(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964810
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】強化材料の製造方法およびその方法を用いて得られた強化材料
(51)【国際特許分類】
B29B 15/08 20060101AFI20160721BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20160721BHJP
A61L 27/00 20060101ALI20160721BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20160721BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20160721BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20160721BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20160721BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20160721BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20160721BHJP
B29C 70/58 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
B29B15/08
A61C13/00 A
A61L27/00 U
A61L27/00 V
A61L27/00 W
A61L27/00 Y
C08L101/00
C08L75/06
C08L63/00 C
C08K7/14
C08K3/08
C08G59/18
B29C67/16
【請求項の数】29
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-501665(P2013-501665)
(86)(22)【出願日】2011年3月21日
(65)【公表番号】特表2013-525137(P2013-525137A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011001381
(87)【国際公開番号】WO2011120643
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2014年2月28日
(31)【優先権主張番号】10003358.8
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508092576
【氏名又は名称】エーテーハー チューリヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100109128
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 功
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(74)【代理人】
【識別番号】100100608
【弁理士】
【氏名又は名称】森島 なるみ
(74)【代理人】
【識別番号】100142099
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 真一
(74)【代理人】
【識別番号】100152803
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100123548
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 晃二
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュトュダルト
(72)【発明者】
【氏名】ランダル エム. エーエルベー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル リバノリ
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−167692(JP,A)
【文献】
特開2004−360160(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0239948(US,A1)
【文献】
特開2001−335602(JP,A)
【文献】
特開2001−294676(JP,A)
【文献】
特開2003−026827(JP,A)
【文献】
特開2001−214075(JP,A)
【文献】
特開昭63−111039(JP,A)
【文献】
特開昭62−257814(JP,A)
【文献】
特開2002−146672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08−15/14
B29C 67/24,70/62,71/04
C08J 5/00−7/02;7/12−7/18 C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 59/00−59/72
A61C 5/08−5/12;8/00−13/38
A61L 15/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球状強化用粒子がマトリックスに埋め込まれた複合材料を作製する方法であって、
第1の工程において、直径が1〜200nmである磁性および/または超常磁性ナノ粒子をファンデルワールス、静電付着、および共有結合付着のうち少なくとも一つにより非球状強化用粒子に結合させ、
第2の工程において、得られた強化用粒子を液体マトリックス材料および/または液体マトリックス前駆体材料に導入し、
第3の工程において、前記液体マトリックス材料および/または前記液体マトリックス前駆体材料を固体化および/または重合および/または架橋し、
それぞれ前記液体マトリックス材料および/または前記液体マトリックス前駆体材料の固体化および/または重合および/または架橋の前および/または最中に、マトリックス中で前記強化用粒子が配向するように磁場を印加し、第3の工程の後に、この配向を前記マトリックス中で固定し、
前記非球状強化用粒子に対する前記ナノ粒子の重量比は0.0001〜0.05の範囲である方法。
【請求項2】
前記第3の工程の前および/または最中に、前記強化用粒子の不均一分布に至るように、最大でも4000ガウスの磁場が印加され、この不均一分布が、前記マトリックス中の位置の関数としての前記強化用粒子の可変濃度および前記マトリックス中の位置の関数としての前記強化用粒子の可変配向分布のうち少なくとも一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の工程の前および/または最中に、前記強化用粒子の不均一分布に至るように、最大でも500ガウスの磁場が印加され、この不均一分布が、前記マトリックス中の位置の関数としての前記強化用粒子の可変濃度および前記マトリックス中の位置の関数としての前記強化用粒子の可変配向分布のうち少なくとも一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非球状強化用粒子が、繊維、ロッド、チューブ、もしくはひげ結晶、またはそれらの組合せの群から選択され、1次元の長さ(l)は少なくとも0.5μmであり、平均直径(d)は1nm〜1mmの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非球状強化用粒子が、繊維、ロッド、チューブ、もしくはひげ結晶、またはそれらの組合せの群から選択され、1次元の長さ(l)は少なくとも0.5μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非球状強化用粒子が、繊維、ロッド、チューブ、もしくはひげ結晶、またはそれらの組合せの群から選択され、1次元の長さ(l)は少なくとも0.5μmであり、前記長さ(l)は、平均直径(d)の少なくとも2倍である