特許第5964802号(P5964802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウルトラテック インクの特許一覧

特許5964802半導体ウェハのレーザーアニールの二重ループ制御
<>
  • 特許5964802-半導体ウェハのレーザーアニールの二重ループ制御 図000002
  • 特許5964802-半導体ウェハのレーザーアニールの二重ループ制御 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964802
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】半導体ウェハのレーザーアニールの二重ループ制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   H01L21/268 T
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-239639(P2013-239639)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-132640(P2014-132640A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】13/706,397
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(72)【発明者】
【氏名】マクワールター、ティー、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ゲインズ、デービッド
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ザンボン、パウロ
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−238490(JP,A)
【文献】 特開2010−129722(JP,A)
【文献】 特開2005−203743(JP,A)
【文献】 特開2004−111584(JP,A)
【文献】 特表平09−504054(JP,A)
【文献】 特開2010−027846(JP,A)
【文献】 特表2004−503101(JP,A)
【文献】 特開2004−164648(JP,A)
【文献】 特開平03−182724(JP,A)
【文献】 特開2010−123994(JP,A)
【文献】 J. Kitching, Y. Shevy, J. Iannelli, and A. Yariv,Measurements of l/f Frequency NoiseReduction in Semiconductor Lasers UsingOptical Feedback with Dispersive Loss,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,米国,IEEE,1993年10月, VOL. 11, NO. 10, OCTOBER 1993,P1526-1532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーノイズを有すると共にレーザーアニール光線の出力量を制御するように調節可能であるレーザーで、ダイのアレイを支持する表面を有するウェハをアニールする方法であって、
前記レーザーからの前記レーザーアニール光線を前記ダイのアレイ上で走査することと、
前記出力量を測定し、第1周波数fで動作して前記レーザーの前記レーザーノイズを制御する第1制御ループによって前記レーザーアニール光線の出力量を測定して制御することと、
前記ウェハからの熱放射線を測定することによって前記fよりも小さい第2周波数fで動作する第2制御ループにより前記レーザーアニール光線の出力量を制御することと、
を備え、
前記第2制御ループにより前記レーザーアニール光線の出力量を制御することには、少なくとも1つのダイにおいて前記熱放射線を平均化し、対応する平均測定温度をそれから決定し、前記平均測定温度およびアニール温度設定点を利用して前記レーザーアニール光線の前記出力量を制御するように前記レーザーを調節することが含まれる
方法。
【請求項2】
前記第1周波数fは、1kHzから100kHzの範囲内であり、
前記第2周波数fは、1Hzから100Hzの範囲内である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、fの約100倍である
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザーアニール光線の前記出力量を測定することには、前記レーザーアニール光線の一部を光検出システムに向かって屈折させることが含まれる
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レーザーアニール光線の一部を屈折させることには、本来ならば前記レーザーアニール光線が反射される反射面上に形成される回折格子を利用して前記レーザーアニール光線の一部を回折させることが含まれる
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウェハは偏光角を有し、
前記ウェハからの前記熱放射線の測定は、前記ウェハの表面の法線から前記偏光角だけ傾斜した光学軸上に配置された熱放射検出システムで行われる
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ウェハは、論理ウェハまたはメモリーウェハである
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2制御ループは、互いに連結された第1および第2PID制御器をそれぞれ使用する
請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記レーザーアニール光線によって前記ウェハが400℃から1350℃の範囲内のアニール温度にまで加熱される
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
