特許第5964963号(P5964963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5964963
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】結晶成長用のるつぼ
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/20 20060101AFI20160721BHJP
   C30B 15/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   C30B29/20
   C30B15/10
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-523142(P2014-523142)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公表番号】特表2014-521585(P2014-521585A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】AT2012000206
(87)【国際公開番号】WO2013020153
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】GM445/2011
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】クラインパス、ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルザー、ヘルマン
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−132544(JP,A)
【文献】 特開2011−126719(JP,A)
【文献】 特開2000−319089(JP,A)
【文献】 特開平11−278992(JP,A)
【文献】 特開昭63−156091(JP,A)
【文献】 特開平02−093063(JP,A)
【文献】 特開昭63−093855(JP,A)
【文献】 米国特許第6384367(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/20
C30B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる基礎るつぼ(2)と、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる内側ライニング(3)と、を有し、
前記基礎るつぼ(2)は、ポット状に形成されており、
前記内側ライニング(3)は、前記基礎るつぼ(2)の底部(2a)を覆うポット状の第1の部分(4)と、前記基礎るつぼ(2)の壁部(2b)を少なくとも部分的に覆うジャケット状の第2の部分(5)と、を少なくとも有し、
前記第1の部分(4)と前記第2の部分(5)とは、別部品によって形成されており
少なくとも前記内側ライニング(3)の外面又は前記基礎るつぼ(2)の内面に、結晶生成後に前記内側ライニング(3)を前記基礎るつぼ(2)から容易に取り外すための表面構造が形成されている、
結晶成長用のるつぼ。
【請求項2】
前記第1の部分(4)は、金属薄片から成形によって形成されている、請求項1に記載のるつぼ。
【請求項3】
前記第2の部分(5)は、巻いた金属薄片から形成されている、請求項1又は請求項2に記載のるつぼ。
【請求項4】
前記第1の部分(4)と前記第2の部分(5)とは、互いに一体化結合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のるつぼ。
【請求項5】
前記第1の部分(4)と前記第2の部分(5)とは、前記第1の部分(4)及び前記第2の部分(5)の互いに係合する部位を介して相互に結合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のるつぼ。
【請求項6】
W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる基礎るつぼ(2)と、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる内側ライニング(3)と、を有し、
前記基礎るつぼ(2)は、ポット状に形成されており、
前記内側ライニング(3)は、前記基礎るつぼ(2)よりも薄い壁厚を有し、
