特許第5964851号(P5964851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5964851ポリプロピレンポリグリコールとフェノールグリコールエーテルとを含むブレンド及び該混合物を用いた発泡調整方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964851
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ポリプロピレンポリグリコールとフェノールグリコールエーテルとを含むブレンド及び該混合物を用いた発泡調整方法。
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20160721BHJP
   B03D 1/001 20060101ALI20160721BHJP
   B03D 1/02 20060101ALI20160721BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C08L71/02
   B03D1/001
   B03D1/02
   C08K5/06
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-542184(P2013-542184)
(86)(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公表番号】特表2014-503625(P2014-503625A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011062937
(87)【国際公開番号】WO2012075320
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/418,930
(32)【優先日】2010年12月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513128279
【氏名又は名称】ダウ ブラジル スデステ インドゥストリアル リミタダ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ユリ アレンカール マルケス
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ ベック グラジアニ
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−265445(JP,A)
【文献】 米国特許第02695101(US,A)
【文献】 米国特許第02611485(US,A)
【文献】 特表2011−516655(JP,A)
【文献】 特開昭61−074659(JP,A)
【文献】 特開昭61−061658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B03D 1/00−1/02
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
33〜67質量%の1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールと、33〜67質量%の1種若しくはそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテル及び/又は1種若しくはそれ以上のジエチレングリコールフェニルエーテルとを含む混合物であって、該ポリプロピレングリコールはそれぞれ3000〜5000g/molの重量平均分子量を有し、ASTM D445に基づいて測定した該混合物の粘度が25℃において400cSt(4.00cm/s)以下であり、かつ、40℃において200cSt(2.00cm/s)以下であり、そして該混合物は、ASTM D92のクリーブランドオープンカップ法で測定した引火点が60.5℃(141°F)以下である混合物。
【請求項2】
45〜55質量%の1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールと、45〜55質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテル及び/又はジエチレングリコールフェニルエーテルとを含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールがモノオール、ジオール、トリオール又はこれらの2以上の組み合わせである、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
採鉱処理流体に請求項1〜のいずれかに記載の混合物を加える工程を含む、浮遊選鉱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンポリグリコールとフェノールグリコールエーテルとを含む混合物、およびこの混合物を用いた採掘工程における発泡調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱業において、浮遊選鉱処理における過度の発泡は、採掘の効率に悪影響を及ぼすおそれがあるため問題となる。発泡調整剤は粘度の高い流体であることが多く、浮遊選鉱処理の使用に適する低粘度を得るため有機溶媒で希釈することを要する。この有機溶媒もまた溶液の有効性及び発泡調整能力に寄与することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現行の発泡調整溶液においては、高分子量のポリプロピレングリコールを希釈するために可燃性で揮発性の有機溶媒が用いられている。現在使用されている可燃性有機物質ベースの発泡調整溶液と同等の性能を有し、かつ、改善されたハンドリング性、安全性及び環境性を有する、採掘における浮遊選鉱用の発泡調整溶液が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は組成物、その製造方法、その方法により製造された物品及びその物品を製造する方法に関する。
【0005】
一実施形態として、本発明は、1〜99質量%の1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールと、1〜99質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとを含む混合物であって、該ポリプロピレングリコールはそれぞれ1000g/mol以上の重量平均分子量を有し、ASTM D445に基づいて測定した該混合物の粘度が25℃において400cSt(4.00cm/s)以下であり、かつ、40℃において200cSt(2.00cm/s)以下である混合物を提供する。
【0006】
他の実施形態として、本発明は、30〜40質量%の1種又はそれ以上のプロピレングリコールと、60〜70質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとを含むこと以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0007】
