特許第5964656号(P5964656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964656
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】漏液検知線
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20160721BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01M3/16 P
   G01M3/20 N
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-120443(P2012-120443)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-246066(P2013-246066A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年2月27日
【審判番号】不服2015-7897(P2015-7897/J1)
【審判請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康司
【合議体】
【審判長】 尾崎 淳史
【審判官】 三崎 仁
【審判官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 実願昭62−131821号(実開平01−089351(JP,U))のマイクロフィルム
【文献】 特表2010−526600(JP,A)
【文献】 特開2009−062715(JP,A)
【文献】 特開2010−196367(JP,A)
【文献】 特許第3422750(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の導体(11)がそれぞれ編組被覆(12)されるとともに撚られて並列され、その撚られた被覆導体(10)の外周を全長に亘って吸液時に透き出る外部編組(14)によって被覆し、その外部編組(14)の吸液によって各導体(11)間の抵抗値が変化する漏液検知線(P)であって、
上記各導体(11)の編組被覆(12)の着色がそれぞれ黄色、赤色又は青色で互いに異なることを特徴とする漏液検知線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内部の漏水や薬液等の貯蔵、運搬時の漏液を検知する漏液検知線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ室、各種の資料などの保管室等の場合、建物内部の壁面、床面、各種機器表面、配管接合部等に水が付着したり、漏水したりすると、建物床面等の腐食の原因となったり、各種機器が誤動作したり、資料が変質したりする恐れがある。また、水や硫酸、塩酸などの薬品類のような各種の液体を貯蔵したり、輸送したりする場合、その液体の漏洩は、経済的損失や事故の原因となる。
このため、漏水や漏液(以下、これらを「漏液」と称する。)を検知する手段として、建物内部の壁面等に漏液検知線を添設して、その漏液を検知することが行われている。
【0003】
その漏液検知線として、例えば、図7に示すように、対の導体(電極)1、1をそれぞれ編組2によって被覆し、その被覆電極1に発色糸(発色体)3を沿わせてその外周面をさらに外部編組4によって被覆したものP’がある(特許文献1 実用新案登録請求の範囲 第2頁左欄(第3欄)第22行〜同右欄(第4欄)第42行、第1図参照)。
この漏液検知線P’は、漏液が生じると、上記両編組2、4がその漏液を捕捉しその漏液を介して導体1、1間を短絡させ(導体1、1間の抵抗が変化し)、その短絡(変化)による電気信号によって漏液を検出する。このとき、両編組2、4が漏液を確実に捕捉するため、検知精度が高いものである。また、漏液によって発色糸3の着色剤が溶け出して外部編組4まで滲み出るため、その着色(発色)した外部編組4を確認することによって漏液箇所を確認できる。
【0004】
また、その図7の漏液検知線P’において、発色糸3を沿わせることなく、外部編組4を吸液によって透過するようにしたものもある(図3参照)。この漏液検知線P’は、漏液が生じると、同様に、両編組2、4がその漏液を捕捉してその漏液を介して導体1、1間を短絡させ(導体1、1間の抵抗が変化し)、その短絡(変化)による電気信号によって漏液を検出する。このとき、内側の編組2が着色されており、外部編組4が吸液すると透過するため、その内側編組2の色が透き出てその漏液位置を確認できる(特許文献2実用新案登録請求の範囲、第2図等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−155536号公報