サファイア単結晶生成後に前記内側ライニング(3)を前記基礎るつぼ(2)から容易に取り外すための構造が組み入れられており当該構造は、少なくとも前記内側ライニング(3)の外面又は前記基礎るつぼ(2)の内面に形成された表面構造である、
結晶成長用のるつぼ。
【請求項7】
前記内側ライニング(3)は、1mmより薄い壁厚を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のるつぼ。
【請求項8】
少なくとも前記内側ライニング(3)が99%より高い純度を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のるつぼ。
【請求項9】
少なくとも前記内側ライニング(3)は、99%より高い純度の純モリブデンから形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のるつぼ。
【請求項10】
前記前記基礎るつぼ(2)は、99%より高い純度の純タングステンから形成されている請求項9に記載のるつぼ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のるつぼ(1)を使用してサファイア単結晶成長を行う方法であって、
溶融物からの凝固を前記るつぼ(1)において前記内側ライニング(3)の底部分から進めることによってサファイア単結晶を生成することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のるつぼ(1)をサファイア単結晶成長のために使用する方法であって、
溶融物からの凝固をるつぼの底部分から進めることによりサファイア単結晶を生成するようにしたサファイア単結晶成長を行う方法において前記るつぼ(1)を使用することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長用のるつぼに関する。具体的にはサファイア単結晶に関し、当該るつぼを用いてサファイア単結晶成長を行う方法及びサファイア単結晶成長を行うための当該るつぼの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
具体例として、単結晶サファイア基板が、特にLED(発光ダイオード)やある種の半導体レーザを生成するために広く使用される窒化ガリウム(GaN)のエピタキシャルデポジションに際にして使用されており、サファイア単結晶の成長は、長年にわたり極めて強力に研究されている。
【0003】
サファイア単結晶成長のための種々の方法が知られている。単結晶成長の基となる種結晶を部分的に又は全体的に溶融Alからゆっくりと引き上げるようにして単結晶成長を行う方法、あるいは、溶融Alからのゆっくりとした析出を達成するために種結晶をるつぼの底部分に置いて制御下でカウンター冷却して溶融Alからの単結晶成長を行う方法が、特に確立されている。これらの方法における各るつぼとして、通常、高融点の金属、具体的にはMo(モリブデン)、W(タングステン)、Ir(イリジウム)、又はMo−W(モリブデン−タングステン)合金からなるるつぼが使用される。できるだけ不純物のないサファイア単結晶を得るため、利用されるるつぼ材料の高純度と、溶融物及び高温に対するるつぼ材料の安定性が極めて重要である。
【0004】
るつぼ材料に高純度が要求され且つ高融点のるつぼ材料が必要とされるために、サファイア単結晶成長に関してるつぼにかかる費用は重要な問題である。特に、るつぼの底部分に置いた種結晶を出発点として単結晶成長を生じさせるサファイア単結晶成長の場合は、従来使用されている方法において、生成したサファイア単結晶を、使用したつぼを破壊すること無く該るつぼから取り出すこともできない。これは、るつぼ材料に対する単結晶の付着及びプロセス中のるつぼの変形から、結果として生じる。
【0005】
特許文献1に、るつぼと、該るつぼにおいて高融点材を加工処理する方法が開示されている。高融点材の溶融物と接触するるつぼ表面の部分が、金属からなる薄片によって覆われており、当該金属は、少なくとも1800℃の融点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開DE10 2008 060 520A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、サファイア単結晶成長に関してるつぼにかかる費用を低減可能とした、結晶成長用のるつぼ及び当該るつぼを使用してサファイア単結晶成長を行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1に係る、結晶、特にサファイア単結晶成長用のるつぼによって解決される。有益な態様が従属請求項に示されている。
