(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[半導体素子3次元実装用充填材]
本発明の半導体素子3次元実装用充填材(以下、単に「充填材」と称する場合がある)は、複数の半導体素子を積層し集積して3次元半導体素子装置を製造するに際し、横方向に隣接する半導体素子間の隙間を埋める充填材(隙間埋め材)である。この充填材は、半導体素子間の隙間を埋めた状態で半導体素子の裏面側からチップとともに研磨又は研削され、平坦化される部材である。
【0016】
図1及び
図2は、本発明の半導体素子3次元実装用充填材を用いた3次元半導体素子装置(3次元半導体集積回路装置)の製造方法の一例を示す概略工程図である。このプロセスでは、以下のようにして3次元半導体素子装置を製造する。
【0017】
(a)回路形成領域を含むシリコンウエハ1上に半導体素子20を積層した第1のベースウエハ30を準備する。
(b)隣接する半導体素子20間の隙間を、本発明の半導体素子3次元実装用充填材2で埋めた状態にする(前記隙間に後述する半導体素子3次元実装用硬化性組成物を流し込んで硬化させる)
(c)半導体素子20の裏面及び前記充填材2の表面をもろともに研磨及び/又は研削して、表面を平坦化、薄化する。
(d)〜(e)半導体素子20内部または半導体素子3次元実装用充填材2に貫通孔3を作製し、貫通電極4を形成し半導体ウエハ40を作製する。
【0018】
(f)〜(j)そして、このようにして得られた2層の配線層を有する半導体ウエハ40の表面に半導体素子20’を積層し、上記の工程を繰り返すことで、3層の配線層を有する半導体ウエハ50が得られる。
【0019】
このような操作を所望の回数繰り返し、所望の位置でダイシングすることにより、3次元半導体素子装置(3次元半導体集積回路装置)が得られる。
【0020】
前記工程(c)において、研磨及び/又は研削により、半導体素子20の厚みを、例えば10〜20μmとすることができる。
【0021】
上記のように、横方向に隣接する素子間の隙間を充填材で埋めた状態で素子の裏面側から該素子と充填材とを一緒に研磨又は研削するので、素子裏面側が平坦化且つ薄化される。従って、素子そのものを薄くでき、低背化された3次元半導体素子装置(3次元半導体集積回路装置)を効率よく製造できる。また、その際、割れや気泡が発生しない。
【0022】
半導体素子20は、半導体を用いた素子であり、例えばMEMSや、イメージセンサであってもよい。また積層する半導体素子20’は半導体素子20と同じ大きさであってもよいし、サイズ(縦、横、高さ)が異なってもよい。
【0023】
回路形成領域を含むシリコンウエハ1は、MEMSであってもよいしイメージセンサであってもよい。
【0024】
前記充填材2としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを少なくとも含有する硬化性組成物の硬化物であるのが好ましい。
【0025】
[半導体素子3次元実装用硬化性組成物]
本発明の半導体素子3次元実装用硬化性組成物(以下、「本発明の硬化性組成物」と称する場合がある)は、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを少なくとも含有し、25℃において液状である。本発明の硬化性組成物は、前記半導体素子3次元実装用充填材の形成に用いることができる。すなわち、横方向に隣接する素子間の隙間に注入し、硬化させることにより前記充填材が形成される。
【0026】
硬化性化合物としてビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物を用いると、硬化時にクラックが入らず、また、硬化後、素子とともに研磨してもクラックや欠けが生じず、研磨盤の目詰まりも起こさない。なお、従来の素子積層用接着剤を上記の隙間埋め剤に転用した場合には、硬化時にクラックが入るとともに、硬化後、素子とともに研磨すると、研磨時にクラックや欠けが生じたり、研磨盤の目詰まりを起こす。また、硬化性化合物として脂環式エポキシ化合物のみを用いた場合には、樹脂硬化物が硬すぎたり、硬化収縮が生じたりして、硬化物にクラックが生じやすい。
【0027】
前記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、ビスフェノールAD骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノールAD型エポキシ樹脂)、ビスフェノールS骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノールS型エポキシ樹脂)などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、分子内に、ビスフェノール及びエピクロロヒドリンに由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
【0028】
ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物の代表的な例として、下記式(1)、(2)、(3)で表される化合物が挙げられる。
【0030】
上記式中、rは0〜8の数を示す。rとしては、0.01〜3の範囲が好ましく、1〜2の範囲がより好ましい。
【0031】
前記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、例えば、155〜800g/eq、好ましくは155〜500g/eq、さらに好ましくは、160〜180g/eqである。前記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物は、室温(25℃)で液状であるのが好ましいが、固体であっても、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物を溶解する他の液状(25℃)の化合物(他のエポキシ化合物等)と併用することにより、硬化性組成物全体として液状(25℃)となればよい。
【0032】
前記本発明の硬化性組成物はビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。そのようなエポキシ化合物として、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を分子内に有するエポキシ化合物(=脂環式エポキシ化合物);脂環にエポキシ基が直接単結合で結合しているエポキシ化合物;脂環とグリシジルエーテル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物;その他のエポキシ化合物が挙げられる。
【0033】
前記脂環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環などの単環の脂環(3〜15員、好ましくは5〜6員程度のシクロアルカン環等);デカリン環(パーヒドロナフタレン環)、パーヒドロインデン環(ビシクロ[4.3.0]ノナン環)、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロフェナントレン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環)、イソボルナン環、アダマンタン環、ビシクロ[3.3.0]オクタン環、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン環、トリシクロ[6.2.1.0
