(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機架橋性ポリマー樹脂が、アセトアセテート、酸、アミン、カルボキシル、エポキシ、ヒロドキシル、イソシアネート、シラン、ビニル、又はそれらの組み合わせの官能基を含む、請求項6に記載の方法。
前記有機架橋性ポリマー樹脂が、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アルキド、ビニル樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
前記基材又は前記コーティングが、アセトアセテート、酸、アミン、カルボキシル、エポキシ、ヒロドキシル、イソシアネート、シラン、ビニル、又はそれらの組み合わせの官能基を有する有機架橋性ポリマー樹脂を含む、請求項10又は11に記載の組成物。
前記有機架橋性ポリマー樹脂が、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アルキド、ビニル樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の以下の実施態様(1又は2以上)の記載は単なる説明であり、発明の範囲、用途等を限定するものではない。本発明を、本明細書に含まれる限定されない定義及び用語により説明する。これらの定義及び用語は、発明の範囲もしくは実施を限定するものではなく、単に説明のために用いる。
【0015】
本発明は、有機汚染の成分を選択的に分解するためのプロテアーゼ酵素の触媒活性に基づき、従って積極的な汚染除去を促進する。有機汚染は一般的に、有機ポリマー、脂肪、オイル、及びタンパク質を含む。コーティング若しくは基材中、又はコーティング若しくは基材上に、残存活性を有して同時に組み込めるプロテアーゼを同定し、そして首尾よく積極的な分解、続いて生物汚染、特に虫由来の汚染の除去を促進することは従来困難であった。本発明者等は、加水分解酵素の特定のファミリー、細菌性サーモリシン(EC3.4.24.27)が、類似のプロテアーゼ、他の近縁種である金属プロテアーゼですら目的を達成できなかったのに対して、首尾よく生物汚染の除去を促進することを思いがけなく見出した。
【0016】
プロテアーゼは、コーティング若しくは基材中、又はコーティング若しくは基材上のいずれかに固定化され、及び生物汚染成分のより小さい分子への分解を触媒する。小さな産物分子は、水、空気、又は他の液体などで穏やかに洗浄することが、表面又はコーティングから生物由来物質の除去を促進するように、表面又はコーティングに弱く付着する。従って、本発明は、表面から生物汚染の積極的な除去のための組成物及び方法として有用性がある。
【0017】
本明細書中の説明が、コーティングを対象にする一方で、本明細書中に記載される材料は、機能的な生物汚染除去の促進のために、それらの表面にコーティングを必要としない基材又は物品でもよいことが理解される。例えば、本明細書中で使用されるように用語「コーティング」は、1又は2以上の基材の表面上に層化するために使用可能である材料を意味し、又は基材材料自体を含んでもよい。例えば、本明細書中で開示される方法及び組成物は、一般的に、例示目的のみのためにコーティングと結合するプロテアーゼを指す。当業者であれば、説明が、基材自体に同様に適用できることを理解する。
【0018】
本発明の方法は、プロテアーゼが、酵素的に活性であり、生物汚染の1又は2以上の成分を分解できるようなプロテアーゼを有するコーティングを提供することを含む。具体的な実施態様では、生物汚染は、虫、場合により虫の体由来のような生物有機物質に基づく。
【0019】
本明細書で定義されるように生物汚染は、有機体が基材又はコーティングに接触した後、後に残される生物有機汚染、跡、又は残留物である。生物汚染は、コーティングが虫の体と接触した後、後に残される跡又は残留物に限定されない。生物有機汚染の他の原因は、実例として虫の羽、脚、若しくは他の付属物、鳥の糞、指紋、又はコーティングが有機体に接触した後、後に残される残留物、又は生物汚染の他の原因である。
【0020】
プロテアーゼは、場合により、サーモリシンが、プロトタイププロテアーゼ(EC3.4.24.27)である細菌サーモリシン様プロテアーゼのM4ファミリーのメンバー又はそれらのアナログなどの細菌金属プロテアーゼである。プロテアーゼは、場合により、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(バチルス サーモプロテオリティカス 変種 ロッコ(Bacillus thermoproteolyticus Var. Rokko))由来の細菌中性サーモリシン様プロテアーゼ(TLP)(実例として、Amano Enzyme U.S.A., Co.(Elgin, IL)から入手できる「サモアーゼC160(Thermoase C160)」の商標の下販売される)又はそれらのアナログである。プロテアーゼは、場合により、de Kreig, et al., J Biol Chem, 2000; 275(40):31115-20中に記載された任意のプロテアーゼであり、その主題は、引用により本明細書に組み込まれる。プロテアーゼの実例は、特に公知のバチルス セレウス(Bacillis cereus)(受託番号P05806)、ラクトバチルス種(Lactobacillis sp.)(受託番号Q48857)、バチルス メガテリウム(Bacillis megaterium)(受託番号Q00891)、バチルス種(Bacillis sp.)(受託番号Q59223)、アリシクロバチルス アシドカルダリウス(Alicyclobacillis acidocaldarious)(受託番号Q43880)、バチルス カルドリティカス(Bacillis caldolyticus)(受託番号P23384)、バチルス サーモプロテオリティカス(Bacillis thermoproteolyticus)(受託番号P00800)、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)(受託番号P43133)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)(受託番号P06142)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)(受託番号P06832)、リステリア モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)(受託番号P34025;P23224)由来のサーモリシン様プロテアーゼが挙げられる。本明細書中で挙げられたそれぞれの受託番号の配列は、引用により本明細書に組み込まれる。本明細書中で使用可能な任意のプロテアーゼのクローニング、発現、及精製方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989; Current Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992(周期的更新あり); 及びShort Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., 52 ed., Wiley-Interscience, New York, 2002中に開示される方法により、当該技術分野において実例として通常行われる方法により達成でき、それぞれの主題は引用により本明細書に組み込まれる。