それぞれに放射率変動を有する複数のダイを支持する表面を有するウェハによって支持される前記ダイをアニールするためのレーザーアニールシステムであって、
前記ウェハを支持するチャックと、前記チャックを支持すると共に前記チャックおよび前記ウェハを移動させるように構成される可動ステージと、
初期レーザー光線を発すると共に調整可能な出力および1/fのノイズを有するレーザーと、
前記初期レーザー光線を受光してそれからレーザーアニール光線を形成し、前記レーザーアニール光線の一部を光検出システムに案内し、それに応じて検出信号を生成するように構成されると共に、前記ウェハの動きによって前記レーザーアニール光線が前記ウェハの表面に入射して前記ウェハの表面を走査し、前記ウェハをアニール温度まで加熱するように配置される光学システムと、
前記ウェハの表面に対して配置され、前記レーザーアニール光線によって生じる熱放射線を受け、その受けた熱放射線を1または複数の前記ダイの領域において平均化し、それに応じて熱放射信号を生成するように構成されている熱放射検出システムと、
前記検出信号を受信して1kHzから100kHzの範囲内の第1周波数fで出力を調整し、1/fノイズを低減するように前記レーザーを制御するように構成されている第1制御ループと、
前記熱放射信号を受信して1Hzから100Hzの範囲内の第2周波数fで前記出力を調整し、前記アニール温度の変動を低減するように前記レーザーを制御するように構成されている第2制御ループと
を備える、レーザーアニールシステム。
【請求項11】
前記アニール温度は、400℃から1350℃の範囲内である
請求項10に記載のレーザーアニールシステム。
【請求項12】
前記熱放射信号は、スパイクを低減あるいは消失するようにフィルター処理される
請求項10または11に記載のレーザーアニールシステム。
【請求項13】
前記第1および第2制御ループは、互いに連結される第1および第2PID制御器をそれぞれ含む
請求項10から12のいずれかに記載のレーザーアニールシステム。
【請求項14】
前記ウェハは、論理ウェハまたはメモリーウェハである
請求項10から13のいずれかに記載のレーザーアニールシステム
【請求項15】
1/fノイズを有するレーザーからのレーザーアニール光線を使用すると共に、それぞれ放射率変動を有する複数のダイを有するウェハをアニールするための制御可能な出力を使用するレーザーアニールシステム用の二重ループ制御システムであって、
1kHzから100kHzの範囲内の第1周波数fで動作し、レーザー出力を制御して前記1/fノイズを低減するように構成される第1制御ループと、
1Hzから100Hzの範囲内の第2周波数fで動作し、1または複数のダイの領域においてウェハから生じる熱放射線を測定する第2制御ループと
を備え、
前記熱放射線は、前記ウェハをアニール温度まで加熱する前記レーザーアニール光線によって発生し、
前記第1制御ループは、光線転向素子によって生成される前記レーザーアニール光線の一部を受光する光検出システムを含み、
前記光検出システムは、それに応じて、前記レーザーアニール光線の出力量を示す検出信号を生成し、
第1制御ループは、前記第2制御ループからの第2制御信号と共に前記検出信号を受信し、それに応じて第1制御信号を生成し、前記第1制御信号を前記レーザーに送信する第1PID制御器を含み、
前記第2制御ループは、測定熱放射線から測定ウェハ温度を決定して測定温度信号を生成するように構成され、
前記測定温度信号は、アニール温度設定点信号と共に、前記アニール温度の変動を最小化するように前記レーザー出力を制御するように使用される
二重ループ制御システム。
【請求項16】
前記第2制御ループは、1または複数のダイ内の前記熱放射線を測定し、1または複数の前記ダイのその領域のダイ内測定を平均化する熱放射検出システムを含む
請求項15に記載の二重ループ制御システム。
【請求項17】
前記第2制御ループは、前記測定温度信号および前記アニール温度設定点信号を受信し、それに応じて前記第2制御信号を生成する第2PID制御器を含む
請求項15または16に記載の二重ループ制御システム。
【請求項18】
前記第2制御ループは、前記測定熱放射線から前記測定ウェハ温度を算出する放射対温度(E/T)論理回路を含む
請求項15または16に記載の二重ループ制御システム。
【請求項19】
前記第2制御ループは、前記測定熱放射線から前記測定ウェハ温度を算出する放射対温度(E/T)論理回路を含む
請求項17に記載の二重ループ制御システム。
【請求項20】
前記第2制御ループは、前記測定温度信号が前記第2PID制御器に入力される前に、前記放射対温度(E/T)論理回路からの前記測定温度信号をフィルターするローパスフィルターを含む
請求項19に記載の二重ループ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して半導体のレーザーアニールに関し、特に半導体レーザーアニールの二重ループ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーアニール(レーザースパイクアニールやレーザー熱処理ともいう)は、トランジスタ等の能動型の超小型回路を形成する際に半導体ウェハに形成されるデバイス(構造)の所定領域で不純物を活性化する場合など、半導体製造の様々な用途に利用されている。
【0003】
レーザーアニールの一形態では、走査レーザー光線(「レーザーアニール光線」または「アニールレーザー光線」)を利用して、半導体構造(例えば、ソース領域及びドレイン領域)の不純物の活性化には十分に長い時間であるが、実質的な不純物の拡散を防止するために短い時間、半導体ウェハの表面を所定温度(アニール温度)まで加熱する。ウェハ表面がアニール温度になる時間は、レーザーアニール光線の出力密度および露光時間によって決定される。露光時間は、走査方向に沿うレーザーアニール光線の幅を、レーザーアニール光線を走査する速度(走査速度)で除して得られる。
【0004】
典型的な半導体プロセス要件として必要となるアニール温度は、400℃から1300℃である。そして、このときの温度均一性は±3℃である。このような温度均一性を実現するためには、レーザーアニール光線は、走査方向と交差する方向において、ほとんどの状況で強度変動が±5%未満となる比較的均一な強度を有する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,366,308号明細書
