(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「左側」および「右側」は、車両に乗車した運転者から見た左右側をいう。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る過給機付きエンジンを搭載した自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、このメインフレーム1の後部に取り付けられて車体フレームFRの後半部を形成するシートレール2および補強レール2aとを有している。メインフレーム1の前端に一体形成されたヘッドパイプ4に、ステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。このフロントフォーク8に前輪10が取り付けられている。すなわち、ヘッドパイプ4がハンドルポストとして機能し、車体フレームFRの一部であるメインフレーム1が、ヘッドパイプ4から車体後方に延びている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル6が固定されている。
【0016】
一方、車体フレームFRの中央下部であるメインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット12が設けられている。このスイングアームブラケット12にスイングアーム20が上下揺動自在に軸支され、このスイングアーム20の後端部に後輪22がピボット軸23の回りに回転自在に支持されている。
【0017】
車体フレームFRの中央下部でスイングアームブラケット12の前側に、エンジンEが取り付けられている。エンジンEの回転が走行用減速機構21で変速された後、チェーンのような伝達機構24に伝達され、この伝達機構24を介して後輪22が駆動される。エンジンEは、例えば4気筒4サイクルの並列多気筒エンジンである。ただし、エンジンEの形式はこれに限定されない。後部フレーム2とスイングアーム20との間に、後部クッション機構25が連結されている。後部クッション機構25は、後輪22とリヤフレーム2との間にかかる荷重を緩衝する。
【0018】
メインフレーム1の上部に燃料タンク28が配置され、シートレール2に操縦者用シート30および同乗車用シート32が支持されている。また、車体前部に、前記ヘッドパイプ4の前方から車体前部の側方にかけての部分(前部の上半分)を覆う樹脂製のカウリング34が装着されている。カウリング34には、ヘッドランプユニット36が装着されている。このヘッドランプユニット36の下方に、外部からエンジンEへの吸気を取り入れる空気取入口38が形成されている。
【0019】
エンジンEは、車幅方向に延びるエンジン回転軸39と、エンジン回転軸39を支持するクランクケース40と、クランクケース40から上方に突出したシリンダブロック42と、その上方のシリンダヘッド44と、クランクケース40の下方に設けられたオイルパン50とを有している。クランクケース40の後部は、前記走行用減速機構21を収納する変速機ケースを兼ねている。シリンダヘッド44は若干前傾しており、シリンダヘッド44の前面の排気ポートに、4本の排気管54が接続されている。4本の排気管54は、エンジンEの下方で集合され、後輪22の右側に配置された排気マフラー56に接続されている。
【0020】
シリンダブロック46の後方でクランクケース40の上面に、過給機62が配置されている。過給機62は、エアクリーナ55からの清浄空気を加圧してエンジンEに供給する。エアクリーナ55は、車体前部に配置され、外気を浄化する。過給機62は車幅方向に延びる過給機回転軸64と、左向きに開口した吸込口66(
図2)と、上向きに開口した吐出口68とを有している。吸込口66(
図2)は、クランクケース40の上方でエンジンEの幅方向の中央部に位置している。吐出口68は、エンジンEの車幅方向の中央部で過給機回転軸の軸心64Cよりも後方に位置している。過給機62の吸込口66は、エンジンEの左側面よりも車幅方向内側に配置されている。この吸込口66に、外気を過給機62に導入する吸気ダクト70が車幅方向外側から接続されている。
【0021】
図3はエンジンEの右側面図で、
図4は
図3からクラッチカバー17を取り外した状態を示す。
図4に示すように、クランクケース40は、クランクケース本体41と、クランクケース本体41に複数のボルト103により着脱自在に取り付けられるホルダ43とを有している。クランクケース本体41には、車幅方向の一方である右側に開放された開口41hが形成されている。ホルダ43は、この開口41hの少なくとも一部を右側から覆っている。
【0022】
ホルダ43は、走行用減速機入力軸15,カウンタ軸78および過給機駆動軸82の右端部を支持するもので、その詳細は後述する。クランクケース本体41の開口41hは、
図3のクランクケース本体41に着脱自在に取り付けられたクラッチカバー17により閉塞されている。
【0023】
図4のホルダ43は、いわゆるカセットミッション構造の一部を兼ねている。ホルダ43は、走行用減速機入力軸15、走行用減速機構出力軸19およびシフト機構(図示せず)を一体でチェーン24(
図1)の反対側(右側)に引き出すことができるように形成されている。すなわち、ホルダ43は、チェーン24(
