(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964825
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】廃プラスチックの触媒解重合によるワックスおよびグリース基油原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20160721BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20160721BHJP
B01J 27/19 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
C10G1/10ZAB
C08J11/16
B01J27/19 M
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-519172(P2013-519172)
(86)(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公表番号】特表2013-539476(P2013-539476A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】IB2011001642
(87)【国際公開番号】WO2012007833
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】12/836,594
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513011063
【氏名又は名称】グリーンマントラ リサイクリング テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アニル クマール
(72)【発明者】
【氏名】プシュカル クマール
【審査官】
柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−179877(JP,A)
【文献】
特開2002−167466(JP,A)
【文献】
特表2007−529574(JP,A)
【文献】
特開平08−253601(JP,A)
【文献】
特表2000−512209(JP,A)
【文献】
特開平04−057887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10−99/00
B29B 17/00−17/04
C08J 11/00−11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒解重合により混合ポリエチレン廃棄物を変換して、ワックスおよびグリース基油原料を製造する方法であって、
前記混合ポリエチレン廃棄物を予熱して、溶融した混合ポリエチレン廃棄物を形成するステップと、
高圧反応器の反応帯内において、前記溶融した混合ポリエチレン廃棄物の触媒解重合反応をさせて、前記反応帯が分子量のより低い物を含有する反応帯材料を含むように、ワックスまたはグリース基油原料を含む分子量のより低い物を製造するステップと、
前記反応器内の圧力が所望の値に達した後、前記反応帯材料を冷却するステップと
を含み、
前記触媒は、第一鉄−銅錯体をアルミナ担体に結合させ、それをヘテロポリ酸と反応させて調製される[Fe−Cu−Mo−P]/Al2O3であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記変換されたワックスまたはグリース基油原料が液体でありかつ実質的に引火点を超えている場合に、前記変換されたワックスまたはグリース基油原料を容器中に排出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒解重合がされる温度が300℃から600℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合ポリエチレン廃棄物を予熱して、前記溶融した混合ポリエチレン廃棄物を形成するステップが、
押出し機を使用して前記混合ポリエチレン廃棄物を予熱して、前記溶融した混合ポリエチレン廃棄物を形成するステップであって、前記押出し機が前記反応器に取り付けられているステップ
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記押出し機内で前記混合ポリエチレンが溶融状態に達すると、前記混合ポリエチレン廃棄物を前記反応器中に実質的に連続して押し込むステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の圧力が、50psig〜350psigの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記混合ポリエチレン廃棄物が、低密度ポリエチレン(LPDE)、線状低密度ポリエチレン(LLPDE)および高密度ポリエチレン(HPDE)からなる群から選択されるポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合ポリエチレン廃棄物が、10%以下の不純物を含み、前記不純物がポリプロピレンおよびポリスチレンからなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高圧反応器内の前記圧力の前記所望の値を変化させて、異なる等級のワックスおよびグリース基油原料を生成させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高圧から低圧へのサイクルを使用して、前記排出され変換されたワックスまたはグリース基油原料中の顔料粒子/不純物の凝集を誘発するステップと、
