特許第5964698号(P5964698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5964698-無線通信システム 図000002
  • 特許5964698-無線通信システム 図000003
  • 特許5964698-無線通信システム 図000004
  • 特許5964698-無線通信システム 図000005
  • 特許5964698-無線通信システム 図000006
  • 特許5964698-無線通信システム 図000007
  • 特許5964698-無線通信システム 図000008
  • 特許5964698-無線通信システム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964698
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20160721BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20160721BHJP
   H04B 7/04 20060101ALI20160721BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20160721BHJP
【FI】
   H04W28/16
   H04W16/28 151
   H04W16/28 130
   H04B7/04
   H04J15/00
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-188289(P2012-188289)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-49771(P2014-49771A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】洞井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成志
(72)【発明者】
【氏名】柳下 孝一
(72)【発明者】
【氏名】境 穣
【審査官】 齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−156974(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/100492(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/124554(WO,A1)
【文献】 特開2000−286851(JP,A)
【文献】 特開2003−060663(JP,A)
【文献】 ZTE,Dynamic control and CPC for MF-HSDPA[online],3GPP TSG-RAN WG1#68 R1-120684,2012年 2月10日,URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_68/Docs/R1-120684.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04B 7/04
H04J 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフローを受信する端末と、
前記端末の無線接続候補となる複数の基地局と、
制御サーバと、
を備え、
前記制御サーバは、前記端末が受信する前記フロー毎に、前記フローのスループット情報を受信した時に、受信した前記フローのスループット情報が示すスループットと、前記基地局毎の帯域リソースの空き容量による送信能力とを比較し、
前記フローのスループットが、前記送信能力よりも大きい場合に前記各基地局による基地局連携MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を選択し、
前記フローのスループットが、前記送信能力よりも小さい場合に単一の基地局のみから配信されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記フローの要求データレートの変更に応じて、前記基地局連携MIMO通信又は単一の基地局のみからの配信をすることを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末と、前記端末の無線接続候補となる複数の基地局とのMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基地局で一定のエリアをカバーする無線通信システムでは、各基地局のカバーエリアの境界において、隣接する基地局からの電波干渉によりユーザスループットが低下する場合がある。
【0003】