図1)の反対側である右側に配置されている。
【0024】
図1に示すように、前記吸気ダクト70は、エンジンEの一側方である左側方に配置されており、上流側のラムダクトユニット51と下流側の吸入ダクト部53とを有している。ラムダクトユニット51は、前端開口51aを前記カウリング34の空気取入口38に臨ませた配置でヘッドパイプ4に支持されており、前端開口51aから導入した空気をラム効果により昇圧させる。ラムダクトユニット51の後端部51bに吸入ダクト部53の前端部53aが接続されている。
【0025】
図2に示すように、吸入ダクト部53の後端部53bは、過給機62の吸込口66に接続されている。また、ラムダクトユニット51の前後方向中間部分に前記エアクリーナ55が内蔵されている。さらに、吸入ダクト部53の下流端部に、空気溜め部57が形成されている。空気溜め部57は、吸入ダクト部53の他の部分よりも流路面積が大きく設定されている。この空気溜め部57はシリンダブロック46の後方に位置しており、その出口に過給機62の吸込口66が接続されている。
【0026】
前後方向における、吐出口68とエンジンEの4つの吸気ポート47(
図1)との間に、吸気チャンバ74が配置されている。吸気チャンバ74は、過給機62の吐出口68からシリンダブロック46に向かう空気通路の一部を形成する。吸気チャンバ74は、エンジンEの車幅方向のほぼ全長にわたる幅寸法を有しており、
図1に示すように、過給機62の上方でシリンダブロック46の後方に配置されている。
【0027】
吸気チャンバ74とシリンダヘッド44との間には、スロットルボディ76が配置されている。このスロットルボディ76において、吸入空気中に燃料が噴射されて混合気が生成され、この混合気が各吸気ポート47からエンジンEの4つのシリンダボア内の燃焼室(図示せず)に供給される。これら吸気チャンバ74およびスロットルボディ76の上方に、前記燃料タンク28が配置されている。
【0028】
図2に示すように、前記過給機62は、エンジンEに吸気を圧送する圧送部61と、エンジン回転軸39の回転速度を増速して圧送部61に伝達する増速部63とを有している。これら圧送部61および増速部63が、過給機ケース67に収納されており、過給機ケース67の下部がエンジンEのクランクケース40に着脱自在に取り付けられている。
【0029】
圧送部61と増速部63とは車幅方向に並んで配置され、増速部63が、車幅方向中心よりも車幅方向の一方、この実施形態では、カムチェーン69が配置される右側にずれて配置されている。これによって、過給機62をエンジンの両側面よりも車幅方向の内側に収めつつ、左側の圧送部61の吐出口68を車体中心付近に配置できる。過給機ケース67は、ボルトのような締結部材(図示せず)によりクランクケース40の上面に取り付けられている。
【0030】
図5に示すように、エンジンEの回転軸であるクランク軸39には、カウンタ軸78を駆動するクランクギヤ80が設けられている。カウンタ軸78は、クランク軸39の軸心39Cと平行な軸心78Cを持つ。また、カウンタ軸78に対して、クランク軸39と反対側となる後方で且つ上方に過給機駆動軸82が配置されている。過給機駆動軸82も、クランク軸39と平行な軸心82Cを持つ。カウンタ軸78は、クランク軸39より後方で且つ上方に配置され、アイドラ軸として機能する。クランク軸39のクランクギヤ80に噛み合う駆動ギヤ84がカウンタ軸78に一体回転するようにスプライン嵌合されている。スタータギヤ86がカウンタ軸78に相対回転自在に支持され、駆動ギヤ84とスタータギヤ86との間にワンウェイクラッチ85が介在している。
【0031】
詳細には、スタータギヤ86と駆動ギヤ84とは、カウンタ軸78に軸方向に隣接して配置されている。スタータギヤ86は軸方向に貫通する貫通孔86aを有し、カウンタ軸78が貫通孔86aに挿通することで、スタータギヤ86がカウンタ軸78に相対回転自在に支持される。ワンウェイクラッチ85を介してスタータギヤ86と駆動ギヤ84とが噛み合うことで、スタータギヤ86の回転が駆動ギヤ84に伝達され、駆動ギヤ84からの回転をスタータギヤ86に伝達するのを阻止できる。
【0032】
カウンタ軸78および過給機駆動軸82はそれぞれ、車幅方向一方側である右側の第1端部78a,82aと他方側である左側の第2端部78b、82bとで両端支持されている。具体的には、カウンタ軸78および過給機駆動軸82の第1端部78a,82aが、前記ホルダ43に形成された第1軸受部43a,43bに、それぞれ軸受35,37を介して回転自在に支持されている。第2端部78b,82bは、クランクケース40のクランクケース本体41の側壁に形成された第2軸受部41a,41bにそれぞれ軸受45,49を介して回転自在に支持されている。
【0033】
図6に示すように、前記走行用減速機構21は、車幅方向に延びる走行用減速機構入力軸15と走行用減速機構出力軸19とを有する。
図7に示すように、走行用減速機構入力軸15は、右側の一端部15aの近傍および左側の他端部15bで軸受11により回転自在に支持されている。走行用減速機構入力軸15の一端部15aに、クラッチ13が装着されている。
図4のホルダ43に形成される第3軸受部43cが、走行用減速機構入力軸15の一端部15aを支持している。クランクケース40のクランクケース本体41の側壁に形成される第4軸受部41cが、走行用減速機構入力軸15の他端部15bを支持している。
