特許第5964803号(P5964803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964803
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】データ処理方法及びデータ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20160721BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
   G06T1/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-249889(P2013-249889)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-105944(P2015-105944A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 要
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−232507(JP,A)
【文献】 特開平02−042306(JP,A)
【文献】 特開平10−160452(JP,A)
【文献】 特開2004−361344(JP,A)
【文献】 米国特許第6539789(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0083347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00−11/30,
21/00−21/32
B60C 1/00−19/12
G06T 1/00− 1/40,
3/00− 5/50,
9/00− 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面又はサイドウォール面を測定面とし、前記測定面に形成された自然欠陥部を評価するために、前記測定面の形状を示すデータを処理するデータ処理装置であって、
形状センサを用いて前記測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、前記1ラインの高さデータからある1のサンプル点を起点として連続する一定数の高さデータを取り出し、前記取り出した高さデータの平均値と、前記取り出した各高さデータとを比較し、前記平均値より大きい高さデータを有するサンプル点を抽出する抽出処理を、前記起点をずらしながら前記1ラインの高さデータの全域に対して行うサンプル点抽出部と、
前記抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部として決定する決定処理を行う自然欠陥候補部決定部と、
前記測定面に形成されている意図的な凹凸部の形状の特徴となる条件を予め記憶しており、前記自然欠陥候補部の中から、前記条件を満たす前記自然欠陥候補部を、前記自然欠陥候補部から除外することにより、前記意図的な凹凸部と前記自然欠陥部とを弁別する弁別処理を行う弁別部と、を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記意図的な凹凸部の形状の特徴となる前記条件は、以下の(1)〜(7)の少なくともいずれか1つである請求項1に記載のデータ処理装置。
(1)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最初のサンプル点から最後のサンプル点までの距離を前記自然欠陥候補部の長さとし、前記長さが予め定められた第1の値以下であれば、前記タイヤに無害である無害部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
(2)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最大の高さを有するサンプル点を前記自然欠陥候補部の高さとし、前記高さが予め定められた第2の値以下であれば、前記無害部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
(3)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最初のサンプル点及び前記最後のサンプル点の一方の高さが、前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点の高さの平均値より大きく、かつ、前記最初のサンプル点及び前記最後のサンプル点の他方の高さが、前記平均値より小さければ、凸型、縁取り型、及び、多段頂点型以外の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する。
(4)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点及び当該サンプル点の高さに対して予め定められた第1の割合以上の高さを有するサンプル点の合計が、前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点に対して、予め定められた第2の割合以上であれば、前記凸型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
(5)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点を第1のサンプル点とし、前記第1のサンプル点の前後のサンプル点を第2のサンプル点、第3のサンプル点とし、前記第1のサンプル点の高さと前記第2のサンプル点の高さとの差、及び、前記第1のサンプル点の高さと前記第3のサンプル点の高さとの差が、予め定められた第3の値以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
(6)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点との差が、前記第3の値以下となる高さを有する連続するサンプル点のグループが複数ある場合、最も距離が離れている前記グループどうしの距離が、前記自然欠陥部の前記長さに対して、予め定められた第3の割合以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
(7)前記グループが複数ある場合、前記複数のグループのそれぞれの分散の合計が予め定められた第4の値以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【請求項3】
前記意図的な凹凸部の形状の特徴となる前記条件は、前記(4)である請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