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非球状強化用粒子が、繊維、ロッド、チューブ、もしくはひげ結晶、またはそれらの組合せの群から選択され、1次元の長さ(l)は少なくとも0.5μmであり、前記長さ(l)は、平均直径(d)の少なくとも5倍の大きさである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非球状強化用粒子が、プレートレットであり、厚さ(t)は50nm〜1000nmの範囲であり、幅(w)は10nm〜100μmの範囲であり、および/または、1次元の長さ(l)は、少なくとも0.5μmである、ただし、前記長さ(l)は、前記厚さ(t)の少なくとも2倍、または少なくとも5倍の大きさであることを条件とし、前記幅(w)は、前記厚さ(t)の少なくとも2倍、または少なくとも5倍の大きさであることを条件とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非球状強化用粒子が、プレートレットであり、厚さ(t)は1nm〜10μmの範囲であり、幅(w)は10nm〜100μmの範囲であり、および/または、1次元の長さ(l)は、少なくとも0.5μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、静電および/または共有結合付着である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の工程の後にまたは前記第3の工程内で、前記非球状強化用粒子を、周囲のマトリックス材料に結合および/または付着させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の工程の後にまたは前記第3の工程内で、前記非球状強化用粒子を、熱処理および/または照射処理および/または加圧処理を伴うその後の第4のアニーリング工程により、周囲のマトリックス材料に結合および/または付着させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子および前記非球状強化用粒子を、前記非球状強化用粒子と前記ナノ粒子が反対の電荷を有するような条件下で流体に浸漬することによって、前記ナノ粒子を、静電付着により前記非球状強化用粒子に付着させる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子および前記非球状強化用粒子を、前記非球状強化用粒子と前記ナノ粒子が反対の電荷を有するような条件下で水に浸漬することによって、前記ナノ粒子を、静電付着により前記非球状強化用粒子に付着させる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
流体が水であり、溶液のpHを、一方のエレメントの等電点を超え、他方のエレメントの等電点を下回る値に合わせることによって、反対の電荷が生成する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の工程の前もしくは最中におよび/またはその後のアニーリング工程の最中に、前記非球状強化用粒子が、水に浸漬した場合に荷電した非球状強化用粒子の生成を可能にする材料でコーティングされ、または前記ナノ粒子が、水に浸漬した場合に荷電ナノ粒子の生成を可能にする材料でコーティングされ、または前記非球状強化用粒子が、非球状強化用粒子のマトリックス材料への結合または付着を可能にする材料でコーティングされる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記液体マトリックス材料および/または前記液体マトリックス前駆体材料が、架橋性および/または非架橋性ポリマー材料、ポリマー前駆体材料、またはセラミック(前駆体)材料である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体マトリックス材料および/または前記液体マトリックス前駆体材料が、架橋性および/または非架橋性ポリマー材料、ポリマー前駆体材料、またはセラミック(前駆体)材料であり、ポリウレタン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリアミド;ポリエステル;エポキシ;ポリイミド;ポリ(エーテルエーテルケトン);ポリ(テトラフルオロエチレン);ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ビニルアルコール);キトサン、アガロース、ジェランガム、ゼラチン、コラーゲン、天然ゴム、デンプン、及びアルギナートを含む天然化合物;金属;およびセラミックの群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の工程の後におよび/または第4のアニーリング工程の後に、前記ナノ粒子が前記マトリックスから選択除去される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の工程の後におよび/または第4のアニーリング工程の後に、前記ナノ粒子が前記マトリックスから選択除去され、前記複合材料を酸性流体で処理することによって、前記ナノ粒子の除去が行われる、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の工程の後におよび/または第4のアニーリング工程の後に、前記ナノ粒子が前記マトリックスから選択除去され、前記複合材料をリン酸溶液で処理することによって、前記ナノ粒子の除去が行われる、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第3の工程の後におよび/または第4のアニーリング工程の後に、前記ナノ粒子が前記マトリックスから選択除去され、前記複合材料を酸性流体で処理することによって、前記ナノ粒子の除去が行われ、前記酸性溶液のpH値が1未満であり、前記処理が、前記マトリックスの融点を10〜30℃下回る温度で行われ、さらに前記処理が、48時間未満または10分未満の一定時間行われる、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
非球状強化用粒子がマトリックスに埋め込まれた複合材料であって、
直径が1〜200nmである磁性および/または超常磁性ナノ粒子が、ファンデルワールス、静電付着、および共有結合付着のうち少なくとも一つにより前記非球状強化用粒子に結合しており、
前記マトリックスの材料が、固体化および/または重合および/または架橋されており、
前記非球状強化用粒子が、前記複合材料のマトリックス材料中で磁場配向し、この配向が前記マトリックス中で固定されており、
前記非球状強化用粒子に対する前記ナノ粒子の重量比は0.0001〜0.05の範囲である前記複合材料。
【請求項24】
前記非球状強化用粒子が、前記複合材料のマトリックス材料中で磁場配向し、前記マトリックス中に前記非球状強化用材料の不均一分布が存在する、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記複合材料がコーティングまたはフィルムの形状を取り、前記非球状強化用粒子が、前記マトリックス中に、概してその長軸が前記コーティングおよび/または前記フィルムの平面に実質的に直角に配置されている、請求項23または24に記載の複合材料。
【請求項26】
前記複合材料がコーティングまたはフィルムの形状を取り、前記非球状強化用粒子が、前記マトリックス中に、概してその長軸が前記コーティングおよび/または前記フィルムの平面に実質的に直角に配置され、前記複合材料が前記ナノ粒子を実質的に含まない、請求項23または24に記載の複合材料。
【請求項27】
請求項23〜26のいずれか一項に記載の複合材料の、構築物材料、接着剤層、表面コーティングもしくは表面フィルム、積層物の中間層、傷防止薄層、歯科用修復物、または組織再生用の人工足場としての使用。
【請求項28】
請求項23〜26のいずれか一項に記載の複合材料の、構築物材料、接着剤層、表面コーティングもしくは表面フィルム、積層物の中間層、傷防止薄層、歯科用修復物、組織再生用の人工足場のうち少なくとも一つとしての使用であって、前記非球状強化用粒子の配向分布が、層の平面に直角なある平面に存在する、使用。
