特許第5964707号(P5964707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964707
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】沈砂分離装置
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/28 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   B03B5/28 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-204809(P2012-204809)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-57923(P2014-57923A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】数井 徹
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136934(JP,A)
【文献】 特公昭42−13069(JP,B1)
【文献】 国際公開第2008/065858(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120850(US,A1)
【文献】 米国特許第4652363(US,A)
【文献】 特開2004−223465(JP,A)
【文献】 特開平4−35752(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3027401(JP,U)
【文献】 特開平3−146147(JP,A)
【文献】 特開2007−307489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂を含む原水を流動させる螺旋流路と、
前記螺旋流路の流路脇に形成されたスリットと、を有し、
前記螺旋流路を流動する前記原水に含まれる前記砂の一部を前記スリットから落下させて分離する分離槽を備える沈砂分離装置であって、
前記螺旋流路の途中に前記原水を導入するための開口部を少なくとも1つ備えることにより、前記螺旋流路の長さ方向において前記原水を前記螺旋流路に導入する導入位置を変更可能に構成されている
ことを特徴とする沈砂分離装置。
【請求項2】
前記螺旋流路の途中に相互に位置をずらして形成された複数の開口部と、
前記複数の開口部のうち、一の開口部の形成部位に装着されて前記原水を前記螺旋流路に導入可能とする導入ユニットと、
を備え、
前記複数の開口部のいずれかに前記導入ユニットを装着することにより、前記導入位置を変更可能とした
ことを特徴とする請求項1に記載の沈砂分離装置。
【請求項3】
前記導入ユニットは、前記一の開口部が臨む位置において前記螺旋流路を長さ方向で仕切るとともに、原水導入穴が形成された仕切り部と、原水供給管を通して供給される前記原水を前記螺旋流路に導入すべく前記仕切り部の原水導入穴に接続された導入管と、を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の沈砂分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる砂を分離する沈砂分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場、浄水場などの水処理施設では、砂を含む原水を処理する原水処理システムが利用されている。原水処理システムとしては、たとえば特許文献1に記載されているように、原水を汲み上げる揚砂装置と、この揚砂装置によって汲み上げられた原水から砂を分離する沈砂分離装置と、この沈砂分離装置によって分離された砂を搬送する砂搬送装置と、を備えたものが知られている。
【0003】
また、原水処理システムに用いて好適な沈砂分離装置として、螺旋状に形成された螺旋流路を用いて、原水に含まれる砂を分級しつつ分離する機能を備えたものが知られている(たとえば、特許文献2を参照)。この沈砂分離装置においては、螺旋流路の流路脇にスリットを形成し、螺旋流路を流れる原水に含まれる砂の一部をスリットから落下させることにより、粒径の大きい砂と粒径の小さい砂に分離する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−146147号公報
