特許第5964819号(P5964819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964819
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】被覆された多孔質材料
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20160721BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20160721BHJP
   B01D 67/00 20060101ALI20160721BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20160721BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B01D69/12
   B01D69/10
   B01D67/00 500
   B01D71/38
   B01D71/40
【請求項の数】1
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-513187(P2013-513187)
(86)(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公表番号】特表2013-534464(P2013-534464A)
(43)【公表日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】US2011036046
(87)【国際公開番号】WO2011152967
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】61/351,441
(32)【優先日】2010年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/350,147
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ジンシェン チョウ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/002502(WO,A1)
【文献】 特表2008−508998(JP,A)
【文献】 特開2002−037913(JP,A)
【文献】 特開2006−160837(JP,A)
【文献】 特開平04−166221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材の第1の主表面から第2の主表面に延在する複数の細孔を含み、各細孔は細孔内部寸法を決定する細孔内壁を備える、多孔質基材を提供する工程、
(b)被覆可能な組成物を前記多孔質基材の細孔内壁の少なくとも一部に塗布する工程であって、前記被覆可能な組成物が、エチレンビニルアルコール共重合体と、少なくとも1種の重合可能な化合物と、溶媒とを含むものである工程、
(c)前記被覆可能な組成物から少なくとも一部の溶媒を取り除き、前記被覆可能な組成物を乾燥させる工程、
(d)前記多孔質基材及び前記被覆可能な組成物を再湿潤溶液で飽和する工程、並びに
(e)前記重合可能な化合物を重合させて、前記細孔壁上に親水性コーティングを形成し、被覆された多孔質材料を提供する工程であって、前記親水性コーティングが、エチレンビニルアルコール共重合体及び架橋された高分子を単一層に共に含むものである、工程
を含む、被覆された多孔質材料の調製方法であって、
前記重合可能な化合物を重合する工程(e)が、相互侵入高分子網目中にエチレンビニルアルコール共重合体及び架橋された高分子を共に含む前記親水性コーティングをもたらし、
前記重合可能な化合物を重合する工程(e)は、前記多孔質基材を200nm〜600nmの波長で紫外線照射し、前記基材の第1の面と第2の面をほぼ同じ紫外線量に曝露することによって行われる、被覆された多孔質材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2010年6月1日出願の米国特許仮出願第61/350,147号及び2010年6月4日出願の同第61/351,441号の利益を主張し、その開示事項は参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、親水性コーティングを含む被覆された多孔質材料、被覆された多孔質材料を調製する方法、並びに被覆された多孔質材料の分離媒体としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ろ過基材(例えば膜)の疎水性の削減(又は親水性の増加)は、使用時の付着汚れを低減するのに望ましい。最も安価で最も安定した基材形成用の材料の多くが疎水性高分子である一方で、その基材高分子の表面を親水性にすることによって更に容易に水に対して濡れるようにする方法が開発されている。多くの高分子材料に元来固有である疎水性を低減するために、基材の表面及び細孔壁を化学的に改質するか、又は別の方法として基材の細孔壁を、一般的に高分子性の親水層で被覆する技術が知られている。この親水層は、基材材料の水に対する親和性を向上させて、湿潤性を増加させ、場合によっては基材を完全に水に濡れるようにする。
【0004】
親水性層を基材に付着させる当初の取り組みとしては、(例えばプラズマ処理により)基材の細孔壁を活性化することで親水性のコーティングを細孔壁に化学的に結合させる方法があった。グラフトコーティングの付着は、モノマーの混合物を基材の細孔内に堆積させ、重合により形成される親水性高分子が基材壁にグラフトするのを促進するような方法で重合反応を誘起することでも行なわれ得る。しかし、充分な架橋が得られていない場合に、グラフト層が本質的に基材の細孔を充填し閉鎖するところまで水和して膨張してしまうことがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
親水性ろ過用媒体の技術はある程度の進歩が見られてはいるが、更なる改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、更に処理を施すことにより基材の細孔壁に親水性被覆を与える被覆可能な組成物を塗布することによって親水性を付与された多孔質基材を含む親水性ろ過媒体を提供する。その結果として得られたろ過媒体は湿潤時の膨潤が低いレベルであり、極性官能基を多く含む表面を持つ。このろ過媒体は、使用時において最小限の目詰りしかせず、典型的に高い表面エネルギーを示す。更に、このろ過媒体は、効率的な方法を用いて容易に製造される。
【0007】
一実施形態では、本発明は、
a)基材の第1の主表面から第2の主表面に延在する複数の細孔を含み、各細孔は細孔内部寸法を決定する細孔内壁を備える多孔質基材、及び
b)エチレンビニルアルコール共重合体と少なくとも1種の架橋された高分子を単一層に含む、複数の前記細孔壁に施された親水性のコーティングを含む、被覆された多孔質材料を提供する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は被覆された多孔質材料の製造方法を提供し、その方法は、
a)基材の第1の主表面から第2の主表面に延在する複数の細孔を含み、各細孔は細孔内部寸法を決定する細孔内壁を備える、多孔質基材を提供する工程、
b)被覆可能な組成物を多孔質基材の細孔内壁の少なくとも一部に塗布する工程であって、被覆可能な組成物が、エチレンビニルアルコール共重合体と、少なくとも1種の重合可能な化合物と、溶媒とを含むものである工程、
c)被覆可能な組成物から少なくとも一部の溶媒を取り除き、被覆可能な組成物を乾燥させる工程、
d)多孔質基材及び被覆可能な組成物を再湿潤溶液で飽和する工程、並びに
e)重合可能な化合物を重合させて、細孔壁上に親水性コーティングを形成し、被覆された多孔質材料を提供する工程であって、親水性コーティングが、エチレンビニルアルコール共重合体及び架橋された高分子を単一層に共に含むものである、工程を含む。
【0009】
本発明の数々の実施形態の態様を説明するために本明細書において用いられている数々の用語は、当業者に既知の意味を持つものであると理解されるであろう。明瞭にするため、特定の用語に関しては、本明細書に記載された意味を有するものと理解される。
【0010】
本明細書において使用するところの「親水性」とは、分子、物質及び物品が、例えば水との水素結合によって、水に対する親和性を示す特徴を表すとして用いられる。
【0011】
本明細書において使用されるところの、「相互侵入高分子網目」とは、少なくとも部分的に分子スケールで撚り合わされているが共有結合では互いにつながれていない、2つ又はそれ以上の高分子の網目構造を意味する。このような網目構造は、化学結合が破壊されない限り分離することはできない。
【0012】
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも一種の」及び「1以上の」は、互換可能に使用される。したがって、例えば、「1つ」の膜を備える物品とは、「1つ又はそれ以上」の膜を含んだ物品を意味する、と解釈され得る。
【0013】
また、本明細書において使用するところの、端点による数の範囲の任意の列挙には、その範囲内に包含される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0014】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、物理特性を表わす数字は全て、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。
【0015】
上記「課題を解決するための手段」は、本発明の全ての可能な実施形態又は全ての実施を記載するものではない。以下の説明を考慮することにより、当業者は本発明の範囲をより充分に理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
