特許第5964712号(P5964712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964712
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20160721BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20160721BHJP
   E06B 1/70 20060101ALI20160721BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   E06B7/14
   E06B7/22 B
   E06B1/70 Z
   E05D15/06 124A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-216659(P2012-216659)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70404(P2014-70404A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】末守 真史
(72)【発明者】
【氏名】村山 徳和
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−097255(JP,A)
【文献】 特許第4013198(JP,B2)
【文献】 特開2008−308986(JP,A)
【文献】 特許第3351519(JP,B2)
【文献】 実開昭56−124192(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00− 7/36
E05D 15/00−15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠に対してレール部を着脱可能に配設した開口枠と、前記レール部を介して前記開口枠にスライド可能に配設し、かつ前記開口枠を閉じた場合に互いに縦框を突き合わせた状態で配置される複数の障子とを備えた建具において、
前記レール部は、前記開口枠を閉じた際の前記障子の突き合わせ位置から長手方向にずれた位置が分割面となる状態で前記下枠の長手方向に沿って複数配設し、
前記レール部と前記下枠との間には長手方向において前記障子の突き合わせ位置を含む部位の一部にのみ止水材を配設し、かつ前記下枠において前記止水材の両端部に対応する位置にそれぞれ排水孔を設けたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記縦框を突き合わせた状態で配置される障子には、個々の下端部に互いに見込み方向に重なる重合ヒレ部を有したブロック部材を配設したことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記レール部は、その上部に障子を支持し、かつ前記下枠の上面に対して平坦状に配置される平板状の障子支持面を有したことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記レール部の見付け面に前記止水材を貼り付けたことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、特に、下枠に対してレール部を着脱可能に配設した開口枠と、レール部を介して開口枠にスライド可能に配設し、かつ開口枠を閉じた場合に互いに縦框を突き合わせた状態で配置される複数の障子とを備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の建具には、バリヤフリーを実現するために、障子を支持するレール部の上端部を平板状に構成し、かつ全体の高さを揃えるようにしたものが提供されている。この種の建具では、下枠に段差を無くすことができるため、高齢者や障害者にとっても安全性が高く、使い勝手が良いものとなる。しかしながら、レール部の上端部を平坦状に構成した建具では、内部に進入したゴミ等の異物を除去する作業が煩雑になる等、メインテナンス性を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。
【0003】
このため従来では、下枠に対してレール部を着脱可能に構成し、メインテナンスを行う際に下枠からレール部を取り外すようにしたものも提供されている。長尺部材であるレール部材は、例えば等分割してあり、その取り扱い性についても考慮されている。こうした建具によれば、メインテナンス性を損なうことなくバリヤフリーを具現化できるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4286627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、4枚建て等、開口枠を閉じた際に2枚の障子が互いに縦框を突き合わせた状態となる建具では、室外側から風圧力を受けた際にそれぞれの障子が室内側に向けて凸となるように湾曲する場合がある。上述した特許文献1に記載の建具では、突き合わせられる縦框の間に互いに見込み方向に重なるヒレ部分を有したブロック状部材を設けて気密性を高めるようにしているものの、障子のそれぞれが湾曲状に変形した場合、縦框の相互間距離が広がることになり、外気の室内への進入を完全に遮断することは困難である。
