特許第5964750号(P5964750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964750
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ガラス基板に物質を埋め込む方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/00 20060101AFI20160721BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20160721BHJP
   C03C 17/06 20060101ALI20160721BHJP
   C03C 27/02 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C03B19/00 A
   C03C23/00 Z
   C03C17/06 Z
   C03C27/02 A
   H01L23/14 C
   H01L23/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-535306(P2012-535306)
(86)(22)【出願日】2010年10月19日
(65)【公表番号】特表2013-508254(P2013-508254A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010053221
(87)【国際公開番号】WO2011049963
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】12/581,695
(32)【優先日】2009年10月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ハク ラジ−ウル
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ ケンソール
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538570(JP,A)
【文献】 特開2001−129800(JP,A)
【文献】 特開2005−187321(JP,A)
【文献】 特開昭55−067544(JP,A)
【文献】 特開平09−055452(JP,A)
【文献】 特開2003−221284(JP,A)
【文献】 特開2002−348697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
C03C 27/00−29/00
C03B 19/00
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成分を提供することと、
凹陥部が画成されたパターン付き表面を有し、且つ、前記ガラス成分よりも、より高いリフロー温度を有する物質から形成された、モールド基板を提供することと、
前記パターン付き表面上に、湿潤性物質のレイヤを、前記湿潤性物質が、前記モールド基板の前記物質と比較すると、前記ガラス成分に対してより高い湿潤性を有する状態で、堆積することによって、前記パターン付き表面の前記ガラス成分に対する表面湿潤性を高くすることと、
前記ガラス成分の少なくとも1部分を、前記モールド基板の前記パターン付き表面により画成された前記凹陥部に流し込むことと、
前記モールド基板の前記パターン付き表面上の前記ガラス成分を凝固させて、ガラスレイヤを形成することと、
下にある前記モールド基板の前記パターン付き表面の1部分が、前記モールド基板の少なくとも1部分が前記凝固ガラスレイヤに埋め込まれた状態で、露出されるまで、物質を前記凝固ガラスレイヤから除去し、それにより、前記物質が埋め込まれた前記ガラス基板を形成することと、を含み、
前記モールド基板の前記物質は、任意で、シリコンを含む半導体物質である、
ガラス基板に物質を埋め込む方法。
【請求項2】
前記ガラス成分は陽極接合が可能であり、且つ、前記ガラス成分は、前記ガラス成分を前記凹陥部に流し込むステップが実施される前に、前記モールド基板の前記パターン付き表面に真空下で陽極接合される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝固ガラスレイヤから物質を除去するステップは、前記凝固ガラスレイヤを平坦化することとしてさらに定義され、任意で、前記凝固ガラスレイヤの表面が前記モールド基板の表面と同一高さになるまで平坦化される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記モールド基板の前記表面にパターン形成を行い、それにより、前記凹陥部が画成された前記パターン付き表面を形成するステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス成分の少なくとも1部分を前記凹陥部に流し込むステップは、前記ガラス成分のビーズを前記モールド基板の前記パターン付き表面上に配置するさらなるステップを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記パターン付き表面の反対側の前記モールド基板の表面から、前記モールド基板の前記物質の少なくとも1部分が前記凝固ガラスレイヤに埋め込まれた状態で、物質を除去するステップをさらに含み、任意で、前記モールド基板の前記表面から前記物質を除去するステップは、前記凝固ガラスレイヤの1部分が露出されるまで前記モールド基板を平坦化することとしてさらに定義される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記モールド基板は平坦な犠牲レイヤ上に配置され、任意で、前記平坦な犠牲レイヤは、前記平坦な犠牲レイヤの一方側面上の前記モールド基板と、前記平坦な犠牲レイヤの他方側面上の坦持ウェーハとの間に、前記モールド基板と前記坦持ウェーハとが、前記平坦な犠牲レイヤの幅により離間される状態で、配置され、そして任意で、前記ガラス成分を前記凹陥部に流し込む前記ステップの後に、前記モールド基板および前記凝固ガラスレイヤを前記平坦な犠牲レイヤから解放するステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年10月19日に出願された米国特許出願第12/581,695号の優先権およびすべての利益を主張するものである。この仮特許出願の全体は、特に、本明細書に参照することにより援用される。
【0002】
国家ライセンシング権