他の実施形態として、本発明は、60〜70質量%の1種又はそれ以上のプロピレングリコールと、30〜40質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとを含むこと以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0008】
他の実施形態として、本発明は、45〜55質量%の1種又はそれ以上のプロピレングリコールと、45〜55質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとを含むこと以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0009】
他の実施形態として、本発明は、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が4000g/mol以上であること以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0010】
他の実施形態として、本発明は、1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルのそれぞれの溶媒引火点が70℃以上であること以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0011】
他の実施形態として、本発明は、1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルのそれぞれの溶媒引火点が100℃以上であること以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0012】
他の実施形態として、本発明は、更に0質量%より多く3質量%以下の水を含むこと以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0013】
他の実施形態として、本発明は、1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールがモノオール、ジオール、トリオール又はこれらの2以上の組み合わせであること以外は、前記実施形態のいずれかに記載の混合物を提供する。
【0014】
他の実施形態として、本発明は、採鉱処理流体に前記実施形態のいずれかに記載の混合物を加える工程を含む、浮遊選鉱方法を提供する。
【0015】
他の実施形態として、本発明は、前記実施形態における採鉱処理流体が、石炭処理、選択的沈殿処理、アルミナ処理、鉱石の採掘、貴金属の回収、食塩水による洗浄、砂及び砂利の洗浄、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される処理に使用される流体である浮遊選鉱方法を提供する。
【0016】
一代替実施形態として、本発明は、本質的に1〜99質量%の1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールと、1〜99質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとからなる混合物であって、該ポリプロピレングリコールはそれぞれ1000g/mol以上の重量平均分子量を有し、ASTM D445に基づいて測定した該混合物の粘度が25℃において400cSt(4.00cm/s)以下であり、かつ、40℃において200cSt(2.00cm/s)以下である混合物を提供する。
【0017】
一代替実施形態として、本発明は、本質的に前記実施形態のいずれかに従う混合物からなる消泡剤を採掘処理流体に加える工程を含む浮遊選鉱方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、発泡調整特性を有する混合物、及び採掘作業における発泡調整に当該混合物を用いる方法である。
【0019】
本発明の混合物は、30〜70質量%の1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールと、30〜70質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテルとを含み、該ポリプロピレングリコールはそれぞれ2000g/mol以上の平均分子量を有し、ASTM D445に基づいて測定した該混合物の粘度は25℃において400cSt(4.00cm/s)以下であり、かつ、40℃において200cSt(2.00cm/s)以下である。
【0020】
本発明の混合物に有用な1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールは、1000g/mol以上の重量平均分子量を有する。1000g/mol以上のすべての個々の値及びサブレンジは本明細書に含まれており開示されている。例えば、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は下限値1000、1500、2000、2500、3000、3500又は4000g/molからとすることができる。
【0021】
本発明の混合物における1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールの総量は30〜70質量%とすることができる。30〜70質量%のすべて個々の値及びサブレンジは本明細書に含まれ開示されている。例えば、1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールの総量は下限値として30、35、40、45、50、55、60又は65質量%から、上限値として35、40、45、50、55、60、65又は70質量%までとすることができる。例えば、1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールの総量は30〜70質量%であってよく、あるいは代替として、1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールの総量は50〜70質量%であってよく、あるいは代替として、1種又はそれ以上のポリプロピレングリコールの総量は55〜70質量%であってよい。
【0022】
本発明の混合物の実施形態に用いることのできるポリプロピレングリコールは、通常発泡調整剤として使用される高分子量ポリプロピレングリコールを含む。そのようなポリプロピレングリコールは1又はそれ以上の官能基を有する(例えば、モノオール、ジオール、トリオール又はこれらの2若しくはそれ以上の組み合わせを含む)。
【0023】
ポリプロピレングリコールの一例は、POLYPROPYLENE GLYCOL P4000(PPG4000、ダウ・ケミカルカンパニー社製)である。これは2つの末端ヒドロキシル基を有する直鎖状ポリマーで、分子量4000g/mol、比重1.004(ASTM D892、25/25℃)、40℃における平均粘度455cSt(4.55cm/s)(ASTM D445/446)、流動点−26℃、25℃における屈折率1.45(ASTM D1218)、25℃における密度8.36lb/gal(1.00g/cm)を有する。