タイヤのトレッド面又はサイドウォール面を測定面とし、前記測定面に形成された自然欠陥部を評価するために、前記測定面の形状を示すデータを処理するデータ処理方法であって、
形状センサを用いて前記測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、前記1ラインの高さデータからある1のサンプル点を起点として連続する一定数の高さデータを取り出し、前記取り出した高さデータの平均値と、前記取り出した各高さデータとを比較し、前記平均値より大きい高さデータを有するサンプル点を抽出する抽出処理を、前記起点をずらしながら前記1ラインの高さデータの全域に対して行うサンプル点抽出ステップと、
前記抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部として決定する決定処理を行う自然欠陥候補部決定ステップと、
前記測定面に形成されている意図的な凹凸部の形状の特徴となる条件を予め用意し、前記自然欠陥候補部の中から、前記条件を満たす前記自然欠陥候補部を、前記自然欠陥候補部から除外することにより、前記意図的な凹凸部と前記自然欠陥部とを弁別する弁別処理を行う弁別ステップと、を備えるデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッド面又はサイドウォール面を測定面とし、測定面に形成された自然欠陥部を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには、トレッド面及びサイドウォール面があり、これらのタイヤ表面には、文字や模様のような意図的な凹凸部が形成されているが、本来存在しないはずの凹凸部(以下、自然欠陥部)が形成されていることがある。自然欠陥部は、タイヤ製造工程でのゴム貼り合わせ具合等が原因で発生する。自然欠陥部は、バースト等のタイヤの故障の原因となる。そこで、タイヤ製造の最終検査工程において、タイヤ表面の反発力のばらつきの測定に加えて、自然欠陥部を発見するために、タイヤ表面の形状の測定がされる。
【0003】
タイヤ表面には、意図的な凹凸部が形成されているので、タイヤ表面の形状データから意図的な凹凸部を示すデータを除去しなければ、タイヤ表面に形成された自然欠陥部を正しく評価できない。
【0004】
そこで、例えば、2つの技術が提案されている。1つ目は、特許文献1に開示されており、次の通りである。タイヤサイド部の凹凸部を検出する検出手段の出力波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換するとともに、指定した位置(i)の平滑微分値F(i)を算出する。平滑微分値F(i)の絶対値が予め設定された閾値Kを超えた場合、上記位置データをタイヤ表面に刻印された標識のデータと判定する。波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データである場合、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換する。これらの操作を繰り返して、上記波形から上記標識に起因する凹凸を排除する。
【0005】
2つ目は、特許文献2に開示されており、次の通りである。所定のサンプリング数で、タイヤ1周分について、光学式変位計の出力データを取り込む。このデータから、タイヤのサイドウォール上の浮文字に対応させた予め定められた信号パターン成分(台形、大山、小山の3通りのパターン)を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−156919号公報(要約)
【特許文献2】特開昭62−232507号公報(第3頁左上欄第18行〜左下欄第16行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タイヤ表面の形状データから意図的な凹凸部を示すデータを除去することにより、タイヤ表面の自然欠陥部を評価する技術のさらなる向上が望まれる。
【0008】
本発明は、タイヤ表面の自然欠陥部を精度よく評価できるデータ処理装置及データ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係るデータ処理装置は、タイヤのトレッド面又はサイドウォール面を測定面とし、前記測定面に形成された自然欠陥部を評価するために、前記測定面の形状を示すデータを処理するデータ処理装置であって、形状センサを用いて前記測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、前記1ラインの高さデータからある1のサンプル点を起点として連続する一定数の高さデータを取り出し、前記取り出した高さデータの平均値と、前記取り出した各高さデータとを比較し、前記平均値より大きい高さデータを有するサンプル点を抽出する抽出処理を、前記起点をずらしながら前記1ラインの高さデータの全域に対して行うサンプル点抽出部と、前記抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部として決定する決定処理を行う自然欠陥候補部決定部と、前記測定面に形成されている意図的な凹凸部の形状の特徴となる条件を予め記憶しており、前記自然欠陥候補部の中から、前記条件を満たす前記自然欠陥候補部を、前記自然欠陥候補部から除外することにより、前記意図的な凹凸部と前記自然欠陥部とを弁別する弁別処理を行う弁別部と、を備えるデータ処理装置である。
【0010】
本発明の一局面に係るデータ処理装置では、形状センサを用いて、測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、このデータの中から自然欠陥候補部を決定する。そして、各自然欠陥候補部に対して、意図的な凹凸部か自然欠陥部かを弁別する弁別処理をする。従って、本発明の一局面に係るデータ処理装置によれば、1ラインの高さデータから意図的な凹凸部を示すデータを除去できるので、タイヤ表面に形成された自然欠陥部を精度よく評価できる。
【0011】
自然欠陥部は、正規分布形状と近似した形状を有する膨らみ部であることが多い。よって、意図的な凹凸部及び自然欠陥部の両方とも、タイヤ表面の平坦部(すなわち、意図的な凹凸部が形成されていない部分)より突き出ている。仮に、1ラインの高さデータの全てについて、意図的な凹凸部と自然欠陥部とを弁別する弁別処理をする場合、タイヤ表面には、平坦部が当然含まれており、平坦部において弁別処理をするのは無駄である。本発明の一局面に係るデータ処理装置は、その点に着目し、測定した1ラインの高さデータの全てを弁別処理の対象にするのではなく、ある程度の高さを有する連続するサンプル点を自然欠陥候補部とし、自然欠陥候補部に対して、弁別処理をする。このように、弁別処理の対象を自然欠陥候補部に絞るので、弁別処理を無駄なく実行できる。
