(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンやイソプレンのような共役ジエン単量体の重合体、または、共役ジエン単量体と、当該共役ジエン単量体と共重合可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体と、の共重合体はエラストマーとして広く使用されている。
【0003】
このような共役ジエンとビニル芳香族単量体とのブロック共重合体は加硫しない熱可塑性エラストマーであり、耐衝撃性透明樹脂またはポリオレフィンおよびポリスチレン樹脂の改質剤として使用される。しかし、オレフィン性不飽和二重結合を含有する重合体は二重結合の反応性のために耐熱性、耐酸化性および耐候性などの安定性の問題を引き起こすため、太陽光や高温に露出されない、制限された範囲内で使用されている。従って、重合体の耐久性と耐酸化性とを改善するために、重合体内の二重結合に水素を添加して部分的または完全に飽和させて使用している。
【0004】
一般的にオレフィン性二重結合を有する重合体を水素化させる方法については様々な方法が報告されており、大きく下記のような2種類の方法に分けられる。第一の方法は、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属触媒をカーボンやシリカ、アルミナ等に担持した金属担持触媒のような不均一系触媒を使用する方法であり、第二の方法は、ニッケル、コバルト類を使用したチーグラー触媒またはロジウムやチタンのような有機金属化合物の均一系触媒を使用する方法である。
【0005】
不均一触媒を使用する水素化反応は高温、高圧条件で水素化反応が行われ、反応後にはフィルターを利用して高価な触媒を回収して再使用しなければならないという短所があり、更に、反応設備を備えるのに設備費用が高価であるという短所がある。一方、均一系触媒を使用する場合、触媒活性が高いので低温、低圧というマイルドな条件でも、少量で高収率の水素化反応を期待することができ、また、設備費用が少ないという長所を持っているが、その反面、反応後に均一系触媒を生成物から分離することが困難であるという短所がある。
【0006】
均一系触媒を利用した水素化反応は既に多くの方法が知られており、例えば、周期律表第VIII族金属、特に、ニッケルまたはコバルトの化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用した水素化の方法や、ビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤を組み合わせた触媒を使用し、共役ジエン系重合体の不飽和二重結合を水素化する方法が知られている。
【0007】
均一系触媒を利用した水素化反応は一般的に少量でも高水素化率と高再現性を見せるが、水素化反応後に重合体溶液中に残存する触媒残渣の除去が難しい。重合体中に残った金属成分は空気や紫外線などにより反応して重合体の分解や、最終重合体の色相の悪化を引き起こし、商品価値を低下させる要因となるため、除去することが望ましい。一般的に均一系触媒は反応後に濾過による物理的な分離が難しく、化学反応による分離が行われなければならない。
【0008】
そこでこの問題を解決する目的で、重合体溶液中に残存する均一系触媒の金属残渣を除去する方法として、いくつかの提案がなされている。例えば、ニッケルをはじめとする周期律表第VIII族金属触媒の除去に関しては、特許文献1では、残渣を除去するため酸化剤とジカルボン酸とで処理する方法が開示されている。特許文献2では、酸化された金属をケイ酸塩に吸着して触媒を除去する方法が開示されている。特許文献3では、酸素と反応したニッケル触媒を活性炭に吸着させて除去する方法が開示されている。特許文献4では、リン酸アルミニウムを用いてニッケル触媒を除去する方法が開示されている。
【0009】
また、チタン残渣を除去する方法に関してはこれまで殆ど知られておらず、例えば、特許文献5には、無機酸とアルコールと水とを用いたチタン残渣の除去が開示されている。特許文献6には、有機酸とアルコールと水とを用いたチタン残渣の除去が開示されている程度である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
〔重合体溶液の精製方法〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法は、溶解度パラメーターが20(MPa)
1/2以下の有機溶剤に溶解された、チタンを含有する重合体溶液を調製する工程1と、
溶解度パラメーターが23(MPa)
1/2以上の非水系液体を、前記重合体溶液に添加し、混合することによって混合液を得る工程2と、
前記混合液から、重合体溶液と非水系液体とを分離して精製重合体溶液を得る工程3とを含む、重合体溶液の精製方法である。
【0018】
〔工程1〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程1は、溶解度パラメーターが20(MPa)
1/2以下(即ち、SP値20以下)の有機溶剤に溶解された、チタンを含む重合体溶液を調製する工程である。
【0019】
SP値は、例えば、R.T.Fedors,Polymer Engineering and Science,(14),147(1974)に記載の方法で求めることができる。
本明細書で記載するSP値とは、(MPa)
