(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964693
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】物質捕集方法及び物質捕集装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20160721BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20160721BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B23K26/16
B23Q11/00 M
B08B5/00 A
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-179666(P2012-179666)
(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公開番号】特開2014-24117(P2014-24117A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】13/558,571
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、2012年2月23日にインベンテック コーポレーション(中華民国台北市)にて物質捕集装置を含む装置(モデルNo.5950)を販売
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ウィリー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン スパラ
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−84288(JP,A)
【文献】
特表2008−501531(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3143457(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0197909(US,A1)
【文献】
特開平9−141482(JP,A)
【文献】
特開2000−317670(JP,A)
【文献】
特開平11−254176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B08B 5/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの加工の結果として生じる該ワークピースからの物質を捕集する物質捕集装置であって、
流体流れを誘導するように構成された流体ノズルと、
前記流体流れの中に配置されるように構成された捕集ノズルと、
を備え、
前記捕集ノズルは、
前記流体流れの第1の部分を受け入れ、前記受け入れた第1の部分の流体流れを加速して加速流体流れを生成するように構成された誘因ノズルと、
前記加速流体流れを受け入れるように構成された排出チャンバと、
前記排出チャンバから前記加速流体流れを排出するように構成された排出口と、
前記流体流れの第2の部分を受け入れるように構成された誘導吸引ノズルと、
を備え、
前記誘導吸引ノズルは、前記排出チャンバと流体的に連通しており、
前記捕集ノズルは、前記加速流体流れが前記排出チャンバから排出される際に、前記排出チャンバ内の第1の静圧が前記誘導吸引ノズル内の第2の静圧よりも低くなるように構成されており、
前記第1の静圧と前記第2の静圧との差は、前記排出チャンバから前記誘導吸引ノズルを介して該誘導吸引ノズルの近傍にある捕集領域に伝達可能な吸引力を生成するのに十分であり、
前記捕集ノズルは、前記伝達可能な吸引力が、前記ワークピースが前記捕集領域に近接しているときに前記物質の少なくとも一部を前記ワークピースから引き離すのに十分なものとなるように構成されている、物質捕集装置。
【請求項2】
前記流体ノズルは、ガス状流体流れを誘導するように構成されている、請求項1に記載の物質捕集装置。
【請求項3】
前記流体ノズルは、空気を含むガス状流体流れを誘導するように構成されている、請求項2に記載の物質捕集装置。
【請求項4】
前記流体ノズルは、前記ワークピースの加工の結果として生じる物質の少なくとも一部を前記誘導された流体流れに乗せることができるように、前記流体流れを誘導するように構成されている、請求項1に記載の物質捕集装置。
【請求項5】
前記誘因ノズルは、さらに、前記誘導された流体流れに乗った物質を受け入れるように構成されている、請求項4に記載の物質捕集装置。
