(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷用紙に印刷処理を施す印刷装置と、該印刷装置から排紙された印刷済印刷用紙に所定の後処理を施す後処理装置および前記印刷装置の上流側に接続される前処理装置のうちの少なくとも一方の装置とを備えた印刷システムにおいて、
前記各装置が所定の要因によって一時停止した際、該一時停止要因を除去し、準備動作を開始すべき前記装置の優先順位が、前記準備動作の時間が長い順に予め設定された優先順位設定部と、
該優先順位設定部に設定された優先順位で前記一時停止要因が除去されるようにユーザに報知する報知部と、
前記一時停止要因が除去された際、前記優先順位設定部に設定された優先順位で、前記各装置の準備動作を開始する制御部とを備えたことを特徴とする印刷システム。
前記優先順位設定部が、前記各装置についての前記一時停止要因の除去から正常動作再開までの準備動作時間に関する情報を取得し、該取得した情報に基づいて前記優先順位を設定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の印刷システム。
印刷用紙に印刷処理を施す印刷装置と、該印刷装置から排紙された印刷済印刷用紙に所定の後処理を施す後処理装置および前記印刷装置の上流側に接続される前処理装置のうちの少なくとも一方の装置とを備えた印刷システムにおいて、
前記各装置が所定の要因によって一時停止した際、該一時停止要因を除去すべき前記装置の優先順位が設定された優先順位設定部と、
該優先順位設定部に設定された優先順位で前記一時停止要因が除去されるようにユーザに報知する報知部とを備え、
前記優先順位設定部が、前記各装置についての前記一時停止要因の除去から正常動作再開までの準備動作時間に関する情報を取得し、該取得した情報に基づいて前記優先順位を設定するものであることを特徴とする印刷システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上述したように各装置の準備動作は、各装置に固有の動作であるため、各装置の準備動作に要する時間はそれぞれ異なることになる。
【0009】
したがって、たとえば、準備動作時間が相対的に短い装置の一時停止要因の除去の後に、準備動作時間が相対的に長い装置の一時停止要因の除去を行うようにしたのでは、全ての装置の準備動作が終了するまでの時間、すなわちシステムのダウンタイムがより長くかかってしまい生産性の低下を招くことになる。
【0010】
なお、特許文献1には、印刷装置と製本装置とを備えた印刷システムにおいて、印刷装置でジャムが生じた場合においても、製本装置の準備動作を継続して行わせることによって復帰時間を短縮することが開示されているが、上述したように印刷システムを構成する複数の装置が一斉に一時停止した場合における復帰方法については何も提案されていない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、印刷システムを構成する各装置が一時停止した場合において、システムのダウンタイムを短縮することができ、生産性の向上を図ることができる印刷システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の印刷システムは、印刷用紙に印刷処理を施す印刷装置と、印刷装置から排紙された印刷済印刷用紙に所定の後処理を施す後処理装置および印刷装置の上流側に接続される前処理装置のうちの少なくとも一方の装置とを備えた印刷システムにおいて各装置が所定の要因によって一時停止した際、その一時停止要因を除去すべき装置の優先順位が予め設定された優先順位設定部と、優先順位設定部に設定された優先順位で一時停止要因が除去されるようにユーザに報知する報知部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の印刷システムにおいては、後処理装置を設け、優先順位設定部を、印刷装置の一時停止要因の除去よりも後処理装置の一時停止要因の除去の方が先に行われるような優先順位が設定されたものとできる。
【0014】
また、優先順位設定部を、各装置についての一時停止要因の除去から正常動作再開までの準備動作時間に関する情報を取得し、その取得した情報に基づいて優先順位を設定するものとできる。
【0015】