複合材料、より具体的には、多孔質基材及び基材内の少なくとも一部の細孔の壁に親水性コーティングを有する被覆多孔質材料を提供する。親水性コーティングは、エチレンビニルアルコール(「EVAL」)共重合体及び少なくとも一種の架橋された高分子を含む単一層の材料である。基材にある細孔内の親水性コーティングの存在は、基材の表面特性を変化させる。被覆された多孔質材料は、EVAL共重合体と、例えば一種又はそれ以上の重合可能なモノマー及び/又はプレポリマー若しくはオリゴマーのような重合可能な化合物とを含む被覆可能な組成物を多孔質基材の細孔内に堆積させる方法によって作られる。重合可能な組成物は、反応(例えば重合)して親水性コーティングを作り出す。
【0017】
多孔質基材
本発明の様々な実施形態により、多孔質基材は、ろ過用品の構成におけるベース材料として機能する。本発明の実施形態において用いられるのに好適な多孔質基材としては、ろ過用途に用いるにあたり十分な多孔率を持つ任意の様々な材料が挙げられる。一般的に、基材は、第1の主表面及び第2の主表面を含み、第1の主表面から第2の主表面に基材を通って延在する複数の細孔を有する。細孔は、基材を通して液体供給物や気体供給物を通過させる一方で、供給物に含まれる微粒子や他の異物を捕集するような寸法にされる。
【0018】
好適な多孔質基材としては、これらに限定はされないが、微多孔質膜、不織布ウェブ、多孔質繊維が挙げられる。多孔質ベース基材は任意の材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、基材は、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリフェニレンオキシド、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルの共重合体、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない一種又はそれ以上の高分子材料を含む。好適なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンとの共重合体、αオレフィン共重合体類(1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−デセンの共重合体など)、及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なフッ素化ポリマーには、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンの共重合体(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)及びクロロトリフルオロエチレンの共重合体(ポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)など)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリアミドとしては、ポリ(イミノ(1−オキソヘキサメチレン))、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリ(ピロメリトイミド)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリ(エーテルスルホン)には、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な酢酸ビニルの共重合体としては、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)及び酢酸基の少なくとも一部が加水分解されて様々なポリ(ビニルアルコール)を生成する共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
1つの代表的な実施形態では、多孔質基材は、平均孔径が1.0ミクロメートル未満である微多孔性基材である。好適な微多孔性基材としては、微多孔性膜及び微多孔性繊維が挙げられるが、これらに限定されない。1つ又はそれ以上の上記高分子材料を含む微多孔性基材は、疎水性であり得る。いくつかの実施形態において、微多孔質基材は、熱誘起相分離法(TIPS)膜を含む方法によって作られる疎水性微多孔質膜で構成される。好ましいTIPS膜及びその製造方法には、米国特許第4,539,256号、第4,726,989号、第4,867,881号、第5,120,594号及び第5,260,360号に開示されるものが挙げられる。本発明の実施形態に好ましく用いられる1つの代表的なTIPS膜としてはポリ(フッ化ビニリデン)(すなわちPVDF)を含む膜が挙げられる。本発明のその他の実施形態に好ましく用いられる別の代表的なTIPS膜としては、例えばポリプロピレンのようなポリオレフィンを含むTIPS膜が挙げられる。更に別の代表的なTIPS膜は、例えばPCT国際公開特許第WO 2010/071764号に記載されるエチレン−クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)共重合体から構成される。他の好適なPVFD膜としては、例えばMillipore Corporationから市販されているもののような溶媒誘起相分離法(SIPS)を用いて調製されるものがある。
【0020】
多くの多孔質材料を基材として用いることができる。特定の実施形態においては、高分子は、熱誘起相分離(TIPS)あるいは非溶媒誘起相分離によって作られるポリオレフィンである。市販されているポリオレフィン支持材料の具体的な例としては、Pall Corporation製のSUPOR(登録商標)ポリエーテルスルホン膜、Cole−Parmer(登録商標)Teflon(登録商標)膜、Cole−Parmer(登録商標)ナイロン膜、Gelman Sciences製のセルロースエステル膜、並びにWhatman(登録商標)フィルター又はろ紙がある。非高分子性の支持部材、例えばセラミック系支持体も用いることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は繊維材料から構成される。繊維性多孔質材料の例としては、不織布ウェブ、織布素材、メルトブローン材料や同様の材料などが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えばHollingsworth and Vose Companyから市販されているものなどの、不織布繊維状ポリエステル又は不織布繊維状ポリプロピレンのような繊維状ポリオレフィンが用いられる。好適なメルトブローン又は織布材料は、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、又はセルロース系材料を含むことができる。
【0022】
好適な多孔質基材は、様々な形状及び大きさのもの、例えば平面的シート、中空繊維、又は管状膜であることができる。いくつかの実施形態では、支持部材は、約10〜約1000マイクロメートル、また他の実施形態では、約10〜約500マイクロメートル、更に他の実施形態では、約10〜約300マイクロメートルの厚さを有する平面シート状である。
【0023】
被覆可能な組成物の構成成分
本発明の被覆された多孔質材料は、多孔質基材の表面の親水性コーティングを含む。親水性コーティングは、単一層のEVAL共重合体及び架橋された高分子であり、親水性コーティングは、溶剤にEVAL共重合体及び重合可能な化合物を含むように適切な溶媒中で配合した被覆可能な組成物から形成される。一般に、EVAL共重合体は、多孔質基材表面において重合可能な化合物の堆積を均一にすることを促進すると考えられている。
【0024】
本発明の実施形態において、重合可能な化合物は、重合場所で重合可能である間は親水性である(例えば基材の細孔内に堆積された後)。好適な重合可能な化合物には、モノマー、プレポリマー、及び/又は(a)フリーラジカルによって重合することができる基、すなわち最初のエチレン性不飽和基、及び(b)追加の官能基、すなわち第2のエチレン性不飽和基、を有するオリゴマーである。エチレン性不飽和基を2つ持つ好適なモノマーとしては、これに限らないが、ポリアルキレングリコールジ(メタ)クリレートが挙げられる。本明細書において使用するとき、用語ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、用語ポリアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレートと交換可能に使用される。(メタ)アクリレートにおけるような用語「(メタ)アクリル」は、アクリレートにおけるようなアクリル基及びメタクリレートにおけるようなメタクリル基の両方を包含するたように使用される。
【0025】
代表的な一実施形態では、架橋された高分子は、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートと架橋剤との紫外線(「UV」)照射による反応によって生じるものである。このようなモノマーの重合は、さもなくば疎水性である多孔質基材をポリアルキレンオキシド基の存在に起因する親水性により親水性多孔質基材へと変換する。望ましい一実施形態では、ポリエチレングリコールジアクリレートモノマーは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー(例えば約400g/moleの平均分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)単体又は他のモノマーとの組み合わせである。その結果として得られる親水性コーティングは、例えば瞬時の湿潤性のような、様々な望ましい性質を有し得る。
【0026】
特定の実施形態では、得られる親水性コーティングにおいて高度の架橋がなされた高分子を提供するように、好適なモノマーは、特定の最低分子量か又はそれより大きい分子量を有するものである。代表的なポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。好適なポリエチレングリコールジアクリレートとしては、約300g/mole以上、400g/mole以上、又は600g/mole以上の平均分子量を有するものが挙げられる。約508g/moleの分子量を有する好適なポリエチレングリコールジアクリレートモノマーは、例えば商品名「SR344」として市販されており、平均分子量が約598g/moleであるポリエチレングリコールジメタクリレートモノマーは商品名「SR603」で市販されており、平均分子量約742g/moleのポリエチレングリコールジメタクリレートモノマーは商品名「SR610」で市販されており、分子量693をもつメトキシポリエチレングリコールアクリレートは商品名「CD552」で市販されており、これら全てはSartomer Co.,Inc.(ペンシルベニア州Exton)から入手することができる。ポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレートは、それらの一般的な安定性又は大きな揮発性のないことを基準に選択することができ、その結果、ひとたびモノマーが多孔性基材に堆積されると、被覆可能な組成物から溶媒が蒸発した後にも基材の細孔に保持される。
