特許第5964682号(P5964682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964682伝送装置、伝送装置の制御方法及び伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964682
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】伝送装置、伝送装置の制御方法及び伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H04L12/28 400
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-166100(P2012-166100)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-27471(P2014-27471A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章浩
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−033665(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/075403(WO,A1)
【文献】 特開2006−339956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンクパススルー制御を行う機能を備えた第1の装置と接続された第1のインタフェースと、
第2の装置と接続された第2のインタフェースと、
リンクパススルー制御を行う機能を備え、前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出すると第1の障害発生通知を前記第1のインタフェースから送信するとともに、前記第1のインタフェースにおいて前記第1の装置が回線の障害を検出したことを示す第2の障害発生通知を前記第1の装置から受信した際に前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出している場合、又は前記第1のインタフェースにおいて前記第2の障害発生通知及び前記第1の装置においてリンクパススルー制御が実行されたことを示す第1のリンクパススルー発生通知を受信した場合には、前記第2のインタフェースに対するリンクパススルー制御を実施しない制御部と、
を備え
前記制御部は、前記第2の障害発生通知に基づいて前記第2のインタフェースに対してリンクパススルー制御を実施している場合には、前記第1の障害発生通知及び第2のリンクパススルー発生通知を前記第1の装置へ送信する、伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載された伝送装置が対向して接続された、伝送システム。
【請求項3】
第2の装置と接続された第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出すると第1の障害発生通知を第1のインタフェースから第1の装置に送信し、
前記第1の装置が回線の障害を検出したことを示す第2の障害発生通知を受信した際に前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出している場合、又は、前記第1のインタフェースにおいて前記第2の障害発生通知を受信した際に前記第1の装置においてリンクパススルー制御が実行されたことを示すリンクパススルー発生通知を前記第1の装置から受信した場合には、前記第2のインタフェースに対するリンクパススルー制御を実施せず、
前記第2の障害発生通知に基づいて前記第2のインタフェースに対してリンクパススルー制御を実施している場合には、前記第1の障害発生通知及び第2のリンクパススルー発生通知を前記第1の装置へ送信する、
伝送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置、伝送装置の制御方法及び伝送システムに関し、特に、リンクパススルー機能を備えた伝送装置、伝送装置の制御方法及び伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の伝送装置が直列に接続されたネットワークにおいて、伝送装置間のある区間のリンク断を他の伝送装置に伝達する機能として、リンクパススルー機能が知られている。リンクパススルー機能とは、2つの回線の間で信号を中継する伝送装置の一方の回線において回線障害が検出された場合に、伝送装置が他方の回線とのリンクを切断する機能である。リンクの切断は、例えば伝送装置が他方の回線へのデータの送出を停止することで行われる。
