特許第5964809号(P5964809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964809オピオイド受容体リガンドとしてのカルボキサミド基を含有するモルヒネ誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964809
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】オピオイド受容体リガンドとしてのカルボキサミド基を含有するモルヒネ誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/26 20060101AFI20160721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160721BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 31/435 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20160721BHJP
   C07D 491/08 20060101ALI20160721BHJP
   A61K 31/4355 20060101ALI20160721BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C07D221/26CSP
   A61P43/00 111
   A61P17/04
   A61P25/04
   A61P1/10
   A61P1/04
   A61P3/04
   A61P11/00
   A61P25/08
   A61P11/14
   A61P29/00
   A61P19/02
   A61P25/36
   A61K31/435
   A61K45/00
   C07D491/08
   A61K31/4355
   C07D401/12
【請求項の数】13
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-501397(P2013-501397)
(86)(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公表番号】特表2013-522368(P2013-522368A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011029425
(87)【国際公開番号】WO2011119605
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/421,915
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/394,148
(32)【優先日】2010年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/316,175
(32)【優先日】2010年3月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502263411
【氏名又は名称】レンセラール ポリテクニック インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】ウェントランド,マーク ピー.
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−502808(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/062093(WO,A1)
【文献】 J.Med.Chem.,2006年,Vol.49,p.5635-5639
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、
は、−CHO及び−CONHから選択され;
は、水素原子であるか;あるいは、
及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、及び−OCHO−又は−OCHCHO−から選択される断片と一緒になって環を形成するものとし、
は、水素原子及びC−C炭化水素基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシル基、及び低級アルコキシ基から選択され;
は、低級アルキル基であり;
は、低級アルキル基であり;
は、水素原子、NR1011、及び−OR10から選択されるか;又は、
、R、R、及びRが一緒になって、1、2、又は3環を形成することができ、前記環は、場合により更なる置換基を有し;
及びR8aは、両方とも水素原子であるか、又は、R及びR8aが一緒になって、=Oであり;
は、水素原子及び低級アルキル基から選択され;
10及びR11、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基、−NR100101又は、場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であるか、又は、
10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成し
100及びR101は、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基、又は場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であるか、又は、
100及びR101は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成し;
Yは、直接結合、又は−(C(R10)(R11))q−であり、ここで、qは、0、1、2、3、4、又は5であり;
Lは、直接結合、又は−(C(R10)(R11))q−であり;及び、
Cyは、Ar−B−Arであり、ここで、
Arは、アリール基であり;
Bは、直接結合であり;及び
Arは、アリール基である)
で表される化合物。
【請求項2】
Cyが、
【化2】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式III〜VI:
【化3】
(式中、
20、R21、及びR22は、それぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20アルキル基及びヒドロキシル基又はカルボキニル基で置換されたC−C20アルキル基から選択されるか;又は
20及びR21は、それらが結合する炭素と一緒になって、−CO、又は−CSを形成し;又は
20及びR21は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、環を形成するものとする)
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式:
【化4】
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【表1】
から成る群から選択される化合物。
【請求項6】
Arが、フェニル基であり、R又はRの一方がBに対してパラ位に存在する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Cy−Rが、式:
【化5】
で表される請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤。
【請求項9】