【特許文献2】米国特許第6,747,245号明細書
【特許文献3】米国特許第7,154,066号明細書
【特許文献4】米国特許第7,399,945号明細書
【特許文献5】米国特許第7,494,942号明細書
【特許文献6】米国特許第7,514,305号明細書
【特許文献7】米国特許第7,612,372号明細書
【特許文献8】米国特許第8,014,427号明細書
【特許文献9】米国特許第8,026,519号明細書
【特許文献10】米国特許公開公報第2010/0084744号公報
【特許文献11】米国特許公開公報第2012/0100640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザーアニール光線が空間的にかなり均一である場合であっても、アニール温度が規定の許容範囲内で均一となっているかを確認するために、レーザーへのフィードバックが必要となる。真の温度変化による放射変動と局所的な放射率変動とをシステムが区別することができなくなると、パターン化されたウェハ上での局所的な放射率変動が温度測定誤差の原因となり得る。ほとんどの論理デバイスウェハでは、パターン化領域の厚みおよび組成は、バルクシリコンからのパターン放射率の変動が比較的小さくなる程度とされる。
【0007】
他のタイプのデバイスウェハでは、放射率変動は、十分なものとなり得る。例えば、メモリーウェハは、厚い金属線を有する。また、ある論理ウェハには、パターン化領域が、比較的厚い金属ケイ化物(例えば、ケイ化ニッケル)を有するケイ化ステップが含まれる。これらの両ケースでは、放射変動による熱放射変動が大きい。したがって、レーザーアニール光線がそのようなウェハを走査する場合、パターン誘導放射変動の振幅や時間周波数は、温度制御システムが不安定になり得る程度になる。
【0008】
放射スパイクに影響される温度制御システムを再調整することによって、レーザー出力を、温度変動ではなく放射率変動に応じて調整することができるであろう。その結果、レーザーアニールシステムは、開ループ(定レーザー出力)状態でケイ化やメモリーウェハを処理しなければならない。しかし、開ループ状態では、レーザー出力密度変動および/または局所基板温度変動のような非補償的な影響により、レーザーアニールの温度均一化性能が制限される。
【0009】
これは、最大安全アニール温度を同様に制限する。アニール温度は、半導体ウェハの損傷限界温度以下に保たれる必要がある。開ループ処理下においてアニール温度のバラツキが大きいと、アニール温度分布の両極を損傷限界以下に維持するために平均アニール温度を低下させる必要がある。これは、高アニール温度(損傷限界以下)によって優れた処理結果がもたらさせる場合(スパイクアニール処理分野のほとんどの場合)、妥協的なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一局面は、ダイのアレイを支持する表面を有するウェハをレーザーアニールする方法である。この方法には、レーザーからのレーザーアニール光線をダイのアレイ上で走査することが含まれる。ここで、レーザーは、レーザーノイズを有し、レーザーアニール光線の出力量を制御するように調節可能である。また、この方法には、第1制御ループによってレーザーアニール光線の出力量を測定して制御することが含まれる。第1制御ループは、出力量を測定し、第1周波数fで動作してレーザーのレーザーノイズを制御する。さらに、この方法には、第2制御ループによってレーザーアニール光線の出力量を制御することが含まれる。第2制御ループは、ウェハからの熱放射線を測定することによって第2周波数fで動作する。ここで、fはfよりも小さい。また、このように制御することには、少なくとも1つのダイにおいて熱放射線を平均化し、対応する平均測定温度をそれから決定し、その平均測定温度およびアニール温度設定点を利用してレーザーアニール光線の出力量を制御するようにレーザーを調節することが含まれる。
【0011】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、第1周波数fは1kHzから100kHzの範囲内であり、第2周波数fは1Hzから100Hzの範囲内である。
【0012】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、fは、fの約100倍である。
【0013】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、レーザーアニール光線の出力量を測定することには、レーザーアニール光線の一部を光検出システムに向かって転向させることが含まれる。
【0014】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、レーザーアニール光線の一部を転向させることには、本来ならばレーザーアニール光線が反射される反射面上に形成される回折格子を利用してレーザーアニール光線の一部を回折させることが含まれる。
【0015】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、ウェハは偏光角を有し、ウェハからの熱放射線の測定は、この偏光角で行われる。
【0016】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、ウェハは、論理ウェハまたはメモリーウェハである。
【0017】
本開示の他の局面は、上述の方法である。ここで、第1および第2制御ループは、互いに連結された第1および第2PID制御器をそれぞれ使用する。
【0018】
本開示の他の局面は上述の方法である。ここで、レーザーアニール光線によってウェハが400℃から1350℃の範囲内のアニール温度にまで加熱される。
【0019】
