は、前記コイル層110,112と周回方向が逆である。また、内周側の端部114Aにはランド114Cが接続され、外周側の端部114Bには引出部114Dが形成されている。更に、周回部内側には、前記ランド114Cと並んで他のランド114Eが形成されている。図6(D)には4層目の絶縁層106上に形成された4層目のコイル層116が示されている。コイル層116は、前記コイル層114と同一方向に周回している。また、内周側の端部116Aにはランド116Cが形成され、外周側の端部116Bには引出部116Dが形成されている。
【0006】
前記1層目の絶縁層100から4層目の絶縁層106を積層したときに、前記1層目のコイル層110の内周端のランド110Cと、3層目のコイル層114の内周端のランド114Cは、2層目のランド112Eとビアホール導体122(図7参照)によって接続される。また、2層目のコイル層112の内周端のランド112Cと4層目の内周端のランド116Cは、3層目のランド114Eとビアホール導体120(図7参照)によって接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−72006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上のような背景技術では、巻き数を多くし、かつ、小型化を実現するという要求に対して、満足し得るようなものは実現されていない。例えば、あえて小型化の要求に対して従来技術での生産を行うと、ビアホールの位置許容差(位置ずれ許容値)が小さく、歩留まりが80%程度と非常に低く量産化を阻むことになる。図6の背景技術では、1層目のコイル層110と3層目のコイル層114を接続するビアホール導体122は、図6(B)に示すように、2層目のコイル層112の周回部内側の巻きが多い部分の幅WBの中間位置が中心となるように形成されている。また、2層目のコイル層112と4層目のコイル層116を接続するビアホール導体120は、図6(C)に示すように3層目のコイル層114の内周部内側の巻きが多い部分の幅WB´の中間位置が中心となるように形成されている。
【0009】
従って、図7(A-1)及び(B-1)に示すように、ビアホール導体120,122の位置ずれがごくわずかな場合はショート不良が起こらないが、その許容値はごくわずかである。そして、それよりもずれが大きくなりコイル周回部と接触すると、図7(A-2)及び(B-2),図7(A-3)及び(B-3)に示すように、並行する回路間が導通してショート不良になる。逆に、ビアホールの位置がずれてランドから外れると(図示せず)、コイル間の接続が得られず回路がオープン不良となる。製品サイズが小さくなるにつれ、位置ずれの許容値が小さくなり、上記不具合が発生しやすくなる。このような課題に取り組み、解決したのが本発明である。
【0010】
本発明は、以上のような点に着目したもので、接続導体の位置ずれの許容値を上げることで、小型でありながら、十分な信号品位を保ちノイズ対策を行うことができる積層コイル及びそれを利用した電子部品を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平面状に周回したコイルが表面に形成された絶縁層を複数積層した積層コイルであって、1層目のコイルと2層目のコイルが同一方向に周回し、3層目のコイルと4層目のコイルが前記1層目及び2層目のコイルと逆方向に周回しており、前記1層目から4層目のコイルの周回部の内側に、絶縁層の厚み方向に2列の接続導体を配置し、前記1層目のコイルの内周端は、前記2層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、一方の接続導体によって前記3層目のコイルの内周端と接続し、前記4層目のコイルの内周端は、前記3層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、他方の接続導体によって前記2層目のコイルの内周端と接続するとともに、前記2列の接続導体を、前記コイルの周回部の内側であって、コイルの巻きの少ない部分の幅の中央位置に配置したものである。
【0012】
他の発明は、平面状に周回したコイルが表面に形成された絶縁層を複数積層した積層コイルであって、1層目の絶縁層上のコイルの内周端と3層目の絶縁層上のコイルの内周端とが、1層目及び2層目の絶縁層を貫通する第1のビアホール導体で接続された一対のコイルと、2層目の絶縁層上のコイルの内周端と4層目の絶縁層上のコイルの内周端とが、2層目及び3層目の絶縁層を貫通する第2のビアホール導体で接続された他の一対のコイルとを有し、前記1層目及び2層目の絶縁層上の各コイルが同一方向に周回され、前記3層目及び4層目の絶縁層上の各コイルが前記1層目と2層目の絶縁層上の各コイルと逆方向に周回されており、前記第1のビアホール導体は、前記2層目の絶縁層上のコイルの内周部の巻