【特許文献2】実開平01−89351号公報
【特許文献3】特開2002−277341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の発色糸3を沿わせた漏液検知線P’は、布設するまでに雨等で濡れたり、漏液が生じたりして、着色剤がいったん外部に滲み出ると、外部編組4が着色されていない状態に回復しない問題がある。
一方、内側編組2を着色した漏液検知線P’は、雨等で濡れたり、漏液が生じたりしても、その液が乾燥すれば、外部編組4の透過は解消して、漏液検知状態に復帰する。
しかし、従来、その内側編組2の着色は、例えば、赤又は青の一色であり、吸液による外部編組4の透過によるその内側編組2の色の識別が十分ではなく、特に、漏液が広範囲であると、全体に内部編組2の色が薄く見えることによって漏液そのものが認識できない場合が多い。これは、設置環境が暗ければその傾向は顕著に表れる。
【0007】
この発明は、この様な実状の下、検知導体の被覆を着色した漏液検知線において、漏液時のその被覆の着色を確認し易くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、この発明は、上記複数の検知導体の被覆の着色を異ならせることとしたのである。
各被覆の着色が異なっていると、その各被覆の色は、漏液によって外部編組が透過されると、漏液前の透き出ていない状態に比べて、漏液検知線の外観は明確に相違し、その漏液位置を認識できる。
【0009】
この発明の構成としては、少なくとも2本の導体がそれぞれ被覆して並列され、その被覆導体の外周を全長に亘って吸液時に透過する(透き出る)外部編組によって被覆し、その外部編組の吸液によって各導体間の抵抗値が変化する漏液検知線において、前記各導体の被覆にそれぞれ互いに異なる着色を施した構成を採用することができる。
【0010】
導体の被覆は編組とすることができ、編組の場合は透液性となり、その編組の繊維糸は吸湿性(親水性)、非吸湿性(撥水性)のいずれでもよいが、非吸湿性の場合は編組を疎にすることにより、編組の隙間に液体を保持できる(透液性とし得る)。外部編組は、吸液によって透過するものであれば、その糸は何れでも良い。
その導体編組及び外部編組の繊維糸は、例えば、綿糸、フッ素樹脂(PFA)、ポリプロピレン(PP)、ポリファニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン(NY)等の有機又は無機化合物を適宜に採用し得る。また、非吸湿性素材又は吸湿性素材のいずれでもよいが、漏液検知後に洗浄・乾燥を行い、速やかに復帰し得るという点を重視する場合は、非吸湿性素材を用いるのが好ましい。さらに、モノフィラメント又はマルチフィラメントのいずれも採用し得る。このとき、フッ素樹脂のように撥水性が高い素材と、綿糸のように吸湿性が高い素材とを織り交ぜて編組を構成すると、その織り交ぜの割合を変えることにより、この編組への漏液の浸み込みやすさを調節することも可能である。
【0011】
導体編組への着色は、繊維糸を着色槽に浸して着色した後、その着色糸を編組としたり、編組とした後、その編組を着色槽に浸して着色したりすることができる。このとき、その着色は、非溶性が好ましい。非溶性であると、漏液に触れても外部編組に溶け出ることがなく、外部編組が乾燥すれば、元の状態に復帰するため、再検出が可能となる。
【0012】
上記導体の材質は、従来から使用されているものであれば何れでも良く、例えば、錫メッキ等の撚り線、単線、平角線等であって、その材質も金属に限らず、導電性を有すれば、非金属、炭素繊維等であっても良いが、屈曲性を重視するのであれば、撚り線が好ましい。各導体の並列間隔(内部編組の厚み等)は、検知精度を考慮して実験等によって適宜に決定する。
【0013】
その導体の本数は、2本以上であれば何れでも良いが、3本であると、その一本を漏液位置の検知線として使用したり(特許文献2第7頁第6行以降の[実施例3]第4図、第5図参照)、各導体を平形に並べた漏液検知線の場合、漏液検知範囲を広くしたりすることができる(特許文献3図1図5参照)。