【0009】
るつぼは、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる基礎るつぼと、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる内側ライニングと、を有する。基礎るつぼはポット状に形成されており、内側ライニングは少なくとも、基礎るつぼの底部を覆うポット状の第1の部分と、基礎るつぼの側壁部を少なくとも部分的に覆うジャケット状の第2の部分と、を有する。第1の部分と第2の部分とは別々の部品によって形成されている。
【0010】
当該構成における「これらの合金」は、W−Mo合金、W−Re合金、Mo−Re合金又はW−Mo−Re合金を意味することが分かる。基礎るつぼが内側ライニングを備えていることにより、サファイア単結晶成長に基礎るつぼを繰り返し使用することが可能となり、別の単結晶を生成するためには内側ライニングを交換する必要があるだけである。この場合の内側ライニングは、基礎るつぼと比較して大幅に薄い壁厚で形成することが可能であり、その結果、かなりの材料節約が達成される。内側ライニングを組み入れておくことによって、溶融Alにより生じる基礎るつぼの少なくとも腐食を最大限に避けることができ、したがって基礎るつぼの寿命を大幅に伸ばすことができる。別部品として形成したポット状の第1の部分とジャケット状の第2の部分とを有する内側ライニングは、特に能率的且つ低費用で製造することができる。第1の部分をポット状に形成することによって、とりわけ危険性の高い底部分において、内側ライニングが溶融Alを通さない構成が提供される。第1の部分と第2の部分とを有した構成とすることにより、ポット状の第1の部分は、金属薄片から能率的且つ低費用で製造することが可能である。すなわち例えば、該当形状への深絞り加工やプレス加工によって製造することができる。ジャケット状の第2の部分は、巻き加工によって金属薄片から能率的且つ低費用で製造することができる。この場合の第1の部分及び第2の部分は、好ましくは同じ材料から製造される。一つの部品として内側ライニングを形成する場合と比較して、より費用効率の高い製造が可能で、特に第1の部分は、能率的にポット状に形成することができる。
【0011】
さらに上記解決手段によれば、例えば内側ライニングに使用する圧延ストリップ又は金属薄板が、プレス加工又はターニング加工によって機械加工される一つの部分としてのるつぼよりも高い表面品質をもつか、又はもたせるようにできるので、溶融Alやサファイア単結晶と接触することになる内側ライニングについてより優れた表面品質を提供することができる。したがって、サファイア単結晶のより優れた外観品質を得ることができることになり、外観品質評価に関し有益である。
【0012】
第1の部分と第2の部分とは、例えば相互に固定することができる。この場合の両部分は、内側ライニングが溶融Alを通さず、溶融Alが基礎るつぼの材料と接触することのないように、相互に固定される。この固定は、互いの溶接や焼結などの一体化結合によって、又は、第1の部分の一部及び第2の部分の一部の少なくともいずれかの成形と相互の嵌め合いによる結合によって、あるいは、これらの結合技術の組み合わせによって、実施することができる。固定に代えて、例えば、第1の部分と第2の部分とは、互いに当接して密封を生じるだけにすることもできる。一例をあげると、巻いた金属薄片により形成してある第2の部分の下端を第1の部分中に配置すれば、その第2の部分の残留応力、すなわち巻かれたものが広がろうとする力によって、及び、場合によってはAl出発材料や溶融Alからかかる圧力によって、第1の部分に対する密封を伴って第2の部分が支持される。
【0013】
基礎るつぼ及び内側ライニングは、単結晶成長後に内側ライニングをサファイア単結晶と共に基礎るつぼから取り外しできるように互いに組み合わせてあるのが好ましい。これは、基礎るつぼ及び内側ライニングの適切な材料選択、基礎るつぼ及び内側ライニングの適切な寸法調整、そして、基礎るつぼと内側ライニングとの間の接続構造によって、達成することができる。
【0014】
ポット状の第1の部分を金属薄片から成形によって形成する場合には、費用効率の良い製造方法により、るつぼの底部分における内側ライニングの漏れ防止構成を得られる。当該成形は、例えば、該当形状への深絞り加工又はプレス加工によって実施可能である。
【0015】