【0021】
プロテアーゼのアナログは、場合により、プロテアーゼの断片である。プロテアーゼのアナログは、プロテアーゼの天然又は合成基材に関してある程度の活性を有するポリペプチドである。アナログは、場合により、野生型プロテアーゼの0.1%〜200%の間の活性を有する。
【0022】
プロテアーゼの具体的な例では、例示的に、10000U/gのプロテアーゼ活性以上を有し、ここで1U(ユニット)は、37℃、pH7.2で反応を行った場合に、ミルクカゼインから非タンパク質消化生成物を遊離し(最終濃度0.5%)、初期の反応段階で1分あたり1μmolのチロシンに相当するフォリンカラーを与える酵素の量と規定される。例示的に、プロテアーゼ活性は、10000PU/g〜1500000U/g以上の間の範囲である。より低いプロテアーゼ活性が使用可能であることが理解される。プロテアーゼ活性は、場合により、300000U/gを超える。場合により、プロテアーゼ活性は、300000U/g〜2000000U/g以上の間である。
【0023】
プロテアーゼは、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」(本明細書中で同義語として使用される)であり、野生型プロテアーゼの天然又は合成基質に関して、ある程度の活性を有する2以上のアミノ酸を含有する天然又は合成化合物を意味することを意図する。野生型プロテアーゼは、天然で生物中に見られるアミノ酸配列と同じ配列を有するプロテアーゼである。野生型プロテアーゼの実例は、ジェンバンク受託番号P06874及び配列番号1で見出される。
【0024】
プロテアーゼは、1又は2以上の補因子イオン又はタンパク質と機能する。補因子イオンは、実例として亜鉛、コバルト、又はカルシウムである。
【0025】
プロテアーゼ活性のスクリーニング方法は公知であり、当該技術分野において一般的である。実例として、プロテアーゼタンパク質又はそのアナログにおけるプロテアーゼ活性のためのスクリーニングは、例示的に、プロテアーゼの天然又は合成基質とプロテアーゼ又はそのアナログとを接触すること、及び基質の酵素的切断を測定することを含む。本目的のための例示的な基質は、プロテアーゼにより切断され、公知の技術により直ちに測定されるフォリン陽性アミノ酸及びペプチド(チロシンとして計算)を遊離するカゼインを含む。Bachem AG, Bubendorf, Switzerlandから入手できる合成基質フリルアクリロイル化(furylacryloylated)トリペプチドである3‐(2‐フリルアクリロイル)‐L‐グリシル‐L‐ロイシン‐L‐アラニンが使用可能である。
【0026】
プロテアーゼ又はそのアナログ中に存在するアミノ酸は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、及びチロシンを含む。同様に、α‐アスパラギン、2‐アミノブタン酸若しくは2‐アミノ酪酸、4‐アミノ酪酸、2‐アミノカプリン酸(2‐アミノデカン酸)、6‐アミノカプロン酸、α‐グルタミン、2‐アミノヘプタン酸、6‐アミノヘキサン酸、α‐アミノイソ酪酸(2‐アミノアラニン)、3‐アミノイソ酪酸、β‐アラニン、アロ(allo)‐ヒドロキシリシン、アロ(allo)‐イソロイシン、4‐アミノ‐7‐メチルヘプタン酸、4‐アミノ‐5‐フェニルペンタン酸、2‐アミノピメル酸、γ‐アミノ‐β‐ヒドロキシベンゼンペンタン酸、2‐アミノスベリン酸、2‐カルボキシアゼチジン、β‐アラニン、β‐アスパラギン酸、ビフェニルアラニン、3,6‐ジアミノヘキサン酸、ブタン酸、シクロブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、N5‐アミノカルボニルオルニチン、シクロペンチルアラニン、シクロプロピルアラニン、3‐スルホアラニン、2,4‐ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、2,4‐ジアミノ酪酸、ジフェニルアラニン、N,N‐ジメチルグリシン、ジアミノピメル酸、2,3‐ジアミノプロパン酸、S‐エチルチオシステイン、N‐エチルアスパラギン、N‐エチルグリシン、4‐アザ‐フェニルアラニン、4‐フルオロ‐フェニルアラニン、γ‐グルタミン酸、γ‐カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシ酢酸、ピログルタミン酸、ホモアルギニン、ホモシステイン酸、ホモシステイン、ホモヒスチジン、2‐ヒドロキシイソ吉草酸、ホモフェニルアラニン、ホモロイシン、ホモプロリン、ホモセリン、2‐ヒドロキシペンタノン酸、5‐ヒドロキシリシン、4‐ヒドロキシプロリン、2‐カルボキシオクタヒドロインドール、3‐カルボキシイソキノリン、イソバリン、2‐ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、メルカプト酢酸、メルカプトブタン酸、サルコシン、4‐メチル‐3‐ヒドロキシプロリン、メルカプトプロパン酸、ノルロイシン、ニペコチン酸、ノルチロシン、ノルバリン、ω‐アミノ酸、オルニチン、ペニシラミン(3‐メルカプトバリン)、2‐フェニルグリシン、2‐カルボキシピペリジン、サルコシン(N‐メチルグリシン)、2‐アミノ‐3‐(4‐スルホフェニル)プロピオン酸、1‐アミノ‐1‐カルボキシシクロペンタン、3‐チエニルアラニン、ε‐N‐トリメチルリシン、3‐チアゾリルアラニン、4‐カルボン酸、α‐アミノ‐2,4‐ジオキソピリミジンプロパン酸、及び2‐ナフチルアラニンなどのあまり一般的でない天然アミノ酸、変性アミノ酸又は合成化合物を含む。リパーゼは、2〜約1000の間のアミノ酸を有し、又は約150〜350000ダルトンの範囲の分子量を有するペプチドを含む。
【0027】