【特許文献2】特開2007−307489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記螺旋流路を用いた沈砂分離装置においては、たとえば、原水を螺旋流路に流したときに、螺旋流路の終端またはその近傍まで水と一緒に運ばれて欲しい砂が、螺旋流路の途中でスリットから落下してしまい、十分な分離精度が得られない場合があった。
【0006】
本発明の主な目的は、砂を含む原水を螺旋流路に流して砂を分離するときの分離精度を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
砂を含む原水を流動させる螺旋流路と、
前記螺旋流路の流路脇に形成されたスリットと、を有し、
前記螺旋流路を流動する前記原水に含まれる前記砂の一部を前記スリットから落下させて分離する分離槽を備える沈砂分離装置であって、
前記螺旋流路の途中に前記原水を導入するための開口部を少なくとも1つ備えることにより、前記螺旋流路の長さ方向において前記原水を前記螺旋流路に導入する導入位置を変更可能に構成されている
ことを特徴とする沈砂分離装置である。
【0008】
本発明の第2の態様は、
前記螺旋流路の途中に相互に位置をずらして形成された複数の開口部と、
前記複数の開口部のうち、一の開口部の形成部位に装着されて前記原水を前記螺旋流路に導入可能とする導入ユニットと、
を備え、
前記複数の開口部のいずれかに前記導入ユニットを装着することにより、前記導入位置を変更可能とした
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の沈砂分離装置である。
【0009】
本発明の第3の態様は、
前記導入ユニットは、前記一の開口部が臨む位置において前記螺旋流路を長さ方向で仕切るとともに、原水導入穴が形成された仕切り板と、原水供給管を通して供給される前記原水を前記螺旋流路に導入すべく前記仕切り板の原水導入穴に接続された導入管と、を有する
ことを特徴とする上記第2の態様に記載の沈砂分離装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、砂を含む原水を螺旋流路に流して砂を分離するときの分離精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る沈砂分離装置の構成例を示すもので、図中(A)はその要部平面図、(B)はその側面図である。
図2】沈砂分離装置が備える分離槽の内部構造を示す平面図である。
図3図1のS−S断面図である。
図4】分離槽の上板部分を示す平面図である。
図5】導入ユニットの構成を示す図である。
図6】蓋体の構成を示す平面図である。
図7】パッキンの構成を示す平面図である。
図8】螺旋流路を真っ直ぐにのばして表記したときの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態においては、次の順序で説明を行う。
1.沈砂分離装置の構成
2.沈砂分離装置の使用方法
3.実施の形態に係る効果
4.変形例等
【0013】
<1.沈砂分離装置の構成>
図1は本発明の実施の形態に係る沈砂分離装置の構成例を示すもので、図中(A)はその要部平面図、(B)はその側面図である。また、図2は沈砂分離装置が備える分離槽の内部構造を示す平面図であり、図3図1のS−S断面図である。
図示した沈砂分離装置1は、大きくは、分離槽2と搬送装置3とを備えた構成となっている。
【0014】
(分離槽)
分離槽2は、図示しない原水供給管を通して供給される原水に含まれる砂を分離するものであり、より具体的には、原水に含まれる砂を、粒径の大きい砂と粒径の小さい砂に分離(分級)するものである。分離槽2は、全体に筒形に形成されている。分離槽2の上部は略円筒形に形成され、分離槽2の下部は略円錐形に形成されている。分離槽2の上部には螺旋流路4が形成されている。螺旋流路4は、外周側を流路の始端4aとし、中心側を流路の終端4bとして、螺旋状に形成されている。螺旋流路4の流路脇にはスリット5(図2図3参照)が形成されている。スリット5は、螺旋流路4の幅方向の一方側(外周側)に形成されている。
【0015】
螺旋流路4は、側板11と底板12と上板13を用いて構成されている。側板11、底板12および上板13は、それぞれ分離槽2の一構成要素として設けられている。このうち、側板11は、螺旋流路4に原水を流したときに、原水が流れる方向を規制(案内)するものである。側板11は、螺旋流路4の幅方向の両側に位置する状態で螺旋状に配置されている。
