特許第5964643号(P5964643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964643
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】釣竿用竿管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   A01K87/00 630A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-98049(P2012-98049)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-223467(P2013-223467A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−159526(JP,A)
【文献】 特開昭62−257330(JP,A)
【文献】 特開平8−289701(JP,A)
【文献】 特開昭55−156538(JP,A)
【文献】 特開2008−295940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金にシート状のプリプレグを肉厚一定の並行巻きに巻回して加熱焼成した後、芯金付きの状態で、研磨代が軸線方向に一定ではなく異なるように竿管の外周面を研磨することにより、肉厚が軸線方向に変化した所定形状の竿管を形成し、その後脱芯することを特徴とする釣竿用竿管の製造方法。
【請求項2】
設計上の肉厚に相当する巻き数よりも多い巻き数でプリプレグを巻回しておき、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することによって設計上の肉厚に形成する請求項1記載の釣竿用竿管の製造方法。
【請求項3】
竿元側の端部における設計上の肉厚に相当する巻き数よりも一回分多い巻き数でプリプレグを巻回しておき、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することによって設計上の肉厚に形成する請求項記載の釣竿用竿管の製造方法。
【請求項4】
竿管が多層構造であって、研磨によって竿先側の領域については外側の層を削り取って内側の層を露出させると共に竿元側の領域については外側の層を残すようにする請求項1乃至3の何れかに記載の釣竿用竿管の製造方法。
【請求項5】
芯金にプリプレグを巻回して加熱焼成した後、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することにより所定形状の竿管を形成し、その後脱芯する釣竿用竿管の製造方法であって、
周方向の強化繊維を有する増肉用のプリプレグを竿元側の端部切断領域に更に巻回して厚肉部を形成し、脱芯後に厚肉部よりも竿先側の位置を切断ラインとして竿元側の端部切断領域を切断除去することを特徴とする釣竿用竿管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に用いられる竿管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿に用いられる竿管は、プリプレグをマンドレルと呼ばれる芯金に巻回して加熱焼成した後、芯金を引き抜くことで製造される。そして、脱芯後、中空状の竿管の外周面を研磨することになる(下記特許文献1乃至3)。
【0003】
しかしながら、竿管はカーボン繊維等の強化繊維と合成樹脂から構成されているので、その外周面に研磨材を押し付けて研磨する際にその力によって竿管に撓みが生じやすい。また、竿管が中空状であるために研磨時に内側に変形しやすい。従って、竿管の外周面を高精度に研磨するということは必ずしも容易ではなく、特に、竿管が薄肉になると撓みや内側への変形が生じやすい。
【0004】
尚、下記特許文献4には竿管の端部に短い芯金を挿入し、その状態で竿管の端部外周面を研磨することが記載されているが、短い芯金を別途竿管の端部に挿入する必要があるため、製造工程が複雑化する。しかも、プリプレグを巻回して加熱焼成するための芯金とは異なる別形状の芯金を挿入して竿管の外周面の周方向の特定箇所に凸部を意図的に形成する方法であり、竿管の外周面をラフな精度で研磨することはできても高精度な研磨には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−177636号公報
【特許文献2】特開平5−3739号公報