プロテアーゼは、当該分野において公知の様々な方法によって得られ、その実例として、細胞若しくは有機体からの単離、化学合成、核酸配列の発現、及びタンパク質の部分加水分解を含む。ペプチド合成の化学的方法は、当該分野において公知であり、固相ペプチド合成及び溶液相ペプチド合成、又はHackeng, TM, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 1997; 94(15):7845-50の方法を含み、これらの主題は引用により本明細書に組み込まれる。プロテアーゼは、天然若しくは非天然タンパク質であってよい。用語「天然(naturally occurring)」とは、細胞、組織若しくは有機体に内生するタンパク質を意味し、対立遺伝子変異体を含む。非天然ペプチドは、その天然に関連し又は修飾した有機体とは別に合成又は製造され、及び非修飾細胞、組織又は有機体中で見出されない。
【0028】
修飾及び変更をプロテアーゼの構造中に行うことができ、プロテアーゼとして同様の特徴を有する分子が得られる(例えば、保存的アミノ酸置換)。例えば、特定のアミノ酸は、相当量の活性を損なうことなく、配列中の他のアミノ酸と置換でき、又は場合により、非修飾プロテアーゼの活性を低下若しくは増加できる。ポリペプチドの生物学的な機能的活性を規定するのは、相互作用的な能力及びポリペプチドの特性であるため、特定の種のアミノ酸配列置換をポリペプチド配列中で行うことができ、それにもかかわらず同様の又は他の望ましい特性を有するポリペプチドを得ることができる。
【0029】
そのような変更を行う場合、アミノ酸の疎水性親水性指標(hydropathic index)を考慮できる。ポリペプチドに関して、相互に作用する生物学的な機能を付与する疎水性親水性アミノ酸指標の重要性は、一般的に当該技術分野において理解されている。特定のアミノ酸が、同様の疎水性親水性指標又はスコアを有する他のアミノ酸と置換でき、同様の生物活性を有するポリペプチドを更に生じることは公知である。それぞれのアミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が与えられる。それらの指標は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/システイン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リシン(−3.9)、及びアルギニン(−4.5)である。
【0030】
アミノ酸の相対的な疎水性親水性特性が、結果として得られたポリペプチドの二次構造を決定し、そしてそれは同じく、ポリペプチドと、例えば酵素、基質、受容体、抗体、抗原などの他の分子の相互作用を定義すると考える。アミノ酸は、同様の疎水性親水性指標を有する他のアミノ酸により置換でき、機能的に同等のポリペプチドを更に得ることは当該技術分野において公知である。そのような変更において、疎水性親水性指標が、±2以内、±1以内、及び±0.5以内のアミノ酸を使用する置換が、場合により使用される。
【0031】
アミノ酸などの置換は、親水性に基づいてまた行うことができる。以下の親水性値が、アミノ酸残基に与えられる。アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、プロリン(−0.5±1)、スレオニン(−0.4)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)、トリプトファン(−3.4)である。アミノ酸が、同様の親水性値を有する他のアミノ酸と置換でき、さらに酵素的に同等のポリペプチドが得られることが理解される。そのような変更において、親水性値が±2以内、±1以内、及び±0.5以内のアミノ酸の置換が、場合により使用される。
【0032】
アミノ酸置換は場合により、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。様々な前述の特性を考慮する置換の実例は、当業者に周知であり、(当初の残基:置換基の例):(Ala:Gly,Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln,His)、(Asp:Glu,Cys,Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn,Gln)、(Ile:Leu,Val)、(Leu:Ile,Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu,Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:Trp,Phe)、及び(Val:Ile,Leu)を含む。本開示の実施態様は、従って、上述したようにポリペプチドの機能的又は生物学上の相当物を企図する。特に、ポリペプチドの実施態様は、野性型プロテアーゼと約50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%配列が同一であるアナログを含み得る。
【0033】
上記特徴は、場合により、低減された又は改善された酵素活性を有するプロテアーゼを製造する場合、考慮されることが更に理解される。実例として、プロテアーゼタンパク質中の基質結合部位、エキソサイト、補因子結合部位、触媒部位、又は他の部位における置換は、基質に対する酵素の活性を変化するかもしれない。そのような置換を考慮するにあたって、他の公知の天然もしくは非天然プロテアーゼの配列を考慮してもよい。実例として、Miki, Y, et al., Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 1996; 1:191-199で行われるような、サーモリシン中のAsp213に対応する突然変異体も使用可能であり、この主題は引用により本明細書に組み込まれる。場合により、セリン単独又はG8C/N60C/S65Pの置換と共になど、L144のサーモリシンにおける置換は、野性型酵素よりも5〜10倍触媒効率を増加するために使用可能である。Yasukawa, K, and Inouye, K, Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Proteins & Proteomics, 2007; 1774:1281-1288)、この主題は引用により本明細書に組み込まれる。N116D、Q119R、D150E及びQ225Rのバチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の細菌中性プロテアーゼにおける突然変異体及び他の突然変異体は、同様に触媒活性を増加する。De Kreig, A, et al., J. Biol. Chem., 2002; 277:15432-15438、この主題は引用により本明細書に組み込まれる。De Kreigはまた、プロテアーゼの触媒活性を増加又は低下する多重置換を含むいくつかの置換を教示する。Id. and De Kreig, Eur J. Biochem, 2001; 268(18):4985-4991、この主題は引用により本明細書に組み込まれる。これら又は他の部位における他の置換は場合により、酵素活性に同様の効果をもたらす。部位特異的突然変異を行い、De Kreig, Eur J. Biochem, 2001;268(18):4985-4991の方法によるような後のタンパク質活性のスクリーニングは、当業者のレベル内であり、通常の業務である。本引用は、同様に引用により本明細書に組み込まれる。