【0016】
底板12は、螺旋流路4に原水を流したときに、原水を上面で受けるものである。底板12は、螺旋流路4の始端4aから終端4bにかけて同じ高さになるように配置されている。ただし、これに限らず、螺旋流路4の始端4aから終端4bに向けて底板12が徐々に低位となるように配置してもよいし、途中から低位となるように配置してもよい。底板12の上面は、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態に配置されている。底板12の傾斜角度は、たとえば30°に設定されている。底板12は、螺旋流路4の幅方向で対向する一対の側板11のうち、内周側の側板11の側面に取り付けられている。この取付状態のもとでは、底板12の内周側が外周側よりも高位となるように、上記所定の角度で底板12が傾斜している。上記のスリット5は、底板12の外周側の縁と、その近傍に位置する側板11との間に形成されている。スリット5は、螺旋流路4に沿って螺旋状に形成されている。
【0017】
上板13は、螺旋流路4の上方を塞ぐことにより、上述した側板11および底板12とともに螺旋流路4を区画するものである。上板13は、側板11の上端部に取り付けられている。上板13には複数(図例では3つ)の開口部15,16,17が形成されている。これらの開口部15,16,17は、螺旋流路4の途中に相互に位置をずらして形成されている。具体的には、開口部15は、螺旋流路4の始端4aよりも下流側に設けられ、開口部17は、螺旋流路4の終端4bよりも上流側に設けられている。また、開口部15は、開口部16よりも螺旋流路4の上流側に設けられ、開口部17は、開口部16よりも螺旋流路4の下流側に設けられている。また、螺旋流路4の螺旋中心を基準とした円周方向において、開口部15と開口部17は180°位相がずれた位置に配置され、開口部16は、開口部15から開口部17に至る螺旋流路4の中間位置に配置されている。
【0018】
開口部15,16,17は、それぞれ同じ形状および寸法に形成されている。さらに詳述すると、開口部15,16,17は、それぞれ略台形状に形成されている。また、図4に示すように、開口部15の周囲には、複数(図例では8つ)の取付用穴(ネジ穴)18が形成されている。同様に、開口部16の周囲には複数の取付用穴19が形成され、開口部17の周囲にも複数の取付用穴20が形成されている。
【0019】
上板13の各開口部15,16,17には、図5に示す導入ユニット21、または、図6に示す蓋体22を装着可能となっている。たとえば、上板13の開口部15に導入ユニット21を装着した場合は、それ以外の開口部16,17にそれぞれ蓋体22が装着される。また、上板13の開口部16に導入ユニット21を装着した場合は、それ以外の開口部15,17にそれぞれ蓋体22が装着され、上板13の開口部17に導入ユニット21を装着した場合は、それ以外の開口部15,16にそれぞれ蓋体22が装着される。また、後述する原水供給管を螺旋流路4の始端4aに接続する場合は、開口部15,16,17にそれぞれ蓋体22が装着される。
【0020】
(導入ユニット)
まず、導入ユニット21の構成について説明する。図5の(A)は導入ユニット21を上方から見た図であり、(B),(C)はそれぞれ導入ユニット21を側方から見た図である。なお、図中の点線は、相互に対応する部分を示す。
【0021】
導入ユニット21は、上述した複数の開口部15,16,17のうち、いずれか一つの開口部の形成部位に装着された場合に、この開口部を通して原水を螺旋流路4に導入可能とするものである。導入ユニット21をいずれの開口部の形成部位に装着するかは、沈砂分離装置1を使用する使用者が任意に選択可能となっている。
【0022】
導入ユニット21は、仕切り部23と、蓋部24と、導入管25とを用いて構成されている。仕切り部23は、導入ユニット21が装着される開口部が臨む位置において螺旋流路4を長さ方向で仕切るものである。仕切り部23は、螺旋流路4の断面形状にあわせて正面視台形に形成されている。また、仕切り部23は、平らな板状に形成されている。仕切り部23の下辺は、上述した底板12の傾斜角度にあわせて傾斜している。仕切り部23には原水導入穴26が設けられている。原水導入穴26は、導入管25の外径にあわせて円形に形成されている。
【0023】
