特許第5964673号(P5964673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964673
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】電気コネクタ及びメス型端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/533 20060101AFI20160721BHJP
   H01R 31/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01R13/533 D
   H01R31/06 P
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-145261(P2012-145261)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-10949(P2014-10949A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秋口 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】末光 佳史
(72)【発明者】
【氏名】上田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野澤 奈津樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】野口 真男
(72)【発明者】
【氏名】原田 新
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−157083(JP,U)
【文献】 特開昭57−158969(JP,A)
【文献】 特開平09−204872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0033291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40〜13/72
H01R 11/01
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メス型端子と、前記メス型端子を収容するハウジングと、を備え、
前記メス型端子は、
第1オス端子と電気的に接触される第1メス端子と、
第2オス端子と電気的に接触される第2メス端子と、
前記第1メス端子と前記第2メス端子とを繋ぐ弾性連結片と、を備え、
前記弾性連結片は、前記第1ス端と前記第2オス端子の挿抜方向への、前記第1メス端子と前記第2メス端子の相対的に独立した変位を許容
前記第1メス端子は、前記ハウジングに固定されることで変位が拘束され、
前記第2メス端子は、前記ハウジングの内部で前記挿抜方向への変位が許容される、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記弾性連結片は、
前記第2メス端子と前記第2オス端子の間の挿抜力よりも小さい負荷により弾性変形する、
請求項に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1メス端子と前記第2メス端子は、前記挿抜方向に位置がずれている、
請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記第1オス端子と前記第2オス端子は、異なる振動形態を呈する、
請求項1〜のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
相手側の第1ス端子と電気的に接触される第1メス端子と、
前記第1メス端子が接触されるのとは異なる第2ス端子と電気的に接触される第2メス端子と、
前記第1メス端子と前記第2メス端子とを繋ぐ弾性連結片と、
を備え、
前記弾性連結片は、前記第1ス端と前記第2オス端子の挿抜方向への、前記第1メス端子と前記第2メス端子の相対的な変位を許容
前記第1メス端子は、電気コネクタを構成するハウジングに固定されることで変位が拘束され、
前記第2メス端子は、前記ハウジングの内部で前記挿抜方向への変位が許容される、
ことを特徴とする電気コネクタに用いられるメス型端子。
【請求項6】
前記弾性連結片は、
前記第メス端子と前記第2ス端子の間の挿抜力よりも小さい負荷により弾性変形する、
請求項に記載のメス型端子。
【請求項7】
前記第1メス端子と前記第2メス端子は、前記挿抜方向に位置がずれている、
請求項5又は6に記載のメス型端子。
【請求項8】
前記第1オス端子と前記第2オス端子は、異なる振動形態を呈する、