【0034】
プロテアーゼは、実例として組み換え体である。プロテアーゼをコードする核酸配列をクローニングし、合成し、又は他の取得する方法は、同様にリパーゼに適用でき、公知及び当該技術分野において一般的である。同様に、細胞形質転換及びタンパク質発現方法も同じく公知であり、本明細書において適用できる。実例として、配列番号1のタンパク質配列をコードするcDNAは、受託番号M11446及び配列番号2で見出されるヌクレオチド配列である。
【0035】
プロテアーゼは、関連するタグ、修飾、融合ペプチド中などの他のタンパク質、又は当該技術分野において公知の他の修飾若しくは組み合わせと共発現してもよい。実例としてタグは、6XHis、FLAG、ビオチン、ユビキチン、SUMO、又は当該技術分野において公知の他のタグを含む。タグは、ファクターXa、トロンビン、Lifesensors, Inc., Malvern, PAから入手できるようなSUMOstarタンパク質、又はトリプシンを実例として含む、当該技術分野において公知の酵素により切断できる酵素切断配列を介してリパーゼ又は関連するタンパク質と結合することなどにより、例示的に切断できる。化学的切断が、適当な切断可能リンカーを伴って、同様に使用可能であることが更に理解される。
【0036】
タンパク質発現は、例示的にプロテアーゼ核酸配列、実例として配列番号2の転写、プロテアーゼ核酸配列又はそれらのアナログから転写されたRNAの翻訳から達成される。核酸配列のアナログは、タンパク質に翻訳された場合、プロテアーゼのアナログを生成する任意の配列である。タンパク質の発現は、場合により、大腸菌(E. coli)、ヒーラ細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞などの細胞に基づく系で行われる。無細胞発現系が同様に使用可能であることが理解される。
【0037】
プロテアーゼの多くのアナログが使用可能であり、アミノ酸置換、変更、修飾、又はプロテアーゼタンパク質配列の機能を増加し、低下し、又は変えない他のアミノ酸変更を含む本発明の範囲内であることが理解される。いくつかの翻訳後修飾は、同様に本発明の範囲内として想定され、実例として、非天然アミノ酸の取り込み、リン酸化、グリコシル化、ビオチン標識、フルオロフォア、ルミフォア、放射性基(radioactive group)、抗原、又は他の分子などのペンダント基の付加を含む。
【0038】
本発明の方法は、基材自体内に又は基材上のコーティング内に組み込まれた1又は2以上のプロテアーゼである本発明の組成物を使用する。プロテアーゼ酵素は、場合により、基材若しくはコーティング材料と非共有結合及び/又は共有結合し、又はそうでなければ、封入されたプロテアーゼを製造するためのような製造の間に表面と結合することにより、若しくは基材/コーティング材料と混合することなどにより、それとともに結合する。いくつかの実施態様では、プロテアーゼは、プロテアーゼと1若しくは2以上の基材若しくはコーティング材料の成分との間の直接共有結合性相互作用により、又は米国特許出願公開第2008/0119381号中に記載されるように、結合部分を介した結合のいずれかにより、基材又はコーティング材料と共有的に結合し、これらの主題は引用により本明細書に組み込まれる。
【0039】
基材又はコーティングとプロテアーゼとを結合するための方法はいくつかある。その1つは、共有結合の適用に関係する。特に、プロテアーゼの遊離アミノ基は、基材の活性基と結合してもよい。そのような活性基は、アルコール、チオール、アルデヒド、カルボン酸、無水物、エポキシ、エステル、又はそれらの任意の組み合わせを含む。プロテアーゼを組み込むこの方法は、優れた利点をもたらす。第一に、共有結合はプロテアーゼを基材と永久的につなぎ、従ってプロテアーゼの漏出の全くない、たとえあったとしてもかなり少ない最終組成物の一体部分としてそれらを配置する。第二に、共有結合は、酵素寿命を長くする。時間と共に、タンパク質は一般的に、それらのポリペプチド鎖の変性のために活性を失う。共有結合などの化学結合は、効果的にそのような変性を制限し、従ってタンパク質の寿命を向上させる。タンパク質の寿命は一般的に、ある期間にわたって、遊離又は物理的に吸着されたタンパク質と共有的に固定化されたタンパク質の活性低下の量を比較することにより決定される。
【0040】
プロテアーゼは場合により、基材ネットワークを通して均質に分散し、実質的に均質なタンパク質プラットフォームを形成する。そうすることで、プロテアーゼは、重合性基で最初に修飾してもよい。修飾されたプロテアーゼは、界面活性の存在下、有機溶剤中に可溶化してもよく、従って有機溶液中のメチルメタクリレート(MMA)又はスチレンなどのモノマーとのその後の重合に関与してもよい。生じた組成物は場合により、ネットワークを通して均質に分散されたプロテアーゼ分子を含む。
【0041】
プロテアーゼは場合により、基材の表面に結合してもよい。約100%の表面被覆率に相当する1つのプロテアーゼの結合は、直径100から1000nmまでの範囲を有するポリスチレン粒子で達成された。
【0042】
材料にプロテアーゼを結合させる方法は、リパーゼ中及び材料成分中に存在する官能基に依拠して、必然的に変化するであろう。そのような方法は多く存在する。例えば、他の物質にタンパク質(酵素など)を結合するための方法は、O'Sullivan et al, Methods in Enzymology, 1981; 73:147-166及びErlanger, Methods in Exzymology, 1980; 70:85-104中に記載され、それぞれの主題は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0043】
プロテアーゼは場合により、基材上に層をなすコーティング中に存在し、ここでプロテアーゼは場合により、コーティング材料中に封入され、それとともに混合され、コーティング材料内で修飾され及び一体化され、又はプロテアーゼと基材材料との間の相互作用のために記載された機序と同様にコーティング上に積層される。活性基材又はコーティングを形成するために、プロテアーゼと相互作用のために使用可能な材料は、実例として有機ポリマー材料を含む。これらの材料及びプロテアーゼの組み合わせは、基材材料又はコーティングとして使用されるタンパク質‐ポリマー複合材料を形成する。