本発明は、アメリカ国立科学財団により認められたEEC9986866のもとで、政府の支援によりなされたものである。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、全般的には、ガラス基板に物質を埋め込む方法に関する。さらに詳細には、本発明は、ガラス基板を形成する物質から形成されたモールド基板のパターン付き表面の凹陥部に対して、ガラス成分を、結果として生成されたガラス基板にモールド基板の物質が埋め込まれた状態で、流し込む方法に関する。
【背景技術】
【0004】
電子マイクロシステムの分野は、電子装置の機能から利益を受ける広範囲の技術を含み、この分野においては寸法の最小化が望まれている。例えば、埋込可能な装置、バッテリー、集積回路、マイクロ流体回路、およびポンプ並びにバルブ等の関連装置は、電子マイクロシステムの分野の発達から恩恵を受ける技術分野の一部である。電子マイクロシステムの分野においては、電子マイクロシステムの機能を保持または改良しながら寸法の最小化の可能性を追求する推進力が存在してきた。
【0005】
電子マイクロシステムは、一般に、電気構成要素および絶縁構成要素のアーキテクチャを使用する。電子マイクロシステムの寸法が小さいために、絶縁構成要素は、適切に機能することを可能にするために、電気構成要素を絶縁する重要な機能を担う。しかし、絶縁構成要素により離間された電気構成要素間で電気信号を伝達する必要性が生じる場合が多々ある。この点に関して、絶縁構成要素を回避するよりもむしろ絶縁構成要素を直接通り抜ける電気的な貫通接続すなわちビアを使用することが強く望まれる。電気的貫通接続すなわちビアは、より短い配線長を提供する。それにより、電子マイクロシステムにおいては、絶縁構成要素を回避することが要求されるより長い配線長を用いる場合と比較して、抵抗損失および貴重なスペースの消費が低減され得るという利点が提供される。様々な装置を絶縁構成要素に組み込むことにより、装置の絶縁を最大化し、さらに電子マイクロシステム内のスペースを節約することも望まれる。
【0006】
ガラスは、優れた電気的絶縁特性を有すると同時に生物的に中性であり、熱膨張率が低いため、電子マイクロシステムに使用するにあたり理想的な物質である。しかし、ガラスに電気的貫通接続すなわちビアを形成することは、電子マイクロシステムの分野において特に困難であり、絶縁構成要素においてどの高分子材料を用いるかを選択することが、多くの場合、問題となる。ガラス内の垂直貫通接続を電気メッキすることは、当該技術分野において既知である。サンドブラスト、超音波ドリル、電気化学エッチング、レーザドリル、RIEエッチング、および機械式ドリル等の既存のプロセスが、垂直貫通接続すなわちビアを収容するために、ガラスを穿孔するために用いられてきた。穴の直径が極めて小さいため、従来のガラス成型技術が考慮されることはない。ガラスを穿孔するために用いられる前述のプロセスは、十分な反復性をもって十分な空間解像度を達成不可能であること、ガラスを破損するかまたはガラス表面を好ましくない方法で変化させる傾向を有すること、生成され得る穴の寸法に制限があること、および/またはバッチ方式の処理に限定されること、等の欠陥を有する。
【0007】
ガラス領域およびシリコン領域を含むウェーハを構築する方法は、当該技術分野において示唆されてきた。係る方法は、シリコン基板に凹陥部を設けるために、平坦なシリコン基板の表面を構築するステップを含む。次いで、平坦なガラス基板が、シリコン基板の構築された表面に対して、真空下で陽極接合され、それにより、シリコン基板の構築された表面が少なくとも部分的に覆われる。次いで、ガラス基板およびシリコン基板は、ガラスが、ガラスのリフロー温度を越える温度で加熱されて、シリコン基板の構築された表面の凹陥部に対して真空圧力の支援により流れ込むよう加熱される。なお、この真空圧力は、ガラスを凹陥部に引き込むよう機能するものである。次いで、ガラスは再凝固され、物質は、再凝固ガラス領域がシリコン基板の構築された表面と同一の高さである表面を有するよう、再凝固ガラス領域から取り除かれ、それによりウェーハが形成される。この点に関して、シリコン基板の構築された表面の形状が、再凝固ガラス領域を通って延長する。物質は、シリコン基板の背面からも除去され得、それにより、再凝固ガラス領域が特定のエリアにおいて露出され、このように、ウェーハがさらに薄肉化され得る。このように、結果として生成されるウェーハは、ガラス領域およびシリコン領域を含むよう、構築され得る。ともに接合された、結果として生成されたガラス領域とシリコン領域との組み合わされた厚さは、典型的には、0.1mmから1mmである。しかし、上述のプロセスにより形成されるガラス領域およびシリコン領域を備えるウェーハは極めて脆弱であり、一般に、ガラス領域とシリコン領域との間の接合が十分でないために、破損することなく0.1mm未満の厚さにすることは不可能である。ウェーハを部分的に救出することは可能ではあるが、破損は望ましくなく、以後の処理ステップが複雑化されてしまう。さらに、100μm未満の幅を有する凹陥部にガラスを適切に流し込むことは困難である。
【0008】
物質が埋め込まれたガラス基板を用い得る電子マイクロシステムの構成要素を最小化する推進力が依然として継続する限り、ガラス基板が0.1mm未満の厚さでも損なわれないよう導電性物質とガラスとの間の接合を保持する一方で、ガラス基板の薄肉化の達成を可能とする、係るガラス基板を構築する方法をさらに開発する機会は依然として存在する。物質をガラス基板に埋め込む際に凹陥部に流れ込むガラスの流れを増加させる一方で、ガラス基板に埋め込まれた物質の形状寸法を最小化する機会も依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガラス基板に物質を埋め込む方法を提供する。この方法は、ガラス成分を提供するステップと、凹陥部が画成されたパターン付き表面を有するモールド基板を提供するステップとを含む。パターン付き表面を有するモールド基板は、ガラス成分よりも高いリフロー温度を有する物質から形成される。この方法は、パターン付き表面の表面湿潤性をガラス成分よりも高くするステップも含む。ガラス成分の少なくとも1部分は、モールド基板のパターン付き表面により画成された凹陥部に流し込まれ、次いで、モールド基板のパターン付き表面上でガラス成分は凝固され、それにより、凝固ガラスレイヤが形成される。物質は、モールド基板の少なくとも1部分が凝固ガラスレイヤに埋め込まれた状態で、下方のモールド基板の構築されたパターン付き表面の1部分が露出されるまで、凝固ガラスレイヤから除去される。それにより、物質が埋め込まれたカラス基板が形成される。
【0010】