【0027】
更に、いくつかの実施形態は、三官能性モノマー、例えば三官能性メタクリレート又はそのエステル類を含む。いくつかの実施形態において、三官能性モノマーは、それらの分子量が約1,000以上であるものを含み得る。好適な三官能性モノマーは、例えば分子量1,073を有し商品名「SR9011」でSartomer Co.から入手可能なものが市販されている。
【0028】
被覆可能な組成物には、一種よりも多くの特定のモノマーを含めることができる。本明細書において説明されるように、更に加工を加えることにより得られる被覆された多孔性材料は、水に対する瞬時の湿潤性並びにバクテリアへの癒着の低さなどの多くの望ましい性質を保有することができる。
【0029】
本発明の様々な実施形態において、前出のモノマーのような重合可能な化合物の重合は、高度に架橋された高分子を作り出し、これは先に説明したEVAL共重合体と共に単一層に含まれる。架橋された高分子は、多官能性化合物(例えば架橋剤)と共にモノマー、オリゴマー、又はプレポリマーを重合することにより得ることができる。いくつかの実施形態において、架橋は、高度に架橋性のある高分子を適切な溶媒中で用いることで達成される。親水性コーティング中の高分子の架橋の程度を達成する及び/又は向上する目的で、様々な架橋剤のうちのいずれかを被覆可能な組成物に含むことができる。架橋剤の例としては、少なくとも2つのビニル又はアクリル基を含有する化合物、例えば2,2−ビス[4−(2アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ブタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート及びジメタクリレート、ペンタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート及びジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート及びジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート及びジメタクリレート、1,10−ドデカンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、2,2−ジメチルプロパンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、ポリ(プロピレン)ジアクリレート及びジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート及びジアクリレート、グリセロールトリス(アクリロキシプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート及びトリアクリレート、イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート及びテトラアクリレート、ソルビトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンター/ヘキサアクリレート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、ジビニルホルムアミド、N,N’,−メチレンビスアクリルアミド、1,4−ジアクリロイルピペラジン、N,N’−ヘキサメチレンビスクリルアミド、N,N’−オクタメチレンビスアクリルアミド、N,N−ドデカメチレンビスアクリルアミド、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸を挙げることができる。特に好ましい架橋剤としては、N,N’,−メチレンビスアクリルアミド、ジエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(例えば本明細書で先に述べたように300以上の分子量を有する)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TRIM)が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、重合反応は、熱活性化又は紫外線(UV)照射を用いて開始される。重合反応がUV照射による実施形態においては、被覆可能な組成物は、一般に、例えば2−ヒドロキシ−l[4−2(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−l−プロパノン(IRGACURE 2959)及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)から選択できる、適切な光開始剤を含む。他の開始剤は、商品名「DAROCUR 1173」(Ciba Specialty Chemicals Corporation社、ニューヨーク州Tarrytown)で市販されている2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンである。更に別の好適な光開始剤は、商品名「Lucirin TPOS」でBASF社から入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートである。
【0031】
その他の光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えばベンゾインエチルエーテル及びベンゾインメチルエーテル、ジアルコキシアセトフェノン、ヒドロキシアルキルフェノン、並びにa−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステルが挙げられる。
【0032】
特定の実施形態では、被覆可能な組成物は、重合反応を光開始するよう作用しかつそれ自身、多官能性である、すなわち架橋剤として作用することのできる、反応性光開始剤と配合される。そのような実施形態においては、好適な光開始剤は、米国特許第5,506,279号に記載されているような2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイル)フェノキシ]エチル−2−メチル−2−N−プロペノイルアミノプロパノエートであるVAZPIAである。
【0033】
被覆可能な組成物は溶媒を含む。様々な実施形態において、好適な溶媒は水性系の溶媒であり、一般にアルコール、及び任意に、水と相溶性があり溶媒をその中の様々な有機構成物質と相溶化するのに有用な別の有機小分子を含んでいる。好適な溶媒としては、例えばエタノール/水の70:30体積/体積の混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態においては、水性系の溶媒は、例えばメタノール、n−プロパノール(最高90%まで)、イソプロパノール、t−ブタノール、ブタノール、2−メトキシプロパノール、アセトン、THFなどのようなエタノール以外の有機構成物質に配合することができる。当業者には知られるように、他の材料も使用することができる。本明細書の他で説明されているように、一般的には、溶媒は、被覆可能な組成物に含まれる他の材料との相溶性、及びその溶媒の揮発し易さをもとに選択されるべきである。
【0034】
いくつかの実施形態においては、被覆可能な組成物は熱反応開始剤を含む。熱反応開始剤は、被覆可能な組成物を基材に適用する前に、組成物の少なくとも一部分が部分的に重合又はオリゴマー化されていて、被覆可能な組成物のモノマーが予備重合されているような実施形態で望ましい場合がある。予備重合は、熱反応開始剤を用いる熱活性化によって行われることができる。好適な熱反応開始剤としては、例えば、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO(登録商標)触媒88)、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化ベンゾイルが挙げられる。
【0035】
被覆可能な組成物は、前述の構成物質を溶媒中で混合することによって調製される。当業者は、混合の正確な順序及び前述の構成物質と溶媒との相対的割合が限定的なものでないことを理解するであろう。様々な構成物質の正確な量は、相当に広範な制限範囲内で変化し得る。EVAL共重合体は、被覆可能な組成物中に15%未満の濃度で、いくつかの実施形態では10%未満、いくつかの実施形態では5%未満、いくつかの実施形態では2%未満の濃度で提供され得る。重合可能な化合物は、15%未満の濃度で、いくつかの実施形態では10%未満、いくつかの実施形態では5%未満の濃度で存在することができる。光開始剤は、被覆可能な組成物中に6%未満の濃度で、いくつかの実施形態では2%未満、いくつかの実施形態では1%未満の濃度で存在することができる。いくつかの実施形態においては、溶媒は、相溶性の有機構成物質を有する水性溶媒である。いくつかの実施形態においては、溶媒は、水/アルコール混合物を含むことができ、アルコールの体積百分率は約40%〜90%、約55%〜80%、約65%〜75%であり、いくつかの実施形態においては、アルコールの体積百分率は約70%である。
【0036】
被覆された多孔質材料