【0012】
上記構成において、前記意図的な凹凸部の形状の特徴となる前記条件は、以下の(1)〜(7)の少なくともいずれか1つである。
【0013】
(1)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最初のサンプル点から最後のサンプル点までの距離を前記自然欠陥候補部の長さとし、前記長さが予め定められた第1の値以下であれば、前記タイヤに無害である無害部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0014】
(2)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最大の高さを有するサンプル点を前記自然欠陥候補部の高さとし、前記高さが予め定められた第2の値以下であれば、前記無害部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0015】
(3)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最初のサンプル点及び前記最後のサンプル点の一方の高さが、前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点の高さの平均値より大きく、かつ、前記最初のサンプル点及び前記最後のサンプル点の他方の高さが、前記平均値より小さければ、凸型、縁取り型、及び、多段頂点型以外の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する。
【0016】
(4)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点及び当該サンプル点の高さに対して予め定められた第1の割合以上の高さを有するサンプル点の合計が、前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点に対して、予め定められた第2の割合以上であれば、前記凸型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0017】
(5)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点を第1のサンプル点とし、前記第1のサンプル点の前後のサンプル点を第2のサンプル点、第3のサンプル点とし、前記第1のサンプル点の高さと前記第2のサンプル点の高さとの差、及び、前記第1のサンプル点の高さと前記第3のサンプル点の高さとの差が、予め定められた第3の値以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0018】
(6)前記自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、前記最大の高さを有するサンプル点との差が、前記第3の値以下となる高さを有する連続するサンプル点のグループが複数ある場合、最も距離が離れている前記グループどうしの距離が、前記自然欠陥部の前記長さに対して、予め定められた第3の割合以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0019】
(7)前記グループが複数ある場合、前記複数のグループのそれぞれの分散の合計が予め定められた第4の値以上であれば、前記縁取り型又は前記多段頂点型の形状を有する前記意図的な凹凸部と見なし、前記自然欠陥候補部から除外する。
【0020】
条件(1)や条件(2)は、自然欠陥部と無害部とを弁別する条件である。無害部とは、意図的な凹凸部や自然欠陥部に分類されないタイヤ表面に生じた高さや長さが小さい箇所である。無害部は、タイヤにとって無害である。条件(3)は、自然欠陥部と、その他の型(図6)の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。条件(4)は、自然欠陥部と、凸型(図6)の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。条件(5)〜(7)は、いずれも、自然欠陥部と、縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。予め定められた値(第3の値)を同じにし、条件(5)〜(7)を全て実行すれば、自然欠陥部と、縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する効果を高めることができる。条件(3)〜(7)の全てを実行すれば、自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する効果を高めることができる。
【0021】
上記構成において、前記意図的な凹凸部の形状の特徴となる前記条件は、前記(4)である。
【0022】
条件(4)は、自然欠陥部と、凸型の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。意図的な凹凸部は、凸型の形状を有する場合が多いので、弁別部が条件(4)を判定できることが望ましい。
【0023】
本発明の他の局面に係るデータ処理方法は、タイヤのトレッド面又はサイドウォール面を測定面とし、前記測定面に形成された自然欠陥部を評価するために、前記測定面の形状を示すデータを処理するデータ処理方法であって、形状センサを用いて前記測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、前記1ラインの高さデータからある1のサンプル点を起点として連続する一定数の高さデータを取り出し、前記取り出した高さデータの平均値と、前記取り出した各高さデータとを比較し、前記平均値より大きい高さデータを有するサンプル点を抽出する抽出処理を、前記起点をずらしながら前記1ラインの高さデータの全域に対して行うサンプル点抽出ステップと、前記抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部として決定する決定処理を行う自然欠陥候補部決定ステップと、前記測定面に形成されている意図的な凹凸部の形状の特徴となる条件を予め用意し、前記自然欠陥候補部の中から、前記条件を満たす前記自然欠陥候補部を、前記自然欠陥候補部から除外することにより、前記意図的な凹凸部と前記自然欠陥部とを弁別する弁別処理を行う弁別ステップと、を備えるデータ処理方法である。
【0024】
本発明の他の局面に係るデータ処理方法は、本発明を方法として規定したものであり、本発明の一局面に係るデータ処理装置と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、タイヤ表面の自然欠陥部を精度よく評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態によるデータ処理装置の全体構成図である。