結合性オピオイド受容体に関連する病態又は疾患を予防又は治療するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物の有効量を有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記疾患又は病態が、痛み、かゆみ、下痢、過敏性腸症候群、胃腸運動障害、肥満症、呼吸抑制、痙攣、咳、痛覚過敏及び薬物嗜癖からなる群から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記薬物嗜癖が、ヘロイン、コカイン、ニコチン及びアルコール嗜癖から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
病態が痛みであり、組成物が更に、オピオイドの有効量を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
病態が変形性関節症であり、組成物が更に、オピオイドの有効量を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《連邦政府による資金提供を受けた研究》
本発明は、米国保健社会福祉省によって授与された契約番号R01DA12180の下で、米国政府支援によりなされたものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
≪関連出願に関する相互参照≫
本願は、米国仮特許出願第61/316,175号(2010年3月22日出願)、同第61/394,148号(2010年10月18日出願)、及び同第61/421,915号(2010年12月10日出願)の優先権を主張し、それらの開示内容は、参考として本明細書に含まれるものである。
【0003】
《発明の分野》
本発明は、カルボキサミドの窒素原子上に大型置換基を有するカルボキサミド基含有オピオイド受容体結合化合物に関する。本化合物は、鎮痛薬、下痢止め薬、鎮痙薬、抗肥満薬、鎮咳薬、抗コカイン薬、抗炎症薬、及び抗嗜癖薬として有用である。
【0004】
《発明の背景》
1805年のモルヒネの単離以来、オピエートは熱心な研究の対象であり、オピエート又はオピエート様活性を有する何千もの化合物が同定されてきた。ヒトの痛覚脱失を引き起こすために使用される化合物(例えばモルヒネ)及びヒトの薬物嗜癖を治療するために使用される化合物(例えばナルトレキソン及びシクラゾシン)を含む多くのオピオイド受容体相互作用性化合物は、経口バイオアベイラビリティーが乏しく、体内からのクリアランス速度が非常に迅速であるため、有用性には限界があった。これが、ベンゾモルファン類[(例えばシクラゾシン及びEKC(エチルケトシクラゾシン)]としても知られている2,6−メタノ−3−ベンゾアゾシン類の8位のヒドロキシル基(OH)及びモルフィナン類(例えばモルヒネ)の対応する3位のOH基の存在によるものであることは多くの実例中で示されてきた。更に、チャート1−3に、オピエート受容体による疾患媒介を治療するために使用される1群のオピエート結合化合物を示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
ここで、RはCH、CHCHCH(OH)C11、CHCH(CHPh)CONHCHCOH、(CHCH(CH、及び(CH−2−チエニルから選択される。
【化6】
その他のオピオイド受容体リガンドは、Aldrich, J.V.“Analgesics”in Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, M.E.Wolff ed., John Wiley & Sons 1996, pages
321-44 に記載されており、その内容は参考として本明細書に含まれるものである。
【0005】
これらのヒドロキシル基の高い極性により、親分子の経口吸収が遅延する。更に、8位(又は3位)のOH基は、スルホン化及びグルクロン酸抱合(第II相代謝)を受けやすく、スルホン化及びグルクロン酸抱合の両方とも活性化合物の迅速な排泄を促進し、その結果、活性化合物に対して不都合なほど短い半減期をもたらす。2001年のWentlandの刊行物に至るまでずっと、過去70年の当技術分野における一貫した経験は、8位(又は3位)のOH基の除去又は置換により、薬理学的に不活性な化合物がもたらされたということであった。
【0006】
米国特許第6,784,187号明細書(Wentlandに属する)は、オピオイドのフェノール性OHをCONHにより置き換えることができることを開示した。オピオイドのシクラゾシンシリーズにおいては、8−カルボキサミドシクラゾシン(8−CAC)が、μ及びκオピオイド受容体に対して高い親和性を有することが示された。インビボでの研究においては、8−CACは高い抗侵害受容活性を示し、8−CACとシクラゾシンとの両方をマウスに1mg/kg腹腔内投与したときに、シクラゾシンよりもかなり長い活性持続時間を示した(15時間対2時間)。8−CACに対する予備的な構造活性相関研究では、カルボキサミド基窒素原子のメチル基又はフェニル基での一置換がモルモットのμ受容体に対する結合親和性を、それぞれ75倍及び2313倍減少させ、一方カルボキサミド基のジメチル化が結合親和性を9375倍減少させたことが明らかになった。カルボキサミド基窒素原子の置換がかかる有害効果を有するという発見は、アミド基のNHがオピオイド結合に対して極めて重要であることを示唆した。
【0007】
本発明者は、近年、カルボキサミド基の窒素を、かなり大型で比較的に非極性の基で置換することができ、このような化合物が、良好なオピオイド結合性を示し、おそらくは良好な代謝安定性を示すことを報告した(WO2010/011619)。向上した活性を有する化合物を使用して、投薬量、副作用、及び費用を減少することができる。
【0008】
≪発明の要約≫
ある観点においては、本発明は、式I:
【化7】
(式中、
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OH、−CN、−CHO、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−NO、−COR10、−COOR10、−SO10、−CONR1011、−CSNR1011、−CONR10NR1112、−CONR10OR11、−CONR10((C(R12)(R13))CONR1011、−CONR10((C(R12)(R13))COOR11、−C(=S)R10、−C(=NOR11)R10、C(=NR10)R11、−SONR1011、ヘテロシクリル基、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ハロ(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルコキシル基、及び(C−C)アルキルチオ基から選択されるか;あるいは、
及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、及び、−OCHO−又は−OCHCHO−から選択される断片と一緒になって環を形成するものとし、
ここで、Cyが、芳香基である場合、R及びRは両方ともに水素原子であることはできず;
ここで、Cyが、芳香基である場合、R及びRは両方ともにハロゲン原子であることはできず;
は、水素原子、C−C炭化水素基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヒドロキシアルキル基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20アルキル基、及びヒドロキシル基又はカルボニル基で置換されたC−C20アルキル基から選択され;
は、低級アルキル基であり;
は、低級アルキル基であり;
は、水素原子、NR1011及び−OR10から選択され;又は
、R、R及びRが一緒になって、1、2、3及び4環を形成することができ、前記環は、場合により更なる置換基を有し;
及びR8aは、両方ともに水素原子であるか、又は、R及びR8aが一緒になって、=Oであり;
は、水素原子及び低級アルキル基から選択され;