【0003】
本発明に関連する、リンクパススルー機能を備えた伝送システムの構成を図9に示す。図9に示す伝送システム500は、スイッチ1及び2、伝送装置53〜56を備える。伝送装置53〜56は、リンクパススルー機能を備える。スイッチ1とスイッチ2との間の回線は、回線1、回線2によって二重化されており、スイッチ1に入出力されるデータ信号は、回線1あるいは回線2のいずれかを経由してスイッチ2へ伝送される。
【0004】
回線1には、ローカル側(スイッチ1側)に伝送装置53、リモート側(スイッチ2側)に伝送装置54が接続されている。回線2には、ローカル側(スイッチ1側)に伝送装置55、リモート側(スイッチ2側)に伝送装置56が接続されている。ローカル側とリモート側とで各装置の構成は対称である。スイッチ1及びスイッチ2を同時に同じ回線側に切り替えることで、回線1と回線2とを切り替えることができる。
【0005】
図9の伝送システム500におけるリンクパススルー機能の動作を図10図11図12を用いて説明する。図10はローカル側の伝送装置53とスイッチ1との間の回線で障害が発生した場合、図11はリモート側の伝送装置54とスイッチ2との間の回線で障害が発生した場合、図12はローカル側の伝送装置53とリモート側の伝送装置54との間の回線で障害が発生した場合のリンクパススルー機能の動作を示す図である。
【0006】
まず、図10について説明する。図10において、ローカル側装置である伝送装置53は、スイッチ1と伝送装置53との間の回線に障害が発生すると、障害発生通知を伝送装置54に送信する。また、スイッチ1は、回線の障害を検出すると経路を回線2側に切り替える。スイッチ1、2及び伝送装置53〜56における回線の障害の検出は、例えば入力信号が断となることで行ってもよい。一方、伝送装置54は、伝送装置53から障害発生通知を受信するとリンクパススルー機能に基づく制御(リンクパススルー制御)を行い、伝送装置54からスイッチ2へのデータの送出を停止し、リンクを切断する。スイッチ2は伝送装置54との間のリンクが断となったことを検出すると、経路を回線1から回線2に切り替える。このようにして、回線1で障害が発生するとスイッチ1、2は経路を回線2に切り替えることができる。
【0007】
次に、図11について説明する。図11において、リモート側装置である伝送装置54は、伝送装置54とスイッチ2との間で回線に障害が発生すると、障害発生通知を伝送装置53に送信する。また、スイッチ2は伝送装置54との間の回線の障害を検出すると経路を回線2側に切り替える。伝送装置53は伝送装置54から障害発生通知を受信するとリンクパススルー制御を行い、スイッチ1と伝送装置53との間のリンクを切断する。スイッチ1は伝送装置53との間のリンクが断となったことを検出すると、経路を回線1から回線2に切り替える。このようにして、図11の場合も、回線1で障害が発生するとスイッチ1、2は経路を回線2に切り替えることができる。
【0008】
続いて、図12について説明する。図12は、ローカル側装置である伝送装置53とリモート側装置である伝送装置54との間で障害が発生した場合を示す。この場合、伝送装置53、54は、いずれも、スイッチ1又は2の反対側で対向する装置と自装置との間で障害が発生したことを認識する。ここで、伝送装置53及び54は障害発生通知を受信した場合と同様にそれぞれリンクパススルー制御を行い、それぞれ伝送装置53とスイッチ1との間及び伝送装置54とスイッチ2との間のリンクを切断する。スイッチ1、2は伝送装置53又は伝送装置54との間のリンクが断となったことを検出すると、経路を回線1から回線2に切り替える。このようにして、図12の場合も、回線1で障害が発生するとスイッチ1、2は経路を回線2に切り替えることができる。
【0009】
このように、図10図11図12いずれの場合も、伝送装置53、54のリンクパススルー機能によりスイッチ1、2は両スイッチ間の経路上で障害が発生したことを自スイッチにリンク断が発生することで認識できる。その結果、伝送システム500は冗長回線である回線2への経路切り替えを行うことができる。
【0010】
なお、特許文献1、2は、リンクパススルー機能を備えた伝送装置を含むシステムの構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−100086号公報