ユーザスループットの低下を防ぐ技術として、基地局連携MIMO通信技術が知られている。基地局連携MIMO通信では、端末が隣接基地局から受信する電波を干渉波としてではなく、所望波として活用している。しかしながら、この基地局連携MIMO通信では、隣接基地局の無線帯域も使用するために、無線通信システム全体でユーザスループットが低下するおそれがある。
【0004】
かかる問題に対しては、所定の制御サーバが、基地局の配下の端末におけるCINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio)、ユーザスループット、無線端末の位置に基づいて、基地局連携MIMO通信の要否を判断する無線通信システムがある(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1の無線通信システムでは、各端末の受信電波レベルの分布、すなわち、基地局のカバーエリア内及び他の基地局のカバーエリア外の端末数と、基地局のカバーエリア内及び他の基地局のカバーエリア内の端末数の比率とに基づいて、基地局連携MIMO通信の要否を判断している。
【0006】
特許文献2の無線通信システムでは、各端末が必要とする無線帯域量に基づいて、各端末毎に基地局連携MIMO通信の要否を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−219010号公報
【特許文献2】特開2010−233087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2の無線通信システムで基地局連携MIMO通信を行った場合、カバーエリア境界にいる端末のスループットの向上を図ることができる。しかしながら、システム全体としての帯域リソース利用効率は、基地局連携MIMO通信を行なわなかった場合と比べて低下する場合がある。
【0009】
また、特許文献1、2の無線通信システムで基地局連携MIMO通信を行なわなかった場合、カバーエリア境界にいる端末のスループットの向上を図ることはできない。さらに、システム全体としての帯域リソース利用効率は、基地局連携MIMO通信を行った場合と比べて低下する場合がある。
【0010】
さらに、特許文献1、2の無線通信システムでは、フロー毎に基地局連携MIMO通信の要否を判断していないので、無線通信システム全体からみると帯域リソースの利用効率が低下する場合がある。
【0011】
さらにまた、特許文献1、2のフローの所望スループットを考慮していないので、基地局連携MIMO通信を行うかどうかに関わらず、割り当てる帯域リソースが過剰である場合がある。よって、帯域リソースの利用効率としては、フローの所望スループットを考慮した場合に比べて悪くなる場合がある。
【0012】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、無線通信システム全体における帯域リソースの利用効率の低下を防ぐことが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る無線通信システムは、複数のフローを受信する端末と、前記端末の無線接続候補となる複数の基地局と、制御サーバと、を備え、前記制御サーバは、前記端末が受信する前記フロー毎に、前記フローのスループット情報を受信した時に、受信した前記フローのスループット情報が示すスループットと、前記基地局毎の帯域リソースの空き容量による送信能力とを比較し、前記フローのスループットが、前記送信能力よりも大きい場合に前記各基地局による基地局連携MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を選択し、前記フローのスループットが、前記送信能力よりも小さい場合に単一の基地局のみから配信されることを特徴とする。
【0014】
前記無線通信システムにおいて、前記フローの要求データレートの変更に応じて、前記基地局連携MIMO通信又は単一の基地局のみからの配信をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の無線通信システムによれば、複数のフローを受信する端末と、前記端末の無線接続候補となる複数の基地局と、制御サーバと、を備え、制御サーバは、前記端末が受信する前記フロー毎に、前記フローのスループット情報を受信した時に、受信した前記フローのスループット情報が示すスループットと、前記基地局毎の帯域リソースの空き容量による送信能力とを比較し、前記フローのスループットが、前記送信能力よりも大きい場合に、前記各基地局による基地局連携MIMO通信を選択し、前記フローのスループットが、前記送信能力よりも小さい場合に、単一の基地局のみから配信されることにより、無線通信システム全体における帯域リソースの利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの説明図である。