【特許文献3】特開2007−319021号公報
【特許文献4】特開2001−231411号公報
【特許文献5】特開昭62−220131号公報
【特許文献6】特開平1−285138号公報
【特許文献7】特開平9−248103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、外周面を容易に高精度に研磨することができる釣竿用竿管の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿用竿管の製造方法は、芯金にプリプレグを巻回して加熱焼成した後、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することにより所定形状の竿管を形成し、その後脱芯することを特徴とする。
【0008】
該構成の製造方法にあっては、芯金にプリプレグを巻回して加熱焼成した後に、その芯金を脱芯する前に芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨する。竿管の内側には全長に亘って芯金が存在しており、しかもその芯金と竿管は隙間なく密着して一体となっているため、竿管の外周面に研磨材を押し付けても竿管が撓んだり内側に変形したりすることがない。
【0009】
尚、上記特許文献5乃至7のように、加熱焼成したソリッド体の外側にプリプレグを巻回し、それを再び加熱焼成することによって中実状の竿体を形成して、該中実状の竿体の外周面を研磨することによって所望のテーパ形状とする方法がある。しかしながら、加熱焼成したソリッド体自体に曲がりが生じていることがあり、その上からプリプレグを巻回して加熱焼成することで更にその曲がりが増幅されたり複雑化したりする。また、内側のソリッド体は強化繊維と樹脂から構成されたものであって容易に変形する。従って、中実状の竿体の外周面を研磨する際に、中実状の竿体が研磨時の力によって撓み、外周面を押す力が吸収されることから、所望の形状に正確に形成することが難しい。
【0010】
これに対して本発明に係る製造方法にあっては、竿管の内側に芯金が全長に亘って存在している状態でその竿管の外周面を研磨するため、研磨時に竿管が撓むということがなくまた内側に変形することもないから、竿管の外周面を所望の形状に正確に形成することができる。
【0011】
特に、設計上の肉厚に相当する巻き数よりも多い巻き数でプリプレグを巻回しておき、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することによって設計上の肉厚に形成することが好ましい。即ち、プリプレグを余分目に巻回しておいてその余分な肉厚を研磨によって除去するようにすることで、竿管の肉厚を設計どおりに正確に形成することができる。
【0012】
また、芯金にシート状のプリプレグを肉厚一定の並行巻きに巻回して加熱焼成した後、芯金付きの状態で、研磨代が軸線方向に一定ではなく異なるように竿管の外周面を研磨することにより肉厚が軸線方向に変化した所定形状の竿管を形成する。
【0013】
一般的に竿管の肉厚は竿先側よりも竿元側の方が厚くなっている。そのためプリプレグを竿先側に向けて幅狭の形状に形成し、そのプリプレグを芯金に巻回することで竿先側よりも竿元側の巻き数が多くなるようにして竿管の肉厚を調整することが多い。しかしながら、竿先側の巻き数に対して竿元側の巻き数を多くすると、竿先側の端部と竿元側の端部においては肉厚が全周に亘って均一になる一方、両端部以外の中間領域においては巻き数の差の影響によって肉厚が全周に亘って均一にはならない。例えば竿先側を三回巻きとし竿元側を四回巻きとした場合、竿先側の端部では三回巻きの状態であってその肉厚は全周に亘って略均一であり、プリプレグ三枚分の厚さに相当している。また、竿元側の端部では四回巻きの状態であってその肉厚は全周に亘って略均一であり、プリプレグ四枚分の厚さに相当している。その一方、両端部以外の中間領域では、全周のうちの一部が三回巻きで他の部分が四回巻きの状態となる。即ち、全周のうち、四回巻きとなった部分が厚肉の偏肉部分となる。この四回巻きとなった偏肉部分の角度範囲即ち中心角は、竿先側から竿元側に向けて徐々に広がっていくことになる。巻回したプリプレグの最外周においてはプリプレグの側縁が螺旋を描いているから、巻き数が部分的に多くなった偏肉部分もプリプレグの側縁と共に螺旋を描きながら竿元側に向けて広がっていき、竿元側の端部において全周が四回巻きの状態となる。このように竿先側から竿元側に向けて偏肉部分が広がっていくと、加熱焼成によって形成された竿管には曲がりが生じやすい。釣竿が無負荷の状態で既に所定の方向に曲がっていると、釣竿としての商品価値が低下するうえに、釣竿の曲がり具合や調子にも方向性が生じることになる。即ち、魚が掛かった場合に釣り人が予期しない方向に釣竿が曲がってしまって魚とのやりとりが難しくなったり、釣り味が損なわれたりする。