きが少ない部分の幅の中央位置を通過し、前記第2のビアホール導体は、前記3層目の絶縁層上のコイルの内周部の巻きが少ない部分の幅の中央位置を通過しており、前記1層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが深い位置で、前記第1のビアホール導体に接続され、前記2層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが浅い位置で、前記第2のビアホール導体に接続され、前記3層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが浅い位置で、前記第1のビアホール導体に接続され、前記4層目の絶縁層上のコイルの内周端は、該コイルの周回方向への巻き込みが深い位置で、前記第2のビアホール導体に接続されているものである。
【0013】
本発明の電子部品は、前記いずれかに記載の積層コイルを利用したものである。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、平面状に周回したコイルが絶縁層を挟んで積層した積層コイルにおいて、1層目のコイルと2層目のコイルが対になって同一方向に周回し、3層目のコイルと4層目のコイルが対になって前記1層目及び2層目のコイルと逆方向に周回している。そしてコイルの周回部の内側に、絶縁層の厚み方向に2列の接続導体を配置する。1層目のコイルの内周端は、2層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、一方の接続導体によって3層目のコイルの内周端と接続する。他方、4層目のコイルの内周端は、3層目のコイルの内周端よりも周回方向に巻き進んだ位置で、他方の接続導体によって2層目のコイルの内周端と接続する。このとき、前記2列の接続導体を、コイルの巻きの少ない部分の幅の中央位置に配置することとしたので、接続導体の位置ずれの許容値を上げることができる。これにより、小型でありながら、十分な信号品位を保ちノイズ対策を行うことができる。また、製品の歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1のコモンモードチョークコイルを示す図であり、(A)は全体構造を示す外観斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た積層状態を示す断面図である。
図2】前記実施例1の積層体の内部構造を示す分解斜視図である。
図3】(A)はコイル層を転写した4層目のグリーンシートの外観斜視図,(B)〜(E)はコイル層の製造工程を示す図であり、前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向見た断面に相当する。
図4】前記実施例1の2層目のグリーンシートにおけるビアホール導体とランドのずれを示す平面図である。
図5】本発明のコイルパターンと従来構造のコイルパターンを示す平面図である。
図6】背景技術のコモンモードチョークコイルを構成するコイル層が形成されたグリーンシートを示す平面図である。
図7】比較例のコモンモードチョークコイルの2層目のグリーンシートにおけるビアホール導体とランドのずれを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
最初に、図1及び図2を参照して、本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明をコモンモードチョークコイルに適用したものである。図1(A)には全体構造を示す外観斜視図が示され、図1(B)には前記(A)を#A−#A線に沿って切断矢印方向に見たときの積層状態を示す断面図が示されている。図2は、コモンモードチョークコイルを構成する積層体の内部構造を示す分解斜視図である。本実施例のコモンモードチョークコイル10は、図1に示すように、略直方体状の積層体12の対向する一対の端面12A,12Bに、端子電極14,16,18,20を設けた構成となっている。前記端子電極14,16は、一方の端面12Aの上下方向に形成されており、積層体12の上面及び下面に一部がかかっている。前記端子電極18,20は、他方の端面12Bの上下方向に形成され、積層体12の上面及び下面に一部がかかっている。
【0018】
前記積層体12は、複数のコイル層が積層されたコイル積層体30を、上層の磁性体層22と下層の磁性体層24で挟んだ構成となっている。前記コイル積層体30は、図1(B)及び図2に示すように、複数の絶縁体層32〜40と、その間に挟まれたコイル層54〜60により形成されている。1層目のコイル層54は、1層目の絶縁層34上に平面状に周回するように形成されている。前記コイル層54は、内周側の端部54Aに接続用のランド54Cが形成され、外周側の端部54Bに引出部54Dが形成されている。2層目のコイル層56は、2層目の絶縁層36上に平面状に周回するように形成されている。コイル層56は、1層目のコイル層54と同一方向に周回しており、内周側の端部56Aにはランド56Cが形成され、外周側の端部56Bには引出部56Dが形成されている。また、周回部内側には、前記ランド56Cと並んで他のランド56Eが形成されている。