本開示の他の局面は、それぞれに放射率変動を有する複数のダイを支持する表面を有するウェハによって支持されるダイをアニールするためのレーザーアニールシステムである。レーザーアニールシステムは、チャックおよび可動ステージを含む。チャックは、ウェハを支持する。可動ステージは、チャックを支持し、チャックおよびウェハを移動させるように構成される。また、レーザーアニールシステムは、レーザーを有する。レーザーは、初期レーザー光線を発する。また、レーザーは、調整可能な出力および1/fのノイズを有する。さらに、レーザーアニールシステムは、光学システムを含む。光学システムは、初期レーザー光線を受光してそれからレーザーアニール光線を形成し、レーザーアニール光線の一部を光検出システムに案内する。光検出システムは、それに応じて検出信号を生成する。光学システムは、ウェハの動きによってレーザーアニール光線がウェハの表面に入射してウェハの表面を走査し、ウェハをアニール温度まで加熱するように配置される。また、レーザーアニールシステムは、熱放射検出システムを含む。熱放射検出システムは、ウェハの表面に対して配置され、レーザーアニール光線によって生じる熱放射線を受け、その受けた熱放射線を1または複数のダイの領域において平均化するように構成されている。熱放射検出システムは、それに応じて熱放射信号を生成する。また、レーザーアニールシステムは、第1制御ループを有する。第1制御ループは、検出信号を受信して1kHzから100kHzの範囲内の第1周波数fで出力を調整し、1/fノイズを低減するようにレーザーを制御するように構成されている。さらに、レーザーアニールシステムは、第2制御ループを有する。第2制御ループは、熱放射信号を受信して1Hzから100Hzの範囲内の第2周波数fで出力を調整し、アニール温度の変動を低減するようにレーザーを制御するように構成されている。
【0020】
本開示の他の局面は、上述のレーザーアニールシステムである。ここで、アニール温度は、400℃から1350℃の範囲内である。
【0021】
本開示の他の局面は、上述のレーザーアニールシステムである。ここで、熱放射信号は、スパイクを低減あるいは消失するようにフィルター処理される。
【0022】
本開示の他の局面は、上述のレーザーアニールシステムである。ここで、第1および第2制御ループは、互いに連結された第1および第2PID制御器をそれぞれ含む。
【0023】
本開示の他の局面は、上述のレーザーアニールシステムである。ここで、ウェハは、論理ウェハまたはメモリーウェハである。
【0024】
本開示の他の局面は、レーザーアニールシステムのための二重ループ制御システムである。レーザーアニールシステムは、1/fノイズを有するレーザーからのレーザーアニール光線を使用すると共に、それぞれ放射率変動を有する複数のダイを有するウェハをアニールするための制御可能な出力を使用する。二重ループ制御システムは、第1および第2制御ループを有する。第1制御ループは、1kHzから100kHzの範囲内の第1周波数fで動作し、レーザー出力を制御して1/fレーザーノイズを低減するように構成されている。第2制御ループは、1Hzから100Hzの範囲内の第2周波数fで動作し、1または複数のダイの領域においてウェハから生じる熱放射線を測定する。熱放射線は、レーザーアニール光線がウェハをアニール温度まで加熱することによって発生する。第2制御ループは、測定熱放射線から測定ウェハ温度を決定して測定温度信号を生成するように構成される。そして、測定温度信号は、アニール温度設定点と共に、アニール温度の変動を最小化するようにレーザー出力を制御するように使用される。
【0025】
本開示の他の局面は、上述の二重ループ制御システムである。ここで、第2制御ループは、熱放射検出システムを含む。熱放射検出システムは、1または複数のダイ内の熱放射線を測定し、1または複数のダイのその領域のダイ内測定を平均化する。
【0026】
本開示の他の局面は、上述の二重ループ制御システムである。ここで、第1制御ループは、光検出システムを含む。光検出システムは、光線転向素子によって生成されるレーザーアニール光線の一部を受光する。また、光検出システムは、それに応じて、レーザーアニール光線の出力量を示す検出信号を生成する。第1制御ループは、第1PID制御器を含む。第1PID制御器は、第2制御ループからの第2制御信号と共にその検出信号を受信し、それに応じて第1制御信号を生成し、その第1制御信号をレーザーに送信する。
【0027】
本開示の他の局面は、上述の二重ループ制御システムである。ここで、第2制御ループは、第2PID制御器を含む。第2PID制御器は、測定温度信号およびアニール温度設定点信号を受信し、それに応じて第2制御信号を生成する。
【0028】
本開示の他の局面は、上述の二重ループ制御システムである。ここで、第2制御ループは、放射対温度(E/T)論理回路を含む。E/T論理回路は、測定熱放射線から測定ウェハ温度を算出する。
【0029】
本開示の他の局面は、上述の二重ループ制御システムである。ここで、第2制御ループは、ローパスフィルターを含む。ローパスフィルターは、測定温度信号が第2PID制御器に入力される前に、E/T論理回路からの測定温度信号をフィルターする。
【0030】
本発明のさらなる特徴及び利点は、下記の詳細な説明(発明を実施するための形態)に明記されている。また、それらの一部は詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、下記の詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面を含む、ここに記載された発明を実施することによって認識される。
【0031】
上記の背景技術に関する記載及び下記の本発明の詳細な説明に関する記載は、特許請求の範囲に記載されているように、本発明の本質及び特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。
【0032】
特許請求の範囲に記載した内容は、本明細書に援用されるとともに、本明細書の一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施形態を図示するものであり、本明細書の記載とともに、本発明の原則及び実施を説明する一助となる。ある図面では、参考のために直交座標系が描かれているが、これは特定の方向および配置方向を限定するものではない。
【0034】