本発明のいくつかの実施形態においては、物品は、ろ過用途での使用に好適な被覆された多孔質材料の形態で提供される。被覆された多孔質材料は、完成した材料が、第1の主表面及び第2の主表面と、概して第1の主表面から第2の主表面まで基材を貫通して延在する複数の細孔と、を有する、本明細書に記載のような多孔質基材を含むように、本明細書に記載の方法により作製される。各細孔は、細孔の内部寸法又は直径を決定する細孔内壁を含む。親水性コーティングは、多孔質基材の表面の少なくとも一部分を覆い、細孔内壁を含む少なくともそのような基材の表面に固着又は接着される。前述したように、親水性コーティングは、EVAL共重合体と少なくとも一種の架橋された高分子とを単一層に含む。この考えにより拘束されることを意図しないが、架橋された高分子及びEVAL共重合体は、親水性コーティング内の相互侵入高分子網目に形成されると考えられている。EVAL共重合体は、架橋された高分子と実質的に反応しないまま残され、親水性コーティングは、多孔質基材の表面にグラフトも共有結合もしない。親水性コーティングは、基材の細孔内の空隙容積の全ては占有せずに多孔質基材の表面を覆う。被覆された多孔質材料の細孔を通過する液体は、一般にコーティングと基材表面との間ではなく親水性コーティングに近接して流れる。
【0037】
更に、親水性コーティングは、被覆された多孔質材料を水又は水溶液が通過するときに親水性コーティングが基材の細孔内に実質的に保持されるように、多孔質基材の表面に「固着又は接着」されている。記載した材料の実施形態では、被覆された多孔質材料が水に最高30日間浸漬されたとき、1重量%に満たない親水性コーティングが失われる。
【0038】
一実施形態において、被覆された多孔質材料は、例えばポリプロピレン又はポリフッ化ビニリデンから形成される膜のようなTIPS膜の形態の多孔質基材を含む。親水性コーティングは、EVAL共重合体、及び高度に架橋された高分子から構成され、この高分子は、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び架橋剤として作用するために十分な量で提供されるVAZPIA反応性光開始剤から誘導される。
【0039】
様々な実施形態において、被覆された多孔質材料は、本明細書に記載の様々な実施例で使用した試験法に記載されているような望ましい流束又は水流量を呈する。この試験は、既定の体積の水が基材を通過するための時間を測定し、時間、真空圧及び基材の面積を用いて水流量(流束)を計算し、単位L/(m.h.psi(L/(m.h.kPa)))で表す。本発明の被覆された多孔質材料の流束(水流量)は、典型的には、被覆されていない多孔質基材の流束と同程度であり、したがって、被覆されていない多孔質基材と比較して、この親水性コーティングは孔径の変化をほとんどもたらさないことを示している。
【0040】
加えて、被覆された多孔質材料の実施形態は、高い表面エネルギー(例えば、被覆されていない多孔質基材の表面エネルギーより高い)を呈する。いくつかの実施形態において、被覆された多孔質材料は50ダイン/cm以上の表面エネルギーを呈し、いくつかの実施形態において、被覆された多孔質材料は65ダイン/cm以上の表面エネルギーを呈し、その他の実施形態においては、被覆された多孔質材料は80ダイン/cm以上の表面エネルギーを呈し、更に他の実施形態においては、被覆された多孔質材料は85ダイン/cm以上の表面エネルギーを呈する。
【0041】
被覆された多孔質材料の調製
本発明による被覆された多孔質材料の調製では、本明細書に記載のように調製された被覆可能な組成物を多孔質基材に適用する。被覆可能な組成物における重合反応は、基材の表面の親水性コーティングの形成を促進する。ここで、かかる方法の実施形態を説明する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のような架橋された親水性コーティングを実現するために、被覆可能な組成物を多孔質基材に適用する前に重合可能な化合物を最初に予備重合又はオリゴマー化せずに、被覆可能な組成物を調製及び適用することができる。換言すると、被覆可能な組成物は、モノマーからなる又はモノマーを含む未反応の重合可能な化合物とともに調製され、さもなければモノマーが通常は反応してオリマー化するであろう状態を作り出さずに多孔質基材に適用される。いくつかの実施形態において、被覆可能な組成物は、EVAL共重合体と、一種以上のモノマー、所望により一種以上の架橋剤、及び所望により一種以上の開始剤とを、一種以上の好適な溶媒中で、単純に混合することによって調製される。前述の材料の好適な例は、上に記載されている。
【0043】
被覆可能な組成物の構成物質は、組成物がわずかに不均質であってもよいが実質的に均質となるように配合される。次いで、被覆可能な組成物が多孔質基材の細孔に入り細孔を実質的に満たすために十分な時間、多孔質基材を被覆可能な組成物に典型的には浸漬して、組成物を好適な多孔質基材に適用する。余分な被覆可能な組成物は、既知のラミネーション法又は同様の手法によって多孔質基材の外面から取り除くことができる。
【0044】
溶媒を取り除いた後、被覆された多孔質基材を、例えば水又は好適な水溶液、例えば塩水(例えば塩化ナトリウム又は他の無機塩)、又は別の、既知の無機又は有機材料などの水溶液のような好適な再湿潤化剤で再び濡らす。いくつかの実施形態において、好適な塩水は、約30%未満の濃度の塩化ナトリウムの水溶液を含み、いくつかの実施形態では約20%の濃度の塩化ナトリウムの水溶液を含む。再湿潤化剤は、例えばUV硬化中の酸素による抑制作用をなくすなどの、いくつかの機能を果たす。加えて、再湿潤化剤は、UV源により生成される熱の影響、特に中圧水銀ランプからの熱の影響を低減させる。また、再湿潤化剤は、被覆可能な組成物のモノマー分子中の極性基を構造化するのを助け、その結果、ひとたび硬化されれば、親水性コーティングは高密度の極性基を含むようになり、このことは、完成した被覆された多孔質材料の高い表面エネルギーに寄与する。
【0045】
いくつかの実施形態において、被覆可能な組成物中の重合可能な化合物は、最初のモノマー濃度の減少とともにモノマーが再湿潤化剤内に入って失われるのを防ぐために、再湿潤化剤において限られた溶解性を有するように選択される一種以上の極性モノマーを含む。一般的には、極性モノマーは、例えば、熱安定性、生体分子吸着に対する抵抗性、強アルカリ溶液に対する抵抗性、抽出可能な物質を低レベルにするなど、特定の物理的特性を有する高度に架橋された高分子を提供するように選択される。
【0046】
乾燥した基材の再湿潤化の後、重合反応を開始し、親水性コーティングの形成が完了するまで重合反応させる。既に述べたように、重合は、例えば熱活性化又は紫外線照射によって開始することができる。重合可能な化合物(例えばモノマー)は高温で再湿潤化剤に可溶性となる傾向があるので、一般に熱活性化はあまり好ましくない。しかも、光開始剤の存在下での紫外線照射による重合反応の開始は、熱活性化によって開始される反応より速い傾向がある。紫外線照射によって重合を開始するときは、モノマー(又はオリゴマー)、架橋剤及び光開始剤の被覆可能な組成物を含有する多孔質基材を数秒間から数時間にかけて約200nm〜約600nmの波長で紫外線照射する。いくつかの実施形態において、紫外線照射は、広帯域でも狭帯域でもよく、紫外線源の強度は、既知のパラメータ内で異なっていてもよく、典型的には5〜600mW/cm以上の範囲のピーク電力密度を有する。
【0047】
特定の実施形態において、多孔質基材は、被覆可能な組成物による飽和の後に連続ウェブが紫外線源の下又は近くを制御された速度で通過する際に紫外線に曝される連続プロセスにおいて重合反応を受け得る連続ウェブ材料として提供される。いくつかの実施形態において、多孔質基材及びその中の被覆可能な組成物は、両方の主表面に沿って順に又は同時に紫外線に曝露される。紫外線源に順に曝露する場合、典型的には、ウェブ又は基材の片面に位置づけられた紫外線源への第1の曝露が必要である。その後、ウェブを裏返して基材の第2の面をほぼ同じ紫外線量に曝露して、重合可能な化合物を基材の細孔において本質的に完全に重合させる。
【0048】
あるいは、連続ウェブの両面を照射するように複数の紫外線源を同時に方向づけてもよい。前述のいずれの実施形態においても、連続ウェブを支持体で支えることができる。いくつかの実施形態においては、基材の細孔内での重合反応の開始によって放射線が遮断されないように、ウェブ支持体を貫通して紫外線が透過され得るようにウェブ支持体を選択してもよい。いくつかの実施形態においては、紫外線照射及び重合中に基材を支持するために好適な材料の例は、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムである。いくつかの実施形態においては、照射中に、飽和した多孔質基材をBOPPの層の間に位置づける(例えば「間に挟む」)ことができる。基材を支える働きをする、多孔質基材のいずれかの面のフィルム層は、それを通して紫外線を透過させ、加工中の基材の再湿潤化溶液の損失を防ぎ、加工中の基材の水分を一定に維持する。
【0049】
重合反応の後、被覆された多孔質材料を洗浄して、残りの塩水、未反応物質、残留溶媒などを取り除いてもよい。被覆された多孔質材料は、室温又は高温での蒸発によって残りの液体(例えば洗浄水)を蒸発させて乾燥できる。
【0050】
特定の実施形態では、前述の方法は、被覆可能な組成物を多孔質基材に適用する前に、任意選択による予備重合又はオリゴマー化工程を追加的に伴う。そのような実施形態では、予備重合工程は、被覆可能な組成物が多孔質基材に適用される前に熱反応開始剤の存在下で熱による重合反応開始によって達成され得る。この工程で達成される重合の程度は、例えば限定量の開始剤、反応時間及び温度の制御(例えば開始後の既定時点でクエンチすることによって)などを用いて既知の方法で制御される。予備重合の後、本明細書に記載されるように、被覆可能な組成物を多孔質基材に適用し、更に加工することができる。好適な熱反応開始剤は、既に述べたものなどの既知の材料から選択することができる。
【0051】
更に別の任意の実施形態では、被覆可能な組成物はUV反応開始剤とともに配合され、多孔質基材に適用される。本明細書に記載されるように被覆可能な組成物から溶媒を取り除く前に、第1のすなわち初回の紫外線照射に組成物を曝露して予備重合工程を開始させる。そのような実施形態においては、予備重合反応を制御して、モノマーを反応させオリゴマーをもたらすが、製造方法のこの段階では反応を完了(完全な重合)させない。予備重合又はオリゴマー化の程度は、例えば、本明細書で更に説明するように制限された量の第1開始剤を使用することによって、又は紫外線曝露の制御(例えば曝露時間の制御)などによって、制御することができる。予備重合又はオリゴマー化反応を開始するために紫外線を利用する実施形態では、予備重合工程中にのみ使用される選択された第1紫外線波長に対する開始剤の感度に関して開始剤を選択することができ、この第1紫外線波長は、重合可能な化合物を完全に重合するために使用される紫外線波長とは異なる。そのような実施形態では、1種を超える紫外線開始剤、すなわち、オリゴマー化反応の開始に効果的な第1紫外線波長に対して敏感な第1開始剤と、前述の重合反応の開始に効果的な第2紫外線波長に対して敏感な第2開始剤とを含むように、被覆可能な組成物を配合することができる。オリゴマー化工程の後の残りの方法は先に述べたとおりであり、すなわち、最初の紫外線照射の後、被覆可能な組成物から溶媒を除去し、再湿潤化のための溶液(例えばNaCl水溶液)を基材に適用し、その再湿潤化した基材を再び紫外線で照射して重合反応を完了させ、親水性コーティングを提供する。次いで、既に述べたように、得られる被覆された多孔質材料を洗浄及び乾燥させる。
