特許第5964720号(P5964720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964720
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】紙葉束の連続供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/24 20060101AFI20160721BHJP
   B42D 5/04 20060101ALI20160721BHJP
   B65H 3/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B65H3/24 E
   B42D5/04 A
   B65H3/00 301
   B65H3/24 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-234296(P2012-234296)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84203(P2014-84203A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】593207293
【氏名又は名称】渡辺通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(74)【代理人】
【識別番号】100064300
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 賢市
(72)【発明者】
【氏名】市毛 勝則
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−013939(JP,U)
【文献】 特開昭63−277144(JP,A)
【文献】 特開平06−024581(JP,A)
【文献】 特開2001−261175(JP,A)
【文献】 特開2000−351288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00− 3/68
B42D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数冊分の印刷済みの紙葉を上下に積み重ねて形成したスタックから一組分の紙葉の束を上から順番に抽出し、次工程へ一組ずつ連続的に供給する紙葉束の連続供給装置であって、
前記スタックが載置されるステージと、前記スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束以外の紙葉の移動を規制する昇降自在な抽出用ストッパーと、当該抽出用ストッパーを適正な高さ位置にセットする昇降自在な位置決めエレベータと、前記スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束を水平方向へ押し出して前記スタックから抽出する押し子と、前記押し子によって押し出された一組分の紙葉の束を挟持して引っ張り、前記スタック上の領域からその外側の領域へ移動させる移送クランプとを有し、
前記位置決めエレベータは、前記スタックの上方から、前記スタックの最も上の紙葉の上面に当接するまで下降し、その際に、当該紙葉の上面の高さ位置を基準として、そこから一組分の紙葉の束の厚さ寸法だけ低い位置に上端が位置するように、前記抽出用ストッパーの位置決めを行うように構成され、
前記抽出用ストッパーの位置決めが、前記スタックから一組分の紙葉の束を抽出して移送する工程毎に実行されるように構成されていることを特徴とする紙葉束の連続供給装置。
【請求項2】
前記抽出用ストッパーが、前記スタックの綴じ代側の側面の左右の両端部に沿ってそれぞれ一つずつ配置され、
前記位置決めエレベータが、前記各抽出用ストッパーの上方にそれぞれ一つずつ配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の紙葉束の連続供給装置。
【請求項3】
前記位置決めエレベータが、水平な底面を有するブロックと、当該ブロックの底面から下方への突出量を調整することができるアジャスタピンとによって構成され、
前記アジャスタピンの突出量を調整することによって、前記抽出用ストッパーの上端から、前記位置決めエレベータのブロックの底面までの寸法を、抽出しようとする一組分の紙葉の束の厚さ寸法と一致させることができるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の紙葉束の連続供給装置。
【請求項4】
前記押し子が、前記スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束の自由側縁部に当接して紙葉の束を押し出す垂直面を有し、
前記垂直面の高さ寸法が、抽出しようとする一組分の紙葉の束の厚さ寸法と一致していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の紙葉束の連続供給装置。