図2図2Aは制御サーバの構成の説明図であり、図2Bはテーブル記録部の構成の説明図である。
図3】隣接基地局テーブル、接続基地局テーブル、伝搬環境テーブル、基地局連携パタンテーブル、スループットテーブルの説明図である。
図4図4A図4Cは、フローテーブルの説明図である。
図5】基地局連携MIMO通信の手順についての説明図である。
図6】基地局連携パタンの処理手順についての説明図である。
図7図7Aは、従来の帯域リソースの利用効率の説明図であり、図7Bは、本発明の実施形態に係る無線通信システムの帯域リソースの利用効率の説明図である。
図8図8Aは、従来の帯域リソースの利用効率の説明図であり、図8Bは、本発明の実施形態に係る無線通信システムの帯域リソースの利用効率の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の無線通信システム10の説明図であり、図2Aは、制御サーバ20の構成の説明図であり、図2Bは、テーブル記憶部28の構成の説明図であり、図3は、隣接基地局テーブル30、接続基地局テーブル32、伝搬環境テーブル34、基地局連携パタンテーブル36、スループットテーブル38の説明図であり、図4A図4Cは、フローテーブル40の説明図であり、図5は、基地局連携MIMO通信の手順についての説明図であり、図6は、基地局連携パタンの処理手順についての説明図である。
【0018】
無線通信システム10は、通信機能を有するコンピュータや携帯電話等である端末(MS)12と、前記端末12が無線接続する基地局(BS)14a、14bと、ルータ16と、制御サーバ20とを備える。基地局14a、14bはバックボーンネットワーク18と接続する。また、バックボーンネットワーク18は、ルータ16、ルータ21を介してコアネットワーク22と接続し、また、インターネット23と接続する。
【0019】
端末12は、基地局14a、14bの共通するカバーエリア内に位置する。基地局14a、14bは、端末12に対して、基地局連携によりMIMO通信を行うことができる。
【0020】
ルータ16は、インターネット23、コアネットワーク22を介してバックボーンネットワーク18に送信されてくる映像、音楽等のデータとして保存されているコンテンツを含むデータの流れであるフローのスループットを計測し、また、計測したスループットを制御サーバ20に通知する。また、ルータ16は、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス、ポート番号等を参照して、フローを識別する。
【0021】
制御サーバ20は、テーブル管理部24と、制御部26と、テーブル記憶部28とを備える。テーブル管理部24は、テーブル記憶部28内の各テーブルの管理をする。制御部26は、フロー毎に基地局連携MIMO通信の基地局連携パタンに関する選択制御を行う。
【0022】
テーブル記憶部28は、隣接基地局テーブル30と、接続基地局テーブル32と、伝搬環境テーブル34と、基地局連携パタンテーブル36と、スループットテーブル38と、フローテーブル40とを備える。
【0023】
隣接基地局テーブル30は、基地局毎に隣接する基地局の識別子が設定されるテーブルである。接続基地局テーブル32は、端末毎に無線接続する基地局の識別子が設定されるテーブルである。伝搬環境テーブル34は、端末毎に、端末と無線接続する基地局との間の伝搬環境情報(CINR)が設定されるテーブルである。基地局連携パタンテーブル36は、端末毎に無線接続する通信パタン、具体的には、1台の基地局と無線接続するパタン又は複数の基地局と基地局連携MIMO通信するパタンが設定されるテーブルである。スループットテーブル38は、端末毎に基地局連携パタンテーブル36で設定されたパタンに対するスループットが設定されるテーブルである。フローテーブル40は、フロー毎の所望のスループットと、前記所望のスループットを満たす基地局連携パタンテーブル36で設定されたパタンと、フローの配信状況を表す状態とが設定されるテーブルである。
【0024】
次に、無線通信システム10における基地局連携MIMO通信について、図3図6を用いて説明する。
【0025】
まず、無線通信システム10では、初期設定としてテーブル管理部24によって隣接基地局テーブル30が設定される(ステップS1)。図1に示されるように基地局14aに隣接する基地局は基地局14bであることに対応して隣接基地局テーブル30が設定される(図3)。テーブル管理部24は、基地局毎に隣接する基地局の識別子を、例えば、GPS受信機により取得した位置情報に基づいて、隣接基地局テーブル30を設定してもよい。
【0026】
次に、端末12は、基地局14a又は基地局14bを介して伝搬環境情報を制御サーバ20に送信する(ステップS2)。
【0027】