2,7]ウンデカン環などの多環(2〜4環程度)の脂環(橋架け炭素環)などが挙げられる。また、脂環エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン8−(又は9)イル基(エポキシ化ジシクロペンタジエニル基)などが挙げられる。シクロヘキサン環には、メチル基等のアルキル基などの置換基が結合していてもよい。
【0034】
前記脂環式エポキシ化合物として、下記式(4)で表される化合物(2つの脂環エポキシ基が単結合で又は連結基を介して結合している化合物)が挙げられる。
【0036】
上記式中、Y
1は単結合又は連結基を示す。連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びこれらが複数個結合した基等が挙げられる。2価の炭化水素基としては、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、C
1-6アルキレン基);1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基などの2価の脂環式炭化水素基(特に、2価のシクロアルキレン基);これらが複数個結合した基などが例示される。
【0037】
式(4)で表される化合物に含まれる代表的な化合物を下に示す。
【0039】
なお、上記式中、tは1〜30の整数である。
【0040】
脂環式エポキシ化合物としては、ほかに、分子内に脂環と2以上のエポキシ基を有し且つ2以上のエポキシ基のうち1つのみが脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)である化合物が挙げられる。この代表的な化合物(リモネンジエポキシド)を下に示す。
【0042】
また、脂環式エポキシ化合物として、以下に示されるような、3以上の脂環エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物や、脂環エポキシ基を1つのみ有し、他にエポキシ基を有しない脂環式エポキシ化合物を用いることもできる。
【0044】
なお、上記式中、a、b、c、d、e、fは、0〜30の整数である。
【0045】
前記脂環にエポキシ基が直接単結合で結合しているエポキシ化合物としては、例えば、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
上記式中、Rはq価のアルコール[R−(OH)
q]からq個のOHを除した基、pは1〜30の整数、qは1〜10の整数を示す。q個の括弧内の基において、pはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。q価のアルコール[R−(OH)
q]としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール等の1価のアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどの3価以上のアルコールが挙げられる。前記アルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等であってもよい。前記アルコールとしては、炭素数1〜10の脂肪族アルコール(特に、トリメチロールプロパン等の脂肪族多価アルコール)が好ましい。
【0048】
脂環とグリシジルエーテル基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。この化合物は、前記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物[例えば、前記式(1)、(2)、(3)で表される化合物]の芳香環が核水素化された化合物であってもよい。
【0049】
前記その他のエポキシ化合物としては、例えば、上記q価のアルコール[R−(OH)
q]のグリシジルエーテル;酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等の1価又は多価カルボン酸のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物などが挙げられる。
【0050】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物以外のエポキシ化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物と脂環式エポキシ化合物とを併用することにより、硬化物(充填材2)の耐熱性を向上できる。また、硬化物(充填材2)の高温での硬さの変化を抑制することができる。
【0051】
前記本発明の硬化性組成物中の全エポキシ化合物の含有量は、例えば、30〜99.99重量%、好ましくは50〜99.9重量%、さらに好ましくは60〜99.5重量%である。また、本発明の硬化性組成物中の全エポキシ化合物に占めるビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物の割合は、例えば、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。さらに、本発明の硬化性組成物中の全エポキシ化合物に占めるビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物及び脂環式エポキシ化合物の総量の割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0052】
本発明の硬化性組成物はカチオン重合開始剤(硬化触媒)を含有する。カチオン重合開始剤は光又は加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出する開始剤である。
【0053】
カチオン重合開始剤のうち、紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、公知の光カチオン重合開始剤を使用できる。例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩などを挙げることができ、商品名「CPI−100P」、商品名「CPI−101A」、商品名「LW−S1」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー製)、商品名「イルガキュア264」(BASF社製)、商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。
【0054】
カチオン重合開始剤のうち、加熱によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、公知の熱カチオン重合開始剤を使用できる。例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体などを挙げることができ、PP−33、CP−66、CP−77((株)ADEKA製)、FC−509(スリーエム製)、UVE1014(G.E.製)、サンエイド SI−60L、サンエイド SI−80L、サンエイド SI−100L、サンエイド SI−110L(三新化学工業(株)製)、CG−24−61(BASF社製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、又は、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
【0055】
カチオン重合開始剤を用いることにより、本発明の硬化性組成物が熱又は光によりカチオン硬化して前記充填材が得られる。
【0056】