【請求項5】
前記押し子が、フラップと、ブロックとによって構成され、
前記ブロックには、前記垂直面が形成され、
前記フラップは、前記垂直面の上縁から、紙葉の綴じ代側へ向かって突出するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の紙葉束の連続供給装置。
【請求項6】
前記スタックの最上段に位置する一組の紙葉の束と、二段目の一組の紙葉の束との境界に向けてエアを噴射するエアノズルを有し、
更に、前記エアノズルからエアが噴射される前に、前記スタックの最も上の紙葉の上面に当接して上から押さえつけ、前記エアノズルから噴射されて紙葉間に流入したエアの進行を阻むシャッターを有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の紙葉束の連続供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷、裁断、丁合の各工程を経て、上下に積み重ねられた複数組の紙葉のスタックから、一組分の紙葉の束を、上から順番に抽出して、一組ずつ製本装置等へ供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カレンダー等の冊子を製造する方法として、まず、原紙に対して印刷、裁断工程を実施して冊子の各ページを構成する紙葉を製造し、次に、それらの紙葉を、ページ順に連続するように丁合し、更に、図7に示すように、多数冊分の紙葉31を、向き及び各辺の位置を揃えて上下に積み重ねてスタック30を形成し、このスタック30の綴じ代側の側面30aの全体に糊を塗布し、糊が乾いて固化した後に、スタック30から、冊子一冊を構成する一組分の紙葉31の束(紙葉束32)を上から順番に抽出し、次工程を実行する装置(製本装置等)へ一組ずつ供給するという方法がある。
【0003】
この方法において、スタック30の綴じ代側の側面30aに対する糊の塗布は、スタック30から抽出された紙葉束32を、纏まった状態で次工程へ移送できるようにすることを目的として行われるものであるが、スタック30の綴じ代側の側面30aの全体に、そのまま糊を塗布すると、各紙葉束32における最も下の紙葉31(最終ページを構成する紙葉31)と、その下側に積み重ねられた次の紙葉束32における最も上の紙葉31(先頭ページを構成する紙葉31)との間においても、接着が行われてしまうことになる。このため、スタック30から紙葉束32を一組ずつ抽出しようとする際に、その下段に位置する次の紙葉束32との接着を剥がすという工程が必要となり、作業の円滑性を阻害する要因となる。
【0004】
そこで、紙葉31のうち、各紙葉束32における最も上の紙葉31に限り、糊をはじく性質を有するインクを用いて、綴じ代側縁部33aに沿って上面(印刷表示面)に所定幅の帯状の特殊な印刷を施す(分離帯34を印刷する)という対策が講じられている。この場合、分離帯34が印刷された紙葉31と、その上に重ねられる紙葉31(その上の紙葉束32における最も下の紙葉31)とが、スタック30の綴じ代側の側面30aに対して塗布された糊によって接着されることを好適に回避することができ、スタック30からの紙葉束32の抽出を円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−351288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各紙葉束32における最も上の紙葉31に分離帯34を印刷したうえで、スタック30の綴じ代側の側面30aに対して糊を塗布して紙葉31間の接着を行った場合、分離帯34が印刷されない場合と比較して、紙葉束32の抽出作業を円滑に行うことができるが、スタック30を構成する各紙葉31のコンディションは必ずしも一様ではないため、この抽出作業を機械的な手段において自動的に実行させること(抽出作業を自動的に実行する装置を実現すること)は、非常に難しい。このため従来は、スタック30からの紙葉束32の抽出を専ら手作業によって行っていた。
【0007】
この点について具体的に説明すると、例えば、カレンダー50冊分の紙葉を水平な台の上に積み上げてスタックを形成した場合、最上面の紙葉の綴じ代側縁部は、必ずしも水平な直線とはならず、左右両端部の間、或いは、両端部と中間部との間で高低差が生じたり、歪みが生じることが多い。このような高低差や歪みが生じると、抽出作業を自動的に実行する装置において、冊子一冊を構成する一組分の紙葉の束を、過不足なく正確に抽出させることが難しくなり、その結果、落丁や乱丁といった不良品が頻繁に発生してしまうという問題がある。
【0008】