巻かれた金属薄片から第2の部分を形成する場合には、該第2の部分の能率的且つ低費用の製造も可能である。例えば、第2の部分は、中空円筒状を形成するように金属薄片を巻くことによって、形成することができる。その継ぎ目は、溶融Alを通さないように形成される。
【0016】
一態様によれば、第1の部分と第2の部分とは互いに一体化結合されている。この場合、内側ライニングが溶融Alを通さず、溶融Alが基礎るつぼと接触しないことが、保証される。一体化結合は、例えば溶接や焼結によって実施することができる。
【0017】
一態様によれば、第1の部分と第2の部分とは、両者の互いに係合する部位を介して相互に結合される。一例として、第1の部分の一部と第2の部分の一部の少なくともいずれかを例えば折り返しの形状に折り曲げ、当該第1の部分及び第2の部分の一部を相互に係合させることができる。場合によっては、この種の結合を溶接又は焼結などによる一体化結合と組み合わせてもよい。この場合、負荷に強く高信頼性の結合が実現される。
【0018】
好ましい態様では、サファイア単結晶生成後に基礎るつぼから内側ライニングを容易に取り外せるようにする構造が組み入れられる。製造の簡素化を目的とした場合、そのような表面構造を、少なくとも内側ライニングの外側に設けることができる。該表面構造は、例えば、内側ライニング及び基礎るつぼの少なくともいずれかの材料におけるエンボス加工により導入可能である。表面構造は、サファイア単結晶生成後に内側ライニング及び基礎るつぼを容易に分解できるような形態で形成するのがよい。例えば、表面構造は、内側ライニングが一部領域でのみ基礎るつぼと接触するような形態に形成することができる。代替案では、このような構造は、基礎るつぼと内側ライニングとの間の少なくとも一部領域に配設された分離中間要素として構成することも可能である。
【0019】
上記課題は、請求項7に係る、結晶、特にサファイア単結晶成長用のるつぼによっても解決される。有益な態様が従属請求項に示されている。
【0020】
このるつぼは、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる基礎るつぼと、W、Mo、Re、又はこれらの合金からなる内側ライニングと、を有する。基礎るつぼは、ポット状に形成され、内側ライニングは、基礎るつぼよりも壁厚が薄い。サファイア単結晶生成後に基礎るつぼから内側ライニングを容易に取り外せるようにする構造が組み入れられる。当該構造は、例えば、内側ライニングの材料から又は基礎るつぼの材料から形成可能であり、特に、内側ライニング及び基礎るつぼの少なくともいずれかの表面の構造として形成され得る。あるいは、当該構造は、基礎るつぼと内側ライニングとの間の少なくとも一部領域に配設した分離要素として構成することも可能である。
【0021】
一態様によれば、上記構造は、少なくとも内側ライニングの外面か又は少なくとも基礎るつぼの内面、あるいはその両方の表面構造によって形成される。この場合、るつぼの極めて簡単な構成により、生成後のサファイア単結晶を容易に基礎るつぼから取り出せるようになり、この結果、信頼性をもって繰り返しるつぼを使用することができる。
【0022】
一態様によれば、上記構造は、内側ライニングと基礎るつぼとの間に配設した分離中間要素によって形成される。該中間要素は、内側ライニングと基礎るつぼとの間の全域に組み入れることも可能であるし、内側ライニングと基礎るつぼとの間の一部領域にのみ組み入れることも可能である。一例として、中間要素は、所定の形、特に波形を付けた金属薄片を、内側ライニングと基礎るつぼとの間の少なくとも一部領域にスペーサとして配置することにより、構成することが可能である。この場合、Al粉末を融解してサファイア単結晶を生成する間、中間要素が、基礎るつぼと内側ライニングとの間に間隔を確保する。単結晶生成後の冷却にあたり、中間要素は、例えば、その脆弱性に起因してつぶれることにより、破壊され得る。中間要素は、好ましくは、同様のW、Mo、Re、又はこれらの合金によって形成することができる。この種の中間層を組み入れておくと、異なる熱膨張率(特に、生成された単結晶の熱膨張率とるつぼの熱膨張率)に起因する応力を中間層が吸収するので、生成後の単結晶に作用する応力を抑制することができる。したがって、応力の少ない結晶を得ることができる。これにより、生成結晶の品質を高めることができる。
【0023】