伝搬環境情報を受信した制御サーバ20のテーブル管理部24は、取得した伝搬環境情報に基づいて、接続基地局テーブル32と、伝搬環境テーブル34と、基地局連携パタンテーブル36とを設定する(ステップS3)。送信する電波が端末12に届く基地局が、基地局14a、14bであることに対応して接続基地局テーブル32が設定される(図3)。また、端末12と基地局14a、14b間の伝搬環境情報に基づいて伝搬環境テーブル34が設定される(図3)。
【0028】
テーブル管理部24は、接続基地局テーブル32に基づいて基地局連携パタンテーブル36を設定する。送信する電波が端末12に届く基地局は、基地局14a、14であることから、基地局連携パタンテーブル36としては、基地局が1台のみである基地局14a単独、基地局14b単独と、基地局14a、14bの基地局連携との3パタンが設定される(図3)。
【0029】
テーブル管理部24は、伝搬環境テーブル34に基づいてスループットテーブル38を設定する(ステップS4)。テーブル管理部24は、伝搬環境テーブル34の伝搬環境情報に基づいてパタン毎にスループットを算出し、スループットテーブル38に設定する。スループットテーブル38では、パタン1として40Mbps、パタン2として10Mbps、パタン3として50Mbpsとして設定される。パタン3では、基地局連携としてパタン1、2のスループットの合計値として設定される。
【0030】
テーブル管理部24は、ステップS1からステップS4までの処理を、端末12から所定時間間隔で送信される伝搬環境情報を取得する毎に行い、各テーブルを更新する。
【0031】
ルータ16は、端末12へ配信するフローのスループット情報及び端末12の識別情報を制御サーバ20に通知する(ステップS5)。
【0032】
ルータ16から通知されたフローのスループット情報及び端末12の識別情報に基づいて、テーブル管理部24は、フローの所望スループットを設定する(ステップS6、図4A)。フローテーブル40では、フローF1(既に基地局連携パタンが決まっている他のフロー)のスループットが21Mbps、フローF2(ルータ16からスループット情報及び端末12の識別情報を通知されたフロー)のスループットが20Mbpsと設定されている。
【0033】
制御部26は、フローテーブル40のフローF2に対して、基地局連携パタンテーブル36から基地局連携パタンを選択し、フローF2の基地局連携パタンを設定する(ステップS7、図4B)。
【0034】
この基地局連携パタンは、図6に示す処理手順に基づいて設定される。基地局単独の基地局連携パタンによる帯域リソースの空き容量による送信能力とフローが要求するスループットとを比較し、送信能力がフローの要求するスループットよりも大きいスループットである基地局連携パタンを検索する(ステップS20)。
【0035】
ここで、基地局連携パタンのスループットは、スループットテーブル38に設定されている基地局連携パタンのスループットから、既に流れているフローによる帯域リソース使用量を除いたものを用いるものとする。
【0036】
条件を満たす基地局単独の基地局連携パタンが1つの場合には、当該パタンを選択する(ステップS20 YES ステップS21)。また、条件を満たす基地局連携パタンが複数ある場合には、スループットが最も大きい基地局連携パタンを選択する。
【0037】
基地局単独の基地局連携パタンに対して、条件を満たす基地局連携パタンがない場合(ステップS20 NO)には、複数の基地局が連携する基地局連携パタンによる帯域リソースの空き容量による送信能力とフローが要求するスループットとを比較し、基地局連携パタンのうち、フローが要求するスループットよりも送信能力が大きい複数の基地局が連携する基地局連携パタンを検索する(ステップS22)。
【0038】
条件を満たす複数の基地局が連携する基地局連携パタンが1つの場合には、当該パタンを選択する(ステップS22 YES ステップS23)。条件を満たす基地局連携パタンが複数ある場合には、送信能力が最も大きい複数の基地局が連携する基地局連携パタンを選択する。
【0039】
上述の条件を満たさない場合(ステップS22 NO)、複数の基地局が連携する基地局連携パタンのうち、スループットテーブル38に設定されている基地局連携パタンのスループットから既に流れているフローによる帯域リソース使用量を除いて示される送信能力が最も大きい基地局連携パタンを選択する(ステップS23)。
【0040】
フローF2の基地局連携パタン選択時、フローテーブル40のフローF1に対しては、基地局連携パタンとしてパタン1、状態としてActiveが設定されていた。この結果、パタン1のスループットは、フローF1に割り当てられたスループットの分だけ減少し、19Mbpsとなる。
【0041】
また、フローF2のスループットは20Mbpsであることから、パタン1、2よりもスループットが大きい(ステップS20 NO)。パタン3のスループットは、フローF2のスループットよりも大きい。従って、フローF2には基地局連携パタンとしてパタン3が設定される(ステップS22 YES ステップS23 図4B)。
【0042】