図1】レーザーアニールシステムの一例の回路図である。本図では、半導体ウェハのレーザーアニールを実施する際に用いられるレーザーアニールシステム用の二重ループ制御システムの一実施形態が示されている。
図2】ウェハ表面上を走査するレーザーアニール光線によって形成されるライン像を示すウェハの一例の平面図である。本図には、ウェハ表面上に形成されるダイのアレイを有するウェハを示す差込図が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照する。なお、添付の図面に、実施形態の一例を図示する。図中、同一または同様の部分を参照する為、可能な限り同一または同様の参照番号及び符号を使用する。
【0036】
図1は、レーザーアニールシステム10の一例の回路図である。本図では、レーザーアニールシステム10用の二重ループ制御構成の一実施形態が示されている。参照の為、直交座標系をここに併記する。レーザーアニールシステム10の一例は、例えば、米国特許第7,612,372号明細書、第7,154,066号明細書および第6,747,245号明細書ならびに米国特許公開公報第2010/0084744号公報および米国特許公開公報第2012/0100640号公報に記載されている。これら全ての明細書および公報は、ここに参照によって組み込まれる。
【0037】
レーザーアニールシステム10は、レーザー20を含む。レーザー20は、X方向に延びる光学軸A1に沿って初期レーザー光線22を発する。レーザー20は、例えば、10.6μmの通常アニール波長λの光を発するCOレーザーである。また、レーザー20は、1または複数のダイオードレーザーから構成されていてもよいし、1または複数のダイオードレーザーを含んでいてもよい。
【0038】
また、レーザーアニールシステム10は、光学システム30を含む。光学システム30は、光学軸A1においてレーザー20の下流側に配設されている。光学システム30は、初期レーザー光線を受光してそれからレーザーアニール光線24を生成するように構成されている。光学システム30は、例えば、複数のレンズ、複数のミラー、複数の開口、複数のフィルター、複数の能動光学要素(例えば、可変減衰器等)、これらの組み合わせを含んでもよい。光学システム30は、例えば、米国特許第8,026,519号明細書、米国特許第8,014,427号明細書、米国特許第7,514,305号明細書、米国特許第7,494,942号明細書、米国特許第7,399,945号明細書および米国特許第6,366,308号明細書に開示される。これら全ての明細書は、ここに参照によって組み込まれる。また、光学システム30は、前出の米国特許公開公報第2012/0100640号公報にも開示されている。
【0039】
レーザーアニールシステム10の一代替実施形態では、例えば、半導体ウェハを予備加熱することによってアニール処理を増進するために、第2レーザーおよび第2レーザー光線(図示せず)が使用される。
【0040】
また、光学軸A1における光学システム30の下流側には、ミラーのような光線転向素子34が配設される。光線転向素子34は、表面36を有する。表面36は、アニール波長λの光を実質的に反転向射する。これは、例えば、銅から光線転向素子34を作製しその表面36に金コーティングを施すことによって達成される。例えば、光線転向素子34は、光学システム30の一部であるが、説明および考察の便宜のため、本例では別々に示されている。
【0041】
光線転向素子34は、第2光学軸A2を規定する。第2光学軸A2は半導体ウェハ(「ウェハ」)40に向かっている。ウェハ40は、上面(「表面」)42を有する。表面42は、面法線Nを有する。ウェハ40は、チャック50(例えば、加熱チャック)によって支持されている。また、チャック50は、可動ウェハステージ52によって支持されている。可動ウェハステージ52は、ステージ駆動機構54によって駆動される。第2光学軸A2は、ウェハ40の表面42上で面法線Nに対して入射角度θ2を規定する。レーザーアニール光線24は、第2光学軸A2を下ってウェハ40の表面42に交差する。ウェハ40は、全ウェハ温度Tを有する。この全ウェハ温度Tは、例えば、加熱チャック50によって決定される。また、この全ウェハ温度Tは、例えば、少なくとも室温よりも高い。
【0042】
例えば、レーザーアニール光線24がウェハ40の表面42に交差すると、レーザー光線ラインまたは「ライン像」24Lが規定される。レーザー光線ラインまたは「ライン像」24Lは、ウェハ40の表面42を走査する。ステージ駆動機構54を操作して可動ウェハステージ52を動作させることによって、または、レーザーアニール光線24を走査させるように光線転向素子34を調整することによって、または、これらの2つの動作を組み合わせることによって、ライン像24Lを走査させることができる。
【0043】
上述の通り、典型的な半導体プロセス要件として必要となるアニール温度Tは、400℃から1300℃である。そして、このときの温度均一性は±3℃である。このような温度均一性を実現するためには、レーザーアニール光線24は、走査方向と交差する方向において、ほとんどの状況で強度変動が±5%未満となる比較的均一な強度を有する必要がある。
【0044】
例えば、レーザースパイクアニールの最大温度は、アニールされる物質の融点の少なくとも約25℃以下の温度である。シリコン系デバイスの場合、シリコンの融点は1413℃であり、最大温度は、例えば、約1388℃であろう。
【0045】
ゲルマニウムに富んだシリコンの場合、その合金の融点は、合金中のゲルマニウムの割合に依存する。ゲルマニウムが30%含まれている場合、その融点は、約1225℃である。このため、レーザーアニールの最大温度は、例えば、約25℃低い、すなわち約1200℃であろう。
【0046】
サファイアデバイスの窒化ガリウムの場合、窒化ガリウムの融点は、2500℃以上である。しかし、サファイア基板の融点が2040℃以下である。したがって、サファイア基板の融点、例えば最大アニール温度約2015℃によって非融解アニール処理が制限される。
【0047】