また、各装置の準備動作時間を計測する準備動作時間計測部を設け、優先順位設定部を、準備動作時間計測部によって計測された各装置の準備動作時間を取得し、その取得した準備動作時間に基づいて優先順位を設定するものとできる。
【0016】
また、優先順位のユーザによる設定入力を受け付ける優先順位設定受付部を設けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印刷システムによれば、一時停止要因を除去すべき装置の優先順位を予め設定し、各装置が所定の要因によって一時停止した際、その優先順位で一時停止要因が除去されるようにユーザに報知するようにしたので、ユーザがその優先順位にしたがって各装置の一時停止要因を除去することによって、準備動作時間が相対的に長い装置から一時停止要因を除去することができ、システムのダウンタイムを短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
具体的には、たとえば後処理装置としてくるみ製本装置を用いる場合、くるみ製本装置の準備動作には糊の加熱動作が含まれており、通常は、この加熱動作に要する時間は印刷装置の準備動作に要する時間よりも長くなる。したがって、印刷装置の一時停止要因の除去よりもこのくるみ製本装置の一時停止要因の除去の方が先に行われるような優先順位を設定するようにすれば、くるみ製本装置の準備動作を印刷装置の準備動作よりも先に開始することができるので、システムのダウンタイムを短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0019】
また、各装置についての一時停止要因の除去から正常動作再開までの準備動作時間に関する情報を取得し、その取得した情報に基づいて優先順位を設定するようにした場合には、たとえば印刷装置に接続される後処理装置や前処理装置が複数種類あったとしても、これらの各装置の準備動作時間に関する情報に基づいて優先順位を設定することによって、適切な順序で各装置の準備動作を開始させることができる。
【0020】
また、各装置においてその装置の準備動作時間を実際に計測し、その計測した各装置の準備動作時間に基づいて優先順位を設定するようにした場合には、たとえば全く新しい前処理装置や後処理装置が印刷装置に接続された場合においても、その準備動作時間を実際の計測によって取得することができるので、その準備動作時間に応じた適切な優先順位を設定することができる。
【0021】
また、一時停止要因の除去の優先順位をユーザの設定入力によって設定するようにした場合には、たとえば、生産効率の向上という観点だけではなく、その他のユーザのニーズに応じた優先順位を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の印刷システムの一実施形態について詳細に説明する。本実施形態の印刷システムは、印刷システムを構成する印刷装置および製本装置における一時停止要因の除去手順に特徴を有するものであるが、まずは、その全体の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態の印刷システム1の全体の概略構成図である。
【0024】
本実施形態の印刷システム1は、
図1に示すように、くるみ製本に用いられる表紙用印刷用紙と本文ページ用印刷用紙とに印刷処理を施す印刷装置20と、印刷装置20において印刷処理の施された印刷用紙を用いてくるみ製本を行う製本装置30とを備えている。
【0025】
印刷装置20は、印刷用紙に対してインクを吐出するインクヘッド部21を備えている。インクヘッド部21は、入力された本文ページや表紙の画像データに基づいて、印刷用紙に対してインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。本実施形態のインクヘッド部21は、ブラックK、シアンC、マゼンダM、イエローYの各色のインクを吐出する複数のライン型のインクヘッドを備えるものである。
【0026】