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基、−NR100101又は場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であるか、あるいは、
10及びR11が、結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成するものとし;tは、0、1、2、3、4、5、又は6であり;
100及びR101は、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基又は場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であり、又は、
100及びR101は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成し;
Yは、直接結合又は−(C(R10)(R11))q−であり、ここで、qは、0、1、2、3、4又は5であり;
Lは、直接結合又は−(C(R10)(R11))q−であり;及び
Cyは、Ar−B−Arであり、ここで、
Arは、存在しないか、あるいは、アリール基又は1〜4つのN、O及び/又はS原子を有するヘテロアリール基であり、前記の基は、置換されていないか、あるいは、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、−OR10、−NR1011、−CN、−COR10、又は−COOR10により一置換、二置換又は三置換されていることができ;
Bは、直接結合、−O−、−NR10、−SO、又は−(C(R10)(R11−であり、ここで、sは、0、1、2、3、4又は5であり;及び
Arは、アリール基又は1〜4つのN、O及び/又はS原子を有するヘテロアリール基であり、前記の基は、置換されていないか、あるいは、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、−OR10、−NR1011、−CN、−COR10又は−COOR10により一置換、二置換又は三置換されていることができ、
ここで、Cyがフェニル基又はビフェニル基である場合、は、−OCH基以外の基である)
で表される化合物に関する。
【0009】
別の観点においては、本発明は、式Ia:
【化8】
ここで、Lは直接結合であり、全ての他の置換基は上記に定義される意味を有する)
で表される化合物に関する。
【0010】
本発明のある観点においては、チャート1−3において記載された化合物は、フェノール性ヒドロキシル基の位置で置換されている。例えば、チャート1−3の化合物は、−C(O)N(R)LCy(R)(R)にあるフェノール性ヒドロキシル基において置換され、ここで、カルボキサミド基の部分は、ヒドロキシル基を置換し、式I又は式Iaの化合物を得る。
【0011】
別の観点においては、本発明は、薬学的に許容可能な担体及び式I又は式Iaの化合物を含む医薬製剤に関する。
【0012】
別の観点においては、本発明は、結合性オピオイド受容体に関連する病態、又は疾患を予防又は治療の必要な患者において、病態又は疾患を予防又は治療する方法であって、式I又は式Iaの化合物の有効量を含む組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法に関する。
【0013】
本発明の化合物は、従って、鎮痛剤、抗炎症剤、かゆみ止め薬、下痢止め薬、鎮痙薬、鎮咳薬、拒食症及び痛覚過敏、抗嗜癖、呼吸抑制、運動障害、痛み(神経病の痛みを含む)、過敏性腸症候群及び胃腸運動障害のための治療として有用である。本明細書では、抗嗜癖薬(anti-addiction medications)は、薬物嗜癖(drug addiction)と交換可能に用い、これには、アルコール、コカイン、ヘロイン、アンフェタミン及びニコチンの嗜癖が含まれる。前記化合物が、免疫抑制剤及び抗炎症薬として、そして、虚血性障害の減少(及び心臓保護)、学習と記憶の発達、及び尿失禁の治療にも有用である可能性を示す証拠が文献中に存在する。特に、本発明の化合物は、変形性関節症の治療に有用である。
【0014】
別の観点においては、本発明は、結合性オピオイド受容体に関連する病態又は疾患の予防又は治療が必要な患者において、前記病態又は疾患を予防する方法であって、式I又は式Iaの化合物の有効量を含む組成物を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。更なる実施態様においては、薬物嗜癖は、ヘロイン、コカイン、アンフェタミン、ニコチン又はアルコール嗜癖を包含する。その他の実施態様においては、前記病態は、痛みであり、前記組成物は、更に、オピオイドの有効量を含む。更に別の実施態様では、前記病態は、変形性関節症であり、前記組成物は更に、オピオイドの有効量を含む。
【0015】
《発明の詳細な説明》
長年のSAR研究から、モルフィナン類及びベンゾモルファン類のヒドロキシル基は、オピエート受容体の特異的部位と相互に作用することが知られている。本発明者の近年の研究によれば、ヒドロキシル基をカルボキサミド残基で置換可能なことを見出した。かなり広範囲の第二級カルボキサミド類が、25ナノモル未満の望ましい範囲で結合性を示す。本発明者は、近年、カルボキサミド基位に結合した環状基を有する1群の化合物を報告した(US20070021457、WO2010/011619、及び12/506,354で、それらの内容は、参考として本明細書に含まれるものである)。驚くべきことに、環状基上の置換基の中の選ばれた基が、有意に向上した結合性を提供することが分かった。
【0016】
ある観点において、本発明は、式I:
【化9】
(式中、
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OH、−CN、−CHO、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−NO、−COR10、−COOR10、−SO10、−CONR1011、−CSNR1011、−CONR10NR1112、−CONR10OR11、−CONR10((C(R12)(R13))CONR1011、−CONR10((C(R12)(R13))COOR11、−C(=S)R10、−C(=NOR11)R10、C(=NR10)R11、−SONR1011、ヘテロシクリル基、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ハロ(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルコキシル基、及び(C−C)アルキルチオ基から選択されるか;あるいは、
及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、及び−OCHO−、又は−OCHCHO−から選択される断片と一緒になって環を形成するものとし、
ここで、Cyが、芳香基である場合、R及びRは両方ともに水素原子であることはできず;
ここで、Cyが、芳香基である場合、R及びRは両方ともにハロゲン原子であることはできず;
は、水素原子、C−C炭化水素基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヒドロキシアルキル基から選択され;
は、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20アルキル基、及びヒドロキシル基又はカルボニル基で置換されたC−C20アルキル基から選択され;
は、低級アルキル基であり;
は、低級アルキル基であり;
は、水素原子、NR1011及び−OR10から選択され;又は
、R、R及びRが一緒になって、1、2、3、又は4環から形成され、前記環は、場合により更なる置換基を有し;
及びR8aは、両方ともに水素原子であるか、又は、R及びR8aが一緒になって、=Oであるものとし;
は、水素原子及び低級アルキル基から選択され;