【特許文献2】特開2011−055381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図13は、本発明に関連する、リンクパススルー機能を備えた伝送システムのリンク切断後の動作を説明するための図である。図13には、回線切り替え前に運用されていたスイッチ1、2の回線1側と、伝送装置53、54のみが記載されている。
【0013】
まず伝送装置53がスイッチ1との間に障害発生を検出し、伝送装置54に障害発生通知を送信する。伝送装置54は受信した障害発生通知によりリンクパススルー制御を行い、伝送装置54とスイッチ2との間のリンクを切断する。スイッチ2との間のリンクが断となった時点で、伝送装置54は、リンク断による障害発生通知を伝送装置53に対して送信する。
【0014】
ここで、伝送装置53は、伝送装置54から障害発生通知を受信したことによりリンクパススルー制御を行い、伝送装置53からスイッチ1へのデータの送出を停止する。すなわち、伝送装置53は、自身が検出した障害が原因で対向する装置54で発生したリンクパススルー制御によって、スイッチ1との間の回線に対して2次的なリンクパススルー制御を行うことになる。
【0015】
続いて図14を用いて、2次的なリンクパススルー制御により伝送システム500がデッドロック状態となる場合の動作を説明する。スイッチ1と伝送装置53との間の障害が復旧した後も、伝送装置53は伝送装置54から受信した障害発生通知によるリンクパススルー制御により、スイッチ1と伝送装置53との間のリンクを切断状態のまま維持している。このため、障害が復旧しても、伝送装置53は障害復旧通知を伝送装置54に送信しない。伝送装置54は、スイッチ1と伝送装置53との間の障害が復旧しているにもかかわらず伝送装置53から障害復旧通知を受信しないため、伝送装置54のリンクパススルー制御は解除されず、伝送装置54とスイッチ2との間のリンクも復旧しない。そして、伝送装置54とスイッチ2との間のリンクが復旧しないので、伝送装置54は、伝送装置53へ障害復旧通知を送信しない。このため、伝送装置53のリンクパススルー制御も解除されず、伝送装置53とスイッチ1との間のリンクも復旧しない。すなわち、伝送装置53と伝送装置54とはリンク断状態から抜け出せないデッドロック状態になる。
【0016】
一般に、伝送装置がデッドロック状態に陥るとその伝送装置により構成されているシステムも正常に機能しなくなるため、伝送システム全体の再起動が必要となる可能性もある。また、ひとたびデッドロック状態に陥った伝送装置を再起動するためには、伝送装置の管理が可能な場所まで保守員を派遣させるなどの作業も発生する。
【0017】
このように、リンクパススルー制御においては、対向している装置間で互いにリンクパススルー制御が行われることによりデッドロック状態に陥り、リンク断状態から復旧できなくなる場合があるという課題がある。そして、特許文献1、2はこのような課題を解決するための手段を開示していない。
【0018】
本発明は、リンクパススルー機能を備えた伝送装置を含む伝送システムにおいて、回線に障害が発生してもデッドロック状態に陥ることを防ぐという課題を解決するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の伝送装置は、リンクパススルー制御を行う機能を備えた第1の装置と接続された第1のインタフェースと、第2の装置と接続された第2のインタフェースと、リンクパススルー制御を行う機能を備え、前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出すると第1の障害発生通知を前記第1のインタフェースから送信するとともに、前記第1のインタフェースにおいて前記第1の装置が回線の障害を検出したことを示す第2の障害発生通知を前記第1の装置から受信した際に前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出している場合、又は前記第1のインタフェースにおいて前記第2の障害発生通知及び前記第1の装置においてリンクパススルー制御が実行されたことを示す第1のリンクパススルー発生通知を受信した場合には、前記第2のインタフェースに対するリンクパススルー制御を実施しない制御部と、を備える。
【0020】