1/2を単位としたときの数値である。
溶解度パラメーターの単位の換算は下記式で行うことができる。
1(cal/cm
3)
1/2 ≒ 2.05(J/cm
3)
1/2 ≒ 2.05(MPa)
1/2
【0020】
(チタンを含有する重合体溶液)
本実施形態で精製される重合体溶液はチタンを含有するものであり、更にリチウム若しくはアルミニウム又はこれらの両方を含んでいてもよい。このような重合体溶液としては、例えば、水素化された共役ジエン系共重合体溶液が挙げられる。
【0021】
水素化された共役ジエン系共重合体溶液は、例えば、リチウム系重合触媒によって重合した共役ジエン系重合体に、チタン化合物と各種還元剤とを含む触媒下で水素化反応を行うことにより製造することができる。
【0022】
前記共役ジエン系重合体は当分野で一般的に使用されるものであれば特別に限定しないが、具体的に重量平均分子量500〜1,000,000である共役ジエンホモポリマーまたは共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体とのランダム、テーパーまたはブロック共重合体などを使用することができ、これらの共役ジエン単位の不飽和二重結合に対して水素添加が可能である。
【0023】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により測定できる。
【0024】
使用可能な共役ジエン単量体は、特に限定されないが、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどのような4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエン系化合物、好ましくは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンを使用する。共役ジエン単量体と共重合が可能なビニル芳香族系単量体は、特に限定されないが、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、アルコキシ基で置換されたスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレンおよびアルキル基で置換されたビニルナフタレンなどのようなビニルアリル化合物を使用することができ、好ましくはスチレンおよびα−メチルスチレンを使用する。
【0025】
共役ジエン単量体とビニル芳香族系単量体とを混合して共重合体を製造する場合は、例えば、共役ジエン単量体:ビニル芳香族系単量体(重量比)=5:95〜95:5とすることが好ましい。このような重量比とすることにより、耐衝撃性に優れ、製品加工性が良好な共重合体が得られる。
【0026】
このような共役ジエン系重合体は当分野で一般的に使用される重合法により製造される。本実施形態では、例えば、有機リチウム化合物を開始剤として利用したアニオン重合で共役ジエン系重合体を得ることができる。有機リチウム化合物は、具体的にn−ブチルリチウムやs−ブチルリチウムなどを使用することができる。このような開始剤の使用量は当分野で一般的に使用されるものであり、目的とする高分子の分子量により自由自在に調節が可能である。得られた重合体溶液に対して、その後、水素化反応を行うことで水素化された共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0027】
(水素化反応)
水素化反応は、重合体溶液を水素やヘリウム、アルゴン、窒素のような不活性気体雰囲気下で一定温度に維持した後、撹拌または未撹拌状態で水素化触媒を添加し、水素ガスを一定圧力で注入することで行うことが好ましい。更に、水素化反応の温度は30〜150℃、圧力は2〜30kg/cm
2の範囲で行うことが好ましい。
【0028】
水素化反応の温度が前記範囲内であると、反応性が向上して十分な反応収率を得ることができ、また、高分子の熱劣化による副反応が抑制できる。水素化反応の圧力が前記範囲内であると、反応速度が向上して反応時間が短くなり、また、反応器に投資する費用を抑制でき、経済的に好ましい。
【0029】
上記水素化触媒は重量平均分子量500〜1,000,000の共役ジエン重合体または共役ジエンとビニル芳香族系モノマーとのランダム、テーパー、ブロック共重合体で共役ジエン単位の不飽和二重結合のみに選択的に水素化が可能である。
【0030】
工程1における重合体溶液中の重合体濃度は特に限定されないが、5〜50重量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。重合体濃度が上記範囲内であると、生産性が向上し、また、粘度の上昇が抑制され金属除去効率が向上する。
【0031】
前記水素化反応に使用されるチタン化合物としては当分野で一般的に使用されるものであれば特に限定しないが、シクロペンタジエニルチタン化合物が挙げられ、例えば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物、シクロペンタジエニル(アルコキシ)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジハロゲン化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキル化物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアリル化物およびビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルコキシ化合物から選択されるものであり、単独または混合して使用することができる。