蓋部24は、導入ユニット21が装着される開口部において、この開口部を塞ぐ状態で配置されるものである。蓋部24は、仕切り部23と直角をなす向きで、平らな板状に形成されている。蓋部24は、導入ユニット21が装着される開口部の開口形状にあわせて略台形状に形成されている。蓋部24の周縁部には、複数の取付用穴(抜き穴)27が形成されている。取付用穴27は、上述した取付用穴18,19,20と同じ位置関係で蓋部24に形成されている。蓋部24には管挿入穴28が設けられている。管挿入穴28は、導入管25の外径にあわせて円形に形成されている。
【0024】
導入管25は、図示しない原水供給管を通して供給される原水を螺旋流路4に導入するものである。導入管25は、断面円形の管であって、全体的に略S字形に形成されている。導入管25の一端は仕切り部23に接続されている。この接続状態のもとでは導入管25の一端の開口が、仕切り部23の原水導入穴26と同心円状に配置されている。導入管25は、蓋部24の管挿入穴28に挿入されている。導入管25の他端にはフランジ部29が設けられている。フランジ部29には複数(図例では8つ)の連結用穴30が形成されている。導入管25の他端にはフランジ部29の連結用穴30を利用して原水供給管(不図示)を接続(連結)可能となっている。原水供給管は、沈砂分離装置1で処理する原水(主に砂と水が混合したもの)を供給するものである。原水供給管は、導入ユニット21の導入管25だけでなく、螺旋流路4の始端4aに設けられた導入管(不図示)にも接続可能となっている。このため、螺旋流路4の長さ方向において原水供給管を接続可能な箇所は、螺旋流路4の始端4aの箇所と、開口部15が設けられた箇所と、開口部16が設けられた箇所と、開口部17が設けられた箇所の、合計4箇所となっている。この導入ユニット21を、仕切り部23と、蓋部24と、導入管25とでユニット化したことにより、取付け取外しが容易となり、作業時間を短縮することができる。また、仕切り部23を設けていることから逆流を防止し、始端4aの箇所に閉塞板を設置する必要がない。
【0025】
(蓋体)
次に、蓋体22の構成について説明する。蓋体22は、導入ユニット21が装着される開口部以外の開口部の形成部位に、その開口部を塞ぐ状態で装着されるものである。蓋体22は、たとえばSS400などの金属材料により、平らな板状に形成されている。蓋体22は、これが装着される開口部の開口形状にあわせて略台形状に形成されている。蓋体22の周縁部には、複数の取付用穴(抜き穴)31が形成されている。取付用穴31は、上述した取付用穴18,19,20と同じ位置関係で蓋体22に形成されている。蓋体22の上面には取手32が設けられている。蓋体22は、図7に示すパッキン33を介して上板13に装着される。
【0026】
(パッキン)
パッキン33は、蓋体22を上板13に装着する場合に、両者の間に介在することによりシール効果を発揮するシール部材である。パッキン33は、たとえば、合成ゴムなどのゴム状弾性体によって構成されている。パッキン33は、蓋体22が装着される開口部の開口形状にあわせて略台形の枠状に形成されている。パッキン33の開口の形状および寸法は、各開口部15,16,17の形状および寸法と同一に設定されている。また、パッキン33の周縁部には、複数の取付用穴(抜き穴)34が形成されている。取付用穴34は、上述した取付用穴18,19,20と同じ位置関係でパッキン33に形成されている。このパッキン33は、蓋体22を上板13に装着する場合だけでなく、導入ユニット21を上板13に装着する場合にも、蓋部24と上板13の間に介在させて取り付け可能である。
【0027】
再び図1図3に戻って説明を続ける。分離槽2は、支持脚35によって支持されている。分離槽2の中心部には、オーバーフロー式の排水部36が設けられている。排水部36は、螺旋流路4の中心部に円筒状の空間として形成されている。螺旋流路4の終端4bは、この排水部36に臨むように配置されている。排水部36の上部は、上板13よりも上方に突出し、その突出端に上蓋37が取り付けられている。上蓋37は、排水部36の上端の開口を塞ぐ状態で取り付けられている。
【0028】
排水部36には排水管38が配置されている。排水管38は略L字形に曲がっている。排水管38の一部(垂直に配置された部分)は排水部36と同心状に配置されている。また、排水部36において、排水管38の上端は上板13よりも低位に配置されている。排水管38の他部(水平に配置された部分)は、分離槽2の外壁を通して外部へと引き出され、その引き出し端に原水排出管(不図示)を接続(連結)可能となっている。
【0029】
