(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る光学的処理装置を、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学的処理装置10を示す概略図である。
図2は、光学的処理装置10の光ファイバ2の前端部と光路変更光学システム7とを示す概略図である。
図3は、光路変更光学システム7を示す概略図である。
【0014】
図1に示されるように、光学的処理装置10は、複数の光ファイバ2を含むビーム出射部1と、レンズ3およびレンズ4(コリメートレンズ)と、レンズ3およびレンズ4を通過したビームを分散させる回折格子5(分散素子)と、回折格子5を通過したビームを合焦するレンズ6(スキャンレンズ)(集光レンズ)と、レンズ6を通過したビームの光路を変更する光路変更光学システム7と、を含む。
【0015】
図1および
図2に示されるように、ビーム出射部1は、外部デバイスに入力され、かつ外部デバイスから出力されたビームを伝搬させる複数の光ファイバ2と、幅方向に1列に配列されたファイバを保持する保持部20と、を含む。ビーム出射部1として、例えば、光ファイバアレイを有するビーム出射部を用いることができる。
【0016】
図2に示されるように、光ファイバ2(2A〜2F)は複数の光ファイバ群9(9Aおよび9B)を含むことができる。
【0017】
光ファイバ群9は、互いに光学的に結合することができる複数の光ファイバ2を含む。図示された実施形態では、光ファイバ2Aから光ファイバ2Cは、第1の光ファイバ群9Aを構成し、かつ光ファイバ2Dから光ファイバ2Fは、第2の光ファイバ群9Bを構成する。図示された実施形態では、光ファイバ群9の各々は3つの光ファイバ2を含むが、本発明はそれに限定されない。例えば、光ファイバ群は2つ以上の光ファイバ2を含むことができる。
【0018】
光ファイバ群9Aにおいて、光ファイバ2Bから出射されたビームL1の光路(入射路)は光路変更光学システム7により変更することができ、その結果、ビームは戻りビームL2として光ファイバ2Aおよび光ファイバ2C(出射路)に入射することができる。光ファイバ群9Bにおいて、光ファイバ2Eから出射されたビームL1の光路(入射路)は光路変更光学システム7により変更することができ、その結果、ビームは戻りビームL2として光ファイバ2Dおよび光ファイバ2F(出射路)に入射することができる。
【0019】
入射路としての光ファイバ2の前端面2aと、出射路としての光ファイバ2の前端面2aとは、光路方向において同じ位置に配置されることが望ましい。図示された実施形態では、すべての光ファイバ2(2A〜2F)の前端面2aは、光路方向において同じ位置に配置されている。
【0020】
図1に示されるように、レンズ3およびレンズ4は出射ビームL1をコリメートし、第1のレンズ3は第2のレンズ4の戻り方向側(
図1中、左方)に配置される。第1のレンズ3(第1のコリメートレンズ)は、第2のレンズ4(第2のコリメートレンズ)の倍率よりも高い倍率を有するように設定することができる。第1のレンズ3のレンズ表面の曲率半径は、第2のレンズ4のレンズ表面の曲率半径よりも小さくすることができる。
【0021】
第1のレンズ3および第2のレンズ4は、出射ビームL1の光路方向(
図1中、左右方向)に直列に設置され、第1のレンズ3および第2のレンズ4の一方または両方は、光路方向に移動可能であり、その結果、第1のレンズ3と第2のレンズ4との間の距離Bは調整することができる。
【0022】
回折格子5は、光ファイバ2から出射されたビームL(ビームL1)を異なる波長を有する多数のビームに分散させることができる。回折格子5のビーム出射方向には波長依存性があり、回折格子5は光路変更光学システム7に関して波長ごとに異なるビーム入射位置を設定することが望ましい。
【0023】
レンズ6(スキャンレンズ)は回折格子5を通過する出射ビームL1を合焦し、光路変更光学システム7の内部に焦点を形成することができる。
【0024】
レンズ6(スキャンレンズ)は異なる波長を有する多数のビームをコリメートする。
【0025】
図2および
図3に示されるように、光路変更光学システム7は、複数の光ファイバ2のうちの1つの光ファイバ2から出射されたビームL1の光路を変更し、その結果、そのビームは戻りビームL2(ビームL)として他の光ファイバ2に入射する。
【0026】
光路変更光学システム7は、本体部11と、本体部11の戻り方向側(
図2および
図3中、左方)に本体部11に対してある間隙をもって設置される中間反射部12と、を含む。
【0027】
本体部11は、支持体部13と、支持体部13の戻り方向側の表面に設置される複数のミラー素子15(15a、15b、15c、…)と、を含む。ミラー素子15は、支持体部13の戻り方向側の表面に沿った区域に平行に配設することができ、それによってミラー素子アセンブリ15Aを形成している。
【0028】
ミラー素子15の各々の傾きは調整可能であり、傾きを調整することによってビームの反射方向が制御されると、反射ビームの光路を設定することができる。
【0029】
本体部11として、各々を別々に作動させることができる複数のマイクロミラー素子を有するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を用いることができる。