カチオン重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、上記硬化性組成物中のエポキシ化合物全量100重量部に対して、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜8重量部である。上記範囲で配合することにより、耐熱性、透明性、耐候性等の良好な硬化物(充填材)を得ることができる。
【0057】
[添加剤]
本発明の硬化性組成物は無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを含有させることにより、硬化物(充填材2)の熱膨張を抑えることができる。また、硬化物(充填材2)の耐熱性を向上させることができる。
【0058】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化アンチモン、タルク、クレイ、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、合成マイカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、シリカ(特に、球状シリカ)、アルミナが好ましい。
【0059】
無機フィラーの平均粒子径は、例えば0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μmである。
【0060】
無機フィラーの配合量は、本発明の硬化性組成物中の全エポキシ化合物100重量部に対して、例えば0〜70重量%(例えば0.1〜70重量%)、好ましくは0〜50重量%(例えば1〜50重量%)、さらに好ましくは0〜40重量%(例えば5〜40重量%)である。
【0061】
本発明の硬化性組成物はシランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤を含有させることにより、硬化物(充填材2)のシリコンウエハに対する密着性を向上させることができる。
【0062】
シランカップリング剤としては、公知の種々のシランカップリング剤を使用できる。シランカップリング剤の代表的な例として、3−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジエトキシメチルシリルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基であるシランカップリング剤を用いる場合には、ラジカル重合開始剤を少量添加してもよい。なお、官能基がエポキシ基であるシランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなど]を用いることもできるが、このようなカップリング剤は前記その他のエポキシ化合物に属する。
【0063】
シランカップリング剤の配合量は、本発明の硬化性組成物中の全エポキシ化合物100重量部に対して、例えば0〜10重量%(例えば0.1〜10重量%)、好ましくは0〜5重量%(例えば0.2〜5重量%)、さらに好ましくは0〜3重量%(例えば0.3〜3重量%)である。
【0064】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、硬化性組成物の粘度や硬化物の特性を損なわない範囲で、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、有機系のゴム粒子、難燃剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、イオン吸着体、顔料、染料、蛍光体などを添加することもできる。これら各種の添加剤の配合量は硬化性組成物全体に対して、例えば5重量%以下である。本発明の硬化性組成物は溶剤を含んでいてもよいが、溶剤の量があまり多いと硬化樹脂に気泡が生じる場合があるので、好ましくは硬化性組成物全体に対して10重量%以下、特に1重量%以下である。
【0065】
本発明の硬化性組成物において、エポキシ化合物、カチオン重合開始剤、無機フィラー及びシランカップリング剤の総含有量は、硬化性組成物全体に対して、例えば、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0066】
本発明の硬化性組成物の粘度(25℃)は、例えば、10〜100000mPa・s、好ましくは100〜10000mPa・s、さらに好ましくは500〜3000mPa・sである。本発明の硬化性組成物は、常温で流動性のあるペースト状であるのが好ましい。この粘度が大きすぎると、気泡が抜けにくくなるとともに、作業性、取扱性等が低下しやすくなる。
【0067】
本発明の硬化性組成物は2液型、1液型のいずれであってもよい。
【0068】
本発明の硬化性組成物は、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物とカチオン重合開始剤、及び必要に応じて、脂環式エポキシ化合物、無機フィラー、シランカップリング剤、その他の成分を撹拌混合することにより調製できる。撹拌混合は、汎用の混合機、混練機等を使用できる。
【0069】
こうして調製された半導体素子3次元実装用硬化性組成物は、3次元半導体素子装置を製造する際、横方向に隣接する半導体素子間の隙間に注入され、所定の条件で硬化(光硬化又は加熱硬化)され、前記充填材2として機能する。
【0070】
本発明の硬化性組成物を光硬化(光カチオン硬化)させる場合、照射する活性エネルギー線(光)としては、特に限定されないが、例えば、紫外線や電子線などが挙げられ、中でも紫外線を好ましく使用できる。上記紫外線の波長は、カチオン重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができる。また、活性エネルギー線の照射条件は、配合されたエポキシ化合物の種類や膜厚、カチオン重合開始剤の種類や量等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、紫外線を用いる場合には、その照射量(線量)は10〜10,000mJ/cm
2が好ましく、より好ましくは50〜5,000mJ/cm
2である。上記紫外線の照射源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプなどを挙げることができる。
【0071】
また、本発明の硬化性組成物を加熱硬化(熱カチオン硬化)させる際の硬化温度は、特に限定されないが、45〜200℃が好ましい。また、硬化時間は、例えば、1〜60分が好ましい。なお、硬化は多段階で行うこともできる。
【0072】
上述のように、本発明の組成物に活性エネルギー線を照射して光硬化させた後には、さらに、必要に応じて加熱してもよい。このような加熱を施すことによって、樹脂硬化物中の未反応物の低減、樹脂硬化物の硬化度の向上、歪みの緩和等の効果が得られる。また、樹脂硬化物の硬度や密着性の向上の効果が得られる場合がある。上記加熱は、通常、100〜200℃の雰囲気温度で1〜300分間の条件で行うことができる。
【0073】
なお、加熱硬化の場合には、硬化性組成物を前記隣接する半導体素子間の隙間に注入した際、熱で硬化性組成物の流動性が増して中央に集まり(シリコンウエハとの濡れ性が小さいため)、面内膜厚分布が一定とならない場合があるので、加熱硬化より光硬化が好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0075】
実施例1
(参考例とする)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0076】
実施例2
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0077】