本発明の伝送装置の制御方法は、第2の装置と接続された第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出すると第1の障害発生通知を第1のインタフェースから第1の装置に送信し、前記第1の装置が回線の障害を検出したことを示す第2の障害発生通知を受信した際に前記第2のインタフェースと前記第2の装置との間の回線の障害を検出している場合、又は、前記第1のインタフェースにおいて前記第2の障害発生通知を受信した際に前記第1の装置においてリンクパススルー制御が実行されたことを示すリンクパススルー発生通知を前記第1の装置から受信した場合には、前記第2のインタフェースに対するリンクパススルー制御を実施しない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、リンクパススルー機能を備えた伝送装置を含む伝送システムにおいて、デッドロック状態に陥ることを防ぐことを可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態の伝送システムの構成を示す図。
図2】第1の実施形態の伝送システムにおけるリンクパススルー動作を説明するための図。
図3】第1の実施形態の伝送システムにおけるリンクパススルー動作を説明するための図。
図4】第1の実施形態の伝送装置の動作を示すフローチャート。
図5】第2の実施形態の伝送システムの構成を示す図。
図6】第2の実施形態の伝送システムの動作を説明するための図。
図7】第2の実施形態の伝送システムに用いられる伝送装置の動作を示すフローチャート。
図8】第3の実施形態の伝送装置の構成を示す図。
図9】本発明に関連する、リンクパススルー機能を備えた伝送システムの構成を示す図。
図10】ローカル側の伝送装置とスイッチとの間の回線で障害が発生した場合のリンクパススルー機能の動作を示す図。
図11】リモート側の伝送装置とスイッチとの間の回線で障害が発生した場合のリンクパススルー機能の動作を示す図。
図12】ローカル側の伝送装置とリモート側の伝送装置との間の回線で障害が発生した場合のリンクパススルー機能の動作を示す図。
図13】本発明に関連する、リンクパススルー機能を備えた伝送システムのリンク切断後の動作を説明するための図。
図14】伝送システムがデッドロック状態となる場合の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の伝送システムの構成について図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の伝送システムの構成を示す図である。
【0024】
図1に示す伝送システム100は、回線1、回線2によるネットワークの二重化が図られている。回線1、回線2はスイッチ1、スイッチ2により切り替えが可能である。回線1、回線2にはそれぞれローカル側(スイッチ1側)に伝送装置3及び5、リモート側(スイッチ2側)に伝送装置4及び6が接続されている。ローカル側とリモート側とで各装置の構成は対称である。伝送装置3〜6はリンクパススルー機能を備えるとともに、スイッチ1又はスイッチ2側及び対向する伝送装置側にそれぞれインタフェースを備えている。
【0025】
伝送装置3〜6は、例えば電気信号と光信号とを相互に変換するメディアコンバータである。伝送装置3〜6としてメディアコンバータを用いることにより、スイッチ1と伝送装置3、5との間、及び、スイッチ2と伝送装置4、6との間を電気信号で伝送し、伝送装置3と伝送装置4との間、及び、伝送装置5と伝送装置6との間を光信号で伝送するように伝送システム100を構築できる。このような構成により、スイッチ1とスイッチ2との間の伝送距離を大幅に延長することができる。
【0026】
(第1の実施形態の動作の説明)
図1に示す伝送システム100におけるリンクパススルー制御時の基本的な動作は、図10図12を用いて伝送システム500について既に説明した動作と同様である。
【0027】
第1の実施形態の伝送システム100が備える伝送装置3〜6は、伝送システム500が備える伝送装置53〜56の機能に加えて、リンクパススルー機能によるデッドロック状態を回避するための機能を備える。伝送装置3〜6を備える伝送システム100において、デッドロック状態が回避される動作を図2図3を用いて説明する。
【0028】
図2及び図3は、図1に示した第1の実施形態の伝送システム100におけるリンクパススルー動作を説明するための図である。図2及び図3は、伝送システム100のうち回線1側のみを記載している。
【0029】
図2において、スイッチ1と伝送装置3との間の回線に障害が発生したとする。伝送装置3はスイッチ1との間の障害発生を検出し、伝送装置4に障害発生通知を送信する。伝送装置4は受信した障害発生通知によりリンクパススルー制御を行い、スイッチ2へのデータの送出を停止することでスイッチ2との間のリンクを切断する。なお、スイッチ2は伝送装置4との間のリンクが切断されたことにより、データの伝送を行う回線を回線1から図示されない回線2へ切り替える。
【0030】