【0032】
前記チタン化合物は、好ましくは共役ジエン系重合体100g当り0.01〜20mmol、更に好ましくは重合体100g当り0.05〜5mmolを使用する。チタン化合物の使用量が前記範囲内であると、水添反応速度が向上し、生産性が良好となり、また、不必要な触媒の量が少ないため経済的に好ましく、反応後に触媒除去のための化学物質の使用量を抑制できる。
【0033】
前記チタン化合物と共に使用する還元剤としては、当分野で一般的に使用される還元剤であれば特に限定されないが、例えば、アルキルアルミニウム化合物、アルキルマグネシウム化合物、有機リチウム化合物、金属ヒドリドなどが挙げられ、単独でも複数種を組み合わせても使用することができる。本実施形態は、重合体溶液に含まれるリチウムやアルミニウム残渣の除去にも効果がある。そのため、上記還元剤の中でも、金属残渣の少ない重合体溶液を得られるという観点から、アルキルアルミニウム化合物や有機リチウム化合物を用いることが好ましい。
【0034】
上記チタン系触媒を用いた水素添加反応としては、特に限定されないが、具体的には、国際公開第00/08069号、米国特許第4,501,857号明細書、米国特許第4,673,714号明細書、米国特許第4,980,421号明細書、米国特許第5,753,778号明細書、米国特許第5,910,566号明細書、米国特許第6,020,439号明細書などに記載された方法を用いて実施することができる。
【0035】
(有機溶剤)
本実施形態においては、工程1で調製する重合体溶液の溶媒はSP値20以下の有機溶剤である。SP値が20以下の有機溶剤としては特に限定されないが、具体的には、n−ペンタン(SP値=14.4)、n−ヘキサン(SP値=14.9)、n−ヘプタン(SP値=15.3)、n−オクタン(SP値=15.5)、シクロヘキサン(SP値=16.8)、ジエチルエーテル(SP値=15.4)、テトラヒドロフラン(SP値=18.6)、エチルベンゼン(SP値=18.0)、キシレン(SP値=18.0)、トルエン(SP値=18.2)などが挙げられる。本実施形態においては、これらSP値が20以下の有機溶剤を単独または混合して使用することができる。有機溶剤のSP値は12〜19が好ましく、13〜18がより好ましく、14〜17がより更に好ましい。SP値を上記範囲とすることで、後述する非水系液体との組み合わせにより、重合体溶液と非水系液体の間に良好な相溶性が発現し、且つ、混合後の両相の分離状態も良好となり、その結果、優れた金属除去効果が得られるので好ましい。
【0036】
〔工程2〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程2は、溶解度パラメーターが23(MPa)
1/2以上(即ち、SP値が23以上)の非水系液体を、工程1で得られた重合体溶液に対して添加し、混合することによって、混合液を得る工程である。
【0037】
工程2では、工程1で得られた重合体溶液、例えば、水素化された共役ジエン系重合体溶液と非水系液体との混合により、重合体溶液中に含まれる金属残渣を非水系液体相中へ移行させるのが目的である。
【0038】
(非水系液体)
非水系液体のSP値は23以上であり、26〜40が好ましく、28〜37がより好ましい。非水系液体のSP値を上記範囲とすることで、工程1で調製した重合体溶液との混合において、良好な相溶性が発現し、後述する工程3での分離も容易に行うことができ、最終的に金属残渣の少ない精製重合体溶液が得られる。
【0039】
SP値が23以上の非水系液体としては特に限定されないが、例えば、n−ブタノール(SP値=28.7)、イソプロピルアルコール(SP値=23.5)、エタノール(SP値=26.2)、メタノール(SP値=29.7)、アリルアルコール(SP値=25.8)、フルフリルアルコール(SP値=24.3)、エチレングリコール(SP値=34.9)、グリセロール(SP値=36.2)、ジメチルホルムアミド(SP値=24.7)、ニトロメタン(SP値=26.0)、ジメチルスルホキシド(SP値=26.4)、プロピレングリコール(SP値=30.7)などが挙げられ、これらSP値が23以上の非水系液体を単独または混合して使用することができる。取り扱いの容易さからアルコール類が好ましく、中でも、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールがより好ましい。
【0040】
更に、有機溶剤と非水系液体とのSP値の差を12〜20の範囲とすることで、両相が適度な相溶性を有し、且つ、混合停止後の分離性(滞留時間を短くできる)に優れるため好ましい。
【0041】
工程2において、非水系液体の添加量は特に限定されないが、重合体溶液に対して0.1〜10容積倍が好ましく、0.2〜5容積倍がより好ましく、0.5〜2容積倍が更に好ましい。非水系液体の添加量が前記範囲内であると、重合体溶液中に含まれる金属残渣が除去され易く、また、廃液量を少なくすることができるので好ましい。
【0042】