請求項のいずれか一項に記載のメス型端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に接続される電気コネクタに関し、特にこの電気コネクタに保持されるメス型端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタ(以下、単にコネクタ)は種々の用途に用いられており、用途によってはコネクタが相当の振動を受けることがある。コネクタは、通常、オス型端子を保持するオスコネクタと、オス型端子と電気的に接触されるメス型端子を保持するメスコネクタとが互いに嵌合されている。しかし、コネクタが振動を受けると、オス型端子とメス型端子の間で初期の接触状態を維持できなくなり、コネクタの信頼性が損なわれる。
【0003】
振動に対する耐性を持たせたコネクタが、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。特許文献1は、インパネモジュールを車体側に組み付ける際、オスコネクタとメスコネクタが正確に対峙していなくても、オスコネクタとメスコネクタとを接続することができ、かつ、両コネクタを接続した後、モジュール間に位置ずれや振動が発生しても、変形したり破損したりするのを防止できるコネクタを提案している。
また、特許文献2は、振動や衝撃がコネクタ間で伝達されにくく、確実な接触状態を維持できる上に、小型化も図りやすい構造のコネクタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−91029号公報
【特許文献2】特開2003−323924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単一のハウジング保持される複数のメス型端子と複数のオス型端子とが接続される従来周知のコネクタにおいて、オス型端子が単一の部材、例えば回路基板に固定されているものとする。外的な要因によりこの回路基板が振動したとしても、オス型端子及びメス型端子を含むメスコネクタはともに、回路基板に同調して振動する。したがって、オス型端子とメス型端子の相対的な位置関係、つまり接触関係は初期の状態を維持できるか、維持できないとしても相対的な変位は微小である。
ところが、オス型端子が固定される機器が相違する場合もある。例えば、回路基板Aに固定されたオス型端子Mと、回路基板Bに固定されたオス型端子Mとが、単一のハウジング保持される複数のメス型端子に接触される、という形態である。この形態において、回路基板A及び回路基板Bの各々の振動形態が相違することがある。なお、ここでいう振動形態とは、少なくとも振動の周期、振幅を含んでいる。そうすると、当該振動に伴うオス型端子Mの変位と、当該振動に伴うオス型端子Mの変位と、が相違することになる。この相違を前提にして、オス型端子Mとメス型端子Fの相対的な位置関係、及び、オス型端子Mとメス型端子Fの相対的な位置関係を維持することが要求される。例えば、メス型端子F,Fを保持するハウジングを回路基板Aの側に固定したとすると、オス型端子Mは振動に伴ってメス型端子Fに対して位置ずれを起すので、両者の間の相対的な位置関係を維持することができない。ところが、前述した特許文献1、特許文献2を含め、この要求に対して示唆を与える先行技術は見出されていない。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、異なる振動形態を有する回路基板、その他の部材に固定されるオス型端子と接触されても、各々のオス型端子との相対的な接触位置関係を維持することのできるメス型端子を提供することを目的とする。
本発明はまた、そのようなメス型端子を備えることで、異なる振動形態を有する部材に固定されるオス型端子と接触されても、オス型端子とメス型端子の相対的な位置関係を維持できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
オス型端子Mに接触するメス型端子Fと、オス型端子Mに接触するメス型端子Fと、が独立して変位できれば、オス型端子Mとメス型端子Fの相対的な位置関係、及び、オス型端子Mとメス型端子Fの相対的な位置関係を維持することができるであろうことは推測できる。しかし、これまでのようにメス型端子F及びメス型端子Fをともにハウジングに対して固定したのでは、独立した変位を実現することはできない。そこで、本発明者らは、メス型端子Fとメス型端子Fを弾性連結片により繋ぐことを着目した。そうすれば、メス型端子F(または、メス型端子F)をハウジングに固定したとしても、メス型端子F(または、メス型端子F)はハウジングに固定することなく収容しておけば、メス型端子Fとメス型端子Fは相対的には独立して変位できる。しかも、メス型端子Fとメス型端子Fは弾性連結片により繋がれているので、メス型端子Fは見かけ上はハウジングに保持されることになる。
【0008】