製造簡素化の観点から言えば、少なくとも内側ライニングの外側において表面構造を形成するのがよい。この表面構造は、例えば、内側ライニング及び基礎るつぼの少なくともいずれかの材料におけるエンボス加工によって導入することができる。一例として、表面構造は、内側ライニングが一部領域でのみ基礎るつぼと接触する形態として形成され得る。この場合の表面構造は、広い領域における表面構造によって内側ライニングを基礎るつぼの内壁から離して保持するように、構成され得る。このようにして、単結晶を(内側ライニングと共に)基礎るつぼから容易に取り出すことが確実となる。表面構造を組み入れることによって、生成後の単結晶は、内側ライニングと共に簡単且つ能率的に基礎るつぼから取り出すことができる。基礎るつぼが内側ライニングを備えていることによって、サファイア単結晶成長に基礎るつぼを繰り返し使用することができ、この場合、別の単結晶の生成に際し内側ライニングを交換するだけでよい。内側ライニングは基礎るつぼよりも格段に薄い壁厚とすることができ、十分な材料節約が達成される。
【0024】
一態様によれば、内側ライニングは、1mmより薄い、好ましくは0.5mmより薄い、さらに好適には0.05mmから0.5mmの間の壁厚とする。この場合の内側ライニングは、例えば、対応する金属薄片からの成形によって能率的に製造することができる。さらに、このような壁の薄い構成によって、多量の材料を節約できる。好ましくは、少なくとも内側ライニングは、99%より高い、さらに言えば99.9%より高い純度とし、溶融物の汚染をより確実に回避する。この純度は、原材料又は原合金の元素以外の成分の最大割合がどの程度高いか、に関する。好ましい態様では、基礎るつぼも同様に対応する純度を有する。
【0025】
好ましい態様によれば、少なくとも内側ライニングは、99%より高い、好ましくは99.9%より高い純度をもつ純Moから形成される。この場合の内側ライニングは、満足のいく費用枠内において高い純度で提供することもできる。
【0026】
一態様によれば、内側ライニングの材料と基礎るつぼの材料とを別のものにする。例えば、内側ライニングは純Mo又はMo成分の高い合金から形成し、基礎るつぼはW又はW成分の高い合金から形成することができる。この場合、基礎るつぼは低熱膨張率で、したがって単結晶生成後の冷却時に収縮が小さく、これが単結晶の取り出し容易性に有利に働く。他方、内側ライニングは比較的費用をかけないで提供することができ、且つ、内側ライニングと基礎るつぼとの間の付着の可能性を最低限に抑えることができる。ただし、当該例示材料の他にも、内側ライニングと基礎るつぼとの付着を確実に阻止し且つ単結晶の良好な取り出しも保証し得る他の材料の組み合わせが可能である。特に、Mo、W及びReから選択した異なる材料、又はこれらの異なる合金を、内側ライニングと基礎るつぼとに使用することができる。
【0027】
上記課題は、上記のようなるつぼを使用してサファイア単結晶成長を行う方法であって、溶融物からの凝固をるつぼの底部分から進めることによりサファイア単結晶を生成する方法によっても解決される。この場合、単結晶生成は、るつぼの底部分に配置された種結晶を出発点として行われる。この方法によれば、基礎るつぼを破壊することなく、生成したサファイア単結晶をるつぼから取り出すことができる。したがって、基礎るつぼを、費用効率良く繰り返し使用することができる。
【0028】
上記課題は、溶融物からの凝固をるつぼの底部分から進めることによりサファイア単結晶を生成するようにしたサファイア単結晶成長を行う方法において、上記のようなるつぼを使用することによっても解決される。
【0029】
本発明の他の利点及び有効性は、図面を参照して説明する以下の実施形態に基づき明示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係る結晶成長用のるつぼを概略的に示す。
図2】実施形態における、基礎るつぼから内側ライニングを容易に取り外すための構造を概略的に示す。
図3】内側ライニングの第1の部分と第2の部分との結合例を概略的に示す。
図4】基礎るつぼから内側ライニングを容易に取り外すための構造を分離中間要素により形成した変形例を概略的に示す。
図5】他の実施形態に係る結晶成長用のるつぼを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1図3を参照して一実施形態を説明する。
【0032】
図1は、一実施形態に係る結晶成長用のるつぼ1の概略図である。この実施形態におけるるつぼ1は、サファイア単結晶成長用に設計されている。
【0033】