【請求項6】
処理領域を少なくとも部分的に囲うフェンスをさらに備え、
前記ワークピースは、機械により加工される際に前記処理領域を通してアクセス可能となっており、
前記フェンスは、流れに乗った物質を前記処理領域内に閉じ込めるように構成されている、請求項4に記載の物質捕集装置。
【請求項7】
前記フェンスは、前記流体流れを前記捕集ノズルに向けて案内するように構成されている、請求項6に記載の物質捕集装置。
【請求項8】
前記誘導吸引ノズルは、さらに、前記ワークピースの加工の結果として生じる物質を前記排出チャンバに送るように構成されている、請求項1に記載の物質捕集装置。
【請求項9】
前記排出口は、さらに、前記排出チャンバに送られた物質を排出するように構成されている、請求項8に記載の物質捕集装置。
【請求項10】
前記誘因ノズル、前記排出チャンバ、及び前記誘導吸引ノズルは一体に形成されている、請求項1に記載の物質捕集装置。
【請求項11】
ワークピースの加工の結果として生じる該ワークピースからの物質を捕集する物質捕集装置であって、
流体流れを誘導するように構成された流体ノズルと、
ハウジング入口と排出口とを有し、前記ハウジング入口及び前記排出口に流体的に連通している内部空間を規定するハウジングダクトと、
前記内部空間に配置されたデフレクタであって、前記内部空間を複数の領域に分割するデフレクタと、
を備え、
前記ハウジング入口は、流体と前記流体流れに乗った物質とを受け入れるように構成され、
前記排出口は、前記受け入れた流体を排出するように構成され、
前記複数の領域は、
前記流体流れの一部を受け入れるように構成された流体加速領域であって、第1の部分と、該第1の部分よりも小さくて前記排出口に近い第2の部分とを有する流体加速領域と、
前記流体流れの他の部分を受け入れるように構成された吸引領域であって、第3の部分と、該第3の部分よりも前記排出口に近い第4の部分とを有する吸引領域と、
前記流体加速領域の前記第2の部分と前記排出口との間に位置し、前記吸引領域の前記第4の部分と前記排出口との間に位置する流体減圧領域と、
を含み、
前記ハウジングダクト及び前記デフレクタは、流体流れが前記第2の部分から前記流体減圧領域に移動する際に前記第3の部分で吸引力を生成し、前記ワークピースが捕集領域に近接したときに、流体が前記排出口を介して前記ハウジングダクトから排出される際に前記第3の部分で吸引力を生成するように構成されている、物質捕集装置。
【請求項12】
前記受け入れた物質は前記排出口を介して排出可能である、請求項11に記載の物質捕集装置。
【請求項13】
前記デフレクタは前記ハウジングダクトに連結されている、請求項11に記載の物質捕集装置。
【請求項14】
物質が生じ得るように前記ワークピースを加工するように構成されている機械をさらに備え、
前記流体ノズルは、前記流体流れを処理領域に誘導するように構成されており、
前記捕集ノズルは、前記処理領域に隣接しており、
前記ワークピースは、前記加工する機械から前記処理領域を通してアクセス可能となっている、請求項1に記載の物質捕集装置。
【請求項15】
前記機械は、レーザエネルギーを有するビームを前記ワークピース上に向けるように構成されたレーザ系加工システムであり、
前記レーザエネルギーを有するビームは、前記ワークピースの一部を除去するように構成されている、請求項14に記載の物質捕集装置。
【請求項16】
ワークピースを加工する方法であって、
加工の結果として物質が生じるようにワークピースを加工し、
流体流れを誘導し、
前記流体流れの第1の部分を加速して加速流体流れを生成し、
前記物質を前記流体流れの第2の部分の内部に乗せ、
前記加速流体流れに基づいて吸引力を発生させ、
前記吸引力を前記流体流れの第2の部分に伝達して前記物質の少なくとも一部を前記ワークピースから引き離す、方法。
【請求項17】
前記ワークピースの加工において、レーザエネルギーを有するビームを前記ワークピースに向けて前記ワークピースを加工する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物質捕集装置は、前記排出口に流体的に連通する真空ポンプを含んでいない、請求項11に記載の物質捕集装置。
【請求項19】
前記機械は吹付加工機である、請求項14に記載の物質捕集装置。
【請求項20】