【0014】
そこで、上述したように、芯金にシート状のプリプレグを肉厚一定の並行巻きに巻回する。プリプレグを並行巻きにすると、最外周におけるプリプレグの側縁は芯金の軸線方向に沿って直線状に延びることになり、竿先側の端部から竿元側の端部まで全長に亘って肉厚が一定であり、両端部のみならず中間領域においても全周に亘って略均一な肉厚となる。そして、加熱焼成した後、芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することにより肉厚が軸線方向に変化した所定形状の竿管を形成する。肉厚が軸線方向に変化した形状には種々あって釣竿の設計によって定まることになる。その一例としては、竿先側の端部から竿元側の端部にかけて徐々に肉厚が厚くなっていく形状や、多段テーパ形状、段付き形状等がある。何れにしても、設計で定めた肉厚の形状に竿管の外周面を研磨することによって形成するのであるが、その場合に芯金付きの状態で研磨するので、設計どおりの肉厚に正確に研磨することができ、しかもプリプレグのパターンや巻き数によっては形成することが不可能あるいは困難である特殊形状であっても容易に形成することができる。
【0015】
そして、そのようにプリプレグを並行巻きとする場合においても上述したように設計上の肉厚に相当する巻き数よりも多い巻き数で巻回しておいて、加熱焼成後に芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨することによって設計上の肉厚に形成することが好ましいが、特に竿元側の端部における設計上の肉厚に相当する巻き数よりも一回分多い巻き数でプリプレグを巻回しておくことが好ましい。そのようにすれば、竿元側の端部においても一回分の巻き数に相当する研磨代を設けることができ、少ない研磨時間で設計どおりの肉厚に研磨することができると共に余分なプリプレグも最小限に抑制することができる。
【0016】
一方、周方向の強化繊維を有する増肉用のプリプレグを竿元側の端部切断領域に更に巻回して厚肉部を形成し、脱芯後に厚肉部よりも竿先側の位置を切断ラインとして竿元側の端部切断領域を切断除去することも好ましい。脱芯後は、竿先側及び竿元側の両端部の所定領域を切断領域として切断除去して、残る中間の有効領域を使用して釣竿とするのであるが、その竿元側の端部切断領域に更に周方向の強化繊維を有する増肉用のプリプレグを巻回することによって厚肉部を形成すると、芯金を竿元側の端部から引き抜いて脱芯する際に、竿元側の端部が拡径したり破損したりすることなく容易に且つ確実に脱芯することができる。しかも、厚肉部は竿元側の端部切断領域に形成されていて脱芯後に切断除去されるので、厚肉部を形成しても釣竿として使用される有効領域には影響を及ぼすことがない。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係る釣竿用竿管の製造方法にあっては、芯金を脱芯する前に芯金付きの状態で竿管の外周面を研磨するため、竿管の外周面を所望の形状に容易に且つ高精度に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す正面図。
図2】同実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す正面図。
図3】同実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す断面図。
図4】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す断面図。
図5】本発明の他の実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す正面図。
図6】本発明の他の実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す正面図。
図7】本発明の他の実施形態における釣竿用竿管の製造方法の一工程を示す要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿用竿管の製造方法について図1乃至図3を参酌しつつ説明する。