モールド基板のパターン付き表面の表面湿潤性をガラス成分よりも高くするステップは、凝固ガラスレイヤと、モールド基板のパターン付き表面との間の接合をより完全なものとする。特に、たとえガラス領域およびシリコン領域を備えるウェーハを構築する既知のプロセスにおいて実施されるように凹陥部において真空が生成されたとしても、流し込むステップの間に凹陥部(特に凹陥部のコーナー部分において)をガラス成分で充填することは依然として困難であり、接合部において、間隙が、再凝固ガラス領域と凹陥部におけるモールド基板の側壁との間に存在することが見出される点に、注意すべきである。凹陥部がガラスにより十分に充填されないことの結果として、ガラスと既存のプロセスによりガラスに埋め込まれた物質とを備える基板は、一般に、再凝固ガラス領域と凹陥部におけるモールド基板の側壁との間が十分に接合されないために、破損することなく、厚さ閾値を超えて薄肉化することは不可能である。さらに、100μm未満の幅を有する凹陥部にガラスを適切に流し込むことは困難である。モールド基板のパターン付き表面の表面湿潤性をガラス成分よりも高くすることにより、パターン付き表面上へのガラス成分の流し込みが促され、それにより、接合はより完全なものとなり、結果として生成されるガラス基板は、ガラス基板に埋め込まれる導電性物質が現時点で破損することなく薄肉化することが不可能である厚さに、薄肉化することが可能となり、100μm未満の幅を有する凹陥部を適切に充填することが可能となる。
【0011】
以下の図面と組み合わせて考慮するならば、以下の詳細な説明を参照することにより、本発明はよりよく理解されるため、本発明の他の利点が容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法の1つの実施形態におけるステップを全般的に示すフローチャートである。
図2】本発明の方法の他の実施形態におけるステップを全般的に示す概略フローチャートである。
図3】物質が埋め込まれたガラス基板に半導体ウェーハを陽極接合する際の陽極接合短絡を避けるために用いられるステップを全般的に示す概略フローチャートである。
図4】物質が埋め込まれたガラス基板を備えるマイクロ流体部品の概略図である。
図5】受動バルブを有し、且つ物質が埋め込まれたガラス基板を備える、マイクロポンプの概略図である。
図6】物質が埋め込まれたガラス基板を備える、積み重ねられた集積回路の概略図である。
図7】物質が丸められた形状で、物質が埋め込まれたガラス基板の概略図である。
図8】複数のガラス基板を備え、各装置がガラス基板に埋め込まれた物質から形成されたガラス貫通ビアを2つ有する、ガラスウェーハの写真である。
図9】本発明の方法にしたがって形成された複数のガラス基板を備え、且つ約250μmの幅を有する、ガラスウェーハの写真である。
図10】モールド基板のパターン付き表面の表面湿潤性が向上されていない、モールド基板における不適切なガラス充填の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの図面を通じて同様の参照番号が同様のまたは対応する部品を示す図面を参照すると、物質12をガラス基板10に埋め込む方法が、図1および図2において提供され、概略的に図示される。本発明の方法にしたがって形成されたガラス基板10は、以下に詳述する広範な用途を有し、特に、生体適合性、寸法、および極めて低い電力消費が設計上考慮されるべき埋込可能なマイクロシステム等の電子マイクロシステム用途に用いられるガラスに埋め込まれたガラス貫通ビア48および他の導電性要素を形成することに関する問題を解決する目的を有する。本発明の方法は、ガラスに物質を埋め込むことに関する多数の問題を回避し、さらに、既存の方法により形成された物質12が埋め込まれたガラス基板10に対して達成され得る最小厚さを制限する条件を軽減する。ガラス基板10に物質を埋め込む既存の方法の多くがバッチ処理を要求するのに対して、本発明の方法は、ウェーハレベルにおける処理も可能にし、単一のガラスウェーハ52上に複数のガラス基板10を生成する大量生産能力から利益を受けることも可能にする。特に、本発明の方法は、分離可能であり且つ後に電子マイクロシステム50を製造するための処理ステップに用いられ得る複数のガラス基板10を備えるガラスウェーハ52を生成するために利用され得る。
【0014】
ガラス成分14は、本発明の方法にしたがって提供される。他の物質よりもガラス成分14を使用することの利点は、電気損失が小さいこと、優れた密閉シールが形成され得ること、および生体適合性が優れること、を含む。ガラス成分14は、電子マイクロシステム50にもさらに用いられ得る機械的特性も有する。典型的には、ガラス成分14は、高いアルカリ量に相関する陽極接合が可能である。ホウケイ酸ガラスは、陽極接合が可能である特定種類のガラス成分14を表す。ホウケイ酸ガラスは、埋め込まれる物質12が(後にさらに詳述するように)シリコンを含む場合、熱膨張係数が実質的に合致するため、およびシリコンとホウケイ酸ガラスとの間で陽極接合が可能であるため、特に好適である。しかし、本発明は、ホウケイ酸ガラスをガラス成分14として使用することに限定されず、他の種類のガラスもガラス成分14に対して好適であることを理解すべきである。例えば、他種類の好適なガラスは、ソーダ石灰ガラス、およびナトリウム等のイオンを含む他の任意の種類のガラスを含み得る。さらに、陽極接合は本発明の要求事項ではないこと、および、ガラス成分14とガラス成分14に埋め込まれた物質12との間の好適な接合力を生じさせるために用いられ得る融接または直接接合等の他の接合技術も用いられ得ることを理解すべきである。この点に関して、他の接合技術が用いられる場合、陽極接合が可能であるガラスも、ガラス成分14に対して好適である。
【0015】
図1Aに示すように、モールド基板16も、本発明の方法にしたがって提供される。モールド基板16は、以下でさらに詳述するように、ガラス成分14をモールド基板16に流し込むときに、ガラス成分14を成型するために用いられる。さらに、モールド基板16の少なくとも1部分は、ガラス基板10に埋め込まれる物質12を提供する。そのため、モールド基板16は、ガラス成分14よりも、リフロー温度が高い物質から作られる。それにより、ガラス成分14を流し込むステップの間、ガラス成分14との接触により溶解することを防ぐことができる。物質12はガラス基板10に埋め込まれるので、物質12は、典型的に、ガラス基板10におけるガラスの熱膨張係数と実質的に合致する熱膨張係数を有する。「実質的に合致する」という表現は、熱膨張係数の差異が、約5×10-6/℃未満であることを意味する。ガラス基板10に埋め込まれる物質12は、典型的には、導電性を有する。さらに詳細には、電気伝導率は用途に依存し、いくつかの状況下では、0.10Ωcmを超える抵抗率がいくつかの用途に対しては好適であり得ることは理解されるが、ガラス基板に埋め込まれる物質12は、典型的には、0.10Ωcm以下の抵抗率を有する。