(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記プリント回路基板は、それに形成され上記基板の第1側面から上記基板の第2側面に延在する複数の基板開口を備え、それぞれの電極は、電極開口を備え、各電極開口は、開口により複数のビアホールを形成するため複数の基板開口の一つに配列される、請求項1記載の装置。
少なくとも一つの上記液滴入口ポートは、可撓管、注射器、ピペット、外部流体ポンプ、ガラス毛細管、経静脈ライン、及びマイクロダイアリシス管腔から成るグループから選択された液体流源と連通する、請求項6記載の装置。
少なくとも一つの上記液滴出口ポートは、可撓管、注射器、ピペット、外部流体ポンプ、ガラス毛細管、経静脈ライン、及びマイクロダイアリシス管腔から成るグループから選択された液体流源と連通する、請求項8記載の装置。
誘電体物質は、半田マスク材料、スピンオン材料、ディップコート可能材料、ブラシ又はスプレー被覆可能な材料、蒸着可能な材料、又はスパッタ可能な材料である、請求項1記載の装置。
上記半田マスク材料は、液体のフォトイメージ可能な半田マスク(LPI)、及びドライフィルム半田マスク(DFSS)から成るグループから選択される、請求項10記載の装置。
上記プリント回路基板に効果的に接続される電子部品をさらに備え、該電子部品は、マイクロコントローラ、リレー、高電圧マルチプレクサー、電圧変換器、発光ダイオード(LED)、フォトダイオード、光電子増倍管チューブ(PMT)、加熱エレメント、サーミスター、抵抗温度デバイス(RTDs)、及び電気化学測定電極からなるグループから選択される、請求項1記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
微小流体工学チップは、従来の半導体微細加工手順に基づいた慣習のプロセスを用いて一般に製造される。デバイスは、薄膜蒸着を繰り返すステップ、及び標準のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより、ガラス基板上に製造される。典型的には、上部プレート及び底板間にスタンドオフを形成するための層とともに、少なくとも2つの金属層(電極用の一つ及び配線用の一つ)が、2又は3つの絶縁体層に加えて必要である。フォトマスク製作及びチップ生産の高いコストにより、100までのデバイスを生産する一つのプロトタイプを作るのに、10,000ドル、フォトリソグラフィーレベルの数に依存して完成に3か月を必要とする。更に、処理フローが標準化されていないので、新しい設計を作製するための最初の幾つかの試みの間、非常に低い生産性となる。
【0010】
プロトタイプを作ることに必要な費用と時間は、液滴に基づく微小流体工学の開発及び最適化にとって重大な障害である。更に、高いチップコスト、及びデバイス設計を迅速にカスタマイズ又は改善する無能さは、この用途の広い技術の商用見通しを湿らせると予想される。短期間にて、より迅速で、信頼でき、及び低価格の製造技術がこれらのデバイスの開発及びユーザの受け入れを加速するために必要とされる。微小流体工学の構造は、比較的大きく、めったに半導体生産技術の限界をテストしない傾向があるので、より低い解像度、低価法バッチ製造方法が考慮されるべきである。
【0011】
特に、プリント回路基板(PCB)技術は、より低い解像度だが、従来の半導体微細加工に類似する多くの能力及び材料を提示する。導体及び絶縁体の層は、蒸着され、複雑なマルチレベル構造を形成するためフォトリソグラフィー的にパターン化され、ともに積み重ねられる。ディジタル微小流体工学システムの製造に関し、PCB技術は、解像度、有効性、コスト及び製造の容易さの点から優れた妥協を提示すると信じられている。さらに基板としてPCBを用いるさらなる利点は、デバイスを検出し、制御し、又は分析するためのエレクトロニクスが非常に低価格で容易に一体化することができるということが信じられている。
【0012】
一般的に、銅の配線幅及び配線間隔は、PCBプロセスにおいてミル(25.4μm)で測られる。それは、半導体製造にて一般的になされるサブミクロン形状よりも大きいオーダーである。一般的に、PCB処理は、半導体IC製造に必要とされるような高価で超清潔な環境を必要としない。半導体製造にて微細加工された微小流体工学のデバイス用の基板として使用されるシリコンやガラスに比べて、基板は、一般的に、強化プラスチック、ガラス繊維エポキシ樹脂、TEFLON(登録商標)、ポリイミドなどで作られる。また、半導体マスクアライナーの代わりに、位置決めは、通常、PCB処理に関して手動で行なうことができる。透明な、又は、MYLARシートで作製された安いマスクは、半導体製造にて用いられる高価なクロム・オン・ガラス・フォトマスクの代わりに用いられる。PCB処理では、ビアホールは、機械的に、又はレーザーであけられ、次に、真空処理を必要とする半導体処理にて用いられるエッチング及び蒸着の代わりに電気メッキが施される。複数の配線層は、半導体製造において単一の基板を用い複数層を構築し又はウエハを接続するのに対抗して、個々にパターン化された単一の基板をともに接合することにより一般に得られる。広く、たとえ高級なPCBプロセスが、半導体プロセス(物理的な蒸着のような)のいくつかを採用する方に近づいても、PCB製造プロセスと半導体製造プロセスとの間には上述の主な差がある。
【0013】
今日の非常に競争力のある商業環境では、製品が、特に家電及び医療診断ビジネスにおいて、市場に速くかつコスト効率良く到着することは避けられない。本主題は、広く利用可能で、信頼でき、安く、かつ明確なプリント回路基板(PCB)製造技術を利用することに関する。信頼でき、容易にアクセス可能で、廉価な生産技術を備えた再構成可能な微小流体工学のプラットフォームを作り上げることによって、生物医学及び他の領域における多くの潜在的なアプリケーション用のチップ上の研究所デバイスの開発及び受理は、より広範囲で迅速になる。
【0014】
微小流体工学のシステムの開発に関する安価で、確立した、柔軟で、容易にアクセス可能な製造プロセスとしてのPCB技術の魅力は、従来の連続的な流れの微小流体工学のシステムを用いて仕事をする研究者によって既に認識されている。例えば、研究者は、泡検知器、pH調整システム、マイクロポンプ、及び容量性圧力センサーを含むPCB技術に基づいた多くの連続的な流れの微小流体工学のデバイスを、以前に実証している。より最近、シリコンに基づく微小流体工学のデバイスをモノリシックに統合するためにPCBが使用されるハイブリッドアプローチを有するように、誘電泳動による単細胞の操作及び分析用のPCBデバイスも報告されている。しかしながら、液滴の分離した流れの操作用の安価で、柔軟性で、再構成可能なシステムの必要性が長く感じられている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに開示されるような装置及び方法は、ディジタル微小流体工学の液滴操作用の標準プリント回路基板(PCB)プロセスにて製造された基板を利用する新規の方法を備える。確立されたPCBプロセスの従来にない使用は、以下の種々の新規な態様を組み込む。即ち、(1)液滴操作用の電極のようなPCB上の銅のトレース及びパッドの使用、ここで、液滴形態の流体は、電気的手段(電子部品を置き電子信号をルーティングするのに対立するように)によるPCB基板の外側表面上で追い散らされる(つまり移送される);(2)電場誘導液滴操作用の絶縁体として作用するため(その名称が示すように、半田から銅ワイヤを保護するために半田マスクを使用することに対抗するように)電極誘電体としての半田マスク材料の使用;(3)流体を保持する物理的な構造を作るため、フォトイメージ可能な液体又は乾燥した半田マスクの使用;(4)液滴制御電極を互いに又は接点パッドに電気的に接続するためPCBにおけるビアホールの使用;(5)液滴制御電極の接近したパッキングを許容するため、PCBにおける電極内の半田マスクの充填されたビアホールの使用;(6)電極の導電領域の損失無しに電極の近接したパッキングを可能にするため、導電性のエポキシ樹脂を電極内のビアホールへ充填する;(7)液滴を介しての光学測定用の光学上透明なエポキシ樹脂を電極内のビアホールへ充填する;(8)共通の基準電位を提供するため、PCBの同じ表面で電極に隣接する銅のトレースの使用(同一平面配置);(9)基準電極として供給するため、制御電極内に、及び誘電性層の上部に埋め込まれた銅の使用;(10)PCB上への流体の入力及びPCBからの流体の出力を可能にするため、流体インターフェース用のPCB上のドリル孔の使用;(11)加熱エレメントとしての銅線の使用。