以上の検討結果に基づく本発明の電気コネクタは、メス型端子と、メス型端子を収容するハウジングとを備えており、メス型端子は、第1オス端子と電気的に接触される第1メス端子と、第2オス端子と電気的に接触される第2メス端子と、第1メス端子と第2メス端子とを繋ぐ弾性連結片と、を備え、この弾性連結片は、第1ス端と第2オス端子の挿抜方向への、第1メス端子と第2メス端子の相対的に独立した変位を許容する。さらに、この第1メス端子はハウジングに固定されることで変位が拘束され、この第2メス端子はハウジングの内部で挿抜方向への変位が許容される。
【0009】
本発明の電気コネクタにおいて、第1メス端子はハウジングに固定されることで変位が拘束され、第2メス端子はハウジングの内部で挿抜方向への変位が許容されることで、第1メス端子と第2メス端子の独立した変位を確保することができる。
この場合、弾性連結片は、第2メス端子と第2オス型端子の間の挿抜力よりも小さい負荷により弾性変形することが好ましい。そうすることで、第1メス端子と第2メス端子の相対的に独立した変位を許容しながら、第2メス端子と第2オス端子の接触位置をより確実に維持できる。
【0010】
第1メス端子と第2メス端子は、挿抜方向に位置がずれていることが好ましい。そうすることで、本発明の電気コネクタは長さの異なるオス端子を接続することができるし、また、オス端子との有効接触長を確保できる利点がある。さらに、各々のオス型端子を挿抜するタイミングがずれるので、一時期に発生する挿抜力を低く抑えることができる。
【0011】
本発明の電気コネクタは、第1オス端子と第2オス端子が、異なる振動形態を呈する場合に、その効果が顕著となる。
【0012】
本発明はメス型端子を単体として提供するものであり、このメス型端子は上述の通りの構成、つまり、第1オス端子と電気的に接触される第1メス端子と、第2オス端子と電気的に接触される第2メス端子と、第1メス端子と第2メス端子とを繋ぐ弾性連結片と、を備え、本発明のメス型端子は弾性連結片が、第1ス端と第2オス端子の挿抜方向への、第1メス端子と第2メス端子の相対的な変位を許容し、さらに、第1メス端子は、電気コネクタを構成するハウジングに固定されることで変位が拘束され、第2メス端子は、ハウジングの内部で挿抜方向への変位が許容されるというものである。
【0013】
本発明のメス型端子において、上述した電気コネクタにおける好ましい形態を採用できることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる振動形態を有する機器類に固定されるオス型端子と接触されても、オス型端子とメス型端子の相対的な位置関係を維持できるメス型端子及びコネクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態におけるメス型端子を示す斜視図である。
図2】本実施形態における電気コネクタを示し、各構成要素が組み付けられた状態の縦断面図である。
図3】本実施形態における電気コネクタを示し、メス型端子、第2ハウジング及び第3ハウジングを取り除いた状態の縦断面図である。
図4】本実施形態における電気コネクタを示し、オス型端子及び第3ハウジングを取り除いた状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付する図1〜4に示す電気コネクタ1に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態に係る電気コネクタ1は、図2図4に示すように、メス型端子10と、メス型端子10を収容するハウジング5と、から構成される。メス型端子10は第1オス型端子3,4と電気的に接触され、ハウジング5は回路基板6に固定される。一方の第1オス型端子3は回路基板6に固定され、他方の第2オス型端子4は、図中、回路基板6よりも下方に配置される他の機器に固定される。したがって、第1オス型端子3と第2オス型端子4は、振動の形態が相違する。電気コネクタ1は、この相違する振動の形態を吸収するために、メス型端子10が特徴的な構成を採用し、また、ハウジング5が特徴的な支持構造でメス型端子10を支持する。
【0017】
[メス型端子10]
メス型端子10は、図1に示すように、第1メス端子11と、第2メス端子12と、第1メス端子11と第2メス端子12とを繋ぐ連結バネ20とから構成される。メス型端子10は、銅、銅合金のように高導電性の金属板に切断及び折り曲げを施すことにより、第1メス端子11と、第2メス端子12と、連結バネ20とが、一体的に形成されている。同じ形状及び寸法(仕様)に作製されている第1メス端子11と第2メス端子12は、第1オス型端子3,4との挿抜方向Aの位置をずらして、連結バネ20により繋がれている。詳しくは後述するが、このようにして連結バネ20により繋がれることで、第1メス端子11と第2メス端子12は独立して変位することができる。
【0018】