るつぼ1は、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Re(レニウム)、又はこれら元素の少なくとも2つからなる合金を使用して作られたポット状の基礎るつぼ2を有する。ポット状の基礎るつぼ2は、当該材料からのワンピース品で、その材料純度は99%より高く、好ましくは99.9%より高い。この外側のるつぼを例えば高純度のWから作る、他の実施形態もある。
【0034】
基礎るつぼ2は、底部2aと周囲壁部2bとを有する。基礎るつぼ2は、軸Aの周りにほぼ回転対称に作成される。
【0035】
基礎るつぼ2は、例えば、プレス、焼結、及び場合によりその後の機械加工を経る粉末冶金により製造される。このるつぼ2は、一例として、壁部2bにおいて5mmから25mmの間、好ましくは10mmから20mmの間の壁厚を有し、底部2aにおいて40mm以下の壁厚を有する。この他にも基礎るつぼ2は、金属板からの深絞り加工、プレス加工により製造することも可能である。この場合の出発金属板は、例えば1mmから12mmの間、好ましくは2mmから6mmの間の板厚を有する。図1において基礎るつぼ2は、おおよそ一様な壁厚で示されているが、底部2aにおいても壁部2bにおいても、壁厚が変化する形態も可能である。基礎るつぼ2は、所望の材料又は所望の合金から粉末冶金で製造することができる。
【0036】
るつぼ1は、さらに、基礎るつぼ2の内側をライニングする内側ライニング3を有する。内側ライニング3も同様に、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Re(レニウム)、又はこれら元素の少なくとも2つからなる合金を使用して作られる。内側ライニング3の材料純度は99%より高く、好ましくは99.9%より高い。内側ライニング3を例えば高純度のMoから作る、他の実施形態もある。
【0037】
内側ライニング3は、基礎るつぼ2の底部2aを覆うポット状の第1の部分4と、基礎るつぼ2の壁部2bを少なくとも部分的に覆うジャケット状の第2の部分5と、を有する。
【0038】
ポット状の第1の部分4は、金属薄片の成形によって製造されており、軸Aの周りにほぼ回転対称とされる。第1の部分4は、例えば、金属薄片の深絞り加工によって製造可能である。第1の部分4は、基礎るつぼ2の底部2aを覆う底部4aと、基礎るつぼ2の壁部2bの下方領域においてほぼ壁部2bと平行に延びた周囲側壁部4bと、を有し、底面と側面のあるなべ形又はおけ形をなす。この場合の周囲側壁部4bは、10mmから25mmの間、好ましくは10mmから15mmの間の高さを有する。
【0039】
ポット状の第1の部分4は、底部4aの領域においても側壁部4bの領域においても、0.05mmから1mmの間、好ましくは0.05mmから0.75mmの間、さらに好適には0.05mmから0.5mmの間の壁厚を有する。
【0040】
内側ライニング3の第2の部分5も同様に金属薄片から製造されている。この第2の部分5は、別部品として作成されている。第2の部分5は第1の部分4と同じ材料から作られる。第2の部分5は、平たい金属薄片をほぼ中空円筒形状に巻くことによって形成される。この金属薄片は、両端縁を重ね合わせ、例えば折り返しか、あるいは溶接又は焼結によって、もしくはこれらの組み合わせによって、その両端縁を固定するという方法で、巻かれている。他にも、例えば、両端縁が互いに対し張力をかけあうだけで密封を生じるような方法も可能である。
【0041】
第1の部分4及び第2の部分5は、周囲部位において重なり合うように配置されている。当該重畳部位は、例えば10mm程度の幅とすることができる。第1の部分4及び第2の部分5は重畳部位において、例えば折り返しか、あるいは溶接又は焼結によって、もしくはこれらを組み合わせて、相互に固定されている。他にも一例として、第2の部分5から第1の部分4に対し、例えば第2の部分5の材料の残留応力によってテンションがかかって密封を生じる(第1の部分に固定されていない)、というような形態も可能である。また、第1の部分4及び第2の部分5は、図3に概略を示すように、代替的に又は補足的に、互いに係合する部位によって相互結合されるようにしてもよい。図3の例では、第1の部分4の側壁部4bと第2の部分5の両方が重畳部位において折り重ねられて互いに係合し、安定した結合が達成されている。同じ方式で、上述した第2の部分5の相互結合される両端縁も、相互係合部位によって互いに結合することができる。
【0042】
図1に示す実施形態において、第2の部分5は、重畳部位において第1の部分4の外側に配置されている。しかしながら、図5の変形例において概略を示すように、第2の部分5は、重畳部位において第1の部分4の内側に配置することも可能である。
【0043】