また、印刷装置20は、本文ページ用の印刷用紙HPが設置される給紙トレイ22と、表紙用の印刷用紙FPが設置されるストレート給紙台23とを備えている。給紙トレイ22は、第1給紙トレイ22aと第2給紙トレイ22bと第3給紙トレイ22cとを備えており、これらの給紙トレイに種々の用紙種類、用紙サイズの本文ページ用印刷用紙HPが設置される。また、ストレート給紙台23には、表紙用印刷用紙FPが設置される。そして、くるみ製本の印刷物が作成される際には、表紙用印刷用紙FPと本文ページ用印刷用紙HPとが、それぞれストレート給紙台23と給紙トレイ22とから給紙ローラ(図示省略)などによってピックアップされて給紙される。
【0027】
また、印刷装置20は、表紙用印刷用紙FPと本文ページ用印刷用紙HPとを搬送する循環搬送路24を備えている。循環搬送路24は、ストレート給紙台23から給紙された表紙用印刷用紙FPと給紙トレイ22から給紙された本文ページ用印刷用紙HPとをインクヘッド部21の上流側から下流側に向けて搬送するものである。
【0028】
また、循環搬送路24は、片面印刷の際には、インクヘッド部21において印刷処理の施された印刷用紙をそのまま連絡搬送路25に受け渡すものであり、両面印刷の際には、片面の印刷処理が終了した印刷用紙を反転部26まで搬送し、反転部26において表裏反転された片面印刷済印刷用紙を再びインクヘッド部21の上流側から下流側へ搬送し、その後、インクヘッド部21において再び印刷処理の施された両面印刷済印刷用紙を連絡搬送路25に受け渡すものである。そして、連絡搬送路25によって受け入れられた印刷済印刷用紙は、製本装置30に送り出される。
【0029】
また、印刷装置20は、所定の設定入力画面を表示するとともに、ユーザによる所定の設定入力を受け付けるタッチパネル27を備えている。本実施形態におけるタッチパネル27は、たとえば製本装置30において印刷用紙のジャムなどが生じて印刷装置20と製本装置30とが一時停止した際に、印刷装置20と製本装置30との一時停止要因の除去順序をユーザに対して表示するものである。なお、この一時停止要因の除去順序の表示方法については、後で詳述する。
【0030】
製本装置30は、印刷装置20の連絡搬送路25から送り出された表紙用印刷用紙FPおよび本文ページ用印刷用紙HPを搬送する用紙搬送路31を備えている。用紙搬送路31は、本文ページ用印刷用紙HPを整合トレイ32に搬送するとともに、表紙用印刷用紙FPを成形部39に搬送するものである。なお、用紙搬送路31上には、整合トレイ32へ向かう搬送路と成形部39へ向かう搬送路とを切り替える機構(図示省略)が設けられているものとする。
【0031】
整合トレイ32は、用紙搬送路31によって搬送された本文ページ用印刷用紙HPを順次積載するものである。そして、製本装置30は、整合トレイ32から本文ページ用印刷用紙HPの用紙束TPを挟持するクランパ33を備えている。このクランパ33は、整合トレイ32から用紙束TPを受け取る用紙束受取位置と、成形部39へ用紙束TPを受け渡す綴じ位置との間を図示省略した移動機構によって移動可能に構成されている。
【0032】
また、クランパ33の近傍には糊付部34が設けられている。糊付部34は、用紙束TPと表紙用印刷用紙FPとを接着するために用いられる糊が貯留された糊貯留部35と、糊を用紙束TPに塗布するための糊塗布ローラ36と、糊を糊貯留部35に補充する糊補充部37とを備えている。
【0033】
糊貯留部35は、容器内に糊を貯留するものであるが、この容器には、糊が液状化する温度まで容器を加熱する加熱部(図示省略)が設けられている。
【0034】
糊塗布ローラ36は長尺状に形成されたものであり、糊貯留部35の内側に水平な回転軸に回転可能に保持されている。なお、糊は用紙束TPを一体的に接着する役割も果たすものである。
【0035】
糊補充部37は、糊が板状に固められてロール状に成形された糊ロール37aが設置されるものであり、後述する製本装置30の制御部50からの制御信号に基づいて、糊ロール37aから板状の糊を繰り出してカットし、これを糊貯留部35内に供給することによって糊の補充を行うものである。糊ロール37aから繰り出されてカットされた板状の糊は、糊貯留部35に設けられた加熱部によって加熱されて液体となり、糊貯留部35の容器内に貯留される。
【0036】
また、成形部39は、用紙搬送路31によって搬送された表紙用印刷用紙FPが上面に設置される背折りプレート40と、背折りプレート40の下方に設けられ、クランパ33によって綴じ位置まで搬送された用紙束TPの背部が表紙用印刷用紙FPを介して当接される付き当てプレート41とを備えている。
【0037】