【0044】
タンパク質‐ポリマー複合材料を調製するための方法は、生物活性有機溶剤系タンパク質‐ポリマー複合材料を製造するために、プロテアーゼ水溶液及び非水性有機溶剤系ポリマーの使用を実例として含む。
【0045】
タンパク質‐ポリマー複合材料を調製するための方法は、プロテアーゼ及びタンパク質‐ポリマー複合材料の機能性を減少する生物活性タンパク質の大きな凝集体を形成することとは対照的に、硬化前に溶剤系樹脂中に、及び複合材料中にプロテアーゼの分散により例示的に特徴付けられる。プロテアーゼは場合により、リパーゼが、他の生物活性タンパク質と非結合であり及び/又は結合するタンパク質の相対的に小さい粒子を形成するように、タンパク質‐ポリマー複合材料中に分散される。実例として、タンパク質‐ポリマー複合材料中のリパーゼ粒子の平均粒子サイズは、10μm未満(平均直径)、例えば1nm〜10μmのすべてを含む範囲である。
【0046】
硬化性のタンパク質‐ポリマー組成物は、場合により、2成分溶剤系(2K SB)組成物である。場合により、1成分系(1K)が、同様に使用可能である。例示的に、プロテアーゼは、ラテックス若しくはエナメル塗料、ニス、ポリウレタンゲル、又は他のコーティング材料などのコーティング材料中に封入される。実例として、塗料中に酵素を組み込むための例は、米国特許第5,998,200号中に示され、この主題は引用により明細書に組み込まれる。
【0047】
2成分系において、2成分は場合により、使用前に手短に混合し、例えば、生物活性クリアコートなどのプロテアーゼを含有するコーティングを形成するために、基材に硬化性のタンパク質‐ポリマー組成物を塗布する。一般的に記載されるように、第一成分は架橋性ポリマー樹脂を含み、第二成分は架橋剤を含む。従って、エマルションは、架橋性樹脂を含む第一成分であり、架橋剤は、硬化性のタンパク質‐ポリマー組成物を製造するために一緒に混合される第二成分である。
【0048】
本発明の方法及び組成物中に含まれるポリマー樹脂は、コーティング又は基材組成物について有用な任意のフィルム形成ポリマーでよく、実例としてクリアコート組成物である。そのようなポリマーは、実例として、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、及び任意のそれらの組み合わせ、又は他のポリマーの組み合わせを含む。
【0049】
具体的な実施態様では、ポリマー樹脂は、架橋性である。実例として、架橋性ポリマーは、架橋性ポリマーの特徴を示す官能基を有する。そのような官能基の例は、アセトアセテート、酸、アミン、カルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、イソシアネート、シラン、ビニル、他の使用可能な官能基、及びそれらの組み合わせを実例として含む。
【0050】
有機架橋性ポリマー樹脂の例は、アミノプラスト、メラミンホルムアルデヒド、カルバメート、ポリウレタン、ポリアクリレート、エポキシ、ポリカーボネート、アルキド、ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0051】
架橋剤は場合により組成物中に含まれる。具体的な架橋剤は、使用される具体的なポリマー樹脂に依拠して選択される。架橋剤の非限定的な例として、イソシアネート官能基、エポキシ官能基、アルデヒド官能基、及び酸性官能基などの官能基を有する化合物を含む。
【0052】
タンパク質‐ポリウレタン複合材料の具体的な実施態様では、ポリマー樹脂はヒドロキシル官能基化アクリルポリマーであり、架橋剤はポリイソシアネートである。
【0053】
ポリイソシアネート、場合によりジイソシアネートは、本発明の実施態様により、ヒドロキシル官能基化アクリルポリマーと反応する架橋剤である。脂肪族ポリイソシアネートは、自動車におけるクリアコート塗布などのクリアコート塗布のためのタンパク質‐ポリマー複合材料の製造方法において使用される好ましいポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートの非限定的な例は、1,4‐ブチレンジイソシアネート、1,4‐シクロヘキサンジイソシアネート、1,2‐ジイソシアネートプロパン、1,3‐ジイソシアネートプロパン、エチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、1,4‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジフェニルメタン4,4’‐ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’‐ジイソシアネートのイソシアヌレート、メチレンビス‐4,4’‐イソシアネートシクロヘキサン、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6‐ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、イソホロンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、p‐フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート、トリフェニルメタン4,4’,4’’‐トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、及びメタキシレンジイソシアネートを含む。硬化様式は一般的に、従来の硬化性ポリマー組成物に使用されているものである。
【0054】
本発明の実施態様で使用されるプロテアーゼ‐ポリマー複合材料は、場合により、熱硬化性タンパク質‐ポリマー複合材料である。例えば、基材又はコーティング材料は、場合により熱硬化により硬化される。熱重合開始剤は、実例として、有機過酸化物及びアゾ化合物などのフリーラジカル開始剤を含む。有機過酸化物熱開始剤の例は、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、及びラウリルペルオキシドを実例として含む。アゾ化合物熱開始剤の例は、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリルである。
【0055】
従来の硬化温度及び硬化時間が、本発明の実施態様による方法において使用できる。例えば、特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、硬化前に、架橋剤の官能基が、総量の5%未満に減少する基準により決定される。架橋剤の官能基は、FT‐IR又は他の好適な方法により、定量的に特徴付けることができる。例えば、本発明のタンパク質‐ポリマー複合ポリウレタンのための、特定の温度又は特定の硬化条件下での硬化時間は、硬化前に、架橋剤の官能基NCOが、5%未満に減少する基準により決定できる。NCO基は、FT‐IRにより、定量的に特徴付けることができる。特定の樹脂に関して硬化の程度を評価するための追加的な方法は、当該技術分野において周知である。実例として、硬化は、溶剤の気化、又は紫外線、電子線、マイクロ波、可視光線、赤外線、又はガンマ線などの化学線に供することを含んでもよい。