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基、−NR100101又は場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であるか、
又は
10及びR11が、結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成するものとし;tは、0、1、2、3、4、5又は6であり;
100及びR101は、それぞれ独立して、水素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基又は場合により置換されていることのある低級アルコキシ基であり、又は
100及びR101は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成し;
Yは、直接結合又は−(C(R10)(R11))q−であり、ここで、qは、0、1、2、3、4又は5であり;
Lは、直接結合又は−(C(R10)(R11))q−であり;及び
Cyは、Ar−B−Arであり、ここで、
Arは、存在しないか、あるいは、アリール基又は1〜4つのN、O及び/又はS原子を有するヘテロアリール基であり、前記の基は、置換されていないか、又は、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、−OR10、−NR1011、−CN、−COR10又は−COOR10により一置換、二置換又は三置換されていることができ;
Bは、直接結合、−O−、−NR10、−SO、又は−(C(R10)(R11−であり、ここで、sは、0、1、2、3、4又は5であり;及び
Arは、アリール基又は1〜4つのN、O及び/又はS原子を有するヘテロアリール基であり、前記の基は、置換されていないか、又は、ハロゲン原子、低級アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、−OR10、−NR1011、−CN、−COR10又は−COOR10により一置換、二置換又は三置換されていることができ、
ここで、Cyがフェニル基又はビフェニル基である場合、は、−OCH基以外の基である)
で表される化合物に関する。
【0017】
一部分において、本発明は、式II:
【化10】
(式中、
Cy、R、R、R、R、R、R、R、R及びR8aは前記に定義する通りである。
いくつかの実施態様においては、Rは、−OH、−CHO、−CONH−CON(H)CHCONH、−CON(H)CHCHCONH、−CON(H)CHCOOH、−CON(H)CHCHCOOH、−COOH及び−COOCHから選択され;又は、
及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、−OCHO−と縮合された環を形成する。
別の実施態様においては、RはHであり、及びRは、−OH、−CHO、−CONH−CON(H)CHCONH、−CON(H)CHCHCONH、−CON(H)CHCOOH、−CON(H)CHCHCOOH、−COOH及び−COOCHから選択される)
の化合物を提供する。
【0018】
一部分において、本発明は、以下の式III、IV、V又はVI:
【化11】
(式中、
、R、R、R及びCyは、前記に定義する通りであり;
20、R21、及びR22は、それぞれ、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、低級アルコキシ基、C−C20アルキル基及びヒドロキシル基又はカルボキニル基で置換されたC−C20アルキル基から選択されるか;又は
20及びR21は、それらが結合する炭素と一緒になって、−CO、又は−CSを形成し;又は
20及びR21は、それらが結合する炭素原子と一緒になって、環を形成するものとし、いくつかの実施態様においては、その環は、らせん環である)
の化合物を提供する。
【0019】
ある実施態様においては、式III、IV、V又はVIの化合物が開示されており、ここで、Rは、−OH、−CHO、−CONH−CON(H)CHCONH、−CON(H)CHCHCONH、−CON(H)CHCOOH、−CON(H)CHCHCOOHから選択され;又は
及びRは、それらが結合する原子と一緒になって、−OCHO−縮合された環を形成する。
その他の実施態様においては、Rは、Hであり、Rは、−OH、−CHO、−CONH−CON(H)CHCONH、−CON(H)CHCHCONH、−CON(H)CHCOOH、−CON(H)CHCHCOOHから選択される。
【0020】
一部分において、本発明は、式Ia:
【化12】
(式中、
Lは直接結合であって、R、R、R、R、R、R、R、R、R8a、R及びCyは前記に定義する通りである)
の化合物を提供する。
【0021】
及びRは、独立して、小型で極性の中性残基であることができ、そして、特には、置換又は非置換のアミド基(以下に限定するものではないが、カルボキサミド基、チオカルボキサミド基、アシルアミノ基、及びホルムアミド基が含まれる);置換又は非置換のアミン基;置換又は非置換のアミジン基(例えば、ヒドロキシアミジン基);及び極性中性残基により置換されアルキル基からなる群から選択することができる。
【0022】
例えば、R及びRは、独立して、Zであることができ、Zは、極性中性残基であり、例えばCHOR、CHNR、−CN、−NRSO−R、−C(=W)R、−NRCOR、−NRCSR、−SONR、−NR−Q−R、−C(=W)NR、−C(O)OR、複素環式環、置換された複素環式環、ヘテロアリール基、及び置換されたヘテロアリール基、例えば
【化13】
であり、
lは、0、1、2、3、4又は5であり;
kは、0、1又は2であり;
Xは、C、N、S又はOであり、そして
【化14】
は、単結合又は二重結合を意味し;
、R、Rは、それぞれ独立して選択され:
水素原子;アリール基;置換されたアリール基;ヘテロアリール基;置換されたヘテロアリール基;複素環式環又は置換された複素環式環;及び置換された又は置換されていないアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、又はそれぞれ0、1、2、又は3、又は(もしくは)、O、S、又はNから選択された、さらに多いヘテロ原子を含むシクロアルケニル基であり;
あるいは、R、R及びRは、結合した原子と一緒になって複素環式環又は置換された複素環式環であり;
は、存在しないか、又は(C=O)、(SO)、(C=NH)、(C=S)、又は(CONR)から選択され;及び
WはO、S、NOR又はNRである。
【0023】
その他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OH、−CN、−CHO、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−NO、−COR10、−COOR10、−SO10、−CONR1011、−CSNR1011、−CONR10NR1112、−CONR10OR11、−CONR10((C(R12)(R13))CONR1011、−CONR10((C(R12)(R13))COOR11、−C(=S)R10、−C(=NOR11)R10、C(=NR10)R11、−SONR1011、ヘテロシクリル基、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ハロ(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルコキシル基、及び(C−C)アルキルチオ基から選択される。
【0024】
その他の例では、R及びRが、結合される原子と一緒になって、及び−OCHO−、又は−OCHCHO−から選択される断片と一緒になって、環を形成する。
【0025】
いくつかの実施態様においては、R又はRの一方は水素原子又はメチルであり、もう一方は−CONH、−COH、−COH、−COCH、−OH、(C−C)アルコキシル基、又はCNである。