そして、製本装置30は、成形部39において綴じられて成形された印刷物42が搬送されて収容される排出部43を備えている。成形部39から排出部43まで印刷物42は自由落下により搬送される。
【0038】
以上が、本実施形態の印刷システム1の全体の概略構成の説明である。
【0039】
次に、本実施形態の印刷システム1の制御系について
図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態の印刷システム1は、上述したように印刷システムを構成する印刷装置20および製本装置30における一時停止要因の除去手順に特徴を有するものであるため、これに関連する制御系を中心に説明する。
【0040】
印刷装置20は、
図2に示すように、印刷装置20全体を制御する制御部28を備えている。この制御部28は、製本装置30において印刷用紙のジャムが検出された際、製本装置30の一時停止に連動して印刷装置20の印刷動作を一時停止するものである。
【0041】
また、制御部28には、上述したように製本装置30において印刷用紙のジャムが検出されて製本装置30と印刷装置20とが一時停止された際、その一時停止要因を除去すべき優先順位が予め設定された優先順位設定部28aと、その優先順位設定部28aに設定された優先順位で一時停止要因が除去されるようにユーザに促す画面をタッチパネル27に表示させる表示制御部28bとを備えている。
【0042】
製本装置30は、
図2に示すように、製本装置30全体を制御する制御部51を備えている。また、製本装置30は、製本装置30内における印刷用紙のジャムを検出するためのジャム検出部50が設けられている。ジャム検出部50は、製本装置30における印刷用紙の搬送路に設けられた光学センサなどによって構成されるものであるが、その構成は既に公知であるので詳細な説明は省略する。ジャム検出部50によって印刷用紙のジャムが検出されると、その検出信号が制御部51に入力され、制御部51は、そのジャム検出信号に応じて製本装置30の製本動作を一時停止するものである。
【0043】
ここで、印刷装置20における優先順位設定部28aに予め設定された優先順位について説明する。本実施形態の優先順位設定部28aには、印刷装置20の一時停止要因の除去よりも製本装置30の一時停止要因の除去の方が先に行われるような優先順位が予め設定されている。
【0044】
その理由は、上述したように印刷装置20と製本装置30との両方が一時停止した際、その一時停止の解除から正常動作再開までには準備動作(ウォームアップ動作)が必要であるが、この準備動作に要する時間が印刷装置20よりも製本装置30の方が長いからである。
【0045】
製本装置30における準備動作としては、ジャムの原因となった印刷用紙をユーザが除去した後、印刷用紙を搬送する搬送系のローラの空回し動作や、ホームポジションセンサをもつアクチュエータ(たとえば、成形部39における背折りプレート40や整合トレイ32における天地揃えフェンスや小口揃えフェンスなど)をホームポジションに移動させる移動動作や、糊貯留部35に貯留された糊の温度を155°まで加熱する加熱動作や、その加熱された糊を撹拌する糊撹動作などがある。これらの製本装置30の準備動作の中で一番時間を要するのは糊の加熱動作であり、約17分程度を要する。なお、製本装置30の準備動作は、製本装置30における制御部51によって制御されて行われるものである。
【0046】
一方、印刷装置20における準備動作としては、印刷用紙を搬送する搬送系のローラの空回し動作や、インクヘッド部21におけるヘッドクリーニング動作およびインク循環動作などがある。ヘッドクリーニング動作とは、インクヘッド部21におけるインク詰まりを防止するために行われる動作であり、具体的には、インクヘッド部21からインクが数回吐出される動作が行われる。また、インク循環動作とは、インク循環経路部内でインクの粘性を一定に保つためにインクを循環させながら、インクの温度を一定品質以上の印刷が可能な適正温度範囲にするための動作である。インクヘッド部21には、図示省略したインク循環経路部やヒータおよび冷却器を備えたインク温度調整部が設けられている。そして、インク循環動作は、インク循環経路部内にインクを循環させるとともに、その循環したインクをヒータにより加熱したり、冷却器により冷却したりすることによってインクの温度が適正温度範囲になるように調整する動作である。