【0052】
被覆された多孔質材料の使用
本発明の様々な実施形態は、物品(例えば被覆された多孔質材料)及び方法(例えば被覆された多孔質材料の製造方法)を含む。本発明の被覆された多孔質材料は、例えば親水性コーティングが帯電されている場合も中性の場合もある限外ろ過、並びにヘルスケア、飲食品及び/又は工業市場で使用される精密ろ過などの、任意の様々なろ過用途に使用することができる。具体的な用途としては、例えば燃料電池及び電池隔離板用途が挙げられる。
【0053】
本発明の被覆された多孔質材料を使用して、水性媒体及び非水性流体における分離を実行することができる。被覆された多孔質材料は、膜、フィルム、及び/又はろ過用途のために作られた任意の様々な物品の構成要素として提供され得る。本発明の被覆された多孔質材料は、触れられても壊れたり崩れたりせずにたわむこと、折り畳むこと、又はプリーツにすることができるので、フィルタカートリッジ又は高い表面積の材料が要求されるその他のろ過装置での使用に好適である。その上、多孔質基材としての膜材料からなる被覆された多孔質材料は、付着汚れしにくい傾向があり、高いろ過効率をもたらすことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の被覆された多孔質材料は、既知のコーティング又は堆積法によって、任意の様々な組成物を上に堆積して更に改善することができる。例えば、被覆された多孔質材料は、気相蒸着又はスパッタリング技法を使用して金属被覆されてもよく、あるいは被覆された多孔質材料は、例えば接着剤、水性若しくは溶媒系のコーティング組成物、又は染料で被覆されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、被覆された多孔質材料を別の構造体又は材料、例えば他のシート材料(例えば布地層、織布、不織布、編地、又はメッシュ地)、高分子フィルム層、金属ホイル層、フォーム層、又はこれらの任意の組み合わせと積層して、複合構造体を得ることにより、独自の物品が提供される。積層は、接着剤結合及びスポット溶接を含む従来の手法によって、又は被覆された多孔質材料に望まれる多孔率を破壊しない若しくは妨害しないその他の手法によって行うことができる。追加的に、多層のろ過用品は、例えば(i)本明細書に記載のような膜の形態の多孔質基材に基づく被覆された多孔質材料の1つ以上の層、及び(ii)不織布の形態の多孔質基材に基づく被覆された多孔質材料の1つ以上の層から作製することもできる。いくつかの実施形態では、多層のろ過用品のいくつかの層は、本明細書に記載のような被覆された多孔質材料であるが、その他の層は、本明細書に記載のもの以外の他の膜又は繊維状ろ過構成体を含むように、多層のろ過用品にその他の材料が含まれてもよい。
【0056】
本発明の追加的な態様及びその実施形態を以下の非限定的な実施例で更に例示する。
【実施例】
【0057】
試験方法
膜表面エネルギー
異なる2つのセットからのダイン溶液(ワイオミング州MequonのJemmco,LLCからの30〜70ダイン/cm、Handbook of Chemistry and Physics、第71版(CRC press)に従って配合した73〜87ダイン/cm溶液)を使用した。プラスチック製ピペットを用いて全ての溶液を基材(例えば膜)上に滴下した。滴下量は約0.5mLであった。ダイン溶液が膜を浸透するのに必要な時間をストップウォッチで記録した。ダイン溶液の浸透の容易な検出のために光トランスイルミネーターを使用した。膜の表面エネルギーは、1秒未満に膜に浸透した最も高いダインの溶液の表面張力として記録した。試験を3回繰り返し、各測定値を平均した。
【0058】
流束(水流量)
47mmディスクの試験基材をGelman磁気ホルダー(Gelman Sciences,Inc.、ミシガン州Ann Arbor)に装着した。ホルダー内の基材の有効直径は34mmであった。基材を通して水を引くために、約60cm(23.5インチ)の水銀(Hg)(80.0kPa)で動作している真空ポンプを適用した。100mLの水が基材を通過する時間をストップウォッチで記録した。時間、真空圧及び基材の面積を用いて水流量(流束)を計算し、L/(m.h.psi)(L/(m.h.kPa)で表した。試験を2〜3回繰り返し、各測定値を平均した。
【0059】
バブルポイント孔径
ASTM−F316−03に従って基材のバブルポイント孔径を測定した。イソプロパノールで基材を予め濡らしてからテストホルダーに装着した。加圧した窒素ガスを基材の片面に徐々に付加し、反対側で検知されるガス流が100%に達するまで続けた。基材を通るガス流が100%での圧力を記録し、その記録を用いてバブルポイント孔径を計算した。試験を2〜3回繰り返し、各測定値を平均した。
【0060】
耐熱性試験
まず試料基材を脱イオン水に浸漬して完全に濡らしてから2枚のペーパータオルシートの間に挟んだ。この試験用のサンドイッチ状のものを136℃に温度設定したThelco Lab Oven(Thermo Electron Corporation、オハイオ州Marietta)に30分間入れた。次いで、基材の水湿潤性及び表面エネルギーを上記試験方法に従って試験した。
【0061】
(実施例1)
44モル%のエチレン含有量を有するEVAL共重合体(EVAL44、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)を、エタノール(AAPER Alcohol and Chemical Co、ケンタッキー州Shelbyville)と水との溶媒混合液(エタノール70.0体積%)に70〜80℃の温度範囲の水浴中で溶解して5.0重量%の原液を作製した。4.0重量%のポリエチレングリコールジアクリレート(SR610、Sartomer、ペンシルベニア州Warrington)及び1.0重量%の反応性光開始剤VAZPIA(2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイル)フェノキシ]エチル−2−メチル−2−N−プロペノイルアミノプロパノエート(米国特許第5,506,279号に開示されている)のエタノール/水混合溶媒(エタノール70.0体積%)を上記の原液に加えて、被覆可能な組成物を作製した。被覆可能な組成物中のEVALの最終濃度は1.0重量%であった。
【0062】
516cm〜1426cmの微多孔性のポリプロピレン膜(F100、3M Purification Inc.、コネチカット州Meriden)の試料を、10〜100mLの被覆可能な組成物とともに厚手のポリエチレン(PE)製の袋に入れ、組成物を膜に1分間未満浸み込ませることにより、被覆可能な組成物で飽和した。次いで、PE袋から膜を取り出した後、膜の表面の余分な被覆可能な組成物をペーパータオルで吸い取った。膜を10〜12時間、室温で乾燥させた。乾燥した膜を別のPE袋に入れ、再湿潤化溶液(すなわち20.0重量% NaCl水溶液)10〜100mLをその袋に加えた。膜を食塩水で瞬時湿潤化させ、次いで袋から取り出した。アルミニウム反射体を有するH電球を備えた窒素不活性Fusion UVシステムを通して膜をコンベアベルトで通過させることにより、被覆可能な組成物を硬化した。ベルト速度は6.1メートル/分(20フィート/分)とした。次いで、反対側をUV源に曝露するために膜を裏返し、再び6.1メートル/分(20フィート/分)でUVシステムを通過させて、被覆された多孔質材料を調製した。
【0063】
次いで、被覆された多孔質材料を脱イオン水で洗浄し、90℃(194°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130、Emerson Apparatus Company、メイン州Gorham)で約1時間乾燥した。
【0064】
この被覆された多孔質材料を上記の試験方法に従って試験した。下記の表1に示すように、この材料は、83ダイン/cmの表面エネルギー、0.60μmのバブルポイント孔径及び997L/m.h.psi(144.7L/m.h.kPa)の水流量を呈した。また、被覆されていない基膜も試験したところ、0.61μmのバブルポイント孔径及び973L/m.h.psi(141.2L/m.h.kPa)の水流量を呈し、従って硬化後の膜がその細孔の微細構造を維持し、目詰まりは僅少であり、結果的に流束の変化はわずかであることが示された。
【0065】
モデルEZ10(Tuttnauer Company、ニューヨーク州Hauppauge)を用いてフレームで拘束しながら、被覆された多孔質材料を、各サイクル126℃(259°F)及び30分間で5サイクルオートクレーブした。次いで、被覆された多孔質材料を再び試験して、水流量及び表面エネルギーを測定した。表面エネルギーが87ダイン/cmに維持され、水流量が924L/m.h.psi(134.1L/m.h.kPa)であったことから、被覆された多孔質材料が高温のオートクレーブ処理に耐えられること、及び親水性コーティングが熱に安定であることが示された。
【0066】
(実施例2)
実施例1のように、微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材及び2.0重量%のポリエチレングリコールジアクリレート(SR610)を含有する被覆可能な組成物を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、72ダイン/cmの表面エネルギー、0.53μmのバブルポイント孔径及び811L/m.h.psi(117.7L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0067】