【0016】
液滴操作用の装置は、本主題に従い提供される。
【0017】
一実施形態において、液滴操作用装置は、第1側面及び第2側面を備えるプリント回路基板を含んで提供される。電極のアレイは基板第1側面に配置され、誘電層は基板第1側面に配置され、電極をカバーするようにパターン化される。電極セレクターも、アレイ電極活性化のシーケンスを直接に作製するために含まれ、それにより、基板第1側面に配置された液滴が電気的に操作される。
【0018】
他の実施形態では、液滴操作用装置は、第1側面及び第2側面を備えるプリント回路基板を含んで提供される。駆動電極のアレイが、基板第1側面に配置され、共通の基準電位に設定可能な一若しくは複数の基準エレメントのアレイは、駆動電極アレイに対して少なくとも実質的に同一平面に配置される。誘電体層は、基板第1側面に配置され、駆動電極をカバーするようにパターン化される。電極セレクターも、アレイ電極活性化のシーケンスを直接に作製するために含まれ、それにより、基板第1側面に配置された液滴が電気的に操作される。
【0019】
さらに他の実施形態では、液滴操作用装置は、第1側面及び第2側面を備えるプリント回路基板を含んで提供される。駆動電極のアレイは、基板第1側面に配置され、細長い基準エレメントは、基板第1側面に実質的に平行に、かつ基準エレメントと基板第1側面との間にスペースを形成するため距離にて基板第1側面から離れて配置されるように提供され、ここで、上記距離は、上記スペースに配置される液滴を含むに十分なものである。誘電体物質層は、基板第1側面に配置され、駆動電極をカバーするためにパターン化される。電極セレクターも、アレイ電極活性化のシーケンスを直接に作製するために含まれ、それにより、基板第1側面に配置された液滴が電気的に操作される。
【0020】
さらなる実施形態では、液滴操作用装置は、第1プリント回路基板を含んで提供され、第1プリント回路基板は、第1側面及び第2側面、第1プリント回路基板第1側面に配置された駆動電極アレイ、及び第1プリント回路基板第1側面に配置され駆動電極をカバーするようにパターン化される誘電体物質層を備える。上記装置は、また、第1側面及び第2側面を備えた第2プリント回路基板を含み、該第2プリント回路基板は、第1プリント回路基板に実質的に平行で、第2プリント回路基板第2側面と第1プリント回路基板第1側面との間にスペースを形成する距離により第1プリント回路基板から離れて配置される。ここで、上記距離は、上記スペースに配置される液滴を含むに十分なものである。駆動電極のアレイ及び一若しくは複数の基準エレメントのアレイは、第2プリント回路基板第2側面に配置される。上記装置は、また、アレイ電極活性化のシーケンスを直接に作製するための電極セレクターを含み、それにより、第1プリント回路基板第1側面と第2プリント回路基板第2側面との間に配置される液滴が電気的に操作される。
【0021】
液滴を動かす方法も、本主題に従って提供される。
【0022】
1つの実施形態では、液滴を動かす方法は、プリント回路基板の表面に液滴を供給するステップを含んで提供される。上記表面は、電極のアレイを備え、液滴は、電極の内の第1電極に最初に配置され、第1ギャップにて第1電極から分離した、電極の内の第2電極に隣接する。上記方法は、さらに、上記第1電極に第1電圧のバイアスをかけ、第2電極に第1電圧とは異なる第2電圧のバイアスをかけるステップを含み、それによって液滴は第2電極の方へ移動する。
【0023】
さらに他の実施形態では、液滴を動かす方法は、プリント回路基板の表面に液滴を供給するステップを含んで提供される。上記表面は、駆動電極のアレイと、少なくとも実質的に同一平面の、一若しくは複数の基準エレメントのアレイとを備え、液滴は、駆動電極の内の第1駆動電極に配置される。上記方法は、さらに、第1駆動電極から第2駆動電極へ液滴を移動させるために第1駆動電極にバイアスをかけることをさらに含んでいる。
【0024】
さらなる実施形態では、液滴を動かす方法は、プリント回路基板の表面と、プリント回路基板表面に実質的に平行でプリント回路基板表面から離れて配置された細長い基準エレメントとの間に液滴を供給するステップを含んで提供される。プリント回路基板表面は、駆動電極アレイを備え、液滴は駆動電極の内の第1駆動電極に配置される。上記方法は、さらに、第1駆動電極から第2駆動電極に液滴を移動させるために第1駆動電極にバイアスをかけることをさらに含んでいる。
【0025】
さらにその他の実施形態では、液滴を動かす方法は、第1プリント回路基板の表面と、プリント回路基板に実質的に平行でプリント回路基板から離れて配置される第2プリント回路基板の表面との間に液滴を供給するステップを含んで提供される。第1プリント回路基板表面は、駆動電極のアレイを備え、液滴は駆動電極の内の第1駆動電極に配置され、また、第2プリント回路基板表面は、駆動電極のアレイと、一若しくは複数の基準エレメントのアレイとを備える。上記方法は、第1駆動電極から第2駆動電極に液滴を移動させるために第1駆動電極にバイアスをかけるステップをさらに含んでいる。
【0026】
他の実施形態では、液滴を動かす方法は、いずれの物理的な別個の基準エレメント無しでプリント回路基板の表面上の駆動電極アレイに供給される。ここで液滴は、駆動電極の内の第1駆動電極に配置され、第2又は第3の駆動電極の方へ移動する。上記方法は、さらに、第2及び第3電極間に印加された電場における異質性により、液滴が第2又は第3電極の方へ、又は第2又は第3電極のどちらかから離れて駆動されるように、第2及び第3の駆動電極にバイアスをかけることを含んでいる。この場合、液滴は、階段状の形態で移動できず、即ち、一つの電極からそれに隣接する電極へ移動するが、しかし、誘電泳動として知られている現象を利用する目的地電極への異質の電場勾配、又は上記目的地電極から離れる異質の電場勾配において、液滴は連続的に移動することができる。
【0027】
2つ若しくはそれを超える液滴を一つの液滴に併合し、一つの液滴を2つ若しくはそれを超える液滴に分割する方法も、本主題に従って提供される。
【0028】
一つの実施形態では、2つ若しくはそれを超える液滴を一つの液滴に併合する方法は、プリント回路基板の表面に第1及び第2液滴を供給するステップを含んで提供される。上記表面は、電極のアレイを備える。ここで電極アレイは、第1外部電極、第1外部電極に隣接している中間電極、及び中間電極に隣接している第2外部電極を備える少なくとも3つの電極を備える。第1液滴は、第1外部電極に配置され、中間電極に隣接する。また、第2液滴は、第2外部電極に配置され、中間電極に隣接している。上記方法は、また目的地電極として3つの電極のうちの1つを選択すること、及び目的地電極の選択に基づいた活性化、非活性化に関する3つの電極の一つを選択することを含んでいる。上記方法は、第1及び第2液滴の内の1つを他方の液滴の方へ移動するように、又は第1及び第2液滴の両方を互いの方向へ移動するように選択された電極を活性化及び非活性化することを含んでいる。それによって第1及び第2液滴は、目的地電極で結合した液滴を形成するようにともに併合する。
【0029】
他の実施形態では、液滴を2つ以上の液滴へ分割する方法は、プリント回路基板の表面に開始液滴を供給するステップを含んで提供される。上記表面は、電極のアレイを備える。ここで上記電極アレイは、第1外部電極、第1外部電極に隣接する中間電極、及び中間電極に隣接する第2外部電極を備える少なくとも3つの電極を備える。開始液滴は、3つの電極の少なくとも1つに最初に配置され、3つの電極の少なくとも1つの他のものに隣接している。上記方法は、また、3つの電極を横切って開始液滴を位置決めするために3つの電極の各々に第1電圧のバイアスをかけることを含んでいる。上記方法は、開始液滴を第1及び第2の分離した液滴へ分割するために第1電圧と異なる第2電圧へ中間電極にバイアスをかけることをさらに含んでいる。それによって第1の分離液滴は、第1外部電極上で形成され、第2の分離液滴は、第2外部電極上で形成される。
【0030】