【0047】
これらの印刷装置20の準備動作の中で一番時間を要するのはインク循環動作であるが、通常は上述した製本装置30における糊の加熱動作よりも短い時間で終了するものである。なお、印刷装置20の準備動作は、印刷装置20の制御部28によって制御されて行われるものである。
【0048】
上述したような製本装置30の準備動作時間および印刷装置20の準備動作時間を考慮して、優先順位設定部28aには、印刷装置20の停止要因の除去よりも製本装置30の停止要因の除去の方が先に行われるような優先順位が予め設定されている。
【0049】
そして、印刷装置20の表示制御部28bは、優先順位設定部28aに設定されている優先順位を参照し、その優先順位にしたがってユーザに対して一時停止要因を除去するよう促す画面をタッチパネル27に表示させるものである。
【0050】
具体的には、本実施形態の表示制御部28bは、まず、製本装置30におけるジャムを取り除くように促す画面をタッチパネル27に表示させる。このとき、ジャムを取り除くよう促すメッセージを表示させるとともに、製本装置30においてジャムが生じている場所を示す画像を表示させるようにしてもよい。
【0051】
そして、タッチパネル27の表示を見たユーザによって製本装置30のジャムが除去されると、その時点から製本装置30の制御部51は上述した準備動作を開始する。
【0052】
一方、製本装置30のジャムが除去されると、印刷装置20の表示制御部28bは、次に、印刷装置20の一時停止要因を除去するよう促す画面をタッチパネル27に表示させる。このとき、印刷装置20内に留まっている印刷用紙を除去するよう促すメッセージを表示させるとともに、印刷装置20内において印刷用紙が留まっている場所を示す画像を表示させるようにしてもよい。
【0053】
そして、タッチパネル27の表示を見たユーザによって印刷装置20内に滞留した印刷用紙が除去されると、その時点から印刷装置20の制御部28は上述した準備動作を開始する。そして、印刷装置20の制御部28と製本装置30の制御部51は、各装置の準備動作がともに終了した時点から正常動作を再開させるものである。
【0054】
次に、本実施形態の印刷システム1の作用について、
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでも印刷装置20と製本装置30とにおける一時停止要因の除去手順に関連する作用を中心に説明する。
【0055】
まず、印刷装置20における印刷処理と製本装置30における製本処理とが実行されている途中において、製本装置30で印刷用紙のジャムが発生した場合には、そのジャムの発生が製本装置30のジャム検出部50によって検出される(S10)。
【0056】
ジャム検出部50によって検出された検出信号は、製本装置30の制御部51に入力され、制御部51は、入力された検出信号に応じて製本装置30における製本動作を一時停止するとともに、その旨を印刷装置20の制御部28に出力する。そして、印刷装置20の制御部28は、製本装置30における製本動作の一時停止に連動して印刷動作も一時停止させる(S12)。
【0057】
次に、印刷装置20の表示制御部28bによって優先順位設定部28aに設定された停止要因除去の優先順位が参照され、その優先順位に基づいてタッチパネル27に対して停止要因の除去を促す画面が表示される。具体的には、本実施形態においては、まず、製本装置30におけるジャムを取り除くように促す画面がタッチパネル27に表示される(S14)。
【0058】
そして、タッチパネル27の表示を見たユーザによって製本装置30のジャムが除去されると(S14)、ジャムが除去されたことがジャム検出部50によって検出され、その検出信号が製本装置30の制御部51に入力され、制御部51は、入力された検出信号に応じて製本装置30の準備動作を開始する(S18)。
【0059】
一方、製本装置30のジャムが除去されると、製本装置30の制御部51から印刷装置20の制御部28にその旨を示す信号が出力され、その信号に応じて印刷装置20の表示制御部28bは、次に、印刷装置20の一時停止要因を除去するよう促す画面をタッチパネル27に表示させる(S20)。
【0060】
そして、タッチパネル27の表示を見たユーザによって印刷装置20内に滞留した印刷用紙が除去されると(S22)、その時点から印刷装置20の制御部28は、印刷装置20の準備動作を開始する(S24)。