【0026】
いくつかの実施態様においては、Cyは:
【化15】
から選択され、
ここで、Wは、[C(R、CR8a、O、NR、S及びCR=CRから選択され;そして、
nは、1、2、3、4又は5であるものとする。
【0027】
いくつかの実施態様においては、Rは、水素原子である。その他の実施態様においては、Rは、ヘテロシクリル基である。更にその他の実施態様においては、Rは、ヒドロキシアルキル基である。更にその他の実施態様においては、Rは、C−C炭化水素である。更なる実施態様においては、Rは、シクロプロピル基又はシクロブチル基である。
【0028】
いくつかの実施態様においては、Rは水素原子である。その他の実施態様においては、Rはヒドロキシル基又はアミノ基である。更にその他の実施態様においては、Rは、低級アルコキシ基である。更にその他の実施態様においては、Rは、C−C20アルキル基あるいはヒドロキシル基又はカルボニル基で置換されたC−C20アルキル基である。更なる実施態様においては、Rは、メチル基又はエチル基である。
【0029】
いくつかの実施態様においては、Rは、低級アルキル基である。いくつかの実施態様においては、Rは、メチル基である。
【0030】
いくつかの実施態様においては、Rは、低級アルキル基である。いくつかの実施態様においては、Rは、メチル基である。
【0031】
いくつかの実施態様においては、Rは、水素原子である。その他の実施態様においては、Rは、−OR10である。更なる実施態様においては、Rは、ヒドロキシル基である。更にその他の実施態様においては、Rは、NR1011である。更なる実施態様においては、Rは、NH、NHCH又はNH(CHである。
【0032】
いくつかの実施態様においては、R、R、R及びRが、1、2、3又は4環を形成することができ、前記環は、場合により更なる置換基を有する。
【0033】
本発明の実施態様においては、R及びR8aは、両方とも水素原子である。別の実施態様においては、R及びR8aが一緒になって、=Oを形成する。
【0034】
いくつかの実施態様においては、Rは、水素原子である。その他の実施態様においては、Rは、低級アルキル基である。
【0035】
いくつかの実施態様においては、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子である。その他の実施態様においては、R10は、場合により置換されていることのある低級アルコキシ基及びR11は、水素原子又はメチル基である。更にその他の実施態様においては、R10は、場合により置換されていることのある低級アルキル基及びR11は水素原子又はメチル基である。更にその他の実施態様においては、R10は、場合により置換されていることのあるアリール基及びR11は水素原子又はメチル基である。更にその他の実施態様においては、R10は、ヒドロキシル基又はアミノ基及びR11は、水素原子又はメチル基である。いくつかの実施態様においては、R10及びR11は、結合されて窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成する。いくつかの実施態様においては、R10及び/又はR11は−NR100101である。
【0036】
これらの実施態様においては、R100及びR101は、それぞれ独立して、素原子、場合により置換されていることのある低級アルキル基、場合により置換されていることのあるアルケニル基、場合により置換されていることのあるアルキニル基、場合により置換されていることのあるアリール基、ヒドロキシル基、及び、場合により置換されていることのある低級アルコキシ基から選択される。いくつかの実施態様においては、R100及びR101は、結合された窒素原子と一緒になって、5〜7環基で、そのうち3つ以下の構成員がN、O及びSから選択されたヘテロ原子であることができる、場合により置換されていることのある縮合された炭素環式環又は複素環式環を形成する。
【0037】
本発明のある観点においては、チャート1−3に記載されている化合物は、フェノール性ヒドロキシル基位において置換される。例えば、チャート1−3の化合物は、−C(O)N(R)LCy(R)(R)を用いたフェノール性ヒドロキシル基位において置換され、ここで、カルボキシアミド基の一部は、ヒドロキシル基を置換し、式I又は式Iaの化合物を得る。
【0038】
いくつかの実施態様においては、式I又は式Iaの化合物は:
【化16】
から選択される。
【0039】
いくつかの実施態様においては、本発明は
【表1】
から選択された化合物を提供する。
【0040】
本発明のいくつかの実施態様においては、Cy−Rが、式
【化17】
であって、
式中、Zは、CR10(ここでR10は、前記の意味である)又はNである。これらの例において、近位環への遠位環の結合点において、Zは炭素原子でなければならないものとする。更に、R及びRの結合点において、Zは、それぞれCR及びCRであることができる。いくつかの実施態様においては、Cy−Rは構造:
【化18】
を有する。
【0041】
それらのいくつかの実施態様においては、R及びRの一方は、Bに対してパラ位に存在し(近位環への遠位環の結合点)、そして、R及びRの一方は水素原子である。
【0042】
本発明のいくつかの実施態様においては、Arは、フェニル基及びR及びRは、Bに対してパラ位である。
【0043】
本発明のいくつかの実施態様においては、Cy−Rは、構造:
【化19】
を有する。
【0044】
ベンゾモルファン類のフェノール性ヒドロキシル基及びモルフィナン類は、米国特許公報6,784,187号、7,057,035号、US20070021457、及びWO2010/011619において記載される、単一で、フレキシブルで、便利な手段によって、化学的にカルボキサミド基に変換されることができる。
【0045】
この分野では、μ、δ及びκアゴニストである化合物が、鎮痛作用を示し;選択的μアゴニストである化合物が、下痢止め薬作用を示し、運動障害治療において有用であり;μアンタゴニスト及びκアンタゴニストは、ヘロイン、コカイン、アルコール及びニコチンの嗜癖治療において有用であり;κアンタゴニストは、かゆみ止め薬でもあり、痛覚過敏治療において有用であることが知られている。近年、κアゴニストは、レトロウィルス感染治療においても有用であることが分かった[Peterson et al. Biochem. Pharmacol. 61, 1141-1151 (2001)]。一般的に、上記タイプIIIのモルフィナン類の右旋性異性体は、鎮咳薬及び抗痙薬として有用である。オピエート結合は、関節炎の治療にもまた関係している(Keates et al., Anesth Analg 1999;89:409-15)。更に、変形性関節症の罹患患者において、μ−及びδ−オピオイド受容体が、滑液組織中の管を包囲する滑膜表層細胞、リンパ球、及びマクロファージで合成されて、そこに位置し、そして炎症の調節(regulation及びmodulation)に役割を果たすことができることが報告された(Tanaka et al., Modern Rheumatology, 2003, 13(4) 326-332)。
【0046】
高親和性が知られているオピオイド受容体リガンドを、チャート1〜3に示す。これらの化合物において、−C(O)N(R)LCy(R)(R)残基によるフェノール性OHの置換は、類似の作用、及びより優れたバイオアベイラビリティを示す化合物を生成する。
【0047】