前記顔料粒子/不純物、および前記変換されたワックスまたはグリース基油原料を、別々の層として前記容器内で沈降させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
触媒解重合によりポリエチレンの一次顆粒を変換して、ワックスおよびグリース基油原料を製造する方法であって、
ポリエチレンの前記一次顆粒を予熱して、ポリエチレンの溶融した一次顆粒を形成するステップと、
高圧反応器の反応帯内において、前記溶融した混合ポリエチレン廃棄物の触媒解重合反応をさせて、前記反応帯が分子量のより低い物を含有する反応帯材料を含むように、ワックスまたはグリース基油原料を含む分子量のより低い物を製造するステップと、
前記反応器内の圧力が所望の値に達した後、前記反応帯材料を冷却するステップと
を含み、
前記触媒は、第一鉄−銅錯体をアルミナ担体に結合させ、それをヘテロポリ酸と反応させて調製される[Fe−Cu−Mo−P]/Al2O3であることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記変換されたワックスまたはグリース基油原料が液体でありかつ実質的に引火点を超えている場合に、前記変換されたワックスまたは前記グリース基油原料を容器中に排出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
触媒解重合がされる温度が300℃から600℃の範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記所望の圧力が、50psig〜350psigの範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ポリエチレンの前記一次顆粒を予熱して、溶融したポリエチレンの一次顆粒を形成するステップが、
押出し機を使用してポリエチレンの前記一次顆粒を予熱して、ポリエチレンの前記溶融した一次顆粒を形成するステップであって、前記押出し機が前記反応器に取り付けられているステップ
を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記押出し機内でポリエチレンの前記一次顆粒が溶融状態に達すると、ポリエチレンの前記一次顆粒を前記反応器中に実質的に連続して押し込むステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリエチレンの前記一次顆粒が、LPDE、LLPDEおよびHPDEからなる群から選択されるポリエチレンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記高圧反応器内の前記圧力の前記所望の値を変化させて、異なる等級のワックスおよびグリース基油原料を生成させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
高圧から低圧へのサイクルを使用して、前記排出され変換されたワックスまたはグリース基油原料中の顔料粒子/不純物の凝集を誘発するステップと、
前記顔料粒子/不純物、および前記変換されたワックスまたはグリース基油原料を、別々の層として前記容器内で沈降させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記ワックスまたはグリース基油原料がグリース基油原料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ワックスまたはグリース基油原料がワックスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
機械設備の製造業者、食品包装業者、ならびに潤滑、密封およびその他の使用向けにワックスおよびグリースを使用する他の業者には、ワックスおよびグリース組成物への継続的な必要性がある。これらのワックスおよびグリースの製造は通常、高価である。これは、一般的に、このような製造方法では、高価な石油供給原料を必要条件とするためであり得る。
【0002】
ワックスおよびグリース(またはグリース基油原料(grease base−stock))は、一般に、石油供給材料または液体燃料化プロセス(gas−to−liquid processes)から製造される。石油供給原料の価格は、時代と共に上昇しており、したがってワックスおよびグリースの価格の定常的な上昇がある。最近、ガス(大部分メタン)層およびフィッシャー−トロプシュ法の使用のいくつかの発見がある;これらは、より長い鎖長の炭化水素に変換されて、ガソリン、潤滑油、グリース基油原料およびワックスをもたらすことができる。このようにして製造された製品は、比較的により高価であり、したがって、容易に入手可能なポリエチレン廃棄物を利用し、それらをリサイクルしてかなりより低いコストで同一材料を製造することへの必要性が存在する。