さらに、前記物質を前記流体流れの前記第2の部分に乗せる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において例示的に述べる本発明の実施形態は、概してワークピースを処理する際に生じる物質を捕集するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属、セラミック、ガラス、半導体材料等からなるワークピースを加工(切断、穿孔、研摩、研削、切除、成形、粉砕など)するために、機械ドリル、機械鋸、ラッチ、溝かんな、サンダー、吹付加工機、レーザドリル機、レーザ切断機、レーザフライス盤などの機械が用いられる。一般的には、そのような機械とワークピースの相互作用の結果として、蒸気や塵、それよりも大きな塵片のような副生物が生じる。減ることのないこれらの副生物は、ワークピースの表面に散らばったり、ワークピースの加工に使用している機械の上に堆積したり、周囲の空気の流れによって運ばれたりすることが多い。そのような副生物が適切に捕集されないと、加工されているワークピースの品質を損ねたり、ワークピースの加工の結果として生成される最終製品の品質を損ねたり、機械を汚染するか、その性能を損ねたりすることがあり、また、周囲の環境の全体的な大気清浄度を下げてしまうことがある。例えば、レーザ系システム(例えばレーザドリル機、レーザ切断機、レーザフライス盤など)を用いた加工の結果として生じる副生物は溶融していることが多い。溶融した物質が作業領域から適切に除去されない場合には、これらの物質がワークピースやレーザ系システムの光学系に付着し、レーザとワークピースの相互作用を妨げてしまうことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、ワークピースの加工の結果として生じる該ワークピースからの物質を捕集する物質捕集装置が提供される。この物質捕集装置は、流体流れを誘導するように構成された流体ノズルと、上記流体流れの中に配置されるように構成された捕集ノズルとを含んでいる。上記捕集ノズルは、上記流体流れの第1の部分を受け入れ、上記受け入れた第1の部分の流体流れを加速して加速流体流れを生成するように構成された誘因ノズルと、上記加速流体流れを受け入れるように構成された排出チャンバと、上記排出チャンバから上記加速流体流れを排出するように構成された排出口と、上記流体流れの第2の部分を受け入れるように構成された誘導吸引ノズルとを含んでいる。上記誘導吸引ノズルは、上記排出チャンバと流体的に連通している。上記捕集ノズルは、上記加速流体流れが上記排出チャンバから排出される際に、上記排出チャンバから上記誘導吸引ノズルの近傍にある捕集領域に吸引力を伝達できるように構成されている。上記捕集ノズルは、上記伝達可能な吸引力が、上記ワークピースが上記捕集領域に近接しているときに上記物質の少なくとも一部を上記ワークピースから引き離すのに十分なものとなるように構成されている。
【0004】
本発明の第2の態様によれば、ワークピースを加工するシステムが提供される。このシステムは、ワークピースの加工の結果として物質が生じ得るように上記ワークピースを加工するように構成されている機械と、流体流れを処理領域に誘導するように構成された流体ノズルと、上記処理領域に隣接した捕集ノズルとを含んでいる。上記ワークピースは、上記加工する機械から上記処理領域を通してアクセス可能となっている。上記捕集ノズルは、上記流体流れの第1の部分を受け入れ、上記受け入れた第1の部分の流体流れを加速して加速流体流れを生成するように構成された誘因ノズルと、上記加速流体流れを受け入れるように構成された排出チャンバと、上記排出チャンバから上記加速流体流れを排出するように構成された排出口と、上記排出チャンバと流体的に連通している誘導吸引ノズルとを含んでいる。上記捕集ノズルは、上記加速流体流れが上記排出チャンバから排出される際に、上記排出チャンバから上記誘導吸引ノズルの近傍にある捕集領域に吸引力を伝達できるように構成されている。上記捕集ノズルは、上記伝達可能な吸引力が、上記ワークピースが上記捕集領域に近接しているときに上記物質の少なくとも一部を上記ワークピースから引き離すのに十分なものとなるように構成されている。
【0005】
本発明の第3の態様によれば、ワークピースを加工する方法が提供される。この方法では、加工の結果として物質が生じるようにワークピースを加工し、流体流れを誘導し、上記流体流れの第1の部分を加速して加速流体流れを生成し、上記物質を上記流体流れの第2の部分の内部に乗せ、上記加速流体流れに基づいて吸引力を発生させ、上記吸引力を上記流体流れの第2の部分に伝達して上記物質の少なくとも一部を上記ワークピースから引き離す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る物質捕集装置を組み込んだワークピース加工システムを模式的に示すものである。
【
図2】
図2は、