【0056】
1又は2以上の添加剤は、場合により、プロテアーゼ‐ポリマー複合材料及び/又は有機溶剤の混合剤、並びにポリマー樹脂、リパーゼ水溶液、エマルション及び/又は硬化性組成物の特性を修飾するために含む。そのような添加剤の具体例は、UV吸収剤、可塑剤、湿潤剤、防腐剤、界面活性剤、潤滑剤、色素、充填剤、及びたわみ抵抗を増加するための添加剤を含む。
【0057】
プロテアーゼを含有する基材又はコーティングは、実例として、エマルションを生成するために混合された、ポリマー樹脂、界面活性剤及び非水性有機溶剤の混合剤である。用語「界面活性剤(surfactant)」は、それが溶解している液体中の表面張力を減少する界面活性剤、又は2つの液体間、若しくは液体と固体の間の界面張力を減少する界面活性剤を意味する。
【0058】
使用される界面活性剤は、両性、シリコーン系、フッ素系界面活性剤、アニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤を含む任意の種類が可能であり、例えばK. R. Lange, Surfactants: A Practical Handbook, Hanser Gardner Publications, 1999; 及びR. M. Hill, Silicone Surfactants, CRC Press, 1999に記載されており、引用により本明細書に組み込まれる。アニオン性界面活性剤の例は、実例として、アルキルスルホネート類、アルキルアリールスルホネート類、アルキルサルフェート類、アルキル及びアルキルアリールジスルホネート類、スルホン化脂肪酸類、ヒドロキシアルカノール類のサルフェート類、スルホコハク酸エステル類、ポリエトキシ化アルカノール類及びアルキルフェノール類のサルフェート類及びスルホネート類を含む。カチオン性界面活性剤の例は、4級アミンオキシド界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は、アルコキシレート類、アルカノールアミド類、ソルビトール又はマンニトールの脂肪酸エステル、及びアルキルグルカミド類を含む。シリコーン系界面活性剤の例は、シロキサンポリオキシアルキレンコポリマーを含む。
【0059】
場合により基材又はコートされた基材である表面が、生物汚染を生じるのに生物に関する物質と接触する場合、プロテアーゼ酵素又は酵素の組み合わせは、汚染又はそれらの成分と接触する。接触は、プロテアーゼの酵素活性を可能にし、基材又はコーティングから汚染成分の除去を改善するためにそれと相互作用し、汚染成分を酵素的に変化させる。
【0060】
酵素含有基材又はコーティングは、ユニット/cm
2で一般的に表される界面活性を有する。基材及びコーティングは、場合により、0.0075ユニット/cm
2超の実用的な界面活性を有する。いくつかの実施態様では、界面活性は、0.0075ユニット/cm
2〜0.05ユニット/cm
2の範囲である。場合により、界面活性は、0.0075ユニット/cm
2〜0.1ユニット/cm
2の範囲である。場合により、界面活性は、0.01ユニット/cm
2〜0.05ユニット/cm
2の範囲である。
【0061】
汚染除去を促進するための本発明の方法は、プロテアーゼが活性である任意の温度で機能するであろうことが理解される。場合により、本発明の方法は、4℃で行われる。場合により、本発明の方法は、25℃で行われる。場合により周囲温度で行われる。本発明の方法は、場合により、4℃から125℃まで、又はその中の任意の単一の温度若しくは範囲で行われることが理解される。
【0062】
基材又は基材上のコーティング材料、場合により、水又は他の流体リンス剤と組み合わせたプロテアーゼの存在は、除去を促進するために汚染を分解する。
【0063】
従来の生物学的手法を含む方法が、本明細書に記載される。そのような方法は、一般的に当該技術分野において公知であり、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989及びCurrent Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992(周期的更新あり)などの方法論論文において詳細に記載されている。
【0064】
以下の非限定的な実施例により、本発明の様々な態様を説明する。実施例は説明のためであり、本発明のいかなる実施も限定するものではない。本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく変形及び修正ができることを理解するであろう。
【実施例】
【0065】
実施例1
基材をコーティングするために使用可能である材料を含むバチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来の細菌中性プロテアーゼの製造。
【0066】
材料:凍結乾燥コオロギをペット用品店で購入する。コオロギの体は、58.3%のタンパク質を含むことが報告されている(D. Wang, et al., Entomologic Sinica, 2004; 11:275-283、この主題は引用により本明細書に組み込まれる)。α‐アミラーゼ、リパーゼPS、プロテアーゼN、プロテアーゼA、プロテインSD AY‐10、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLP(サモアーゼC160)、及びサモアーゼGL30(バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPの低活性製剤)を、AMANO Enzyme株式会社(Nagoya, JAPAN)から入手する。ポリアクリレート樹脂デスモフェン(Desmophen)A870 BA、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づく多官能性脂肪族ポリイソシアネート樹脂デスモジュール(Desmodur)N3600を、Bayer社(Pittsburgh, PA)から入手する。界面活性剤BYK‐333を、BYK-Chemie(Wallingford, CT)から入手する。1‐ブタノール及び1‐ブチルアセテートを、Sigma-Aldrich社(Missouri, USA)から入手する。アルミニウムペイント試験パネルを、Q-Lab社(Cleveland, USA)から入手する。実験に関係する他の全ての試薬は、分析グレードのものである。