【0034】
図6に示すように、クランク軸39を挟んで、カウンタ軸78と反対側であるクランク軸39の前方に、第1バランサ軸72が配置されている。この第1バランサ軸72に、クランクギヤ80と噛み合う第1バランサギヤ73が設けられている。また、カウンタ軸78の上方でクランク軸39の後方に、第2バランサ軸77が配置されている。この第2バランサ軸77に、駆動ギヤ84と噛み合う第2バランサギヤ79が設けられている。各バランサギヤ73,79は対応するバランサ軸72,77と一体に回転する。
【0035】
このような2軸の第1および第2バランサギヤ73,79により、エンジンEの振動が抑制される。また、第1バランサギヤ73と噛み合うクランクギヤ80から過給機62の駆動動力を得るようにしているので、別途ギヤを設ける必要がなく、部品点数を抑えることができるうえに、バランサギヤから動力を得る場合に比べて過給機62の回転変動を抑えることができる。
【0036】
図5に示すスタータギヤ86に、トルクリミッタ88を介してスタータモータ90が接続されている。これにより、エンジンEが停止している状態でスタータモータ90が回転するとワンウェイクラッチ85を介して、クランク軸39へ始動トルクが伝達される。また、エンジンEの始動後にクランク軸39の回転速度がスタータモータ90より速くなると、ワンウェイクラッチ85による接続が遮断されてクランク軸39からスタータモータ90への動力伝達が阻止される。これらワンウェイクラッチ85、トルクリミッタ88、スタータギヤ86は、駆動ギヤ84よりも車幅方向内側である左側に配置されている。スタータモータ90は、過給機62の左側方に配置されている。
【0037】
トルクリミッタ88は、スタータモータ90の出力軸90aとスタータギヤ86との間に介在され、伝達トルクが所定以上となると、スタータモータ90の出力軸90aとスタータギヤ86との間の接続を遮断する。これにより、キックスタート時にエンジンが逆回転してしまう現象が生じた場合に、クランクギヤ80の回転がスタータモータ90に伝達されるのを防ぐことができる。
【0038】
スタータギヤ86は、トルクリミッタ88からの動力を受ける入力用歯車86bと、ワンウェイクラッチ85に動力を与える出力用歯車86cとを有している。スタータギヤ86の出力用歯車86cは、ワンウェイクラッチ85よりも駆動ギヤ84の径方向内側に配置される。また、
図6に示すように、スタータギヤ86、トルクリミッタ88、スタータモータ90は、駆動ギヤ84を挟んで、後述する第1および第2変速ギヤ92,94の反対側(左側)に配置される。
【0039】
図5のカウンタ軸78に、小径の第1変速ギヤ92および大径の第2変速ギヤ94が、一体形成により固定されている。第1および第2変速ギヤ92,94は、駆動ギヤ84よりも車幅方向外側に配置されている。本実施形態では、変速ギヤは2つであるが、3つ以上であってもよい。過給機駆動軸82に、大径の第3変速ギヤ96および小径の第4変速ギヤ98が設けられている。第3変速ギヤ96および第4変速ギヤ98は、前記第1および第2変速ギヤ92,94とそれぞれ噛み合う。第3および第4変速ギヤ96,98は、過給機駆動軸82に相対回転自在で、かつ軸方向への相対移動不能に装着されている。換言すれば、第1変速ギヤ92と第3変速ギヤ96とが互いに噛み合う歯車対を構成し、第2変速ギヤ94と第4変速ギヤ98とが互いに噛み合う歯車対を構成している。
【0040】
径の異なる第1変速ギヤ92と第2変速ギヤ94とは歯数が異なるので、これらとそれぞれ噛み合う第3および第4変速ギヤ96,98は互いに回転速度が異なっている。本実施形態では、第2変速ギヤ94が第1変速ギヤ92よりも大径であるから、第3変速ギヤ96よりも第4変速ギヤ98の回転速度が大きくなる。後述するシフトリング105が、第3変速ギヤ96と第4変速ギヤ98のいずれか一方に選択的に嵌合することで、いずれかの変速ギヤ96,98を介して、クランク軸39からの動力が過給機駆動軸82に伝達される。また、シフトリング105が、両変速ギヤ96,98の嵌合から解除されることで、動力伝達状態が解除される。
【0041】
これらカウンタ軸78,過給機駆動軸82,第1〜第4変速ギヤ92,94,96,98が、クランク軸39からの動力を過給機62に伝達する動力伝達機構99を構成する。この実施形態では、動力伝達機構99は動力の伝達の有無の切換えに加えて、クランク軸39の動力の変速も行う過給機用変速機99として機能する。
【0042】
また、
図5の第1および第2変速ギヤ92,94は、過給機用変速機99におけるクランク軸39の動力が入力される入力回転体として機能する。第3および第4変速ギヤ96,98は、これら入力回転体の回転が変速されて出力される出力回転体として機能する。さらに、カウンタ軸78,過給機駆動軸82は、過給機用変速機(動力伝達機構)99の動力伝達軸ユニットを構成する。入力回転体92,94が取り付けられるカウンタ軸78は、第1の回転軸である入力軸として機能する。出力回転体96,98が取り付けられる過給機駆動軸82は、第2の回転軸である出力軸として機能する。上述のように、過給機用変速機99の入力軸であるカウンタ軸78に、駆動ギヤ84、変速用歯車92,94以外の歯車である前記スタータギヤ86が、車幅方向内側に並んで固定されている。