【0003】
ワックスおよびグリース基油原料を製造するための比較的に安価な方法があれば有利であろう。このような方法は、理想的には、容易に入手可能な安価な供給原料を利用し、安価な方法を使用するであろう。廃プラスチック/ポリマーは、このような製品の製造のための既知の方法で使用されている。プラスチック廃棄物は、最も急速に増加している固体廃棄物の1つであり、この固体廃棄物を利用して有用なワックスおよびグリースを製造することは、増大するプラスチック廃棄問題への対処となる。
【0004】
さらに、ポリマー/プラスチック廃棄物の大多数は、ポリエチレンである可能性があり、それは生分解性ではないため、自然界の中に蓄積されている。ポリエチレン廃棄物は一般に、埋め立てられるか、または焼却されるかのいずれかである−前者は、材料の損失および土地の浪費を招き、一方後者は、温室効果ガスの発生をもたらす;現在、二次ポリマーとしてリサイクルされているのはプラスチック廃棄物全体のごく一部でしかなく、これらの二次ポリマーは品質が悪く、もたらされる経済的収益は低い。
【0005】
最近の時点では、これらのポリマー固体廃棄物を、燃料、潤滑油、ワックスおよびグリース基油原料などの有用な製品に変換する取組みはかなり行われている。既存の変換方法は、十分に効率的ではない可能性があり、環境中に温室効果ガスを放出する恐れがある。さらに、現行の技術は、廃プラスチック供給材料の品質および量に敏感である恐れがあり、それらは最終製品の品質への影響を有する可能性がある。このことは、変動するプラスチック等級のためプラスチック廃棄物のコンシステンシーが変動する可能性があるので、特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
種々の実施形態が、本明細書において図面を参照して記述されている。
【0007】
【
図1】一実施形態による、触媒解重合により混合ポリエチレン廃棄物を変換してワックスおよびグリース基油原料を製造するための例示的方法の流れ図である。
【
図2】本発明に関連して、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスのガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)結果の例示的なグラフを示す図である。
【
図3】一実施形態による、高密度ポリエチレン(HDPE)廃棄物の解重合から得られたワックスのGC−MS結果の例示的なグラフを示す図である。
【
図4】本発明に関連して、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスの示差走査熱量測定(DSC)分析のグラフを示す図である。
【
図5】一実施形態による、HPDE廃棄物の解重合から得られたワックスのDSC分析のグラフを示す図である。
【
図6】一実施形態による、グリース基油原料の試料1の(対数せん断(log shear))対(対数粘度)のグラフを示す図である。
【
図7】一実施形態による、グリース基油原料の試料2の(対数せん断)対(対数粘度)のグラフを示す図である。
【
図8】一実施形態による、混合ポリエチレン廃棄物を変換してワックスおよびグリース基油原料を製造する装置のブロック図である。
【0008】
本明細書において記述される図面は、例示を目的とするだけであり、決して本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
廃プラスチックの触媒解重合により、ワックスおよびグリース基油原料を製造する方法が開示されている。本主題事項の実施形態の下記の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付図面が参照されており、それらの図面では、本主題事項を実施することができる特定の実施形態を例として示している。これらの実施形態は、十分に詳細に記述されて、当業者が本主題事項を実施することを可能としており、他の実施形態を利用できる点、ならびに本主題事項の範囲から逸脱することなく変更を行い得る点を理解されたい。したがって、下記の詳細な説明は、限定する意味で解釈されるべきではなく、本主題事項の範囲は、添付された特許請求の範囲によって定義される。
【0010】
図1は、一実施形態による、混合ポリエチレン廃棄物の触媒解重合によりワックスおよびグリース基油原料を製造するための例示的方法の流れ
図100を示す。ワックスは、滑り易い固体材料であり、これは容易に溶融する。一般に、ワックスの融点は、45℃から130℃の間の範囲にあり、引火点(すなわち、空気中でワックスが蒸発して、発火性混合物を形成することができる最低温度)は180℃から350℃の間の範囲にある。ワックスは、大部分、原油の精製よって得ることができる。ワックスは、植物および動物の分泌物に由来することもできる。さらに、これらのワックスは、フィッシャー−トロプシュなどの方法を使用して合成的に製造することができる。
【0011】