【請求項29】
請求項23〜26のいずれか一項に記載の複合材料の、構築物材料、接着剤層、表面コーティングもしくは表面フィルム、積層物の中間層、傷防止薄層、歯科用修復物、組織再生用の人工足場のうち少なくとも一つとしての使用であって、前記非球状強化用粒子の配向分布が、層の平面に直角なある平面に存在し、自動車構築物、風車を含むエネルギー関連構造物の構築物、宇宙構築物、生体用インプラント、歯科用修復物、強化のりおよび接着剤、切削工具を含む用途での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球状強化用粒子がマトリックスに埋め込まれた複合材料を作製する方法、その方法を用いて得られた複合材料、ならびにその複合材料の適用、特に繊維強化積層物の強化、積層物間の接着、医療および歯科用途、一般的に自動車産業、宇宙航空産業、エネルギー関連産業、および建設産業用の構造材料への適用に関する。全体として、本発明は、強化用粒子の配向および空間分布を磁場制御した複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
非球状強化用粒子がマトリックス材料に埋め込まれた複合材料は、軽量構築など様々な多くの用途にとって極めて重要である。典型的には、非球状強化用粒子は短繊維または長繊維、粗紡糸、プレートレット、ひげ結晶、ロッド、チューブなどである。繊維、ひげ結晶、ロッド、およびチューブのような1次元粒子については、特にポリマーマトリックスを使用したものが、複合体の機械的強度および剛性を改善するために広範囲に使用されてきたが、単一粒子それぞれによってもたらされる強化は、特定の1方向に制限される。この制限は、異なる配向をもつ1次元の強化用粒子の一層一層を積み重ねて積層物にすることまたは実際に2次元の平面強化を可能にする2次元プレートレットを使用することによって、一部克服された。
【0003】
しかし、着実な3次元の強化は、非球状粒子の面外方向における配向制御が限られているため、依然として難題のままである。この方向における強化の欠如により、高度な複合体の生成を不可能にする原因の1つである層間剥離が引き起こされる。この問題を解決する最近の試みとしては、カーボンナノチューブを長繊維の表面で成長させて、直角に配向させた強化用エレメントを形成することが挙げられる。繊維強化エポキシ系複合体の層間強度は増大したが、現行の方法では、改善が制限されたものとなり(典型的には、70%未満)、煩雑な合成手順が必要であり、特定の形状および組成物の強化用エレメント(例えば、カーボンナノチューブ)に制限される。さらに、粒子強化複合体を調製する現行の方法では、強化用粒子の空間分布を着実に制御することができない。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0239948号には、複合材料を作製するために磁性粒子を用いたカーボンナノチューブの配向が開示されている。カーボンナノチューブの表面には、磁性ナノ粒子が、カーボンナノチューブとナノ粒子の間のファンデルワールス力による付着によってついている。この開示によれば、この特定の系における付着は十分であり、2つの材料を、例えば水などの流体媒体中で互いに密接に接触させることによってもたらすことができる。この強化用材料をポリマー前駆体材料と混合し、引き続いてマトリックスを架橋する。架橋時に、5000〜10000ガウスの範囲の磁場を強化用材料とポリマー前駆体材料の混合物に印加すると、マトリックス中で磁場配向した強化用カーボンナノチューブが形成されると記載されている。しかし、ナノチューブの有効な配向には、ナノチューブに対する磁性ナノ粒子の最小重量比が0.5である必要がある。最終複合体中に磁性材料がこのような高濃度で存在すると、強化材料の用途範囲が厳しく限定される。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、特定の強化特性を有する複合品を作製するプロセスの改良、およびそれに対応して作製された複合品を提案することである。
【0006】
本発明によるプロセスは、次の工程を含むものである。(1)強化用粒子(例えば、プレートレット、ロッド、繊維、ひげ結晶、リボン、チューブ)の、最終複合体中で強化用粒子とポリマーマトリックスの間の良好な接着を可能にするのに可能な表面修飾、(2)強化用粒子の表面への磁性および/または超常磁性ナノ粒子のファンデルワールス、静電的相互作用、および/または共有結合による吸着、(3)溶液および/またはポリマーマトリックス内での強化用粒子の磁場配向、(4)配向した構造を固定するために、磁場を印加しながらのマトリックスの硬化、(5)複合材料の、強化用粒子とポリマーマトリックスの間に良好な接着を実現するのに可能なさらなるコンディショニング(アニーリング、例えば熱処理)、(6)酸性溶液への溶解による、磁性ナノ粒子の可能な除去。
【0007】
さらに具体的には、本発明によれば、非球状強化用粒子がマトリックスに埋め込まれた複合材料を作製する以下の方法が提案される。
第1の工程において、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を非球状強化用粒子に付着させ(この工程は、最終複合体中で強化用粒子と周囲のマトリックスとの間に十分な接着が確実に存在するようにするために、非球状強化用粒子の追加の表面修飾工程の後に、それと同時に、またはその前に行うことができる)、
第2の工程において、得られた強化用粒子を液体マトリックス材料および/または液体マトリックス前駆体材料(または、強化用粒子を吸収し、しかもその配向を下記の意味で依然として可能にするのに少なくとも十分に流体であるマトリックス材料)に導入し、そして
第3の工程において、マトリックスの材料を固体化および/または重合および/または架橋する。
【0008】
一般に、非球状強化用粒子は、好ましくは本質的に非磁性である。一般に、マトリックス材料は、優先的に本質的に非磁性である。
【0009】
磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、非球状強化用粒子の表面全体に分布することができ、一方では非球状強化用粒子の表面を単一層として実質的に被覆することもでき、そして、非球状強化用粒子の表面を多層構造体で実質的に被覆することもできる。
【0010】
具体的にはここで、それぞれマトリックス材料またはマトリックス前駆体材料の固体化および/または重合および/または架橋の前および/または最中、したがって上記の工程3の前および/または最中に、マトリックス中で強化用粒子が配向または局所的に凝集するように磁場を印加し、第3の工程の後に、この配向をマトリックスの固体化/重合/架橋によりマトリックス中で固定する。
【0011】
本プロセスは、非球状強化用粒子に対する磁性および/または超常磁性ナノ粒子の重量比が0.25未満で実施される。本明細書では、重量比は、(磁性および/または超常磁性ナノ粒子の質量)/(非球状強化用粒子の質量)と定義される。
【0012】
図10は、2次元の強化用粒子(上部)および1次元の強化用粒子(下部)、ならびに本明細書で使用される次元の対応する呼称を図式的に示す。
【0013】
本当に予想外なことに、磁性および/または超常磁性ナノ粒子(磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、一般に平均直径が1〜200nmの範囲の球状または非球状粒子であると理解することができる)よりはるかに大きい大型の非球状強化用粒子の場合でさえ、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の添加を比較的少なく、すなわち磁性および/または超常磁性ナノ粒子と非球状強化用粒子の重量比を0.25未満と低くして実施することが可能であることが明らかになった。磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、実際には配向の道具として使用されるにすぎず、その後の複合材料の使用時に通常は機能上必要とされず(多くの用途では、不利でさえある)、かつ磁性および/または超常磁性ナノ粒子の含有量を可能な限り低く保つ製造上および環境上の理由もあるので、これは、本発明がもたらす主要な利点である。磁場配向によって、マトリックス中の強化用粒子の空間分布を実質的に制限なく調整することができ、それに対応して強化特性を実質的に制限なく調整することができる。特に、マトリックス中で強化用粒子を、例えば層状構造の場合は複合材料の層状構造の平面に対して実質的に直角なまたは90°と異なる角度の方向に配向することが可能である。これによって、これまでに同じ容易さで利用することができなかった方向での強化が可能になる。さらに、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の含有量が非常に低いため、以下にさらに詳述する固体化工程の後に、ナノ粒子を実際に除去することも可能である。