尚、スタック30から一組分の紙葉31の束を抽出できる紙葉束の連続供給装置として、スタック30の上から順番に、紙葉31を一枚ずつ吸着部によって吸引して持ち上げるとともに、所定方向へ回転する回転ピンに一枚ずつ載せてカウントすることによって、抽出しようとする紙葉束32の最終ページの位置を把握し、次段の紙葉束32との間にセパレータを挿入し、最後に、最上段の紙葉束32を挟持してスタック30から抽出するように構成した装置が知られているが、この装置は、一つの紙葉束32の抽出にかなりの時間を要することになり、熟練者の手作業によって実行する場合と比較して、所要時間の点で優位性を示すことができず、また、抽出の精度(信頼性)の点でも問題があり、ある程度の割合で落丁や乱丁の問題が生じてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題を解決しようとするものであって、一組分の紙葉の束を、高速で、かつ、極めて高い精度でスタックから抽出することができる紙葉束の連続供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紙葉束の連続供給装置は、多数冊分の印刷済みの紙葉を上下に積み重ねて形成したスタックから一組分の紙葉の束を上から順番に抽出し、次工程へ一組ずつ連続的に供給する装置であって、スタックが載置されるステージと、スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束以外の紙葉の移動を規制する昇降自在な抽出用ストッパーと、当該抽出用ストッパーを適正な高さ位置にセットする昇降自在な位置決めエレベータと、スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束を水平方向へ押し出してスタックから抽出する押し子と、押し子によって押し出された一組分の紙葉の束を挟持して引っ張り、スタック上の領域からその外側の領域へ移動させる移送クランプとを有し、位置決めエレベータは、スタックの上方から、スタックの最も上の紙葉の上面に当接するまで下降し、その際に、当該紙葉の上面の高さ位置を基準として、そこから一組分の紙葉の束の厚さ寸法だけ低い位置に上端が位置するように、抽出用ストッパーの位置決めを行うように構成され、抽出用ストッパーの位置決めが、スタックから一組分の紙葉の束を抽出して移送する工程毎に実行されるように構成されていることを特徴としている。
【0011】
尚、抽出用ストッパーは、スタックの綴じ代側の側面の左右の両端部に沿ってそれぞれ一つずつ配置され、位置決めエレベータは、各抽出用ストッパーの上方にそれぞれ一つずつ配置されていることが好ましい。また、位置決めエレベータは、水平な底面を有するブロックと、当該ブロックの底面から下方への突出量を調整することができるアジャスタピンとによって構成され、アジャスタピンの突出量を調整することによって、抽出用ストッパーの上端から、位置決めエレベータのブロックの底面までの寸法を、抽出しようとする一組分の紙葉の束の厚さ寸法と一致させることができるように構成されていることが好ましい。
【0012】
更に、押し子は、フラップと、ブロックとによって構成され、ブロックには、スタックの最上段に位置する一組分の紙葉の束の自由側縁部に当接して紙葉の束を押し出す垂直面を有し、この垂直面の高さ寸法が、抽出しようとする一組分の紙葉の束の厚さ寸法と一致し、フラップは、垂直面の上縁から、紙葉の綴じ代側へ向かって突出するように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、スタックの最上段に位置する一組の紙葉の束と、二段目の一組の紙葉の束との境界に向けてエアを噴射するエアノズルを有するとともに、エアノズルからエアが噴射される前に、スタックの最も上の紙葉の上面に当接して上から押さえつけ、エアノズルから噴射されて紙葉間に流入したエアの進行を阻むシャッターを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙葉束の連続供給装置は、スタックから一組分の紙葉の束を上から順番に抽出して移送し、製本装置等へ連続的に高速で供給することができる。また、抽出用ストッパーの位置決めが、一回の工程毎に、抽出しようとする最上段の紙葉束の上面の高さ位置を基準として正確に行われるため、スタックの最上段の紙葉束の綴じ代側縁部において高低差や歪みが生じている場合であっても、冊子一冊を構成する一組分の紙葉の束を、過不足なく正確に抽出させることができ、落丁や乱丁といった不良品が発生する頻度を極めて小さくすることができる。
【0015】
また、この紙葉束の連続供給装置において、スタックの最上段の紙葉束と二段目の紙葉束との境界に向けてエアを噴射するエアノズルを付帯させた場合には、最上段の紙葉束を押し出す際に、二段目の紙葉束との摩擦抵抗を減じることができ、紙葉束の抽出をより円滑に実行させることができる。更に、紙葉間に流入したエアの進行を阻むシャッターを付帯させた場合には、紙葉間に流入したエアが綴じ代側縁部に達して、スタックの綴じ代側の側面に塗布された糊による紙葉同士の接着が剥がれてしまうという事態を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る紙葉束の連続供給装置1における主要部の構造を示す図である。