図1に示す物質捕集装置の一実施形態の側断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す捕集ノズルを模式的に示す分解断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す物質捕集装置の動作を模式的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態について
図1から
図6を参照してより詳細に説明する。以下の例示的な実施形態においては、ワークピースから小片を切り出す装置としてレーザ系システムを用いてワークピースが処理される。ただし、ここで述べられる方法及び装置は、ワークピース内に孔を開けたり、ワークピースを分離したり、ワークピースを粉砕(mill)したり、あるいはワークピースを成形したりするといった任意の形態でワークピースを加工する場合に適用でき、また、ワークピースを貫通あるいはワークピース内に部分的に延びるビア、孔、ボア、スロットを形成したり、ラインや基準マーカ(fiducial markers)などをスクライブしたりするといった任意の形態でワークピースを加工する場合に適用できることが理解できよう。また、ここで述べられる方法及び装置は、レーザ系システム以外の他の機械(例えば、機械ドリル、機械鋸、ラッチ、溝かんな、サンダー、吹付加工機など)とともに使用できることも理解できよう。これらの実施形態を変更して他の種々の形態にて実施することができ、またこれらの実施形態はここで述べられる説明に限定されないことが理解できよう。むしろ、これらの実施形態は、この明細書における開示が十分かつ完全なものとなるように、また本発明の範囲を当業者に十分に理解させるように提供されるものである。図面においては、層や領域の大きさ及びそれらの相対的な大きさは理解しやすいように誇張されている。
【0008】
ここで使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定するものではない。文脈上明示的に示される場合を除き単数形は複数形を含むものとする。また、本明細書中で使用されている「有する」や「含む」、「備える」などの用語は、言及している特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素が存在していることを明確にするものであって、1以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの組み合わせの存在や付加を排除するものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る物質捕集装置を組み込んだワークピース加工システムを模式的に示すものである。
【0010】
図1を参照すると、レーザ系ワークピース加工システム100のようなワークピース加工システムは、レーザエネルギーを有するビーム102を生成するように構成されたレーザ光源(図示せず)と、切断パスに沿ってビーム102を(例えばチャック108に固定された)ワークピース106上に向けるように構成された切断ヘッドアセンブリ104とを有している。ワークピース106は、任意の好適な構成を有していてよい。例えば、ワークピース106は、シリコン(Si)ウェハやSOI(Silicon-On-Insulator)ウェハ、砒化ガリウム(GaAs)ウェハ、サファイアウェハなどの基板であってもよく、プリント回路基板(PCB)やフレキシブルプリント基板(FPC)、セラミックワークピース、ガラスワークピース、金属ワークピース(例えば板状、箔状など)、ポリマワークピースなどであってもよく、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。ワークピース106の厚さtは10mm未満である(例えば、5mm未満、2mm未満、1mm未満など)。他の実施形態において、ワークピース106の厚さは10mm以上であってもよい。
【0011】
例示的に図示されているように、切断ヘッドアセンブリ104は、ハウジング112内に設けられたレンズ110を含んでいる。ビーム102がワークピース106の一部を切除するのに十分な強度、フルエンス、出力などを有しつつ、ワークピース106の表面上のスポットを照射するように、ビーム102の焦点が合うようにレンズ110が構成されている。切断ヘッドアセンブリ104は、単一のレンズ110を含んでいるように図示されているが、複数のレンズを任意の好適な形態で使用することができる。ビーム102は、紫外線域(UV)、可視光域(例えば緑)、又は赤外線域(IR)の波長を有するレーザ光の複数のパルスから構成されていてもよい。