(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964672
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】躯体構造及び躯体の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
E02D27/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-142474(P2012-142474)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-5664(P2014-5664A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】島田 博志
(72)【発明者】
【氏名】北村 公直
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健司
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−036601(JP,A)
【文献】
特開昭53−020607(JP,A)
【文献】
特開2009−185487(JP,A)
【文献】
特開平07−233533(JP,A)
【文献】
特開平05−071131(JP,A)
【文献】
特開平06−257166(JP,A)
【文献】
特開平07−268883(JP,A)
【文献】
特開平10−311041(JP,A)
【文献】
特開2009−174135(JP,A)
【文献】
特開平10−331255(JP,A)
【文献】
特開2003−247239(JP,A)
【文献】
特開2003−213699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00−27/52
E04B 1/04
E04B 1/20
E04B 1/38
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部と、基礎梁部と、前記柱部と前記基礎梁部とを接続する基礎部と、を備えた躯体構造において、
前記基礎部は、底面がフラットな溝を有し、
前記柱部と前記基礎梁部は、当該柱部の下端部から当該基礎梁部が両側方に突出するようにこれらを一体に備えた、底面がフラットな逆T字型の第1のPCa部材により形成されており、
前記第1のPCa部材は、前記溝の前記底面上に配置された状態で前記基礎部と接合されていることを特徴とする躯体構造。
【請求項2】
隣接する前記基礎部にそれぞれ接合されている前記第1のPCa部材同士が、別の前記第1のPCa部材、または、前記基礎梁部のみの第2のPCa部材を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の躯体構造。
【請求項3】
柱部と、基礎梁部と、前記柱部と前記基礎梁部とを接続する基礎部と、を備えた躯体の構築方法において、
溝を有する前記基礎部を構築する工程と、
前記柱部と前記基礎梁部とを一体に備えた第1のPCa部材を前記溝に差し込み、前記第1のPCa部材と前記基礎部とを接合する工程と、を含み、
前記溝は、前記基礎部を横断し、かつ、フラットな底面を有し、
前記第1のPCa部材は、前記柱部の下端部から前記基礎梁部が両側方に突出し、底面がフラットな逆T字型に形成されていることを特徴とする躯体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱と基礎とを有する躯体構造及び構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に基礎部分の躯体工事は工事現場での手間がかかり易い傾向にある。躯体工事を効率化するために、PCa(プレキャスト)部材を用いた構築方法が提案されている。例えば、特許文献1にはフーチング基礎の上面に柱脚穴を形成し、ここにPCa柱を建入れするものが提案されている。特許文献2にはフーチングを2段階で形成することとし、その下部を形成した段階でPCa柱を建て込み、その後、上部を形成するものが提案されている。特許文献3には複数のPCa基礎梁をフーチングと一体化して基礎部を構築するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−311041号公報
【特許文献2】特開平2009−174135号公報
【特許文献3】特開平7−268883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2の構築方法は柱の施工効率は向上するが、柱構築前の基礎及び基礎梁の構築に一般的な工法よりも時間を要することから工期短縮の効果は余り高くない。特許文献3の構築工法は基礎梁の施工効率は向上するが、フーチング型枠を組む前に基礎梁を支持しておく必要があり、この点の手間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、柱と基礎との施工効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、柱部と、基礎梁部と、前記柱部と前記基礎梁部とを接続する基礎部と、を備えた躯体構造において、前記基礎部は、
底面がフラットな溝を有し、前記柱部と前記基礎梁部
は、当該柱部の下端部から当該基礎梁部が両側方に突出するようにこれらを一体に備えた、底面がフラットな逆T字型の第1のPCa部材
により形成されており、前記第1のPCa部材は、前記溝の前記底面上に配置された状態で前記基礎部と接合
されていることを特徴とする躯体構造が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、柱部と、基礎梁部と、前記柱部と前記基礎梁部とを接続する基礎部と、を備えた躯体の構築方法において、溝を有する前記基礎部を構築する工程と、前記柱部と前記基礎梁部とを一体に備えた