【0067】
酵素に基づく2K SB PUコーティングを、引き下ろし(draw-down)方法、又は噴霧塗布のいずれかにより調製し、続く生物汚染除去試験に使用する。それぞれの酵素を、DI水に溶解し、全ての水系(WB)コーティングに関して、200mg/mlの最終酵素溶液濃度にする。溶剤系(SB)酵素調製コーティングに関して、50mg/mlの酵素を使用する。1.5gのバチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPを含有する150mlの脱イオン水溶液を、限外濾過により、最初に精製する(分子量カットオフ30kDa、すべての液体を氷上で保存した)。
【0068】
引き下ろし方法又はコーティング調製に関して、界面活性剤BYK333を1‐ブタノールで希釈し、17重量%の濃度にする。2K SB PUコーティングの樹脂部分を、20mlガラスバイアル中で、2.1gのデスモフェンA870と0.5mlの1‐ブチルアセテート及び0.1mlの界面活性剤とを混合することにより調製する。溶液を、マイクロスパチュラを使用して1分間混合し、続いて0.6mlの酵素溶液(又は酵素を含まない対照コーティング用にDI水)を添加し、続いて更に1分間混合する。この溶液をその後、0.8gのNA3600を有する20mlガラスバイアルに注入する。この調合物は、6重量%の酵素濃度を生じる。予備洗浄したアルミニウム試験パネルを、湿潤膜厚2mmで、引き下ろし塗布器を使用して酵素含有コーティング材料でコートする。コーティングパネルを80℃で30分間焼成し、その後、周囲温度で7日間硬化する。噴霧塗布方法に関して、コーティングを
図1に記載したように実質的に調製する。
【0069】
実施例2
生物汚染の調製及びコートされた基材への塗布。実験手順の典型的な略図を、
図2に示す。60gの凍結乾燥コオロギを、ミキサー(Oster, 600 watt)で10分間切り刻んで粉末にする。2gのコオロギ粉末と6mlのDI水とを激しく混合することにより、汚染溶液を調製する。均一な間隔のテンプレートを使用して、コーティング表面に汚染を塗布する。コオロギ汚染を40℃で5分間乾燥し、続いてコーティングパネルをガラス皿に載せ、室温で様々な時間、300rpmで振盪しつつ200mlのDI水で洗浄する。汚染除去の時間を記録する。確率的誤差を低減するために、最初及び最後に除去された領域の時間を含めない。8つの汚染スポットの平均洗浄時間を、汚染除去時間として平均する。
【0070】
実施例3
乾燥時間は汚染除去時間に影響を与える。実施例1のようなコーティング及び実施例2のような虫汚染で調製された、汚染されたコートされた基材パネルを、様々な時間、40℃で乾燥させる。汚染領域の洗浄時間は、乾燥時間に強力に依拠する。対照のプロテアーゼを含まないコーティングでは、5分間乾燥した後、3時間洗浄により除去されない、強固に付着した汚染を生じる(表1)。
【0071】
【表1】
【0072】
バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPを含むコートされたパネルに関して、洗浄時間はより長い乾燥時間で増加するが、同等の乾燥時間で、対照と比較して、プロテアーゼ含有コーティングは、改善された汚染除去を劇的に促進する(表2)。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例4
増加した洗浄強度は、汚染除去時間を低減する。実施例1及び2のように調製されたパネルを、様々な洗浄強度に供する。バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLP含有コーティングをした基材に関して、洗浄時間の減少を、洗浄強度を増加することにより達成する(表3)。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例5
様々な酵素を含むコーティングを、実施例1のように調製する。それぞれのコーティングについて、コートされた基材にコオロギ汚染を塗布し、40℃で5分間乾燥し、300rpmの強度で水中で洗浄する標準プロトコルを使用して、平均洗浄時間の測定により能力を分析する。対照及び様々なプロテアーゼを含むコーティングを、粗さ、接触角、及び光沢に関しても評価する。結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティングは、他のコーティング(酵素なし、リパーゼPS、及びα‐アミラーゼ)と比較して、虫の体汚染に対して、改善された自己洗浄機能を有する。更に、コーティング表面特性は、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティング及び対照、リパーゼPS、又はα‐アミラーゼに基づくコーティングの間にほとんど相違はない。これらの結果は、コーティングの物理的特徴が、コーティング能力に特異的に影響を与えないことを示す。
【0079】
それぞれの酵素を含むコーティングの洗浄時間を比較する。
図3は、対照SBコーティング(酵素なし、左パネル)とバチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティング(右パネル)の比較を示す。30分の洗浄後、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティングは、顕著な汚染除去を示す。対照は、3時間の洗浄で顕著な汚染除去を示さない。
【0080】
同様の結果を、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティングとリパーゼ及びα‐アミラーゼに基づくコーティングの比較において観察する。
図4及び5それぞれにおいて、リパーゼ及びα‐アミラーゼ(左パネル)は、3時間の洗浄期間を通して、残っている虫汚染の顕著な付着を示す。対照的に、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティングは、最初の30分の洗浄期間後、劇的な汚染除去を示し、3時間までに実質的に完全な汚染除去を示す。
【0081】
実施例6
プロテアーゼの機能について表面加熱の影響。実施例1のようにバチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティングでコートされたパネルを、100℃で10日間焼成し、その後、表面酵素活性の変化を測定する。プロテアーゼ含有コーティングのタンパク質分解表面活性を、Folin and Ciocalteau, J. Biol. Chem., 1927; 73: 627-50の方法に従って測定する。この主題は、引用により本明細書に組み込まれる。簡潔には、1mlの2%(w/v)カゼイン含有リン酸ナトリウム緩衝溶液(0.05M、pH7.5)を、200μlの酢酸ナトリウム、5mM酢酸カルシウム(10mM、pH7.5)と一緒に基質として使用する。基質溶液を3分間ウォーターバスで予備インキュベートし、37℃に達する。反応を、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPに基づくコーティング(1.2×1.9cm