【0043】
図6に示すように、カウンタ軸78よりも後方に過給機62が配置されている。過給機62よりも前方に、トルクリミッタ88を介してスタータギヤ86に噛み合う部品であるスタータモータ90が配置されている。カウンタ軸78がクランク軸39の後方に、過給機用駆動軸82がカウンタ軸78の後方斜め上方に、それぞれ配置されている。過給機駆動軸82の後方斜め上方に、入力軸65が配置されている。入力軸65は、過給機回転軸64(
図5)に連結されている。過給機回転軸64(
図5)と入力軸65とは同心である。カウンタ軸78に回転連結されたトルクリミッタ88が、カウンタ軸78および過給機用駆動軸82の上方に配置されている。
【0044】
図5の過給機用変速機99の出力軸である過給機駆動軸82は、前記ホルダ43がクランクケース本体41に取り付けられた状態で、ホルダ43から右側に突出する突出部59を有している。この突出部59に、回転体であるスプロケット100が、ボルト101によって固定されている。スプロケット100にチェーンのような無端伝動部材からなる動力伝達体102が係合されている。
【0045】
図6に示すように、出力回転体である第3および第4変速ギヤ96,98と過給機回転軸64の入力軸65とは離間して互いに平行に配置されている。動力伝達体102を介して入力軸65に、過給機駆動軸82の回転力、つまりクランク軸39の回転力が伝達される。動力伝達体102を設けることで、出力回転体96,98と入力軸65とのレイアウトの自由度が向上する。本実施形態では、動力伝達体としてチェーン102を用いているが、これに限定されず、例えば、ギヤであってもよい。
【0046】
図5に示すチェーン102が過給機62の吸込口66の車幅方向反対側である右側に配置されているので、チェーン102と吸込口66に接続される吸気ダクト70との干渉を防ぐことができる。本実施形態では、カウンタ軸78と過給機駆動軸82とは直接連結されているが、アイドルギヤなどを介して間接的に連結されていてもよい。過給機62の詳細は後述する。
【0047】
過給機駆動軸82における第3変速ギヤ96と第4変速ギヤ98との間に、シフタ104が配置されている。シフタ104は、シフトリング105と、これを操作するシフトフォーク106と、シフトフォーク106を過給機駆動軸82と平行に移動させるチェンジドラム108とを有している。シフトリング105が、過給機駆動軸82にスプライン嵌合されることにより、過給機駆動軸82に相対回転不能で軸方向に移動自在となっている。
【0048】
チェンジドラム108は、シフタ駆動手段110により回転駆動されてシフトフォーク106を軸方向に移動させ、シフトリング105に設けた係合孔105aを、第3および第4変速ギヤ96,98に設けたドグ96a,98aの一方に選択的に係合させる。これにより、シフトリング105が第3および第4変速ギヤ96,98の一方に選択的に相対回転不能に係合される。
【0049】
つまり、ドグ96a,98aは、カウンタ軸78よりもシフトドラム108寄りに位置する過給機駆動軸82に支持されており、歯車対の回転を過給機62に伝達する接続状態と、歯車対の噛み合いを解除する遮断状態とを選択可能に切り替えている。このように、シフトリング105およびドグ96a,98aが、複数の歯車対を選択的に切り替える選択連結体として機能する。これらシフトリング105、シフトフォーク106、チェンジドラム108、シフタ駆動手段110、ドグ96a,98aが上記過給機変速機99の一部を構成する。
【0050】
シフタ駆動手段110が、スタータモータ90とは反対側の右側端に配置されている。これにより、スタータモータ90、スタータギヤ86等と干渉することなく、シフタ駆動手段110を車体に対して着脱することができる。そのためシフタ駆動手段110を取り外して抵抗を低減させた状態で、シフトリング105を所定の位置に位置決めすることができる。このように位置決めした後に、シフタ駆動手段110とチェンジドラム108を接続することで、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0051】
図4に示すように、過給機62と過給機変速機99とは、車幅方向に直交する直交方向、この実施形態では、前後方向および上下方向に並んで配置されている。詳細には、
図2に示すように、過給機変速機99のチェンジドラム108およびシフタ駆動手段110の後方に過給機62が配置されている。
【0052】
図5に示す過給機変速機99のチェンジドラム108およびシフタ駆動手段110は、車体中心よりも車幅方向の一方側、具体的には、右側にずれて配置されている。ドグ96a,98aおよびシフトフォーク106は、カウンタ軸78および過給機駆動軸82のどちらに設けてもよいが、本実施形態のように、過給機用変速機99の出力軸である過給機駆動軸82に設けることで、カウンタ軸78に設ける場合に比べてシフトフォーク106を短くできる。
【0053】
選択された変速ギヤ96,98を介して、カウンタ軸78から過給機駆動軸82へ動力が伝達される。すなわち、シフトリング105と第3の変速ギヤ96とがドグ連結されたとき、カウンタ軸78の回転、つまりクランク軸39の回転が大きな増速比で過給機駆動軸82に伝達される。一方、シフトフォーク106と第4の変速ギヤ98とがドグ連結されたとき、カウンタ軸78の回転が小さな増速比で過給機駆動軸82に伝達される。