図示はされていないが、ワークピース加工システム100は、切断ヘッドアセンブリ104の処理領域114を通してワークピース106の任意の部分にビーム102を向けることができるように、レンズ110を通してビーム102を走査するように構成されたビームステアリングシステムを含んでいてもよい。実施形態によっては、ビームステアリングシステムは、1以上のガルバノメトリックミラー、すなわち「ガルバノミラー」(例えば、X軸ガルバノミラー及び/又はY軸ガルバノミラー)や、1以上のファーストステアリングミラー(FSM)、1以上の圧電ミラー、1以上の音響光学偏向器(AOD)、又は1以上の電気光学偏向器(EOD)など、あるいはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。図示はされていないが、ワークピース加工システム100は、チャック108をX方向、Y方向、及び/又はZ方向に移動させ、選択的に(例えば、XY平面内でZ方向に延びる軸に沿って)チャック108を回転させるように構成された1以上の運動制御ステージを含んでいてもよい。
【0012】
レーザエネルギーを有し、結像された走査可能なビーム102を方向付けて処理領域114内でワークピース106を切除し、ワークピース106から小片又は一部を切り出すように、上述のように構成されたワークピース加工システム100を任意の好適な形態で制御することができる。処理領域114を通して切断ヘッドアセンブリ104に対して露出しているワークピース106の領域がビーム102により十分に切り出された後、(例えば、1以上の運動制御ステージを駆動させることにより)チャック108を移動させて、ワークピース106の他の領域を切断ヘッドアセンブリ104に対して処理領域114を通して露出させ、ビーム102によりワークピース106の他の領域を切り出すことができる。ワークピース106が切り出されるとき、典型的には、ビーム102とワークピース106の相互作用の結果として、蒸気(例えば、約0.01μm〜約4μmの最大断面寸法を有する粒子を含む)や、塵(例えば、約0.1μm〜約0.7mmの最大断面寸法を有する粒子を含む)、それより大きな塵片(例えば、約0.8μm〜約3mmの最大断面寸法を有する粒子を含む)のような副生物がワークピース106から放出される。これら放出された物質は、処理領域114に放出され、切断ヘッドアセンブリ104に堆積し、レンズ110を損傷したり、切断パスを阻害してビーム102の切除効率を低下させたりする可能性がある。このため、一実施形態においては、ワークピース加工システム100は、ビーム102に対して少なくとも略透明で、副生物がレンズ110に固着したり、あるいはレンズ110を損傷したりすることを防止するように構成された保護窓116を有していてもよい。堆積した副生物を除去するために保護窓116を定期的に掃除したり、全体を取り替えたりしてもよい。
【0013】
さらに、上述した副生物は、ワークピース106の表面上、特に処理領域114に隣接したワークピース106の表面上に飛散することがある。これら飛散した物質は、ワークピース106の表面に固着し、ビーム102によりワークピース106から最終的に切り出された小片又は一部の質を低下させる可能性がある。このため、他の実施形態においては、ワークピース加工システム100は、ワークピース106の切断の結果として生じた副生物を捕集するように構成された物質捕集装置118を含んでいてもよい。以下に詳細に述べるように、この物質捕集装置118は、流体(例えば矢印120で示されている)を受け入れて、処理領域114内の副生物をその流れに乗せることができるように上記流体流れを誘導し、流れに乗った副生物(例えば矢印122で示されている)を処理領域114の外部に排出するように構成されている。
【0014】
図示された実施形態においては、物質捕集装置118はマウント126によって切断ヘッドアセンブリ104に連結されており、物質捕集装置118と処理領域114との位置合わせが望ましい状態かつ有利な状態で確実になされている。ただし、処理領域114に対する物質捕集装置118の位置合わせを維持できるような任意の好適な形態でワークピース加工システム100を構成できることが理解されよう。例示的に図示されているように、物質捕集装置118とワークピース106とを距離dだけ離す間隙124を形成するように物質捕集装置118が処理領域114に対して位置合わせされている。一実施形態においては、距離dは0.5mmから2mmの範囲にあってよい。例えば、ワークピース106の表面からワークピース加工システム100に向けて突出する特徴が存在するかしないかによって、距離dは0.5mm未満であってもよいし、2mmよりも大きくてもよい。
【0015】
図2は、
図1に示す物質捕集装置の一実施形態の側断面図である。
図3及び
図4は、それぞれ
図2に示す物質捕集装置の上面図及び底面図である。