制御部26は、ルータ16を介して基地局14a、14bに対して、フローF2の端末12に対する配信方法の情報を送信する(ステップS8)。すなわち、制御部26は、フローテーブル40の更新に基づいて、基地局14aに対してフローF1をパタン1で送信継続、すなわち、基地局14a単独で送信継続し、フローF2に対してはパタン3で送信、すなわち、基地局14a、14bの基地局連携MIMO通信で送信する旨が送信される。また、基地局14bに対しては、フローF2を基地局14a、14bの基地局連携MIMO通信で送信する旨が送信される。また、テーブル管理部24は、制御部26の指示に基づいて、フローテーブル40のフローF2の状態の欄をActiveに設定し、配信環境が整った旨をルータ16へ通知する(ステップS9、図4C)。
【0043】
配信環境が整った旨を受信したルータ16は、ルーティングテーブルを更新し、基地局14a、14bを介して端末12に対してフローF2を転送する(ステップS10)。
【0044】
また、フローF1のスループットが2Mbps、フローF2のスループットが7Mbpsの場合には、テーブル管理部24は、ルータ16から通知されたフローのスループット情報及び端末12の識別情報に基づいて、フローの所望スループットを設定する(ステップS6)。フローテーブル40では、フローF1(すでに基地局連携パタンが決まっている他のフロー)のスループットが2Mbps、フローF2(ルータ16からスループット情報及び端末12の識別情報を通知されたフロー)のスループットが7Mbpsと設定されている。
【0045】
制御部26は、フローテーブル40のフローF2に対して、基地局連携パタンテーブル36から基地局連携パタンを選択し、フローの基地局連携パタンを設定する(ステップS7)。
【0046】
フローF2の基地局連携パタン選択時、フローテーブル40のフローF1に対しては、基地局連携パタンとしてパタン1、状態としてActiveが設定されていた。この結果、パタン1のスループットは、フローF1に割り当てられたスループットの分だけ減少し、38Mbpsとなる。ここで、フローF2のスループットが7Mbpsであることから、パタン1(38Mbps)とパタン2(10Mbps)とが候補に挙がる。従って、スループットが最も大きい基地局連携パタンであるパタン1が、フローF2の基地局連携パタンとして設定される(ステップS20 YES ステップS21)。
【0047】
制御部26は、基地局14aに対して、フローF2の端末12に対する配信方法の情報を送信する(ステップS8)。すなわち、制御部26は、フローテーブル40の更新に基づいて、基地局14aに対してフローF1をパタン1で送信継続、すなわち、基地局14a単独で送信継続し、フローF2に対してはフローF2をパタン2で送信、すなわち、基地局14a単独で送信する旨が送信される。
【0048】
以下、ルータ16は、基地局14a、14bを介して端末12に対してフローを転送する。
【0049】
図7は、フローが時間(タイムスロット)Tで配信される場合に、帯域リソースを横軸に時間T、縦軸に帯域リソースのサブキャリアとして表した図であって、図7Aは、従来の帯域リソースの利用効率の説明図であり、図7Bは、本発明の実施形態に係る無線通信システムの帯域リソースの利用効率の説明図である。なお、Fは、基地局が有する全帯域リソースのサブキャリア軸成分である。
【0050】
従来の無線通信システムでは、基地局のカバーエリア内及び他の基地局のカバーエリア外の端末数と、基地局のカバーエリア内及び他の基地局のカバーエリア内の端末数の比率に基づいて、基地局連携MIMO通信の要否を判断されていた。また、各端末が必要とする無線帯域量に基づいて、各端末毎に基地局連携MIMO通信の要否を判断されていた。その結果、端末が複数のフローを受信する場合には、各フローの所望のスループットの合計に対応した帯域リソースが、連携している各基地局において使用されていた(図7A)。
【0051】
これに対して、無線通信システム10では、フロー毎に基地局連携パタンを考慮するので、図7Bに示すように、フローF1に対しては、基地局単独の基地局連携パタン(パタン1)が設定され、フローF2は、複数の基地局による基地局連携パタン(パタン3)が設定される。
【0052】
ここで、従来の無線通信システムと無線通信システム10との帯域リソースの利用効率を比較する。帯域リソースの利用効率として、以下の定義式を用いて比較する。
【0053】
帯域リソース利用効率E=スループットS/帯域リソース使用量R
【0054】
上述したように、パタン1のスループットが40Mbps、パタン2のスループットが10Mbpsであり、フローF1のスループットが21Mbps、フローF2のスループットが20Mbpsである。
【0055】
従来のスループットSX、無線通信システム10のスループットSYは、ともに以下のようになる。
【0056】
スループットSX、SY=フローF1のスループット+フローF2のスループット=42(Mbps)
