(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は本発明の一例を示すピース管理システムにおけるマーキング装置の全体斜視図、
図2はピース管理システムにおける紫外線照明を備える読取装置の全体斜視図、
図3は対象物表面に印字され、通常時は視認不可能(a)および紫外線照明のパルス発光時に撮影された画像で視認可能(b)としたビットコードの一例を示す図、
図4はビットコードの拡大平面図(イメージ)、
図5はビットコードの1データユニットを示す図である。
【0019】
本発明のピース管理システム1は、
図1〜2に示すように、ビレットなどの鋼材を例示する鉄鋼製品などをマーキングの対象物2として、この対象物に製品名や、製造ロット、納入先などの情報を印
字するマーキング装置3と、前記情報を印字された対象物2からこの情報を読み取る読取装置4とから構成される周知の技術であり、両装置3,4を別個に配置したり、あるいは両装置3,4間を不図示の対象物を搬送する搬送体などで連結する構成にしてもよい。
【0020】
まず、マーキング装置3は、
図1にも示したように、印字ヘッド5と、本体を構成するコントローラ6およびポンプユニット7とからなり、印字ヘッド5と、コントローラ6とが配線で連結されている。なお、ポンプユニット7には、印字塗料を色別に格納した不図示のタンクが併設される。
【0021】
この印字ヘッド5は、底部の開口部に少なくとも2本(本例では3本だが4本以上の複数であってもよい)の図示しないノズルを内設し、搬送体
28上に載置または搬送途中の対象物2表面に、印字したい情報を後述する印字剤を用いて、ポンプユニット7により前記ノズルを介して、コントローラ6によって情報化したコードになるように吹き付けて印字する。
【0022】
印字剤は、
図5に示すように複数色(例えば、赤・黒・白など、限定しない)の印字塗料を用いることができる。そして、この印字塗料は、例えば、ユーロピュームキレート化合物やクマリン系化合物などからなるインビジブル塗料を用いることができる。このインビジブル塗料は、昼光や蛍光灯の元では色が透明、もしくは白色になるため、通常ではこの塗料による印字は視認できず、ブラックライトなどの紫外線照射によって発光し、色が見える性質を有する周知の塗料である。
【0023】
なお、印字塗料は、上述のインビジブル塗料に限定されず、例えば、酸化チタンなどの光触媒を混入させた塗料など、
図3(a)に示すように通常の可視光の下では印字を視認できず、
図3(b)に示すように照明(ブラックライト)の紫外線照射でのパルス発光する周波数とは異なる周波数で発光する材質であればよい。
【0024】
次に、対象物2表面への、印字ヘッド5における前記ノズルによる情報の印字は、この
図4に示したように、例えば、対象物2の長手方向であって、この対象物2の表面に前記3本のノズルからそれぞれ平行に3ラインで着色を有する印字データとしての
コード8が情報として印字される。
【0025】
なお、
コード8に格納する情報には、上述したような、製品名や、製造ロット、納入先などがあり、それらをコントローラ6が、数字または/およびアルファベットを組み合わせた16進数(限定しない)などにデータ化し、それらデータを、
コード8内にデータ有無の組み合わせで格納する周知の方法を用いるため、情報の数値(アルファベット)データ化に関する詳細な説明は省略する。
【0026】
この
コード8は、例えば、上下に配置したビットコード9,10で挟まれた中央のビットコードをトリガービット11として上記情報に応じて断続的に配置するとともに、印字始端(搬送方向における対象物2前部など)をスタータコード12にするとともに、印字終端(搬送方向における対象物2後部など)をエンドコード13として、これらスタータコード12およびエンドコード13間に
ドットでデータ化された上記情報が印字される。
【0027】
さらに、例えば、スタータコード12は、印字最初の列(縦方向)であって、3ラインの
コード8のうち、ビットコード9,10の印字を有さず、トリガービット11のみ印字されている位置とするとともに、エンドコード13は、印字最後の列(縦方向)であって、3ラインの