図5は、
図2に示す捕集ノズルを模式的に示す分解断面図である。
【0016】
図2から
図4を参照すると、一実施形態によれば、物質捕集装置118は、複数の流体ノズル200と、捕集ノズル202と、選択的にフェンス204とを含んでいてもよい。一般的に、流体ノズル200は、処理領域114を通じて流体流れを誘導するように構成されており、捕集ノズル202は、ワークピース106の加工の結果として生じる副生物を捕集するように構成されている。フェンス204は、流体流れを流体ノズル200から捕集ノズル202に案内するように構成されている。他の実施形態においては、流れに乗った物質を処理領域114内に閉じ込めるようにフェンス204を構成してもよい。
図3及び
図4においては、物質捕集装置118が2つのフェンス204を有するものとして示されているが、加工されるワークピースの種類やワークピースの加工方法、使用される装置の特定の構成、要求されている物質捕集レベルなどによっては、これよりも多いフェンス204あるいはこれよりも少ないフェンス204を物質捕集装置118に設けてもよいことが理解されよう。
【0017】
流体ノズル200は、流体流れを誘導するように構成された流体出口200aを含んでいる。一実施形態においては、流体ノズル200は、ガス状流体(例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム等、あるいはこれらの組み合わせ)の流れを誘導するように構成されている。他の実施形態においては、流体ノズル200は、処理領域114に放出された副生物を流れに乗せるのに十分な質量流量を有する流体流れを誘導するように構成されている。一般に、上述した十分な質量流量は、処理領域114の大きさによって変わり得る。例えば、質量流量1SCFMは、約20mm×約20mmの大きさの処理領域114に対して十分な場合があり、質量流量4SCFMは、約100mm×約100mmの大きさの処理領域114に対して十分な場合がある。
【0018】
捕集ノズル202は、ハウジングダクト206とデフレクタ208とを含んでいる。ハウジングダクト206は、ハウジング入口206a(例えば分割入口又は分岐入口など)と排出口206bとを含み、ハウジング入口206aを排出口206bに流体的に連通する内部空間を画定している。一般に、ハウジング入口206aは、流体流れに乗っている可能性のある副生物に加え、ノズル200により誘導された流体流れからの流体を受けるように構成されている。排出口206bは、流体及び副生物を排出するように構成され得る。図示はされていないが、チューブやフィルタ、ガス吸収器等あるいはこれらの組み合わせなどの補助装置を排出口206bに連結して、流体や副生物等あるいはこれらの組み合わせを処理又は捕捉等することとしてもよい。真空ポンプを排出口206bに連結して、捕集ノズルでの物質捕集を促進してもよいが、これは必ずしも必要なものではない。
【0019】
デフレクタ208は、ハウジングダクト206に連結されており、ハウジングダクト206の内部空間を誘因流体加速領域210と、減圧領域212と、誘導吸引領域214とに分割するように構成されている。流体加速領域210は、流体ノズル200により誘導された流体流れの第1の部分を受け入れる入口210aを含んでいる。流体加速領域210内では、ノズル200により誘導された流体流れの第1の部分を加速し、流体加速領域210の出口210bを介して減圧領域212に排出することができる。続いて減圧領域212では、上記第1の部分が排出口206bから排出される。誘導吸引領域214は、減圧領域212と流体的に連通した吸引出口214aと、ワークピース106に近接して配置される吸引入口214bとを含んでいる。捕集ノズル200が流体流れの中にあるとき、減圧領域212内の静圧が誘導吸引領域214内の静圧よりも低くなるように、デフレクタ208とハウジングダクト206が構成される。この減圧領域212と誘導吸引領域214の静圧の差により、減圧領域212から吸引出口214a、誘導吸引領域214、吸引入口214bを通って最終的には吸引入口214bの捕集領域(図示せず)に伝達可能な吸引力が生じる。この捕集領域では、副生物がワークピース106から引き離され、吸引入口214bを介して誘導吸引領域214に吸い込まれる。副生物が誘導吸引領域214に入ると、この副生物は、吸引出口214aを介して減圧領域212に排出され、その後排出口206bから排出される。
【0020】