分離槽2の下部は、図示はしないが、複数の分級室に分けられている。これらの分級室は、原水供給管を通して供給される原水を螺旋流路4に流したときに、その途中でスリット5から落下した砂や、螺旋流路4の終端4bまで水と一緒に運ばれた砂を、分けて集積するためのものである。具体例の一つとして、原水に含まれる砂を、その粒径の違いにより大きく2つに分ける場合は、螺旋流路4の途中でスリット5から落下した砂と、スリット5から落下することなく螺旋流路4の終端4bまで運ばれた砂を、別々の分級室に集積する構成とすればよい。また、それよりも更に細かく砂を分けたい場合は、螺旋流路4の途中でスリット5から落下する砂を、その落下位置の違いにより別々の分級室に集積する構成とすればよい。
【0030】
(搬送装置)
搬送装置3は、分離槽2で分離された砂を搬送するものである。搬送装置3は、砂搬送部40と砂取り出し部41と駆動モータ42を有している。砂搬送部40は、図示しないスクリューの回転によって砂を搬送するスクリューコンベアを用いて構成されている。砂搬送部40は、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態に設置されている。砂搬送部40の傾斜角度は、たとえば、30°以上、40°以下の範囲に設定されている。砂搬送部40の下端側は分離槽2の下部(分級室)に接続されている。砂搬送部40は、分離槽2で螺旋流路4を用いて分離された砂を受けて、スクリューの回転により搬送し得るようになっている。駆動モータ42は、砂搬送部40の上端部に実装されている。駆動モータ42は、スクリューを回転させる駆動源となる。また、砂搬送部40は、支柱43によって支持されている。
【0031】
砂取り出し部41は、砂搬送部40による搬送路の終端(上端)に接続されている。砂取り出し部41は、砂搬送部40によって所定の位置まで搬送された砂を自重落下によって取り出すためのものである。砂取り出し部41は、砂搬送部40の上端からほぼ垂直に垂下した状態で配置されている。また、砂取り出し部41は、断面四角形または円形の筒状に形成され、その下端部に図示しない砂回収容器(ホッパ等)を設置して砂を回収できるようになっている。
【0032】
なお、分離槽2で複数の分級室に分けて砂を集積した場合は、分級室と1対1の対応関係で搬送装置3を設置することにより、粒径の異なる砂を別々の搬送経路で搬送し、取り出すことができる。その場合、分離槽2で分離した砂を搬送する手段としては、スクリューコンベアを用いた搬送装置3に限らない。たとえば、分離槽2の下部(分級室)に図示しない砂排出管を接続し、この砂排出管を通して水と一緒に砂を排出してもよい。
【0033】
<2.沈砂分離装置の使用方法>
まず、沈砂分離装置1を使用する場合は、たとえば上記図1に示すように、上板13の開口部15に導入ユニット21を装着し、これ以外の開口部16,17にそれぞれ蓋体22を装着する。また、分離槽2の排水部36につながる排水管38の端部に、図示しない原水排出管を接続する。また、搬送装置3の砂取り出し部41の下に、図示しない砂回収容器を設置する。
【0034】
導入ユニット21の仕切り部23については、開口部15の形成部位で螺旋流路4を塞ぐように、螺旋流路4内に配置する。また、導入ユニット21の蓋部24については、開口部15を塞ぐように上板13に取り付ける。具体的には、蓋部24に設けられた複数の取付用穴27にそれぞれ六角ボルト(不図示)を挿入するとともに、この六角ボルトの雄ネジ部を上板13の取付用穴18に螺合させて適度なトルクで締め付けることにより、開口部15の形成部位で蓋部24を上板13に固定する。導入管25は、あらかじめ仕切り部23および蓋部24に取り付けておく。そして、仕切り部23および蓋部24を取り付けた後に、導入管25に原水供給管を接続する。これにより、導入管25の端部の開口は、仕切り部23の原水導入穴26を通して、螺旋流路4の下流側を向いて配置される。
【0035】
一方、蓋体22については、開口部16を塞ぐように上板13に取り付ける。具体的には、上板13の上面に開口部16を囲むようにパッキン33を配置し、その上に蓋体22を被せるように載せる。そして、蓋体22に設けられた取付用穴31とパッキン33に設けられた取付用穴34に六角ボルト(不図示)を挿入するとともに、この六角ボルトの雄ネジ部を上板13の取付用穴19に螺合させて適度なトルクで締め付けることにより、開口部16の形成部位で蓋体22を上板13に固定する。
【0036】