【0014】
好ましい実施形態によれば、これは製造の難点を低減するので特に有利であり、はるかに低い磁場を印加して、強化用粒子を配向または局所的に凝集する。先行技術では5000ガウスの範囲の最小磁場が必要であるのとは対照的に、優先的には、5000ガウス未満、好ましくは500ガウス未満の磁場しか印加しなくてもよい。原理的には、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の割合が低くなるほど、必要とされる磁場は高くなるはずであると考えられる。しかし、予想外なことに、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の濃度が高くなるにつれて、要する磁場よりはるかに低い磁場が必要であり、特定の理論的説明に拘泥するものではないが、磁性および/または超常磁性粒子と強化用粒子の最適比は、配向の目的で求められたように思われる。特定の理論的説明に拘泥するものではないが、強化用エレメントの配列を実現するのに要する磁場の低下ならびに磁性および/または超常磁性粒子の濃度の低下を、流体マトリックス中での強化用粒子の効率的な分散と関連付けることができ、その効率的な分散は、配向に抵抗する傾向のある立体障害効果および凝集体の形成を低減する。
【0015】
好ましい実施形態によれば、非球状強化用粒子は、1次元の平均長(l)が少なくとも0.5μmである。これは、特に1次元の非球状強化用粒子、したがって実質的に繊維、ロッド、チューブ、またはひげ結晶である強化用粒子に当てはまる。2次元の非球状強化用粒子の場合、したがってプレートレットなどについて、強化用粒子の最長軸の最小平均長は、この値を下回ることもあり、したがって例えば10nmを超えることもできる。本発明の第1の好ましい実施形態によれば、非球状強化用粒子は、1次元の強化用粒子の群、したがって好ましくは繊維、ロッド、チューブ、もしくはひげ結晶、またはそれらの組合せの群から選択され、平均直径(d)が1nm〜1mmの範囲、好ましくは1μm〜100μmの範囲である。ただし、長さ(l)は、直径(d)の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍の大きさであることを条件とする。
【0016】
これら1次元の強化用粒子の断面の形状は円形とすることができるが、長方形、正方形、繭形、卵形などの様々な断面形状も可能である。一部の用途では、このような粒子の凝集体を選択することもできる。
【0017】
本発明のさらにもう1つの好ましい実施形態によれば、非球状強化用粒子は、好ましくはプレートレット、リボン、またはそれらの組合せの群から選択される、2次元の強化用粒子であり、厚さ(t)が1nm〜10μmの範囲、好ましくは50nm〜1000nmの範囲であり、好ましくは幅(w)が10nm〜100μmの範囲である。ただし、長さ(l)は厚さ(t)の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍の大きさであることを条件とし、かつ幅(w)は厚さ(t)より大きく、好ましくは厚さ(t)の少なくとも2倍の大きさであることを条件とする。また、長さ方向の断面積は長方形とすることができるが、卵形または楕円面とすることもでき、厚さおよび幅の上記の値はこのような形状の主軸に対応する。所与の数値は平均値に相当する。別の好ましい実施形態によれば、1次元の強化用粒子と2次元の強化用粒子の組合せを使用する。一般的に言えば、様々なタイプの1次元の強化用粒子を、1つの複合材料中で使用することができ、様々なタイプの2次元の強化用粒子も同様に、1つの複合材料中で使用することができるが、1次元の強化用粒子と2次元の強化用粒子の組合せも、1つの複合材料中で使用することができる。優先的に、非球状強化用粒子に対する磁性および/または超常磁性ナノ粒子の重量比は、0.00001〜0.10の範囲、好ましくは0.0001〜0.05の範囲である。特に、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の添加がこのように少ない場合、やはり非常に高い配向秩序をもたらすことができる。
【0018】
一般的に言えば、配向工程では、1〜5000ガウスの範囲、好ましくは5〜2000ガウスの範囲、より好ましくは1000ガウス未満の範囲、最も好ましくは5〜500ガウスの範囲の磁場が印加され、適切な配向に必要な磁場強度は、マトリックスの粘度、マトリックスの硬化時間、ナノ粒子の磁気特性およびサイズ、強化用粒子のサイズなどの要因によって決まる。このような磁場を、マトリックス中で強化用粒子を配向するのに十分な一定期間印加しなければならない。典型的には、マトリックスは依然として液体/十分に流体である間に上記の範囲の磁場を数秒〜数分の一定期間印加することで十分である。
【0019】
別の好ましい実施形態によれば、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を、ファンデルワールス、静電付着および/または共有結合付着により非球状強化用粒子に付着させるが、はるかに確実な付着およびはるかに効率的な配向が高磁場でかつ/またはより困難なマトリックス条件下で可能になるので、静電付着および/または共有結合付着が好ましい。
【0020】
かなり多数の系(マトリックス材料/強化用粒子材料の組合せ)では、強化用粒子と周囲のマトリックスとの間に十分な接着が確実に存在するようにするために、追加の工程または手段を上記の工程3の後または最中に行うことによって、実際の強化効果を大幅に改善できることが明らかになった。実際、強化用粒子とマトリックスの間の最適接着が、マトリックスから強化用粒子への応力伝達による効率的な強化を可能にするのに重要であることは公知である。
【0021】
さらにもう1つの好ましい実施形態によれば、したがって、第3の工程の後にまたは第3の工程内で、非球状強化用粒子を、好ましくは熱処理および/または照射処理および/または加圧処理を伴うその後の第4のアニーリング工程により、周囲のマトリックス材料に結合および/または付着させる。これらの処理は、この接着を実現するためにマトリックスに埋め込む前に強化用粒子の上記の処理を行うことによって、可能で有効なものとすることができる。
例えば、強化用粒子に、コーティングまたは表面処理を上記プロセスの工程1の前、最中または後に施す場合、例えば対応する官能性化学基を有するこのコーティングまたは表面修飾を、マトリックスに共有結合連結することができ、または水素結合などを介してマトリックスに連結することができる。
【0022】
ポリマーマトリックス材料の熱処理の場合、融点をかなり下回る、典型的には融点を少なくとも10℃下回る、好ましくは少なくとも25℃下回る熱処理温度が選択される。
【0023】
前述のように、非球状強化用粒子は、プレートレット、繊維、ひげ結晶、ロッド、チューブ、リボンとすることができ、好ましくはこのような構造は、好ましくはアルミナプレートレット、ギブス石プレートレット、粘土プレートレット、タルクプレートレット、雲母プレートレット、ガラスプレートレット、炭化ケイ素プレートレット、ホウ化アルミニウムプレートレット、グラファイトプレートレット、アルミニウムプレートレット、銅プレートレット、ガラス繊維、ポリマー繊維、炭素繊維、炭化ケイ素ひげ結晶、および窒化ケイ素ひげ結晶から選択される金属、セラミック、高分子または複合材料で作製されたまたはそれをベースとするものである。
【0024】