なお、工程2において、水を添加する工程は含まれないことが好ましい。これにより、従来技術の問題点の1つであった非水系液体と水の分離・精製を行う必要がなくなり、そのための大掛かりな設備が不要となる。また、廃液処理も容易な、優れた金属除去プロセスが提供される。なお、「水を添加する」とは重合体溶液の精製のために積極的に水を添加することをいう。したがって、通常市販されている非水系液体には多少の水分が含まれているものもあるが、そのような非水系液体を用いたとしても水を添加する工程を行ったことにはならない。
【0043】
(混合条件)
有機溶剤と非水系液体とのSP値が先述の範囲であれば、両相が適度な相溶性を有し(混合時に、1相がもう1相中に分散、もしくは2相が相溶する程度)、且つ、混合停止後の分離性(滞留時間を短くできる)に優れるので、工程2における、重合体溶液と非水系液体の混合方法については、当該分野において通常用いられる混合方法であれば特に限定されず、スタティックミキサーのような駆動部を持たない静止型混合機による混合や、撹拌翼を取り付けたストレージタンクなどで機械的に混合してもよい。
【0044】
その中でも好ましい混合方法としては、動力を利用した機械的な方法であり、撹拌強度を表すP/V値(kw/m
3)と撹拌時間T(sec)の積として得られる(P/V)・T値が100以上となる条件で混合を行うことが好ましい。ここでP(kw)とは撹拌に要する動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。また、V(m
3)は混合部の空間容積であり、溶液にせん断力を与える部分の空間容積である。
【0045】
(P/V)・T値は100以上が好ましく、1000以上がより好ましく、3000以上が更に好ましい。(P/V)・T値を上記範囲とすることで、高い金属除去効果を得ることが出来る。中でも、特開平6−136034号公報に記載されているような噛み合せ構造を有する回転分散機を用いることで、3×10
4(kw/m
3)以上の高いP/V値で混合することができ、0.1sec程度の短い混合時間でも、3000以上の(P/V)・T値を得ることができるため、非常に短時間で金属除去処理を行うことができるので好ましい。
【0046】
〔工程3〕
本実施形態の重合体溶液の精製方法において、工程3は、工程2で得られた混合液を重合体溶液相と非水系液体相とに分離して精製重合体溶液を得る工程である。特に、工程3における滞留時間は、20000sec以内であることが好ましく、3600sec以内であることがより好ましく、1800sec以内であることがさらに好ましい。滞留時間を上記時間以内とすることで、非水系液体相に抽出した金属残渣の重合体溶液相への溶出を抑制できるため、重合体溶液中に含まれる金属残渣を効率的に除去することができ、また生産性に優れたプロセスとなるので好ましい。分離方法に関しては、当分野で一般的に知られている方法であれば特に限定されないが、例えば、重合体溶液/非水系液体の混合液の静置分離、遠心分離、向流抽出機により分離する方法が挙げられる。
【0047】
通常、重合体溶液とアルコール、もしくは、アルコール水(アルコールと水の混合液)を混合した場合、二相の分離には長時間を要するが、本実施形態においては、重合体溶液に使用される有機溶剤と非水系液体のSP値をそれぞれ特定の範囲とすることにより、20000sec以内の短時間で分離するように制御することが可能となる。このように、分離時間(滞留時間)を短くすることは、生産性の向上に繋がるため好ましい。
【0048】
(精製重合体溶液)
重合体溶液中に含まれる金属残渣が非水系液体相中へ移行するため、工程3により得られる精製重合体溶液は工程1で調製した重合体溶液と比べ金属残渣が除去されたものとなる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づき詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
〔製造例1−1〕
n−ブチルリチウムを重合開始剤としてアニオン重合によって得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(スチレン含量30.0%、ブタジエン含量70.0%、数平均分子量50.000)400gを含むシクロヘキサン溶液2800gを5Lオートクレーブ反応器に入れ400rpmで60℃に加熱した。その後、トリエチルアルミニウム1.5mmolとビス(シクロペンタジエニル)チタンジクロライド0.8mmolを添加して10kg/cm
2の水素で加圧して水素化反応を行うことで水素化された重合体のシクロヘキサン溶液を得た。(重合体溶液A) このように水素化された高分子をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%以上の二重結合の水素化を確認した。
【0051】
〔製造例1−2〕
製造例1−1のシクロヘキサン溶液を、トルエン溶液に変更した以外は、同様の操作を行い、重合体溶液Bを得た。
【0052】
〔製造例1−3〕
製造例1−1のシクロヘキサン溶液を、n−ヘキサン溶液に変更した以外は、同様の操作を行い、重合体溶液Cを得た。
【0053】
〔製造例1−4〕
製造例1−1のシクロヘキサン溶液を、ピリジン溶液(SP値=21.7)に変更した以外は、同様の操作を行い、重合体溶液Dを得た。
【0054】
〔実施例1〕
製造例1−2で得られた重合体溶液Bと、同容積のイソプロピルアルコールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=50(kW/m