【0057】
まず、従来の帯域リソース使用量RXを求める。従来の帯域リソース使用量RXについて、基地局14aにおける帯域リソースの空き容量RXBa、フローF1の帯域リソースの使用量RXa1、フローF2の帯域リソースの使用量RXa2とすると、その比率は以下のようになる。
【0058】
RXBa:RXa1:RXa2=(360/50):(840/50):(800/50)=9:21:20
【0059】
同様に基地局14bにおける帯域リソースの空き容量RXBb、フローF1の帯域リソースの使用量RXb1、フローF2の帯域リソースの使用量RXb2とすると、その比率は以下のようになる。
【0060】
RXBb:RXb1:RXb2=(360/50):(840/50):(800/50)=9:21:20
【0061】
従って、従来の帯域リソース使用量RXは、以下のようになる。
【0062】
帯域リソース使用量RX=〔T×F×{(21/50)+(20/50)}〕+〔T×F×{(21/50)+(20/50)}〕=(82/50)TF
【0063】
次に、無線通信システム10の帯域リソース使用量RYを求める。帯域リソース使用量RYについて、基地局14aにおける帯域リソースの空き容量RYBa、フローF1の帯域リソースの使用量RYa1、フローF2の帯域リソースの使用量RYa2とすると、その比率は以下のようになる。
【0064】
RYBa:RYa1:RYa2=(150/50):(1050/50):(800/50)=3:21:16
【0065】
同様に基地局14bにおける帯域リソースの空き容量RYBb、フローF1の帯域リソースの使用量RYb1、フローF2の帯域リソースの使用量RYb2とすると、その比率は以下のようになる。
【0066】
RYBb:RYb1:RYb2=(300/50):0:(200/50)=6:0:4
【0067】
従って、無線通信システム10の帯域リソース使用量RYは、以下のようになる。
【0068】
帯域リソース使用量RY=〔T×F×{(21/40)+(16/40)}〕+〔T×F×{(0/10)+(4/10)}〕=(53/40)TF
【0069】
従来の無線通信システムの帯域リソース利用効率EXと無線通信システム10の帯域リソース利用効率EYとの比を計算すると、
【0070】
EY/EX=328/265=1.24
【0071】
次に、従来の無線通信システムと無線通信システム10との帯域リソースの空き容量による送信能力BEを比較する。ここで、基地局14aのカバーエリア内であって、基地局14bから干渉を受けないエリアにおけるスループットは60Mbps、基地局14bのカバーエリア内であって、基地局14aから干渉を受けないエリアにおけるスループットは50Mbpsとする。
【0072】
まず、従来の無線通信システムの帯域リソースの空き容量による送信能力BEXを求める。図7Aにおいて、基地局14bのカバーエリア外において、基地局14aの空き容量RXBaを基地局14aの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEXaは以下のようになる。
【0073】
BEXa=60×{9/(9+21+20)}=54/5
【0074】
同様に、基地局14aのカバーエリア外において、基地局14bの空き容量RXBbを基地局14bの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEXbは以下のようになる。
【0075】
BEXb=50×{9/(9+21+20)}=45/5
【0076】
従って、従来の無線通信システムにおける帯域リソースの空き容量による送信能力BEXは、以下のようになる。
【0077】
BEX=BEXa+BEXb=99/5
【0078】
次に、無線通信システム10の帯域リソースの空き容量による送信能力BEYを求める。図7Bにおいて、基地局14bのカバーエリア外において、基地局14aの空き容量RYBaを基地局14aの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEYaは以下のようになる。
【0079】
BEYa=60×{3/(3+21+16)}=18/4
【0080】
同様に、基地局14aのカバーエリア外において、基地局14bの空き容量RYBbを基地局14bの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEYbは以下のようになる。
【0081】
BEYb=50×{6/(6+0+4)}=30
【0082】
従って、無線通信システム10における帯域リソースの空き容量による送信能力BEYは、以下のようになる。
【0083】
BEY=BEYa+BEYb=138/4
【0084】
従来の無線通信システムの帯域リソースの空き容量による送信能力BEXと無線通信システム10の帯域リソースの空き容量による送信能力BEYとの比を計算すると、