前述のように、磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、静電付着により非球状強化用粒子に付着することができる。これは、好ましい実施形態によれば、磁性および/または超常磁性ナノ粒子と非球状強化用粒子を、非球状強化用粒子と磁性および/または超常磁性ナノ粒子とが反対の電荷を有するような条件下で流体、好ましくは水に浸漬することによって可能であり、その電荷は、粒子同士が近接しており、典型的には数十ナノメートルしか離れていないとき、静電気引力のエネルギーが熱エネルギーより高い程度に十分に強い。好ましくは、流体が水である場合、溶液のpHを、一方のエレメントの等電点を超え、他方のエレメントの等電点を下回る値に合わせることによって、反対の電荷が生成する(エレメントとは、それぞれ磁性および/もしくは超常磁性粒子、または強化用粒子である)。
【0025】
さらにもう1つの好ましい実施形態によれば、非球状強化用粒子は、水に浸漬した場合に荷電した非球状強化用粒子の生成を可能にする材料でコーティングされている。
【0026】
さらに、磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、水に浸漬した場合に荷電した磁性および/または超常磁性ナノ粒子の生成を可能にする材料でコーティングすることができる。
【0027】
それに加えてまたはその代替として、非球状強化用粒子は、第3の工程中および/またはその後のアニーリング工程中に非球状強化用粒子の結合および/または付着を可能にする材料でコーティングすることができる。別の好ましい実施形態によれば、液体マトリックス材料および/または液体マトリックス前駆体材料は、架橋性および/もしくは非架橋性ポリマー材料、ポリマー前駆体材料、またはセラミック(前駆体)材料である。好ましくは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリイミド、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、およびキトサン、アガロース、ジェランガム、ゼラチン、コラーゲン、天然ゴム、デンプン、アルギナートなどの天然化合物の群から選択される。また、考え得るマトリックス材料は金属およびセラミックである。鋼、金属合金、またはセラミック(例えば、炭化タングステン)中での強化用粒子の付加および配向によって、例えばより硬質の切削工具が得られる。
【0028】
第3の工程の後におよび/または第4のアニーリング工程の後に、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を、前述のようにマトリックスから選択除去することができる。実際、磁性および/または超常磁性ナノ粒子の除去は、磁性および/または超常磁性ナノ粒子に起因する色などの理由により望ましいことがあり、また化学的および/または物理的理由によっても望ましいことがある。予想外なことに、配向した強化用粒子がその中に埋め込まれた固体化マトリックスから、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を除去することは、強化用粒子の配向を付与することもなく、または破壊することすらなく可能である。
【0029】
磁性および/または超常磁性ナノ粒子の除去は、例えば複合材料を酸性流体で処理することによって行うことができ、好ましくは酸性流体のpH値は3未満、好ましくは1未満であり、処理は、好ましくはマトリックスの融点を10〜30℃下回り、より好ましくは30℃未満の温度で行われる。
【0030】
優先的に、処理は、48時間未満、好ましくは10分未満の一定期間行われる。
【0031】
優先的に、酸性流体による磁性および/または超常磁性ナノ粒子の除去は、好ましくはpH 0〜3の範囲の硝酸、硫酸またはリン酸の水溶液である。
【0032】
前述のように、提案された方法は、強化用粒子のマトリックス中での分布を調整することによって、実際の強化特性の調整を可能にする。これは、第3の工程の前および/または最中に、強化用粒子の不均一分布に至るように磁場を印加するので行うことができる。この不均一分布は、マトリックス中の位置の関数としての強化用粒子の可変濃度とすることができる。また、マトリックス中の位置の関数としての強化用粒子の可変配向分布とすることもできる。また、この2つの組合せ、すなわち材料中の可変濃度と可変配向分布の組合せとすることもできる。
【0033】
さらに、本発明は、以上に概要を記した方法を使用して得ることができるおよび/または得られた、非球状強化用粒子がマトリックスに埋め込まれた複合材料に関する。
【0034】
この複合材料の第1の好ましい実施形態によれば、非球状強化用粒子を複合材料のマトリックス材料中で磁場配向し、好ましくは非球状強化用材料の(マトリックス中の位置の関数としての濃度の意味でまたは配向の意味で)不均一分布がマトリックス中に存在する。
【0035】
本発明において複合材料の特定の好ましい実施形態によれば、複合材料はコーティングまたはフィルムの形状を取り、非球状強化用粒子は、マトリックス中に、概してその長軸がコーティングおよび/またはフィルムの平面に実質的に直角に(または少なくとも平面に対して45°より大きい角度で)配置されている。
【0036】
複合材料の別の特定の好ましい実施形態によれば、複合材料は、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を実質的に含まない。これは、その後マトリックスから磁性および/または超常磁性ナノ粒子を除去する上記の追加の工程によって可能である。
【0037】
最後に、本発明は、以上に記載の説明による複合材料の、好ましくは自動車構築物、宇宙構築物、生体用インプラント、歯科用修復物、強化のりおよび接着剤、切削工具などの用途で、好ましくは非球状強化用粒子の配向分布が、例えば層の平面に垂直なある平面に存在し、構築物材料および/または接着剤層および/または表面コーティングもしくは表面フィルムとして、ならびに/あるいは積層物の中間層および/または傷防止薄層および/または歯科用修復物および/または組織再生用の人工足場としての使用に関する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、従属請求項で述べられている。
【0039】
本発明において使用する典型的な材料は、以下の通りである。
強化用エレメントの空間および配向分布の磁場制御によるマトリックスの3D強化の本方法は一般的であり、種々の強化用粒子およびマトリックス材料ならびに様々なタイプの磁性および/または超常磁性ナノ粒子に適用することができる。以下の材料を使用することができる。
【0040】
a.強化用粒子
方法は、一般に非球状強化用粒子に適用される。非球状強化用粒子としては、アルミナプレートレット、ガラス繊維、粘土粒子、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、セルロース繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。主な要件は、粒子が、少なくとも1軸において形状における異方性を示すことである。例えば、粒子はロッド、プレートレット、繊維、ひげ結晶、チューブ、リボン、楕円体などである。
【0041】
b.磁性および/または超常磁性ナノ粒子材料
方法は、一般に磁性および/または超常磁性ナノ粒子に適用される。磁性および/または超常磁性ナノ粒子としては、酸化鉄(Fe
3O
4、Fe
2O
3など)、コバルト、ニッケル、および派生合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、印加された磁場に応答するものでなければならない。また、磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、一般に直径のサイズ範囲が1〜200
nmである。
【0042】
c.マトリックス材料
方法は、一般に種々のマトリックスに適用される。マトリックスとしては、熱可塑性および熱硬化性ポリマー、セラミック、および金属が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
一典型例において、酸化鉄ナノ粒子を酸化アルミニウムプレートレットに吸着させる。続いて、これらのプレートレットを、ポリウレタンなどの熱可塑性ポリマーに加える。別の例において、ガラス繊維をコバルトナノ粒子で前処理し、次いで市販のエポキシなど熱硬化性ポリマーに加えることができる。