(実施例3)
被覆可能な組成物が1.0重量%の光開始剤(IRGACURE 2959、Ciba/BASF、ニューヨーク州Terrytown)を含有することを除き、実施例2のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、61ダイン/cmの表面エネルギー、0.57μmのバブルポイント孔径及び923L/m.h.psi(134.0L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0068】
(実施例4)
被覆可能な組成物が4.0重量%のポリエチレングリコールジアクリレート(SR610)を含有することを除き、実施例3のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。被覆された多孔質材料を脱イオン水で洗浄し、66℃(150°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130)で約2時間乾燥した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.55μmのバブルポイント孔径及び771L/m.h.psi(111.9L/m.h.kPa)の水流量を有していた。
【0069】
(実施例5)
被覆可能な組成物に使用した光開始剤が1.0重量%のDAROCUR 1173(Ciba/BASF、ニューヨーク州Terrytown)であることを除き、実施例4のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。被覆された多孔質材料を脱イオン水で洗浄し、66℃(150°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130)で約2時間乾燥した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.53μmのバブルポイント孔径及び704L/m.h.psi(102.2L/m.h.kPa)の水流量を有していた。
【0070】
(実施例6)
被覆可能な組成物に使用した光開始剤が0.2重量%のLUCIRIN TPO−L 1173(Ciba/BASF、ドイツ、Ludwigshafen)であることを除き、実施例4のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。このFusion UVシステムでは、H電球の代わりにダイクロイック反射体付きのD電球を使用した。被覆された多孔質材料を脱イオン水で洗浄し、66℃(150°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130)で約2時間乾燥した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.56μmのバブルポイント孔径及び777L/m.h.psi(112.8L/m.h.kPa)の水流量を有していた。
【0071】
(実施例7)
被覆可能な組成物が0.5重量%のVAZPIA光開始剤を含有することを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示されるように、被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.54μmのバブルポイント孔径及び725L/m.h.psi(105.2L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0072】
(実施例8)
被覆可能な組成物が0.2重量%のVAZPIA光開始剤を含有することを除き、実施例2のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、62ダイン/cmの表面エネルギー、0.47μmのバブルポイント孔径及び743L/m.h.psi(107.8L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0073】
比較例1
被覆可能な組成物がエチレンビニルアルコール共重合体(EVAL)をまったく含まないことを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。被覆可能な組成物はUV照射で硬化されなかった。得られた材料は37ダイン/cmの表面エネルギーを呈し、水中又は塩化ナトリウム溶液中に10分間浸した後にどちらの再湿潤溶液でも湿潤性がなかった。
【0074】
(実施例9)
原液に使用したEVAL共重合体(EVAL)がエチレン含有率27モル%(EVAL27,Sigma−Aldrich,ミズーリ州St Louis)及び73モル%の酢酸ビニル含有率であったことを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。被覆可能な組成物は、原液に4.0重量%のポリエチレングリコールジアクリレート(SR610)及び1.0重量%のVAZPIA反応性光開始剤のエタノール/水混合溶媒(エタノール70.0体積%)溶液を加えて調製した。被覆可能な組成物中のEVALの最終濃度は2.0重量%であった。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.56μmのバブルポイント孔径及び846L/m.h.psi(122.8L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0075】
(実施例10)
被覆可能な組成物に用いられたポリエチレングリコールジメタクリレートの分子量が約400(SR603 OP、Sartomer,ペンシルベニア州Warrington)であり、再湿潤化剤として塩溶液の代わりに水を用いたことを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、77ダイン/cmの表面エネルギー、0.56μmのバブルポイント孔径及び885L/m.h.psi(128.4L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0076】
(実施例11)
原液に用いられたポリエチレングリコールジメタクリレートの分子量が750(PEG750DMA,Sigma−Aldrich,ミズーリ州St.Louis)であったことを除き、上記の実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜を調製した。実施例1に記載されているのと同じ方法によりコーティング液で膜を処理した。下記の表1に示すように、硬化された膜は、80ダイン/cmの表面エネルギー、0.61μmのバブルポイント孔径及び960L/m.h.psi(139.3L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0077】
(実施例12)
被覆可能な組成物に用いられたポリエチレングリコールジアクリレートがエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートエステル(SR415、Sartomer,ペンシルベニア州Warrington)であることを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、78ダイン/cmの表面エネルギー、0.56μmのバブルポイント孔径及び867L/m.h.psi(125.8L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0078】
(実施例13)
被覆可能な組成物がエタノール/水混合液中(エタノール70体積%)1.0重量%の実施例1に記載したEVAL44原液、2.0重量%の三官能性モノマー(SR9011、Sartomer,ペンシルベニア州Warrington)、2.0重量%のメトキシポリエチレングリコール550メタクリレート(CD552、Sartomer,ペンシルベニア州Warrington)、及び1.0重量%のVAZPIAを用いて作られることを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆可能な組成物を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、80ダイン/cmの表面エネルギー、0.64μmのバブルポイント孔径及び1099L/m.h.psi(159.5L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0079】
(実施例14)
UV照射工程の前に、乾燥した膜をMill−Q浄水(Millipore浄水装置)で飽和したことを除き、実施例2のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。被覆された多孔質材料を洗浄し、90℃(194°F)のスピードドライヤー内で乾燥した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、58ダイン/cmの表面エネルギー、0.53μmのバブルポイント孔径及び753L/m.h.psi(109.3L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0080】
(実施例15)
実施例1の被覆可能な組成物を使用したことを除き、実施例14のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、74ダイン/cmの表面エネルギー、0.58μmのバブルポイント孔径及び982L/m.h.psi(142.5L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0081】
(実施例16)
ベルト速度を12.2メートル/分(40フィート/分)としたことを除き、実施例2のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、73ダイン/cmの表面エネルギー、0.53μmのバブルポイント孔径及び811L/m.h.psi(117.7L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0082】
(実施例17)