ガラス基板10に埋め込まれる物質12が、極めて高い抵抗率を有し得ること、および絶縁性物質であり得ることも、理解されるであろう。例えば、1つの実施形態においては、モールド基板16の物質は、シリコンを含む半導体物質としてさらに定義され得る。半導体物質はドーピングされたシリコン組成物として定義され得、係るシリコン組成物は、最終的なガラス基板10における電気的相互接続として最終的に機能することに対して理想的である。本発明は、ドーピングされたシリコン組成物に含まれ得るドーパントの種類に限定されない。しかし、好適なドーパントは、ホウ素およびガリウム等のP型ドーパント、または、リンおよびヒ素等のN型ドーパントを含む。他の実施形態においては、モールド基板16の物質は、金属を含む金属物質としてさらに定義され得る。本発明の目的に用いられ得る好適な金属物質の1例は、コバール(登録商標)の商標名で市販されるニッケル・コバルト・鉄合金である。なお係る合金は、ホウケイ酸ガラスの熱膨張係数と十分に合致する熱膨張係数を有する。いくつかの状況下では、モールド基板16は、本発明の方法により、半導体物質および金属物質の両方がガラス基板10に埋め込まれるよう、設計され得ることを理解すべきである。モールド基板16の物質が、結果として生成されるガラス基板10に対して意図される用途に基づいて選択され得ることも理解すべきである。ガラス基板10に埋め込まれる物質12に対する考慮は、ガラス基板10が高周波用途において用いられるかどうかに依存し得、さらに、抵抗の要件にも依存し得る。ガラス基板10に埋め込まれる物質12は絶縁特性を有し得、その1例が非ドーピングシリコンであることも理解すべきである。非ドーピングシリコン等の物質12は、エッチングにより非ドーピングシリコンをその後除去した後、結果として生成された穴に導電性物質を電気メッキを施すことにより、ガラス基板10に穴を形成するために用いられ得る。
【0016】
図1Bに示すように、モールド基板16は、凹陥部20が画成されたパターン付き表面18を有する。パターン付き表面18には複数の凹陥部20が画成され得ることを理解すべきである。凹陥部20(単数または複数)を画成することにより、パターン付き表面18の隆起部分58が形成され、以下にさらに詳述するさらなる処理ステップにより、隆起部分58は、ガラス基板10に埋め込まれる物質12となる。上述のように、モールド基板16は、ガラス成分14をモールド基板16に流し込んでガラス成分14を成型するために用いられる。さらに詳細には、ガラス成分14を流し込むステップの間にガラス成分14を受容するのは、モールド基板16のパターン付き表面18である。この点に関して、パターン付き表面18はガラス成分14を成型するために用いられる。しかし、モールド基板16の少なくとも1部分も、以下にさらに詳述する本発明の方法により、ガラス成分14に埋め込まれる。そのため、モールド基板16は、本発明の方法にしたがって用いられた場合、単にガラス成分14を成型するのみではなく、少なくとも部分的にガラス成分14内にも埋め込まれる。
【0017】
1つの実施形態においては、凹陥部20が画成されたパターン付き表面18があらかじめ設けられた、モールド基板16が提供される。他の実施形態においては、本発明の方法は、モールド基板16の表面上でパターン形成することにより、凹陥部20が画成されたパターン付き表面を形成するステップをさらに含む。モールド基板16にパターン形成する方法は当該技術分野において既知であり、機械的技術および化学的エッチング技術の両方を含む。好適な化学的エッチング技術は、モールド基板16を形成するために用いられる物質の種類に依存する。シリコンを含む半導体組成物が用いられる場合、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE:deep reactive−ion etching)ステップがモールド基板16の表面にパターン形成するために用いられ得る。パターン表面における最小形状寸法は、現在のDRIEプロセスのみにより制限される。1つの実施形態においては、単一のマスク(図示せず)が、第1ステップにおいて凹陥部20(単数または複数)をエッチングするために用いられ得、その結果、図1Bに示す2つの平行な面に沿って画成された2つのパターン付き表面18が生成される。なお、第1面は、モールド基板16の表面の変更されない部分により表され、第2面は、モールド基板16の表面のエッチングされた部分により表される。参考として、これらの面は、凝固ガラスレイヤ22に対して平行であるとも記述され得る。なお、凝固ガラスレイヤ22は、ガラス成分14をモールド基板16のパターン付き表面18に流し込んだ後にガラス成分14が凝固した結果生成されるものである。省略可能な追加的DRIEステップが実施されることにより、図1Cに示す、少なくとも3つの平行面に沿って画成されたパターン付き表面18が生成され得る。なお、第1面および第2面は前述と同様であり、第3面およびその後続の面は、追加的DRIEステップによりエッチングされたモールド基板16の表面の部分により表される。図1は、物質12を含むキャビティ56がどのようにしてガラス基板10に埋め込まれ得るかを示す。説明すると、図1Cに示す追加的DRIEステップにおいて、エッチングの途中で、新規のマスクが露出され、モールド基板16のマスクされていない部分でエッチングが継続される。新規に露出されたエリアは最終深さにエッチングされる。なお、この最終深さは以前に露出されたエリアよりもはるかに浅い。モールド基板16の穴も、同様の方法で画成され得る。物質12を含むキャビティ56が除去されることにより、ガラス基板10に空隙が残され得ることも理解されるであろう。
【0018】
半導体物質を含むモールド基板16の表面にパターン形成するにあたり、DRIEステップ以外の技術も利用可能であり、それにより、略垂直なエッチングが実施される。例えば、等方性ウェットまたはドライエッチャントを用いることにより、曲線的形状30が半導体物質において製造され、その結果、図7に示す半導体物質の形状が生成される。
【0019】
上述のように、本発明の方法にしたがって形成されたガラス基板10は、電子マイクロシステム50に対して特に好適である。したがって、パターン付き表面18により画成された凹陥部20(単数または複数)の寸法は、全般に、ミリメートルよりも小さい範囲である。典型的には、モールド基板16のパターン付き表面18は、1000μmを超える深さを有する凹陥部20を有さず、さらに典型的には、250μmを超える深さを有する凹陥部20を有さない。凹陥部20の深さは、ガラス基板10の最終的な厚さにも依存する。例えば、以下でさらに詳述するように、最終的なガラス基板16は約250μmの厚さを有し、係る状況下では、モールド基板のパターン付き表面18は、250μmを超える深さを有する凹陥部20は有さない。