第1のPCa部材を前記溝に差し込み、前記
第1のPCa部材と前記基礎部とを接合する工程と、を含
み、前記溝は、前記基礎部を横断し、かつ、フラットな底面を有し、前記第1のPCa部材は、前記柱部の下端部から前記基礎梁部が両側方に突出し、底面がフラットな逆T字型に形成されていることを特徴とする躯体の構築方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柱と基礎との施工効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る躯体を示す模式図。
【
図5】(A)は
図1の躯体の構築方法の説明図、(B)は躯体の別例の模式図。
【
図6】(A)及び(B)は接合方法の別例の説明図、(C)はPCa部材と溝の別例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る躯体1を示す模式図である。躯体1は、柱部10と、基礎梁部11と、柱部10と基礎梁部11及び杭13とを接続する基礎部12と、を備える。基礎部12は杭13上に支持されており、杭13のパイルキャップ基礎を構成している。柱部10及び基礎梁部11はPCa部材2により形成されており、
図1の例では3つのPCa部材2が互いに連結されている。その詳細は後述する。
【0011】
次に、躯体1の構築方法について、
図2乃至
図5(A)を参照して説明する。
図2のST1に示すように、杭13の杭打設を行った後、レベルコンクリート14を杭頭13aの周囲に打設する。墨出し等を行った後、
図2のST2に示すように、基礎部12の鉄筋12aを配筋する。この後、型枠を設置して基礎部12のコンクリートを打設し、基礎部12を構築する。杭頭13aと基礎部12との接合方式については、杭頭13aにキャップをかぶせて基礎部12と非定着とする半剛接合方法であってもよいし、剛接合であってもよい。
【0012】
図2のST3は基礎部12が構築された状態を示す。基礎部12は溝121を有している。本実施形態の場合、溝121は基礎部12を横断する直線状の溝である。次に、PCa部材2を重機で吊り上げ、
図3のST4、ST5に示すように溝121にPCa部材2を差し込む。PCa部材2は、柱部10と基礎梁部11とを一体に備える。
【0013】
本実施形態の場合、柱部10と基礎梁部11とは同厚であって、PCa部材2全体が扁平である。柱部10が扁平柱であることは、建物の有効空間の確保に寄与する。基礎梁部11を柱部10と同厚としてPCa部材2全体を扁平とすることで、製造や取り扱いの簡便化を図れる。
【0014】
また、本実施形態の場合、基礎梁部11は柱部10の下端部から両側方に突出しており、PCa部材2は全体として逆T字型をなしている。基礎部12から双方向に延びる基礎梁部11を同時施工できるという利点がある。
【0015】
溝121はPCa部材2の外形に応じて形成されている。溝121は、溝121に差し込まれたPCa部材2が自立可能な幅と深さを有することが好ましい。基礎部12によってPCa部材2を支持することができ、その後の接合作業を容易化することができる。
【0016】
次に、PCa部材2と基礎部12とを接合する。接合は、例えば、
図4のST6に示すように溝121の内面とPCa部材2の隙間に、充填材122を充填することにより行う。充填材122は、例えば、グラウト122やコンクリートである。また、接合力の向上を目的として、
図6(A)に示すように溝121の内面にコッタ凹凸を形成してもよく、同様にPCa部材2側にもコッタ凹凸を形成してもよい。また、
図6(B)に示すように、溝121の内面から定着筋121bを設けてもよい。定着筋121bは、PCa部材2側に設けてもよいし、或いは、溝121の内面とPCa部材2の双方に設けてもよい。
【0017】
次に、基礎梁部11間を接合する作業を行う。本実施形態では、PCa部材2を追加することで、既設のPCa2の基礎梁部11間に新たなPCa部材2を配置することで、接合する。
図4のST7は、既設のPCa部材2間に、新たなPCa部材2を配置した状態を示す。新たなPCa部材2の柱部10は間柱となる。基礎梁部11間は、PCa部材間の既存の接合技術により接合することができる。
図5(A)に示すように、基礎梁部11間の隙間をコンクリート111を打設・充填し、
図1に示した躯体1が完成することになる。
【0018】
なお、既設の基礎梁部11間を接合する新たなPCa部材としては、柱部10が無いものでもよい。
図5(B)は基礎梁部11のみのPCa部材20によって既設の基礎梁部11間を接合した例である。
【0019】
また、基礎梁部11の上端に取り合うスラブ(不図示)の施工は、PCa部材2の基礎部12への取付け後に行ってもよい。
【0020】
このように本実施形態では、柱部10と基礎梁部11とを一体に備えたPCa部材2を用いたことで、建物の最下階の柱部10と基礎梁部11とを同時に施工できる。このため、短工期での施工が可能となって、柱と基礎との施工効率を向上することができる。
【0021】
基礎部12には溝121を形成する必要があるが、他の取り合いとは無関係に構築できるので、型枠の転用等によって工期増やコスト増を招くことを回避できる。
【0022】
なお、本実施形態では、PCa部材2として、同一直線上の2方向分の基礎梁部11を有するものを例示したが、これに限られない。
図6(C)は3方向分の基礎梁部11を有するPCa部材2’を示しており、基礎部12’の溝121’の形状も、3方向分の基礎梁部11の形状に対応したものとなっている。このように、PCa部材が備える基礎梁部は、3方向分以上であってもよいし、1方向分であってもよい。また、2方向分であっても、同一直線上に延びている必要はなく、例えば、直交2方向分であってもよい。