さらに他の実施形態では、液滴を2つ以上の液滴に分割する方法は、プリント回路基板の表面に開始液滴を供給するステップを含んで提供される。上記表面は、電極のアレイを備える。ここで上記電極アレイは、第1外部電極、第1外部電極に隣接している中間電極、及び中間電極に隣接している第2外部電極を備える少なくとも3つの電極を備える。開始液滴は、3つの電極の少なくとも1つに最初に配置され、3つの電極の少なくとも1つの他のもののところで少なくとも部分的に重なる。上記方法は、また、開始液滴を位置決めするために、第1電圧へ中間電極にバイアスをかけることを含んでいる。それによって開始液滴は、少なくとも部分的に3つの電極に重なる。上記方法は、最初の液滴を第1及び第2の分離した液滴へ分割するために、第2電圧へ中間電極にバイアスをかけ、第3電圧へ第1及び第2の外部電極の少なくとも一つにバイアスをかけ、第2及び第3電圧は第1電圧とは異なる。それにより、第1の分離液滴は、第1外部電極上で形成され、第2の分離液滴は第2外部電極上で形成される。
【0031】
それ故に、本主題の目的は、従来のプリント回路基板(PCB)技術に基づいた液滴に基づく微小流体工学のシステムを製造し操作するための装置及び方法を提供することである。ここで液滴は、PCBに形成された電極への電位の応用によりPCB表面で作動される。
【0032】
上述しているここで現在開示され、現在示された主題により全体的に又は部分的に扱われた主題の目的、及び他の目的は、最善のものとして以下に記載されるように添付図面を参照したときに説明が進むように、明白になるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0034】
プリント回路基板(PCB)は、また時々プリント配線基板(PWB)と呼ばれ、基板上にパターン化された導電性のパッド及びトレースを用いて電子部品を相互接続するために使用される基板である。一般的にPCBは、基板全体上に、ときには両面に銅の層を付着し、(「ブランクPCB」の作製として知られる)一時的なマスクを塗布した後、所望の銅のトレースを残して不要な銅を除去する(例えば、酸によるエッチングにて)ことにより作製される。基板の対向面間の電気的接続(ビア)は、機械的に又はレーザーで基板を貫通して孔をあけ、2つの側面間の連続的な電気的接続を提供するために上記孔の内面を金属被覆することで形成可能である。多層基板は、個々に処理された基板を互いに接合することにより作製することができる。銅層における電極ラインは、サブトラクティブ法でブランクPCBから銅をエッチングすることにより、通常、形成され、一方、電気メッキ又は他の技術により基板に銅が形成される場合に、いくつかの製造は、半、又は完全なアディティブ法を使用する。
【0035】
上述したように、ディジタル微小流体工学は、電極のアレイを含む基板上で、流体の個別の液滴が電気的に操作される微小流体工学的なアプローチである。一般に使用される構成では、上部プレートが物理的に液滴を制限し、底板が電気的に絶縁され個々に扱うことのできる駆動又は制御電極(又はエレメント)のアレイを含んでいるところの、2つの平行な板間に液滴がサンドイッチされる。一般的には、液滴の電位を制御するために、一若しくは複数の基準電極(又はエレメント)がまた必要である。基準電極は、駆動電極と同じ基板に(同一平面)、又は反対の板に(2つの平面)に設けることができる。液滴を取り巻く2つの板の間のスペースは、一般的に開いていて、蒸発を防ぐために空気又は非混和液で満たされることができる。水の液滴と共に使用可能な非混和液の例は、シリコーン油、フッ化シリコーンオイル、又は炭化水素オイルを含む。基準電極及び駆動電極が同じ基板上に設けられるとき、対向する板は、電気回路の一部として役立たないが、物理的に液体を含むためにカバープレートとしてだけ役立ち、デバイスの操作に必要ではないことがある。
【0036】
液滴動作は、基準電極と、一つ以上の駆動電極との間に電位を印加することにより達成される。印加される電位は、DC又はACが可能であり、また、基準電極は駆動電極とは物理的に異なる必要はない。作動された制御電極に隣接する液滴は、その制御電極の方へ引きつけられるようになり、その方へ移動する。制御電極は、連続した制御電極によって形成された任意の通路に沿って液滴を輸送するためにユーザ規定のパターン(恐らく電極セレクターを用いて)を用いて、連続して作動可能である。輸送に加えて、液滴の併合、分割、混合、変形、及び分配を含む他の操作は、制御電極及び作動パターンの設計に基づいて達成することができる。
【0037】
ディジタル微小流体プロセッサーは、一若しくは複数の基準電極を有する制御電極のアレイを本質的に備える。完全なチップは、溝、液体貯蔵部、上部プレート、センサー、入口、出口などを含む他の多くのタイプの構造を含むことができる。電極のアレイは、ある電極と電気的に接続し、かつ接続用パッドを外部回路に接続するため、相互接続が必要である。従前では、ディジタル微小流体チップは、半導体製造からの薄膜堆積及びフォトリソグラフィー技術を使用してガラス又はシリコン基板上に作製されていた。配線のための電気的相互接続の複数レベルは、単一の開始基板上に導体及び絶縁体の連続層を堆積及びパターン化することにより作製された。本主題は、特注のガラス又はシリコンに基づいたプロセスに対立するものとしての標準PCBプロセスにてディジタル微小流体プロセッサーが有利に構成可能であることによる装置及び方法に関する。
【0038】
現在開示される主題は、導体の複数の層が、ガラス又はシリコンに基づいたプロセスに対するPCBプロセスで容易に生成可能であるという利点を利用する。これは、PCBプロセスでは、金属層が単一の基板上に連続して形成されるのではなく最終的に互いに積層される分離した基板上に作製されるので、本質的にそうなる。
【0039】
ここに構想されるようなPCBのディジタル微小流体チップは、一若しくは複数の配線層を有することができる。導体配線パターンは、サブトラクティブ法メッキ、パネルメッキ、パターンメッキ、又はアディティブ法メッキによってPCB基板上に転写される。一つのみの配線層が使用されるとき、液滴操作用の電極及び電気的な入力/出力の接続用のパッドは、すべて、いずれのビアホールを要しない片面基板上に作られる。一般に、2つ以上の配線層は、多層基板を用いることを必要とする複雑な液滴取り扱い操作のために必要であろう。多層基板は、いくつかの両面基板の接合により、又は機械的な孔あけを要しない(例えば、ビアホールは、化学的にエッチングされ又はレーザで孔あけされて、無電解メッキされる)基板を増加し/連続することにより、組み立てられる。定義により、両面基板は、貫通孔金属化をしない基板、及び貫通孔金属化をする基板にさらに分類可能な基板の両側で配線を有する。貫通孔金属化を行った基板は、メッキされた貫通孔金属化と、充填された貫通孔金属化とにさらに分類される。メッキされた貫通孔金属化では、孔は、銅メッキ(例えば電気メッキ又は無電解メッキ、又はそれの組み合わせ)によって金属化され、また、充填された貫通孔金属化では、孔は、銅ペースト、銀ペースト、導電性エポキシ樹脂などのような導体ペーストで満たすことができる。
【0040】
ディジタル微小流体チップでは、貫通孔(即ちビアホール)は、基板の対向面に電気的接続を行うため、多層基板の一側面上の駆動電極の中心を通ってあけられる。液滴の底面積は、駆動電極の領域によって規定される。小さな液滴体積を得るため、駆動電極の領域は、最小にする必要がある。ビアホールは駆動電極を貫通してあけられるので、パッド/ランドの直径を含むビアホールの直径を最小にすることは重要である。したがって、ビアホールは、PCBプロセスにおいて、得ることのできる液滴の最小体積を規定する重要な役割を果たす。PCB産業は、配線ルーティング溝を阻止するのを防止すること、及びトレース用に利用可能なPCB表面領域を最大にすることである異なる理由のために、ビアホールのサイズを小さくしている。多くの作り上げたプロセスは、エキシマー・レーザーを用いることによってパンチングすることで形成される小さなビアを用いる。PCB産業にて使用される多数の作成されたプロセスのバリエーションが、以下のものを含み、但しそれらに限定されず、存在する: ビアが写真形成されるSurface Laminar Circuits(SLC); ビアが平行にドライプラズマエッチングされるDYCOstrateTM; 最も外側の誘電体が感光性で、内側層が通例の多層基板を構成するFilm Redistribution Layers(FRL); Conductive Adhesive Bonded Flex (Z−Link); 誘電体が感光性であるBuilt−up Structure System (IBSS); CO2レーザが孔あけに使用されビア及び孔が銀ペーストで充填されるSequential Bonding Cores/Any−Layer Inner Via−hole (ALIVH); 別個の回路がステンレス鋼キャリアーに準備され、FR−4プリプレッグ上に積層されるCarrier Formed Circuits; 片側のエポキシ樹脂コーティング箔が熱及び圧力で延ばされ積層されるRoll Sheet Buildup; 及び、roll sheet buildupに類似するが両面又は多層の回路が積層されるSheet Buildup。ディジタル微小流体チップ用の作成された基板(Z−Link)を使用する一つの実施形態では、ポリイミドを背部をつけた銅箔から成る複数の曲がる基板が互いに積層され、多層基板を形成するため硬い基板に積層することができる。この場合、各フレックス層の孔は、パンチするか、レーザで孔あけされるか、又はプラズマで孔あけ可能である。種々の層を相互接続する孔は、導電性の接着剤によって充填される。