図2は、ウェハ40の一例の平面図である。本図には、拡大差込図が含まれている。拡大差込図には、カーフ領域46によって分割される各ダイ44のアレイを支持するウェハ40の表面42が示されている。複数のダイ44は、1または複数の集積回路(IC)チップが形成される領域である。各ICチップは、半導体デバイスおよび半導体デバイス構造(図示せず)を備えている。例えば、ウェハ40は、論理ICチップを作製するために用いられる論理ウェハである。また、別の例では、ウェハ40は、メモリーICチップを作製するために用いられるメモリーウェハである。
【0048】
上述の通り、複数のダイ44内の半導体デバイスおよび半導体デバイス構造は、異なる放射率特性を有する。任意のダイ44内でアニール温度TAを測定しようとした場合、この特性によって、アニール処理中におけるアニール温度TAが誤って見積もられるおそれがある。例えば、上述の通り、メモリーウェハは、厚い金属線を有する。また、論理ウェハには、パターン化領域が、比較的厚い金属ケイ化物(例えば、ケイ化ニッケル)層を有するケイ化ステップが含まれ得る。金属線または金属ケイ化物は、下部のシリコンよりもかなり低い放射率を有する。
【0049】
図2には、複数のダイ44の行付近をカバーするように、ウェハ40の表面42上で前後に走査されるライン像24Lが示されている。この走査は、矢印AR1およびAR2で示されている。これらの矢印AR1およびAR2は、ライン像24Lの隣接走査路SP1およびSP2に対応している。ウェハ40の表面42をライン像24Lが横断するように走査させるためには、ライン像24Lを固定化した状態で可動ウェハステージ52を使用してウェハ40の表面42を走査するか、光学システム30または光線転向素子34の一部として適切な走査光学素子を用いることによって、固定化されたウェハ40の表面42上でライン像24Lを横断させるように走査するかすればよい。延いては、これら2つの方法を組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、光線転向素子34の表面36は、レーザーアニール光線24の比較的小さな一部分24Pを光学軸A3に沿って屈折させるように構成される。例えば、これは、光線転向素子34の表面36に、弱い(例えば、浅く溝を掘った)回折格子36Gを形成することによって達成される。光検出システム60は、光学軸A3に沿って配設されており、レーザーアニール光線24の一部を受光し、それに応じて測定出力を示す検出信号SDを生成するように配置されている。例えば、レーザーアニール光線24の一部24Pの出力量は、レーザーアニール光線24の出力の僅か数パーセントである。設計または校正によって、レーザーアニール光線24の一部24Pの出力量は、レーザーアニール光線24の既知の割合となる。このため、レーザーアニール光線24の一部24Pを測定することによって、レーザーアニール光線24の光学的出力量の測定を行うことができる。
【0051】
光検出システム60は、レーザー(アニール)波長λでレーザーアニール光線24の一部24Pを検出するために選択される。レーザー20がCOレーザーである場合、光検出システム60は、例えば、冷却HgCdTe検出器を含む。かかる場合、レーザーアニール光線24の一部24Pは、実質的に単色的になる。このため、光検出システム60は、他の波長の光を検出しないように構成される狭帯域光学フィルター61を含み得る。狭帯域光学フィルター61は、冷却して背景熱放射を低減するようにしてもよい。
【0052】
また、レーザーアニールシステム10は、熱放射検出システム80を含む。熱放射検出システム80は、光学軸A4上に存在する。光学軸A4は、ウェハ40の表面42上で面法線Nに対して角度θ4を規定している。例えば、光学軸A4は、ウェハ40の表面42で第2光学軸A2と交差している。例えば、角度θ4は、ウェハ40の偏光角に等しい。シリコンの偏光角は、約75°である。
【0053】
熱放射検出システム80は、レーザーアニール処理中にウェハ40の表面42によって放出される熱放射線82を測定し、それに応じて、測定熱放射Eを示す電気放射信号SEを生成するように構成されている。熱放射検出システム80は、測定熱放射Eから測定温度Tを計算する方法と共に、前出の米国特許公開公報第2012/0100640号公報に記載されている。
【0054】
また、レーザーアニールシステム10は、制御装置100を含む。制御装置100は、レーザー20、ステージ駆動機構54、光検出システム60および熱放射検出システム80に操作可能に接続されている。制御装置100は、多数の論理制御部品を有するが、1または複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGAs)や、プロセッサ装置、メモリー装置、フィルター、フィードバック制御装置等の当業者に公知のプログラム可能な又は非プログラム式の他の電子部品を利用して構成することができる。制御装置100は、(例えば、1または複数のプログラム可能な部品のコンピュータ読取可能な媒体に具現化される命令を介して)ここで記載される二重ループ制御方法を実行するように構成される。
【0055】
制御装置100は、第1フィードバック制御装置112−1を含む。第1フィードバック制御装置112−1は、一例として示され、この後、第1PID制御装置と称される。第1PID制御装置112−1は、入力端(「入力」)113および出力端(「出力」)114を有する。光検出システム60は入力113に電気的に接続されており、レーザー20は出力114に電気的に接続されている。
【0056】
また、制御装置100は、放射対温度論理装置(E/T論理回路)120を含む。E/T論理回路120は、熱放射検出システム80に電気的に接続されている。E/T論理回路120は、測定電気放射信号SEを受信して、測定熱放射Eを測定温度Tに変換し、対応する測定温度信号STを出力するように構成されている。測定温度信号STは、測定電気放射信号SEから計算され、平均測定温度を示す。平均化は、熱放射検出システム80および測定電気放射信号SEの帯域幅によって決定される時間で行われる。
【0057】
測定電気放射信号SEは、通常、ダイ放射率変動による複数のスパイクを含む。これらのスパイクは、抑制されなければ、測定温度信号STM中に現れる。したがって、一実施形態では、E/T論理回路120は、ローパスフィルター(LPF)130に電気的に接続される。LPF130は、測定温度信号STをローパスフィルター処理して、ローパスフィルター済み(フィルター済み)測定温度信号STを生成する。例えば、LPF130は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなシングルプロセス装置から生成される。シングルプロセス装置は、ローパスフィルター処理を実行すると共に、移動平均やスパイク抑制アルゴリズムを実行する。