図2図2は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(動作前の基準位置)の説明図である。
図3図3は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(位置決め時)の説明図である。
図4図4は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(位置決め時)の説明図である。
図5図5は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(押し出し時)の説明図である。
図6図6は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(移送時)の説明図である。
図7図7は、多数冊分の紙葉31を上下に積み重ねて形成したスタック30の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に沿って本発明「紙葉束の連続供給装置」の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る紙葉束の連続供給装置1における主要部の構造を示す図であり、図2図6は、図1に示す紙葉束の連続供給装置1の動作態様(動作前の基準位置、位置決め時、押し出し時、及び、移送時)の説明図である。図示されているように、この紙葉束の連続供給装置1は、ステージ2、ガイド3、抽出用ストッパー4、位置決めエレベータ5、シャッター6、押し子7、エアノズル8(以上図1参照)、及び、移送クランプ9(図2参照)を有している。
【0018】
ステージ2は、多数枚の紙葉31を積み重ねてなるスタック30を載置するためのものであり、昇降自在なように構成されている。尚、ステージ2上には、原紙に対して印刷、裁断工程を実施することによって製造した多数冊分の紙葉31を、ページ順に連続するように丁合し、向き及び各辺の位置を揃えて上下に積み重ねて形成したスタック30であって、図7に示すように、冊子一冊を構成する(一組分の)紙葉31の束(紙葉束32)において、それぞれ先頭ページを構成する最も上の紙葉31に限り、上面の綴じ代側縁部33aに沿って分離帯34を印刷するとともに、綴じ代側の側面30aの全体に糊を塗布し、固化させたものを載置する。
【0019】
ガイド3は、載置されたスタック30をステージ2上において適正な位置に保持するためのものであり、図1に示すように、スタック30の綴じ代側の側面30aを押さえる位置に配置されるほか、スタック30の両側面を押さえる位置にも配置されている(図示せず)。
【0020】
抽出用ストッパー4は、スタック30の最上段に位置する紙葉束32以外の(即ち、上から二段目以下の)紙葉束32の移動を規制するためのものであり、図1に示すように、スタック30の綴じ代側の側面30aの左右の両端部に沿って、それぞれ一つずつ(合計二つ)配置されており、いずれも図示しないアクチュエータによって昇降自在なように、かつ、任意の位置で停止した状態を維持できるように構成されている。尚、図2に示すように、各抽出用ストッパー4の上面4aには、上方へ向かって突出する爪4bがそれぞれ形成されている。
【0021】
位置決めエレベータ5は、スタック30から最上段の紙葉束32を抽出する際に、抽出用ストッパー4を適正な高さ位置(最上段の紙葉束32の移動を許容するとともに、上から二段目以下の紙葉束32の移動を規制できる位置)にセットするためのものである。この位置決めエレベータ5は、図2に示すように、水平な底面を有するブロック5aと、ブロック5aを上下に貫通し、底面から下方への突出量を精密に調整することができるアジャスタピン5bとによって構成されており、図1に示すように、各抽出用ストッパー4の上方にそれぞれ一つずつ配置され、いずれも図示しないアクチュエータによって昇降自在なように構成されている。
【0022】
押し子7は、スタック30の最上段に位置する紙葉束32を水平方向(紙葉31の綴じ代側の延長方向、図2図6において左方向)へ押し出して、スタック30から抽出するためのものであり、図2に示すように、フラップ7aと、ブロック7bとによって構成されている。ブロック7bは、紙葉31の自由側縁部33b(紙葉31における綴じ代側とは反対側の縁部)に当接して紙葉束32を押し出す垂直面7cを有しており、フラップ7aは、この垂直面7cの上縁から前方(紙葉31の綴じ代側、図2において左側)へ向かって突出するように構成されている。尚、垂直面7cの高さ寸法(ブロック7bの下面からフラップ7aの下面までの寸法)は、紙葉束32一つ分(冊子一冊分の紙葉31の束)の厚さ寸法とほぼ一致している。また、押し子7は、これを水平方向へ押し出すアクチュエータ(図示せず)とともに、上下方向へ移動可能なように支持され、かつ、重力によって下方へ付勢されている。
【0023】
エアノズル8は、押し子7によって最上段の紙葉束32を押し出す際に、二段目の紙葉束32との摩擦抵抗を減じて、円滑な押し出しを実現するためのものであり、図1に示すように、スタック30の自由側の側面30bの近傍(二つの押し子7の左右両側)、及び、スタック30の両側面のそれぞれ中間位置の近傍に配置され、それらの位置から最上段の紙葉束32と二段目の紙葉束32との境界に向けて適切なタイミングでエアを噴射できるように構成されている。