3)で60秒間混合を行った。その後、18000sec(5時間)滞留させて、重合体溶液相とイソプロピルアルコール相とを分離させた。分離状態は良好であった。イソプロピルアルコール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析法によりICPS−7510(株式会社島津製作所製)で測定した。該測定結果を表1に示す。なお、表1中のTi, Li, Alの金属残渣残存率とは、上記精製処理前の重合体溶液に含まれるTi, Li, Alの含有量を100%として算出した値である(以下、同じ。)。
【0055】
〔実施例2〕
製造例1−3で得られた重合体溶液Cと、同容積のグリセロールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=50(kW/m
3)で1800秒(30分間)混合を行った。その後、1800sec(30分間)滞留させて、重合体溶液相とグリセロール相とを分離させた。分離状態は良好であった。グリセロール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0056】
〔実施例3〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積のメタノールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=1.0(kW/m
3)で60秒間混合を行った。その後、1800sec(30分間)滞留させて、重合体溶液相とメタノール相とを分離させた。分離状態は良好であった。メタノール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例4〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積のメタノールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=1.0(kW/m
3)で3000秒(50分間)混合を行った。その後、3600sec(1時間)滞留させて、重合体溶液相とメタノール相とを分離させた。分離状態は良好であった。メタノール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例5〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積のメタノールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=90(kW/m
3)で60秒間混合を行った。その後、10800sec(3時間)滞留させて、重合体溶液相とメタノール相とを分離させた。分離状態は良好であった。メタノール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例6〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積のメタノールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=90(kW/m
3)で3000秒(50分間)混合を行った。その後、18000sec(5時間)滞留させて、重合体溶液相とメタノール相とを分離させた。分離状態は良好であった。メタノール相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0060】
〔比較例1〕
製造例1−4で得られた重合体溶液Dと、同容積のメタノールを、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=50(kW/m
3)で60秒間混合を行った。その後、18000sec(5時間)より長く滞留させたが分離状態は悪く、重合体溶液中に多量のメタノールが溶解した状態であった。メタノール相を除去した後、重合体溶液相を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0061】
〔比較例2〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積のモルホリン(SP値=22.1)を、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=50(kW/m
3)で10秒間混合を行った。その後、18000sec(5時間)より長く滞留させたが乳化状態であり、二相を分離することはできなかった。
【0062】
〔比較例3〕
製造例1−1で得られた重合体溶液Aと、同容積の水(SP値=48)を、撹拌翼付きのタンク内で60℃に昇温し、撹拌強度P/V値=50(kW/m
3)で3000秒(50分)間混合を行った。その後、900sec(15分間)滞留させて、重合体溶液相と水相とを分離させた。分離状態は良好であった。水相を除去した後、重合体溶液を真空乾燥させ、固体状の重合体を得た。得られた固体状の重合体に含まれる金属の量を、誘導結合プラズマ(ICP,Inductivity coupled plasma)を用いた元素分析を通じて測定した。該測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
※IPA:イソプロピルアルコール