【0041】
一般的な実施形態
図1A〜1D、2A〜2B、3A〜3B、4A〜4B、及び
図5を参照して、液滴操作用のPCBプロセスの基板を適応させるための必要条件をより詳細に説明する。さらに詳細に以下に説明するように、
図1A〜1Dは、電極内に充填された又は非充填のビアホールを有するPCB上の厳密な同一平面配置を含む、PCBのディジタル微小流体チップ10に関する。
図2A〜2Bは、電極内に充填された又は非充填のビアホールを有するPCB上の実質的な同一平面配置を含む、PCBのディジタル微小流体チップ20に関する。
図3A〜3Bは、電極内に充填された又は非充填のビアホールを有するPCB上の埋め込まれた同一平面配置を含む、PCBのディジタル微小流体チップ30に関する。
図4A〜4Bは、電極内に充填された又は非充填のビアホールを有するPCB上の平行な板又は2つの平面の配置を含む、PCBのディジタル微小流体チップ40に関する。また、
図5は、液滴操作用のPCB上でビアホールを有する電極の密なアレイに置かれた液滴を図示する。
図5は、本主題の概念を一般的に示しており、ここで、液体試料は、独立して分配され、輸送され、培養され、検出され、又は他の液滴と反応する(「ディジタル微小流体」のアプローチ」)ことのできる個別の液滴Dへディジタル化される。
【0042】
図1A〜1D、2A〜2B、3A〜3B、及び4A〜4Bに示される実施形態の各々では、また、個々により詳細に以下に記載されるように、PCB基板12が設けられ、該基板は、上部の第1側面13及び底部の第2側面14を有する。銅をトレースした駆動電極のような駆動制御電極(あるいはエレメント)16は、PCB12の上部面13に設けることができ、及び銅をトレースした基準電極又は平行板基準電極のような基準電極(あるいはエレメント)18は、液滴操作用の様々な構成に提供することができる。液体のフォトイメージ可能(LPI)な半田マスクのような半田マスクは、電子部品の配置の間に、腐食液又はメッキの動作から、又は半田から銅の配線を保護するために、外部の層として従来のPCBプロセスの中で典型的に用いられる。しかしながら、本主題による液滴を駆動するその有用性では、この外部の層は、駆動及び基準電極16、18に印加される電位から液滴を隔離する役目をする絶縁体22である。駆動電極16は、絶縁体22、好ましくはLPI半田マスク又は一時的な半田マスクを含む他の誘電体によって完全に絶縁される。完全な絶縁は、駆動電極16がエッジを含む全ての側面をカバーすることを意味する。絶縁体22(LPI 半田マスク)は、これらに限定されないが、カーテン・コーティング、スピンコーティング、スプレー・コーティング、又はスクリーン印刷を含む従来のプロセスを用いて適用される。基準電極18の必要性がある場合、銅の形状のいくつかは、そのまま残すことができ、液滴に直接、基準電位を供給するために絶縁されない。この露出部分は、半田マスクの解像度及び銅層への半田マスク層の位置合わせと同様に銅形状の解像度により規定されるPCBプロセスにより許容される程度に駆動電極16に近づいている。基準電極18の露出部分は、浸漬銀、浸漬金、及び無電解のニッケル/浸漬金(ENIG)を一般に含むオプションの導電性の表面仕上げを有することができる。
【0043】
基板材料
上述したように、本主題の静電気の微小流体デバイスは、PCB製造用に一般に使用されるほぼいずれの基板材料にて製造可能である基板12を含む。それらの材料は、以下のものに限定されないが、FR−2、FR−4、FR−5、ポリイミド、KaptonTM、RogersTM、DuroidTM、BT、シアン酸塩エステル、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。硬い、硬い可撓性、又はフレキシブルな基板は、それらのデバイスの製造に基材12として用いることができる。
【0044】
電極形成
PCBの最も外側の導電性の銅層は、電場により液体の液滴を操作するのに必要な駆動電極を形成するためにパターン化される。駆動電極16は、特別なアプリケーションによって、種々の形状及び形態を採ることができる。例えば、細長い電極構造は勿論、四角形の電極アレイ、円形形状の電極アレイ、六角形形状の電極アレイ、星形形状のアレイ、及び他のかみ合った又は櫛形の電極形状が使用可能である。基準電極18も、同じ導電性の層、又は同一基板(同一平面)上の別個の導電性層にパターン化することができ、又は別個の基板(2つの平面)上に設けることもできる。
【0045】
図1A〜1Dに示されるように一つの実施形態において、基準電極18は、駆動制御電極16と同じ導電性の銅層にパターン化することができ、ここで絶縁体22は、真下の導電性層を露出するために基準電極18の部分を超えて除去される。このパターンは、基準電極18と液体の液滴との間の電気的接触を同時に可能にする。この実施形態では、基準電極18は、駆動制御電極16に隣接して、又は駆動制御電極16間に位置することができる。
【0046】
図2A〜2Bに示されるように他の実施形態では、基準エレメント18は、絶縁体22の上部に直接にパターン化された別個の導電性層として形成することができる。該導電性層は、真空処理、無電解メッキ、電気メッキ、薄層構造、又は他の手段によって堆積され、基準エレメント18を形成するためにパターン化された薄い金属膜であってもよい。基準エレメント18は、様々な形状又は形態を採ることができ、駆動エレメント16の直上方に、及び/又は駆動エレメント16に(つまり、基準エレメント18は、駆動制御エレメント16に正確に配列される必要はない)位置することができる。一つの配列では、基準エレメント18は、駆動エレメント16上に重畳されたグリッド状の又はメッシュ状の導電性の配線を形成することができる。この配置では、基準エレメント18は、オーバーラップするところで制御電極16を電気的にシールドすることができ、よって、駆動制御エレメント16に対して基準エレメント18のサイズを合わせて配置したとき、オーバーラップ部分は、理想的に最小化されるべきである。他の配列では、グリッドのピッチは、電極のピッチよりも小さくなるように選択されるが、電極のピッチの整数倍ではない。この別個の導電性層の配置は、付加的な金属PCBプロセスを使用して実現可能であり、ここで、金属は、絶縁体22に堆積されるか、あるいは、基準エレメント18及び駆動エレメント16が薄いフレキシブルな回路基板の対向面上に形成される、サブトラクティブ法を用いて実現可能である。後者の場合、フレキシブル回路基板は、駆動制御エレメント16用の絶縁体として役立ち、また、フレキシブル回路は、機械的な剛性を提供し、かつ電極に電気的な相互接続を供給するために硬い基板に積層可能である。
【0047】
図3A〜3Bに示されるようなその他の実施形態では、基準エレメント18は、駆動制御エレメント16内に埋め込まれた同一平面配列にて提供可能である。かかる配列では、メッキ26を有するビアホール25は、絶縁体22によってカバーされない領域において基準エレメント18として機能することができる。メッキ26を有し、絶縁体22によってカバーされる他のビアホール25もまた設けることができ、以下に記載するように機能することができる。
【0048】
図4A〜4Bに示されるような他の実施形態では、基準エレメント18は、平行な板として別個の基板上に提供することができる。一般的には、駆動電極16を含む基板、及び基準エレメント18を含む基板は、液体を含むためにそれらの間にギャップGで互いに対向して置かれ、それによってサンドイッチ構造を作成する。さらなる平行板の配置は、それら自身により静電気のPCB微小流体的デバイスとなる2つの対向する表面を含むことができ(上部の「板」は、上部の第1側面13’及び底部の第2側面14’を有するPCBになることができる)、両方の表面に駆動エレメント16を有し、少なくとも1つの表面に基準エレメント18を有することができる。