ベルト速度を12.2メートル/分(40フィート/分)としたことを除き、実施例1のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、85ダイン/cmの表面エネルギー、0.59μmのバブルポイント孔径及び929L/m.h.psi(134.8L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0083】
(実施例18)
飽和した膜をポリエチレン袋に残し、5分間の照射時間でQuantum Lamps(Quantum UV Curing System、Quant 48、UV Quantum Technologies,Inc.、カリフォルニア州Irvine)を備えるUVトレーの下に置いたことを除き、実施例2のように微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材を用いて被覆された多孔質材料を調製した。袋/膜を裏返して更に5分間照射した。下記の表1に示すように、被覆された多孔質材料は、72ダイン/cmの表面エネルギー、0.58μmのバブルポイント孔径及び902L/m.h.psi(130.9L/m.h.kPa)の水流量を呈した。
【0084】
(実施例19)
多孔質基材としてポリプロピレン膜の代わりに疎水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の微多孔性膜(DURAPORE、0.2マイクロメートル等級、Millipore、マサチューセッツ州Billerica)の形態の多孔質基材を使用して、実施例1のように被覆された多孔質材料を調製した。本明細書に記載の試験法に従って、被覆された多孔質材料及び被覆されていない多孔質基材をそれぞれ試験した。被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.49μmのバブルポイント孔径及び548L/m.h.psi(79.5L/m.h.kPa)の水流量を呈した。熱抵抗試験の後、被覆された材料の表面エネルギーは73ダイン/cmであり、被覆された材料がなお瞬時の水湿潤性を有することが示された。試験データを表2に記載する。
【0085】
(実施例20)
別の疎水性のポリフッ化ビニリデン(PVDF)の微多孔性膜(DURAPORE、0.45マイクロメートル等級、Millipore、マサチューセッツ州Billerica)を使用したことを除き、上記の実施例19のように被覆された多孔質材料を調製した。被覆された多孔質材料及び被覆されていない多孔質基材を本明細書に記載の試験法に従ってそれぞれ試験した。被覆された多孔質材料は、87ダイン/cmの表面エネルギー、0.75μmのバブルポイント孔径及び1545L/m.h.psi(224.2L/m.h.kPa)の水流量を呈した。熱抵抗試験の後、被覆された材料の表面エネルギーは80ダイン/cmであり、被覆された材料が優れた水湿潤性を維持したことが示された。試験データを表2に記載する。
【0086】
(実施例21)
70〜80℃の範囲の温度の水浴からの熱の下で、EVAL共重合体(Sigma−Aldrich、ミズーリ州、St Louisから入手したエチレン含有量27モル%及び酢酸ビニル含有量73モル%のEVAL27)をエタノール(AAPER Alcohol and Chemical Co.ケンタッキー州Shelbyville)/水溶媒混合液(エタノール70.0体積%)に70〜80℃の温度範囲の温浴で熱して溶解することにより、5.0重量%原液を調製した。上記の原液124.98グラムを10.02グラムのポリエチレングリコールジメチルアクリレート(SR750、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)及び2.5063グラムのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(Alfa Aesar、マサチューセッツ州Ward Hill)及び0.7536グラムの2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイル)フェノキシ]−エチル−2−メチル−2−N−プロペノイルアミノプロパノエート(VAZPIA)及び0.5040グラムの4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)(Sigma Aldrich、ミズーリ州St.Louis)及び112.10グラムの水/エタノール(70:30体積比)混合液と混合することにより、モノマー溶液を調製した。次いでモノマー溶液を窒素で2分間バブリングした後、ガラス瓶に密閉した。78℃に維持した温水浴に瓶を浸漬することにより、予備重合を開始した。この溶液を磁気攪拌し、15分間加熱した後に温水浴から取り出し、それ以上重合しないように直ちに冷水に浸漬した。得られた被覆可能な組成物は半透明であった。
【0087】
微多孔性ポリプロピレン膜の形態の多孔質基材(F101、3M Purification Inc.、コネチカット州Meriden)を、膜を完全に濡らすように膜の試料(約387cm)を十分な量の被覆溶液とともに厚手のポリエチレン(PE)袋に入れることにより、上記の予備重合した被覆可能な組成物で飽和した。PE袋から膜を取り出した後、膜の表面の余分な溶液をペーパータオルで拭き取った。飽和した膜を室温で10〜12時間乾燥させて溶媒を取り除いた。次いで、乾燥した膜をPE袋に入れ、十分な量の20.0重量% NaCl湿潤化水溶液を袋に入れて膜を完全に濡らした。再び濡れて飽和した膜を袋から取り出し、2枚の二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムの間に挟んでサンドイッチ状にしたものを、室温で熱ロールラミネーター(GBC Catena 35,イリノイ州Lincolnshire)を用いて積層体にした。次いで、その積層体になった膜をコンベアベルトで、動力100%で稼動するH電球を備える600ワットFusion UVシステム(不活性窒素を用いずに)を通過させることにより硬化した。ベルト速度は9.1メートル/分(30フィート/分)であった。次いで、反対側の面をUV源に曝露するために膜を裏返し、再び9.1メートル/分(30フィート/分)でUVシステムを通過させた。BOPPフィルムを取り除いた後、得られた被覆された多孔質材料を脱イオン水で洗浄し、66℃(150°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130)で約2時間乾燥した。被覆された多孔質材料及び被覆されていない多孔質基材の表面エネルギー、バブルポイント孔径及び水流量を試験した。モデルEZ10オートクレーブ(Tuttnauer Company、ニューヨーク州Hauppauge)を用いてフレームで拘束しながら、被覆された多孔質材料を126℃(259°F)にて30分間で1サイクルオートクレーブした。表面エネルギーを測定するために、被覆された多孔質材料を再び試験した。表面エネルギーは86ダイン/cmに維持された。また、被覆された多孔質材料の熱抵抗試験も行った。試験の後、材料の表面エネルギーは82ダイン/cmであり、被覆された材料が優れた水湿潤性を維持したことが示された。試験データを表2に記載する。
【0088】
(実施例22)
ホッパー、独立した温度制御付きの8つのゾーン、及び押出成形機に希釈剤を供給するための液体リザーバを備えた40mm二軸押出成形機を使用して、PCT国際公開特許第WO 2010/071764号に記載のような微多孔性エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)膜を調製した。Halar 902 ECTFE共重合体ペレット及びETFE 6235成核剤が固体フィーダーを用いてホッパーに導入され、材料が押出成形機に供給された。押出成形機は送り速度150rpmに維持された。DBS希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。ECTFE共重合体/希釈剤/成核剤の重量比は、57.0%/42.5%/0.5%であった。全体の押出速度は約13.6kg/時(30ボンド/時)とし、254℃から249℃まで減少する温度プロファイルとなるように押出成形機の8つのゾーンを設定した。結果として得られた融解混合組成物は、均一に混合され、続いて221℃に維持されたスロットフィルムダイを通してポンプで送り出され、ホイール温度32℃(90°F)、鋳込速度3.66m/分(12フィート/分)に維持された模様付きキャスティングホイール上に鋳込して、シート様形状の融解混合組成物を形成した。
【0089】
フィルムダイとキャスティングホイールとの間の隙間は1.9cmであり、これは、ECTFE共重合体の顕著な結晶化の前にETFEポリマー成核剤を結晶化させるのに十分大きいと考えられた。融解ポリマー混合物がキャスティングホイールに触れる前に、細孔内の混合物内に、かすかな不透明のフロストラインが生じた。得られたフィルムを溶媒でインライン洗浄して希釈剤DBSを除去した後、空気乾燥した。洗浄したフィルムを、長さ及び横方向1.8×2.85で順に配向した。ダウンウェブ方向及び横断方向の配向はそれぞれ110℃及び154℃で行った。
【0090】
この微多孔性ECTFE材料を評価したところ、非常に強く、触っても破壊や崩れを起こさずに、曲げ、折り畳み、又はプリーツに折ることが可能であることがわかった。その平均フィルム厚は38μm、バブルポイント孔径は0.29μm、多効率は61.3%、水流量は219L/m.h.psi(317.9L/m.h.kPa)であった。
【0091】
1.33重量%のポリエチレングリコール1000ジメタクリレート(PEG1000DMA、Polysceinces,Inc.、ペンシルベニア州Warrington)及び0.67重量%のポリエチレングリコールジメタクリレート(M 330、Sigma−Aldrich、ミズーリ州St.Louis)及び1.00重量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(Alfa Aesar、マサチューセッツ州Ward Hill)及び0.30重量%のIRGACURE 2959及び0.20重量%の4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)をエタノール/水(70:30体積比)混合液中で混合することにより、実施例21に記載のEVAL27原液からモノマー溶液を調製した。最終混合液は2.00重量%のEVAL27を含有していた。次いで、このモノマー溶液を2分間窒素でバブリングした後、125mLガラス瓶に密閉した。次いで、温度75℃に維持された温水浴に瓶を浸漬した。この溶液を攪拌し、15分間加熱した後、温水浴から取り出し、それ以上重合しないように直ちに冷水に浸漬して、半透明の液体を得た。
