(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964641
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】リターダ
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20160721BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20160721BHJP
B60L 7/22 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
H02P9/04 M
H02P9/00 C
B60L7/22 G
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-95472(P2012-95472)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-223399(P2013-223399A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220712
【氏名又は名称】株式会社TBK
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】黒田 清志
(72)【発明者】
【氏名】原 伊砂夫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元保
【審査官】
上野 力
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−024156(JP,A)
【文献】
特開平08−126118(JP,A)
【文献】
特開平04−328024(JP,A)
【文献】
特開平04−038200(JP,A)
【文献】
特開平09−068064(JP,A)
【文献】
特開2010−163872(JP,A)
【文献】
特表2003−521863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
B60L 7/22
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダであって、
前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターと、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記内燃機関の回転速度の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するものであることを特徴とするリターダ。
【請求項2】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダであって、
前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターと、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記トランスミッションのギアがニュートラルである場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するものであることを特徴とするリターダ。
【請求項3】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダであって、
前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターと、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記自動車が備える車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御する機能をさらに備え、
前記車速センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、
前記回転速度センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターを制御するか、前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御するかを切り替えるものであることを特徴とするリターダ。
【請求項4】
前記制御手段が、前記自動車が備える車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御する機能をさらに備え、
前記車速センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、
前記回転速度センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターを制御するか、前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御するかを切り替えるものであることを特徴とする請求項1または2記載のリターダ。
【請求項5】
前記制御手段が、前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御するものであることを特徴とする請求項3または4記載のリターダ。
【請求項6】
前記自動車が、前記内燃機関と前記トランスミッションとの間にクラッチを備え、
前記制御手段が、前記クラッチが切断された情報を取得した場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のリターダ。
【請求項7】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダにおける、前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターの制御方法であって、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御し、
前記内燃機関の回転速度の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダにおける、前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターの制御方法であって、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御し、