コード8のうち、トリガービット11の印字を有さず、ビットコード9,10のみ印字されている位置とすることができる。
【0028】
そして、ビットコード8の1データユニットは、例えば
図5に示すように、2列のビットコードによる合計6個の
ドットから構成され、そのうちトリガービット11は、印字方向から順にデータを有する黒色
ドットと、データを有さない白色
ドットとを不変の組み合わせとして、隣接する次のデータユニットから最後のデータユニットに至るまで同様に印字する。
【0029】
なお、トリガービット11は、ビットコード9,10の読み取りに際し、誤り検出訂正機能を有しているため、実際にトリガービット11内にデータを格納することはない。
【0030】
次に、ビットコード9,10は、実際のデータを格納するが、図例において1列目のビットコード9,10には、データを格納した状態として説明する。
【0031】
この場合、1列目のビットコードには、トリガービット11を挟んで、ビットコード9,10双方のビットコードにデータが格納されているため、これらビットコード9,10を例えば赤色で印字する。
【0032】
このようにすることで、後述する読取装置4により1列目のビットコード9,10を読み取る際、ビットコード9,10が赤色で着色されているため、読取装置4は、この1列目のビットコード9,10には、トリガービット11を挟んで各ビットコードにそれぞれデータが格納されていることを判断し、データを読み取ることができる。従って、データの読み取り精度を向上させることができる。
【0033】
さらに、例えば、一方のビットコード9(ビットコード10でもよい)の印字が薄い状態や、対象物表面の歪みなどでデータが格納されていないものと読取装置4が誤判断し易い場合であっても、1列目のビットコード9,10は、トリガービット11を挟んで赤色に着色されているため、読取装置4は、当該列のビットコード9,10双方にデータが格納されていることを認識し、これらトリガービット11を挟んだビットコード9,10の着色状態が、確実なデータ読み取りを可能とする誤り検出訂正機能となる。
【0034】
次に、図例における2列目のビットコード9,10では、ビットコード9にデータが格納されており、ビットコード10にはデータが格納されていない状態として説明する。
【0035】
この場合、トリガービット11を挟んで、データが格納されていないビットコード10は白色で印字され、データが格納されているビットコード9は黒色で印字されているため、後述する読取装置4により2列目のビットコード9,10を読み取る際、読取装置4は、当該列のビットコード9,10が赤色で着色されておらず、トリガービット11を挟んでビットコード9のみにデータが格納されていることを判断し、このビットコード9から正確にデータを読み取ることができる。従って、データの読み取り精度を向上させることができる。
【0036】
加えて上述したように、例えば、一方のビットコード9(ビットコード10でもよい)の印字が薄い状態や、対象物表面の歪みなどでデータが格納されていないものと読取装置4が誤判断し易い場合であっても、2列目のビットコード9,10は、トリガービット11を挟んで赤色に着色されておらず、白黒による着色であるため、読取装置4は、当該列のビットコード9,10いずれかにデータが格納されていることを認識し、これらトリガービット11を挟んだビットコード9,10の着色状態が、確実なデータ読み取りを可能とする誤り検出訂正機能となる。
【0037】
以上のように、表面に情報を印字した対象物2は、その印字に上述したようなインビジブル塗料を用いているため、通常の可視光の下では
コード8を視認できず、製品表面の
コード8を目立たないものにして、製品の外観性を向上させることができる。また、マーキング装置3は、複数色でマーキングを行うとともに、トリガービット11を挟んだ列に有するビットコード9のデータ有無状態に応じたマーキング色でマーキングするので、
コード8の列ごとに、データビットのデータ格納状態を簡単に識別することができる。
【0038】