【0030】
中間反射部12は、複数の窓部17を有し、ビームが窓部を通過できるようにするフレーム18と、フレーム18に設置された複数の中間ミラー19(19a19d)と、を含む。
【0031】
中間ミラー19は、ミラー素子15から反射されたビームが別のミラー素子15の方に反射されるようにフレーム18の出射方向(
図2および
図3中、右方)の表面に設置される。中間ミラー19は、
図2および
図3の垂直方向に、ある間隔で設置される。図示された実施形態では、各窓部17は垂直方向に互いに隣接する中間ミラー19間に形成される。
【0032】
光路変更光学システム7は回折格子5によって分散されたビームの光路をミラー素子15に応じて異なる光路に変更し、その結果、戻りビームL2は光ファイバ2の任意の1つに入射することができる。
【0033】
例えば、戻りビームL2は各波長に応じて異なる光ファイバ2に入射することができる。このため、光路変更光学システム7はスイッチ光学系として機能することができる。この場合、光学的処理装置10は波長選択スイッチとして機能する。
【0034】
光路変更光学システム7は光ファイバ2に入射しないようにビームの方向を制御することができるので、光路変更光学システムは、各波長のビームが他の光ファイバ2のうちの1つに別々に入射するか、または他の光ファイバ2のどれにも入射しないかを選択することができる。
【0035】
このため、光路変更光学システム7はブロック光学系(block optical system)としても機能することができる。この場合、光学的処理装置10は波長ブロッカ(wavelength blocker)として機能する。
【0036】
光路変更光学システム7は、各波長のビームを所定の減衰率で減衰させることによりビームが光ファイバ2に入射するように、光路を変更することができる。例えば、所定の波長のビームは、ミラー素子15を用いて反射量を調整することによりビームを減衰させながら光ファイバ2に入射することができる。
【0037】
このため、光路変更光学システム7はフィルタ光学系としても機能することができる。この場合、光学的処理装置10は波長フィルタとして機能する。
【0038】
図1および
図2に示されるように、光ファイバ2の内部を伝搬するビームおよび光ファイバ2から出射されたビームL1は、異なる波長を有する多数の信号ビームを含む波長多重光とすることができる。
【0039】
光ファイバ2の前端面2aから出射されたビームL1は、レンズ3およびレンズ4(コリメータレンズ)によってコリメートされ、次に、回折格子5によって異なる波長を有する多数のビームに分散される。
【0040】
分散された出射ビームL1は、レンズ6(スキャンレンズ)によって合焦されながら、光路変更光学システム7に向けて進む。
【0041】
図2および
図3に示されるように、光路変更光学システム7において、出射ビームL1は中間反射部12の各窓部17を通過して各ミラー素子15に到達し、ミラー素子15から反射されたビームは中間ミラー19に向けて進む。
【0042】
例えば、
図3に示されるように、光ファイバ2Bから出射されたビームL1はミラー素子15bにより反射され、次に、異なる波長を有する反射ビームL3およびL4はそれぞれ中間ミラー19aおよび19bに向けて進むことができる。出射ビームL1がミラー素子15によって最初に反射される点は、第1の反射点R1と呼ばれる(
図3を参照)。本実施形態では、第1の反射点R1はミラー素子15bである。
【0043】
出射ビームL1の焦点位置は第1の反射点R1またはそれに近い位置であることが望ましい。
【0044】
反射ビームL3および反射ビームL4はそれぞれ中間ミラー19aおよび中間ミラー19bにより反射され、反射ビームL5および反射ビームL6はそれぞれミラー素子15aおよびミラー素子15cに向けて進んでミラー素子15aおよびミラー素子15cにより反射され、次に、反射ビーム(戻りビームL2)は中間反射部12の窓部17を通過して光ファイバ2Aおよび光ファイバ2C(出射路)に向けて進む(
図2を参照)。
【0045】
図3に示されるように、ビームL3およびビームL4が中間ミラー19(19aおよび19b)で反射される点は中間反射点Riと呼ばれる。
【0046】
中間ミラー19から反射されたビームL5およびビームL6がミラー素子15により反射される点は、第2の反射点R2と呼ばれる。本実施形態では、第2の反射点R2はミラー素子15aおよびミラー素子15cである。
【0047】
図1および
図2に示されるように、戻りビームL2はレンズ6によってコリメートされ、レンズ3およびレンズ4によって合焦され、次に、光ファイバ2の前端面2aに入射する。
【0048】
図4および
図5に示されるように、光ファイバ2B(入射路)から出射された出射ビームL1は、光ファイバ2Bに隣接する光ファイバ2C(出射路)に戻りビームL2として入射する。
【0049】
図におけるPfは、光ファイバ2B(入射路)と光ファイバ2C(出射路)との間のピッチを示す。Pdは、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチ(幅方向における光ファイバ2間の距離)を示す。
【0050】