前記トランスミッションのギアがニュートラルである場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダにおける、前記トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターの制御方法であって、
前記自動車が備える前記内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および前記自動車から取得した前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御し、
前記自動車が備える車速センサーが検出した情報をさらに取得し、
前記車速センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、
前記回転速度センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターを制御するか、前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御するかを切り替えることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
前記自動車が備える車速センサーが検出した情報をさらに取得し、
前記車速センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、
前記回転速度センサーが検出した情報および前記トランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて前記誘導モーターを制御するか、前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターを制御するかを切り替えることを特徴とする請求項7または8記載の制御方法。
【請求項11】
前記車速センサーが検出した情報に基づいて前記誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて前記誘導モーターを制御することを特徴とする請求項9または10記載の制御方法。
【請求項12】
前記自動車が備えるクラッチが切断された情報を取得した場合に、前記誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御することを特徴とする請求項7から11のいずれか1項記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられるリターダに関し、特に制動、発電、トルクの発生が可能な誘導モーターを備えたリターダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費化の要求を受けて、自動車に搭載されるエンジンが小型化される傾向にある。エンジンが小型化されると、排気ブレーキまたはエンジンブレーキの効力が小さくなるため、自動車の制動能力を補助するリターダの併用が必要となる。
【0003】
このリターダとしては、一般的に渦電流方式もしくは流体方式が知られているが、このうち渦電流方式リターダについて、従来の渦電流方式リターダは、自身で発電することはできず、また制動時に発生するエネルギーを回生させることもできなかったため、昨今の低燃費化の要求を満たすことはできなかった。さらに、リターダ自体でエンジンの出力を加勢する駆動トルクを発生させることもできなかったため、車両の補助動力として用いることもできなかった。
【0004】
そのため、近年では渦電流方式リターダにおいて、制動、発電、トルクの発生が可能な誘導モーターを備えたリターダが提案されている。(例えば特許文献1、2)
【0005】
誘導モーターのトルク制御では、同期速度と実際の回転速度との差である相対速度と、同期速度との比である「すべり」の量を調整することが重要となるため、一般的に上記のような誘導モーター方式のリターダでは、誘導モーターの制御を行うために誘導モーターの実際の回転速度を取得する必要がある。
【0006】
従って、誘導モーターにレゾルバ等の回転速度センサーを搭載する必要があるが、誘導モーターに回転速度センサーを搭載する場合、回転速度センサー自体のコストに加えて、高温となるローターに対して熱の影響を受けないように回転速度センサーを取り付ける必要があり、モーター全体の構造が複雑化するため、コストの増加につながってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−126118号公報
【特許文献2】特開平10−225096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誘導モーターのコストを低減させるために、回転速度センサーを不要とするセンサーレス制御が提案されている。
【0009】
従来提案されているセンサーレス制御の原理は、ローターに対して所定の回転速度で回転させるように制御した場合にステーターで発生する誘起起電力の理論値と実際値との乖離を検出し、この乖離の量に基づいて回転速度の指令値を制御することで、ローターの回転速度の推定およびローターの回転速度制御を行うものである。
【0010】
ただし、この方法では、ローターが停止している状態から回転速度制御を行う場合には原理通りの制御を行うことができるが、ローターが回転している状態から回転速度制御を行う場合には、制御時のローターの動作状態により上記乖離量が過大となり安定した制御が困難となるため、原理通りの制御を行うことができない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、誘導モーターを備えたリターダにおいて、モーターの動作状態に関わらず正確なセンサーレス制御が可能なリターダを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のリターダは、内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダであって、トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターと、自動車が備える内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および自動車から取得したトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする。
【0013】