【0049】
電場に基づく液滴操作のために駆動電極16を充電するには電流がほとんど必要ないので、電極を形成する導電材料は、PCB用途用に一般的に許容されるものよりも実質的により抵抗性であるものとすることができる。このように、銅に加えて、広範囲の異なるタイプの導体が使用可能である。このことは、PCB上でパッド及びトレースを形成するのに適さないと一般的に考えられる導体を含む。同様に、導電性層は、PCB用に一般的に好まれるものよりも実質的に薄くすることができる。理想的には、導電性層は、絶縁層によってその後にカバーされねばならない導電性特性の地形を最小にするのにできるだけ薄くあるべきである。さらに、導体厚さの最小化は、表面上の液滴の一貫して信頼できる操作のために望ましいPCB表面の平坦さを促進する。導体の厚さは、最小の導体厚さ(例えば、1/4オンス、つまり銅のクラッディングの5μm層)を有する開始基板材料を用いることにより、又は絶縁体の堆積の前に導体厚さを減じるため、研磨又はエッチングのステップを加えることにより、最小化可能である。
【0050】
電極相互接続及びビア
PCB基板12上の導電トレースは、駆動電極16及び基準エレメント18に電気的な接続をなすために用いられる。駆動電極16又は基準エレメント18のそれぞれは、一若しくは複数の他の駆動電極16又は基準エレメント18に、同じPCB基板12上の他の電子部品、又は外部接続用のパッドに接続することができる。一つの配置では、外部接続用のパッドは、PCBのエッジに沿って提供され、また、PCBは、エッジ・カード・コネクター・ソケット28での使用に適応される(
図8A〜8Bを参照)。他の配置では、パッドのアレイがPCBの表面に配置され、パッドは、バネを装荷したピン、テストクリップ、異方性導電性材料29の細片を用いて接続される(
図9Aを参照)。さらに他の配置では、外部回路への接続を容易にするため、ピンヘッダー、ソケット・コネクター、又は他の個別の電子部品がPCBに接続される。
【0051】
図1A〜1D、2A〜2B、3A〜3B、及び4A〜4Bに示すように、基板12の異なる導電性層間の電気的接続は、技術にて知られるようにPCB方法によりなすことができ、それによって、孔又はビアホール24は、電気的に接続されるべき、基板12の一方の側面上の2つの導電性領域(上表面13及び底表面14)から基板12を貫通してあけられる。図では円にて示されるが、ビアホール24は、基板材料12に形成可能な、正方形、楕円形などのいずれの形状でもありうることが理解される。孔24の内部は、また、ビアホールの位置で2つの対向面間で電気的な連続性が確立されるように、無電解メッキ又は電気メッキにより、あるいはメッキ26(メッキスルー・ホール金属化)を形成する他の方法を使用することにより、金属化することができる。上述したように、また、導電性ペースト(充填貫通孔金属化)が電気的な連続性を確立するために、メッキ貫通孔金属化の代わりに使用可能である。
【0052】
電極とトレースとの電気的な接続を確立するため、いくつかのアプローチが利用可能である。一つのアプローチでは、ワイヤーあるいはトレースがPCBの同じ側面の電極から離れて導かれ、ワイヤーは、電極から離れたビア位置で必要なら基板を貫通して引き回すことができる。他のアプローチでは、ビアは電極内に作られる。この場合、あけられた孔を満たし又はカバーするための手段は、ビア孔により液体が入る、又は蒸発するのを防止するように設けられる必要があるかもしれない。ビアホール24は、無電解又は電気メッキを用いて閉じられメッキ可能であり、又は、種々の技術あるいは種々の材料(導電性のエポキシ樹脂、非導電性エポキシ樹脂、透明なエポキシ樹脂、又は他の材料)を使用して充填又はカバー可能である。これらのフィラー材料のいずれかでビアホールを満たした後、PCB表面は、表面で移動する液滴にビアホールを完全に覆い隠すため、無電解又は電気メッキにより、銅でカバー可能である。
【0053】
一つのアプローチでは、孔は、従来の液体半田マスク材料のように、液体の形態で置かれる絶縁体が、粘性又は表面張力効果により孔を浸透するのが防止される程度に小さく作製され、又は、液体半田マスクがビアホールに入ることができ、それにより半田マスク充填ビアホール24’(
図1B参照)を形成する程度に大きく作製される。あるいは、特別の処理ステップが、絶縁体を堆積する前に、あけられた孔をエポキシ又は同様の材料で満たし、それによってエポキシ樹脂充填ビアホール24’’(
図1C参照)、あるいは透明エポキシ樹脂充填ビアホール24’’’(
図1D参照)を形成するために、加えられることがある。他のアプローチは、孔に「テントをはる」、効果的に孔をカバーしチップ表面をシールするドライフィルム絶縁体材料を用いることである。これらのアプローチのいくつかのものの可能な不都合は、電場生成に用いることができる電極の領域を減少する他の導電性電極の境界内に非導電性領域の形成にそれらが帰着するということである。この問題を扱うために、いくつかの技術は、孔を満たす導電性のエポキシ樹脂の使用、及び非導電性フィラー材料を覆う導電性の表面コーティングを提供するために無電解メッキ又は電気メッキの使用を含めて、導電性の充填材を生成するために利用可能である。他のもう一つは、孔が金属で完全に満たされるようになるように、孔に電気メッキを施すことである。このアプローチは、大量の電気メッキにより基板表面に堆積された過剰の金属を除去する平面化ステップを必要とすることがある。基板表面の導体厚さの平面化及び制御は、追加の金属がビアを取り囲む領域に単に加えられる「ボタンメッキ」プロセスの使用を通じてこの場合単純化することができる。なされた「ボタン」は、PCBの表面を研磨することにより除去可能である。この方法では、相当量の金属は、PCB表面上の金属の最終厚さを増加させずに、あけられた孔内に堆積することができる。
【0054】
電極絶縁
図1A−1D、2A−2B、3A−3B及び4A−4Bをさらに参照する。駆動電極16は、DC電位が駆動電極に印加されるとき、電極と導電液体との間に直流電流が流れるのを防ぐために絶縁体22によって一般的に電気的に絶縁される。電場により液滴操作が誘導されるように、AC電位が駆動電極に同様に印加されることに注目されるべきである。いかなる誘電体も用いることができるが、PCB上の銅配線を保護し、かつ電子部品が結局接合されるところのみ銅を露出するために、半田マスクは、従来のPCBプロセスで一般的に用いられる。駆動電極16を絶縁するための最も簡単なアプローチは、絶縁体22として半田マスク材料(あるいは他の誘電体)を用いることである。液体及びドライフィルムの両半田マスクは、電極絶縁体22として使用に適している。フォトイメージ可能な半田マスクは、基準エレメント18又は絶縁体22の真下の接続パッドへの電気的なアクセスを提供するために容易にパターン化することができるので、一般に好ましい。
【0055】
半田マスクは、2つの種類において利用可能である:液体のフォトイメージ可能なもの(LPI)、又はドライフィルム半田マスク(DFSS)。LPIは等角ではない。DFSSは、ほぼ垂直な側壁を提供し、電気メッキモールドを製造し、流体の溝のシールを行い、マイクロ・チャネルのパウダーブラスティング用のマスクとして報告されている。しかしながら、DFSSは、液体の貯蔵部を形成するためには用いられておらず、あるいは、本主題に構想を描くように、2つの平行な板間のスタンドオフ又はシールを提供するためのガスケットのように形成するためには用いられていない。
【0056】
ある応用では、半田マスク材料は、熱的な、機械的な、電気的な、又は光学的な性質の所望の組み合わせで存在しないことがある。これらの場合では、半田マスク材料は、他のタイプの絶縁体材料と取り替えるか、又は他のタイプの絶縁体材料と組み合わせることができる。例えばポリイミドのようなスピンオン材料、TEFLON(登録商標)AF及びCytopTMのような浸漬、スピン、スプレー、又はブラシ被覆可能な材料、二酸化ケイ素のような蒸着又はスパッタされた材料、及びパリレンのようなポリマーは、PCB基板に適用可能である。
【0057】