本実施形態において、内側ライニング3及び基礎るつぼ2は、異なる材料又は異なる合金から作成されている。これら材料又は合金は、るつぼ1内でのサファイア単結晶成長に際し(すなわち、必要とされる高温度において)、内側ライニング3と基礎るつぼ2との間に付着が生じないように、選ばれる。内側ライニング3と基礎るつぼ2とが異なる材料で作成されていれば、同じ材料から作成されている場合に比べて付着へ向かう可能性は低い。さらに材料は、基礎るつぼ2も内側ライニング3も十分な機械的強度をもつように選ばれる。そして、材料の組み合わせは、各材料の熱膨張に関して、生成した単結晶を内側ライニング3と共に基礎るつぼ2から取り出せるように、選ばれる。
【0044】
図2の概略図を参照して以下に説明するように、発展形態によれば、サファイア単結晶生成後に内側ライニング3を基礎るつぼ2から容易に取り外すための構造を組み入れることができる。第1の変形例によると、少なくとも内側ライニング3の外面又は少なくとも基礎るつぼ2の内面、あるいはその両方が、生成した単結晶をるつぼ1から容易に取り出すことを可能にする表面構造を備えている。図2に概略を示すように、一例として内側ライニング3の材料に表面構造が形作られており、この表面構造により、内側ライニング3が基礎るつぼ2の材料に広い面積で接することはなく、内側ライニング3の内側と基礎るつぼ2の内径との間に所定の間隔が設けられる。
【0045】
エンボス加工による表面構造の組み入れの他にも、内側ライニング3が基礎るつぼ2の材料と広域で面的に接しないようにする表面構造を内側ライニング3に設けるために、別の方法を用いることもできる。内側ライニング3に対する表面構造の好適な組み入れに加えて、例えば代替的又は補足的に、生成した単結晶をより容易に取り出せるようにするため、基礎るつぼ2の内面に同目的の表面構造を組み入れることも可能である。
【0046】
さらに、内側ライニング3と基礎るつぼ2との間隔を他の方法で設ける、例えば、内側ライニング3に多層構造を導入したり、対応するスペーサを組み入れたりすることによって設ける、ことも可能である。
【0047】
図4に概略を示す変形例によれば、内側ライニング3を基礎るつぼ2から容易に取り外すための構造が、分離中間要素6によって形成されている。この中間要素6は、内側ライニング3と基礎るつぼ2との間の少なくとも一部領域に配設される。なお、図面はただの概略図であり、個々の部品の壁厚は必ずしも正確な比率で表されていない。一例として、中間要素6は、所定の形を付けた金属薄片によって形成され、基礎るつぼ2と内側ライニング3との間のスペーサとして組み入れられている。この中間要素6は、W、Mo、Re、又はこれらの合金から形成される。
【0048】
実施形態に基づいて、第1の部分4と第2の部分5とを有する内側ライニング3を備えたるつぼ1を説明してきた。この他にも、例えば、一部品の内側ライニング3を有するるつぼ1であって、該内側ライニング3を基礎るつぼ2から容易に取り外すための構造を、表面構造として又は分離中間要素6として組み入れるものも実施可能である。
【0049】
サファイア単結晶成長を行う方法において、所定の結晶方位を有する単結晶のサファイア種結晶が内側ライニング3の内部でるつぼ1の底部分に配置され、該るつぼ1に、所定の充填レベルまでAl出発材料が入れられる。次いで既知の方法によって、管理された温度上昇に従ってAl出発材料が液状の溶融物に変わり、種結晶は、その表面においては溶け始めるが、完全には融解しないようにカウンター冷却される。目的に合った適切なカウンター冷却によって、種結晶を出発点としてサファイア単結晶が溶融物からゆっくりと析出する。冷却を進めた後、生成したサファイア単結晶が内側ライニング3と共に基礎るつぼ2から取り出される。その後、基礎るつぼ2には再び内側ライニング3が装填され、もう一度サファイア単結晶成長を行うために使用することができる。
【0050】
種結晶がるつぼ1の底部分に配置される上記方法の他にも、例えば、種結晶を上方から溶融Al中に浸し、この種結晶を出発点としてサファイア単結晶の生成を行い、生じるサファイア単結晶を成長プロセスの間にゆっくりと部分的に又は完全に溶融物から上方へ引き上げる方法において、前記るつぼを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 るつぼ
2 基礎るつぼ
2a 基礎るつぼの底部
2b 基礎るつぼの壁部
3 内側ライニング
4 内側ライニングの第1の部分
4a 内側ライニングの底部
4b 内側ライニングの側壁部
5 内側ライニングの第2の部分
6 中間要素
図1
図2
図3
図4
図5