本発明のリターダにおいてトランスミッションは、MT(Manual Transmission)、AT(Automatic Transmission)、CVT(Continuously Variable Transmission)等、どのような形態のトランスミッションでもよい。
【0014】
ここで、「内燃機関(エンジン)の回転速度センサーが検出した情報」とは、エンジン回転速度センサーの出力信号そのもの(例えば、いわゆる回転パルス信号と呼ばれる信号)や、CAN(Controller Area Network)等の車内デジタル通信システムにおいて流されるエンジン回転速度に対応したデジタル信号等、エンジン回転速度に対応した信号であればどのようなものでもよい。
【0015】
また、「ギア状態を示す情報」とは、ギア段数(ニュートラルを含む)の情報の他、トランスミッションの現在の減速比を示す情報等、最終的にトランスミッションにおける減速比を特定できる情報であればどのような形態でもよい。なお、制御手段においてギア段数のみを自動車側から取得する場合には、各ギア段数における減速比の情報は予め取得しておく必要がある。
【0016】
また、「内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および自動車から取得したトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出する」とは、例えば内燃機関の回転速度をトランスミッションの減速比で除算する等して、トランスミッションの出力軸の回転速度に比例する速度情報を取得することを意味する。
【0017】
本発明のリターダにおいては、自動車が備えるクラッチが切断されていたりギアがニュートラルの状態になっていたりして、内燃機関とトランスミッションの出力軸との間で駆動力が伝達されていない状態では、誘導モーターの回転速度を正確に導出することが難しい。従って、制御手段は、内燃機関の回転速度の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合、すなわち内燃機関の回転数が急激に上昇した場合には、クラッチが切断された状態もしくはギアがニュートラルの状態とみなして、誘導モーターに対して一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するものとしてもよい。
【0018】
また、制御手段は、自動車が備えるクラッチが切断された情報を取得した場合や、トランスミッションのギアがニュートラルである場合に、誘導モーターに対して一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するものとしてもよい。
【0019】
自動車が備える車速センサーは一般的にトランスミッションの出力軸の回転速度を検出するものであるため、車速センサーが検出した情報に基づいても誘導モーターを制御することが可能であり、この場合には内燃機関の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度(すなわちトランスミッションの出力軸の回転速度)を導出するよりも簡単な処理で誘導モーターの制御を行うことが可能である。
【0020】
しかしながら、タコジェネレーター等の回転検出センサーが一般的に用いられる車速センサーは、低速(低回転)領域では速度検出精度が高くないため、低速領域では高精度に誘導モーターを制御できないおそれがある。車速センサーと同様のセンサーである内燃機関の回転速度センサーも、車速センサーと同様に低回転領域では速度検出精度は高くないが、トランスミッションの減速比が1未満とならない限りは、車速センサーよりも内燃機関の回転速度センサーの方が高い回転速度となるため、このような状態では内燃機関の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出した方が、速度検出精度を高くすることができる。
【0021】
従って、制御手段は、自動車が備える車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御する機能をさらに備え、車速センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターを制御するか、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御するかを切り替えるものとしてもよい。
【0022】
ここで、「自動車が備える車速センサーが検出した情報」とは、車速センサーの出力信号そのもの(例えば、いわゆる車速パルス信号と呼ばれる信号)や、CAN(Controller Area Network)等の車内デジタル通信システムにおいて流される車速に対応したデジタル信号等、車速に対応した信号であればどのようなものでもよい。
【0023】
また、「車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御する」とは、上記の情報に基づいて誘導モーターを制御することを意味し、例えば、車速パルス信号に基づいて誘導モーターを制御する場合、通常車速センサーは誘導モーターと連結されるトランスミッションの出力軸の回転速度を検出するものであるため、リターダの制御回路(制御手段)が、誘導モーターに従来備わっていたレゾルバ等の回転速度センサーの出力信号に基づいて誘導モーターを制御するように構成されているとともに、誘導モーターが従来備える回転速度センサーの出力信号と車速パルス信号が同等の信号である場合には、受信した車速パルス信号を回転速度センサーの出力信号とみなして、従来の誘導モーターの制御回路をそのまま利用することができる。
【0024】
また、リターダの制御回路(制御手段)が、誘導モーターに従来備わっていた回転速度センサーの出力信号に基づいて誘導モーターを制御するように構成されている場合であっても、誘導モーターが従来備える回転速度センサーの出力信号と車速パルス信号が異なる信号である場合や、CAN(Controller Area Network)等の車内デジタル通信システムにおいて流される車速に対応したデジタル信号を受信する場合には、受信した信号を誘導モーターの制御回路における誘導モーターの回転速度を示す信号と対応させるように変換する必要がある。
【0025】
従って、この場合、制御手段は、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御するものとしてもよい。
【0026】