【0020】
上記で示唆したように、この方法は、ガラス成分14の少なくとも1部分を、モールド基板16のパターン付き表面18により画成された凹陥部20(単数または複数)に流し込み、それにより、構造的完全性を依然として保持しながら、ガラス成分14が実質的に任意の形状を有することを可能とするステップをさらに含む。ガラス成分14を凹陥部20(単数または複数)に流し込むために、ガラスは、モールド基板16のパターン付き表面18の近傍に配置される。1つの実施形態においては、ガラス成分14が陽極接合可能である場合、ガラス成分14を凹陥部20に流し込み(図1Dに示すように)、それによりガラス成分14をパターン付き表面18の近傍に配置するステップの前に、ガラス成分14はパターン付き表面18に対して真空下で陽極接合され得る。陽極接合の結果、ガラス成分14とモールド基板16との間が高品質且つ気密に接合される。この陽極接合は周知のプロセスである。真空下で陽極接合を実施することにより、ガラス成分14は、ガラス成分14を流し込む以下のステップを実施する際に、凹陥部20(単数または複数)に実質的に引き込まれる。代替的に、ガラス成分14のビーズ(またはガラス成分14の他の同様の粒子形態)は、ガラスビーズがパターン付き表面18の形状と略一致する状態で、モールド基板16のパターン付き表面18上に配置され得る。ガラスビーズは、典型的には、パターン付き表面18における凹陥部20(単数または複数)の寸法に合った直径を有し、典型的には、パターン付き表面18の最小の凹陥部20内に嵌り得るよう、十分に小さい。この点に関して、ガラス成分14はパターン付き表面18と緊密に接触して配置され得、それにより、ガラス成分14を凹陥部20(単数または複数)に十分に流し込むにあたり、真空圧力が不必要となり得る。さらに、使用されるガラス成分14の量は、ガラスビーズが使用される場合、著しく減少し、それにより、以下でさらに詳述する、後に行われる平坦化ステップの間に、除去されるガラスがより少量となる。
【0021】
パターン付き表面18の近傍に配置されると、ガラス成分14は、典型的には、そのリフロー温度に加熱され、その結果、ガラスが凹陥部20に流れ込むこととなる。特定の例において、ホウケイ酸ガラスがガラス成分14に用いられる場合、ガラス成分は、ガラスを凹陥部20に流し込むために、少なくとも摂氏750度の温度に加熱される。等方性ウェットまたはドライエッチャントが用いられ、曲線的形状30がモールド基板16において形成される、図7に示す実施形態に関しては、ガラスのリフローにより、ガラスは、モールド基板16に形成された曲線的形状30の形状を有することとなる。
【0022】
ガラス成分14を加熱する目的に対する1つの可能性は、高速熱アニール(RTA:Rapid Thermal Annealing)炉の使用である。高速熱アニール炉は、動作時間は極めて短い(10分未満)が、極めて高温(摂氏1000度を超える)で動作する。この点に関して、RTA炉を使用することの利点は、ガラス成分14が極めて高速でリフローされ、それによりリフロー時間が短縮されることである。ガラスリフロー効果は、強力な静電場を発生させることによっても達成され得る。
【0023】
上述のように、真空は、一般に、ガラス成分14を凹陥部20に実質的に引き込むために用いられる。係る状況下においては、図10に示すように、補足されたガスにより、完全なガラス充填が妨げられ得る。係る補足ガス問題を回避する1つの方法としては、十分な高温を保持することがあげられる。これにより、ガラス成分14を通って移動した後、補足されたガスは周囲大気に放出され得る。しかし、ガラスビーズを用いるならば、補足ガスを懸念する必要はさほどないと考えられる。ガラス成分14およびモールド基板16がガラス成分14のガラス遷移温度を超えて加熱されると、緊密に接触する間、モールド基板16とガラス成分14との間で接合が形成され、その後、モールド基板16のパターン付き表面18上でガラス成分14が凝固され、その結果、上記で簡単に述べた凝固ガラスレイヤ22が形成される。しかし、ガラスレイヤ22をリフローさせるためには、前述の補足ガスを解放するにあたり、温度をはるかに高く上昇させる必要があり得る。
【0024】
ガラス成分14を凹陥部20(単数または複数)に流し込むステップに関する最大の困難点の1つは、凹陥部20(単数または複数)におけるガラス充填を最大化することである。驚くべきことに、凹陥部20(単数または複数)へのガラス成分14の流れ込みの増強は、パターン付き表面18の表面湿潤性をガラス成分14よりも高くすることにより達成され得、その結果、凹陥部20の側壁に対するガラス成分14のピッチ寸法が、最初の制限的なピッチ寸法より小さくなり得ることが発見された。それにより、パターン付き表面18により画成される凹陥部20の最小形状寸法は、凹陥部20(単数または複数)における適切なガラス充填を依然として達成しながら、100μm未満に、いくつかの場合においては、25μmにまで、減少され得る。
【0025】
モールド基板16の物質の種類は、それが、シリコン、金属、またはその上に成長または堆積される他の金属(例えば、蒸発金属)であっても、異なる物質の間の表面湿潤性の差異により、考慮される。当業者は、表面湿潤性を高くするステップが、モールド基板16の物質の種類に基づいて調節され得ることを容易に理解するであろう。1つの実施形態においては、パターン付き表面18の表面湿潤性を高くするステップは、パターン付き表面18を粗面化して、基板のパターン付き表面18上を流れることに対するガラス成分14の抵抗を低下させることとしてさらに定義され得る。パターン付き表面18は、例えば、サンドブラストを用いることにより、物理的に粗面化され得る。パターン付き表面18の任意の程度の粗面化も、本発明の目的に対して好適である。他の実施形態においては、パターン付き表面18の表面湿潤性を高くするステップは、2フッ化キセノンを用いる等の、パターン付き表面18のドライエッチングとして定義され得る。等方性ウェットエッチングおよびプラズマエッチングが、パターン付き表面18の表面湿潤性を高くするために用いられ得る。DRIERプロセスにおいて用いられる等の誘導結合プラズマが用いられ得る。パターン付き表面18の適切な粗面化は、一般に、目視検査により判定され得る。粗面化の前は、パターン付き表面18は研磨された外観を有し、高度に反射的である。粗面化の後は、パターン付き表面18は顕著に薄黒くなり、非反射的になる。他の実施形態においては、パターン付き表面18の表面湿潤性を高くするステップは、湿潤性物質24が、モールド基板16の物質と比較して、ガラス成分14に対して、より高い湿潤性を有する状態で、湿潤性物質24のレイヤをパターン付き表面18上に付着することとしてさらに定義される。