【0054】
これにより、クランク軸39の回転動力が、選択された変速ギヤ96,98を介してカウンタ軸78から過給機62の過給機駆動軸82に伝達される。このように、クランクギヤ80から動力を伝達することで、バランサギヤから動力を伝達する場合に比べて、過給機62の回転変動を防ぐことができる。シフタ駆動手段110は、例えば車両制御装置の指令にしたがって動作するサーボモータを有する。ただし、シフタ駆動手段110は、これに限定されず、例えば、手動操作により動力を与えるものであってもよい。
【0055】
図8は、各軸の配置を示す右側面図である。同図において、過給機変速機99の入力軸であるカウンタ軸78と、出力軸である過給機用駆動軸82とが、クランク軸39の軸心39Cと過給機回転軸64の軸心64Cとを結ぶ仮想直線V上またはその近傍に配置されている。過給機用駆動軸82は、カウンタ軸78よりも過給機62寄りに配置されている。
【0056】
これにより、過給機用駆動軸82と過給機回転軸64とを連結する動力伝達体であるチェーン102が短くなる。また、変速機変速機99を構成するチェンジドラム108およびシフタ駆動手段110が、過給機用変速機99の入出力軸であるカウンタ軸78および過給機用駆動軸82の上方で、チェーン102の上方に配置される。これにより、チェンジドラム108と過給機用駆動軸82との距離が短くなり、シフトフォーク106が短くて済む。
【0057】
図5のシフタ駆動手段110は、例えば、エンジンEの回転数に応じてシフトフォーク106をチェンジドラム108の軸方向に移動させて、回転数に適した第3および第4変速ギヤ96,98をそれぞれ選択させる。具体的には、エンジンEの低回転域では、シフトリング105は第3変速ギヤ96にドグ連結されて、過給機62の増速比を上げて第1変速比とする。これにより、過給圧、つまり過給風量を増大させ、低速でのエンジントルクを稼ぐように設定する。この第1変速比では、クランク軸39の回転動力は、第1変速ギヤ92および第3変速ギヤ96を介して過給機62の過給機駆動軸82に伝達される(第1動力伝達経路)。
【0058】
一方、エンジンEの高回転域では、シフトリング105は第4変速ギヤ98にドグ連結されて、過給機62の増速比を下げて第2変速比とする。これにより、過給風量が過大になるのを防止し、適切なエンジントルクと安定した回転が得られるように設定する。この第2変速比では、クランク軸39の回転動力は、第2変速ギヤ94および第4変速ギヤ98を介して過給機62の過給機駆動軸82に伝達される(第2動力伝達経路)。
【0059】
つまり、第2動力伝達経路では、第1変速ギヤ92と第3変速ギヤ96とからなる歯車対を介さずに、駆動ギヤ84の回転をスプロケット100、チェーン102に伝達している。このように、過給機用変速機99は、第1変速比で動力を伝達する第1動力伝達経路と、第1変速比と異なる第2変速比で動力を伝達する第2動力伝達経路とを選択する。過給が不要な場合は、各変速ギヤ96,98とシフトリング105との連結を解除する。
【0060】
図9は、過給機62の水平断面図である。同図に示すように、過給機62の圧送部61は遠心ポンプからなり、インペラ114の回転で発生する遠心力によって、軸方向から取り入れた吸気に圧力を与えて径方向外側に吐き出す。過給機回転軸64の一端部64aに、圧送部61のインペラ114が固定されている。前記増速部63の前記入力軸65の一端部65a(車幅方向左側)に、増速部63である遊星歯車装置112を介して過給機回転軸64の他端部64bが連結されている。増速部63は、インペラ114の回転軸である過給機回転軸64に動力を与えるもので、入力される回転力を増速させてインペラ114に向けて出力する。以下、過給機62における一端側は車幅方向左側をいい、他端側は車幅方向右側をいうものとする。
【0061】
前記過給機ケース67は、軸受121を介して過給機回転軸64を回転自在に支持するケーシング部116と、インペラ114を覆うハウジング部124とを有している。ケーシング部116の一端側の第1フランジ116aに、ボルトのようなケーシング締結部材122を用いてハウジング部124が取り付けられている。ケーシング部116の他端側の第2フランジ116bが、過給機ケース67のケースフランジ67aに、ハウジング締結部材118により固定されている。すなわち、軸受121は過給機回転軸64の支持部を構成する。
【0062】
こうして、過給機回転軸64およびその支持部である軸受121が、ケーシング部116により覆われ、インペラ114がハウジング部124により覆われている。ハウジング部124には、前記吸込口66と前記吐出口68とが形成されている。
【0063】
入力軸65は中空軸からなり、過給機ケース67の一部である増速部収納部75に、軸受123を介して回転自在に支持されている。入力軸65における他端部65bの外周面にスプライン歯が形成され、この外周面にワンウェイクラッチ128がスプライン嵌合されている。このワンウェイクラッチ128を介して、スプロケット130が入力軸65に連結されている。スプロケット130の歯車132に前記チェーン102が架け渡されており、このチェーン102を介して過給機駆動軸82(