グリースまたはグリース基油原料は、2つの可動表面の間の摩擦を減少させるためにそれらの間に導入されて、効率を向上させ、摩耗を減少させる半固体物質である。市販のグリースは、グリース基油原料を少量の特定の添加剤と混合して、それらに所望の物理的特性を与えることによって、一般に製造される。一般に、グリースは次の4つの型のものである:(a)鉱油と固体潤滑剤との混合物、(b)残油、ワックス、非結合脂肪、ロジン油およびピッチのブレンド、(c)石鹸で増粘化した鉱油、ならびに(d)ポリ−アルファオレフィン、シリコーンなどの合成グリース。
【0012】
混合ポリエチレン廃棄物は、低密度ポリエチレン(LPDE)、線状低密度ポリエチレン(LLPDE)および高密度ポリエチレン(HPDE)を含むことができる。例えば、ポリエチレン廃棄物は、HDPEの袋としてのショッピングバッグ、グロッサリーバッグ、LDPEの牛乳パウチ、およびLLDPEの文具ファイルとして入手可能である。一実施形態において、ポリエチレンの一次顆粒(primary granule)も、ワックスおよびグリース基油原料を製造するのに使用することができる。さらに、混合ポリエチレン廃棄物は、約10%以下の不純物(例えば、ポリプロピレンおよびポリスチレンなど)を含むことができる。
【0013】
ステップ102において、混合ポリエチレン廃棄物は予熱されて、溶融した混合ポリエチレン廃棄物を形成する。例えば、混合ポリエチレン廃棄物は、高圧反応器(例えば、
図8の反応器804)に取り付けられた押出し機内で予熱される。押出し機内で形成された溶融した混合ポリエチレン廃棄物は、高圧反応器中に実質的に連続して押し込められる。ステップ104において、高圧反応器内の加熱器を使用して所望の温度で、高圧反応器内の触媒を使用して、溶融した混合ポリエチレン廃棄物の解重合反応が開始される。使用される触媒は、[Fe−Cu−Mo−P]/Al
2O
3であり、これは高圧反応器の撹拌翼上に配置されている。触媒は、第一鉄−銅錯体をアルミナ担体に結合させ、それをヘテロポリ酸と反応させて、最終触媒を得ることによって調製される。高圧反応器内の温度は、約300℃から600℃の範囲内にある。
【0014】
ステップ106において、高圧反応器内の圧力が所望の値に達するまで、溶融した混合ポリエチレン廃棄物の解重合反応の進行を継続させる。高圧反応器内の圧力は、約50psig〜350psigの範囲内にある。ステップ108において、高圧反応器内の圧力の所望の値を変化させて、種々の等級のワックスおよびグリース基油原料を生成させる。例えば、種々の等級のワックスには、60℃から100℃の範囲にある種々の融点を有するワックスが含まれる。
【0015】
ステップ110において、反応器内の圧力が所望の値に達すると、加熱器のスイッチは切られ、溶融した混合ポリエチレン廃棄物の解重合反応は停止される。解重合反応の間、溶融した混合ポリエチレン廃棄物は、ワックスまたはグリース基油原料に変換される。ステップ112において、変換されたワックスまたはグリース基油原料が液体でありかつ実質的に引火点を超える場合に、変換されたワックスまたはグリース基油原料は、容器中に排出される。
【0016】
解重合反応の間に、ガスの発散がなく、したがってワックスまたはグリース基油原料の形態で、炭素の回収が完了していることは、注目できることである。ステップ114において、高圧から低圧へのサイクルを使用して、排出され変換されたワックスまたはグリース基油原料中の顔料粒子/不純物の凝集(coalescence)が開始される。ステップ116において、顔料粒子/不純物、および変換されたワックスまたはグリース基油原料を、別々の層として容器内で沈降させる。
【0017】
図2は、本発明に関連して、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスのガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)結果の例示的なグラフ200を示す。例えば、GC−MSは、気液クロマトグラフィーおよび質量分析の特徴を組み合わせて、既存の方法を使用して生成させた微結晶質ワックス中の種々の成分を同定する方法である。(微結晶質ワックスは、60℃から100℃の範囲にある融点を有する型のワックスであり、概してパラフィンワックスよりも硬い。)グラフ200のx軸は保持時間を表し、y軸は強度を表す。
【0018】
図3は、一実施形態による、高密度ポリエチレン(HDPE)廃棄物の解重合から得られたワックスのGC−MS結果の例示的なグラフ300を示す。HDPE廃棄物の解重合反応は、
図1において説明した方法に従って実施される。地元の市場から購入された約3.5kgのHDPE廃棄物を、高圧反応器(容量6.5リットルを有する)内での解重合反応のために使用する。異なる実験を実行して、解重合反応から得られたワックスの特性を、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスの特性と比較する。
【0019】
実験1において、140psig(ポンド−力/平方インチゲージ)の所望の圧力が選択される。高圧反応器内部の圧力が140psigに達すると、解重合反応は停止される。得られたワックスは排出され、冷却されて、GC−MSについて試験される。表1は、市販のARGEワックス(フィッシャー−トロプシュワックスの型)に対して比較して、解重合反応により得られたワックスの特性を示す。
【0021】