【0024】
シャッター6は、エアノズル8から噴射されたエアが、上下に重ねられた紙葉31の間を通って、綴じ代側縁部33aから抜けてしまうこと、及び、スタック30の綴じ代側の側面30aに塗布された糊による紙葉31同士の接着が剥がれてしまうことを防止するためのものであり、紙葉31の天地方向の中間位置よりも綴じ代側寄りの、スタック30の上方の位置に配置され、この位置から、図示しないアクチュエータによって昇降自在なように構成されている。
【0025】
移送クランプ9は、押し子7によって紙葉31の綴じ代側の延長方向へ押し出された、スタック30の最上段の紙葉束32の綴じ代側部分を挟持して、同方向へ更に引っ張り、スタック30上の領域からその外側の領域へ完全に移動させるためのものであり、図2に示すように、上爪9aと下爪9bとが開閉自在なように、また、紙葉31の綴じ代側の延長方向及びその反対方向へ移動可能なように構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態の紙葉束の連続供給装置1の動作態様について説明する。この紙葉束の連続供給装置1の各構成要素(移送クランプ9、抽出用ストッパー4、位置決めエレベータ5、シャッター6、押し子7等)は、動作前においては、それぞれ図2に示す基準位置に定位している。
【0027】
より具体的には、移送クランプ9は、上爪9aと下爪9bとが開いた状態(拡開状態)で、スタック30の最上段の紙葉束32が、紙葉31の綴じ代側の延長方向へ押し出された場合において、紙葉束32の綴じ代側部分を、上爪9aと下爪9bとの間に受け入れることができる位置(最上段の紙葉束32の高さと対応した高さ位置であって、その綴じ代側部分の近傍の位置)に定位し、抽出用ストッパー4は、スタック30の綴じ代側の側面30aの左右の両端部に沿った位置に定位している。
【0028】
また、位置決めエレベータ5、及び、シャッター6は、スタック30の上方へ所定の間隔をおいた位置に定位し、押し子7は、フラップ7aの下面が、スタック30の最も上の紙葉31における自由側縁部33bの上に載置され、垂直面7cが、スタック30の自由側の側面30bに対向する位置に定位している。尚、位置決めエレベータ5におけるアジャスタピン5bの突出量(ブロック5aの底面から下方への突出量)は、アジャスタピン5bの下端が、抽出用ストッパー4の上面4aに当接した状態において、抽出用ストッパー4の上面4aから上方へ突出する爪4bの上端と、位置決めエレベータ5のブロック5aの底面までの寸法が、紙葉束32一つ分(冊子一冊分の紙葉31の束)の厚さ寸法と一致(一枚の紙葉31の厚さ寸法以下の誤差範囲内で一致)するように調整しておく。
【0029】
この紙葉束の連続供給装置1が紙葉束32の抽出作業を実行するとき、まず最初に、抽出用ストッパー4の位置決めが行われる。具体的には、図3に示すように、まず抽出用ストッパー4が上昇する。そして、抽出用ストッパー4の上面4aが、その上方で停止している位置決めエレベータ5のアジャスタピン5bに当接すると、抽出用ストッパー4の上昇が停止し、今度は、位置決めエレベータ5が下降を開始し、抽出用ストッパー4を押し下げながら下降する。
【0030】
位置決めエレベータ5が、抽出用ストッパー4を押し下げながら下降して、図4に示すように、位置決めエレベータ5のブロック5aの底面が、スタック30の最も上の紙葉31の上面に当接すると、位置決めエレベータ5は下降を停止する。このとき、位置決めエレベータ5におけるアジャスタピン5bの下方への突出量は、抽出用ストッパー4の上面4aから上方へ突出する爪4bの上端と、位置決めエレベータ5のブロック5aの底面までの間隙の寸法が、紙葉束32一つ分の厚さ寸法と一致するように調整されているため、抽出用ストッパー4は、爪4bの上端が、スタック30の最も上の紙葉31の上面から、正確に紙葉束32一つ分の厚さ寸法だけ低い位置、即ち、スタック30の二段目の紙葉束32における最も上の紙葉31の上面と同じ高さ位置に位置決めされることになる。その結果、抽出用ストッパー4は、最上段の紙葉束32の移動を許容するとともに、上から二段目以下の紙葉束32の移動を規制できることになる。
【0031】
位置決めエレベータ5は、スタック30の最も上の紙葉31の上面に当接し、下降を停止して、抽出用ストッパー4の位置決めを完了したら、直ちに上昇し、図2に示す基準位置に復帰する。また、これと同時に、或いは、これと前後して、図4に示すように、シャッター6が下降し、スタック30の最も上の紙葉31の上面に当接し、紙葉31を上から押さえつけ、エアノズル8(図1参照)からのエアの噴射に備えられる。
【0032】