【0044】
プロセスの主な工程は、以下の通りである。
【0045】
1.強化用粒子の表面修飾(任意選択)
好ましくは、強化用粒子とポリマーマトリックスの間に強い接着が得られ、したがって最終複合体において高レベルの強化が効果的に達成されるように、強化用粒子の界面化学を調整する。これは、ファンデルワールス力、静電力、または共有結合によっても強化用粒子とポリマーマトリックスの間に強い接着をもたらすことができる低分子、イオンおよび/またはポリマーを用いて強化用粒子をコーティングすることによって行うことができる。可能な表面修飾手順の数例を以下に列挙する。
【0046】
a.低分子を介した界面共有結合:アミン官能基を含むシラン分子(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン−APTES)を使用して、金属酸化物強化用粒子(例えば、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2など)の表面をコーティングし、その後ポリマーマトリックスの別の官能基(例えば、エポキシ、イソシアナート、カルボン酸など)と共有結合を形成することができる。あるいは、例えばニトロドーパミンまたはドーパミンのような他の低分子は、強い配位子交換反応により強化用粒子の表面に吸着し、またアミン官能基を供給して、ポリマーマトリックスの官能基(例えば、エポキシ、イソシアナート、カルボン酸など)と共有結合を形成することもできる。
【0047】
b.低分子を介した界面非共有結合:ポリマーのせん断強さが実現されるとき、マトリックスの広範な塑性変形を可能にしながらポリマーマトリックスから強化用粒子への良好な応力伝達が実現されるように、強化表面に吸着した低分子を使用して、ポリマーマトリックスそれ自体の中で見出される分子間力(例えば、ファンデルワールス力および水素結合力)を模倣することができる。例えば、APTES、ニトロドーパミンまたはドーパミンのようなアミンを含む低分子で修飾された強化用粒子をアミン系マトリックスに組み込んで、表面とマトリックス官能基の間で何らの化学反応もなく、強化用粒子とポリマーマトリックスの間に良好な接着を実現することができる。
【0048】
c.予め形成したポリマーのグラフト化(「グラフトツー」法):「グラフトツー」法を用いて、例えばポリ(ビニルピロリドン)(40,000〜1,300,000g/molの範囲の分子量)のような高分子を強化用粒子の表面に静電吸着させて、その後、吸着した高分子とポリマーマトリックスの間の物理的からみ合いによって強い界面接着を得ることができる。高分子量分子は、例えばペグ化反応を用いて、強化用粒子に共有結合付着することもできる。例えば、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)は、テトラクロロシランと反応することができ、さらに残存する加水分解性基によって強化用粒子に共有吸着することができ、表面に共有結合付着しているポリマー鎖が得られる。このポリマー鎖も、ポリマーマトリックスとの物理的からみ合いをもたらし、強化用粒子−マトリックスの界面における応力伝達に寄与する。
【0049】
d.表面吸着低分子からの重合(「グラフトフロム」法):「グラフトフロム」法を用いて、ポリマー鎖を粒子表面に共有結合付着することができ、ポリマー鎖は、強化表面から成長するように誘導される。この手順の例としては、重合反応触媒および/または開始剤を粒子表面に吸着させて、その後、重合反応をその修飾された粒子の存在下に実施することが挙げられる。例えば、ポリウレタンの場合に、「その場」重合でスズオクトアートを触媒として、トルエンジイソシアナートおよびポリテトラヒドロフランをモノマーとして使用することができる。別の例において、アミン官能基を有するカテコールまたはピロガロール系分子(例えば、ニトロドーパミン、ドーパミン)を使用して、酸化物粒子の表面を、配位子交換反応によってコーティングすることができ、カルボン酸活性化に対して十分に確立されているカルボジイミド化学を利用してアミン基とマトリックスポリマー由来のカルボン酸基とを反応させることによって、ポリマーマトリックスに共有結合を形成することができる。別の例において、強化用粒子をペルフルオロフェニルアジドで官能化することができ、その後、光重合プロセスにより例えばポリスチレン、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリイミドと反応させる。
【0050】
e.極性基を有する露出表面:ある種のマトリックスポリマーでは、最終複合体の熱処理によっても、強化用粒子とマトリックスの間に良好な接着が実現することが可能であり、ポリマーの極性セグメントが強化用粒子の表面で結晶化することが誘導される。
【0051】
2.磁性および/または超常磁性ナノ粒子の強化用粒子への吸着。
磁性および/または超常磁性ナノ粒子を、静電気、ファンデルワールス、または共有結合により強化用粒子に吸着させることができる。
【0052】
a.磁性および/または超常磁性ナノ粒子の強化用粒子への静電吸着
静電吸着を利用するには、繊維およびナノ粒子の表面の静電荷が反対であることが重要である(1つが負に荷電し、1つが正に荷電している)。反対の電荷は、所与のpHにおいて自然に反対の表面電荷を有する強化用粒子およびナノ粒子を選択することによって、あるいはこれらのエレメントの一方または両方の表面電荷を化学処理またはコーティングにより変更することによって実現することができる。カチオンおよびアニオンの両方の磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、Ferrotec社のそれぞれEMG−605およびEMG−705強磁性流体などが市販されている。
【0053】
1例は、Nanostructured and Amorphous Materials Inc.のものなど、市販の50nm酸化鉄ナノ粒子を水にpH値4で懸濁して、自然に正の電荷を与えることである。Fibre Glast Development Corporationから市販されているものなどのガラス繊維をこの溶液に加えることによって、繊維は、自然に負の表面電荷を示すようになる。静電気により、次いで、磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、
図1に示すように、これらの条件下で繊維に吸着するようになる。
【0054】
別の例は、FerrotecのEMG−705溶液など、商業供給業者から購入することができるものなど、アニオンの表面電荷をもたらす界面活性剤でコーティングされた処理済みの酸化鉄ナノ粒子を使用することである。これらのナノ粒子は、pH値7で自然にカチオンであるAntariaから市販されているもの(等級Al−Pearl)などの酸化アルミニウムプレートレットに中性のpHで静電吸着するようになる。
図2を参照のこと。
【0055】
別の例において、強化用粒子の表面への磁性および/または超常磁性ナノ粒子の強い吸着を実現するために、イオン性界面活性剤および/または高分子を層ごとに吸着することができる。例えば、まず強化用カーボンナノチューブをアニオンポリマーであるポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)でコーティングし、続いてカチオンポリマーであるポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)の静電吸着、最後にFerrotecから市販されているもののような負に荷電した磁性および/または超常磁性ナノ粒子の吸着を行うことができる。
【0056】
b.磁性および/または超常磁性ナノ粒子の強化用粒子への共有結合
磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、共有結合によっても強化用粒子の表面に付着することができる。これを実現するには、強化用粒子と磁性および/または超常磁性ナノ粒子を、適切な有機官能基で表面修飾しなければならない。共有結合は、
図3に概略的に例証するようにそれらの官能基間での直接反応によって、または架橋剤を使用することによって形成することができる。
【0057】