グラフ200とグラフ300とが比較される。分子量分布(MWD)の比較を表2に示している。
【0023】
表2ならびにグラフ200および300から、HDPE廃棄物の解重合から得られたワックスは、より広いMWDおよび幾分より高い融点を有するが、その他の点では、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスに匹敵すると推論することができる。
【0024】
図4は、本発明に関連して、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスの示差走査熱量測定(DSC)分析のグラフ400を示す。DSCは、試料および対照標準の温度を上昇させるのに要した熱量における差を、温度の関数として測定する熱分析技術である。グラフ400のx軸は温度を表し、y軸は熱流を表す。
【0025】
図5は、一実施形態による、HPDE廃棄物の解重合から得られたワックスのDSC分析のグラフ500を示す。グラフ400とグラフ500とが比較される。HDPEの解重合から得られたワックスの融点は、既存の方法を使用して製造した微結晶質ワックスの融点よりも約10%高い。さらに、HDPEから生成したワックスは、ワックス磨き剤および靴墨に極めて適する自然粘着性(natural tack)を有することがわかっている。
【0026】
実験2は、重要な特性であるワックスの融点を考察している。ワックスの融点は、高圧反応器内部の圧力の所望の値によって決定される。以下の表3は、種々の融点のワックスをもたらす圧力の種々の値を示している。
【0028】
実験3において、高圧反応器内の下記の組成の供給材料を考察している。HDPE、LDPEおよびLLDPEは、一次顆粒として入手可能である点に留意すべきである。
1.純粋な供給材料としてのHDPE、LDPEおよびLLDPEの一次顆粒、
2.純粋な供給材料としてのHDPE、LDPEおよびLLDPEの廃棄物材料、
3.HDPE、LDPEおよびLLDPEの一次顆粒の種々の混合物、
4.HDPE、LDPEおよびLLDPEの廃棄物材料の種々の混合物、
5.(1)および(2)の混合物、
6.ポリスチレンおよびポリプロピレンの不純物10%を有する、純粋な供給材料としてのHDPE、LDPEおよびLLDPEの廃棄物材料。
【0029】
それぞれの場合において、高圧反応器内部の圧力の所望の値は、依然として不変であった。これは、触媒が専らCH
2−CH
2結合の切断に特異的であり、供給材料の性質に比較的敏感ではないことを示している。
【0030】
実験4において、実験2において生成した種々のワックスの水性エマルションを調製する。組成は以下の通りである:
組成物A−ワックス5gおよびステアリン酸2.5g、
組成物B−水300g、モルホリン3gおよびステアリン酸2.5g。
【0031】
組成物Aの固体を混合し、溶融させる。これを、既に加熱された組成物Bと混合する。撹拌するとエマルションが得られる。エマルションは安定であり、ワックスは水層から分離しないことがわかる。こうして形成されたエマルションは、コーティング時に、使用ワックスの融点に応じた強度を有する非常に薄いワックス層を形成する。
【0032】
実験5において、カットオフ圧力250〜300psig(これは試料1である)およびカットオフ圧力300〜350psig(試料2)について、グリース基油原料を生成させる。一実施形態において、試料1および試料2の粘度は、温度およびせん断速度の関数として決定される。
【0033】
図6は、一実施形態による、グリース基油原料の試料1の(対数せん断)対(対数粘度)のグラフ600を示す。対数せん断は、グラフ600のx軸上に表され、対数粘度はy軸上に表される。40℃、100℃および150℃における試料1のせん断速度、せん断応力および粘度が、表4、5および6に示される。
【0037】
図7は、一実施形態による、グリース基油原料の試料2の(対数せん断)対(対数粘度)のグラフ700を示す。対数せん断は、グラフ700のx軸上に表され、対数粘度はy軸上に表される。40℃、100℃および150℃における試料1のせん断速度、せん断応力および粘度が、表6、7および8に示される。
【0041】
上述の実験は、より低いカットオフ圧力が、より高い粘度を有するグリース基油原料を生じさせることを示唆している。グリース基油原料の温度が上昇すると、粘度の値が予想した通り低下する。所与の温度およびカットオフ圧力について、粘度はせん断速度に依存しており、劇的に低下する。せん断速度1秒当り100までに、粘度は1000分の1低下して、同じ倍率で潤滑性の増大をもたらす。このことは、グリース基油原料が、高度の潤滑性をもたらす固有の能力を有することを示している。
【0042】
図8は、一実施形態による、廃プラスチックの触媒解重合によりワックスおよびグリース基油原料を製造する装置のブロック
図800を示す。具体的には、この装置は、押出し機802、炉830、反応器804、冷却器806、ドラム808、ドラム810およびトレー828を含む。
【0043】
押出し機802は、4インチの円筒部であり、これは長さ24インチである。押出し機802は、ポリエチレン廃棄物を予熱し、溶融したポリエチレン廃棄物を反応器804に押し込む。押出し機802は、300℃で作動し、溶融したポリエチレン廃棄物をバルブ816に押し通す。一実施形態において、ポリエチレン廃棄物の予熱が反応器804の外部(押出し機802内)で行われるので、反応器804内でのポリエチレン廃棄物の処理時間が短縮され得る。さらに、反応器804内で、半連続工程が確実にされる。