図2】形状センサの詳細な構成図である。
図3】本発明の実施の形態によるデータ処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】1ラインの高さデータの具体例を示すグラフである。
図5】本発明の実施の形態によるデータ処理装置の動作のうち、自然欠陥候補部を決定するまでの動作を示すフローチャートである。
図6】意図的な凹凸部の形状と自然欠陥部の形状とを説明する説明図である。
図7図6の凸型を示す形状を拡大した拡大図である。
図8】本発明の実施の形態によるデータ処理装置の動作のうち、自然欠陥候補部を決定した後の動作の前半部を示すフローチャートである。
図9】同動作の後半部を示すフローチャートである。
図10図6に示す意図的な凹凸部の形状及び自然欠陥部の形状に対して、弁部処理において、注目すべき箇所を点線の丸で囲んだ図である。
図11】本発明の実施の形態によるデータ処理装置に備えられる表示部に表示された画像の例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態によるデータ処理装置に備えられる表示部に表示された画像とグラフの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の形態によるデータ処理装置1の全体構成図である。データ処理装置1は、タイヤTのトレッド面T11又はサイドウォール面T12を測定面としたとき、測定面に形成された自然欠陥部を評価するために、測定面の形状を示すデータ(形状データ)を処理する装置である。
【0028】
データ処理装置1は、形状センサ101、回転部102、エンコーダ103、制御部104、及び、ユニット駆動部105を備える。回転部102は、回転軸Rを中心軸としてタイヤTを回転させる。具体的には、回転部102は、タイヤTの中心軸に取り付けられるシャフト及びシャフトを回転させるためのモータ等を含む。回転部102によるタイヤTの回転速度としては、例えば、60rpmが採用される。
【0029】
形状センサ101は、タイヤTのトレッド面T11側に設けられた形状センサ101_1と、タイヤTの一方(図1では上方)のサイドウォール面T12に設けられた形状センサ101_2と、タイヤTの他方(図1では下方)のサイドウォール面T12に設けられた形状センサ101_3とが存在する。形状センサ101_1はトレッド面T11を計測する際に用いられ、形状センサ101_2は一方のサイドウォール面T12を計測する際に用いられ、形状センサ101_3は他方のサイドウォール面T12を計測する際に用いられる。
【0030】
形状センサ101_1は、回転中のタイヤTのトレッド面T11に対してレーザ光を照射してトレッド面T11を周方向D101に走査し、タイヤTからの反射光を受光し、周方向D101の1ライン分(言い換えれば、1周分)の計測データを取得する。ここで、周方向D101は、回転軸Rと直交する面でタイヤTを切断したときのタイヤTの外周の方向を指す。
【0031】
形状センサ101_2,101_3も、形状センサ101_1と同様にして、それぞれ、回転中のタイヤTのサイドウォール面T12にレーザ光を照射して、サイドウォール面T12を周方向D102に走査し、周方向D102の1ライン(1周分)の計測データを取得する。ここで、周方向D102は、サイドウォール面T12上に、回転軸Rを中心とするある半径の同心円を描いたときの同心円の外周の方向である。
【0032】
エンコーダ103は、タイヤTが所定角度回転する毎に、回転角度を示す角度信号を制御部104に出力する。角度信号は、形状センサ101の計測タイミングを決定するために用いられる。
【0033】
制御部104は、例えば、マイクロコントローラにより構成され、形状センサ101から出力された計測データに対して後述する処理を行う。ユニット駆動部105は、形状センサ101_1〜101_3のそれぞれを位置決めするための3本のアーム部(図略)、及び、3本のアーム部をそれぞれ移動させるための3個のモータ等を含み、制御部104の制御の下、形状センサ101_1〜101_3を位置決めする。
【0034】
なお、図1において、3個の形状センサ101_1〜101_3を設ける態様を示したが、これに限定されない。例えば、形状センサ101_1〜101_3のうちいずれか1個又は2個を省いてもよい。
【0035】
図2は、形状センサ101の詳細な構成図である。図2では、トレッド面T11を計測する際の形状センサ101_1が示されている。図2において、Y軸は回転軸Rと平行な方向を示し、Z軸はトレッド面T11の法線方向を示し、X軸はY軸及びZ軸のそれぞれと直交する方向を示している。
【0036】
光源201は、半導体レーザ及びシリンドリカルレンズ等を含む光源であり、スポット状のレーザ光をタイヤTに照射する。ここで、光源201は、Z軸と交差する方向から光を照射する。タイヤTは回転部2によって回転されているため、レーザ光はタイヤTのトレッド面T11を周方向D101に沿って走査できる。
【0037】
カメラ202は、カメラレンズ203及び撮像素子204を備える。カメラレンズ203は、トレッド面T11からの反射光を撮像素子204に導く。撮像素子204は、例えば、CCDやCOMS等のイメージセンサにより構成され、カメラレンズ203を介して反射光を受光する。撮像素子204は、制御部104の制御の下、トレッド面T11を撮像する。なお、反射光は正反射光が好ましいため、カメラレンズ203は正反射光を撮像素子204に導くように構成される。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態によるデータ処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。データ処理装置1は、形状センサ310、制御部320、操作部330、及び、表示部340を備える。
【0039】
形状センサ310は、タイヤTのトレッド面T11又はサイドウォール面T12を測定面とし、非接触で測定面の形状を計測する。具体的には、形状センサ310は、図1に示す形状センサ101に相当し、撮像素子311及び光源312を備える。撮像素子311は図2に示す撮像素子204に相当し、光源312は図2に示す光源201に相当する。
【0040】
制御部320は、図1に示す制御部104に相当し、高さデータ取得部321、特異点処理部322、サンプル点抽出部323、自然欠陥候補部決定部324、弁別部325、及び、画像生成部326を備える。高さデータ取得部321は、形状センサ310を用いて測定面を一定のサンプリング周期で走査し、1ラインの計測データを取得し、取得した計測データから三角測量の原理を用いて1ラインの高さデータを算出する。本実施の形態では、図1に示すトレッド面T11の周方向D101に沿った1ラインの高さデータ又はサイドウォール面T12の周方向D102に沿った1ラインの高さデータを取得する。