【0019】
3層目のコイル層58は、3層目の絶縁層38の上に平面状に周回するように形成されている。該コイル層58は、1層目及び2層目のコイル層54,56とは周回方向が逆である。また、内周側の端部58Aにはランド58Cが接続され、外周側の端部58Bには引出部58Dが形成されている。更に、周回部内側には、前記ランド58Cと並んで他のランド58Eが形成されている。4層目のコイル層60は、4層目の絶縁層40の上に平面状に周回するように形成されている。該コイル層60は、3層目のコイル層58と同一方向に周回している。また、内周側の端部60Aにはランド60Cが形成され、外周側の端部60Bには引出部60Dが形成されている。
【0020】
前記コイル積層体30は、前記1層目の絶縁層34から4層目の絶縁層40を積層し、更に、前記1層目のコイル層54の上に他の絶縁層32を重ねて構成される。積層時において、前記1層目のコイル層54の内周端のランド54Cと、3層目のコイル層58の内周端のランド58Cは、2層目のランド56Eとビアホール導体50によって接続される。該ビアホール導体50は、1層目の絶縁層34に形成されたビアホール42と、2層目の絶縁層36に形成されたビアホール44のそれぞれに充填されている。
【0021】
また、2層目のコイル層56の内周端のランド56Cと4層目の内周端のランド60Cは、3層目のランド58Eとビアホール導体52によって接続される。該ビアホール導体52は、2層目の絶縁層36に形成されたビアホール46と、3層目の絶縁層38に形成されたビアホール48のそれぞれに充填されている。すなわち、絶縁層34〜40を重ねたときに、2列のビアホール導体50,52が、コイルの周回部内側に形成されるようになる。また、1層目のコイル層54の引出部54Dは、前記端子電極14に接続され、2層目のコイル層56の引出部56Dは、前記端子電極16に接続される。3層目のコイル層58の引出部58Dは、前記端子電極18に接続され、4層目のコイル層60の引出部60Dは、前記端子電極20に接続される。
【0022】
次に、本実施例のコモンモードチョークコイルの製造方法について説明する。まず、絶縁層32〜40として利用するガラス材のグリーンシート、例えば、ホウケイ酸ガラス材シートを用意し、該ガラス材グリーンシートの所定の位置に孔開けする。具体的には、1層目の絶縁層34として使用するガラス材グリーンシートには、ビアホール42を形成し、2層目の絶縁層36として使用するガラス材グリーンシートにはビアホール44,46を形成する。3層目の絶縁層38として使用するガラス材グリーンシートにはビアホール48を形成する。4層目の絶縁層40と、1層目のコイル層54の上に設ける絶縁層32には孔明け加工は行わない。ガラス材グリーンシートの寸法は、例えば、0.6mm×0.5mm×30μm程度である。薄いガラス材グリーンシートを使用する場合、数枚重ねてもよい。
【0023】
前記ガラス材グリーンシートへの孔開けは、例えば、炭酸ガスレーザの照射位置とパワーの制御による加工によって行われる。そして、形成されたビアホール42〜48に対し、スクリーン印刷法によって、該ビアホール42〜48の位置と一致したパターンで印刷して銀ペーストを充填する。充填後、銀ペーストを乾燥させ、ビアホールに銀ペーストが充填されたグリーンシートを作製する。図示の例では、説明の便宜上、コイル層54とコイル層58を接続するビアホール導体を50とし、コイル層56とコイル層60を接続するビアホール導体を52としているが、これらビアホール導体50,52は、いずれも同じ銀ペーストの充填により形成されている。なお、ビアホール42〜48の直径は、例えば、100μm程度である。
【0024】
次に図3も参照しながらコイル層54〜60の作製方法について説明する。図3(A)は4層目の絶縁層にコイル層を転写した状態の外観斜視図,図3(B)〜(E)はコイル層の作製工程を示す図で、前記(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面に相当する。まず、図3(B)に示すように、ステンレス基板70の表面にレジスト72を塗布し、フォトリソグラフの手法により、図3(C)に示すように前記レジスト72にコイルパターン(ランド及び引出部も含む)の開口部74を形成する。そして、該開口部74に、例えば電解銀メッキを施す。このとき、図3(D)に示すように、コイル状のメッキ導体76がレジスト72の表面より盛り上がるように形成する。同様の手順で、1層目から3層目のコイル層54,56,58のパターンに相当する形状のメッキ導体76形成したステンレス基板70を用意する。