【0006】
ここで、下枠に対してレール部が着脱可能に構成された建具では、障子から下枠に滴下した雨水等の水が下枠とレール部との隙間を介して長手方向及び短手方向に移動可能である。特に、レール部が分割構成された建具では、レール部の分割面を通じて水が下枠の上方部に現れる場合もある。このため、下枠の水が縦框の相互間に到達した場合には、進行する空気に伴って比較的容易に室内側に浸入する恐れがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、突き合わせられた縦框の相互間から室内に水が浸入する事態を可及的に防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、下枠に対してレール部を着脱可能に配設した開口枠と、前記レール部を介して前記開口枠にスライド可能に配設し、かつ前記開口枠を閉じた場合に互いに縦框を突き合わせた状態で配置される複数の障子とを備えた建具において、前記レール部は、前記開口枠を閉じた際の前記障子の突き合わせ位置から長手方向にずれた位置が分割面となる状態で前記下枠の長手方向に沿って複数配設し、前記レール部と前記下枠との間には長手方向において前記障子の突き合わせ位置を含む部位の一部にのみ止水材を配設し、かつ前記下枠において前記止水材の両端部に対応する位置にそれぞれ排水孔を設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、レール部の分割面と障子の突き合わせ位置とが互いに長手方向にずれて配置されるため、レール部の分割面に到達した水が直ちに突き合わせ位置の間を通過する空気によって室内側に運ばれる恐れがなく、また、突き合わせ位置から吹き込む外気や雨水等の水がレール部の分割面へ進入する事態を抑制することができる。しかも、止水材によって障子の突き合わせ位置への水の移動が抑制される。
【0011】
この発明によれば、止水材によって移動が抑制された水は排出孔を介して下枠から排出され、下枠に貯留されない。
【0012】
また、本発明は、上述した建具において、前記縦框を突き合わせた状態で配置される障子には、個々の下端部に互いに見込み方向に重なる重合ヒレ部を有したブロック部材を配設したことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ブロック部材のヒレ部分によって障子の突き合わせ部分に迷路が構成されるため、外気や水の通過が抑制される。
【0014】
また、本発明は、上述した建具において、前記レール部は、その上部に障子を支持し、かつ前記下枠の上面に対して平坦状に配置される平板状の障子支持面を有したことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、下枠の上面に段差を無くしてバリヤフリーに適した建具を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、上述した建具において、前記レール部の見付け面に前記止水材を貼り付けたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、止水材によってレール部の取り付け高さが影響を受けることがなく、また水が下方から上方へ移動し難い見付け面に止水材を貼り付けたので効果的に止水することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レール部の分割面と障子の突き合わせ位置とが互いに長手方向にずれて配置されるため、レール部の分割面に到達した水が直ちに縦框の間を通過する空気によって室内側に運ばれる恐れがない。しかも、止水材によって障子の突き合わせ位置への水の移動が抑制されるため、突き合わせられた縦框の相互間から室内に水が浸入する事態を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態である建具の縦断面図である。
図2図2は、図1に示した建具の横断面図である。
図3図3は、図1に示した建具を室内側から見た外観図である。
図4図4は、図1に示した建具の下枠を拡大して示す縦断面図である。
図5図5は、図1に示した建具に適用する下枠を一部破断して示した斜視図である。
図6図6は、図5に示した下枠からレール部を取り外した状態の分解斜視図である。
図7図7は、図1に示した建具の障子を室内側から見た要部斜視図である。
図8図8は、図1に示した建具の障子を室外側から見た要部斜視図である。
図9図9は、図1に示した建具の要部を示したもので、(a)は突き合わせ框が離隔した状態の底面図、(b)は、突き合わせ框が突き合った状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1図4は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠10に対して4枚の障子20を左右方向に配設した4枚建ての引き違い窓である。
【0022】
障子20は、それぞれ上框21、下框22及び左右一対の縦框23,24を四周框組みすることによって矩形状に構成した框の内部に中桟25を挟んで上下2枚の面材26を保持したものである。障子20の各框21,22,23,24及び中桟25は、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金の押し出し型材によって所定の横断面形状を有するように構成してある。尚、適用する障子としては、必ずしも中桟25を備えたものに限らない。