【0024】
本発明の混合物は更に30〜70質量%の1種又はそれ以上のジプロピレングリコールフェニルエーテル(DiPPh)及び/又はジエチレングリコールフェニルエーテル(DiEPh)を含む。30〜70質量%のすべての個々の値及びサブレンジは本明細書に含まれており開示されている。例えば、1種又はそれ以上のDiPPh及び/又はDiEPhの総量は、下限値として30、35、40、45、50、55、60又は65質量%から、上限値として35、40、45、50、55、60、65又は70質量%までとすることができる。例えば、1種又はそれ以上のDiPPh及び/又はDiEPhの総量は30〜70質量%であってよく、あるいは代替として、1種又はそれ以上のDiPPh及び/又はDiEPhの総量は50〜70質量%であってよく、あるいは代替として、1種又はそれ以上のDiPPh及び/又はDiEPhの総量は55〜70質量%であってよい。本明細書で使用する用語「1種又はそれ以上のDiPPh及び/又はDiEPh」には、1種若しくはそれ以上のDiPPh、1種若しくはそれ以上のDiEPh、又は1種若しくはそれ以上のDiPPhと1種若しくはそれ以上のDiEPhとの組み合わせを意味する。
【0025】
本発明の混合物のいくつかの実施形態で用いることができるジプロピレングリコールフェニルエーテルは、100℃以上の溶媒引火点を有する。100℃以上のすべての個々の値及びサブレンジは本明細書に含まれており開示されている。例えば、それぞれのDiPPhの溶媒引火点は下限値として100、120、140、160、180、200、220、240又は260℃からとすることができる。
【0026】
本発明の混合物の実施形態で用いることができる典型的なポリプロピレングリコールは、分子量が約4100のカルビノール末端基を有するポリプロピレングリコールホモポリマーモノオール(UCONTMLB1715、ダウ・ケミカルカンパニー製)、及び分子量が約6000のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(モル比約1:1)モノオール(UCONTM50HB5100)である。本発明の混合物の実施形態において有用な他の典型的なDiEPhとしては、エチレンベースのグリコールエーテルで、商品名CELLOSOLVETM、CARBINOLTM、又はECOSOFTTMとして入手可能なものが挙げられ、これらは優れた溶解性、化学的安定性を有し、水や多くの有機溶媒と相溶性を示す。本発明の混合物の実施形態で用いることができる他の典型的なDiPPh及びDiEPhとしては、ダウ・ケミカルカンパニー製の商品名DOWANOLTMPシリーズが挙げられ、例えば、DOWANOLTMPPhグリコールエーテル、DOWANOLTMDiPPhテクニカル、DOWANOLTMEPhグリコールエーテル、及びDOWANOLTMDiEPhグリコールエーテルが含まれる。
【0027】
本発明の混合物は、有機溶媒で希釈されたポリプロピレングリコール発泡調整剤が現在使用されている、石炭処理、選択的沈殿処理、アルミナ処理、鉱石の採掘、貴金属の回収、食塩水による洗浄、並びに砂及び砂利の洗浄を含む、多くの採掘処理用途のいずれにも使用することができる。低引火点の有機溶媒/ポリプロピレングリコールの使用とは対照的に、本発明の混合物は改善された環境性、衛生性、及び安全性を提供する。本明細書で使用される用語「低引火点の有機溶媒」とは、70℃未満の引火点を有する溶媒をいう。表1に示すように、比較例は引火性であるのに対して実施例の混合物は引火性でない。本明細書で使用する用語「引火性」とは、引火点60.5℃(141°F)以下の物質をいう(ASTM D92のクリーブランドオープンカップ法で測定)。
【0028】
更に、本発明の混合物は、ポリプロピレングリコール/有機溶媒が発泡調整剤として使用される他の用途、例えば、発酵工程、水処理工程などに使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は本発明を例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
実施例AはDiPPhとPPG4000を1:3の比率で混合することにより得た。実施例Aは透明で安定しており、室温及び40℃において相分離が観察されなかった。比較例Aはn−ブタノールとPPG4000を3:1の比率で混合することにより得た。溶液の粘度を比較した。40℃において、比較例Aは動粘度79cSt(0.79cm/s)であった。一方、実施例Aは動粘度205cSt(2.05cm/s)であった。純PPG4000の動粘度は382cStであった。実施例Aおよび比較例Aは標準的な実験用の浮遊選鉱処理セルに供し、どちらの溶液も発泡調整をすることができた。
【0031】
更に、表1に、比較例1〜10及び実施例1〜3の物性を示す(それぞれの配合は表1に示す)。実施例は比較例に比べ、浮遊選鉱処理において同等の発泡調整能に加え、改善された環境性、衛生性、及び安全性を有している。発泡調整能は、パイロット実験用の浮遊選鉱処理セルで目視観察により確認した。
【0032】
比較例2〜4の調製に使用したケロシンは、工業グレードのケロシンでありNATURELLI QUIMICAから入手可能で、<0.1%のベンゼンを含む。比較例5〜7に使用したホワイトスピリットは、CORAL CORALUX製工業グレードのホワイトスピリットであり、ブラジルにおける規格ABNT NBR 11.702 04/92に準拠しており、0.1体積%以下の典型的な芳香族含量を含有する。比較例8〜10は、VETEC QUIMICA FINA,LTDA製(Xerem,Duque de Caxias,RJ,Brazil)のP.A.グレードのエタノールを用いて調製した。比較例11〜13は、VETEC QUIMICA FINA LTDA製(Xerem,Duque de Caxias,RJ,Brazil)のP.A.グレードのn−ブタノールを用いて調製した。
【0033】
以下に試験方法を示す。
[溶媒引火点]
純PPG4000及び純DiPPhのそれぞれの溶媒引火点はASTM D−92(1990版)に基づき、クリーブランドオープンカップ法により測定した。このクリーブランドオープンカップ法は79℃以上の引火点を有する粘性物質の引火点の測定に特に適している。ケロシン、ホワイトスピリットおよびエタノールの引火点は測定しておらず文献報告値である。測定した引火点及び文献に報告された引火点を表1に示す。
【0034】
[動的粘性]
実施例及び比較例の動的粘性は、ASTM−D445(2004)に基づき測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明は、本発明の精神及び本質的特徴から乖離しない他の形態で具体化され得る。その結果、本発明の技術的範囲を示すものとして前述の明細書より添付した特許請求の範囲の記載を参照すべきである。