本発明の制御方法は、内燃機関によりトランスミッションを介して車軸が駆動される自動車に用いられるリターダにおける、トランスミッションの出力軸と連結される誘導モーターの制御方法であって、自動車が備える内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および自動車から取得したトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御することを特徴とする。
【0027】
本発明の制御方法においては、内燃機関の回転速度の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合に、誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御してもよい。
【0028】
また、自動車が備えるクラッチが切断された情報を取得した場合や、トランスミッションのギアがニュートラルである場合に、誘導モーターに対して、一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御してもよい。
【0029】
また、自動車が備える車速センサーが検出した情報をさらに取得し、車速センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターを制御するか、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御するかを切り替えるようにしてもよい。
【0030】
この場合、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御してもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のリターダおよび制御方法によれば、自動車が備える内燃機関の回転速度センサーが検出した情報および自動車から取得したトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御するようにして、誘導モーターに回転速度センサーを搭載しなくてもモーターの回転速度を取得できるようにしたので、低コストであり、かつモーターの動作状態に関わらず正確なセンサーレス制御を行うことが可能となる。なお、本発明のリターダは、搭載する車種を問わず、どのような車種に対しても適用することが可能である。
【0032】
また、内燃機関の回転速度の単位時間当たりの変化量が所定の閾値を超えた場合、すなわち内燃機関の回転数が急激に上昇した場合には、クラッチが切断された状態もしくはギアがニュートラルの状態とみなして、誘導モーターに対して一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御することにより、不正確な情報に基づいてリターダが危険な動作状態に陥るのを防止することができる。
【0033】
また、自動車が備えるクラッチが切断された情報を取得した場合や、トランスミッションのギアがニュートラルである場合に、誘導モーターに対して一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御するようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、自動車が備える車速センサーが検出した情報をさらに取得し、車速センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報のうち少なくとも一つの情報に基づいて、回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターを制御するか、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御するかを切り替えるようにすれば、処理が簡単である車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターを制御する方法を用いて誘導モーターを制御しつつ、速度検出精度が低下する低速(低回転)領域では、回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッションのギア状態を示す情報に基づいて誘導モーターを制御する方法を用いて、速度検出精度を向上させることができるので、効率的に誘導モーターを制御することが可能となる。
【0035】
この場合、車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーターの回転速度を導出し、導出した回転速度に基づいて誘導モーターを制御するようにすれば、自動車側から受信した信号の態様と、誘導モーターの制御回路(制御手段)における誘導モーターの回転速度を示す信号の態様とが一致しない場合であっても、正確に誘導モーターを制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のリターダを搭載した自動車の概略構成図
【
図2】上記リターダに搭載された誘導モーターの特性を示すグラフ
【
図3】本発明の第2の実施の形態のリターダを搭載した自動車の概略構成図
【
図4】エンジン回転速度とモーター回転速度との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明のリターダの第1の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態のリターダを搭載した自動車の概略構成図、
図2は上記リターダに搭載された誘導モーターの特性を示すグラフである。
【0038】
自動車1は、主として車軸を駆動するためのエンジン40と、エンジン40の出力回転速度とトルクを歯車の組み合わせにより変換するトランスミッション42と、エンジン40とトランスミッション42との間の接続を結合/分離するためのクラッチ41と、エンジン40の主軸(トランスミッション42の出力軸43)の回転に対して制動もしくはトルクの印加を行ったり、エンジン40の主軸の回転により発電を行うためのリターダ10と、電力を蓄電・供給するためのバッテリー44等により構成されている。
【0039】
本実施の形態のリターダ10は、制動、発電、トルクの発生のいずれも可能なものであって、トランスミッション42の出力軸43と連結した誘導モーター11と、この誘導モーター11を制御するための制御部(制御手段)12から構成されている。
【0040】