【0023】
図3に示すように、本実施の形態では、中央に位置する2枚の障子(以下、区別する場合に「内障子20」という)が室内側に配置してあるとともに、内障子20の両側に位置する2枚の障子(以下、区別する場合に「外障子20」という)が室外側に配置してある。2枚の内障子20が互いに縦框23,23を突き合わせ、かつ内障子20の両側に位置する縦框24,24に対してそれぞれ外障子20の一方の縦框24,24が召し合わせの位置となるように配置された場合に4枚の障子20によって開口枠10が閉じられるようにそれぞれの寸法が設定してある。
【0024】
各障子20の下框22には、図1に示すように、内部に戸車27が設けてあるとともに、戸車27の両側となる位置にそれぞれ挿入ヒレ部22aが設けてある。戸車27は、図には明示していないが、見込み方向に沿った軸を中心として回転可能に支持させたもので、下框22の両端となる部位に配設してある。挿入ヒレ部22aは、下框22の長手方向の全長に渡る部位から見付け面に沿って下方に突出した板状部分であり、突出端部が戸車27の最下周面よりもさらに下方に位置している。
【0025】
互いに召し合わせの位置となる内障子20の縦框24と外障子20の縦框24(以下、互いに召しあわせの位置に配置される縦框を「召し合わせ框24」という)との間には、図2及び図3に示すように、室内側に位置する部位にクレセント28及びクレセント受け29が互いに対応して設けてある。クレセント28及びクレセント受け29は、召し合わせ框24,24が召し合わせ位置に配置された状態でクレセント28を施錠操作した場合にクレセント受け29に係合し、内障子20と外障子20との相対移動を阻止することが可能である。クレセント28を開錠操作した場合には、クレセント28とクレセント受け29とが非係合の状態となり、内障子20と外障子20とを相対的に移動させることができる。
【0026】
内障子20の召し合わせ框24及び外障子20の召し合わせ框24には、図2に示すように、互いに対向する見付け面に煙返し24aが設けてある。煙返し24aは、それぞれの見付け面から略直角方向に突出した後、先端部分が見付け面に対してほぼ平行となるように略直角に屈曲した薄板状部分である。召し合わせ框24,24が召しあわせの位置に配置された場合、煙返し24aの屈曲した先端部分が、他方の煙返し24aの屈曲した先端部分と召し合わせ框24の見付け面との間に配置されるようにそれぞれの煙返し24aが構成してある。
【0027】
2枚の内障子20の互いに突き合わされる縦框(以下、「突き合わせ框23」という)には、見込み面の一方に内装噛合部120が設けてあり、かつ見込み面の他方に外装噛合部130が設けてある。図2図7図8に示すように、内装噛合部120は、一方の突き合わせ框23の全長に渡る見込み面から他方の突き合わせ框23の見込み面に向けて突出した一対の内装ヒレ部121,122を有したものであり、外装噛合部130は、他方の突き合わせ框23の全長に渡る見込み面から一方の突き合わせ框23の見込み面に向けて突出した一対の外装ヒレ部131,132を有したものである。
【0028】
室外側に位置する内装ヒレ部(以下、区別する場合に「内装外側ヒレ部121」という)は、見込み面からほぼ直角となる方向に突出した後、突出端部がわずかに室内側に向けて傾斜している。室内側に位置する内装ヒレ部(以下、区別する場合に「内装内側ヒレ部122」という)は、見込み面からほぼ直角となる方向に突出した後、一旦室内側に向けて屈曲し、さらに180°反転して室外側に延在している。内装内側ヒレ部122の突出端部は、突き合わせ框23の見込み面とほぼ平行となるように延在した押圧面122aを構成している。
【0029】
室外側に位置する外装ヒレ部(以下、区別する場合に「外装外側ヒレ部131」という)は、見込み面からほぼ直角となる方向に突出したもので、突出端部において室内側に位置する部位に第1タイト材133を保持している。この外装外側ヒレ部131は、2枚の内障子20を互いに突き合わせた場合に内装外側ヒレ部121よりも室外側に位置し、第1タイト材133を内装外側ヒレ部121の傾斜した先端部に圧接させることのできる位置に設けてある。
【0030】
室内側に位置する外装ヒレ部(以下、区別する場合に「外装内側ヒレ部132」という)は、見込み面からほぼ直角となる方向に突出したもので、突出端部に第2タイト材134を保持しているとともに、室内側に位置する部位に内方カバー部135を有している。第2タイト材134は、2枚の内障子20を互いに突き合わせた場合に内装内側ヒレ部122の押圧面122aに圧接させることができるように設けてある。内方カバー部135は、第2タイト材134を保持する部分から一旦室内側に向けて屈曲した後、さらに屈曲して他方の突き合わせ框23に向けて延在したものである。この内方カバー部135は、2枚の内障子20を互いに突き合わせた場合に内装内側ヒレ部122よりも室内側に位置し、第2タイト材134と内装内側ヒレ部122の押圧面122aとの圧接面を覆い隠すことができる位置に設けてある。
【0031】
さらに、2枚の内障子20の突き合わせ框23には、それぞれの下端部に止水ブロック(ブロック部材)140,150が装着してある。止水ブロック140,150は、図7図9に示すように、室外側及び室内側で互いに重なり合う重合ヒレ部141,142,151,152を有し、突き合わせ框23,23を互いに突き合わせた場合にこれらの重合ヒレ部141,142,151,152によって室外側と室内側との間にそれぞれクランク状の迷路を構成するものである。