化合物のスクリーニングに使われる結合分析は、Neumeyer et al., Design and Synthesis of Novel Dimeric Morphinan Ligands for κ and μ Opioid Receptors.J.Med.Chem. 2003, 46,5162 により、既に報告されたものと同様である。ヒト・オピオイド受容体の安定発現したタイプのCHO細胞からの膜タンパク質を、25℃で、50mM−Tris−HCl(pH7.5)の最終容量1mLにおいて、1nM[H]U69,59310(κ)、0.25nM[H]DAMGO11(μ)、又は0.2nM[H]ナルトリンドール12(δ)のいずれかの存在下において、前記化合物の12種の濃度を用いてインキュベートした。[H]U69,593及び[H]DAMGOには、60分間のインキュベート時間を用いた。[H]ナルトリンドールは、受容体との結合(Association)が遅いので、この放射性リガンドに関しては3時間のインキュベーションを行なった。[H]ナルトリンドールを用いてインキュベートしたサンプルは、10mM−MgCl及び0.5mMフッ化フェニルメチルスルホニルも含む。非特異的結合は、10μMナノキソンの包含によって測定した。前記結合は、ブランダル28−ウェルセルハーベスターを使用したSchleicher & Schuell No.32グラスファイバーフィルターを通してサンプルをフィルター処理することにより終了させた。前記フィルターを、その後、冷却した50mM−Tris−HCl(pH7.5)3mLを用いて3回洗浄し、エコシンチAシンチレーション液2mLの中で計数した。[H]ナルトリンドール及び[H]U69,593結合に関しては、前記フィルターを、使用前に、少なくとも60分間、ポリエチレンイミン0.1%中に浸漬した。IC50値を、対数プロビット解析への最小二乗適合によって計算した。非標識化合物のK量は、方程式
=(IC50)/1+S
(ここで、S=(放射性リガンドの濃度)/(放射性リガンドのK13
である)
から計算した。データは、3つに関して実施した少なくとも3回の実験からの平均±SEMである。
【0048】
35S]GTPγS結合分析
0.5mLの最終容量において、それぞれの試験化合物の12種の濃度を、ヒトκ、δ又はμオピオイド受容体のいずれかを安定発現したCHO細胞膜15μg(κ)、10μg(δ)又は7.5μg(μ)を使ってインキュベートした。分析バッファーは、50mM−Tris−HCl(pH7.4)、3mM−MgCl、0.2mM−EGTA、3μM−GDP、及び100mM−NaClからなる。[35S]GTPγSの最終濃度は、0.080nMであった。非特異的結合を、10μM−GTPγSの介在によって測定した。結合は、細胞膜の添加によって開始された。30℃で60分間のインキュベートの後、サンプルをSchleicher & Schuell No.32グラスファイバーフィルターを通してフィルター処理した。フィルターを、冷却した50mM−Tris−HCl(pH7.5)を用いて3回洗浄し、エコシンチシンチレーション溶液2mLで計測した。データは、3つに関して実施した少なくとも3回の実験からの平均Emax値±S.E.M.である。Emax量の推測において、基礎[35S]GTPγS結合を0%に設定した。μオピオイド受容体における化合物のアンタゴニスト作用を決定するために、μオピオイド受容体を発現したCHO細胞膜を、μアゴニストDAMGOの200nMの存在下における化合物の12種の濃度を用いてインキュベートした。κオピオイド受容体において化合物のアンタゴニスト作用を決定するために、κオピオイド受容体を発現したCHO細胞体を、κアゴニストU50,488の100nMの存在下において化合物を用いてインキュベートした。δ受容体において化合物は拮抗薬かどうかを決定するために、δ受容体を発現したCHO細胞体を、δ−選択的アゴニストSNC80の10nMの存在下において試験化合物の12種の濃度を用いてインキュベートした。
【化20】
【0049】
抗侵害受容作用は、Jiang et al.[J.Pharmacol.Exp. Ther.264,1021-1027(1993),page 1022]に記載の方法によって評価される。i.c.v.投与の場合、マウスの酢酸ライジングテストにおいて、本発明化合物のED50は、100nモル以下であることが期待され、i.p.投与によって与えられる場合、作用持続は、本発明化合物とそれらの「親」とを比較して、本発明化合物における増加が期待される。
【0050】
《定義》
この明細書の全体にわたり、用語及び置換基はその定義を有する。
【0051】
アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状炭化水素構造及びその組み合わせを含むことを意味する。組み合わせは、例えば、シクロプロピルメチル基であろう。低級アルキル基は、炭素原子1〜6つのアルキル基を指す。低級アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、s−及びt−ブチル基、及びシクロブチル基などが挙げられる。好ましいアルキル基は、C20又はそれ未満のアルキル基である。シクロアルキル基はアルキル基の下位集合であり、シクロアルキル基としては炭素原子3〜8つの環状炭化水素基が挙げられる。シクロアルキル基の例としては、c−プロピル基、c−ブチル基、c−ペンチル基、及びノルボルニル基などが挙げられる。
【0052】
アルコキシ基又はアルコキシル基は、親構造に酸素原子を介して結合している炭素原子1〜8つの直鎖状、分岐状、又は環状構造及びその組み合わせの基を指す。例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。低級アルコキシ基は、1〜4つの炭素原子を含有する基を指す。
【0053】
アリール基及びヘテロアリール基は、5又は6員の芳香環基又はO、N、又はSから選択されるヘテロ原子を0〜3つ含有する5又は6員の芳香族複素環基;
二環式9又は10員の芳香環系基又はO、N、又はSから選択されるヘテロ原子を0〜3つ含有する二環式9又は10員の芳香族複素環系基;あるいは
三環式13又は14員の芳香環系基又はO、N、又はSから選択されるヘテロ原子を0〜3つ含有する三環式13又は14員の芳香族複素環系基を意味する。
芳香族6〜14員の炭素環式環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、及びフルオレンが挙げられ、5〜10員の芳香族複素環式環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールが挙げられる。
本明細書で使用されるアリール基及びヘテロアリール基は、1または複数の環が芳香族であるがすべてが芳香族である必要はない残基を指す。
【0054】
アリールアルキル基は、アリール環に結合しているアルキル残基を意味する。例としては、ベンジル基、及びフェネチル基などを挙げることができる。ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロアリール環に結合しているアルキル残基を意味する。例としては、例えば、ピリジニルメチル基、及びピリジニルエチル基などが挙げられる。
【0055】
からC20炭化水素基は、元素構成としては水素原子及び炭素原子だけからなる直鎖状、分岐状又は環状の残基を意味し、アルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びその組み合わせが挙げられる。例としては、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシルメチル基、カンホリル基及びナフチルエチル基が挙げられる。
【0056】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。ある実施態様においては、ハロゲン原子はフッ素又は塩素であることができる。
【0057】
用語「ハロアルキル基」及び「ハロアルコキシル基」は、それぞれアルキル基又はアルコキシル基を意味し、1または複数のハロゲン原子で置換された。
【0058】