絶縁体22用の半田マスクに代わるものとして、パリレンの薄層が誘電体として物理蒸着(PVD)プロセスで堆積することができる。パリレンは、パリレンC、D及びNを含む、ポリ(パラ−キシリレン)ポリマー系の一般的な名称である。この開示の中で用いられるように、パリレンは、いずれのポリ(パラ−キシリレン)組成物及びそれらの混合物を意味する。パリレンを有する主な利点は、等角の層として堆積でき、及びLPI及びDFSSの両方よりずっと少ない厚さで堆積することができるということである。PCB方法では、LPIは、0.5ミル(1ミルの=25.4μm)と同様の薄さで被覆可能であり、一方、ピンホールの無いパリレンは、0.5μmと同様の薄さで被覆可能である。かかる薄い絶縁体層は、液滴動作に必要な電位を低減する。いくつかの応用では、誘電体は、銅の電極を露出するためにパターン化されなければならない。パリレンは、反応性イオンエッチング、プラズマアッシング、化学的エッチング、又はレーザアブレーションによってパターン化することができる。あるいは、パリレンは、また、テープ(ウェーブソルダリング中のPCB上のコネクタ部をマスクするのに使用されるテープ(例えば、3M(登録商標) Mask Plus II Water Soluble Wave Solder Tape No. 5414)により露出するに必要な領域をマスキングすることで選択的に蒸着することができる。誘電体として用いることができる材料の他の代表的な例は、シリコーン、ポリウレタン、アクリル、及び他のスピンコート可能な又は蒸着可能な誘電体を含む。
【0058】
一般に、液体の動作に必要な電圧を減少するために絶縁体22の厚さを最小にすることが望ましい。
【0059】
スタンドオフ層
半田マスク材料の付加層は、液体の流れをためる又は導くのに使用するウエル及びチャネル(不図示)のようなPCB表面の物理的な構造を作るために蒸着され、パターン化可能であることが構想される。
【0060】
追加プロセス
サブトラクティブ法及びアディティブ法の処理の組み合わせ
その他の実施形態では、サブトラクティブ法及びアディティブ法プロセスの組み合わせが本主題のPCB液滴操作基板を製造するために用いることができる。サブトラクティブ法は、液滴制御電極への全ての電気的なルーティング及び相互接続を形成する多層基板を製造するために用いることができる。パターン化可能な誘電体層が適用可能である。ビアは、レーザードリル又はフォトマスクによってこの誘電体にパターン化することができる。一つの実施形態では、LPIは、誘電体として用いることができる。孔に露出した電極パッドは、誘電体表面で平面にするために任意にメッキすることができる。このポイントでは、アディティブプロセスは、より小さな配線間隔を得ることができるとき、無電解の銅の堆積を用いて、全ての電極を形成するために用いることができる。
【0061】
処理後
完成したデバイスは、標準のPCBプロセス及び非標準のプロセスの組み合わせを含むことができる。例えば、ワンステップの疎水性コーティングは、液滴の輸送を容易にするために完成したPCBに適用可能である。更に、誘電体としての半田マスクの使用は、絶縁されていないPCBが標準のPCBプロセスにて利用されない特別な材料で続いてコーティング可能であるような応用例では、望ましくないかもしれない。しかしながら、そのような場合において、導電性トレースを形成するための開始基板及びPCBプロセスとしてのPCBの使用は、完全なPCB互換のプロセスの利点の多く、大部分ではないにしても、をまだ提供する。
【0062】
一つの実施形態では、電気的なルーティングに必要な全ての導体配線は、多層PCB上に作製可能である。銅の外部層の幾つか又は全ては、研磨又は化学的エッチングにより除去することができる。液滴操作に必要な全ての電気的配線を含むこのPCBは、より細かい配線間隔で駆動及び基準電極をパターン化するため、さらなるプロセス用の基板として都合がよい。細かい配線間隔を得るため、制御電極は、薄膜蒸着及びフォトリソグラフィーを含む半導体処理技術を用いてパターン化可能である。
【0063】
同一平面上基準エレメントのメッキアップ
駆動電極16(例えば
図1A〜1Dを参照)と同じ層に基準電極18もパターン化される実施形態では、単に駆動電極をカバーし基準電極を開かせるように、LPI半田マスクに相当数のくぼみがある場合がある。このくぼみは、液滴が基準エレメントに接触できないように、操作の信頼度に影響することがある。この場合、基準エレメントの表面がLPI半田マスク(不図示)と平面であるように、基準電極は、メッキアップすることができる。このメッキ工程は、銅又はニッケルでの表面処理の前に実行可能である。
【0064】
外側表面上の基準電極
一つの実施形態では、上述したように全ての銅の電極が形成された後、LPIコーティングは、レベル間誘電体として用いることができ、他の銅の層は、基準電極として作用するためにLPIを覆いパターン化することができる。誘電体は、また、典型的な多層構造において薄い(2ミル以下)プリプレッグPCB基板になりえ、又は、それは、最外層上で基準電極として作用する銅の特徴を持った柔軟性のある基板でありえる。この最も外側の銅の層の真下の銅の層は、駆動電極を規定する銅の特徴を有している。
【0065】
PCB上へのエレクトロニクス及び検出の統合
その他の実施形態では、本主題のPCBは、液体の取り扱いに使用されていない領域において電子部品から成ることができるという構想が描かれる。電子部品は、電気化学の測定用の、マイクロコントローラ、リレー、高電圧マルチプレクサー、電圧変換器(電圧をステップアップするDC−DC、DC−AC、AC−DCなど)、LEDのような電気光学エレメント、フォトダイオード、光電子増倍管チューブ(PMT)、加熱エレメント、サーミスター、抵抗温度デバイス(RTDs)、及び他の電極を含むことができる。銅のトレースも、液滴のインピーダンス測定に用いることができる。抵抗加熱エレメントは、曲がりくねった銅トレースにより実現され、抵抗加熱の特徴は、銅配線の寸法に依存するだろう。一つの実施形態では、PMT又はフォトダイオードのような光学検出器を含んでいるPCBは、液滴操作PCB基板とサンドイッチを形成するために平行な板として用いることができる。他の実施形態では、標準PCBプロセスで得られる金で被覆された電極は、電気化学測定に用いることができる。
【0066】
流体入口/出口のためのドリル孔
PCB上の機械的に空けられた孔は、他の表面へ基板を付着又は固定するために一般的に用いられる。本主題のPCB微小流体的チップにおいて、それらのあけられた孔は、PCB基板の表面へ、又はその表面からの液体の追加及び除去のための流体の入口/出口ポートとして作用するために使用可能であるということが構想される。それはさらに、これらのあけられた孔は、次のものに限定されないが、フレキシブルなチューブ、注射器、ピペット、ガラス毛細管、経静脈ライン、あるいはマイクロダイアリシス管腔を含む液体源と結びあわされることができるということが構想される。これらのチューブにおける液体は、圧力又は他のいずれの手段によって駆動することができる。管からの液体の連続的な流れは、流れから直接に、又はPCB上の中間の貯蔵部を通って液滴に離散化可能なそれらのドリル孔を通してPCBにインターフェース連結可能である。
【0067】
例えば、一つの実施形態では、金属化されたドリル孔(例えば
図9A〜9Bにおけるドリル孔32を参照)は、電極表面上に液体を置くか除去するための流体の入口/出口ポートとして動作するため、制御電極に隣接して位置することができる。他の実施形態では、金属化されていないドリル孔(例えば
図9A〜9Bにおけるドリル孔34を参照)は、流体の入出力に備えることができ、半田マスクにおいてエッチングされ貯蔵部(不図示)へ導く溝に接続可能である。この貯蔵部は、電場媒介の液滴分配技術を用いることによるような、分配用の電極を有することができる。さらに他の実施形態では、流体の入口/出口に備えられる金属化されたドリル孔は、誘電体によってカバー可能であり、さらにドリル孔のまわりに電極の同心リングを有する。この場合、液滴は、孔を通り液体に圧力を加えて、次に、電極上に液滴を分配するために電場を用いることにより、孔から放射状に分配可能である。追加の実施形態では、ドリル孔は、孔領域における液滴を集め、液滴が孔の真下に置かれた容器内へ重力によって滴ることを可能にすることにより、廃物用の貯蔵部又はチップから離れた他の容器へ液体を排出するために使用可能である。
【0068】
平面から離れたビアホールからの液滴抽出