【0025】
本実施例では、前記コイルパターンは、フォトリソグラフの手法により形成しており、これに用いるフォトリソマスクはCADデータに基づいて作製するため、自由な平面パターンが形成可能である。また、レーザ加工による孔は、CADデータに基づいて作成されたデータでNC制御にて行われるため、所望の定めた位置に開けることができる。前記コイルパターンは、前記ガラス材グリーンシートを順次積層していく段階のなかで、盛り上がったメッキ導体76をグリーンシートに押し付け、加圧して食い込ませることで、ステンレス基板70からグリーンシート側に転写する(図3(E))。このようにして絶縁層上に転写されたコイル層は、導線幅が約10μm,導線間隔は約5μm程度である。
【0026】
なお、これらコイルパターンは、前記メッキ導体76をガラス材グリーンシートに転写しながら積層した後の状態において、次の条件を満たすように形成される。
(1)1層目のコイル層54と2層目のコイル層56が対になって同一方向に周回する。
(2)3層目のコイル層58と4層目のコイル層60が対になって、前記コイル層54,56と逆方向に周回するように形成する。
(3)1層目のコイル層54の内周側の端部54Aが、2層目のコイル層56の内周側の端部56Aよりも、周回方向への巻き込みが深くなるように形成する。
(4)4層目のコイル層60の内周側の端部60Aが、3層目のコイル層58の内周側の端部58Aよりも、周回方向への巻き込みが深くなるように形成する。
【0027】
更に、ビアホール42〜48との位置関係で、下記条件も満たすように形成される。
(1)ビアホール42,44に充填されるビアホール導体50と、1層目のランド54C,2層目のランド56E,3層目のランド58Cを、2層目のコイル層56の巻きが少ない部分の幅WA(図2及び図4(A-1)参照)の中央に相当する位置に形成する。
(2)ビアホール46,48に充填されるビアホール導体52と、2層目のランド56C,3層目のランド58E,4層目のランド60Cを、3層目のコイル層58の巻きが少ない部分の幅WA´(図2参照)の中央に相当する位置に形成する。
なお前記幅WA,WA´は、例えば、180μm程度である。
【0028】
このような位置関係を満たすようにコイルパターンとビアホールを形成することにより、ガラス材グリーンシートの積層後、1層目のコイル層端部54Aと、3層目のコイル層端部58Aとが、ビアホール導体50とランド54C,56E,58Cを介して接続されて、一対のコイルを形成する。また、2層目のコイル層端部56Aと、4層目のコイル層端部60Aとが、ビアホール導体52とランド56C,58E,60Cを介して接続され、一対のコイルを形成する。
【0029】
そして、コイル積層体30の上下に、磁性体層22,24として、フェライト材のグリーンシートを重ねて加圧圧着した後、脱バインダ,焼成を行って積層体12を得る。積層体12の端面12A,12Bの所定の位置に、例えば、銀ペーストを塗布することで、内部コイル導体の引出部54D,56D,58D,60Dと接続する端子電極14〜20を形成する。そして、前記銀ペーストを焼き付けて素体と結合させ、端子電極14〜20の表面にメッキを施し、コモンモードチョークコイル10を得る。前記フェライト系グリーンシートとしては、例えば、Ni−Zn系フェライトが使用される。
【0030】
以上のようにして作製されたコモンモードチョークコイル10では、1層目のコイル層54と3層目のコイル層58を接続するビアホール導体50は、図2に示すように、2層目のコイル層56の周回部内側の巻きが少ない部分の幅WAの中間位置が中心となるように形成されている。また、2層目のコイル層56と4層目のコイル層60を接続するビアホール導体52は、3層目のコイル層58の内周部内側の巻きが少ない部分の幅WA´の中間位置が中心となるように形成されている。従って、ビアホール導体50,52とコイルとの接続位置のずれの許容値は、上述背景技術の場合よりも大きくなる。図4(A-1)〜(A-3)及び(B-1)〜(B-3)には、前記図7に示した背景技術とずれ量が同じ場合の2層目のコイル層56とビアホール導体50,50Bの位置関係が示されている。図4に示すように、背景技術と同じずれ量の場合であっても、本実施例では、ショート不良は発生しない。
【0031】
次に、ずれの許容値に関し、具体的なデータを示す。図5(A)には、本発明の構造を採用したコイルパターンが示され、図5(B)には従来構造のコイルパターンが示されている。図示の例では、コイルの周回数は、6〜7周回程度となっているが、実際に試験を行ったのは、サンプル1(周回数2程度)の場合と、サンプル2(周回数5程度)の場合と、サンプル3(周回数6.5)の場合である。以下サンプル1〜3についての結果を示す。
(1)サンプル1(周回数2程度、周回部の巻線間のピッチが24μm以下)のコイルパターンでは、