【0061】
そして、印刷装置20の制御部28と製本装置30の制御部51とは、各装置の準備動作が終了した時点において互いにその旨を示す信号を出力し、各装置の準備動作がともに終了すると(S26)、その時点から正常動作を再開させる(S28)。
【0062】
上記実施形態の印刷システム1によれば、一時停止要因を除去すべき装置の優先順位を予め設定し、印刷装置20と製本装置30とがジャムによって一時停止した際、その優先順位で一時停止要因が除去されるようにユーザに報知するようにしたので、ユーザがその優先順位にしたがって各装置の一時停止要因を除去することができ、すなわち、印刷装置20よりも準備動作時間の長い製本装置30の一時停止要因を先に除去することができるので、システムのダウンタイムを短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態の印刷システム1において、印刷装置20側にも印刷用紙のジャムを検出するジャム検出部を設けるようにしてもよい。この場合、製本装置30と印刷装置20との両方でジャム検出された場合には、上記と同様の処理が行われるが、たとえば印刷装置20側のみのジャム検出部においてジャム検出された場合には、製本装置30の動作は一時停止することなくそのまま維持されるものとする。そして、このとき印刷装置20の表示制御部28bは、印刷装置20におけるジャムを取り除くように促す画面をタッチパネル27に表示させ、ユーザによってジャムが除去された時点から印刷装置20の準備動作が開始され、準備動作終了後に正常動作が再開される。
【0064】
また、上記実施形態の印刷システム1においては、製本装置30の一時停止要因の除去を促す画面を表示させた後に、印刷装置20の一時停止要因の除去を促す画面を表示させることによって、製本装置30の一時停止要因の除去の方が印刷装置の20の一時停止要因の除去よりも優先的に行われるようにしたが、このような表示方法に限らず、たとえば、製本装置30の一時停止要因の除去を促す画面と、印刷装置20の一時停止要因の除去を促す画面とに対してその優先順位に応じた番号を付与して同時に表示させることによって、どちらを優先的に行うかを示すようにしてもよい。また、その他、製本装置30の一時停止要因の除去の方を印刷装置の20の一時停止要因の除去よりも優先的に行うよう促す表示方法であれば、如何なる表示方法を採用してもよい。
【0065】
ここで、上述したとおり、製本装置30における準備動作で一番時間を要するのは糊の加熱動作であり、印刷装置20における準備動作で一番時間を要するのはインク循環動作であって、通常は糊の加熱動作の方が時間が長いと考えられるので、上記実施形態においては、印刷装置20の一時停止要因の除去よりも製本装置30の一時停止要因の除去の方が優先的に行われるようにしたが、たとえば製本装置30においてジャムが発生した時点における糊の温度やインクの温度によっては、糊の加熱動作の方がインク循環動作よりも短い時間で済むような場合も考えられる。そこで、たとえば製本装置30においてジャムが発生した時点における糊の温度やインクの温度も考慮して、印刷装置20と製本装置30との一時停止要因の除去の優先順位を変更するようにしてもよい。
【0066】
具体的には、
図4に示す印刷システム2のように、印刷装置20に対してインクの温度を検出するインク温度検出部29を設けるとともに、製本装置30に対して糊の温度を検出する糊温度検出部52を設ける。
【0067】
また、印刷装置20の制御部28に対して、
図5(a)に示すようなインク温度と印刷装置20の準備動作時間とを対応付けたテーブルを設けるとともに、製本装置30の制御部51に対して、
図5(b)に示すような糊温度と製本装置30の準備動作時間とを対応付けたテーブルを設ける。なお、インク温度に対応する準備動作時間および糊温度に対応する準備動作時間は、予め実験などによって測定されたものである。
【0068】
そして、製本装置30においてジャムが発生した時点において、製本装置30の制御部51が、糊温度検出部52によって検出されている糊温度を取得し、その糊温度に基づいて
図5(b)に示したテーブルを参照して準備動作時間を取得する。また、印刷装置20側においても、制御部28が、インク温度検出部29によって検出されているインク温度を取得し、そのインク温度に基づいて