第1メス端子11は、第1オス型端子3が挿入される受容口14が一端側に開口されたボックス状の端子本体13と、受容口14から挿入される第1オス型端子3を収容する受容キャビティ15と、を備える。端子本体13の他端側は、連結バネ20が一体的に接続されている。受容キャビティ15の内部には、図2,4に示される端子本体13の内壁に向けて挿入された第1オス型端子3を押し付ける主リーフ16と従リーフ17が設けられている。なお、図2において、主リーフ16は、第1オス型端子3が挿入されていない無負荷状態の位置に描かれているために、第1オス型端子3と重なっている。
端子本体13の外壁には、係止突起18が形成されている。係止突起18は、メス型端子10がハウジング5に装着された状態で、ハウジング5に係止されることでハウジング5に対するメス型端子10の位置決め及び抜け止めを担う。
【0019】
第2メス端子12は、第1メス端子11と同じ仕様を有しているため、第1メス端子11と同じ構成要素には同じ符号を付することで、その説明を省略する。ただし、前述したように、第1メス端子11と第2メス端子12は挿抜方向Aの位置をずらして配置されている。より具体的には、メス型端子10がハウジング5に装着されると、第2メス端子12が第1メス端子11よりも回路基板6に近い位置に配置される。また、第1メス端子11と第2メス端子12は、お互いの係止突起18が外側を向き、かつ、主リーフ16及び従リーフ17が内側で対向するように逆向きに配置される。さらに、第2メス端子12の係止突起18は、後述するように、第オス型端子と第2メス端子12を嵌合させる際に機能する。
【0020】
第1メス端子11と第2メス端子12を繋ぐ連結バネ20は、一対の柱状部21,22と、柱状部21,22の先端同士を繋ぐ梁部23と、を備えている。電気コネクタ1が振動を受けた際に、第1メス端子11と第2メス端子12が独立して変位できるように、連結バネ20は弱い力で弾性変形するように配慮されている。
【0021】
柱状部21は、第1メス端子11の他端側に一体的に接続され、挿抜方向Aに延設されている。同様に柱状部22は、第2メス端子12の他端側に一体的に接続され、挿抜方向Aに延設されている。ただし、柱状部21よりも柱状部22の延接長を長くすることで、第1メス端子11と第2メス端子12を挿抜方向Aの位置をずらしている。柱状部21,22は、挿抜方向Aに沿って形成されているため、挿抜方向Aと直交する幅方向B(図1)に主に撓むことになる。柱状部21,22は、第1メス端子11,第2メス端子12と接続される根元部分を細くすることで、振動が加わったときに、容易に撓むようにしている。
【0022】
梁部23は、S字状に形成することでバネ定数を小さくして、主に挿抜方向Aに容易に撓むことができる。メス型端子10がハウジング5に装着されると、第1メス端子11はハウジング5に対して固定、拘束されるが、第2メス端子12はハウジング5に拘束されずに自由状態となるので、梁部23は、柱状部21との接続端を固定端とする片持ち梁として機能する。
【0023】
[第1オス型端子3,4]
タブ形状の第1オス型端子3,4は、図2に示されるように、各々、第1メス端子11、第2メス端子12と嵌合される。
L字形状の第1オス型端子3は、回路基板6の表面7に固定される。固定は、例えばはんだ付け(図示省略)により行なわれる。また、真直状の第2オス型端子4は、図示を省略する電気機器に固定される。この電気機器は、回路基板6と機械的な拘束関係を有していない。したがって、この電気機器と回路基板6とを備える上位のデバイスが振動したとすると、電気機器と回路基板6とは振動形態が相違するので、第1オス型端子3と第2オス型端子4の振動形態も相違することになる。
【0024】
第1オス型端子3は、その先端側が第1メス端子11の受容キャビティ15に挿入されることで、第1メス端子11と電気的に接触される。弾性変形する主リーフ16及び従リーフ17から押圧力を受ける第1オス型端子3は端子本体13の内壁に押し付けられることで、第1メス端子11と第1オス型端子3の電気的な接触が維持される。
第2オス型端子4も同様に、その先端側が第2メス端子12の受容キャビティ15に挿入されることで、第1メス端子11と電気的に接触し、主リーフ16及び従リーフ17から押圧力を受けることで、第2メス端子12との電気的な接触が維持される。回路基板6には表裏を貫通する挿通孔8が形成されており、第2オス型端子4はそこを通って受容キャビティ15に挿入される。
【0025】
ここで、第1オス型端子3と第1メス端子11の電気的な接触を安定して維持するためには、電気コネクタ1を使用している間に、第1メス端子11と第1オス型端子3が接触する位置が維持されることが望まれる。位置ずれを起すと、第1メス端子11と第1オス型端子3の接触面の摩耗に伴う接触荷重の不足によって、電気的な接触を維持することができなくなるからである。第2オス型端子4と第2メス端子12についても同様である。
【0026】
[ハウジング5]
ハウジング5は、図2図3に示されるように、回路基板6上に固定され、かつ、メス型端子10を内部に収容する。