【0085】
BEY/BEX=115/66=1.74
【0086】
図8は、図7とは、フローF1、フローF2のスループットが異なる場合の帯域リソースの利用効率の説明図であって、図8Aは、従来の帯域リソースの利用効率の説明図であり、図8Bは、本発明の実施形態に係る無線通信システムの帯域リソースの利用効率の説明図である。
【0087】
従来の無線通信システムでは、図7Aに示す場合と同様に、端末が複数のフローを受信する場合には、各フローの所望のスループットの合計に対応した帯域リソースが、連携している各基地局において使用されていた(図8A)。
【0088】
これに対して、無線通信システム10では、フロー毎に基地局連携パタンを考慮するので、図8Bに示すように、フローF1及びフローF2に対しては、基地局単独の基地局連携パタン(パタン1)が設定される。
【0089】
図8Bの場合においては、パタン1のスループットが40Mbps、パタン2のスループットが10Mbpsであり、フローF1のスループットが2Mbps、フローF2のスループットが7Mbpsである。
【0090】
従来の基地局14aにおける帯域リソースの空き容量RXBa、フローF1の帯域リソースの使用量RXa1、フローF2の帯域リソースの使用量RXa2とすると、その比率は以下のようになる。
【0091】
RXBa:RXa1:RXa2=(1640/50):(80/50):(280/50)=41:2:7
【0092】
同様に基地局14bにおける帯域リソースの空き容量RXBb、フローF1の帯域リソースの使用量RXb1、フローF2の帯域リソースの使用量RXb2とすると、その比率は以下のようになる。
【0093】
RXBb:RXb1:RXb2=(410/50):(20/50):(70/50)=41:2:7
【0094】
従って、従来の帯域リソース使用量RXは、以下のようになる。
【0095】
帯域リソース使用量RX=〔T×F×{(2/50)+(7/50)}〕+〔T×F×{(2/50)+(7/50)}〕=(18/50)TF
【0096】
次に、無線通信システム10に係る基地局14aにおける帯域リソースの空き容量RYBa、フローF1の帯域リソースの使用量RYa1、フローF2の帯域リソースの使用量RYa2とすると、その比率は以下のようになる。
【0097】
RYBa:RYa1:RYa2=(31/40):(2/40):(7/40)=31:2:7
【0098】
同様に基地局14bにおける帯域リソースの空き容量RYBb、フローF1の帯域リソースの使用量RYb1、フローF2の帯域リソースの使用量RYb2とすると、その比率は以下のようになる。
【0099】
RYBb:RYb1:RYb2=(10/10):0:0=10:0:0
【0100】
従って、無線通信システム10の帯域リソース使用量RYは、以下のようになる。
【0101】
帯域リソース使用量RY=〔T×F×{(2/40)+(7/40)}〕+〔T×F×{(0/10)+(0/10)}〕=(9/40)TF
【0102】
従来の無線通信システムの帯域リソース利用効率EXと無線通信システム10の帯域リソース利用効率EYとの比を計算すると、
【0103】
EY/EX=720/450=1.6
【0104】
次に、従来の無線通信システムと無線通信システム10との帯域リソースの空き容量による送信能力BEを比較する。ここで、基地局14aのカバーエリア内であって、基地局14bから干渉を受けないエリアにおけるスループットは60Mbps、基地局14bのカバーエリア内であって、基地局14aから干渉を受けないエリアにおけるスループットは50Mbpsとする。
【0105】
まず、従来の無線通信システムの帯域リソースの空き容量による送信能力BEXを求める。図8Aにおいて、基地局14bのカバーエリア外において、基地局14aの空き容量RXBaを基地局14aの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEXaは以下のようになる。
【0106】
BEXa=60×{41/(41+2+7)}=2460/50
【0107】
同様に、基地局14aのカバーエリア外において、基地局14bの空き容量RXBbを基地局14bの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEXbは以下のようになる。
【0108】
BEXb=50×{41/(41+2+7)}=2050/50
【0109】
従って、従来の無線通信システムにおける帯域リソースの空き容量による送信能力BEXは、以下のようになる。
【0110】
BEX=BEXa+BEXb=451/5
【0111】
次に、無線通信システム10の帯域リソースの空き容量による送信能力BEYを求める。図8Bにおいて、基地局14bのカバーエリア外において、基地局14aの空き容量RYBaを基地局14aの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEYaは以下のようになる。