【0092】
ベルト速度を毎分12.2メートル(40フィート)としたことを除き、実施例21に記載したのと同じ手順を用いて、前述のECTFE微多孔性膜を上記の予備重合した溶液で改質した。硬化し洗浄した膜を90℃(194°F)のスピードドライヤー(Emerson Speed Dryer Model 130,Emerson Apparatus Company,メイン州Gorham)で約1時間乾燥した。被覆された多孔質材料の表面エネルギー、バブルポイント孔径及び水流量を本明細書に記載の試験法に従って測定した。また、未処理の多孔質基材の表面エネルギー及び水流量も測定した。試験の結果を表2に記載する。
【0093】
(実施例23)
PCT国際公開特許第WO 2010/078234号に記載のように、40mm二軸押出成形機及び25mm二軸押出成形機の両方を用いて、2ゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜を調製した。2つの押出成形機からの溶融物ストリームをマルチマニホールドダイにより単一のシートにキャストした。
【0094】
溶融物ストリーム1。ポリプロピレン(PP)樹脂ペレット(F008F、ペンシルベニア州PhiladelphiaのSunoco Chemicals)及び成核剤(MILLAD(登録商標)3988、Milliken Chemical、サウスカロライナ州Spartanburg)を、250rpmの送り速度に維持されている40mm二軸押出成形機に供給した。鉱油希釈剤(Mineral Oil Superla White 31 Amoco Lubricants)は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。PP/希釈剤/成核剤の重量比は29.25%/70.7%/0.05%であった。全体の押出速度は約30ポンド/時(13.6kg/時)とし、271℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0095】
溶融物ストリーム2。125rpmの送り速度に維持されている25mm二軸押出機にPP樹脂ペレット及びMillad 3988を供給した。鉱油希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。PP/希釈剤/成核剤の重量比は29.14%/70.7%/0.16%であった。全体の押出速度は約6ポンド/時(2.72kg/時)とし、271℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0096】
2ゾーンのフィルムを、177℃(350°F)に維持されているマルチマニホールドダイから模様付きキャストホイールにキャストした。キャストホイールの温度は60℃(140°F)に維持し、鋳込速さは3.35m/分(11フィート/分)であった。得られたフィルムを溶媒でインライン洗浄してフィルムの鉱油を取り除いてから空気乾燥した。洗浄されたフィルムは長手方向と横断方向にそれぞれ99℃(210°F)及び154℃(310°F)で1.8×2.80に順次に配向された。
【0097】
上記のように調製されたマルチゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜R1901−11を用いて、実施例2に記載の手順に従って被覆された多孔質材料を作製した。被覆された多孔質材料は水湿潤性であった。未処理の多孔質基材及び被覆された多孔質材料の両方の表面エネルギー、バブルポイント孔径及び水流量を本明細書に記載の試験法に従って測定した。結果を表2に記載する。
【0098】
(実施例24)
PCT国際公開特許第WO 2010/078234号に記載のように、40mm二軸押出成形機及び25mm二軸押出成形機の両方を用いて、2ゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜を調製した。2つの押出成形機からの溶融物ストリームをマルチマニホールドダイにより単一のシートにキャストした。
【0099】
溶融物ストリーム1。ポリプロピレン(PP)樹脂ペレット(F008F、ペンシルベニア州PhiladelphiaのSunoco Chemicals)及び成核剤(MILLAD(登録商標)3988、Milliken Chemical、サウスカロライナ州Spartanburg)を、250rpmの送り速度に維持されている40mm二軸押出成形機に供給した。鉱油希釈剤(Mineral Oil Superla White 31 Amoco Lubricants)は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。PP/希釈剤/成核剤の重量比は29.254%/70.7%/0.045%であった。全体の押出速度は約27ポンド/時(12.2kg/時)とし、271℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0100】
溶融物ストリーム2。125rpmの送り速度に維持されている25mm二軸押出機にPP樹脂ペレット及びMillad 3988を供給した。鉱油希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。PP/希釈剤/成核剤の重量比は28.146%/70.7%/0.154%であった。全体の押出速度は約9ポンド/時(4.08kg/時)とし、271℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0101】
177℃(350°F)に維持されているマルチマニホールドダイから2ゾーンのフィルムをキャストし、模様付きキャストホイールに供給した。キャストホイールの温度は60℃(140°F)に維持し、鋳込速さは3.52m/分(11.54フィート/分)であった。得られたフィルムを溶媒でインライン洗浄して鉱油希釈剤を取り除いてから空気乾燥した。洗浄されたフィルムは長手方向と横断方向にそれぞれ99℃(210°F)及び154℃(310°F)で1.6×2.85に順次に配向された。
【0102】
上記のように調製されたマルチゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜R1901−8Bを用いて、実施例2に記載の手順に従って被覆された多孔質材料を作製した。未処理の多孔質基材及び被覆された多孔質材料の両方の表面エネルギー、バブルポイント孔径及び水流量を本明細書に記載の試験法に従って測定した。試験結果を表2に記載する。
【0103】
(実施例25)
PCT国際公開特許第WO 2010/078234号に記載のように、それぞれがホッパー、独立温度制御付きの8つのゾーン及び押出成形機に希釈剤を供給するための液体リザーバを備えた、40mm二軸押出成形機及び25mm二軸押出成形機の両方を用いて、2ゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜を調製した。押出成形機からの2つの溶融物ストリームを1つの開口部を有するマルチマニホールドダイによって単一のシートにキャストした。
【0104】
溶融物ストリーム1。ポリプロピレン(PP)樹脂ペレット(F008F、ペンシルベニア州PhiladelphiaのSunoco Chemicalsより)及び成核剤(MILLAD(登録商標)3988、Milliken Chemical、サウスカロライナ州Spartanburg)を固形物フィーダーを用いてホッパーに供給し、175rpmの送り速度に維持されている40mm二軸押出機にそれらの材料を供給した。鉱油希釈剤(Kaydol 350 Mineral Oil、Brenntag Great Lakes LCC、ミネソタ州St.Paul)は別途、リザーバから押出成形機に供給した。PP/希釈剤/成核剤の重量比は34.247%/65.7%/0.053%であった。全体の押出速度は約32ポンド/時(14.5kg/時)とし、271℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0105】
溶融物ストリーム2。150rpmの送り速度に維持されている25mm二軸押出機にPP樹脂ペレット及びMillad 3988を供給した。鉱油希釈剤は、リザーバから押出成形機内に別個に供給された。PP/希釈剤/成核剤の重量比は29.14%/70.7%/0.16%であった。全体の押出速度は約6ポンド/時(2.72kg/時)とし、254℃から177℃まで減少する温度プロファイルになるように押出機の8つのゾーンを設定した。
【0106】
2ゾーンのフィルムを、177℃(350°F)に維持されているマルチマニホールドダイから模様付きキャストホイールにキャストした。キャストホイールの温度は71℃(160°F)に維持し、鋳込速さは5.79m/分(19.00フィート/分)であった。得られたフィルムを溶媒でインライン洗浄して鉱油希釈剤を取り除いてから空気乾燥した。洗浄されたフィルムは長手方向と横断方向にそれぞれ99℃(210°F)及び160℃(310°F)で1.5×2.70に順次に配向された。
【0107】
上記のように調製されたマルチゾーンの微多孔性ポリプロピレン膜R1933−7を用いて、実施例2に記載の手順に従って被覆された多孔質材料を作製した。未処理の多孔質基材及び被覆された多孔質材料の両方の表面エネルギー、バブルポイント孔径及び水流量を本明細書に記載の試験法に従って測定した。試験結果を表2に記載する。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
本発明の様々な実施形態について詳細に説明した。予見可能及び不測の両方の変更を、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に加えることができることを、当業者であれば理解するであろう。