制御部12は、自動車1側(リターダ10外部)から動作制御指令を受けて誘導モーター11の速度制御を行う速度制御部20と、速度制御部20からの指示に基づいて後述のインバーター回路22を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部21と、誘導モーター11の制御を行ったり誘導モーター11において発電した電力をバッテリー44へ送出するためのインバーター回路22と、誘導モーター11に対して流入・流出する電流量を検出する電流検出部23とを備えている。
【0041】
また、制御部12は、自動車1側(リターダ10外部)からエンジン40の回転速度センサーが検出した情報を受信するエンジン回転速度検出部24と、同じく自動車1側(リターダ10外部)からトランスミッション42のギア状態を示す情報(本実施の形態においてはギア段数を示す情報)を受信するギア状態検出部25と、エンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて、速度制御部20が誘導モーター11の回転速度を正しく認識できる形態に信号の変換を行うモーター回転速度算出部26と、速度制御部20に対してモーター回転速度算出部26により取得された回転速度信号を送出するか否かを切り替える回転速度検出切換部27とを備えている。
【0042】
誘導モーター11のローターはトランスミッション42の出力軸43と結合しており、誘導モーター11の回転速度と出力軸43の回転速度は同じであるため、エンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて出力軸43の回転速度を算出することにより、誘導モーター11の回転速度を取得することが可能である。
【0043】
本実施の形態において、エンジン回転速度検出部24およびギア状態検出部25が受信する情報は、自動車1内のCAN(Controller Area Network)等の車内デジタル通信システムにおいて流されるデジタル信号である。
【0044】
なお、
図1では機能ブロック図としてエンジン回転速度検出部24とギア状態検出部25とを独立して示しているが、同一の信号受信部でエンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報を受信するようにしてもよい。
【0045】
モーター回転速度算出部26は、各ギア段数における減速比の情報を予め有しており、エンジン40の回転速度をトランスミッション42の現在の減速比で除算して、トランスミッション42の出力軸の回転速度の数値を算出し、その数値に基づいて速度制御部20が正しく誘導モーター11の回転速度を認識できる信号の形態に変換し、変換した回転速度信号を速度制御部20に出力する。
【0046】
速度制御部20は、自動車1側(リターダ10外部)からの動作制御指令に基づいて、
図2に示すような誘導モーターの特性に従い、モーター回転速度算出部26から送出された回転速度信号に基づいて誘導モーター11のすべり量を調整し、誘導モーター11の適切な制御を行う。
【0047】
ここで「すべり」とは、同期速度N
S(rpm)と実際の回転速度N(rpm)との差である相対速度と、同期速度N
Sとの比であり、下記(1)式で表される。
s=(N
S−N)/N
S ・・(1)
【0048】
本実施の形態のリターダ10は、制動、発電、トルクの発生のいずれも可能なものであり、制動時はすべりが1よりも大きい値となるように誘導モーター11の制御を行う。また、電動アシスト(トルク発生)時はすべりが0よりも大きく、かつ1よりも小さい値となるように誘導モーター11の制御を行う。
【0049】
また、回生(発電)動作時は、すべりが0よりも小さい値となるように誘導モーター11の制御を行う。なお、回生動作中のすべりは0に近い発電量の大きい領域(
図2中で一点鎖線で示す回生電力の値が縦軸方向で小さい領域)に設定されるのが一般的であるが、回生動作中においてバッテリー44の蓄電容量が一杯になると回生動作を継続させることができなくなってしまう。そのため、回生動作中にバッテリー44の蓄電容量が一杯になった場合には、すべりをマイナス方向に大きくして、回生電力より消費電力が上回る領域(
図2中で一点鎖線で示す回生電力の値が縦軸方向でプラスとなる領域)まで移行させることにより、回生動作を中断させることなく、回生動作を継続させることができる。
【0050】
このような態様とすることで、誘導モーター11自体に回転速度センサーを搭載しなくてもモーターの回転速度を取得できるため、低コストであり、かつモーターの動作状態に関わらず正確なセンサーレス制御を行うことが可能となる。
【0051】
なお、自動車1が備えるクラッチ41が切断された情報を取得した場合や、トランスミッション42のギアがニュートラルである場合、さらにはエンジン40の回転数が急激に上昇した場合にはクラッチが切断された状態もしくはギアがニュートラルの状態とみなして、誘導モーター11に対して一切の制御を停止した無制御状態とするか、駆動・制動トルクとも生じぬように制御することにより、不正確な情報に基づいてリターダ10が危険な動作状態に陥るのを防止することができる。
【0052】
次いで、本発明のリターダの第2の実施の形態について詳細に説明する。
図3は本発明の第2の実施の形態のリターダを搭載した自動車の概略構成図、
図4はエンジン回転速度とモーター回転速度との関係を示すグラフである。本実施の形態は上記第1の実施の形態と比較して制御部12の構成を変更したものである。なお、
図1中の要素と同等の要素には同符合を付しており、それらについての説明は必要のない限り省略し、主として相違点のみ説明する。
【0053】
制御部12は、自動車2側(リターダ10´外部)から動作制御指令を受けて誘導モーター11の速度制御を行う速度制御部20と、速度制御部20からの指示に基づいて後述のインバーター回路22を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成部21と、誘導モーター11の制御を行ったり誘導モーター11において発電した電力をバッテリー44へ送出するためのインバーター回路22と、誘導モーター11に対して流入・流出する電流量を検出する電流検出部23とを備えている。
【0054】