図5(a)に示したテーブルを参照して準備動作時間を取得する。
【0069】
次いで、製本装置30の制御部51によって取得された準備動作時間と、印刷装置20の制御部28によって取得された準備動作時間とが優先順位設定部28aに入力される。そして、優先順位設定部28aは、入力された製本装置30の準備動作時間と印刷装置20の準備動作時間とを比較し、製本装置30の準備動作時間の方が印刷装置20の準備動作時間よりも長い場合には、上記実施形態の印刷システム1と同様に、印刷装置20の一時停止要因の除去よりも製本装置30の一時停止要因の除去の方が優先的に行われるように優先順位を設定する。
【0070】
一方、印刷装置20の準備動作時間の方が製本装置30の準備動作時間よりも長い場合には、製本装置30の一時停止要因の除去よりも印刷装置20の一時停止要因の除去の方が優先的に行われるように優先順位を設定する。
【0071】
そして、表示制御部28bは、上述したように優先順位設定部28aに設定された優先順位にしたがって一時停止要因の除去が行われるようにタッチパネル27に対して各装置の一時停止要因の除去を促す画面を表示する。
【0072】
また、上記実施形態の印刷システム1,2は、印刷装置20と製本装置30との2つの装置間での一時停止要因の除去手順に関するものであるが、本発明は、このような構成に限らず、印刷装置20に対して製本装置30以外の後処理装置を接続したり、印刷装置20よりも上流側に前処理装置を接続した印刷システムにも適用可能である。
図6は、そのような構成の印刷システムの一実施形態を示すものである。
【0073】
図6に示す印刷システム3は、印刷装置20と製本装置30の他に、印刷装置20の上流側に接続される前処理装置としての大量給紙装置80と、後処理装置としての封入封緘装置60およびステープル装置70を備えたものである。後処理装置としての製本装置30、封入封緘装置60およびステープル装置70は、印刷装置20に対して選択的に接続されるものであり、これらの後処理装置のうちのいずれか1つが印刷装置20に接続される。
【0074】
大量給紙装置80は、印刷装置20に設置可能な印刷用紙の枚数よりも大量の印刷用紙を設置および供給可能なものである。
【0075】
封入封緘装置60は、印刷装置20において印刷処理の施された封筒用の印刷用紙を用いて封筒を作成するとともに、その封筒の中に印刷処理の施された中紙用の印刷用紙を折り畳んで封入して封緘することによって封書を作成するものである。
【0076】
ステープル装置70は、印刷装置20から排紙された印刷用紙を複数枚束ねた用紙束に対してステープル処理を施すものである。
【0077】
そして、
図6に示す印刷システム3における印刷装置20には印刷装置20の準備動作時間が記憶された準備動作時間記憶部20aが設けられ、製本装置30には製本装置30の準備動作時間が記憶された準備動作時間記憶部30aが設けられ、封入封緘装置60には封入封緘装置60の準備動作時間が記憶された準備動作時間記憶部60aが設けられ、ステープル装置70にはステープル装置70の準備動作時間が記憶された準備動作時間記憶部70aが設けられ、大量給紙装置80には大量給紙装置80の準備動作時間が記憶された準備動作時間記憶部80aが設けられている。
【0078】
なお、封入封緘装置60の準備動作としては、印刷用紙を搬送する搬送系のローラの空回し動作や、ホームポジションセンサをもつアクチュエータをホームポジションに移動させる移動動作や、封筒用印刷用紙に設けられた再湿糊部に対して水を付ける加水部における水の加熱動作などがある。また、ステープル装置70や大量給紙装置80の準備動作としては、印刷用紙を搬送する搬送系のローラの空回し動作や、ホームポジションセンサをもつアクチュエータをホームポジションに移動させる移動動作などがある。また、各記憶部に記憶された準備動作時間は予め実験などによって計測されたものである。
【0079】
そして、上述したように構成された印刷システム3において、たとえば後処理装置(製本装置30、封入封緘装置60またはステープル装置70)においてジャムが発生した場合には、印刷装置20、大量給紙装置80および後処理装置の動作が一時停止される。
【0080】