図5を参照すると、ハウジングダクト206及びデフレクタ208は、概念的には、誘因流体加速領域210を有する誘因ノズル500と、誘導吸引領域214を有する誘導吸引ノズル502と、減圧領域212を有する排出チャンバ504とに分割され得る。例示的に図示されているように、誘因ノズル500はハウジングダクト206の第1の部分506と、デフレクタ208の第1の部分508aとを含み得る。同様に、誘導吸引ノズル502は、ハウジングダクト206の第2の部分510と、デフレクタ208の第2の部分508bとを含み得る。排出チャンバ504は、ハウジングダクト206の第3の部分512を含み得る。以下により詳細に述べるが、ワークピース106が物質捕集装置118に近接しているとき、吸引入口214bの捕集領域内の副生物がワークピース106から除去されるように誘導吸引ノズル502をワークピース106に隣接して配置することができる。例示的に図示された実施形態においては、誘因ノズル500、誘導吸引ノズル502、及び排出チャンバ504は、同一のハウジングダクト206及び/又はデフレクタ208の異なる部分として一体的に形成されている。ただし、誘因ノズル500、誘導吸引ノズル502、及び排出チャンバ504の少なくとも1つを、捕集ノズルを形成するように組み立てることができる別個に形成された部材として設けてもよいことは理解されよう。
【0021】
図2から
図4に戻ると、物質捕集装置118は、ノズルアダプタ216とノズル支持梁218とを含んでいてもよい。それぞれのノズルアダプタ216は、対応するノズル200に連結されていてもよく、加圧空気源などの流体源(図示せず)に連結されるように構成されていてもよい。これにより、ノズルアダプタ216は、流体を流体源から対応するノズル200に送ることができる。ノズル支持梁218は、一方又は双方のフェンス204から延びていてもよく、その内部には複数の開口が形成されていてもよい。各開口は、互いに連結されたノズルアダプタ216とノズル200との間にしっかりと接続されるように構成されていてもよい。このように、捕集ノズル202に対して流体ノズル200の位置を固定するようにノズル支持梁218を構成することができる。
【0022】
図6は、
図2に示す物質捕集装置の動作を模式的に示す側断面図である。
【0023】
図6を参照すると、処理領域114内で切断ヘッドアセンブリ104に露出しているワークピースの部分を切除するために、レーザエネルギーを有するビーム102が切断ヘッドアセンブリ104からワークピース106上に向けられる。ビーム102とワークピース106の相互作用の結果として、塵やそれよりも大きな塵片(包括的に602で示されている)に加えて蒸気600のような上記副生物がワークピース106から一般的に上方に放出される。図示された実施形態においては、ワークピース106は、大部分のワークピース106から分離されるがまだワークピース106から取り出されてはいない小片604(ここでは「部分物質604」ともいう)を形成するようなパターンに切除されている。部分物質604は、ワークピース106から切り出される所望の部分(例えば、その後に形成される製品、後段の装置や方法において所望の目的や機能を有する部分)であってもよく、所望の部分がワークピース106から切り出された後又はワークピース106が処理された後に付随的に残留しているワークピース106の断片であってもよい。一実施形態においては、部分物質604は、ワークピース106に貫通孔を形成するために用いられるレーザトレパンニング処理の結果として大部分のワークピース106から分離された断片であってもよい。
【0024】
ノズルアダプタ216は、ホース606を介して加圧空気源などの流体源(図示せず)に接続されている。流体ノズル200が流体を受け入れ、流体出口200aで流体流れを誘導する(例えば矢印608で示されている)。流体流れ608は副生物(例えば、600や602など、あるいはこれらの組み合わせ)を流れに乗せてその副生物を捕集ノズル202に向けて運ぶ。一実施形態においては、流体流れ608は、物質捕集装置118の外部からの周囲の空気を流れに乗せる(例えば矢印610や612で示されている)のに十分な質量流量を有している。したがって、流体ノズル200は、流体流れ608を誘導する際に、周囲の空気の流れ610及び612を誘導していると考えることができる。周囲の空気の流れ610は、放出された副生物600及び602が処理領域114の上部で物質捕集装置118から逃げてしまうことを防止し、それを最小限にするのを促進することができる。同様に、周囲の空気の流れ612は、放出された副生物600及び602が処理領域114の下部で物質捕集装置118から逃げてしまうことを防止し、それを最小限にするのを促進することができる。一般的に、周囲の空気の流れ610及び612は、捕集ノズル202に向かう際に流体流れ608と混ざり合うことが可能である。一般的に、処理領域114内の流体流れは、流体流れとして包括的に述べることができ、この流体流れは、流体流れ608と周囲の空気の流れ610及び612とが混ざり合ったものを含んでいる。