【0041】
図2の例において、撮像素子204の水平方向HがY軸と平行であるとすると、トレッド面T11の高さに応じて受光点P1の垂直方向Vの座標が変化する。よって、高さデータ取得部321は、レーザ光が照射されている回転中のタイヤTのトレッド面T11を、撮像素子204に一定のフレームレートで連続撮像させる。そして、高さデータ取得部321は、例えば、受光点P1の垂直方向Vの座標を縦軸、時間軸を横軸とする2次元の座標空間に、受光点P1の垂直方向Vの座標を時系列にプロットする。そして、高さデータ取得部321は、各プロット点をサンプル点とし、各サンプル点の縦軸の座標から、三角測量の原理を用いて、各サンプル点の高さデータを求め、トレッド面T11の周方向D101に沿った1ラインの高さデータを取得する。ここで、1ラインの高さデータのサンプル点の個数としては、例えば、1000〜5000程度が採用される。よって、1ラインの高さデータは、サンプル点の個数分の高さデータから構成されるデータ群である。
【0042】
図4は、1ラインの高さデータD(i)の具体例を示すグラフである。横軸が測定面のサンプル点の位置を示し、縦軸がサンプル点の高さデータを示している。図4では、1ラインの高さデータD(i)を構成する全てのサンプル点が示されておらず、連続する11個のサンプル点0〜10が示されている。D(i)は、サンプル点iの高さデータを示している。例えば、D(4)は、サンプル点4の高さデータを示している。
【0043】
特異点処理部322は、メディアンフィルタ又は平均値フィルタを用いて、1ラインの高さデータD(i)から特異点を除去する。特異点には、高さデータがタイヤTのバリやスピューを示すサンプル点、高さデータが測定面に付着したゴミを示すサンプル点、及び、高さデータが形状センサ310による測定不能を示すサンプル点が含まれる。
【0044】
バリとは、タイヤTを金型成型した際に生じる薄い突起物を指す。スピューとは、タイヤTを金型成型した際に生じるひげ状の突起物を指す。測定不能を示すサンプル点とは、レーザ光が遮られたために正しい高さデータを得ることができなかったサンプル点を指す。
【0045】
自然欠陥部は、正規分布形状と近似した形状を有する膨らみ部であることが多い。よって、自然欠陥部、及び、文字や模様のような意図的な凹凸部の両方とも、タイヤ表面(トレッド面T11やサイドウォール面T12)の平坦部(すなわち、意図的な凹凸部が形成されていない部分)より突き出ている。
【0046】
そこで、自然欠陥部及び意図的な凹凸部を自然欠陥候補部として抽出し、自然欠陥候補部の中から自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理がされる。この処理は、サンプル点抽出部323、自然欠陥候補部決定部324及び弁別部325によって実行される。
【0047】
サンプル点抽出部323は、1ラインの高さデータD(i)からある1のサンプル点を起点として連続する一定数の高さデータを取り出し、取り出した高さデータの平均値と、取り出した各高さデータとを比較し、平均値より大きい高さデータを有するサンプル点を抽出する抽出処理を、起点をずらしながら1ラインの高さデータD(i)の全域に対して行う。すなわち、サンプル点抽出部323は、自然欠陥候補部を構成する可能性があるサンプル点を抽出する。
【0048】
自然欠陥候補部決定部324は、サンプル点抽出部323によって抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部として決定する決定処理を行う。
【0049】
弁別部325は、タイヤ表面の測定面に形成されている意図的な凹凸部の形状の特徴となる条件を予め記憶しており、自然欠陥候補部の中から、その条件を満たす自然欠陥候補部を、自然欠陥候補部から除外することにより、意図的な凹凸部と自然欠陥部とを弁別する弁別処理を行う。サンプル点抽出部323、自然欠陥候補部決定部324及び弁別部325については、さらに、後で詳細に説明する。
【0050】
画像生成部326は、弁別部325によって弁別した意図的な凹凸部と自然欠陥部とを利用して、1ラインの高さデータD(i)から意図的な凹凸部を示す高さデータを除去した後のグラフ等を生成し、表示部340に表示させる。
【0051】
操作部330は、オペレータからのデータ処理装置1を操作するための操作指示を受け付け制御部320に出力する。
【0052】
表示部340は、例えば液晶表示パネルにより構成され、画像生成部326によって生成されたグラフ等を表示する。
【0053】
本発明の実施の形態によるデータ処理装置1の動作を、図3図5を用いて説明する。図5は、この動作のうち、自然欠陥候補部を決定するまでの動作を示すフローチャートである。まず、高さデータ取得部321は、形状センサ310にタイヤ表面の測定面を1周走査させ、1ラインの高さデータD(i)を取得する(S101)。1ラインの高さデータD(i)については、図4を用いて既に説明した。
【0054】
次に、特異点処理部322は、1ラインの高さデータD(i)から特異点を除去する(S102)。特異点とは、既に説明したように、高さデータがタイヤのバリやスピューを示すサンプル点、高さデータが測定面に付着したゴミを示すサンプル点、及び、高さデータが形状センサ310による測定不能を示すサンプル点である。
【0055】
次に、サンプル点抽出部323は、1ラインの高さデータD(i)からある1つのサンプル点を起点として連続するn個のサンプリング点の高さデータを取り出し、取り出した高さデータの平均値を算出する(S103)。
【0056】
サンプル点抽出部323は、ステップS103で算出した平均値と、ステップS103で取り出した高さデータとを比較する(S104)。サンプル点抽出部323が、ステップS103で取り出した高さデータが平均値よりも大きいと判断した場合(S104でYes)、その高さデータのサンプル点を抽出する(S105)。そのサンプル点は、自然欠陥候補部を構成する可能性があるからである。
【0057】
一方、サンプル点抽出部323が、ステップS103で取り出した高さデータが平均値以下と判断した場合(S104でNo)、サンプル点抽出部323は、その高さデータのサンプル点を抽出しない。そして、サンプル点抽出部323は、ステップS103で取り出した高さデータの全てについて、平均値との比較が終了したか判定する(S106)。
【0058】
具体的に説明すると、図4を参照して、連続するn個のサンプル点を、連続する10個のサンプル点0〜9とする。サンプル点0〜9の高さデータについて、サンプル点0から順番に、サンプル点0〜9の高さデータの平均値と比較する。各サンプル点の高さデータと平均値との比較が終了する毎に、取り出した高さデータの全てについて、平均値との比較が終了したか判定される。サンプル点9の高さデータと平均値との比較が終了すれば、取り出した高さデータの全てについて、平均値との比較が終了したと判定される。