【0058】
また、制御装置100は、第2フィードバック制御装置112−2を含む。また、第2フィードバック制御装置112−2は、一例として示され、この後、第2PID制御装置と称される。LPD130は、第2PID制御装置112−2の入力113に電気的に接続される。アニール温度設定点信号STSETに具現化されるアニール温度設定点も、第2PID制御装置112−2の入力113に入力される。設定点は、アニール処理の設定点アニール温度TASを規定する。
【0059】
第2PID制御装置112-2の出力は、第1PID制御装置112−1の入力113に電気的に接続される。第2PID制御装置112−2は、アニール温度Tの実質的な均一性、すなわちできるだけ設定点アニール温度TASに近い温度を維持するのに必要な量のレーザー出力に対応する第2制御信号SC2を出力する。第2制御信号SC2および光検出システム60からの検出信号SDは、第1PID制御装置112−1に入力される。第1PID制御装置112−1は、第2制御信号SC2および検出信号SDを処理して、レーザー20に第1制御信号SC1を出力する。第1制御信号SC1は、レーザー20に対して、所定量の出力を供給したり、レーザーアニール光線24が所定量の出力を有するようにその出力を調整したりするように命令するものである。
【0060】
レーザーアニールシステム10は、図1においてL1およびL2として概略的に示されるように2つの連結された制御システムから構成されている。第1制御ループL1は、第1周波数fで動作し、レーザー20、光検出システム60および第1PID制御装置112−1によって規定されている。第2制御ループL2は、第2周波数fで動作し、熱放射検出システム80、E/T論理回路120、LPF130および第2PID制御装置112−2によって規定されている。なお、fは、fよりも小さい。2つの制御ループL1およびL2は、第1PID制御装置112−1で連結されている。
【0061】
レーザーアニールシステム10には、いくつかのノイズ源が存在する。ノイズ源は、アニール温度Tを一定(均一)に維持するために制御されなければならない。1つのノイズ源は、レーザー20の出力生来のノイズであって、固有の1/f分布を有する。他のノイズ源は、レーザーアニールシステム10そのもの内でシステム的影響から生じる。このタイプのノイズの一例は、加熱チャック50の非均質性によるウェハ温度T全体の変動である。他の例は、レーザーアニール光線24に対するウェハ40の面外の動きや、可動ウェハステージ52の欠陥又は設計公差によるレーザーアニール光線24の出力密度の変動である。この変動は、走査中にライン像24Lの出力密度の変動要因となる。
【0062】
他のノイズ源は、放射率「ノイズ」である。このノイズは、変動する放射率値を有する任意のダイ44内の領域を通過するレーザーアニール光線24によって生じる。このタイプのノイズは、放射フィードバックシステムにおいて補償されない。測定温度信号STに対する電気放射信号SEの対話を修正することが可能なリアルタイムで局所的な放射率の測定がないためである。この放射率「ノイズ」は、ダイ44内の構造(例えば、金属線やパッド)の物理的間隔や可動ウェハステージ52の速度によって決定される特性周波数を有する。これは、放射表面の未測定(および非補償の)物理的特性(放射率)に起因する測定信号の変化から生じるという意味で「ノイズ」となる。
【0063】
放射率がなければ、局所的なアニールライン像24Lからの放射フィードバックに基づくシングル制御ループは、アニール温度Tを実質的に一定に保つようにレーザー20およびシステムのエラー源の制御を管理することができる。そのようなシステムは、補償されるエラーがレーザー20またはシステムそのものから生じるかに関わらず、ウェハ40において必要な出力密度を維持することができる。
【0064】
しかしながら、温度測定そのものが放射率の局所的変動によって誤った場合、そのようなループは、放射率の変動に起因する放射信号レベルの変化による誤ったアニール温度Tに対してシステムを駆動するであろう。
【0065】
したがって、レーザーアニールシステム10は、二重ループ制御を採用する。二重ループ制御では、第1および第2制御ループL1およびL2が使用される。第1および第2制御ループL1およびL2は、共同して、ノイズの主源を管理する。例えば、放射率「ノイズ」に対する上述の感度を除去したり、著しく低減したりする。
【0066】
第1制御ループL1は、光検出システム60でレーザーアニール光線24の一部24Pを検出し、対応する検出信号SDを第1PID制御装置112−1の入力113に送信することによって、レーザーアニール光線24の出力量を制御するように動作する。また、第1PID制御装置112−1は、第2制御ループL2から第2制御信号SC2を受信する。第1制御ループL1は、第2制御ループL2の第2周波数fよりも高い周波数fで動作する。第1制御ループL1は、(1/fロールオフで)数百Hzにおよぶレーザーノイズを抑制するのに十分な第1周波数fで動作する。例えば、第1周波数fは、約1kHzから約100KHzの範囲内である。
【0067】
第2制御ループL2は、fよりも小さい第2周波数fで動作し、ウェハ40からの放射を検査する。測定温度信号STをローパスフィルタリングすることによって、フィルター済み測定温度信号STMFが生成される。このフィルター済み測定温度信号STMFは、ウェハ40上のダイ−スケール次元に広がる空間平均値(走査ステージに起因する対応)に対応する時間平均値当たりの平均放射/温度である。この平均化によって、放射率変動に起因する信号スパイクの悪影響が低減または削減される。このように、温度計算は、平均放射率に基づいている。ここで、「平均」は、比較的長距離(すなわち、ダイスケール)に取って代わられる。また、E/T論理回路120の論理は、フィルター済み測定温度信号STMFに対する電気放射信号SEの放射関連変動の影響を抑制するように設計された数値フィルタリング、スパイク検出論理または他のアルゴリズムによって電気放射信号SEの放射率関連変動の抑制を促進するために用いられる。