一般に、本主題の装置上で移動された液滴は、PCBを備える一つ又は両方の板を有するサンドイッチ構造における水平面内で操作される。その他の実施形態では、PCB上に空けられた孔は、鉛直面においてサンドイッチ構造から離れた液滴を抽出するために使用可能である。液滴は、様々な方法で孔を通して抽出することができる。サンドイッチ構造に閉じこめられた液滴と大きな孔との間の圧力差を利用する一つの方法では、孔の真下にまさに位置決めすることにより、液滴は、液滴の半径よりも大きな直径を有する孔を通って無抵抗で押すことができる。他の板がサンドイッチ構造に加えられ、液滴が、電位を印加することにより新しく形成されたサンドイッチ構造へ一つのサンドイッチ構造から引っ張られる場合、電気的な手段によって液滴を抽出することができる。この場合、抽出過程を単純化するために、サンドイッチ構造は、同一平面のPCB基板と電極を有する他の基板との間に形成することができる。これらの両方の板が平行板の配置を形成している間、液滴は、同一平面のPCB基板のみに接触し、及び、平面から離れて液滴を静電気的に引っ張るために電位が一方の基板に印加されるとき、一方の基板上へ垂直に移動するだろう。液滴は、また、他の板上に型押しをするために重力で垂直に移動可能である。液滴のかかる垂直動作のための応用は、DNA又はタンパク質の型押し応用を含んでいる。かかる孔から引き出された液滴は、また、吸光度測定用の経路長を増すために、及び別の層に輸送を可能にする他のサンドイッチ構造内へ輸送するために使用可能である。
【0069】
生化学合成及び分析
多くの生化学的反応は、本主題に示されるように、PCB基板上の液体の操作によって行なうことができる。ここに示されるように、本主題は、光学的な、電気的な検出手段により試料液内の目標分析物を検出するための装置を提供する。試料液は、次のものに限定されないが、体液(次のものに限定されないが、哺乳類サンプル、特に人間のサンプルが好ましく、事実上いずれかの有機体の血液、汗、涙、尿、血漿、血清、リンパ液、唾液、肛門及び膣の分泌物、精液); 食物及び環境上のサンプル(次のものに限定されないが、空気、農産物、水、及び土壌のサンプル); 細菌戦争薬剤サンプル; 研究サンプル; 浄化されたゲノムのDNA、RNA、タンパク質、細胞などのような浄化されたサンプル; 及び生のサンプル(バクテリア、ビールス、菌類など)を含むかなり多くの品目を有することができる。ここに示されるようなPCB基板上で行なうことができる分析のタイプは、サンドイッチ及び均質の配置を含む、酵素の分析、等温での又は熱循環によるDNA増幅、免疫アッセイ、及び光学的な及び電気的な検出手段を備えた細胞に基づく分析を含む。生理学のサンプル中で測定された分析物は、代謝物質、電解質、ガス、タンパク質、ホルモン、サイトカイニン、ペプチド、DNA及びRNAを含んでいる。
【0070】
一つの実施形態では、ヒトの生理学のサンプルは、PCB上の貯蔵部に入力することができる。貯蔵部は、ドライフィルム半田マスクによって形成することができる。サンプルは、PCB上に供給される、又はPCB上に入力される適切な試薬液滴と混合される液滴へ分配することができる。酵素分析のいくつかは、光学的に(例えば吸光度、反射率測定、蛍光及びルミネセンスによって)モニターすることができる。吸光度の場合、吸光度測定用のビアホールの一つに位置決めされた液滴を光が通過可能なように、ビアホールは、光学的に透明な材料で満たすことができる。
【0071】
他の実施形態では、生化学のサンプルは、また、ここに記載された液滴操作技術を用いて、PCB基板上で合成することができる。例えば、PCB上で、多くのタンパク質液滴は、貯蔵部から分配され、異なった試薬と混合され、タンパク質を結晶させるための条件を自動的に見つけるように培養されることができる。
【0072】
側壁輸送
その他の実施形態では、液滴の高さと同じオーダーの厚さを有する銅トレースは、液滴が同じ基板上のトレースと絶縁体で覆われているトレースとの間に含まれるように、使用可能である。液滴は、それに垂直よりもむしろ基板平面に主に適用される電場によって作動される。同一平面上の配置と異なり、液滴が、同一平面上の駆動及び基準電極及び平行板の配置に置かれるところで、液滴が、基板上の駆動電極と平行基板上の共通の基準電極との間にはさまれる場合、この構造において、液滴は、同一平面上の駆動と基準電極との間にはさまれる。
【0073】
詳しい実施形態
本主題の一般的な実施形態及びプロセスが上述されたが、微小体積の液体試料を操作する装置の製造のより詳しい実施形態を以下に述べる。ここで上記装置は、プリント回路基板を備える。
【0074】
好ましい実施形態では、FR−4基板は、両面に1/4オンス(〜9μm)の銅箔を有して層板にされる。8ミルのビアホールは基板を貫通してあけられる。その後、これらのビアホールは、銅で電気メッキされ、半田マスク又はエポキシ樹脂で満たされる。好ましくは、ビアホールは、約5μmの厚さまでボタンメッキされる。ここでビアホールは特にメッキされ、一方、基板の残り部分はマスクでカバーされる。ボタンは、機械的に平面化され、そしてビアホールは半田マスク又は非導電性エポキシ樹脂で満たされる。ビアホールを処理した後、フラッシュメッキ工程が5μm未満の厚さまで行なわれる。充填されていないビアホールが要求される場合、非充填の孔を得るため、孔あけの別の工程が実行され、必要ならメッキが施される。このステージでは、設計された電極パターンは、マスクを通ってそれをエッチングすることにより、2ミルの最小の配線間隔を備えた銅上に転送される。LPIは、約0.5ミルの厚さにパターン化され覆われる。最後に、ドライフィルム半田マスクは、液体を保持し、かつスタンドオフ材料として作用するように、物理的な構造(例えばウェル及び/又は溝)を形成するためにラミネートされパターン化される。他の実施形態では、スタンドオフ層は、一若しくは複数のLPI半田マスクコーティングを使用して、又は銅箔をラミネート及びエッチングすることにより得ることができる。
【0075】
実験試験及び結果
ここに示されるような電場を媒介とした液滴マニピュレーター用の2層単一基板設計が、市販のエレクトロニクスPCBメーカーに提出されテストされ、実験が行なわれた。設計は、大きな液体体積から液滴分配用の電極形状を特定化することはもちろん、液滴の輸送及び混合用の異なる制御電極形状のアレイからなる。電極は、PCB表面上の銅と同じ層にパターン化された導電性トレースによって接点パッドに接続される。必要なところでは、トレースは、制御電極から離れた位置で従来のビアを用いて基板の2つの側面間に経路が定められる。いくつかの異なったチップ設計及び相互接続案がテストされた。
【0076】
いくつかのチップは、電極の単一の直線的なアレイの複数のコピーを含んでいる。ここで、アレイの各コピーにおいて対応するエレメントは、同じ電気信号に接続される。したがって、複数の同一のアレイは、同時に制御可能である。他のチップは、電極「バス」又は輸送構造を含む。ここで、制御電極の連続したラインにおける各4番目の電極が同じ制御信号に接続される。かかる構造の使用は、制御信号の固定された数を用いて任意に長い輸送経路が制御されることを可能にする。複数の液滴は、バス上に又はバスから離れて揺り動かされることができ、同期して輸送される。接点パッドは、PCBの側面に沿って配置され、標準のエッジ・カード・コネクター又は標準のSOIC検査クリップを用いて接触されるように設計される。
【0077】
図6、7、8A〜8B、及び9A〜9Bは、実験の目的のために製造されたチップのいくつかの例を示す。
図6は、制御電極の異なる形状(円形16a、正方形16b、小さな曲率を持った星形16c、より大きな曲率を持った星形16d)(
図7を参照))及びサイズの液滴輸送性能をテストするために使用されたPCBチップの正面を図示している(結果は
図10〜12を参照して以下に示す)。
図6に示されたチップは、16の異なった直線的な電極アレイを含んでいる。
図8A及び8Bは、液滴を貯蔵し混合するチップ上の貯蔵部から分配する他の構造とともに、3相の液滴輸送を特色とするチップ設計の正面図及び背面図である。ビア24は、PCBの背面から正面側の制御電極まで電気信号の経路を定めるために使用され、電気的接触は、PCBの一つの側面に沿って位置するエッジ・カード・コネクター・ソケット28を通ってなされる。
図9A及び9Bは、液滴を貯蔵し混合する流体の入口/出口ポート32から分配するための他の構造と同様に、3相液滴輸送を特徴づける別のチップ設計の正面図及び背面図である。ビア24は、PCBの背面から正面側の制御電極まで電気信号の経路を定めるために使用され、電気的接触は、SOIC検査クリップ29を用いて接触するように設計されたパッドアレイを通してなされる。
【0078】