【0059】
サンプル点抽出部323が、平均値との比較が終了していないと判定した場合(S106でNo)、サンプル点抽出部323は、次のサンプル点の高さデータについて、ステップS104の処理をする。例えば、サンプル点0の高さデータD(0)と平均値との比較が終了した場合、サンプル点1の高さデータD(1)について、ステップS104の処理をする。
【0060】
サンプル点抽出部323が、平均値との比較が終了したと判定した場合(S106でYes)、サンプル点抽出部323は、高さデータD(i)の「i」が、1ラインの一番後ろのサンプル点を示す値に到達しているか判定する(S107)。
【0061】
サンプル点抽出部323が、高さデータD(i)の「i」が、1ラインの一番後ろのサンプル点を示す値に到達していないと判断した場合(S107でNo)、ステップS103の処理に戻る。具体的に説明すると、図4を参照して、10個のサンプル点0〜9について、ステップS106までの処理が終了した場合、サンプル点の起点を1つずらして、10個のサンプル点1〜10について、ステップS103からの処理を開始する。
【0062】
サンプル点抽出部323が、高さデータD(i)の「i」が、1ラインの一番後ろのサンプル点を示す値に到達したと判断した場合(S107でYes)、自然欠陥候補部決定部324は、自然欠陥候補部を決定する処理をする(S108)。詳しく説明すると、自然欠陥候補部決定部324は、ステップS105で抽出されたサンプル点において、連続するサンプル点を1つの自然欠陥候補部とし、ステップS105で抽出されたサンプル点の中から自然欠陥候補部を決定する処理をする。図4を参照して、例えば、サンプル点4,5,6,8,9が抽出された場合、サンプル点4,5,6及びサンプル点8,9が、それぞれ、1つの自然欠陥候補部として決定される。
【0063】
以上が、自然欠陥候補部を決定するまでの動作である。
【0064】
次に、本発明の実施の形態によるデータ処理装置1の動作のうち、自然欠陥候補部を決定した後の動作を説明する。自然欠陥候補部を決定した後、弁別部325が、自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理をする。図6は、意図的な凹凸部の形状と自然欠陥部の形状とを説明する説明図である。意図的な凹凸部の形状は、凸型、縁取り型、多段頂点型、これらの型以外のその他の型の4つに分類できる。これに対して、自然欠陥部の形状は、正規分布形状と近似することができる。なお、凸型とは、平らな中央部を有し、中央部が両端部と比べて高い形状である。縁取り型とは、一方の端部側に1つの頂点を有し、他方の端部側に1つの頂点を有し、これらの頂点が中央部と比べて高い形状である。多段頂点型とは、複数(3以上)の頂点を有する形状である。
【0065】
自然欠陥候補部の長さ及び高さについて、凸型の自然欠陥候補部を例にして説明する。図7は、図6の凸型を示す形状を拡大した拡大図である。自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点P1〜P7のうち、最初のサンプル点P1から最後のサンプル点P7までの距離を自然欠陥候補部の長さLとする。
【0066】
自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点P1〜P7のうち、最大の高さを有するサンプル点P3,P4,P5の高さを、自然欠陥候補部の高さHとする。
【0067】
自然欠陥候補部は、意図的な凹凸部と、自然欠陥部と、無害部と、に分けられる。無害部とは、意図的な凹凸部や自然欠陥部に分類されないタイヤ表面に生じた高さや長さが小さい箇所である。無害部は、タイヤTにとって無害である。自然欠陥候補部の長さLが予め定められた第1の値以下であれば、無害部として取り扱うことができる。また、自然欠陥候補部の高さHが予め定められた第2の値以下であれば、無害部として取り扱うことができる。
【0068】
弁別部325は、各自然欠陥候補部について、自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理をする。以下、弁別処理について、図7図8図9及び図10を用いて詳しく説明する。図8及び図9は、本発明の実施の形態によるデータ処理装置1の動作のうち、自然欠陥候補部を決定した後の動作(すなわち、弁別処理の動作)を示すフローチャートである。図10は、図6に示す意図的な凹凸部の形状及び自然欠陥部の形状に対して、弁部処理において、注目すべき箇所を点線の丸で囲んだ図である。
【0069】
以下の説明で出てくる第1の値、第2の値、第3の値、第4の値、第1の割合、第2の割合、及び、第3の割合は、タイヤTの種類等に応じて、最適な値が設定される。
【0070】
弁別部325は、条件(1)の判断をする(S201)。すなわち、弁別部325は、自然欠陥候補部の長さL(図7)が、予め定められた第1の値以下であるかを判断する。弁別部325が、条件(1)を満たしていると判断すれば(S201でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を無害部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S202)。
【0071】
弁別部325は、全ての自然欠陥候補部について、弁別処理を終了したか判断する(S203)。弁別部325が、上記終了したと判断すれば(S203でYes)、弁別処理が終了する。弁別部325が、上記終了していないと判断すれば(S203でNo)、次の自然欠陥候補部について、ステップS201の処理をする。
【0072】
弁別部325が、条件(1)を満たしていないと判断すれば(S201でNo)、弁別部325は、条件(2)の判断をする(S204)。すなわち、弁別部325は、自然欠陥候補部の高さH(図7)が、予め定められた第2の値以下か否かを判断する。弁別部325が、条件(2)を満たしていると判断すれば(S204でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部は無害部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S205)。そして、ステップS203に戻る。
【0073】