スイッチ2とのリンクが断となると、伝送装置4はリンク断による障害発生通知を伝送装置3に対して送信する。ここで、本実施形態の伝送装置3は、自装置が障害を検出している場合には、対向する伝送装置4から障害発生通知を受信してもリンクパススルー制御を行わない。図2においては、伝送装置3はスイッチ1との間の回線の障害を検出しているため、伝送装置4から障害発生通知を受信した場合でもリンクパススルー制御を行わない。すなわち、伝送装置3は、スイッチ1へのデータの送出を停止しない。このため、リンクパススルー制御によるスイッチ1と伝送装置3との間のリンクの切断は行われない。
【0031】
図3は、図2の状態に続いて、伝送装置3とスイッチ1との間の障害が復旧した場合の動作を示す図である。図2で説明したように、伝送装置3は伝送装置4から障害発生通知を受信しているが、リンクパススルー制御によるスイッチ1と伝送装置3との間のリンクの切断は行わない。このため、スイッチ1と伝送装置3との間の回線の障害が復旧すると、スイッチ1と伝送装置3との間のリンクも復旧する。スイッチ1と伝送装置3との間の障害が復旧すると、伝送装置3は伝送装置4に対して障害復旧通知を送信する。伝送装置4は受信した障害復旧通知によりスイッチ2との間のリンクパススルー制御を解除し、スイッチ2との間のリンクを復旧する。伝送装置4は、スイッチ2との間のリンクが復旧すると伝送装置3に対して障害復旧通知を送信する。ただし、伝送装置3はリンクパススルー制御を行っていないので、伝送装置4から障害復旧通知を受信しても伝送装置3はリンクパススルー機能に関連する制御を行わない。
【0032】
なお、スイッチ1、2と伝送装置3、4とのそれぞれのリンクが復旧した場合にはスイッチ1、2はデータを伝送する回線を回線2から回線1に切り戻してもよい。
【0033】
図2及び図3で説明した動作を行う伝送装置の動作フローを、図4の伝送装置の動作を示すフローチャートを用いて説明する。以下では図1に記載された伝送装置を例として動作フローを説明する。図4に示す動作フローは伝送装置3〜6のいずれにも共通である。
【0034】
まず、伝送装置は、自身にリンクパススルー制御の原因が発生しているかどうかを確認する。つまり、接続された回線の障害を伝送装置が検出しているかどうかを確認する(図4のステップS1)。接続された回線の障害を伝送装置が検出していていない場合(ステップS1:No)に対向装置(例えば伝送装置3に対する伝送装置4)で障害が発生した場合(ステップS2:Yes)は、その障害発生通知は自身の障害に起因するものではないため、伝送装置は対向装置から受信する障害発生通知によってリンクパススルー制御を行う(ステップS3)。対向装置での障害の発生は、自装置が対向装置から障害発生通知を受信することで知ることができる。
【0035】
一方、伝送装置自身で障害が検出されている場合(ステップS1:Yes)は、その障害発生通知を受信した対向装置がリンクパススルー制御を行う。その結果、伝送装置は対向装置から障害発生通知を受信する。ここで、伝送装置自身が障害を検出している場合に対向装置から受信する障害発生通知は、自身の障害が原因となり対向装置がリンクパススルー制御を行った結果発生したリンク断による可能性が高い。このため、対向装置から障害発生通知を受信しても伝送装置はリンクパススルー制御を行わない。これにより、伝送装置3は2次的なリンクパススルー制御を回避することになる。
【0036】
その後、伝送装置3自身の障害が復旧しスイッチ1との間のリンクも復旧した後(ステップS10:Yes、ステップS11:Yes)、所定の保護時間が経過した時点で(ステップS12)フローはステップS1に戻る。このように、自身で障害発生を検出した伝送装置は、自装置の障害が復旧しリンクが回復し保護時間が経過するまではリンクパススルー制御に関しては何も行わない。
【0037】
ここで、ステップS12における保護時間とは、障害の原因となった装置(原因装置)がリンク復旧による障害復旧通知を対向装置に送信し、対向装置がリンクパススルー制御を解除し、対向装置のリンクが復旧し、原因装置が対向装置から障害復旧通知を受信するまでに要する合計の時間である。
【0038】
ステップS12の後、伝送装置自身に障害がなく(ステップS1:No)、対向装置で障害が生じた場合(ステップS2:Yes)は、対向装置で障害が発生した可能性が高い。このため、伝送装置はリンクパススルー制御を実施し(ステップS3)スイッチ1との間のリンクを切断する。
【0039】
ステップS3以降は、自装置に障害がない場合に、対向装置から障害発生通知を受信した場合の動作である。ステップS3においてリンクパススルー制御を実施したことにより伝送装置がスイッチ1との間のリンク断を検出すると(ステップS4:Yes)、伝送装置は対向装置(伝送装置4)へ障害発生通知を送信する(ステップS5)。