この状態で、図1に示す六つのエアノズル8から、最上段の紙葉束32と二段目の紙葉束32との境界に向けてエアが噴射される。そうすると、上下に重ねられた紙葉31の間にエアが流入し、紙葉31間における摩擦抵抗が減じられる。尚、紙葉31間に流入したエアは、紙葉31を上から押さえつけるシャッター6によって紙葉31間における進行を阻まれることになり、流入したエアが綴じ代側縁部33aに達して、スタック30の綴じ代側の側面30aに塗布された糊による紙葉31同士の接着が剥がれてしまうという事態が回避される。
【0033】
このように、紙葉31間における摩擦抵抗が減じられた状態となったら、図5に示すように、押し子7が、基準位置から綴じ代側へ向かって移動し、最上段の紙葉束32を綴じ代側へ押し出す。このとき、紙葉束32の自由側縁部33bに当接する押し子7の垂直面7cは、紙葉束32一つ分の厚さ寸法と一致しており、また、抽出用ストッパー4は、位置決めエレベータ5によって位置決めが行われた結果、最上段の紙葉束32の移動を許容するとともに、上から二段目以下の紙葉束32の移動を規制できる位置にあるため、スタック30を構成する多数冊分の紙葉31から冊子一冊分の紙葉31の束(紙葉束32)のみが、最上段の位置から綴じ代側の延長方向へ正確に押し出されることになる。
【0034】
尚、スタック30の最も上の紙葉31の上面に当接して紙葉31を上から押さえつけていたシャッター6は、押し子7が移動を開始して、最上段の紙葉束32が移動し始める寸前に上昇し、紙葉31乃至は紙葉束32を開放する。また、最上段の紙葉束32と二段目の紙葉束32との境界に向けてエアを噴射するエアノズル8は、シャッター6の上昇開始とともに、或いは、その直後に噴射を終了する。尚、エアノズル8によるエアの噴射終了後においても、紙葉31間には流入したエアが残存しているため、依然として紙葉31間における摩擦抵抗は減じられた状態となっており、スタック30の最上段の紙葉束32を、円滑に押し出すことができる。
【0035】
最上段の紙葉束32が、押し子7によって綴じ代側の延長方向へ押し出されると、その綴じ代側部分が、図5に示すように、同方向の近傍において拡開状態で定位している移送クランプ9の上爪9aと下爪9bとの間に進入する。この時点で、押し子7は移動を停止し、図6に示すように、元の位置へ向かって後退する。尚、押し子7は、後退していく際に二段目の紙葉束32の上を摺動することになるが、押し子7(及びそのアクチュエータ)は、上下方向へ移動可能なように支持され、かつ、重力により下方へ付勢されているため、垂直面7cが、二段目の紙葉束32の自由側縁部33bの位置を通過した時点で、一つの紙葉束32の厚さ寸法分だけ下降(落下)し、フラップ7aの下面が、二段目の紙葉束32の自由側縁部33bの上に載置された状態となる。
【0036】
一方、最上段の紙葉束32の綴じ代部分が移送クランプ9内に進入すると、上爪9aと下爪9bが閉じて、紙葉束32が移送クランプ9によって挟持される。図6に示すように、移送クランプ9は、この状態で紙葉31の綴じ代側の延長方向へ移動し、挟持した紙葉束32を、スタック30上の領域からその外側の領域へ完全に移動させる。
【0037】
移送クランプ9は、紙葉束32を既定の位置まで引っ張り、移送を完了すると、上爪9aと下爪9bを拡開し、挟持していた紙葉束32を開放して、製本装置等へ供給する。その後、移送クランプ9は、反対方向へ移動して、元の位置(図2に示す基準位置)に復帰する。そして、この移送クランプ9の移動と同時に、或いは、これと前後して、ステージ2が、一つの紙葉束32の厚さ寸法分だけ上昇して、ステージ2以外の構成要素のすべてが、元の状態(図2に示す状態)に復帰する。
【0038】
本実施形態の紙葉束の連続供給装置は、これらの一連の動作を繰り返し、連続的に実行することにより、スタック30から、一組分の紙葉31の束(紙葉束32)を上から順番に抽出して移送し、製本装置等へ連続的に高速で供給することができる。また、抽出用ストッパー4の位置決めが、一回の工程(一つの紙葉束32を抽出して移送する工程)毎に、抽出しようとする最上段の紙葉束32の上面(スタック30の最も上の紙葉31の上面)の高さ位置を基準として正確に行われるため、スタック30の最上段の紙葉束32の綴じ代側縁部33aにおいて高低差や歪みが生じている場合であっても、冊子一冊を構成する一組分の紙葉の束を、過不足なく正確に抽出させることができ、落丁や乱丁といった不良品が発生する頻度を極めて小さくすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1:紙葉束の連続供給装置、
2:ステージ、
3:ガイド、
4:抽出用ストッパー、
4a:上面、
4b:爪、
5:位置決めエレベータ、
5a:ブロック、
5b:アジャスタピン、
6:シャッター、
7:押し子、
7a:フラップ、
7b:ブロック、
7c:垂直面、
8:エアノズル、
9:移送クランプ、
9a:上爪、
9b:下爪、
30:スタック、
30a:綴じ代側の側面、
30b:自由側の側面、
31:紙葉、
32:紙葉束、
33a:綴じ代側縁部、
33b:自由側縁部、
34:分離帯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7