【0020】
図1に示すように、シート状のプリプレグ1を芯金2に巻回する。芯金2は竿管の内径に合致した形状に形成されており、本実施形態では竿先側から竿元側にかけて徐々に大径となるテーパ形状に形成されている。シート状のプリプレグ1は、カーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸させてシート状に形成したものである。
【0021】
該プリプレグ1を図2のように芯金2に肉厚一定の並行巻きに巻回した後、加熱焼成して竿管10を形成するのであるが、プリプレグ1を並行巻きに巻回するため、プリプレグ1は芯金2のテーパ形状に応じた分だけ竿先側に向けて若干幅狭となった台形状に形成しておく。図2のように並行巻きに巻回すると、最外周におけるプリプレグ1の側縁1aは芯金2の軸線方向に沿って一直線状に延びることになる。また、このように並行巻きとすると、竿管10の肉厚は竿先側から竿元側まで全長に亘って一定となり、何れの箇所における断面形状で見ても全周に亘って略均一な肉厚となる。
【0022】
また、並行巻きとするので、竿先側の端部における巻き数と竿元側の端部における巻き数は同じになる。例えば、所望の竿管10の形状即ち設計上の竿管10の形状において竿先側の端部が三回巻きに相当する肉厚であって竿元側の端部が四回巻きに相当する肉厚であった場合には、竿先側の端部における巻き数と竿元側の端部における巻き数は何れも五回巻きとなるようにする。即ち、竿元側の端部における設計上の肉厚に相当する巻き数(四回巻き)よりも一回分多い巻き数(五回巻き)でプリプレグ1を並行巻きに巻回する。
【0023】
尚、プリプレグ1を巻回した後に更にその上から図示しない成形テープを螺旋状に巻回してプリプレグ1を締め付け、加熱焼成した後、その成形テープを剥離除去する。
【0024】
成形テープを剥離除去した後、芯金2を脱芯することなくそのまま竿管10の外周面10aの研磨工程を行う。例えば竿管10の外周面10aをセンタレス研磨する。図3には、研磨前の竿管10の外形形状を二点鎖線で示し、研磨後の竿管10の外形形状即ち設計上の竿管10の外形形状を実線で示している。上述したように、設計上の竿管10の形状が、竿先側の端部における肉厚が三回巻きに相当する厚さであって且つ竿元側の端部における肉厚が四回巻きに相当する厚さであった場合において、プリプレグ1を余分目の五回巻きの並行巻きとしているため、研磨時には、竿先側の端部においては二回分の巻き数に相当する厚さの研磨代があり、竿元側の端部においては一回分の巻き数に相当する厚さの研磨代がある。即ち、少なくとも一回分の巻き数に相当する厚さの研磨代を有していることになる。そして、竿管10の外周面10aを研磨した後、芯金2を竿元側から脱芯する。その後、竿管10の両端部の切断領域を切断除去し、その竿管10の表面を塗装するなどして釣竿とする。また、ガイド付きの釣竿とする場合には釣り糸ガイドを装着する。
【0025】
以上のように、本実施形態における釣竿用竿管10の製造方法にあっては、加熱焼成後に芯金2を脱芯する前に芯金付きの状態で竿管10の外周面10aを研磨するので、研磨時に、竿管10の内側には全長に亘って硬い金属製の芯金2が位置しており、しかもその芯金2に竿管10が隙間なく密着していて一体となっている。従って、竿管10の外周面10aに研磨材を押し付けても竿管10が撓んだり内側に変形したりすることがなく、設計どおりの外形形状に正確に研磨することができる。特に穂先竿のように薄い肉厚の場合に効果が大きく、高感度な中空穂先を正確且つ容易に製造することができる。
【0026】
また、プリプレグ1を設計値よりも余分目に巻回しておいてその余分な肉厚を研磨代として研磨によって除去するので、竿管10の肉厚を研磨によって設計どおりに正確に形成することができる。特に、最も肉厚の大きい竿元側の端部において一回分の巻き数に相当する厚さの研磨代を有するようにプリプレグ1を巻回しているので、設計どおりの肉厚になるまでに要する研磨時間が短くて済むと共に余分なプリプレグ1も最小限に抑制することができる。
【0027】
更に、プリプレグ1を並行巻きにしているので竿管10に曲がりが生じにくい。そして、その曲がりの小さい竿管10を芯金付きの状態で研磨することで、設計どおりの竿管10の形状に正確に形成することができる。そして、真っ直ぐな釣竿を形成できるので、釣竿の曲がり具合や調子に方向性が生じにくい。従って、魚が掛かったときに予期しない方向に釣竿が曲がったりするということもなく、釣り味も損なわれず、魚を容易に浮き上がらせて手前に寄せてくることができる。特に、へら竿等のように釣り糸ガイドのないシンプルなのべ竿の構造であってしかも繊細な穂先を備えた釣竿に対して効果的であり、高い趣味性が得られると共に商品価値も高くなる。