図5)の回転が入力軸65に伝達されている。
【0064】
入力軸65の他端部65bの内周面に雌ねじ部が形成されており、この雌ねじにボルト134が螺合されている。ワンウェイクラッチ128が、このボルト134の頭部により、ワッシャ136を介して、他端部65bに装着されている。これらワンウェイクラッチ128、スプロケット130およびボルト134は、スプロケットカバー129に収納されている。スプロケットカバー129は、増速部収納部75の他端に連接されている。スプロケットカバー129の他端には、車体外側を向いた開口135が形成されている。この開口135がキャップ137により塞がれている。
【0065】
図5に示すスプロケット100,130が、過給機駆動軸82および入力軸65の右側端にそれぞれ配置されている。これらスプロケット100,130の車幅方向内側(左側)に、変速機99および増速部65がそれぞれ配置されている。入力軸65の回転が、スプロケット130よりも速くなると、
図9のワンウェイクラッチ128が空回りして、入力軸65とスプロケット130との接続を遮断する。このようなワンウェイクラッチ128を介して、入力軸65とスプロケット130とが接続されているので、エンジンEで生じる回転変動を軽減して入力軸65を回転させることができる。
【0066】
上述のように、遊星歯車装置112は、入力軸65と過給機回転軸64との間に配置され、過給機ケース67に支持されている。過給機回転軸64の他端部64bに、外歯138が形成されており、この外歯138に複数の遊星歯車140が周方向に並んでギヤ連結されている。すなわち、過給機回転軸64の外歯138は、遊星歯車装置112の太陽歯車として機能する。さらに、遊星歯車140は径方向外側で大径の内歯車(リングギヤ)142にギヤ連結している。遊星歯車140は、ケーシング部116の他端部に装着された軸受143によりキャリア軸144に回転自在に支持されている。
【0067】
キャリア軸144は固定部材146を有しており、この固定部材146がケーシング部116にボルト145により固定されている。つまり、キャリア軸144は固定されている。入力軸65の一端部に入力ギヤ147が設けられ、この入力ギヤ147が、内歯車142にギヤ連結されている。このように、内歯車142が入力軸65と同じ回転方向に回転するようにギヤ接続され、キャリア軸144が固定されて遊星歯車140は内歯車142と同じ回転方向に回転する。太陽歯車(外歯車138)は出力軸となる過給機回転軸64に形成されており、遊星歯車140と反対の回転方向に回転する。つまり、遊星歯車装置112は、入力軸65の回転を増速して、入力軸65と反対の回転方向で過給機回転軸64に伝達している。
【0068】
エンジンEが回転すると、
図5に示すクランク軸39が回転し、カウンタ軸78が、駆動ギヤ84とクランクギヤ80との噛み合いによりクランク軸39に連動して回転する。カウンタ軸78が回転すると、変速装置を介して過給機駆動軸82が回転する。過給機駆動軸82が回転すると、チェーン102を介して入力軸65が回転する。さらに、遊星歯車装置112を介して過給機回転軸64が回転して過給機62が始動する。
【0069】
自動二輪車が走行すると、走行風は、
図1に示す空気取入口38からラムダクトユニット51を通り、エアクリーナ55で清浄化された後、吸入ダクト部53を通って過給機62に導入される。過給機62に導入された走行風は、過給機62により加圧されて、吸気チャンバ74およびスロットルボディ76を介してエンジンEへ導入される。このようなラム圧と過給機62による加圧との相乗効果により、エンジンEに高圧の吸気を供給することができる。ただし、ラム圧による加圧はなくてもよく、空気取入口を車体前方以外に設けてもよい。
【0070】
上記構成において、
図4に示すように、過給機62と過給機用変速機99とが車幅方向に直交する方向、例えば前後方向、上下方向に並んで配置されている。これにより、過給機62と過給機用変速機99とを車幅方向に並んで配置する場合に比べて、車幅方向寸法を抑制することができる。このように車幅方向寸法を抑えることで、
図2の過給機62の吸込口66および吐出口68の車幅方向位置の設計の自由度が向上する。これにより、吸込口66の周囲にスペースが形成され、吸気ダクト70を配置しやすくなる。
【0071】
過給機62は、互いに車幅方向に並んで配置される圧送部61と増速部63とを有し、過給機62自体の車幅方向寸法は大きくなる。しかしながら、
図4に示すように、過給機用変速機99が過給機62に対して車幅方向と直交する直交方向に並んでいる、つまり前後方向および上下方向にずれているので、過給機62と過給機用変速機99とを合わせた全体の車幅方向寸法を抑えることができる。
【0072】
図2に示すように、エンジンEは、各気筒が車幅方向に並ぶ4気筒4サイクルの並列多気筒エンジンであり、過給機62の増速部63が、車幅方向中心Cよりも車幅方向の一方側である右側にずれて配置されている。これにより、過給機62と過給機用変速機99とが車幅方向に並ぶ場合と比べて、過給機62の吐出口68を車幅方向中央部に配置しやすくなる。中央部付近に吐出口68を配置することで、各気筒に均等に吸気を行い易くなり、吸気効率が向上する。
【0073】