図6に示されるように、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチPdは、ミラー素子15に対する中間ミラー19の距離によって決まる。
【0051】
例えば、中間ミラー19が実線で示された位置(中間ミラー19A)に配置されると、光路方向(
図6の左右方向)におけるミラー素子15に対する中間ミラー19Aの距離がD1である場合、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチはPd1になる。
【0052】
中間ミラー19が二点鎖線で示された位置(中間ミラー19B)に配置されると、ミラー素子15と中間ミラー19との間の距離がD1よりも大きいD2である場合、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチは、二点鎖線で示されるように、Pd1よりも大きいPd2になる。
【0053】
ピッチPdが中間ミラー19の位置に従って変化する理由は、中間反射点Riおよび第2の反射点R2の位置が、中間ミラー19の位置に従って、変化するからである。
【0054】
図7に示されるように、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチがPd1でありかつ戻りビームL2が光ファイバ2Cの軸位置A1に入射する場合には、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチが
図8に示されるようにPd2であると、戻りビームL2の入射位置は光ファイバ2Cの軸位置A1からずらされる。
【0055】
すなわち、中間反射部12が設計位置よりも戻り方向側(
図6中、左方)に設置される場合、中間ミラー19は戻り方向側の位置に配置される。したがって、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチPdは大きくなり、したがって
図8に示されるように戻りビームL2の位置ずれが生じるという問題がある。
【0056】
しかし、本体部11に対する中間反射部12の位置調整は、光路変更光学システム7の構造の制約に起因して困難となることがある。この場合、戻りビームL2の位置ずれを光路変更光学システム7の調整により補正することは容易ではない。
【0057】
図9および
図10に示されるように、光学的処理装置10において、レンズ3およびレンズ4(コリメートレンズ)の一方または両方は、光軸方向(
図9および
図10中、左右方向)に移動可能であるので、出射ビームL1と戻りビームL2との間のピッチPdは、レンズ3およびレンズ4の位置調整により、調整することができる。その理由は以下の通りである。
【0058】
光結像比は、第1のレンズ3と第2のレンズ4との間の距離Bによって決まる。すなわち、レンズ3とレンズ4との間の距離B(B1)が
図9に示されるように比較的大きい場合、光結像比は小さくなる。レンズ3とレンズ4との間の距離B(B2)が
図10に示されるように比較的小さくなる場合、光結像比は大きくなる。
【0059】
このため、
図8に示されるように、戻りビームL2の位置ずれがある場合、光結像比は、
図10に示されるように、レンズ3とレンズ4との間の距離B(B2)を調整することによって、変更される。したがって、ピッチPdは、
図7に示されるように戻りビームL2の光路の位置を調整することによって調整され、それによって戻りビームL2は光ファイバ2Cの軸位置A1に入射することができる。
【0060】
したがって、光路変更光学システム7の中間ミラー19の位置が調整不良である場合であっても、出力特性は、結合損失を抑制することによって、改善することができる。
【0061】
レンズ3およびレンズ4のコリメーションに悪影響を及ぼすことなく最適の光結像比を得るためには、光ファイバ2とレンズ3およびレンズ4との間の距離を適切に設定することが必要である。このため、必要ならば、レンズ3およびレンズ4の位置を調整して、光ファイバ2からの距離を適切に設定することができる。
【0062】
図示した実施形態では、2つのレンズ(レンズ3およびレンズ4)がコリメートレンズとして使用されているが、コリメートレンズの数は3つ以上とすることができる。その場合には、レンズのうちの少なくとも2つの間の距離を光路方向に調整可能とすることができる。
【0063】
1つの球面レンズだけがコリメートレンズとして使用される場合、球面収差の影響に起因して結合効率が低くなるという問題がある。それに比べて、本発明によれば、多数のレンズがコリメートレンズとして使用されるので、球面収差はレンズ間の距離を適切に設定することによって低減させることができる。
【0064】
図11は、光学的処理装置10の特定の構成の一例を示す。図示された光学的処理装置10はケース21を備え、ケース21には、ビーム出射部1と、レンズ24(コリメートレンズ)と、レンズ24からのビームを分散させる回折格子5と、レンズ6(スキャンレンズ)と、光路変更光学システム7と、が設けられている。符号22及び23はミラーを示す。
【0065】
ビーム出射部1の光ファイバの数は特に限定されず、任意とすることができ、例えば、3つ以上とすることができる。さらに、光路変更光学システムのミラー素子の数は1つまたは複数に任意に設定することができる。さらにミラー素子および中間ミラーでビームを反射する回数は前記実施形態に限定されない。