本実施形態におけるハウジング5は、第1ハウジング30、第2ハウジング40及び第3ハウジング40という3つの要素からなる。なお、ハウジング5は、回路基板6の側から、第1ハウジング30、第2ハウジング40及び第3ハウジング50の順に装着される。なお、これらのハウジング要素は、絶縁性の樹脂を射出成形することで作製される。
【0027】
[第1ハウジング30]
第1ハウジング30は、図2図4に示されるように、概ねキャップ(cap)を上下逆さまにした形状を有しており、回路基板6に対向する端子保持床31と、端子保持床31の周縁から立ち上る側壁35と、端子保持床31と側壁35に取り囲まれる収容凹部36(図3)と、を備えている。
【0028】
端子保持床31には、第1オス型端子3が挿通される挿通孔32と、第2オス型端子4が挿通される挿通孔33と、が形成されている。挿通孔32は、第1オス型端子3が圧入されるように、その開口寸法が設定される。一方、挿通孔33は、挿通される第2オス型端子4との間に遊び(クリアランス)を有するように、その開口径が設定される。なお、遊びを有して孔に挿通することを、以下では遊嵌と称する。第1オス型端子3が十分な力で端子保持床31に保持されるように、端子保持床31は、挿通孔32が形成される部分は挿通孔33が形成される部分よりも厚く形成されている。また、この厚さの差異は、第1メス端子11と第2メス端子12の位置ずれ量に対応している。
【0029】
端子保持床31の底面には、第1ハウジング30を回路基板6の表面7に固定するためのペグ34が設けられている。ペグ34を表面7にはんだ付けすることにより、第1ハウジング30は回路基板6に固定される。
【0030】
収容凹部36の内部には、端子保持床31を貫通する第1オス型端子3及び第2オス型端子4と、これらと嵌合されるメス型端子10と、が収容される。また、収容凹部36の内部には、メス型端子10を保持する第2ハウジング40と第3ハウジング50が収容され、これらハウジングは第1ハウジング30に対して固定される。
【0031】
[第2ハウジング40]
第2ハウジング40は、図2図4に示されるように、第1ハウジング30の端子保持床31に対向する底床41と、底床41の周囲から立ち上る側壁45と、底床41と側壁45に取り囲まれる領域を2つの収容凹部47,48に区切る仕切り46と、を備えている。
底床41には、第1オス型端子3が挿通される挿通孔42と、第2オス型端子4が挿通される挿通孔43と、が形成されている。第1オス型端子3は挿通孔42に、また、第2オス型端子4は挿通孔43に、遊嵌される。
【0032】
収容凹部47には第1メス端子11が、また、収容凹部48には第2メス端子12が収容される。
第1メス端子11は、受容口14が形成される一端(下端)が底床41に接するとともに、係止突起18が側壁45の上端に係止されることで、第2ハウジング40に保持される。
一方、第2メス端子12は、受容口14が形成される一端(下端)が底床41から離れており、かつその周囲には側壁45及び仕切り4との間に遊びが設けられている。また、第2メス端子12の係止突起18は、収容凹部48に接する側壁45の上端との間に隙間が設けられている。したがって、第2メス端子12は連結バネ20を介して収容凹部48の内部に宙吊りにされている。
【0033】
[第3ハウジング50]
第3ハウジング50は、図2に示されるように、概ねキャップ(cap)状の形状を有しており、メス型端子10、第1オス型端子3、第2オス型端子4を含む、第1ハウジング30及び第2ハウジング40の上部を覆うように、第1ハウジング30に装着される。なお、図示は省略されているが、第1ハウジング30に形成されるロック片と第3ハウジング50に形成されるロック片が係合されることで、第3ハウジング50は第1ハウジング30から抜け止めされている。
【0034】
第3ハウジング50は、天井51と、天井51の周囲から垂れ下がる側壁52(52A,52B)と、天井51と側壁52に取り囲まれる収容凹部53と、を備えている。
第3ハウジング50が装着された状態で、側壁52Aは下端が第1メス端子11の係止突起18に接触する。したがって、第1メス端子11は、係止突起18が第2ハウジング40の側壁45と第3ハウジング50の側壁52Aにより上下から挟まれることで、ハウジング5に対して固定される。ハウジング5は第1ハウジング30が回路基板6の表面7に固定されるので、第1メス端子11は回路基板6に固定されているのと等しい。
【0035】
一方、第3ハウジング50が装着された状態で、側壁52Bの下端と第2メス端子12の係止突起18との間に間隙が設けられている。したがって、この状態では、第2メス端子12の係止突起18は、機械的な拘束を受けない。
収容凹部53の内部には連結バネ20が収容されるが、天井51と側壁52は微小の間隔を隔てて連結バネ20に沿って設けられている。側壁52Bと交差する天井51には水平方向に突出する押圧突起54が形成されている。押圧突起54は、第オス型端子と第2メス端子12を嵌合させる際に用いる。