なお、ビットコード9,10の読み取りに際し、誤り検出訂正機能を、上述したようなトリガービット11を挟んだビットコード9,10の着色状態で説明したが、誤り検出訂正機能は上述以外にも、例えば、データにパリティや検査系列を追加して復号時にチェックを行う周知のLDPC(Low Density Parity Check)の他、周知のCRC(Cyclic Redundancy Check)コードとして、データの読み取り側で生成されたCRCコードと、データの作成側で生成されたCRCコードを比べ、一致の有無を判断する方法など適宜用いることができる。
【0039】
次に、読取装置4の構成について説明する。
図6は読取装置における読取部の一例を示す底面図、
図7は紫外線探傷灯の側面模式図、
図8は放電管を含む光源の回路構成図、
図9はピース管理システムの制御ブロック図である。
【0040】
読取装置4は、
図2にも示したように、読取部21と、情報処理部22とからなり、読取部21は、
図6に示すように、底面開口部にCCD(Charge Coupled Device)カメラなどエリアカメラとしてのカメラ23および照明24が配置される。なお、図例のように、カメラ23は、読取部21底面の中央に配置させることが好ましく、照明24の設置位置は限定しない。また、情報処理部22は、コントローラcおよびデコードパソコン25などから構成される。
【0041】
つまり、読取部21のこれらカメラ23および照明24は、情報処理部22のコントローラcを介してデコードパソコン25に接続されている。なお、照明24は、上述の読取部21に内設させず、読取部21とは別体の、
コード8を照射する位置に設置してもよい。また、カメラ23は、上述したエリアカメラに限定されず、ラインカメラを用いてもよい。
【0042】
まず、照明24は、パルス発光式の紫外線探傷灯(パルスブラックライト)が用いられる。
図7に示すように、灯具31と、光源32とから構成されるもので、まず灯具31は、前面に開口部を備える金属製またはプラスチック製の材質を加工成形してなるケース33と、該ケース33内の前記開口部に面して、可視光線を遮断するとともに紫外線を通過させる、NiOやCoOなどを含むリン酸系暗色ガラスからなる通過フィルタ34と、この通過フィルタ34後方のケース33内であって、アルミニウムなどの金属を加工成形し、鏡面仕上げされた反射面を通過フィルタ34の面に対向配置させた反射体35とから構成される。
【0043】
また、通過フィルタ34後方のケース33内には、後端部に設置したソケット36を介して光源32としての放電管が取付けられる。この放電管は、光源管球として、メタルハライドランプが用いられる。なお、放電管は上述したメタルハライドランプに限定されず、LEDライトを用いてもよい。
【0044】
次に、
図8を用いて、光源32の回路構成を説明する。光源32の回路37は、光源32と、交流電源38との間に、安定器39が接続される。この安定器39は、銅鉄安定器として高圧発生器(イグナイタ)と変圧器とから構成される。また、安定器39の出力容量は、後述するコンデンサ
43からの電流が加算されるため、光源32の出力容量超えによる光源32の破損を防止するために、光源32の出力容量の1/2〜1/4にすることが好ましい。
【0045】
また、光源32と、交流電源38との間であって安定器39と並行に、光源32に高強度の紫外線発光を行わせるパルス電力制御手段40が接続される。このパルス電力制御手段40は、整流器41と、コンデンサ
43と、スイッチ42とから構成される。整流器41は、交流電力を直流電力に変換するダイオードなどの整流素子によって構成される周知の装置であり、コンデンサ
43は、目的とする紫外線強度に応じて容量を選択可能とするが、本例では、100μF〜30000μFの範囲を用いることが好ましい。
【0046】
スイッチ42は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Tr
ansistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの半導体制御によるものを用いることで、光源32の短時間発光が可能となる。なお、IGBTの許容電流値が小さい場合は、IGBTを並列に使用して対応する。このスイッチ42は、コントローラcを介してカメラ23に接続されている。
【0047】