2)でコートされた試験プレートを1枚添加することにより開始し、続いて200rpmで10分間振盪し、その時点で1mlの110mMトリクロロ酢酸(TCA)溶液を添加することにより、反応を停止する。遠心分離前に、混合物を37℃で30分間インキュベートする。400μlのTCA可溶性画分中のチロシン等量を、200μlの25%(v/v)フォリン‐チオカルト(Folin-Ciocalteau)試薬、及び1mlの0.5M炭酸ナトリウムを使用して、660nmで測定する。1ユニットの活性は、37℃で1分あたり1.0μmolのチロシンに相当する吸光度を生じるカゼインを加水分解する酵素量として規定する。この結果をユニット/cm
2に変換する。
図6は、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLP表面活性が、長期間の高温焼成後、約50%低下したことを示す(
図6A)。同時に、汚染洗浄時間も増加する(
図6B)。
【0082】
実施例7
サーモリシン、並びにバチルス セレウス(Bacillis cereus)、ラクトバチルス種(Lactobacillis sp.)、バチルス メガテリウム(Bacillis megaterium)、アリシクロバチルス アシドカルダリウス(Alicyclobacillis acidocaldarious)、バチルス カルドリティカス(Bacillis caldolyticus)、バチルス サーモプロテオリティカス(Bacillis thermoproteolyticus)、バチルス ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、及びリステリア モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)由来のサーモリシン様タンパク質の0.2%(A)、2.0%(B)、4.0%(C)、6.0%(D)、及び8.0%(E)の酵素ロード濃度で、実施例1のように基材パネル上に調製され及びコートされたコーティングにおいて、実施例2のように塗布された虫汚染で、酵素ロードを測定する。パネルを40℃で5分間焼成し、3時間300rpmで洗浄する。増加したプロテアーゼロードは、増加した洗浄能力と相関する(
図7A‐Eは、バチルス ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)TLPの結果を示す)。
【0083】
実施例8
虫汚染除去に関する様々なプロテアーゼ種の比較。コーティングを、想定されるシステインプロテアーゼとしてプロテアーゼN(バシロリシン(bacillolysin))、想定されるセリンプロテアーゼとしてプロテインSD AY10(バチルス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のスブチリシン(subtilisin))、典型的な金属プロテアーゼとしてプロテアーゼA、並びにサーモリシン及び実施例7のサーモリシン様タンパク質を使用して実施例1のように調製し、及び実施例2のように虫汚染を伴って実施例1のように基材上をコートする。異なる酵素を含むコーティングを、40℃で5分間焼成後、3時間300rpmで洗浄して比較した。驚くべきことに、サーモリシンに基づくコーティングのみが、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、又は他の金属プロテアーゼを含むコーティングによっては観察されない改善された自己洗浄機能を示す(表5及び
図8)。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例9
実施例1のように試験パネルを調製し、試験自動車のフロントバンパー上に載せる。路上試験プロトコルの略図を、
図9に示す。実際の虫を、運転により路上から採取する。自動車を夏の夕方の間、約500マイル運転し、虫の体を採取する。平均運転速度は、65mphである。
【0086】
3日間の虫採取のうちに、パネルを自然降雨(運転条件で)又は200rpmの振盪速度で研究室のウォーターバス上でのいずれかで洗浄する。写真を洗浄行為前後に撮る。パネルを洗浄前、間及び後で、目視で検査及びカウントし、試験及び対照パネルから汚染除去の違いを確認する。
【0087】
穏やかな洗浄下、汚染除去有効性について明確な増加を、
図10及び11で示すように、酵素を含まない対照コーティングと比較して酵素含有コーティング上で観察する。洗浄前、5分後、120分後での酵素を含むコートされたパネルに関する虫汚染の総数は、それぞれ18、13、及び10である。洗浄前、5分後、120分後での酵素を含まないコートされた対照パネルに関する虫汚染の総数は、それぞれ18、17、及び15である。路上試験を3回繰り返し、様々な時間洗浄後の酵素コーティング及び対照コーティングにおける残存虫汚染の平均パーセントを
図12でプロットする。酵素含有コーティングは、通常の路上運転条件下、環境的に得た虫を使用して、積極的な虫汚染除去を促進する。
【0088】
実施例10
pH6.4及びpH11の緩衝液を使用して、実施例1のように酵素含有コーティングを調製する。コートされたアルミニウムプレートを、実施例9のように虫汚染に供する。両pHレベルで調製された酵素含有コーティングは、対照よりも優れている(
図13)。
【0089】
本明細書の記載に加えて、本発明の様々な改良は当業者に明らかであろう。そのような改良はまた、請求の範囲内に含まれるものとする。
【0090】
特に示さない限り、すべての試薬は当該分野において公知の出処より入手可能であり、又は必要以上の実験をせずに、当業者によって合成可能である。ヌクレオチド増幅、細胞トランスフェクション、並びにタンパク質発現及び精製方法は、当業者の範囲内にある。
【0091】
本明細書に示す特許及び文献は、本発明が関係する当業者のレベルの指標である。これらの特許及び文献は、あたかもそれぞれ個々の出願又は公表文献が、具体的及び個別に、引用により本明細書に組み込まれたかのように、同じ程度まで引用により本明細書に組み込まれる。
【0092】
前記記載は本発明の特定の態様を説明するものであり、これらに限定されるものではない。それらのすべての均等物を含む以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。