金属酸化物強化用粒子(例えば、ガラス繊維およびアルミナプレートレット)の表面修飾は、AldrichおよびGelest Co.から市販されているシランカップリング剤(
図4a)を使用して行うことができる。カテコール系およびピロガロール系分子を使用して、金属酸化物表面に有機官能基を形成することもできる。例えば、、AldrichおよびSurface Solutions Gmbhからそれぞれ供給されるドーパミンおよびニトロドーパミンは、アルミナ表面に強く付着して遊離のアミノ基をもたらすことができ(
図4b)、さらに磁性および/または超常磁性ナノ粒子の共有結合によるカップリングに使用することができる。
【0058】
1例は、アミノシランを使用して、ガラス繊維と磁性および/または超常磁性ナノ粒子表面の両方を修飾することである。この場合、ジイソシアナートを架橋剤として使用して、磁性および/または超常磁性ナノ粒子をガラス繊維表面にカップリングすることができる(
図5a)。別の例は、アミンおよびエポキシシランを使用して、ガラス繊維と磁性および/または超常磁性ナノ粒子をそれぞれ修飾することである。これらの基は相互に反応することができるので、磁性および/または超常磁性ナノ粒子をガラス繊維表面に連結する共有結合を形成することができる(
図5b)。同様に、カテコール系分子を使用して、アミノ基を形成することもできる。あるいは、カルボジイミド化学を利用して、一方の表面のアミノ基を他方の表面のカルボン酸基に共有結合させることができる。
【0059】
c.磁性および/または超常磁性ナノ粒子の強化用粒子へのファンデルワールス引力による吸着
磁性および/または超常磁性ナノ粒子は、強化用粒子の表面にファンデルワールス相互作用によって吸着することもできる。1例において、負に荷電した磁性ナノ粒子(Ferrotec)および負に荷電したアルミナプレートレット(Antaria)を、まず混合して、pH値10において十分に分散された懸濁液を形成する。次いで、懸濁液に、塩(例えば、NaCl)を臨界凝集濃度より高い濃度(例えば、0.3M)で添加して、粒子の周りの静電2重層を遮蔽し、したがって磁性ナノ粒子のアルミナプレートレットの表面へのファンデルワールス引力による吸着を促進する。
【0060】
3.磁場印加による強化用粒子の配向および空間制御
磁性および/または超常磁性粒子でコーティングされた強化用粒子をマトリックスに添加した後、強化用粒子は外部磁場で配向することになる。(1)磁性ナノ粒子を含まない強化用粒子に対する吸着された磁性および/または超常磁性ナノ粒子を含む強化用粒子の割合、(2)印加された外部磁場と磁場の勾配の強さ、ならびに(3)マトリックスの硬化に費やす時間、を調節することによって、強化用粒子の配向と空間の様々な組合せが可能である。
【0061】
a.磁化した強化用粒子の可能な配向および空間配置
図6に例証するように、磁場を印加することによって、強化用粒子の様々な配向および空間配置が可能である。
【0062】
b.磁場の印加
強化用粒子を磁場の印加によって適切に配向するには、磁場は、重力、熱運動または立体障害などの競合力に打ち勝つトルクを粒子に与える必要がある。一般に、1〜5000ガウスの範囲の中程度の磁場は、繊維およびプレートレットを配向するのに十分な程度に強い。このような磁場は、ソレノイドまたは永久磁石を用いて印加することができる。NMR/MRI装置で生成する磁場などのより強い磁場は、必要とされていないが使用することもできる。
【0063】
図7に示すように、例えばポリウレタンなどの熱可塑性ポリマー中で吸着された酸化鉄ナノ粒子を含む酸化アルミニウムプレートレットは、400ガウスの磁場下で配向する。このような磁場は、Supermagnete社の永久磁石など市販の永久磁石を用いて印加することができる。
【0064】
c.磁化していない強化用粒子に対する磁化した強化用粒子との比の調節
磁性および/または超常磁性ナノ粒子を吸着した強化用粒子と、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を含まない強化用粒子とを含むことによって、独特の配向および空間配置群が可能である。これらの可能性の選択を、
図8に例示する。
【0065】
4.マトリックスの硬化
マトリックスの硬化は、(1)高温および/または低圧におけるポリマー溶液からの溶媒の単純な蒸発、(2)温度または光によって引き起こされるポリマーマトリックス内での架橋および/または重合反応、(3)冷却によるポリマーメルトの固化によって行うことができる。
【0066】
5.複合体のコンディショニング/熱処理(アニーリング)
強化用粒子とポリマーマトリックスの間の良好な接着を確実にするためには、追加のコンディショニング工程が有利である場合もある。例えば、最終複合体を120〜130℃で3時間熱処理することによって、強化用アルミナプレートレットと熱可塑性ポリウレタンマトリックスの間の強い接着が実現する。垂直に配向したアルミナプレートレットを約20体積%含有するポリウレタンフィルムにおいて強い界面が形成されることは、フィルムの面外剛性が、水平プレートレットで強化されたフィルムおよびプレートレットを含まないフィルムの面外剛性に比べて、それぞれ3倍および9倍増加していることによって明示される。強化用粒子をポリマーマトリックスにカップリングする光活性分子を含有する系など、他の系では、光および/または熱を使用して、強い界面接着を促進することもできる。
【0067】
6.磁性および/または超常磁性ナノ粒子のマトリックスからの溶解
一般的な化学薬品が、磁性および/または超常磁性ナノ粒子を溶解して溶液にすることは公知である。これらの化学薬品は、マトリックスを硬化した後、磁性および/または超常磁性粒子を除去するための後処理として、複合体マトリックスに使用することができる。化学薬品は、マトリックスまたは強化用粒子を分解するのに比べて速い速度で磁性および/または超常磁性ナノ粒子を溶解することが必要である。
【0068】
図9に示すように、例えば、15Mリン酸を使用して、酸化鉄を、アルミナプレートレットで強化されたポリウレタンフィルムから溶解することができる。リン酸で1時間処理することによって、材料を分解することも、プレートレットの配向を損なうこともなく、すべての磁性および/または超常磁性粒子が溶解する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図面を引用しながら、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の現在の好ましい実施形態を例示するためのものであって、それを限定するものではない。図においては、以下の通りである。
【
図1】(a)静電吸着された酸化鉄ナノ粒子を含むガラスマイクロロッド(長さおよそ50μm×直径10μm)を示す図である。(b)より高い倍率での50nmの酸化鉄ナノ粒子を示す図である。
【
図2】(a)静電吸着された酸化鉄ナノ粒子を有する酸化アルミニウムプレートレット(直径およそ7.5μm、厚さ200nm)を示す図である。(b)より高い倍率での12nmの酸化鉄ナノ粒子を示す図である。
【
図3】磁性ナノ粒子を繊維に共有結合させる戦略を示す図である。(a)繊維上および磁性ナノ粒子表面上に位置する相補的官能基間の反応が、共有結合を形成することを示す図である。(b)架橋剤を使用して、同じ官能基を含む繊維と磁性ナノ粒子を共有結合カップリングすることができる。
【
図4】繊維と磁性ナノ粒子の間の共有結合を形成するのに使用することができる有機分子を示す図である。(a)シランカップリング剤を示す図である。(b)カテコール系分子を示す図である。
【
図5】シランを用いた共有結合の例を示す図である。a)架橋剤分子を使用するカップリングを示す図である。相補的官能基を使用するカップリングを示す図である。
【
図6】磁化したプレートレットの可能な配置の図解例を示す図である。(a)において、磁場が印加されていなければ、磁化したプレートレットが、標準配置でフィルムに平行に配向することが可能になることを示す図である。(b)において、均一な垂直磁場が印加され、プレートレットがフィルムに直角に配向することを示す図である。(c)において、磁場をマトリックスの穴の周りに局所的に印加することを示す図である。磁場は、局所のプレートレットを配向する。さらに、局所的磁場は、を、影響を受ける領域の周りに局所的に、プレートレットを空間的にクラスター化する勾配を加える。