湿潤性物質24は、ガラス成分14よりも、より高い融点を有し、さらに、ガラス成分14が凹陥部20(単数または複数)に流れ込む温度よりも、より高い融点を有する。例えば、モールド基板16がドーピングされたシリコン等の半導体物質から形成される場合、パターン付き表面18は、モールド基板16のドーピングされたシリコン等と比較してガラス成分14よりも高い湿潤性を有するプラチナ等の湿潤性物質24の薄いレイヤでコーティングされ得る。パターン付き表面18上の湿潤性物質24の厚さは、典型的には、ガラス成分14と、モールド基板16のパターン付き表面18との間の接合に関する諸問題を回避するために、最小化される。この点に関して、湿潤性物質24の厚さは、典型的には、0.1μm未満である。パターン付き表面18の表面湿潤性を高めるステップの組み合わせも可能である。例えば、1つの選択肢は、凹陥部20(単数または複数)の側壁を粗面化すると同時に、プラチナ等の湿潤性物質24を凹陥部20(単数または複数)の底部表面上に堆積することである。
【0026】
パターン付き表面18の表面湿潤性を高くすることの他に、他のパラメータの組み合わせを制御することにより、モールド基板16のパターン付き表面18における凹陥部20(単数または複数)をガラス成分14で充填することは最大化され得る。例えば、エッチング技術が、図7に示すように、モールド基板に曲線的形状30を形成するために用いられ得、それにより、凹陥部20の充填が促され得る。ガラス成分14が凹陥部20(単数または複数)を完全に充填し得ない他の理由が、低速移動するガラスのより低いエネルギーによるものであることが理論化されている。したがって、真空、リフロー温度、および時間の組み合わせと、加熱速度とを設定することにより、凹陥部20(単数または複数)の充填が最大化され、それにより、ガラスを物理的に移動させるために要求されるエネルギー量が低減され得る。1つの実施形態においては、ガラス成分14の少なくとも1部分をガラス成分14に流し込むステップは、ガラス成分14を、上述のRTA炉を用いて、ガラス成分14のリフロー温度に加熱することとしてさらに定義される。温度を劇的(および/または急速)に上昇させることにより、重力は、ガラス成分14を極めて高速化し、その結果、ガラスを流し込むことに利用可能なエネルギー量が増加され得る。ガラス成分14の陽極接合が、ガラス成分14を流し込むステップの間に、ガラス成分14を凹陥部20(単数または複数)に引き込むために真空とともに用いられる場合、シールされた凹陥部20(単数または複数)内に補足された真空が既知であるならば、理論的計算がなされ得、リフロー温度における力の均衡が計算可能である。一方で、真空の引き込み力はガラス成分14を引き込み、それに対して、モールド基板16のパターン付き表面18上を流れるガラス成分14の静止摩擦/摩擦力は、真空の引き込み力を相殺する。何らかの時点において、凹陥部20(単数または複数)の体積が極めて小さい値となり、引き込み力の強度が実質的にゼロに低下する。ガラス成分14の流れが、パターン付けられた基板上を流れるガラス成分14の静止摩擦/摩擦力に起因する反対方向における相殺力により、引き込み力がゼロに低下する前に、停止することもあり得る。
【0027】
ガラス成分14が凝固されると、物質は、下にあるモールド基板16のパターン付き表面18の少なくとも1部分が図1Fに示すように露出されるまで、凝固ガラスレイヤ22から除去される。典型的には、物質を凝固ガラスレイヤ22から除去するステップは、凝固ガラスレイヤ22を平坦化することとしてさらに定義される。しかし、本発明は、物質を凝固ガラスレイヤ22から除去するいかなる特定の技術にも限定されない。図1Gに示すガラス貫通ビア48等の、露出された、下方のパターン付き表面18の部分は、ガラスレイヤ22内に埋め込まれ得るか、または、結果として生成されたガラスレイヤ22の外側に配置され得る(モールド基板16のパターン付き表面18がガラス基板10の最終的な厚さを測定するために用いられる状況におけるように)。典型的には、凝固ガラスレイヤ22は、凝固ガラスレイヤ22が図1Fに示すように下層のモールド基板16のパターン付き表面18の露出された部分と同一の高さとなるまで、平坦化または研磨される。
【0028】
凝固ガラスレイヤ22から物質を除去した後に露出される、下方のモールド基板16のパターン付き表面18の部分が、凝固ガラスレイヤ22に依然として埋め込まれたモールド基板16の部分とは異なることは理解されるが、モールド基板16の少なくとも1部分は、依然として凝固ガラスレイヤ22に埋め込まれる。例えば、図1Gを参照すると、キャビティ56は、凝固ガラスレイヤ22から物質を除去した後にも露出されず、ガラス貫通ビア48が存在しない最終的なガラス基板10に存在し得ることは、明らかである。
【0029】
1つの実施形態においては、物質が、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から除去され得、それにより、図1Gに示すように、モールド基板16の少なくとも1部分が凝固ガラスレイヤ22に依然として埋め込まれ得る。典型的には、モールド基板16の表面から物質を除去するステップは、ガラスレイヤ22の1部分が露出されるまで、実施される。しかし、物質をモールド基板16の表面から除去するステップが省略可能なステップであり、物質12が埋め込まれた最終的なガラス基板10が、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から物質を除去するステップを実施せずに、獲得され得ることは、理解されるであろう。
【0030】
ガラスの除去を高速化するためにフッ化水素を用いるウェットエッチング、およびシリコンの除去を高速化するために水酸化カリウムを用いるウェットエッチング等の、いくつかの所望による技術が、物質を凝固ガラスレイヤ22から除去するステップの間、および、物質を、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から除去するステップの間に、用いられ得る。この方法に関する最大の困難点の1つは、物質を、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から除去することである。市販の工具が存在し、現在のところ、良好な反復性をもって、ウェーハを+/−25μm内に薄肉化するために用いられる一方で、いくつかの工具は+/−5μmに近づき得る。他の選択肢は、溶解ウェーハ処理(DWP:Dissolved Wafer Process)を用いることである。なお、DWPにおいては、パターン付き表面18がモールド基板16に形成された後に、ホウ素拡散ステップが実施される。ホウ素拡散ステップは、濃度に基づくエッチ停止を形成するよう機能する。なお、係るエッチ停止は、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面からの物質除去に対して正確且つ反復可能な制御を可能にする。