その導体が2本の場合、被覆の色は、赤、青、黄のいずれかの2色とすることができる。このとき、その一方を黄色、他方を赤色又は青色とすることができ、導体が3本の場合は、各被覆の色は、それぞれ黄色、赤色又は青色と異なるものとすることができる。赤又は青は認識し易く、黄色は、赤又は青を目立たせるからである(後記実施形態参照)。
また、各被覆導体は撚られているものとすれば、各被覆導体の色が漏液検知線の長さ方向にらせん状に認識されてその漏液が生じたことをより認識し易いものとなる(後記実施形態参照)。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように、各導体の被覆にそれぞれ異なる着色を施したので、漏液が生じると、その漏液による外部編組を透した被覆導体の認識が容易となる。このため、漏液位置の確認が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態の断面図
図2】同実施形態の一部斜視図
図3】他の実施形態の断面図
図4】実施例1〜4及び比較例の作用図であり、(a)は漏液前、(b)は漏液後
図5】同作用図であり、(a)は漏液前、(b)は漏液後
図6】同作用図であり、(a)は漏液前、(b)は漏液後
図7】従来例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図3は、この発明の実施形態を示し、この実施形態の漏液検知線Pは、錫メッキ軟銅撚り線(素線径:0.18mm×13本=0.33mm)からなる2本(図3)又は3本(図1、2)の導体11をそれぞれ綿糸の編組12によって被覆して各導体11間の絶縁性が担保され、その被覆導体10を撚り、その外周を外径0.1mmのマルチフィラメント状白色綿糸の外部編組14で被覆したもの(外径:約4mm)である。
【0017】
各導体11の綿糸からなる被覆(編組)12は、それぞれ、赤、青、黄の各顔料を綿糸に混入して赤、青、黄の発色をしている。その赤、青、黄の発色を呈する被覆導体10によって図4図6に示す実施例1〜4及び比較例を製作した。
その実施例1〜3は、図3に示す2本の被覆導体10、10を撚った漏液検知線Pであり、実施例1はその被覆導体10、10の被覆12が赤と青からなり、実施例2は同赤、黄からなり、実施例3は同青と黄からなる。実施例4は、図1図2に示す3本の被覆導体10、10を撚った漏液検知線Pであり、その被覆導体10、10、10の被覆12は赤と青と黄からなる。比較例は、図3に示す2本の被覆導体10、10を撚った漏液検知線Pであり、その被覆導体10、10の被覆12は赤と赤からなる。
【0018】
その各実施例1〜4及び比較例の各漏液検知線Pの水濡れ前を図4図6の各(a)に示し、同水濡れ後を同各(b)に示し、図4は昼光色室内蛍光灯の照明下、図5は暗室内における白熱電球色懐中電灯下、図6は暗室内における白色LED照明下の状態を示す。
この各試験において、各図(a)と同(b)を比較すると、各図(b)において、被覆12が赤と赤の同一色からなる比較例の漏液検知線Pは、全体が赤く浮き出ているが、何処に漏液が生じたかが分かり難い。
これに対し、実施例1〜4の漏液検知線Pは、各図(b)において、赤と青、赤と黄、青と黄又は赤と青と黄のそれぞれのらせん状模様が浮き出て、同各(a)とは明らかに異なる模様を呈しており、その漏液位置を確認し得る。この確認は図5図6の暗室内においても可能である。このとき、その識別度合は、実施例1、同2、同3、同4の順に鮮明となっている。
【0019】
このことから、被覆導体10の本数は2本より3本以上が好ましいことが理解でき、また、2本の場合、赤と青、赤と黄、青と黄の順で漏液部の識別度合が増すことが理解できる。これから、黄は、赤と青を際だたせてその漏液部の識別度合を増すことが理解できる。また、その漏液部の識別度合の差は、暗所になればなるほど顕著となる。
【0020】
上記実施形態は、被覆12を編組によって構成したが、半導電性樹脂等の樹脂被覆(被覆導体)とすることもできる。また、被覆12の着色も、赤、青、黄以外に、緑、黒等も考えられ、さらに、着色顔料に、ガラス粉を混入して濡れたら透けて光るようにしたり、蛍光料を混入したりすることもできる。また、導体11も撚り線でなく、単線とすることもでき、耐酸性(耐薬品性)のものとして、炭素繊維製も採用し得る。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0021】
P、P’ 漏液検知線
1、11 導体
2、12 被覆(編組)
10 被覆導体
4、14 外部編組
図1
図3
図7
図2
図4
図5
図6