【0032】
より具体的に説明すると、一方の突き合わせ框23に装着した止水ブロック(以下、区別する場合に「第1止水ブロック140」という)には、外装外側重合ヒレ部141及び外装内側重合ヒレ部142が設けてある。外装外側重合ヒレ部141は、先端部の板厚が室内側から薄肉となるように構成してあり、外装内側重合ヒレ部142は、先端部の板厚が室外側から薄肉となるように構成してある。外装外側重合ヒレ部141は、外装内側重合ヒレ部142よりも突出量が大きく、互いに先端の位置が異なるように構成してある。
【0033】
他方の突き合わせ框23に装着した止水ブロック(以下、区別する場合に「第2止水ブロック150」という)には、第1止水ブロック140の外装外側重合ヒレ部141及び外装内側重合ヒレ部142に対応して内装外側重合ヒレ部151及び内装内側重合ヒレ部152が設けてある。内装外側重合ヒレ部151は、先端部の板厚が室外側から薄肉となるように構成してあり、内装内側重合ヒレ部152は、室内側から薄肉となるように構成してある。内装外側重合ヒレ部151は、内装内側重合ヒレ部152よりも突出量が小さく構成してある。
【0034】
上記のように構成した止水ブロック140,150では、突き合わせ框23を互いに突き合わせた場合、外装外側重合ヒレ部141と内装外側重合ヒレ部151とが互いに当接し、かつ外装内側重合ヒレ部142と内装内側重合ヒレ部152とが互いに当接した状態となり、それぞれの間にクランク状の独立した迷路が構成される。従って、室外側から室内側への水や外気の通過が大きく抑制されることになる。
【0035】
一方、建具の開口枠10は、図1図3に示すように、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13を四周枠組みすることにより矩形状に構成したものである。開口枠10の下枠12には、戸車27を介して障子20をスライド可能に支持するためのレール部14が室外側及び室内側にそれぞれ設けてある。室外側のレール部(以下、区別する場合に「外レール部14」という)及び室内側のレール部(以下、区別する場合に「内レール部14」という)は、図1図4図6に示すように、それぞれの上部に平板状の障子支持面14aを有するとともに、それぞれの下部に支持台部14bを有したもので、支持台部14bを介して下枠12に設けた室外側のレール収容溝(以下、区別する場合に「外収容溝15a」という)及び室内側のレール収容溝(以下、区別する場合に「内収容溝15b」という)に着脱可能に配設してある。尚、開口枠10の各枠11,12,13及びレール部14は、それぞれアルミニウムやアルミニウム合金の押し出し型材によって所定の横断面形状を有するように構成してある。
【0036】
外収容溝15a及び内収容溝15bは、下枠12の見込み面に設けた内方ヒレ部12aと外方ヒレ部12bとの間に中間ヒレ部12cを設けることによって構成した下枠12の長手方向に沿う凹所である。内方ヒレ部12a、外方ヒレ部12b及び中間ヒレ部12cは、それぞれレール収容溝15a,15bにレール部14を収容した場合に個々の上面が障子支持面14aとほぼ同じ高さで互いに平坦状となるように構成してある。尚、本実施の形態では、下枠12に設けた外方補助ヒレ部12dに別体のヒレ部材16を取り付けることによって外方ヒレ部12bが構成してあるが、外方ヒレ部12bを下枠12と一体に設けるようにしても良い。
【0037】
それぞれのレール収容溝15a,15bには、内部にレール支持ヒレ部12eが設けてある。レール支持ヒレ部12eは、レール収容溝15a,15bの内部において外方ヒレ部12bとの間及び中間ヒレ部12cとの間にそれぞれレール部14の支持台部14bを挟持することにより、下枠12に対するレール部14の見込み方向に沿った位置を規定するものである。
【0038】
図2に示すように、外レール部14及び内レール部14は、それぞれが2分割の構成となっており、長手方向に並設することによってそれぞれが下枠12の全長に渡る部位に配設してある。分割された外レール部14及び内レール部14は、それぞれ長さが異なるように構成してあり、レール収容溝15a,15bに配置した場合のそれぞれのレール部14の分割面14Aが、開口枠10に対して障子20を閉じた場合に内障子20が突き合わせ框23を互いに突き合わせる位置(以下、単に「内障子20の突き合わせ位置20A」という)から長手方向にずれるように設定してある。
【0039】
また、図5及び図6に示すように、開口枠10の下枠12には、内レール部14の支持台部14bにおいて内収容溝15bのレール支持ヒレ部12eに当接する部位に止水材30が貼り付けてあるとともに、止水材30の両端部に対応する位置に排水孔12fが設けてある。止水材30は、透水性に乏しい合成樹脂材、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)によって成形した帯状の薄膜部材であり、内レール部14の支持台部14bとレール支持ヒレ部12eとの間の隙間を通じた水の流通を阻止するものである。この止水材30は、内レール部14の分割面14Aから内障子20の突き合わせ位置20Aを超える部位までの間の全長に渡って配設してある。排水孔12fは、内収容溝15bにおいて内方ヒレ部12aとレール支持ヒレ部12eとの間に上下方向に沿って設けた貫通孔である。それぞれの排水孔12fは、下枠12の長手方向に沿った長孔であり、止水材30の両端部に対応して開口するように形成してある。尚、止水材30は、必ずしも分割面14Aから内障子20の突き合わせ位置20Aを超える部位までの全長に渡って配設する必要はなく、少なくとも内障子20の突き合わせ位置20Aを含む部位にあれば良い。