また、制御部12は、自動車2側(リターダ10´外部)からエンジン40の回転速度センサーが検出した情報を受信するエンジン回転速度検出部24と、同じく自動車2側(リターダ10´外部)からトランスミッション42のギア状態を示す情報を受信するギア状態検出部25と、エンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて、速度制御部20が誘導モーター11の回転速度を正しく認識できる形態に信号の変換を行うモーター回転速度算出部26と、自動車2側(リターダ10´外部)から自動車2が備える車速センサーが検出した情報を受信する車速検出部28と、車速センサーが検出した情報(信号)に基づいて、速度制御部20が誘導モーター11の回転速度を正しく認識できる形態に信号の変換を行うモーター回転速度算出部29と、速度制御部20に対してモーター回転速度算出部26により取得された回転速度信号を送出するか、モーター回転速度算出部29により取得された回転速度信号を送出するか、または回転速度信号を送出しないかを切り替える回転速度検出切換部27とを備えている。
【0055】
本実施の形態において、エンジン回転速度検出部24、ギア状態検出部25および車速検出部28が受信する情報は、自動車2内のCAN(Controller Area Network)等の車内デジタル通信システムにおいて流されるデジタル信号である。
【0056】
なお、
図3では機能ブロック図としてエンジン回転速度検出部24とギア状態検出部25と車速検出部28とを独立して示しているが、同一の信号受信部でエンジン40の回転速度センサーが検出した情報、トランスミッション42のギア状態を示す情報および車速センサーが検出した情報を受信するようにしてもよい。
【0057】
自動車2が備える車速センサーは一般的にトランスミッション42の出力軸の回転速度を検出するものであるため、車速センサーが検出した情報に基づいても誘導モーター11を制御することが可能であり、この場合には第1の実施の形態のようにエンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて誘導モーター11の回転速度(すなわちトランスミッション42の出力軸の回転速度)を導出するよりも簡単な処理で誘導モーター11の制御を行うことができる。
【0058】
しかしながら、レゾルバ等の回転検出センサーが一般的に用いられる車速センサーは、低速(低回転)領域では速度検出精度が高くないため、低速領域では高精度に誘導モーターを制御できないおそれがある。車速センサーと同様のセンサーであるエンジン40の回転速度センサーも、車速センサーと同様に低回転領域では速度検出精度は高くないが、トランスミッション42の減速比が1未満とならない限りは、車速センサーよりもエンジン40の回転速度センサーの方が高い回転速度となるため、このような状態ではエンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて誘導モーター11の回転速度を導出した方が、速度検出精度を高くすることができる。
【0059】
ここで、エンジン回転速度とモーター回転速度との関係について一例を
図4のグラフに示す。このグラフに示す通り、特にギアが1速では誘導モーター11の回転速度(すなわちトランスミッション42の出力軸の回転速度)に対して、エンジン40の回転速度が高くなるため、回転速度検出切換部27においてエンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報を取得し、ギアが1速でかつエンジン40の回転速度が所定の回転速度よりも低い領域では、モーター回転速度算出部26により取得された回転速度信号(エンジン40の回転速度およびギア状態に基づいた回転速度信号)を速度制御部20に対して送出するように切り換え、それ以外の状態では、モーター回転速度算出部29により取得された回転速度信号(車速センサーに基づいた回転速度信号)を速度制御部20に対して送出するように切り換える。
【0060】
なお、減速比が1未満のギア段数以外は全て車速センサーよりもエンジン40の回転速度センサーの方が高い回転速度となるため、誘導モーター11の回転速度が低く車速センサーに基づいた回転速度信号の精度があまり高くない領域(
図4中のグラフの点線よりも下の領域)では、1速だけでなく、減速比が1未満のギア段数を除いたすべてのギア段数においても、モーター回転速度算出部26により取得された回転速度信号(エンジン40の回転速度およびギア状態に基づいた回転速度信号)を速度制御部20に対して送出するように切り換えてもよい。
【0061】
速度制御部20は、自動車2側(リターダ10´外部)からの動作制御指令に基づいて、
図2に示すような誘導モーターの特性に従い、回転速度検出切換部27から送出された回転速度信号に基づいて誘導モーター11のすべり量を調整し、誘導モーター11の適切な制御を行う。
【0062】
このような態様とすることで、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、さらに、処理が簡単である車速センサーが検出した情報に基づいて誘導モーター11を制御する方法を用いて誘導モーター11を制御しつつ、速度検出精度が低下する低速(低回転)領域では、エンジン40の回転速度センサーが検出した情報およびトランスミッション42のギア状態を示す情報に基づいて誘導モーター11を制御する方法を用いて、速度検出精度を向上させることができるので、効率的に誘導モーター11を制御することが可能となる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、上記第1および第2の実施の形態のいずれとも、エンジン40の回転速度センサーが検出した情報や車速センサーが検出した情報として自動車側1、2(リターダ10、10´外部)から受信する情報は、上記のようなデジタル信号に限らず、各センサーの出力信号そのもの(いわゆる回転パルス信号や車速パルス信号)であってもよく、その場合には、モーター回転速度算出部26、29において、受信したパルス信号を速度制御部20で誘導モーター11の回転速度を正しく認識可能な信号に変換して出力すればよい。なお、車速パルス信号について速度制御部20で誘導モーター11の回転速度を正しく認識可能な信号と同様の形態である場合には、変換は不要である。
【0065】
また、上記以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行なってもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1、2 自動車
10、10´ リターダ
11 誘導モーター
12 制御部
20 速度制御部
21 駆動信号生成部
22 インバーター回路
23 電流検出部
24 エンジン回転速度検出部
25 ギア状態検出部
26 モーター回転速度算出部
27 回転速度検出切換部
28 車速検出部
29 モーター回転速度算出部
40 エンジン
41 クラッチ
42 トランスミッション
43 トランスミッション出力軸
44 バッテリー