【0112】
BEYa=60×{31/(31+2+7)}=93/2
【0113】
同様に、基地局14aのカバーエリア外において、基地局14bの空き容量RYBbを基地局14bの単独送信に使用した場合の空き容量による送信能力BEYbは以下のようになる。
【0114】
BEYb=50×{10/(10+0+0)}=50
【0115】
従って、無線通信システム10における帯域リソースの空き容量による送信能力BEYは、以下のようになる。
【0116】
BEY=BEYa+BEYb=193/2
【0117】
従来の無線通信システムの帯域リソースの空き容量による送信能力BEXと無線通信システム10の帯域リソースの空き容量による送信能力BEYとの比を計算すると、
【0118】
BEY/BEX=965/902=1.06
【0119】
従来の無線通信システムでは、端末毎に基地局連携MIMOを行うかどうかを判断していた。そのために、端末に対して、基地局連携MIMO通信を行う場合には、フローF1、フローF2の両方を基地局連携MIMO通信で配信することとなり、基地局連携MIMO通信するために各基地局で必要とされる帯域リソースがフローF1、フローF2の両フロー分必要であった。
【0120】
これに対して、無線通信システム10では、端末が受信するフロー毎に、前記フローのスループット情報を受信した時に、受信した前記フローのスループット情報が示すスループットと、基地局毎の帯域リソースの空き容量による送信能力とが比較される。これ比較結果に基づいて、フローF1、フローF2に対して、基地局連携パタンが選択される。例えば、フローF1に対しては、基地局連携MIMO通信するために各基地局で必要とされる帯域リソースは使用されず、フローF2に対してのみ基地局連携MIMO通信するために各基地局で必要とされる帯域リソースを使用するという選択が可能となる。また、フローF1及びフローF2に対しては、基地局14a単独で通信するという選択も可能となる。このように、前記フローのスループットの情報を受信した時に適切な基地局連携パタンを選択することにより、従来の無線通信システムと比べて無線通信システム10は、帯域リソースの利用効率及び帯域リソースの空き容量による送信能力を向上させることができる。
【0121】
無線通信システム10では、複数のフローを受信する端末12と、端末12の無線接続候補となる基地局14a、14bと、制御サーバ20と、を備え、制御サーバ20は、端末12が受信する前記フロー毎に、前記フローのスループット情報を受信した時に、受信した前記フローのスループット情報が示すスループットと、基地局14a、14bの帯域リソースの空き容量による送信能力とを比較し、フローF2のスループットが、基地局14a、14bの各送信能力よりも大きい場合に、基地局14a、14bによる基地局連携MIMO通信を選択し、フローF2のスループットが、前記基地局毎の各送信能力の少なくとも一つよりも小さい場合に、単一の基地局のみから配信されることにより、無線通信システム全体における帯域リソースの利用効率を向上させることができる。
【0122】
また、フローF2のスループットが、基地局14a、14bの送信能力よりも大きい場合には、フローF2は基地局連携MIMO通信で配信される。さらに、各フローは、所望スループットの変更に応じて、前記基地局連携MIMO通信又は単一の基地局のみから配信される。すなわち、所望スループットの変更に応じて、連携パタンを適応的に変化することができる。
【0123】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0124】
また、制御部26は、フロー毎への基地局連携パタンの設定(ステップS7)を、フローが可変ビットレート形式であって要求データレートが変更された場合やフローの配信途中に要求データレートが変更された場合に行うようにしてもよい。かかる場合において、フローの配信途中に要求データレートが変更される場合には、それをトリガとして、上述したステップS5から処理を始めることにより対応することができる。
【0125】
さらに、基地局14a、14bにOpenFlowスイッチを設けて、フロー毎に基地局連携MIMO通信の判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0126】
10…無線通信システム
12…端末(MS)
14…基地局(BS)
16、21…ルータ
18…バックボーンネットワーク
20…制御サーバ
22…コアネットワーク
23…インターネット
24…テーブル管理部
26…制御部
28…テーブル記憶部
30…隣接基地局テーブル
32…接続基地局テーブル
34…伝搬環境テーブル
36…基地局連携パタンテーブル
38…スループットテーブル
40…フローテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8