弁別部325が、条件(2)を満たしていないと判断すれば(S204でNo)、弁別部325は、条件(3)の判断をする(S206)。ここでは、弁別部325は、自然欠陥候補部が、図10に示すその他の型の形状を有する意図的な凹凸部であるかを判断する。すなわち、弁別部325は、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最初のサンプル点及び最後のサンプル点の一方の高さが、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点の高さの平均値Av(図10)より大きく、かつ、最初のサンプル点及び最後のサンプル点の他方の高さが、平均値Avより小さいかを判断する。
【0074】
弁別部325が、条件(3)を満たしていると判断すれば(S206でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を、その他の型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S207)。そして、ステップS203に戻る。
【0075】
弁別部325が、条件(3)を満たしていないと判断すれば(S206でNo)、弁別部325は、条件(4)の判断をする(S208)。ここでは、弁別部325は、自然欠陥候補部が、図10に示す凸型の形状を有する意図的な凹凸部であるかを判断する。すなわち、弁別部325は、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最大の高さを有するサンプル点及び当該サンプル点の高さに対して予め定められた第1の割合以上の高さを有するサンプル点の合計が、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点に対して、予め定められた第2の割合以上であれば、凸型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する。当該サンプル点の高さに対して予め定められた第1の割合以上の高さを有するサンプル点とは、言い換えれば、最大の高さの近傍の高さを有するサンプル点である。凸型の形状は、図10の点線の丸で示すように、最大の高さを有するサンプル点及び最大の高さの近傍の高さを有するサンプル点が存在する割合が比較的多いことに着目している。
【0076】
弁別部325が、条件(4)を満たしていると判断すれば(S208でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を、凸型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S209)。そして、ステップS203に戻る。
【0077】
弁別部325が、条件(4)を満たしていないと判断すれば(S208でNo)、弁別部325は、条件(5)の判断をする(S210)。条件(5)〜(7)のいずれかを満たしていれば、自然欠陥候補部を、図10に示す縁取り型又は多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と見なすのである。図10の点線の丸で示すように、正規分布型の形状は、中心に1つの頂点を有するのに対して、縁取り型や多段頂点型の形状は、複数の頂点を有し、頂点どうしが比較的離れていることに着目している。
【0078】
弁別部325は、ステップS210において、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最大の高さを有するサンプル点を第1のサンプル点とし、第1のサンプル点の前後のサンプル点を第2のサンプル点、第3のサンプル点とし、第1のサンプル点の高さと第2のサンプル点の高さとの差、及び、第1のサンプル点の高さと第3のサンプル点の高さとの差が、予め定められた第3の値以上かを判断する。縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部では、最大の高さを有するサンプル点の高さと、その前後のサンプル点の高さとの差が、相当大きい場合があることに着目している。
【0079】
弁別部325が、条件(5)を満たしていると判断すれば(S210でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を、縁取り型又は多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S211)。そして、ステップS203に戻る。
【0080】
弁別部325が、条件(5)を満たしていないと判断すれば(S210でNo)、弁別部325は、条件(6)の判断をする(S212)。すなわち、弁別部325は、自然欠陥候補部を構成する連続するサンプル点のうち、最大の高さを有するサンプル点との差が、前記第3の値以下となる高さを有する連続するサンプル点のグループが複数ある場合、最も距離が離れているグループどうしの距離が、自然欠陥候補部の長さLに対して、予め定められた第3の割合以上であるか判断する。縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部では、図10の点線の丸で示すように、突出している箇所(すなわち、上記グループ)が複数存在し、かつ、最も距離が離れているグループどうしの距離が、比較的大きい場合があることに着目している。
【0081】
弁別部325が、条件(6)を満たしていると判断すれば(S212でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を、縁取り型又は多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S213)。そして、ステップS203に戻る。
【0082】
弁別部325が、条件(6)を満たしていないと判断すれば(S212でNo)、弁別部325は、条件(7)の判断をする(S214)。すなわち、弁別部325は、前記グループが複数ある場合、複数のグループのそれぞれの分散の合計が予め定められた第4の値以上であるか判断する。縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部では、図10の点線の丸で示すように、突出している箇所(すなわち、上記グループ)が複数存在する。従って、最大の高さを有するサンプル点に対して、これらのグループの分散値の合計が大きい場合がある。これに対して、正規分布型の形状は、突出している箇所(上記グループ)が1つである。従って、最大高さを有するサンプル点に対して、そのグループの分散値が比較的小さい。条件(7)は、これに着目している。
【0083】
分散には、例えば、標本分散が採用される。上記連続するサンプル点の数が多くなるにしたがって、分散が大きくなるので、連続するサンプル点の数に影響されないように、標本分散を正規化して評価することが望ましい。正規化の手法としては、連続するサンプル点の数が最も少ないグループの分散値を1にして、他のグループの分散値を求める。
【0084】