【0031】
図2を参照すると、ガラス基板10は、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から物質を除去するステップなしに、形成され得る。この実施形態においては、モールド基板16は、平坦な犠牲レイヤ26上に配置される。平坦な犠牲レイヤ26は、典型的には、モールド基板16と坦持ウェーハ28とが、平面犠牲レイヤ26の幅により離間される状態で、一方の側面におけるモールド基板16と、他方の側面における坦持ウェーハ28との間に配置される。平坦な犠牲レイヤ26は、典型的には、酸化物または窒化物から形成され、図2Bに示すように、エッチ停止として機能する。モールド基板16上にパターン形成するステップは、エッチングにより、上述のように実施され得る。ガラス成分14を、パターン付き表面18により画成された凹陥部20(単数または複数)に流し込むこと、およびガラス成分14を凝固させ、それによりガラスレイヤ22を形成することの後、モールド基板16および凝固ガラスレイヤ22は、平坦な犠牲レイヤ26を溶解することにより、平坦な犠牲レイヤ26から解放され得る。1つの例においては、平坦な犠牲レイヤ26は窒化物から形成され、高温リン酸等の、高度に選択的なエッチャントでエッチングされ得る。このことは、既知の厚さを有する新規の新鮮なモールド基板16を坦持ウェーハ28に融着してプロセスを再スタートすることにより、坦持ウェーハ28を再使用することを可能にする。坦持ウェーハ28は穴32を画成し、それにより、解放ステップの間、液体エッチャントがより迅速に平坦な犠牲レイヤ26に対して作用することが可能となり得る。
【0032】
平坦な犠牲レイヤ26を使用することにより、非均一なエッチングに関する諸問題は、エッチングは時間に基づくよりもむしろエッチングされる物質に基づくため、解決され得る。平坦な犠牲レイヤ26の使用に関連する他の利点は、モールド基板16と坦持ウェーハ28との分離が、単に平坦な犠牲レイヤ26を溶解することにより、任意の時間に実施され得ることである。平坦な犠牲レイヤ26の使用に関連する他の利点は、物質12が埋め込まれた、結果として生成されるガラス基板10が、機械的ラップ仕上げをすること、またはパターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から物質を研磨することを必要としないことである。
【0033】
物質を、パターン付き表面18の反対側のモールド基板16の表面から除去し、それにより、凝固ガラスレイヤ22が露出される状況下においては、または、モールド基板16が平面犠牲レイヤ26上に配置される状況下においては、ウェーハが、凹陥部20の底部を表すモールド基板16の部分を除去すること(再凝固ガラス領域を露出するためには、この除去が必要である)により、損傷しないためには、ガラスレイヤ22と、凹陥部20におけるモールド基板16の側壁との間の接合に依存しなければならない場合もある。この点に関して、凹陥部20の側壁に対するガラス成分14のピッチ寸法は、ガラスレイヤ22と、凹陥部20の側壁との接合表面積に対して相関関係にある。したがって、ガラス成分14を凹陥部20(単数または複数)に完全に流し込むことは、物質12が埋め込まれた、結果として生成されたガラス基板10に対して達成され得る最小厚さに対して直接的相関関係にある。特に、物質12が埋め込まれたガラス基板10の全体的厚さは、凝固ガラスレイヤ22およびモールド基板16から物質を除去する任意のステップの後、わずか25μmである。物質12が埋め込まれたガラス基板10の典型的な厚さは、約25μmから1000μmの範囲であり、代替的には、25μmから250μmであり、代替的には25μmから100μmである。
【0034】
上述のように、本発明の方法は、ウェーハレベルの処理を可能にし、本発明の方法にしたがって形成された複数のガラス基板10を備えるガラスウェーハ52の形成を可能にし得る。ガラスウェーハ52は、図8および図9の写真に示される。既知の分離技術が、ガラス基板10をガラスウェーハ52から分離するために用いられ得る。
【0035】
追加的な省略可能プロセスが、本発明の方法にしたがって用いられ得る。1例として、埋め込まれた物質12の露出される特定エリア以外の、物質12が埋め込まれたガラス基板10の全体を保護するために、マスクが用いられ得る。埋め込まれた物質12がシリコンを含む場合、2フッ化キセノン(XeF2)等のドライエッチは、埋め込まれた物質12を除去し、それにより、ガラス基板10における穴(図示せず)が残されるよう、用いられ得る。銅および銀を含む様々な金属が、結果として生成された穴を通して電気メッキされ得る。例えば、銀被覆および銅コア等の追加的マスクステップが、ガラス基板10を通して、複数の物質を電気メッキするために用いられ得る。したがって、任意の金属が穴を充填するために用いられ得ることが理解されるが、例えば混成銀・ガラス・金属ウェーハが可能である。
【0036】
省略可能な追加的ステップは、追加的レイヤをガラス基板10に結合することを含む。例えば、陽極接合可能であるガラス成分14が用いられる場合、他の半導体ウェーハ36が、図3Cおよび図3Dに示すように、物質12が埋め込まれたガラス基板10に接合され得る。さらに詳細には、半導体ウェーハ36がガラス基板10においてガラスレイヤ22に接合されると、シールが必要とされる圧力センサ等の装置に対して優れたシールが提供される。電気的短絡を防ぐために、接合装置がガラス基板10においてガラスレイヤ22のみと接触し、露出された、ガラス基板10に埋め込まれた物質12にはまったく接触しないよう、注意すべきである。電気的短絡が存在すると、接合の進行が妨げられ、さらには、接合がまったく生成されないことさえあり得る。この問題に対する解決策は、短絡が生じないよう、導電性延長線34をガラスレイヤ22にのみ適用することである。この潜在的なエラー源と、この解決策とを示す図が図3に示される。
【0037】
本明細書で斯様に参照されるガラス基板10は、残留する凝固ガラスレイヤ22と、モールド基板16から残留する、凝固ガラスレイヤ22に埋め込まれた物質12とを含む、本発明の方法により生成される物品である。本発明の方法にしたがって作製されたガラス基板10の堅牢性により、ウェーハ全体は、ガラスの領域と、同一ウェーハ上に埋め込まれた物質12の領域とを有するよう設計され得る。
【0038】