このとき、印刷装置20の準備動作時間と、大量給紙装置80の準備動作時間と、印刷装置20に接続された後処理装置の準備動作時間とがそれぞれの記憶部から読み出され、印刷装置20の優先順位設定部28aに入力される。
【0081】
優先順位設定部28aは、入力された印刷装置20の準備動作時間と、大量給紙装置80の準備動作時間と、後処理装置の準備動作時間とを比較し、準備動作時間が長い装置の方が優先的に一時停止要因の除去が行われるように各装置の一時停止要因の除去の優先順位を設定する。
【0082】
そして、表示制御部28bは、上述したように優先順位設定部28aに設定された優先順位にしたがって一時停止要因の除去が行われるようにタッチパネル27に対して各装置の一時停止要因の除去を促す画面を表示する。
【0083】
なお、上記印刷システム3においては、各装置の各記憶部に対して、準備動作時間を記憶させるようにしたが、必ずしも準備動作時間自体でなくてもよく、準備動作時間の長さに応じた情報であればその他の情報を記憶するようにしてもよい。
【0084】
上述した印刷システム3によれば、各装置についての一時停止要因の除去から正常動作再開までの準備動作時間に関する情報を取得し、その取得した情報に基づいて優先順位を設定するようにしたので、たとえば印刷装置20に接続される後処理装置や前処理装置が複数種類あったとしても、これらの各装置の準備動作時間に関する情報に基づいて優先順位を設定することによって、適切な順序で各装置の準備動作を開始させることができる。
【0085】
また、
図6に示す印刷システム3においては、各装置の準備動作時間を予め実験などによって計測して記憶するようにしたが、これに限らず、各装置において、その装置における準備動作時間を計測するようにしてもよい。
【0086】
具体的には、
図7に示す印刷システム4に示すように、印刷装置20、製本装置30、封入封緘装置60、ステープル装置70および大量給紙装置80に対して、各装置の準備動作時間を計測する準備動作時間計測部20b,30b,60b,70b,80bを設けるようにしてもよい。
【0087】
そして、たとえば各装置の電源がONされて各装置の最初の準備動作が行われる際に、その準備動作に要した時間を各装置に設けられた準備動作時間計測部20b,30b,60b,70b,80bによってそれぞれ計測し、その計測した時間を各装置の準備動作時間記憶部20a,30a,60a,70a,80aのそれぞれに記憶するようにすればよい。なお、各装置の準備動作時間の計測については、上述した各装置の準備動作を制御する制御信号を各準備動作時間計測部が取得することによって、各装置の準備動作の開始と終了とを認識するようにすればよい。その後の作用については、上述した
図6に示す印刷システム4と同様である。
【0088】
上述した印刷システム4によれば、各装置においてその装置の準備動作時間を実際に計測し、その計測した各装置の準備動作時間に基づいて優先順位を設定するようにしたので、たとえば全く新しい前処理装置や後処理装置が印刷装置に接続された場合においても、その準備動作時間を実際の計測によって取得することができるので、その準備動作時間に応じた適切な優先順位を設定することができる。
【0089】
また、優先順位設定部28aに設定される優先順位は、ユーザがタッチパネル27などの入力装置(優先順位設定受付部に相当する)を用いて設定入力したり、予め設定された優先順位を変更したりしてもよい。たとえば、予め設定された優先順位が、上述したように印刷装置20の一時停止要因の除去よりも製本装置30の一時停止要因の除去を優先的に行わせるようなものであった場合でも、ユーザが印刷装置20の一時停止要因の除去の方を製本装置30の一時停止要因の除去よりも優先的に行った方が良いと考えた場合には、そのような優先順位に変更するようにしてもよい。
【0090】
印刷装置20の一時停止要因の除去を優先的に行った方が良い場合としては、たとえば、製本装置30における一時停止要因の除去方法を印刷装置20によって印刷出力したい場合などには、印刷装置20の方の一時停止要因の除去を先に行わせることによって、上述した印刷出力を製本装置30の一時停止要因の除去に先だって行うことができる。
【0091】
また、上述した印刷システム1〜4においては、後処理装置を必ず設けるようにしたが、本発明はこれに限らず、大量給紙装置80のような前処理装置と印刷装置20とから構成される印刷システムにも適用可能である。