【
図7】吸着された磁性ナノ粒子を含むプレートレット強化物が、印加された磁場においてマトリックス表面に直角に配向していることを示す図である。ここでは、ポリウレタン中で吸着された酸化鉄ナノ粒子を含む酸化アルミニウムプレートレットを示す。
【
図8】吸着された磁性ナノ粒子を含むプレートレットと含まないプレートレットとを組み合わせることによる、プレートレット強化マトリックスの可能な配向および空間配置の選択を示す図である。(a)において、磁場が印加されていなければ、プレートレットが、標準的な重力によって駆動された配置でフィルムに平行に配向することが可能になることを示す図である。(b)において、均一な垂直磁場が印加され、磁化していないプレートレットに影響を与えることなく、磁化したプレートレットがフィルムに直角に配向することを示す図である。(c)において、磁場をマトリックスの穴の周りに局所的に印加する。磁場は、磁化したプレートレットを局所的に配向する。さらに、局所的磁場は、非磁性プレートレットが実質的に影響を受けないまま、影響を受ける領域の周りに局所的に、磁化したプレートレットを空間的にクラスター化する勾配を加える。
【
図9】磁性ナノ粒子を溶解する溶媒に曝露された、ポリマーマトリックス中で吸着された磁性ナノ粒子を含む強化用粒子を示す図である。ここで、酸化鉄をその表面に吸着させておいた酸化アルミニウムプレートレットが、磁場におい直角に配向を可能にすることを示す図である。SEM(上部左)および処理前の写真(上部右)および処理後の写真(下部)で見られるように、フィルムをリン酸溶液に浸して酸化鉄を溶解し、プレートレットを元の状態で残した。
【
図10】強化用粒子の略図である。上部では、2次元の強化用粒子を示し、すなわちプレートレット/リボンの形で示し、対応する寸法が示され、下部では、1次元の強化用粒子が記載され、繊維/ロッド/チューブ/ひげ結晶の寸法が示されている。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0070】
アルミナプレートレット、酸化鉄ナノ粒子、およびポリウレタンをそれぞれ強化用粒子、磁性粒子、および熱可塑性マトリックスポリマーとして用いて製造された面外強化熱可塑性ポリマーフィルム。
1.10重量%熱可塑性ポリウレタン(PU、Estallon C64)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液50mLを調製し、60℃で30時間撹拌する。
2.一方、12nmのアニオン性EMG 705酸化鉄ナノ粒子溶液(Ferrotecから)200μLを、pH値7の脱イオン水20mLに希釈する。7.5μmの市販酸化アルミニウムプレートレット(Al Pearl、Antaria)5gを溶液に添加し、24時間放置して磁性ナノ粒子を静電吸着する。次いで、プレートレットを放置溶液中で沈降させ、上澄液を除去し、数回すすいで、浮遊磁性ナノ粒子を除去する。
3.次いで、磁化したプレートレットをPUに2体積%の濃度で添加する。溶液を2時間十分に撹拌し、5分間音波処理して、確実に均質にする。次いで、気泡を除去するために、溶液をデシケーター中で1時間脱気する。次いで、溶液をガラス基板上にフィルム流延する。
4.400ガウスの磁場をフィルムに直角に印加し、ガラスをホットプレート上で60℃に維持する。DMFが蒸発するにつれて、磁場は、磁化した酸化アルミニウムプレートレットをフィルムに直角に配向させるようになる。DMFの蒸発によって、弾性ポリウレタンフィルムが生成し、配向した構造が固定される。
5.溶媒が完全に蒸発次第、ポリウレタンフィルムは、
図7に示すものなど直角に配向したプレートレットを20体積%含有することになる。
6.次いで、強化ポリウレタンフィルムを15Mリン酸溶液に1時間浸して、酸化鉄をプレートレットから溶解する。
【実施例2】
【0071】
アルミナプレートレット、酸化鉄ナノ粒子、およびエポキシ樹脂をそれぞれ強化用粒子、磁性粒子、および熱硬化マトリックスポリマーとして用いて製造された面外強化熱硬化性ポリマーフィルム。
1.12nmのカチオン性EMG 605酸化鉄ナノ粒子溶液(Ferrotecから)200μLを、pH値7の脱イオン水20mLに希釈して、水性懸濁液を調製する。7.5μmの市販酸化アルミニウムプレートレット(Al Pearl、Antaria)5gを、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび/またはエポキシ官能性シラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)で表面修飾して、エポキシマトリックスへの強い接着を可能にする。得られた表面修飾アルミナプレートレットを、その後水性懸濁液に添加し、24時間放置して磁性ナノ粒子を静電吸着させる。次いで、プレートレットを溶液中で沈降させ、上澄液を除去し、数回すすいで、浮遊磁性ナノ粒子を除去する。
2.エポキシ樹脂(Araldite GY 250、Huntsman)10gを、無水物系架橋剤(Araldur 917、Huntsman)9g、および触媒(促進剤DY 070、Huntsman)0.2gと混合すると、80℃で20分より長い硬化時間を示す樹脂系が得られる。
3.次いで、磁化したプレートレットを樹脂系に10体積%の濃度で添加する。混合物を120分間十分に撹拌し、5分間音波処理して、確実に均質にする。次いで、気泡を除去するために、溶液をデシケーター中で60分間脱気する。次いで、溶液をTeflonの型にフィルム流延する。
4.400ガウスの磁場をフィルムに直角に印加し、ガラスをホットプレート上で60℃に維持する。磁場は、磁化したアルミナプレートレットをフィルムに直角に配向するようになる。このような配向した構造を、最後に樹脂系中の架橋反応により硬化させるが、この架橋反応は、ホットプレート温度80℃で加速される。架橋は、バルクマトリックス中の分子間、マトリックス分子間、およびアルミナプレートレット中に存在する官能基間(例えば、アミノ基および/またはエポキシ基)で起こる。
【実施例3】
【0072】
ガラス繊維、酸化鉄ナノ粒子、およびエポキシ樹脂をそれぞれ強化用粒子、磁性粒子、および熱硬化マトリックスポリマーとして用いて製造された面外強化熱硬化性ポリマーフィルム。
1.12nmのカチオン性EMG 605酸化鉄ナノ粒子溶液(Ferrotecから)200μLを、pH値7の脱イオン水20mLに希釈する。エポキシ樹脂と強い接着が得られるように表面修飾された市販のガラス短繊維(FibreGlast Corp. 1/32インチミルドファイバー、直径10μm、長さ0.1〜10mm)5gを水性懸濁液に添加し、24時間放置して磁性ナノ粒子を静電吸着させる。次いで、繊維を放置溶液中で沈降させ、上澄液を除去し、数回すすいで、浮遊磁性ナノ粒子を除去する。
2.エポキシ樹脂(Araldite GY 250、Huntsman)10gを、無水物系架橋剤(Araldur 917、Huntsman)9g、および触媒(促進剤DY 070、Huntsman)0.2gと混合すると、80℃で20分より長い硬化時間を示す樹脂系が得られる。
3.次いで、磁化した繊維を樹脂系に10体積%の濃度で添加する。混合物を120分間十分に撹拌し、5分間音波処理して、確実に均質にする。次いで、気泡を除去するために、溶液を60分間乾燥する。次いで、溶液をTeflonの型にフィルム流延する。
4.400ガウスの磁場をフィルムに直角に印加し、ガラスをホットプレート上で60℃に維持する。磁場は、磁化したガラス繊維をフィルムに直角に配向するようになる。このような配向した構造を、最後に樹脂系中の架橋反応により硬化させるが、この架橋反応は、ホットプレート温度80℃で加速される。架橋は、バルクマトリックス中の分子間、マトリックス分子間、およびガラス繊維中に存在する官能基間(例えば、アミン基および/またはエポキシ基)で起こる。
5.所望により、次いで、架橋フィルムを15Mリン酸溶液に1時間浸して、酸化鉄をガラス繊維から溶解することができる。
【符号の説明】
【0073】
l 強化用粒子の長さ
d 強化用繊維/ロッド/チューブ/ひげ結晶の直径
t 強化用プレートレット/リボンの厚さ
w 強化用プレートレット/リボンの幅