本発明の場合の位置ずれ許容値は0.057mm、
従来構造の場合の位置ずれ許容値:0.045mm、
であり、許容値は従来方法に比べて約1.27倍,すなわち、約30%アップする。
(2)サンプル2(周回数5程度、周回部の巻線間のピッチが15μm以下)のコイルパターンでは、
本発明の場合の位置ずれ許容値は0.014mm、
従来構造の場合の位置ずれ許容値は0.007mm、
であり、許容値は従来方法に比べて約2.0倍,すなわち、100%アップする。
(3)サンプル3(図5に示す例)(周回数6.5、巻線間のピッチが20μm、L/S=10/10μm)のコイルパターンでは、
本発明の場合の位置ずれ許容値は0.019mm、
従来構造の場合の位置ずれ許容値は0.009mm、
であり、許容値は従来方法に比べて約2.1倍,すなわち、110%アップする。
ビアホールの位置ずれ許容値が、30%〜110%程度大きくなるため、歩留まりを97%〜100%程度に向上させることが可能になる。
【0032】
このように、実施例1によれば、1層目のコイル層54と3層目のコイル層58をビアホール導体50で接続した一対のコイルと、2層目のコイル層54と4層目のコイル層60をビアホール導体52で接続した一対のコイルとを有している。そして、一方のコイルの接続用ビアホールは、他方のコイルを貫通する位置が、コイルの周回部から、より離れるように配置されているため、ビアホールの位置が多少ずれた場合のショートのおそれが低減する。また、ビアホールの位置ずれ許容値が大きくなり、ひいては歩留を向上させることが可能となる。更に、小型でありながら、十分な信号品位を保ちノイズ対策を行うことができる。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。
(2)前記実施例で示した材料も一例であり、公知の各種の材料を利用可能である。
(3)前記実施例で示したコイルの周回数も一例であり、必要に応じて適宜増減してよい。また、コイルの周回部のピッチについても、必要に応じて適宜設計変更してよい。
(4)前記実施例で示したビアホール導体50,52や、コイル層54〜60の作製方法も一例であり、他の方法で作製することを妨げるものではない。
(5)本発明は、実施例1のようにコモンモードチョークコイルに適用する場合には、1層目のコイル層54と2層目のコイル層56が同一方向に周回し、3層目のコイル層58と4層目のコイル層60が、前記コイル層54,56とは逆方向に周回する構造となる。しかしながら、これも一例であり、本発明による位置ずれの許容値の拡大は、積層方向のコイルパターンが全て同一方向に巻かれているような積層コイル部品にも適用可能である。
(6)本発明の積層コイルを、コモンモードチョークコイル以外の電子部品に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、平面状に周回したコイルが絶縁層を挟んで積層した積層コイルにおいて、1層目のコイルと2層目のコイルが対になって同一方向に周回し、3層目のコイルと4層目のコイルが対になって前記1層目及び2層目のコイルと逆方向に周回している。そしてコイルの周回部の内側に、絶縁層の厚み方向に2列の接続導体を配置する。1層目のコイルの内周端は、2層目のコイルの内周端よりも周回方向へ巻き進んだ位置で、一方の接続導体によって3層目のコイルの内周端と接続する。他方、4層目のコイルの内周端は、3層目のコイルの内周端よりも周回方向に巻き進んだ位置で、他方の接続導体によって2層目のコイルの内周端と接続する。このとき、前記2列の接続導体を、コイルの巻きの少ない部分の幅の中央位置に配置して接続導体の位置ずれの許容値を上げることとしたので、積層コモンモードチョークコイルなどに用いられる積層コイルの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10:コモンモードチョークコイル
12:積層体
12A,12B:端面
14〜20:端子電極
22,24:磁性体層
30:コイル積層体
32〜40:絶縁層
42〜48:ビアホール
50,52:ビアホール導体
54〜60:コイル層
54A,54B,56A,56B,58A,58B,60A,60B:端部
54C,56C,56E,58C,58E,60C:ランド
54D,56D,58E,60E:引出部
70:ステンレス基板
72:レジスト
74:開口部
76:メッキ導体
100〜106:絶縁層
110〜116:コイル層
110A,110B,112A,112B,114A,114B,116A,116B:端部
110C,112C,112E,114C,114E,116C:ランド
110D,112D,114D,116D:引出部
120,122:ビアホール導体
WA,WB:幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7