【0028】
尚、本実施形態では一枚のシート状のプリプレグ1を巻回する場合について説明したが、二枚以上のプリプレグ1を巻回してもよい。その場合、種類の異なるプリプレグ1を巻回して多層構造とすることができる。
【0029】
多層構造の竿管10とする場合においては研磨によって内側の層を部分的に露出させるようにしてもよい。例えば、図4(a)のように内層20と外層21からなる二層構造の竿管10を形成する。この場合、内層20、外層21の何れについてもプリプレグ1を並行巻きとしておく。そして、加熱焼成後、脱芯することなく芯金付きの状態で外周面10aを研磨するのであるが、竿先側の所定領域については外層21が削り取られて内層20が露出するようにする。このようにすれば、竿先側においては内層20のみの一層構造となり、竿元側においては内層20と外層21の二層構造となる。しかも、外層21の竿先側の端部において段差が生じることなく内層20にスムーズにつながっていく。このような二層構造の一例としては、内層20にガラス繊維を使用し、外層21にはカーボン繊維を使用することができる。無論、内層20にカーボン繊維を使用して外層21にガラス繊維を使用してもよい。
【0030】
また更に、図5のように多段テーパ形状の竿管10も容易に形成することができる。図5に示している竿管10の場合、複数のテーパ領域を有している。具体的には、四つのテーパ領域31,32,33,34を有しており、隣り合うテーパ領域31,32,33,34において傾斜勾配が互いに異なっている。このように多段テーパ形状の竿管10とする場合でも、図5に二点鎖線で示しているように、芯金2にプリプレグ1を平行巻きに巻回して加熱焼成しておけばよいので、プリプレグ1の巻回工程が簡単である。
【0031】
また、テーパ形状即ち一定の傾斜勾配で外径が大きくなっていく形状のみならず、曲線状に外径が変化するR形状にも形成できる。R形状は、外側凹に湾曲したR形状でも、逆に外側凸に湾曲したR形状でもよい。
【0032】
また、図6のように外周面10aに段差部40が形成された段付き形状の竿管10であっても容易に形成できる。段付き形状の竿管10を形成する場合でも、図6に二点鎖線で示すように芯金2にプリプレグ1を平行巻きに巻回して加熱焼成しておけばよいので、プリプレグ1の巻回工程が簡単である。
【0033】
尚、竿管10の竿元側の端部における肉厚が薄い場合には、図7に二点鎖線で示すように脱芯用の厚肉部50を設けることも有効である。即ち、図2に示したようにシート状のプリプレグ1を芯金2に並行巻きに巻回した後、更に、図7のように竿元側の端部切断領域51にテープ状に形成された増肉用のプリプレグ52を巻回して厚肉部50を形成する。通常、脱芯後に竿管10の両端部をそれぞれ所定長さ切断除去して、残った中間の有効領域のみを釣竿に使用するので、切断除去される竿元側の端部切断領域51に厚肉部50を形成する。図7に竿元側における切断ライン53を示しているが、該切断ライン53よりも竿元側の領域が端部切断領域51であり、その端部切断領域51に増肉用のプリプレグ52を巻回して厚肉部50を形成する。尚、厚肉部50はその側縁50aが竿元側の端縁1bと面一となるように形成することが好ましい。また、厚肉部50の幅は1〜10mm程度でよく、肉厚が0.1〜1mm程度増加するように形成することが好ましい。更に、増肉用のプリプレグ1は周方向の強化繊維を有するものを使用することが好ましく、脱芯時において竿元側の端部が拡径したり軸線方向に裂けたりすることをより一層確実に防止できる。
【0034】
また、上記実施形態ではシート状のプリプレグ1を並行巻きに巻回する場合について説明したが、並行巻きではなく、プリプレグ1の側縁1aが螺旋を描くように巻回してもよい。即ち、竿先側の巻き数を少なくして竿元側の巻き数を多くするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 プリプレグ
1a 側縁
1b 竿元側の端縁
2 芯金
10 竿管
10a 外周面
20 内層
21 外層
31 テーパ領域
32 テーパ領域
33 テーパ領域
34 テーパ領域
40 段差部
50 厚肉部
50a 側縁
51 端部切断領域
52 増肉用のプリプレグ
53 切断ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7