【0044】
反応器804は、厚さ2cm、直径15cmおよび長さ30cmであり、作業容量6.5リットルを有する。図示したように、炉830は、反応器804を加熱する加熱器812を含む。反応器804内の温度は、450℃に保持される。反応器804は、攪拌機814、圧力計822および触媒バケット824を含む。反応器804は、解重合工程の間、反応器804の壁が高い温度および圧力に耐えるような形で設計されている。触媒バケット824は、反応器804内の溶融したポリエチレン廃棄物の解重合反応を促進する触媒を収容できる。実施例の一実施形態において、使用される触媒は、[Fe−Cu−Mo−P]/Al
2O
3である。
【0045】
作動中に、反応器804が溶融したポリエチレン廃棄物を受け入れると、温度は450℃から低下する。温度が低下すると、加熱器812の温度を上昇させて、バルブ818を閉じまたバルブ820を開くことによって、確実に反応器804内部の圧力を1気圧に保持する。反応器804内部の圧力は、圧力計822を使用して測定される。一実施形態において、反応器804内部の圧力は、形成されるワックスの品質に影響を及ぼす。反応器804中に供給される溶融したポリエチレン廃棄物の体積が、反応器804内部の温度で、2倍になることは、注目できることである。
【0046】
バルブ816およびバルブ820が閉じて、反応器804内の圧力を増大させる。反応器804内部で所望の圧力(50psig〜350psigの範囲内)に達すると、加熱器812のスイッチは切られ、解重合反応は停止される。解重合反応は、反応器804内で約1時間かかる。バルブ820を徐々に開き、反応器804内部の圧力を1気圧に低下させる。反応器804からの蒸気は、バルブ820を通って凝縮器806に逃散し、最終的にドラム808中に収集される。反応器804内部の温度は、依然として不変である。
【0047】
反応器804内の圧力が1気圧に低下すると、バルブ820を閉じ、バルブ818を開いて生成した材料を排出する。反応器804内部での1気圧への圧力低下により、ポリエチレン廃棄物と一緒に存在する有機および無機顔料不純物(炭素、炭酸カルシウムなど)の凝集工程が始められる。バルブ816、818および820の操作を介して、顔料不純物は凝集し、別々の層として沈降する。生成したワックスおよびグリース基油原料から顔料不純物を分離させるさらなる工程の必要条件は存在しない。したがって、反応器804内部の高圧から低圧へのサイクルにより顔料不純物は分離して、純粋なワックスおよびグリース基油原料が後に残る。反応器804内部に発生する僅かな量の圧力により、生成した生成物は、反応器804からドラム810中に押し込まれる。
【0048】
400℃を超えて生成物がドラム810に注入されると、少量の炭化水素蒸気が発生しうる。ドラム810上のパイプ826により、このように形成された炭化水素蒸気が大気中に逃散せずにドラム810内で完全に凝縮することが確実にされる。この炭化水素蒸気は、ワックスまたはグリース基油原料の上面に保護被覆を形成し、ワックスおよびグリース基油原料が直接大気に直接触れて燃えるのを防止する。ドラム810中に収集された生成物は、200℃で凝縮され、次いでトレー828中に排出される。この工程により、ワックスまたはグリース基油原料の引火点を著しく超えるような温度であっても、400℃を超えて液体生成物を排出することができる点が確保される。
【0049】
圧力の低下および反応器804からの生成した材料の取り出しには、約30分かかる可能性がある。したがって、1サイクルの触媒解重合は約2時間半かかる可能性がある。解重合反応は、ポリエチレン廃棄物と一緒に存在する約10%以下のポリプロピレンおよびポリスチレンなどの不純物に敏感ではないことがわかる。工程条件ならびにバルブ818および820を操作することによって、指定された品質のワックスおよびグリース基油原料を得ることができる。例えば、反応器804内部の所望の圧力を操作することによって、種々の等級のワックス(例えば、異なる融点を有する)が得られる。
【0050】
種々の実施形態において、
図1から8において記述されている方法は、失活せずにこの方法において1年を超える使用が持続する新たな触媒を使用し、それによってこの方法を経済的としている。この触媒は、反応温度300℃〜600℃全体にわたって安定であり、HDPE、LDPEおよびLLDPEを等しく解重合させる。この触媒はまた、いかなる顔料不純物によっても影響されない。さらに、ポリエチレン廃棄物を予熱するのに押出し機を使用することにより、高温での溶融したポリエチレン廃棄物が確実に反応器中に供給される。このことにより、反応器内での半連続工程も可能とすることができる。上述の方法の間に、ポリエチレン廃棄物から所望の製品へと炭素は完全に回収され、したがってこの方法は環境に優しい。
【0051】
本実施形態は、特定の実施例の実施形態を参照して記述されているが、種々の実施形態のより広い精神および範囲から逸脱せずに、これらの実施形態に種々の修正および変更を行うことができる点は明らかであろう。