さらに、過給機用変速機99の後方に過給機62が配置され、前後方向における過給機62とシリンダブロック46との間に吸気チャンバ74が配置されている。このように、過給機62を過給機用変速機99の後方に配置することで、シリンダブロック46と過給機62の吐出口68との間の前後方向寸法が大きくなる。これにより、吸気チャンバ74の前後方向寸法を大きくすることができる結果、上下方向の寸法を抑えつつ吸気チャンバ74の容量を確保できる。
【0074】
図8に示すように、クランク軸39と過給機回転軸64とを結ぶ仮想直線Vの近傍に過給機変速機99の入出力軸78,82が配置されているので、過給機回転軸64と過給機変速機99の出力軸82とを接続するチェーン102を短くすることができる。
【0075】
図2に示すように、過給機62の吸込口66が、エンジンEの側面から車幅方向内側にずれた位置に配置され、この吸込口66に吸気ダクト70が車幅方向外側から接続されている。
図4に示すように、過給機62と過給機用変速機99とを前後方向、上下方向に並んで配置することで、車幅方向寸法が小さくなる。これにより、
図2の吸込口66をエンジン内側に配置しやすくなる。吸込口66をエンジン内側に配置することで、吸込口付近の吸気ダクト70の断面形状、曲率などを大きくして、吸気効率の低下を抑制できる。
【0076】
図5に示すように、ドグ96a,98aが形成される第3および第4変速ギヤ96、98が、シフトドラム108寄りに位置する過給機駆動軸(出力軸)82に支持されている。これにより、シフトドラム108とドグ96a,98aとの距離が短くなって、シフトフォーク106を短くできる。
【0077】
また、過給機用変速機99の入力軸であるカウンタ軸78にスタータギヤ86が車幅方向に並んで固定されている。このように、過給機用変速機99の入力軸を他の歯車の固定用に併用することで、部品点数が削減できるとともに、省スペース化が達成される。
【0078】
さらに、過給機用変速機99の入出力軸78,82の第1端部78a,82aがホルダ43に、第2端部78b、82bがクランクケース40のクランクケース本体41にそれぞれ支持されている。これにより、クランクケース40で両端を支持する場合に比べて、過給機用変速機99の入出力軸78,82をクランクケース40に取り付けやすい。
【0079】
具体的には、入出力軸78,82をクランクケース本体41内に入れて、第2端部78b、82bをクランクケース本体41の第2軸受部41a、41bに支持させ、ホルダ43をクランクケース本体41に取り付けて、第1端部78a,82aをホルダ43の第1軸受部43a,43bに支持する。あるいは、第1端部78a,82aをホルダ43の第1軸受部43a,43bに支持した状態で、第2端部78b、82bをクランクケース本体41の第2軸受部41a、41bに支持させて、ホルダ43をクランクケース本体41に取り付けることができる。これにより、過給機用変速機99の入出力軸78,82に軸体よりも径が大きい回転体である歯車、スプロケット等が設けられる場合でも、過給機用変速機99の入出力軸78,82をクランクケース40に容易に取り付けることができる。
【0080】
また、過給機用変速機99の出力軸82に突出部59が設けられ、この突出部59にスプロケット100が固定され、このスプロケット100の回転を過給機62に伝達するチェーン102が設けられている。これにより、ホルダ43をクランクケース40に取り付けた状態で、突出部59が車幅方向一方側である右側に露出し、チェーン102を接続し易くなる。さらに、動力伝達体としてチェーン102を用いているので、軸心間の寸法誤差を吸収できるうえに、スプロケット100の形状を変えることで、変速比の調整が容易になる。
【0081】
過給機用変速機99の入出力軸78,82には、互いに噛み合う歯車対がそれぞれ支持されているので、歯車対を噛み合わせた状態で、入出力軸78,82をクランクケース40に組み付けることができ、組立性が一層向上する。
【0082】
また、過給機用変速機99の出力軸である過給機駆動軸82に、シフトリング105とドグ96a,98aが形成される第3および第4変速ギヤ96、98とが支持されている。これにより、過給機駆動軸82にシフトリング105、第3および第4変速ギヤ96、98を装着し、複数の歯車対、ドグ96a,98aを噛合わせた状態で、過給機用変速機99をクランクケース40に組み付けることができる。したがって、組立性が向上する。
【0083】
図7に示すように、走行用減速機構21の走行用減速機構入力軸15は、車幅方向の一端部15aが、ホルダ43に形成される第3軸受部43cで支持され、他端部15bがクランクケース40のクランクケース本体41の第4軸受部41cに支持されている。これにより、ホルダ43とミッション用ホルダとが共通化され、部品点数を減らすことができる。
【0084】
図5に示すように、カウンタ軸78に、スタータギヤ86がカウンタギヤ84と車幅方向に並んで配置されている。これにより、スタータギヤ86に専用の回転軸を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
図6に示すように、過給機62が、アイドラ軸として機能するカウンタ軸78よりも後方に配置され、スタータギヤ86に噛み合うスタータモータ90が過給機62よりも前方に配置されている。これにより、過給機62とカウンタ軸78との間の前後方向の空いたスペースに、スタータモータ90を配置することができる。その結果、エンジンの車幅方向の寸法が大きくなるのを抑制できる。