なお、本実施例では、ピース管理システム1として、
図9に示すように、読取装置4のコントローラcには、対象物2表面に印字された
コード8の読み取り位置に配置した位置検出器26などを接続することで、この位置検出器26により検出した対象物2表面の
コード8に、コントローラcの指示により照明24から紫外線を照射し、カメラ23でこの
コード8の画像を撮影する。
【0048】
次に、カメラ23は、上述したようなCCDカメラなどを用いるが、このカメラ23のレンズ部分には、
図6に示したように、紫外線の周波数(波長)領域(10〜400nm)のみ通過不能とする紫外線バンド
エリミネーションフィルタ27が装着される。
【0049】
この紫外線バンド
エリミネーションフィルタ27は、例えば、アクリル樹脂や石英ガラスのような紫外線に対して不透明な紫外線透過部材と、該紫外線透過部材の表面に銀薄膜を蒸着などさせて形成させた周知のものを用いることができる。
【0050】
ここで、読取装置4により、上記製品情報を
コード8として対象物2表面に印字した対象物2から読み取る方法について説明する。
【0051】
搬送体28上を搬送されてきた対象物2は、その表面に有する
コード8が、読取部21の下方を通過する(この時点において、自然光や室内照明などによる可視光下では
コード8を視認できない)際、コントローラcは、位置検出器26が読取部21の下方に
コード8が位置したことを検出した検出情報に基づき、照明24を発光させる。
【0052】
この照明24は、紫外線をパルス発光させることで、自然光や室内照明などの可視光とは異なる周波数の紫外線が、
コード8を有する対象物2表面に照射されるが、
コード8のインビジブル塗料は、照明24の紫外線が発光する周波数とは異なる周波数で発光する。
【0053】
次いで、コントローラcは、照明24の発光とほぼ同時に、カメラ23により
コード8を撮影させる。このとき、カメラ23は、レンズに紫外線バンド
エリミネーションフィルタ27が装着されているため、この紫外線バンド
エリミネーションフィルタ27が、照明24の紫外線のパルス発光する周波数とは異なる周波数で発光した
コード8のインビジブル塗料を有する
コード8の画像のみをレンズ内に通過させることで、その画像を撮影することができる。
【0054】
次いで、コントローラcは、カメラ23における
コード8の撮影画像データをデコードパソコン25に転送させるとともに、デコードパソコン25に
コード8の撮影画像データを照合させる。
【0055】
そして、デコードパソコン25は、
コード8の撮影画像データに基づいて、この
コード8への変換前の情報に周知の方法で変換し、対象物2の製品名や、製造ロット、納入先などの情報をモニターなどに再現表示などする。
【0056】
このような構成にすることで、対象物2表面の
コード8(印字データ)は、インビジブル塗料により、通常の
可視光の下では視認できず、この
コード8の印字を目立たないものにして、対象物2の外観性を向上させるとともに、
コード8読み取りの際には、読取装置4におけるカメラ23の撮影位置に設置した照明24の紫外線をパルス発光させて、このパルス発光の周波数とは異なる周波数で発光する塗料を有する
コード8であって
、カメラ23によって撮影された
コード8から情報を正確に読み取ることができる。
【0057】
以上、詳述したように、本願発明のピース管理システム1は、対象物2の表面に、情報を、印字剤を用いて印字ノズルから、スタートコードおよびエンドコードで挟んだ
コード8によりマーキングするマーキング装置3と、情報を有する対象物2から、この情報を、カメラ23を介して読み取り、データ処理を行う読取装置4と
を備え、マーキング装置3は、印字ノズルを少なくとも2本備え、対象物2の表面に少なくとも2行のビットコード
9,10を平行して印字するとともに、中央の行をトリガービット11として断続的に設け、トリガービット11の1ビットに対して上または下にデータを配置し、さらに、カメラ23の撮影
範囲に
紫外線を照射させる照明24を備え、印字剤には、照明24の
紫外線の照射によって可視光を発光する塗料を用いるとともに、カメラ23には、
紫外線の波長領域のみを通過不能とするフィルタ27を装着したものである。