【0040】
その後、対向装置から受信していた障害発生通知が解除されると(ステップS6:No)、伝送装置はリンクパススルー制御を解除する(ステップS7)。伝送装置3のリンクパススルー制御の解除によりリンクが復旧すると(ステップS8:Yes)、伝送装置は対向装置へ障害復旧通知を送信し(ステップS9)、ステップS1へ戻る。
【0041】
このように、第1の実施形態の伝送システム100では、障害を検出している伝送装置は、自身の障害が復旧するまでの間は、対向する伝送装置からの障害発生通知を受信した場合においてもリンクパススルー制御を実施しない。その結果、第1の実施形態の伝送システム100では、リンクパススルー制御の原因となった障害が復旧すると、伝送装置がデッドロック状態に陥ることなくリンクが復旧する。
【0042】
以上説明したように、第1の実施形態の伝送システム100は、リンクパススルー機能を備えた伝送装置が対向したシステムにおいて、デッドロック状態に陥ることなくリンク断状態からの復旧を可能とするという効果を奏する。そして、第1の実施形態の伝送システムは、伝送装置がデッドロック状態に陥ることなく安定して運用することができるので、伝送装置を含めたネットワークの信頼性の向上にも貢献できるという効果も奏する。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の伝送システム100では、伝送装置3がスイッチ1との間の回線の障害を検出している場合に、対向する伝送装置4からの障害発生通知を受信した場合にはスイッチ1との間の回線に対するリンクパススルー制御を行わないようにしていた。第2の実施形態では、リンクパススルー制御を行っている対向する伝送装置は、障害発生通知を送信する際にリンクパススルー制御を行っていることを示す情報(リンクパススルー発生通知)を併せて送信する。障害発生通知を受信した伝送装置は、障害発生通知にリンクパススルー発生通知が含まれている場合には、リンクパススルー制御を行わない。
【0044】
図5は、第2の実施形態の伝送システムの構成を示す図である。第2の実施形態の伝送システム200の全体構成は図1に示した伝送システム100と基本的に同一である。すなわち、伝送システム200は、スイッチ1、2及び伝送装置23〜26を備える。伝送システム200は、伝送装置3〜6に代えて伝送装置23〜26を備える点のみ伝送システム100と相違する。
【0045】
図6を用いて第2の実施形態の伝送システム200の動作を説明する。図6は、本発明の第2の実施形態の伝送システム200の動作を説明するための図である。図6は、伝送システム200のうち回線1側のみを記載している。
【0046】
まず伝送装置23がスイッチ1との間に障害発生を検出し、伝送装置24に障害発生を通知する。伝送装置23はリンクパススルー制御を行っていないので、伝送装置24に対しては障害発生通知のみを通知し、リンクパススルー発生通知を送信しない。伝送装置24は、受信した障害発生通知にリンクパススルー発生通知が含まれていないことから、スイッチ2に対するリンクパススルー制御を行い、スイッチ2との間のリンクを切断する。スイッチ2との間のリンクが断となった時点で、伝送装置24は、リンク断による障害発生通知を伝送装置23に対して送信する。ここで、伝送装置24はリンクパススルー制御を実施しているため、伝送装置23に対してリンクパススルー発生通知を障害発生通知に含めて送信する。伝送装置23は、伝送装置24から受信した障害発生通知にリンクパススルー発生通知が含まれていることを検出するため、スイッチ1との間の回線に対してリンクパススルー制御によるリンクの切断を行わない。その結果、スイッチ1と伝送装置23との間の障害が復旧すると、スイッチ1と伝送装置23との間のリンクも復旧する。
【0047】
図7は、第2の実施形態の伝送システム200に用いられる伝送装置23〜26の動作を示すフローチャートである。以下では図5の構成を前提に伝送装置の動作フローを説明する。図7に示す動作フローは伝送装置23〜26のいずれにも共通である。
【0048】
伝送装置23は、対向装置(伝送装置24)から障害発生通知を受信すると(図7のステップS21:Yes)、リンクパススルー発生通知を受信しているかを確認する(ステップS22)。リンクパススルー発生通知を受信していなければ(ステップS22:No)、この障害発生通知は対向装置が原因で発生したものと判断できるので、伝送装置はリンクパススルー制御を行う(ステップS23)。一方、伝送装置が対向装置からリンクパススルー発生通知を受信していれば(ステップS22:Yes)、この障害発生通知は自装置の障害に起因して対向装置のリンクパススルー制御の結果として受信したものであると判断できる。リンクパススルー発生通知を受信している場合には、伝送装置は、対向装置から障害発生通知を受信してもリンクパススルー制御を行わない。これにより、2次的なリンクパススルー制御が回避される。