これと同様に、他の蓋体22についても、開口部17を塞ぐように上板13に取り付ける。具体的には、上板13の上面に開口部17を囲むようにパッキン33を配置し、その上に蓋体22を被せるように載せる。そして、蓋体22に設けられた取付用穴31とパッキン33に設けられた取付用穴34に六角ボルト(不図示)を挿入するとともに、この六角ボルトの雄ネジ部を上板13の取付用穴20に螺合させて適度なトルクで締め付けることにより、開口部17の形成部位で蓋体22を上板13に固定する。
【0037】
以上の準備作業を行った後、原水供給管を通して沈砂分離装置1に原水の供給を開始する。このとき、原水供給管によって供給される原水は、導入ユニット21の導入管25を通して、仕切り部23の原水導入穴26から螺旋流路4に導入される。これにより、原水が螺旋流路4に導入される位置は、導入ユニット21が装着されている上板13の開口部15の形成部位となる。したがって、螺旋流路4における実効的な流路長は、開口部15の形成部位から螺旋流路4の終端4bまでの長さとなる。ちなみに、螺旋流路4の実効的な流路長とは、原水の導入位置から螺旋流路4の終端4bまでの流路長をいう。
【0038】
また、第2の取り付け形態として、上板13の開口部16に導入ユニット21を取り付けてその導入管25に原水供給管を接続し、他の開口部15,17にそれぞれ蓋体22を取り付けることもできる。この場合、原水が螺旋流路4に導入される位置は、導入ユニット21が装着されている上板13の開口部16の形成部位となる。したがって、螺旋流路4における実効的な流路長は、開口部16の形成部位から螺旋流路4の終端4bまでの長さとなる。
【0039】
さらに、第3の取り付け形態として、上板13の開口部17に導入ユニット21を取り付けてその導入管25に原水供給管を接続し、他の開口部15,16にそれぞれ蓋体22を取り付けることもできる。この場合、原水が螺旋流路4に導入される位置は、導入ユニット21が装着されている上板13の開口部17の形成部位となる。したがって、螺旋流路4における実効的な流路長は、開口部17の形成部位から螺旋流路4の終端4bまでの長さとなる。
【0040】
また、第4の取り付け形態として、原水供給管を螺旋流路4の始端4aに接続した場合は、原水が螺旋流路4に導入される位置は、螺旋流路4の始端4aの位置となる。したがって、螺旋流路4における実効的な流路長は、螺旋流路4の始端4aから終端4bまでの長さ(つまり螺旋流路4の全長相当)となる。
【0041】
<3.実施の形態に係る効果>
このように本発明の実施の形態に係る沈砂分離装置1においては、螺旋流路4の始端4aおよび終端4bの位置を変えることなく、螺旋流路4の実効的な流路長を変えられるようになっている。このため、砂を含む原水を螺旋流路4に流して砂を分離するときの分離精度を高めることができる。以下、その理由を説明する。
【0042】
まず、原水供給管を通して供給される原水を螺旋流路4に流したときに、その原水に含まれる砂は、粒径が大きいほど水中で速く沈降する。このため、原水に含まれる砂の中でも、たとえば、比較的粒径が大きい砂は、螺旋流路4を流れるときに、重力の作用と遠心力の作用を受けて、速やかに底板12の上面に達し外周側に寄せられる。したがって、粒径の大きい砂は、螺旋流路4の途中でスリット5から落下する確率が高くなる。これに対して、比較的粒径が小さい砂は、螺旋流路4を流れるときに、重力の作用と遠心力の作用を受けても、原水中に浮遊してなかなか沈降せず、原水の流れに乗って下流側に流される。このため、粒径が小さい砂は、螺旋流路4の途中でスリット5から落下することなく、螺旋流路4の終端4bまで水と一緒に運ばれる確率が高くなる。
【0043】
また、螺旋流路4の長さ方向において、粒径が大きい砂がスリット5から落下する位置は、砂の粒径が大きいほど上流側になる。つまり、砂の粒径が大きくなるほど、この砂が螺旋流路4に沿って移動するときの流動距離が短くなる。ここで記述する流動距離とは、螺旋流路4に原水を導入した位置から、その原水に含まれる砂が、スリット5から落下するまで、または螺旋流路4の終端4bに到達するまでに、当該砂が螺旋流路4上を移動する距離をいう。
【0044】
ここで、螺旋流路4を真っ直ぐにのばして表記したときの展開図を図8に示す。図8においては、螺旋流路4の全長(始端4aから終端4bまでの距離)をLsとし、この螺旋流路4に予め決められた条件(圧力等)で原水を導入したときに、粒径Dの砂が螺旋流路4上を移動する流動距離(厳密には多少のバラツキがある)をLfとしている。また、開口部15の形成部位を原水の導入位置としたときの螺旋流路4の実効的な流路長をL1とし、開口部16の形成部位を原水の導入位置としたときの螺旋流路4の実効的な流路長をL2とし、開口部17の形成部位を原水の導入位置としたときの螺旋流路4の実効的な流路長をL3としている。これらの大小関係は、「Ls>L1>L2>Lf>L3」となっている。