潜在的な用途は、ガラス貫通ビア48から、受動的電気部品およびマイクロ流体部品さえにまでわたる。マスターウェーハ例52が図8に示される。いくつかの場合においては、ウェーハがより堅牢化され取り扱いが容易となるよう、坦持ウェーハ28を取り付けることが有用であることもある。約150μm未満の厚さにおいては、ウェーハは極めて脆弱である。図9は、本技術を用いて製造されたシリコンビアのクローズアップを示す。これらのウェーハは未研磨状態である。
【0039】
本発明の方法から生まれ得る、可能な用途は、2つの異なる物質(すなわち、ガラス、および埋め込まれた物質12)が、互いに対して、同一の高さとなり、化学的に接合されるという性質により、多数存在する。このようにして、ガラスと埋め込まれ物質12との差異は、横方向に利用される。例えば、マイクロ流体工学装置は、シリコンの疎水性およびガラス領域の親水性を利用し得る。
【0040】
上述のように、本発明の方法に対する1つの特定の用途は、ガラス貫通ビア48の形成であり、係る例が図1G図2F、および図6図7に示される。図4は、センサが、本発明の方法にしたがって形成されたガラス基板10を用いてどのようにして実装され得るかを示す、断面図である。埋め込まれた物質12が半導体物質を含むものとして図示されるが、埋め込まれた物質12は金属を含み得ることを理解すべきである。さらに、埋め込まれた物質12を選択的に除去することにより、ポート40およびチャンバ38が生成され、ポート40およびチャンバ38を通って、流体または気体が通過し、図4に示す装置に入る、またはこの装置を通って移動し得ることが理解されるであろう。
【0041】
図4を参照すると、本発明の方法にしたがって形成されたガラス基板10は、マイクロ流体経路42における構成要素として用いられ得る。マイクロ流体経路42にガラスを用いることの利点は多数存在する。その1例は、ガラスの熱伝導率が、マイクロ流体経路42用の基板として一般に用いられるシリコンに比べて極めて小さいことである。マイクロ流体経路42間の断熱は、DNAマイクロ流体チップに用いられるポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)における等の、特定の化学反応が発生するために重要である。熱伝導率が低いということは、試薬を加熱するために用いられるエネルギーが小さいこと、ならびに、より局所的且つ集中的な加熱が発生し得ることを意味する。図4は、本発明の方法にしたがって作製されたガラス基板10を用いることができるマイクロ流体経路42のいくつかの共通構成要素を示す。
【0042】
マイクロ流体工学に関連する他の用途は、ガス流または流体流を生成することである。本発明の方法にしたがって作製されたガラス基板10を使用するマイクロポンプを設計することの利点は、製造が簡略化されること、および装置全体の堅牢性が改善されることを含む。ガスマイクロポンプ断面図の1例が、図5に示される。ガラス基板10の一方側面はバルブ44を備え、一方、他方側面は可動ダイヤフラム60を備える。電気的相互接続を流体ポートの近傍に一体化することにより、作動電極62はダイヤフラム60の直接下方に配置され得、それにより、ポンプダイヤフラム60は気体に対して優れたシールを有し得る。
【0043】
集積回路(IC:integrated circuit)産業は、少なくとも3つの主要な利点、すなわち、1)電力消費の軽減化、2)寸法の縮小化、および3)性能の向上化のために、複数チップの3D集積化を推進している。本技術が適用された製品の1例は、メモリICと標準的ICを集積化して、3D集積化装置54を形成することである。今日では、これら2つのチップは別々に製造された後、積層化、および互いに対して配線結合され、最終的に標準的ICパッケージに挿入される。このことは十分に共通の問題となったために、さらにこの技術を定義するために、「Intimate Memory Interface Specification」と称される規格が制定された。産業界で現在研究中の主要技術の1例が、シリコン貫通ビア(TSV:Through−Silicon Via)である。しかし、ガラスは、より優れた電気的絶縁を提供する点で、シリコンに優る。本発明の方法は、垂直電気接続を提供するために、または抵抗器、キャパシタ、もしくはインダクタ等の受動素子を提供するために、電気接続部分を、ICまたはMEMS装置46から分離して、別のモジュラー部品へと移動させるために用いられ得る。このことは、電気経路を分離し、劇的に信号間の干渉、誘導雑音、および電力消費を低下させる。IC46およびガラス貫通ビア48の両方の構成も、これらが独立的な構成要素であるため、簡略化され、それにより、TSVの解決策と比較して、コストが削減され、出力収率が増加される。ガラス貫通ビア48を用いることの他の利点は、3D集積化された装置54が、TSVとは異なり、貫通接続を備えるよう再設計される必要がなく、したがって、現在生産される装置54に適用可能であることである。ガラス貫通ビアによる解決策においては、ガラスは、1つのICまたはMEMS装置46から次のICまたはMEMS装置56を電気的および熱的に分離する。ガラスを貫通する電気接続部分は、横方向の相互接続が従来のプリント回路基板上で形成されるのと略同一の方法で形成される状態で、必要に応じて形成される。図6は、この解決策がどのように実装されるかの断面図を示す。
【0044】
垂直貫通接続は、アンテナ用途においても用いられ得、入力を装置の反対側に設置することにより、アンテナとフィード構造との間の結合を軽減させる利点を提供し得る。貫通接続は、アンテナに対する低インピーダンス接続を可能にする。加えて、ガラスは、低放射要素用の基板として用いる場合、低損失物質である。この技術を用いると、ガラスの背面に接地シールドを設置することも可能となり、このことは、特定種類のアンテナに対して有用である。
【0045】
ガラスコアインダクタ(図示せず)等の、品質因子が高い電気的受動装置も、本発明の方法にしたがって製造され得る。本発明の方法にしたがって製造すると、これらの構成要素の品質因子は、オンチップによる解決策と比較して、品質因子のおよそ1桁分だけ改善される。このことは、多数の無線チップセット製造業者が、セル電話等の装置に対するコストおよび寸法を縮小するために、外部構成要素をオンチップへと集積しつつあるため、重要であり得る。このプロセスにより開発されたインダクタを用いることにより、増幅器等の構成要素は、電力消費を劇的に削減し、それにより、オンチップの解決策に比較して、バッテリー電力の節約がなされ得る。
【0046】
明らかに、本発明の多数の変更例および変化例が、上述の教示に照らし合わせると可能であり、本発明は、特に説明した以外の方法で、添付の請求項の範囲から逸脱することなく実施され得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10