制御電極のアレイは、1.0mm又は1.5mmのいずれかのピッチ、及び隣接した電極間に名目上2ミルの間隔で設計される。基板材料は、1/4オンスの銅のクラッディングを有するFR−4である。銅は、制御電極、トレース、及び接点パッドを形成するためにパターン化される。プロセスで使用される名目上最小の配線幅/間隔は、2ミル/2ミルであり、それは、制御電極と接点パッドとの間のトレース幅と同様に、隣接する電極間で使用される間隔である。液体のフォトイメージ可能な半田マスク材料の、CARAPACE(登録商標) EMP 110 (Electra Polymers & Chemicals 株式会社から入手可能)は、電極絶縁体として使用される。半田マスク絶縁体の名目上の厚さは、0.6ミルである。PCBがメーカーから受け入れられた後、TEFLON(登録商標) AFの薄い疎水性のコーティングがチップの上部プレートに塗布される。TEFLON(登録商標) AFは、PCB表面上に、FC−75の1%の溶解液を3000rpmで20秒、スピンコーティングにより塗布され、その後、150°Cで30分、硬化される。
【0079】
PCBは、ガラスの上部プレートにインジウム酸化スズがコーティングされたサンドイッチとして組み立てられる。液滴に接する全ての内部表面が疎水性であるように、上部プレートは、また、TEFLON(登録商標) AFの薄い層で覆われる。上部プレート上の導電性のインジウム酸化スズフィルムは、基準電極として用いられる。PCBと上部プレートは、およそ0.8mmのギャップによって分離される。電解質(0.1MのKCl)の一若しくは複数の液滴は、サンドイッチ構造に注入され、制御電極上に堆積される。液滴の体積は、単一の電極をカバーするのに十分であり、また、1.5mmピッチの電極に関して約2.2μLであり、1mmピッチの電極に関して1.1μLである。2枚の板の間に残っている体積は、空気又は低粘度(1cSt)のシリコーン油のいずれかで満たされる。
【0080】
図6、7及び10〜12を参照して、米国特許番号6,911,132、及び米国特許出願公開番号2004/0058450、両方、Pamula等、に記述されるように、制御電極の連続作動による液滴の輸送のテストが行われた。
図6に示されるものに類似しているPCBを使用して、テストは、2つの電極サイズ(1.0mm及び1.5mmピッチ)の各々において、4つの異なる電極形状(円形16a、正方形16b、小さな曲率を持った星形16c、より大きな曲率を持った星形16d)(
図7参照)上で行なわれた。
【0081】
各電極サイズ及び形状に関して、
図10及び11に示されるように、隣接した制御電極間で液滴を輸送することができる最高速度は、印加電圧の関数として決定される。液滴は、その閾値を越えた電圧につれて増加する輸送速度で、40V(1.0mmの電極サイズに関し)未満の電圧で連続的に輸送される。より厚い半田マスク絶縁体の使用のため、以前に報告された他のシステムよりも高い電圧が液滴動作に必要である。例えば、半田マスク絶縁は、以前に製造されたデバイスに使用された絶縁よりもおよそ16倍厚い。したがって、輸送メカニズムの静電エネルギー(1/2CV2)依存のために、約4(4)倍大きい電圧が必要とされる。
【0082】
予想されるように、初期のしきい電圧を越えて、輸送速度、及び従って液滴が揺り動かされることができる最大速度は、電圧につれて増加する。テストされた電圧の範囲は、1.5mmの電極に関して約0〜200V、1.0mmの電極に関しておよそ0〜100Vからであり、24Hzまでの液滴輸送速度が観察された。得られたテストカーブは、予想された一般的な形を示した。即ち、より高い電圧が印加されるほど、より高い可能性のある輸送周波数となる。しかしながら、1.5mmの電極(
図10)に関する曲線は、あまり滑らかでなく、電極の形状がかなり影響することを示している。あるいは、1.0mmの電極(
図11)に関する曲線は、全く予測可能であり、電極形状への大きな依存を示さない。さらに、1.0mmの電極のしきい電圧が対応する周波数において1.5mmの電極よりも10〜20V低いという、スケーリング効果があった。
【0083】
図12にグラフで示されるように、液滴輸送の安定性を決定するためにさらなるテストが時間にわたり行なわれた。液滴は、4Hz又は8Hzのいずれかのスイッチング周波数で輸送を保持するために必要な最小電圧で4つの1.5mm四方の電極を横切ってプログラム可能に循環された。5分間隔で、連続的な輸送のための最小電圧がテストされ調節された。1時間、又はさらに行なわれたテストは、時間にわたり電圧要求を増加するという一般的傾向を実証し、それは、たぶん絶縁体の低落及び絶縁体表面の汚れによる。しかしながら、それぞれの場合において、20,000回を超える液滴輸送が実験の間に行なわれた。
【0084】
図13に示されるグラフを参照して、テストは、また、規定のスイッチング周波数で液滴輸送のための最小電圧要求を決定するために行なわれた。PCB上の開いた(つまり、上部プレートなしで同一平面)及び閉じこめた(つまり、上部プレートを有し2つの平面)両方の構造に関するディジタル微小流体的チップが使用された(
図1B及び4Bをそれぞれ参照)。電極(1.5×1.5mm2)は、〜25μmの最終厚さまで銅にパターン化された。基板の背面側に電気的接続を供給するため、150μmのビアホールが各電極内にあけられた。液滴に連続的な接地接続を提供するため、接地レールが全ての駆動電極に並んでパターン化され、液体のフォトイメージ可能な(LPI)半田マスク(〜17μm)が、絶縁体の役割をするためにレールだけを露出してパターン化された。ポスト処理ステップとして、TEFLON(登録商標) AFは、表面を疎水性にするためにブラシコーティングさせる。分極化可能で導電性の液体(1M KCl)の液滴は、開いた(同一平面)、閉じこめた(2つの平面)両方のシステムで輸送された。開いたシステムに関して、液滴は、それぞれ6μlの体積であり、シリコーン油(2μl)の小さなしずくが液滴を囲むように加えられ、出現した。閉じ込められたシステムに関し、各液滴の体積は2.5μlであり、輸送を容易にするために、全チップはシリコーン油で満たされた。
【0085】
連続的に液滴を輸送するのに必要な最小の動作電圧は、1〜32Hzのスイッチング周波数で各システムに関して測定された。
図13にグラフにて示されるように、閉じ込められた(2つの平面)、及び開いた(同一平面)システムでの液滴用の動作電圧は、液滴のスイッチング周波数に依存して、それぞれ140〜260V、及び125〜220Vで変動した。これは、制限されていない液滴によって経験された、たぶん減少されたドラッグにより、制限する上部プレートの欠損によって液滴動作が容易になることを示唆するように見える。液滴の電気分解は、一般的に絶縁体の不適当な適用範囲による、絶縁体としてLPI半田マスクを使用した350Vの最大テスト電圧まで観察されなかった。しかしながら、絶縁体充電は、300Vを越えて経験された。
【0086】
図14のA〜Dを参照して、液滴輸送及び混合を実証する低速度撮影画像の種々の連続した上面図が示されている。
図14のA、Cは、上部プレート(600μm)(2つの平面)によって閉じ込められた液滴に関して、液滴輸送及び混合をそれぞれ図示する。
図14のB、Dは、開いたシステム(同一平面)における液滴に関して、液滴輸送及び混合をそれぞれ図示する。混合は、8Hzのスイッチング周波数で行なわれ、2つの2.5μlの「閉じ込められた」液滴に関して5秒以内で完成され、そして「開いた」システムにおける2つの6μlの液滴に関して1.8秒以内に完成された。したがって、開いた(同一平面)システムで観察された混合速度(単位時間当たりの体積)は、閉じ込められたシステム(2つの平面)の場合のほぼ7倍大きい。この改善された混合は、液滴がより薄くなるとき循環が悪化すると以前に示されたように、より厚い液滴内で経験された増加した循環に起因することがある。
【0087】
参考文献
以下にリストされた参考文献は、ここで使用された方法論、技術、及び/又はプロセスに関する補足、説明、バックグランドの提供、又は教示をそれらが行う範囲まで参考としてここに編入される。この出願内で参照された全ての引用特許文献及び刊行物は、参考としてここに明確に編入される。
【0088】
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【0089】
現在開示された主題の様々な細部は、現在開示された主題の範囲を逸脱せずに変更可能であることが理解されるだろう。更に、上述の説明は、制限の目的ではなく例示のみのためのものである。