【0045】
そうした場合、粒径Dの砂が落下する位置は、螺旋流路4に原水を導入する位置によって次のように変わる。すなわち、粒径Dの砂は、原水の導入位置を螺旋流路4の始端4aとした場合はP0位置でスリット5から落下し、原水の導入位置を開口部15の形成部位とした場合はP0位置よりも下流側のP1位置でスリット5から落下する。また、粒径Dの砂は、原水の導入位置を開口部16の形成部位とした場合はP1位置よりも下流側のP2位置でスリット5から落下し、原水の導入位置を開口部17の形成部位とした場合は螺旋流路4の終端4bまで運ばれる。
【0046】
これにより、沈砂分離装置1を使用する使用者は、螺旋流路4の長さ方向において、ある位置範囲でスリット5から落下させたい粒径の砂がある場合に、この砂が所望の位置範囲でスリット5から落下するように、原水の導入位置を変更することができる。具体的には、たとえば、以下のように原水の導入位置を変更することができる。
【0047】
すなわち、螺旋流路4の始端4aから原水を導入したときに、所望の位置範囲でスリット5から落下させたい砂が、所望の位置範囲よりも上流側で落下してしまう場合は、原水の導入位置を開口部15の形成部位、または開口部16の形成部位、あるいは開口部17の形成部位に変更することにより、その砂を所望の位置範囲でスリット5から落下させることができる。
【0048】
また、螺旋流路4の始端4aまたは開口部15の形成部位から原水を導入したときに、螺旋流路4の終端4bまで到達させたい砂が途中でスリット5から落下してしまう場合は、原水の導入位置を開口部16の形成部位または開口部17の形成部位に変更することにより、その砂を螺旋流路4の終端4bに到達させることができる。
【0049】
また、開口部16または開口部17の開口部位から原水を導入したときに、所望の位置範囲でスリット5から落下させたい粒径の砂が、所望の位置範囲よりも下流側でスリット5から落下してしまう場合は、原水の導入位置を螺旋流路4の始端4aまたは開口部15の形成部位に変更することにより、その砂を所望の位置範囲でスリット5から落下させることができる。
【0050】
また、開口部16または開口部17の開口部位から原水を導入したときに、螺旋流路4の途中でスリット5から落下させたい砂が、螺旋流路4の終端4bまで運ばれてしまう場合は、原水の導入位置を螺旋流路4の始端4aまたは開口部15の形成部位に変更することにより、その砂を螺旋流路4の途中でスリット5から落下させることができる。
【0051】
このように本発明の実施の形態に係る沈砂分離装置1においては、分離対象の砂が予め想定した位置で螺旋流路4から落下するように、原水の導入位置を変更して螺旋流路4の実効的な流路長を調整することができる。したがって、予め決められた一定の位置(螺旋流路4の始端4a)から原水を導入する場合に比べて、砂の分離精度を格段に高めることが可能となる。
【0052】
<4.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0053】
たとえば、原水の導入位置を変更可能とするために分離槽2の上板13に形成する開口部の個数は、上述した3個に限らず、1個または2個、あるいは4個以上であってもよい。
【0054】
上記実施の形態においては、螺旋流路4の幅方向で対向する一対の側板11のうち、内周側の側板11に底板12を取り付けるとともに、この底板12を外周側が内周側よりも低位となるように傾斜させたが、本発明はこれに限らない。たとえば、図示はしないが、螺旋流路4の幅方向で対向する一対の側板11のうち、外周側の側板11に底板12を取り付けるとともに、この底板12を外周側が内周側よりも高位となるように傾斜させた構成としてもよい。この構成を採用した場合は、スリット5が螺旋流路4の内周側に形成される。
【0055】
上記実施の形態においては、分離槽2の上板13に複数の開口部15,16,17を形成したが、これに限らず、螺旋流路4に通じる分離槽2の外周壁に上記同様の目的で複数の開口部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…沈砂分離装置
2…分離槽
3…搬送装置
4…螺旋流路
5…スリット
15,16,17…開口部
21…導入ユニット
23…仕切り部
25…導入管
26…原水導入穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8