複素環基は、1〜4つの炭素原子が、ヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子又は硫黄原子などにより置き換えられているシクロアルキル又はアリール残基を意味する。ヘテロアリール基は、複素環基の下位集合を形成する。本発明の範囲内に入る複素環の例としては、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在するときは、一般にメチレンジオキシフェニル基という)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、ジオキサン、及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0059】
置換されたアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はヘテロシクリル基などは、各残基中の3つ以下のH原子が、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、フェニル基、ヘテロアリール基、ベンゼンスルホニル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、ハロアルコキシ基、カルボキシ基、カルボアルコキシ基(アルコキシカルボニル基ともいう)、アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキサミド基(アルキルアミノカルボニル基ともいう)、シアノ基、カルボニル基、アセトキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、アミジノ基、アリール基、ベンジル基、ヘテロシクリル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヒドロキシイミノ基、アルコキシイミノ基、オキサアルキル基、アミノスルホニル基、トリチル基、アミジノ基、グアニジノ基、ウレイド基、及びベンジルオキシ基で置き換えられている、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、又はヘテロシクリル基を指す。
【0060】
本明細書に記載する事実上すべての化合物は、1または複数の不斉中心を含有し、従って、絶対立体化学の観点から(R)−又は(S)−と定義することのできる鏡像異性体、ジアステレオマー、及びその他の立体異性体を生じることができる。本発明は、すべてのそのような可能な異性体、及びそれらのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことを意味する。モルフィナン類及びベンゾモルファン類の左旋性異性体はより強力な抗侵害受容薬であり、一方右旋性異性体は鎮咳薬又は鎮痙薬として有用であることができることが一般に見出されている。光学的に活性な(R)−及び(S)−異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を用いて製造することができるし、又は従来技術を用いて分割することができる。本明細書に記載する化合物がオレフィンの二重結合又は他の幾何学的不斉中心を含む場合で他に特に指定のない限り、化合物はE及びZ幾何異性体を両方とも含むことを意味する。同様に、すべての互変異性型も含まれることを意味する。
【0061】
本発明の化合物のなかのあるものは、第四級塩、すなわちカチオン種である。従って、それらの化合物は、常に塩として提供されるであろう。そして用語「薬学的に許容可能な塩」は、その対イオン(アニオン)が無機酸、有機酸及び水(これが正式には水酸化物アニオンを供給する)を含む薬学的に許容可能な非毒性の酸に由来する塩を指す。本発明の化合物に適した薬学的に許容可能なアニオンとしては、水酸化物、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、臭化物、塩化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アセトアミド安息香酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アミノサリチル酸塩、アンヒドロメチレンクエン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、カンシル酸塩、カプリン酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、シクラミン酸塩、ジクロロ酢酸塩、エデト酸塩(EDTA)、エジシル酸塩、エンボン酸塩、エストレート、エシレート、フッ化物、ギ酸塩、ゲンチシン酸塩、グルセプテート、グルクロン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、馬尿酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、ラクトビオン酸塩、マロン酸塩、メシレート、ナパジシル酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、ペクチネートポリマー(pectinate polymer)、フェニルエチルバルビツル酸塩、ピクリン酸塩、ピドレート、プロピオン酸塩、ロダン化物、サリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、タンニン酸塩、テオクレート(theoclate)、及びトシレートなどが挙げられる。望ましい塩は、クォート(quat)の合成において得られるどのような対イオンのイオン交換によっても得ることができる。これらの方法は、当業者によく知られている。医薬製剤の製造には薬学的に許容可能な対イオンが好ましいであろうが、その他のアニオンは、合成中間体としては全く許容可能である。従って、そのような塩が化学中間体である場合、Xは、薬学的に望ましくないアニオン、例えば、ヨウ化物、シュウ酸塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸塩などであることができる。本発明の化合物がビスクォート(bisquats)であるとき、対イオンとして、2つの一価アニオン性化学種(例えば、Cl)又は単一の二価アニオン性化学種(例えば、フマル酸塩)のいずれかを用いることができる。同様に、オリゴアニオン性化学種を用いて、対イオンに対するクォートの適切な比を有する塩、例えばクエン酸三クォート((quat)3 citrates)を作ることができるであろう。これらは、自明の等価物であろう。ある実施態様においては、モルフィナン又は ベンゾモルファンコア構造の窒素は、四級化される。四級化は、三次窒素原子のメチル化によって達成することができる。
【0062】
この発明は多くの異なる形態にある実施態様の影響を受けやすいのであるが、本発明の好ましい実施態様は示される。しかしながら、本開示はこの発明の原理の例示とみなされるべきであり、前記開示により本発明を実施態様の説明に限定することを意図していないことは理解されるべきである。審査の結果、特許請求の範囲に記載した属の特定の構成員がこの出願の発明者に対して特許可能でないことが見出されるかもしれない。この場合において、その結果生じた出願人の特許請求の範囲からの種の除外は、特許審査手続の人為的結果と見なされるべきであり、本発明者らの発明の概念又は記載の反映によると見なされるべきではない;
本発明は、既に公共の所有にあるものでない属(I)の構成員のすべてを包含する。
【0063】
《略語》
以下の略語及び用語は、全体にわたり指示された意味を有する:
【化21】
は、単結合又は二重結合を意味する。
Ac = アセチル
BNB = 4−ブロモメチル−3−ニトロ安息香酸
Boc = t−ブチルオキシカルボニル
BPE = 2(4−ビフェニリル)エチル=
【化22】
Bu = ブチル
c− = シクロ
DAMGO = Tyr−ala−Gly−NMePhe−NHCHOH
DBU = ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン
DCM = ジクロロメタン=塩化メチレン=CH2Cl2
DEAD = アゾジカルボン酸ジエチル