【0068】
そして、第2制御ループL2は、(第1周波数fに対して)低周波数の誤差成分を制御し、補正する。この誤差成分は、主に、上述のシステムエラーが原因である。これらのシステムエラーは、ダイスケールよりも大きな空間的周期を有し、(走査速度によって決定される)低周波数で(その時間領域で)自ずと現れる。第2制御ループL2は、第1PID制御装置112−1において第1制御ループL1の使用可能な設定点を更新する。例えば、第2制御ループL2の第2周波数fは、約1Hzから約100Hzの範囲内である。
【0069】
レーザー1/fノイズに比べると、放射率変動に起因する信号成分は、典型的にはスペクトル成分に、より調波している。信号変動を生成する表面構造が、自ずとおおよそ明確に定義された空間的周期で構成されているからである。これは、ステージ速度や構造の物理的間隔によって決定されるおおよそ明確に定義された時間領域周波数応答をもたらす。
【0070】
したがって、第2制御ループL2は、ライン像24Lが走査される箇所においてウェハ40の表面42から生じる測定熱放射Eを測定する。例えば、熱放射検出システム80は、Y方向(すなわち走査方向に直交する方向)が少なくともダイ44の寸法であり且つX方向(すなわち走査方向)が少なくともライン像24Lの幅と同じである視野を有する。他の例では、視野は、Y方向にダイ44の寸法まで広がる必要がない。例えば、ダイ44がY方向に1cm程度であり、視野がY方向に数ミリメートルであってもよい。例えば、熱放射検出システム80は、光ファイバー(図示せず)の直線配列を含む。
【0071】
1または複数のダイ44におけるレーザーアニール光線24の走査中に時間平均化を行うことによって、熱放射測定(その後のアニール温度測定)の空間的平均化が得られる。したがって、所定領域において平均化されたアニール温度を測定するために、測定熱放射Eが測定される。このアニール温度は、ライン像24Lの速度、例えば、可動ウェハステージ52の速度に基づいたサンプル時間に変換される。例えば、熱放射検出システム80は、約80KHzのリフレッシュ速度を有する。そして、このリフレッシュ速度は、4倍で平均され、有効リフレッシュ速度を約20kHzにまで低下させる。
【0072】
例えば、放射/温度が平均化される所定領域は、ダイ44の寸法以上である。このため、第2制御ループL2は、ダイよりも大きい温度変化に応答する。このような温度変化は、例えば、加熱チャック50からの熱の変動、種々の機械ドリフト,レーザー効率/出力ドリフトおよび低周波数1/fレーザー出力変動によって引き起こされるであろうレーザー出力密度の変動によって生じ得る。第2制御ループL2は、実質的に第1周波数fよりも遅い第2周波数fで動作する。ここで、fは、fの5倍超であり、第2周波数fは、例えば、約10Hzである。例えば、fは、fの約100倍である。
【0073】
例えば、第2制御ループL2は、基板温度および/または出力密度におけるおおよそダイサイズで且つウェハ直径寸法以下の変化をもたらす放射/温度における比較的低周波数変化に対してフィードバックすることを目的としている。第2周波数fが第1周波数fに近すぎると、第2制御ループL2は、放射率の局所変化、例えば、一つのダイ44内における放射率変化による放射の小さな変化に基づいて、レーザーアニール光線24の出力量を調整するように試みるであろう。そのような小規模の放射率変化が無視され、レーザーアニール光線24の出力量が比較的広範な平均化放射率(例えば、一つのダイサイズ領域、複数のダイサイズ領域等)に基づいて調整されると、アニール処理が改善されるということが見出されている。
【0074】
熱放射検出システム80は、1または複数の検出器81を含み得る。この検出器81は、多波長で動作する多色高温測定用の多重検出器を含む。1または複数の検出器81は、設定点アニール温度TASにおける熱放射線82に関連する光子束や、任意のレーザーアニール光線形状に対して合理的な信号−ノイズ比(SNR)を得ることができるように十分な検出能を有するのが好ましい。例えば、熱放射検出システム80は、帯域制限波長領域で動作する。帯域制限波長領域では、帯域結合熱放射が、設定点アニール温度TASに関する温度の変化に良好な感度を有する。
【0075】
例えば、レーザーアニール接合の場合、アニール温度Tは、1100℃から1250℃の範囲内である。熱放射線の適切な波長範囲は500nmから900nmである。これらの波長では、光電子増倍管またはシリコン系フォトダイオードを、検出器として利用することができる。接触アニールでは、アニール温度Tが、より低く、800℃から1000℃の範囲内である。1μmから2μm領域のより長波長側の検出器、例えば、InGaAs検出器のようなものが適切である。
【0076】
第1および第2制御ループL1およびL2が物理的に連結され、レーザー出力を調整するように機能すると、前出の制御ループ周波数fおよびfの差は、2つの制御ループL1およびL2を機能的に分割するように機能する。このため、各制御ループL1およびL2は、独立して安定的に動作することができる。その結果、一つの制御ループは、他の制御ループを不安定にさせることがない。
【0077】
本開示のレーザーアニールに対する二重ループ制御方法は、ウェハ対ウェハ(WTW)方法およびウェハ内ウェハ(WIW)方法に基づく複合方法と考えることができる。第2制御ループL2は、WIW様フィードバックを提供するが、1または複数のダイ44の放射を平均化するように比較的「遅い」周波数fで動作する。一方、第1制御ループL1は、「速く」、レーザー20において、望まない出力変動、望まないアニール温度変動の原因となる対応の1/fノイズを補償する。
【0078】
当業者には明白であるが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明に対して様々な修正及び変更を加えることができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲内において本発明の修正及び変更を包含する。

図1
図2