【0085】
図5に示すように、スタータギヤ86は、カウンタギヤ84よりも車幅方向内側(左側)に配置されている。これにより、車幅方向外側(右側)からアクセスして過給機62の着脱を行う際に、スタータギヤ86が邪魔になることがなく、過給機62を容易に着脱することができる。
【0086】
図2に示すように、過給機62がクランクケース40の後部の上方に配置され、前後方向における過給機62の吐出口68とエンジンEの吸気ポート47(
図1)との間に吸気チャンバ74が配置されている。過給機62をクランクケース40の後部の上方に配置することで、過給機62の吐出口68とエンジンEの吸気ポート47(
図1)との間の前後方向距離が長くなる。その結果、吸気チャンバ74の前後方向寸法を大きくすることが可能となって、吸気チャンバ74の上下方向寸法を大きくすることなくチャンバ容量を稼ぐことができる。また、吸気チャンバ74の上下方向寸法を抑えることで、スタータモータ90等を配置しやすい。
【0087】
図10は、過給機用変速機99の別の例を示す。同図に示すように、この例では、
図5の実施形態とは異なり、クランク軸39のクランクギヤ80と噛み合う駆動ギヤ84Aが第2変速ギヤ94Aと一体に形成されて、カウンタ軸78Aに相対回転自在に支持されている。また、第2変速ギヤ94Aの車幅方向外側に小径の第1変速ギヤ92Aが、カウンタ軸78Aに相対回転自在に支持されている。つまり、カウンタ軸78Aに支持された駆動ギヤ84Aが、クランク軸39からの動力が入力される入力部を構成する。
【0088】
カウンタ軸78Aにおける第1変速ギヤ92Aと第2の変速ギヤ94Aとの間に、シフタ104Aが配置されている。シフタ104Aの一部を構成するシフトリング105Aが、カウンタ軸78Aにスプライン嵌合されることにより、カウンタ軸78Aに相対回転不能で軸方向に移動自在となっている。
【0089】
シフトフォーク(図示せず)を軸方向に移動させ、シフトリング105Aに設けた係合孔105Aaを、第1および第2の変速ギヤ92A,94Aに設けたドグ92Aa,94Aaの一方に選択的に係合させる。これにより、シフトリング105Aが第1および第2の変速ギヤ92A,94Aの一方に選択的に相対回転不能に係合される。
【0090】
カウンタ軸78Aは、ホルダ43がクランクケース本体41に取り付けられた状態で、ホルダ43から右側に突出する突出部59Aを有している。突出部59Aに、ボルト101によってスプロケット100が固定されている。スプロケット100に、過給機62(
図5)へクランク軸39からの動力を伝達するチェーン102が係合されている。つまり、カウンタ軸78Aに支持されたスプロケット100、およびチェーン102が、クランク軸39から入力された動力を過給機62(
図5)に出力する出力部を構成する。
【0091】
過給機駆動軸82Aに、第1および第2変速ギヤ92A,94Aとそれぞれ噛み合う大径の第3変速ギヤ96Aおよび小径の第4変速ギヤ98Aが設けられている。第1変速ギヤ92Aと第3変速ギヤ96Aとが互いに噛み合う1つの歯車対を構成している。第2変速ギヤ94Aと第4変速ギヤ98Aとが互いに噛み合う別の1つの歯車対を構成している。第3および第4変速ギヤ96A,98Aは、過給機駆動軸82に一体形成され、過給機駆動軸82とは相対回転不能に形成されている。その他の構造は、
図5の例と同じである。
【0092】
この例の第1動力伝達経路では、シフトリング105Aは第1変速ギヤ92Aにドグ連結され(第1変速比)、クランク軸39の回転動力は、クランクギヤ80を介して駆動ギヤ84Aから入力される。回転動力は、第2変速ギヤ94A、第4変速ギヤ98A、第3変速ギヤ96Aおよび第1変速ギヤ92Aを介して、カウンタ軸78Aのチェーン102に伝達される。つまり、第1動力伝達経路では、2つの歯車対を介して駆動ギヤ84Aの回転をスプロケット100、チェーン102に伝達している。
【0093】
一方、第2動力伝達経路では、シフトリング105Aは第2変速ギヤ94Aにドグ連結され(第2変速比)、クランク軸39の回転動力は、クランクギヤ80を介して駆動ギヤ84Aから入力される。回転動力は、第2変速ギヤ94Aを介してカウンタ軸78Aのチェーン102に伝達される。つまり、第2動力伝達経路では、歯車対を介さずに駆動ギヤ84Aの回転をスプロケット100、チェーン102に伝達している。
【0094】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、
図4に示す過給機変速機99の入出力軸78,82と、走行用減速機の入出力軸15,19が、共通のホルダ43に支持されているが、過給機変速機の入出力軸用のホルダと、走行用減速機の入出力軸用のホルダを別体に形成してもよい。また、本発明の過給機取付構造は、自動二輪車以外の鞍乗型車両にも適用可能で、三輪車、四輪車にも適用できる。さらに、車両に搭載されるエンジン以外にも適用できる。また、上記実施形態では、フロントフォーク型の自動二輪車について説明したが、これに限定されず、例えば、ハブステア型の自動二輪車にも適用できる。従って、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。