実施例3
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0078】
実施例4
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「LW−S1」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0079】
実施例5
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0080】
実施例6
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部、シランカップリング剤(3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート)1重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0081】
実施例7
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0082】
実施例8
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0083】
実施例9
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「LW−S1」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0084】
実施例10
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0085】
実施例11
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部、シランカップリング剤(3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート)1重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0086】
実施例12
(参考例とする)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0087】
実施例13
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0088】
実施例14
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0089】
実施例15
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「LW−S1」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0090】
実施例16
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0091】
実施例17
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部、シランカップリング剤(3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート)1重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0092】
実施例18
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0093】
実施例19
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0094】
実施例20
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「LW−S1」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0095】
実施例21
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0096】
実施例22
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE−303」)70重量部、脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)30重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部、シリカ(アドマテックス社製、商品名「SC4050−SEJ、平均粒子径1μm)30重量部、シランカップリング剤(3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート)1重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0097】
比較例1
脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0098】
比較例2
脂環式エポキシ化合物(株式会社ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0099】
比較例3
脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0100】
比較例4
脂環式エポキシ化合物(3,4,3′,4′−ジエポキシビシクロヘキシル)100重量部、カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、商品名「CPI−101A」)2重量部を、シンキー社製、商品名「あわとり練太郎」で撹拌混合し、充填材用の硬化性組成物を得た。
【0101】
評価試験
塗布基板として、8inchシリコンウエハにチップに見立てた凹凸形状を切削加工にて作製したものを準備した(模擬COW基板:ウエハ厚み725μm、チップ部9mm×9mm×0.2mm厚、溝部2mm幅×0.1mm厚)。すなわち、8inchシリコンウエハの表面に、縦方向及び横方向にそれぞれ10mm間隔で幅2mm深さ0.2mmの溝を作製した。
この模擬COW基板の表面に上記各実施例及び比較例で得られた充填材用の硬化性組成物をスキージ(ニューロング精密工業株式会社製のJスキージ)で塗布した。
塗布後、UV照射機(ウシオ電機株式会社製、商品名「UVC−02516S1AA02」)でUV光(UV−A)を3600mJ/cm
2照射した。その後、ホットプレート120℃で10分ポストキュアを実施した。
硬化後の充填材の様子を目視と光学顕微鏡で観察し、充填材におけるクラックの有無を確認し、クラックの無いものを○、クラックのあるものを×とした。
クラック発生の無いサンプルについて、研磨機(ムサシノ電子株式会社製、商品名「MA−200D」)、研磨盤(三井研削砥石株式会社製、商品名「CBN DIA #400」)を用いて、回転数100rpm、研磨時間10min、おもり500gの条件で、研磨試験を実施した。なお、比較例1〜4では充填材にクラックが入ったので、研磨試験を行わなかった。
研磨後、硬化後の充填材やシリコンウエハにおけるクラックや欠けの有無、及び研磨盤の目詰まりの有無を目視と顕微鏡で確認した。硬化後の充填材やシリコンウエハにクラックや欠けがなく、研磨盤の目詰まりがないものを○、硬化後の充填材やシリコンウエハにクラックや欠けがあるもの、又は研磨盤の目詰まりがあるものを×とした。
評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】