押圧突起54を下向きに押すと、天井51が反時計回りに撓むのに伴い、側壁52Bが下向きに変位して第2メス端子12の係止突起18に接触する。そこからさらに押圧突起54を下向きに押すと、係止突起18が側壁45Bの上端に突き当たるまで変位する。このようにして第2メス端子12を一時的に拘束した状態で、第2オス型端子4と第2メス端子12の嵌合を行なう。この嵌合の作業が終わったならば、押圧突起54を押すのをやめて、第2メス端子12を機械的な拘束を受けない状態に戻す。

【0036】
以上の構成を備える電気コネクタ1の作用・効果を以下説明する。
第1メス端子11はハウジング5に固定されているのに対して、連結バネ20を介して、第2メス端子12は宙吊りにされている。つまり、第1メス端子11が振動を受けてハウジング5とともに変位したとしても、第2メス端子12はハウジング5の振動に追従して変位するとは限らない。しかるに、本実施形態では、第2メス端子12と第2オス型端子4の挿抜力F2は連結バネ20が弾性変形するのに要する負荷F1を超えるので、第2メス端子12と第2オス型端子4は接触位置を維持したままで、変位することができる。このように、第1メス端子11と第2メス端子12は、相対的に独立して変位することができるので、第1メス端子11が固定される回路基板6と、第2メス端子12が固定される電子機器(図示省略)との振動形態が異なっているとしても、ともにオス型端子との接触位置を維持しながら回路基板6と電子機器の各々の振動形態に同調して振動することができる。したがって、電気コネクタ1は、異なる振動形態を有する機器類に固定されるオス型端子と接触されても、オス型端子とメス型端子の電気的な接触を安定して維持できる。
【0037】
電気コネクタ1は、第1メス端子11と第2メス端子12が、挿抜方向に位置がずれて配置される。
そうすることで、第1メス端子11に第1オス型端子3が嵌合されるタイミングと、第2メス端子12に第2オス型端子4が嵌合されるタイミングとがずれる。したがって、第1メス端子11と第2メス端子12が挿抜方向の同じ位置に配置されるのに比べて、同じ時点に必要な嵌合力を低減できる。
また、第1メス端子11と第2メス端子12を挿抜方向の位置をずらしているので、異なる長さの第1オス型端子3、第2オス型端子4を接続することができる。
さらに、回路基板6に近い側の第2メス端子12においては、主リーフ16と第2オス型端子4との接触点よりも第2メス端子12の他端側までの距離を必要に応じて長くできるので、第2オス型端子4と第2メス端子12における有効接触長を確保するのが容易である。
【0038】
電気コネクタ1は、コネクタとして使用されているときには第2メス端子12が宙吊りになっているが、第2オス型端子4との嵌合時には押圧突起54を操作することで一時的に機械的な拘束ができるので、第2メス端子12と第2オス型端子4との嵌合を確実に行なうことができる。
【0039】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
連結バネ20の形態は一例にすぎず、上記した効果が得られるのであれば、他の形状、寸法を採用してもよい。例えば、梁部23はS字状ではなく直線状であってもよいし、一対の柱状部21,22の長さを等しくしてもよい。この場合に、第1メス端子11と第2メス端子12は、挿抜方向の位置が一致することになる。
本実施形態では、第1メス端子11と第2メス端子12が同じ仕様を有しているが、異なる仕様の2つのメス端子を用いることを本発明は許容する。
また、本実施形態では、2つのメス端子を連結バネ20で繋いだ例を示しているが、3つ以上のメス端子をバネで繋ぐこともできる。この場合、グループαに属する1又は複数のメス端子とグループβに属する1又は複数のメス端子とがあり、グループαとグループβは振動形態が異なるものとすると、グループα及びグループβの一方がハウジングに固定され、グループα及びグループβの他方がハウジングに拘束されないようにする。
さらに、本実施形態では、ボックスタイプのメス型端子、タブタイプのオス型端子の例を示したが、他のタイプのメス型端子、オス型端子に本発明を適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電気コネクタ
3 第1オス型端子
4 第2オス型端子
5 ハウジング
6 回路基板
7 表面
8 挿通孔
10 メス型端子
11 第1メス端子
12 第2メス端子
13 端子本体
14 受容口
15 受容キャビティ
16 主リーフ
17 従リーフ
18 係止突起
20 連結バネ
21,22 柱状部
23 梁部
30 第1ハウジング
31 端子保持床
32,33 挿通孔
34 ペグ
35 側壁
36 収容凹部
40 第2ハウジング
41 底床
42,43 挿通孔
45 側壁
47,48 収容凹部
50 第3ハウジング
51 天井
52,52A,52B 側壁
53 収容凹部
54 押圧突起
A 挿抜方向
B 幅方向
図1
図2
図3
図4