【0040】
上記のように構成した建具では、レール部14の障子支持面14aに戸車27を当接させた状態で外障子20及び内障子20が開口枠10にスライド可能に支持されることになる。障子20と上枠11との間においては、上枠11に設けたガイドヒレ部11aが障子20の上框21に設けたガイド溝21aに配設され、開口枠10に対する障子20のスライド移動が案内されることになる。
【0041】
障子20の下框22に設けた挿入ヒレ部22aは、レール部14の両側においてそれぞれの下端部がレール収容溝15a,15bの内部に配置されることになる。さらに、図1に示すように、それぞれの障子20の室内側に位置する挿入ヒレ部22aは、内方ヒレ部12aの上端部及び中間ヒレ部12cの上端部に配設した気密材40に当接された状態となる。
【0042】
上述したように、この建具では、下枠12のレール部14が平板状の障子支持面14aを有し、かつこの障子支持面14aが下枠12の内方ヒレ部12a、外方ヒレ部12b及び中間ヒレ部12cとほぼ同じ高さで互いに平坦状となるように構成しているため、高齢者や障害者にとっても安全性が高く、使い勝手が良いものとなる。しかも、下枠12に対してレール部14が着脱可能であるため、レール収容溝15a,15bにゴミ等の異物が進入した場合にもこれを容易に除去することができ、メインテナンス性の点でも有利となる。この場合、レール部14を分割構成としてあるため、その取り扱い性も良好となる。
【0043】
また、互いに突き合わされた状態となる内障子20の突き合わせ框23については、その全長に渡る部位に内装噛合部120及び外装噛合部130を設けるとともに、それぞれの下端部に止水ブロック140,150を装着するようにしている。従って、室外側から風圧力を受けてそれぞれの内障子20が室内側に向けて凸となるように湾曲した場合であっても、突き合わせ框23の相互間から外気が室内に進入する事態を可及的に防止することができる。特に、止水ブロック140,150については、内障子20が室内側に向けて凸となるように湾曲した場合、重合ヒレ部141,142,151,152が互いに圧接されることになり、外気の通過がより抑えられることになる。
【0044】
さらに、内レール部14と下枠12に設けたレール支持ヒレ部12eとの間において内レール部14の分割面14Aから内障子20の突き合わせ位置20Aを超える部位までの全長に渡って止水材30を配設するようにしているため、内障子20から雨水等の水が内収容溝15bに滴下した場合にも、この水が内障子20の突き合わせ位置20Aに到達することがない。止水材30の両端となる位置まで移動した水についても、図4に示すように、排水孔12fを介して下枠12の外部に排出されることになる。従って、室外側からの風圧力によって内障子20が湾曲し、これに伴って突き合わせ框23の相互間から室内側に外気が進入した場合であっても、この外気に伴って内収容溝15bの水が室内側に浸入する恐れがなくなる。
【0045】
尚、上述した実施の形態では、開口枠10に対して4枚の障子20を左右方向に配設した4枚建ての引き違い窓を例示しているが、開口枠を閉じた場合に互いに縦框を突き合わせた状態で配置される複数の障子を備えた建具であれば、3枚建ての引き違い窓や6枚建ての引き違い窓等、その他の建具にも適用することが可能である。
【0046】
また、上述した実施の形態では、突き合わせ框23の下端部に止水ブロック140,150を装着するようにしているため、より確実に水の浸入を抑えることができるが、止水ブロック140,150は必ずしも装着する必要はない。
【0047】
さらに、上述した実施の形態では、図4に示すように、レール部14の見付け面に止水材30を貼り付けるようにしているため、止水材30がレール部14の取り付け高さに影響を与えることがなく、しかも、止水材30が上下方向に沿った姿勢に配設されるため、水の浸入を効果的に抑制することが可能となる。しかしながら、下枠12に止水材30を貼り付けて建具を構成することも可能である。
【0048】
またさらに、上述した実施の形態では、レール部14が2分割の構成となった建具を例示しているが、レール部を3分割以上の構成としても構わない。例えば、レール部を3分割の構成とし、かつ障子の突き合わせ位置が中央のレール部となる建具の場合には、中央のレール部と下枠との間において突き合わせ位置を含む部分に唯一の止水材を配設すれば良い。尚、排水孔を設ける場合には、止水材の両方の端部に対応する部位にそれぞれ配設することが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
10 開口枠
12 下枠
12f 排水孔
14 レール部
14A 分割面
14a 障子支持面
20 障子
20A 突き合わせ位置
23 縦框
30 止水材
140,150 止水ブロック
141,142,151,152 重合ヒレ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9