DIC = ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA = N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP = 4−N,N−ジメチルアミノピリジン
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
DOR = δオピオイド受容体
DPPF = 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
DVB = 1,4−ジビニルベンゼン
EEDQ = 2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノ
リン
Fmoc = 9−フルオレニルメトキシカルボニル
GC = ガスクロマトグラフィー
HATU = ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−
イル)−1,1,3,3−テトラメチルウトニウム
HOAc = 酢酸
HOBt = ヒドロキシベンゾトリアゾール
KOR = κオピオイド受容体
Me = メチル
mesyl = メタンスルホニル
MOR = μオピオイド受容体
MTBE = メチルt−ブチルエーテル
NMO = N−メチルモルホリンオキシド
PEG = ポリエチレングリコール
Ph = フェニル
PhOH = フェノール
PfP = ペンタフルオロフェノール
PPTS = ピリジニウムp−トルエンスルホネート
PyBroP = ヘキサフルオロリン酸ブロモ−トリス−ピリジノ−ホスホニウム
rt = 室温
sat’d = 飽和
s− = 第二級
t− = 第三級
TBDMS = t−ブチルジメチルシリル
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
TMOF = オルトギ酸トリメチル
TMS = トリメチルシリル
tosyl = p−トルエンスルホニル
Trt = トリフェニルメチル
U69,593 =
【化23】
【0064】
問題の基質中の残基は、フェノールヒドロキシル基の変換の際に、保護及び脱保護を必要とすることが発生し得る。「保護」、「脱保護」及び「保護された」官能性に関する用語は、本明細書を通じて登場する。そのような用語は当業者によく理解されており、一連の試薬による逐次的処理を含むプロセスの状況において使用される。その状況において、保護基とは、工程段階において官能性をマスクしないと望ましくない反応が起きるような工程段階において、官能性をマスクするのに使用する基を意味する。保護基は、前記の段階で反応を防止するが、続いて、除去され、元の官能性を露出することができる。その除去又は「脱保護」は、反応の完了の後、又は官能性の後で起こる。前記の除去又は「脱保護」は、反応の完了(その反応において官能性が妨害するであろう)の完了後に起こる。従って、試薬の順序が、例えば下記のように特定されると、当業者は、「保護基」として適している基を容易に計画することができる。その目的に適した基は、化学分野の標準的教科書、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis by T.W. Greene [John Wiley & Sons, New York, 1991]において論じられている。前記教科書は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の化合物は、以下に記載する経路のうちの一つにより合成される:
【化24】
一般に、フェノール性−OHをトリフレート基で置換する方法は、米国特許第6,784,187号明細書に記載されている。前記明細書の内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0066】
プロトンNMRスペクトル及びある場合において13C−NMRは、Varian Unity−300又は500NMRスペクトロメーターにより、CDClに溶解した試料について内部標準物質としてテトラメチルシランを用いて得た。CDOD及びDMSO−dに溶解した試料は、その溶媒を基準とした。プロトンNMRの多重度データは、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、dd(二重線の二重線)、及びbr(ブロード)で示す。結合定数はヘルツ単位である。直接挿入プローブ化学イオン化質量スペクトルデータは、島津GC−17A GC−MS質量分析計により得た。直接注入エレクトロスプレーイオン化(正電荷イオンモードにおける)質量スペクトルデータは、Agilent 1100シリーズLC/MSDシステム(ドイツ)により得た。融点は、Meltempキャピラリー融点測定装置により測定し、補正しなかった。赤外スペクトルデータは、Perkin−Elmer Paragon 1000FT−IR分光光度計により得た。旋光度データは、Perkin−Elmer 241偏光計から得た。すべての試験化合物及び中間体に割り当てた構造は、データと一致した。すべての新規な目的物に対する炭素、水素、及び窒素の元素分析は、Quantitative Technologies Inc.(Whitehouse,NJ)が実施し、注記した以外は、理論値の±0.4%以内にあった;水又はその他の溶媒の存在は、プロトンNMRにより確認した。反応は、一般にアルゴン又は窒素雰囲気中で行なった。市販品として購入した試薬は、別に断らない限り、精製しないで使用した。次の試薬、即ちN−ヒドロキシスクシンイミド、フェネチルアミン、3−フェニル−1−プロピルアミン、4−アミノビフェニル、酢酸パラジウム、4−フェニルベンジルアミン及びベンジルアミンは、Aldrich Chemical Companyから購入した。次の試薬、即ち2−(4−ビフェニルエチルアミン)は、Trans World Chemicalsから購入した。次の試薬、即ち1,1’−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)フェロセン(dppf)及びジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物[PdCl2(dppf)]は、Strem Chemicals,Incorporatedから購入した。ピリジンは、KOHから蒸留した。DMF及びDMSOは、減圧下にCaH2上で蒸留した。すべてのフラッシュクロマトグラフィーについて、シリカゲル(Bodman Industries,ICN SiliTech 2−63D 60A,230〜400メッシュ)を使用した。アミン類は、Aldrich Chemical Companyから購入して、別に示さない限り、受け入れた状態で使用した。トルエン及びEtOは、ナトリウム金属から蒸留した。THFは、ナトリウム/ベンゾフェノンケチルから蒸留した。ピリジンは、KOHから蒸留した。塩化メチレンは、CaH2から蒸留した。DMF及びDMSOは、減圧下にCaHから蒸留した。メタノールは、使用する前に、3±モレキュラーシーブス上で乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィーに対しては、シリカゲル(Bodman Industries,ICN SiliTech 2−63D 60A,230〜400メッシュ)を使用した。
【0067】
一般に、上記の化学反応は、周知のコア構造の上に見出される様々な官能基の存在下に正しく機能する。例外があれば、遊離型の6−OHを有するモルヒネ及び同族体であろう。この6−OHはTBDPS(t−ブチルジフェニルシリル)基により保護することができる[Wentland et al., “Selective Protection and Functionalization of Morphine...”, J. Med. Chem. 43, 3558-3565 (2000)を参照のこと]。