弁別部325が、条件(7)を満たしていると判断すれば(S214でYes)、弁別部325は、その自然欠陥候補部を、縁取り型又は多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と見なし、自然欠陥候補部から除外する(S215)。そして、ステップS203に戻る。
【0085】
弁別部325が、条件(7)を満たしていないと判断すれば(S214でNo)、その自然欠陥候補部を自然欠陥部と確定する(S216)。
【0086】
弁別部325は、全ての自然欠陥候補部について、弁別処理を終了したか判断する(S217)。弁別部325が、上記終了していないと判断すれば(S217でNo)、ステップS201に戻る。弁別部325が、上記終了したと判断すれば(S217でYes)、弁別処理が終了する。
【0087】
弁別部325は、弁別処理が終了した後、条件(3)〜(7)のいずれかを満たさないとして除外された自然欠陥候補部を、意図的な凹凸部として確定する(S218)。
【0088】
図5図8及び図9のフローで示す処理が終了した後、図3の操作部330を操作して、画像やグラフを表示する命令を入力することにより、画像生成部326は、画像やグラフを生成し、表示部340に表示させる。
【0089】
図11は、表示部340に表示された画像の例を示す図である。画像Im1,Im2,Im3は、形状センサ310の撮像素子311によって撮像されたタイヤ表面の一部の画像である。画像Im1は、元データで示される画像である。元データとは、撮像素子311が出力した画像データに対して、自然欠陥候補部を抽出する処理や自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理がされていないデータを意味する。符号dは、高さ1.1mmの自然欠陥部を示している。
【0090】
画像Im2は、元データに対して、自然欠陥候補部を抽出する処理をしたデータで示される画像である。画像Im2は、図5のフローで示す処理をすることにより、生成することができる。自然欠陥候補部には、自然欠陥部と意図的な凹凸部(文字部)とが含まれるが、これらが区別されていない。
【0091】
画像Im3は、元データに対して、自然欠陥候補部を抽出する処理をし、さらに、自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理をしたデータで示される画像である。画像Im3は、図5図8及び図9のフローで示す処理をすることにより、生成することができる。自然欠陥部dと意図的な凹凸部(文字部)とが区別して表示されている。
【0092】
図12は、表示部340に表示された画像とグラフの例を示す図である。画像Im4は、画像Im3と同様に、元データに対して、自然欠陥候補部を抽出する処理をし、さらに、自然欠陥部と意図的な凹凸部とを弁別する処理をしたデータで示される画像である。グラフGr1,Gr2は、画像Im4で示すタイヤ表面のうち、ラインLで示す箇所の高さを示すグラフである。縦軸は、タイヤ表面の高さを示し、横軸がタイヤ表面の位置を示している。
【0093】
グラフGr1は、1ラインの高さデータから意図的な凹凸部を示す高さデータを除去する前のグラフである。これに対して、グラフGr2は、1ラインの高さデータから意図的な凹凸部を示す高さデータを除去した後のグラフである。グラフGr2において、意図的な凹凸部を示す高さデータを除去した箇所は、直線補間されている。グラフGr1では、意図的な凹凸部と自然欠陥部dとが示され、グラフGr2では、意図的な凹凸部が示されず、自然欠陥部dが示されていることが分かる。
【0094】
本発明の実施の形態の主な効果を説明する。本発明の実施の形態では、図5で説明したように、形状センサ310を用いて、測定面を一定のサンプリング周期で走査することにより得られた1ラインの高さデータについて、このデータの中から自然欠陥候補部を決定する。そして、図8及び図9で説明したように、各自然欠陥候補部に対して、意図的な凹凸部か自然欠陥部かを弁別する弁別処理をする。従って、本発明の実施の形態によれば、1ラインの高さデータから意図的な凹凸部を示すデータを除去できるので、タイヤ表面に形成された自然欠陥部を精度よく評価できる。
【0095】
自然欠陥部は、正規分布形状と近似した形状を有する膨らみ部であることが多い。よって、意図的な凹凸部及び自然欠陥部の両方とも、タイヤ表面の平坦部(すなわち、意図的な凹凸部が形成されていない部分)より突き出ている。仮に、1ラインの高さデータの全てについて、意図的な凹凸部と自然欠陥部とを弁別する弁別処理をする場合、タイヤ表面には、平坦部が当然含まれており、平坦部において弁別処理をするのは無駄である。本発明の実施の形態は、その点に着目し、測定した1ラインの高さデータの全てを弁別処理の対象にするのではなく、ある程度の高さを有する連続するサンプル点を自然欠陥候補部とし、自然欠陥候補部に対して、弁別処理をする。このように、弁別処理の対象を自然欠陥候補部に絞るので、弁別処理を無駄なく実行できる。
【0096】
本発明の実施の形態では、図8及び図9で説明したように、自然欠陥候補部を、意図的な凹凸部と、自然欠陥部と、無害部と、に弁別できる。条件(1)や条件(2)は、自然欠陥部と無害部とを弁別する条件である。条件(3)は、自然欠陥部と、その他の型(図6)の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。条件(4)は、自然欠陥部と、凸型(図6)の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。条件(5)〜(7)は、いずれも、自然欠陥部と、縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する条件である。予め定められた値(第3の値)を同じにし、条件(5)〜(7)を全て実行すれば、自然欠陥部と、縁取り型や多段頂点型の形状を有する意図的な凹凸部と、を弁別する効果を高めることができる。本発明の実施の形態によれば、条件(3)〜(7)の全てを実行するので、自然欠陥候補部を、意図的な凹凸部と、自然欠陥部と、無害部と、に弁別できる効果を高めることができる。
【0097】
本発明の実施の形態によれば、条件(1)〜(7)を全て実行しているが、タイヤTの種類等に応じて、条件(1)〜(7)の中から1つ又は複数を選択して実行してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 データ処理装置
H 自然欠陥候補部の高さ
L 自然欠陥候補部の長さ
T タイヤ
T11 トレッド面(タイヤ表面)
T12 サイドウォール面(タイヤ表面)
d 自然欠陥部
Im1〜Im4 タイヤ表面の一部の画像
Gr1,Gr2 画像Im4で示すタイヤ表面のうち、ラインLで示す箇所の高さを示すグラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12