【0025】
流体流れが捕集ノズル202に近づくと、その流体流れは、(例えばデフレクタ208により)第1の部分614(ここでは「第1の分離流体流れ614」ともいう)と第2の部分616(ここでは「第2の分離流体流れ616」ともいう)に分離される。一般的に、第1の分離流体流れ614は、第2の分離流体流れ616と比較すると非常に大きい。第2の分離流体流れ616は、ワークピース106とデフレクタ208との間の間隙124により絞られている。間隙124が大きすぎると、誘導吸引領域214の圧力が十分に低くならず、捕集ノズル202は副生物を所望の形態により捕集することができない。第1及び第2の分離流体流れ614及び616の一方又は双方の流れに副生物600及び602を乗せることができる。第1の分離流体流れ614は、誘因流体加速領域210(例えば
図5の誘因ノズル500)の入口210aに入り、そこで加速されて加速流体流れ618を形成する。そして、その加速流体流れ618は、減圧領域212(例えば
図5に示す排出チャンバ504)に入り、排出口206bから排出流体流れ620として排出される。一実施形態においては、第1の分離流体流れ614に乗った副生物600及び602を加速流体流れ618とともに排出口206bから排出させることができる。排出チャンバ504の減圧領域212を介して送られる加速流体流れ618の速度が比較的高いために、吸引力が生じ、この吸引力が減圧領域212から誘導吸引ノズル502の誘導吸引領域214を通って吸引入口214bにおける捕集領域622に伝達される。捕集領域622内に存在する流体及び副生物(例えば、第2の分離流体流れ616により捕集領域622に運ばれたもの)は、ワークピース106から引き離され、吸引入口214bを通って誘導吸引流体流れ624とともに誘導吸引領域214に運ばれる。そして、誘導吸引流体流れ624は、排出チャンバ504の減圧領域212に入り、そこで加速流体流れ618と混じり合い、排出口206bから排出流体流れ620として排出される。
【0026】
一実施形態においては、捕集領域622に伝達された吸引力は、物質捕集装置118の外部から周囲の空気を吸い込む(例えば矢印626で示されている)のに十分なものである。周囲の空気の流れ626は、第2の分離流体流れ616に乗った副生物が捕集ノズル202近傍の処理領域114の下部で物質捕集装置118から逃げてしまうことを防止し、それを最小限にするのを促進することができる。他の実施形態においては、捕集領域622に伝達された増強吸引力は、ワークピース106から部分物質604を除去するのに十分なものである。部分物質604を形成した後、部分物質604が捕集領域620に露出するように捕集領域622と部分物質604の位置を揃えることができる(例えば、ワークピース106を移動する、又は物質捕集装置118を移動する、あるいはその両方)。部分物質604が捕集領域620に露出されると、部分物質604は誘導吸引領域214に運ばれ、その後(例えば排出口206bから)排出される。
【0027】
上述した説明は、本発明の実施形態を例示するものであり、本発明を限定するものではない。本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これら実施形態において本発明の新規な発想及び効果を本質的に逸脱することなく種々の改変が可能であることは当業者であれば容易に理解できよう。上述した説明は、本発明の実施形態を例示するものであり、本発明はここに開示された特定の実施形態に限定されるものではないことは理解できよう。また、開示された実施形態及びその他の実施形態に対する改変も本願の特許請求の範囲に含まれるものである。本発明は、特許請求の範囲とそれに含まれるべきその均等物によって画定されるものである。
【符号の説明】
【0028】
100 ワークピース加工システム
102 ビーム
104 切断ヘッドアセンブリ
106 ワークピース
108 チャック
110 レンズ
114 処理領域
116 保護窓
118 物質捕集装置
124 間隙
126 マウント
200 流体ノズル
200a 流体出口
202 捕集ノズル
204 フェンス
206 ハウジングダクト
206a ハウジング入口
206b 排出口
208 デフレクタ
210 誘因流体加速領域
210a 入口
210b 出口
212 減圧領域
214 誘導吸引領域
214a 吸引出口
214b 吸引入口
216 ノズルアダプタ
218 ノズル支持梁
500 誘因ノズル
502 誘導吸引ノズル
504 排出チャンバ
604 部分物質
606 ホース