【0049】
伝送装置がリンクパススルー発生通知を受信しない場合(ステップS22:No)には、伝送装置はリンクパススルー制御(ステップS23)を行い自装置とスイッチ1との間のリンクを断とし(ステップS24:Yes)、対向装置へリンク断発生通知を送信する(ステップS25)。ここで、伝送装置はリンクパススルー制御を実施しているため、ステップS25においては対向装置に対してリンクパススルー発生通知も併せて送信する。
【0050】
対向装置から障害復旧通知を受信すると(ステップS26)、伝送装置はリンクパススルー制御を終了し(ステップS27)、伝送装置とスイッチ1との間のリンクの復旧を待つ(ステップS38)。スイッチ1との間のリンクが復旧すると(ステップS28:Yes)、対向装置へリンクの復旧を通知する(ステップS29)。
【0051】
以上説明したように、第2の実施形態の伝送システムにおいて、伝送装置は、自身がリンクパススルー制御を実施している場合には、対向装置に対してリンクパススルー発生通知を障害発生通知と併せて送信する。そして、リンクパススルー発生通知を受信した伝送装置はリンクパススルー制御を行わない。その結果、第2の実施形態の伝送システムは、2次的なリンクパススルー制御が行われないため、デッドロック状態に陥ることなくリンク断状態からの復旧を可能とするという効果を奏する。そして、第2の実施形態の伝送システムは、伝送装置がデッドロック状態に陥ることなく安定して運用することができるので、伝送装置を含めたネットワークの信頼性にも貢献できる。
【0052】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態の伝送装置の構成を示す図である。第3の実施形態の伝送装置300は、図示されない第1の装置と接続された第1のインタフェース301と、図示されない第2の装置と接続された第2のインタフェース302と、制御部303と、を備える。ここで、第1の装置は、リンクパススルー制御を行う機能(リンクパススルー機能)を備えている。
【0053】
制御部303は、第2のインタフェースと第2の装置との間の障害を検出すると、障害発生通知を第1の装置に送信する。そして、制御部303は、第1の装置からの障害発生通知を受信した際に自装置で障害が発生している場合には、第2のインタフェースと第2の装置との間のリンクを切断する。
【0054】
このような構成を備える伝送装置300は、以下のように動作する。すなわち、第2の装置との間のリンクが断となった場合、伝送装置300は、障害発生通知を第1の装置に送信する。その後、伝送装置300は、第1の装置から障害発生通知を受信すると、伝送装置300自身で第2の装置との間のリンク断が発生していることから、第2のインタフェース302と第2の装置との間のリンクを切断しない。
【0055】
自装置で障害が発生しているかどうかは、例えば、自装置が障害を検出しているかどうかによって知ることができる。あるいは、自装置の障害により対向装置がリンクパススルー制御を実施したことを示す通知を対向装置から受信したことによって、自装置で障害が発生していると判断してもよい。
【0056】
伝送装置300は、自装置で障害が発生している場合には、第2のインタフェース302と第2の装置との間のリンクを切断しない。これにより、第1の実施形態の図3で説明した動作と同様の動作により、第2のインタフェースの障害が復旧すると第2のインタフェース302と第2の装置との間のリンクが復旧する。
【0057】
従って、伝送装置300は、自装置の障害が復旧した際にデッドロック状態に陥ることなくリンク断状態からの復旧を可能とするという、第1及び第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0058】
また、第3の実施形態の伝送装置300の構成は、第1の実施形態で説明した伝送装置3〜6及び第2の実施形態で説明した伝送装置23〜26にも適用可能である。
【0059】
以上、第1〜第3の実施形態を用いて本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1、2 スイッチ
3〜6、23〜26、53〜56、300 伝送装置
100、200、500 伝送システム
301 第1のインタフェース
302 第2のインタフェース
303 制御部
図1
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