(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態は、外部装置との間でデータの送信または受信の少なくとも何れかを行うことができる放射型のアンテナ装置、および、該アンテナ装置を適用した電子機器1である。本実施形態では、電子機器1として、例えばデジタルカメラ、プリンタ、携帯電話などに適用することができる。
図2は、電子機器1に内蔵される無線通信モジュール10の内部構成の一例を示す図である。
図3は、無線通信モジュール10の概観構成の一例を示す斜視図である。
無線通信モジュール10は、実装部11と、アンテナ装置として機能するアンテナ部20とを有している。
図2に示すように、実装部11には、インターフェイス12、通信回路13、スイッチ16を有している。インターフェイス12は、機器本体18との間でのデータ信号の入出力を行う。機器本体18は制御基板を有し、無線通信モジュール10全体を制御する。
【0013】
通信回路13は、受信回路14および送信回路15を有している。受信回路14はアンテナ部20で受信した高周波信号を復調し、低周波化してデータ信号に変換する。送信回路15は、インターフェイス12を介して機器本体18から入力されたデータ信号を変調および増幅などして高周波信号に変換する。
スイッチ16は、アンテナ部20と接続する回路の切り替えを行う。具体的には、スイッチ16は、高周波信号を送信する場合には送信回路15とアンテナ部20とを接続し、高周波信号を受信する場合には受信回路14とアンテナ部20とを接続する。
【0014】
図3に示すように、実装部11における実装面17(上述したインターフェイス12、通信回路13およびスイッチ16などが実装されている領域や配線が形成されている領域の実装面17も含む)に接地導体が形成される。なお、接地導体は実装面17の裏面に形成してもよい。また、実装部11の両面を実装面17にし、実装面17(回路などが実装されている領域や配線が形成されている領域の実装面17も含む)に接地導体を形成してもよい。接地導体の面積が大きいほどアンテナ部20の特性を確保することができるので、接地導体を広く形成できるように無線通信モジュール10を構成することが好ましい。
【0015】
次に、本実施形態のアンテナ部20の構成について
図1、
図4、
図5および
図6を参照して説明する。
図4は、無線通信モジュール10の平面図(上面図)である。
図1は、
図4に示すI−I線断面図である。なお、実装部11に実装される回路などは省略して図示している。
図5は、
図1に示す樹脂基板21を拡大した断面図である。
図6は、アンテナ部20の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、アンテナ部20は、基材としての樹脂基板21、樹脂基板21上にミアンダ状のパターンが形成されたアンテナ導体22、ソルダーレジスト27が順番に積層されている。ミアンダ状とは、
図4に示すように、樹脂基板21を平面視で見て、アンテナ導体22が蛇行しながら一方向、ここでは樹脂基板21の長さ方向(
図4に示すL方向(延伸方向))に延伸する形態をいう。なお、以下では、樹脂基板21の長さ方向に対して直交する方向(
図4に示すW方向)を樹脂基板21の幅方向という。
【0017】
図4および
図6に示すように、アンテナ導体22は、第1ライン部としての蛇行幅部23と、第2ライン部としての蛇行延伸部24とを有している。蛇行幅部23は、アンテナ導体22が樹脂基板21の幅方向に沿って形成される。蛇行延伸部24は、アンテナ導体22が延伸する方向であって樹脂基板21の長さ方向に沿って形成される。
【0018】
アンテナ導体22は、実装部11に近接した給電部25から先端部26に至るまで、蛇行延伸部24と蛇行幅部23とが交互に形成され、蛇行幅部23から蛇行延伸部24を介して折り返されることで蛇行しながら長さ方向に延伸する。具体的には、給電部25から順に、蛇行延伸部24a、幅方向の一端側に向かう蛇行幅部23a、蛇行延伸部24b、幅方向の他端側に向かう蛇行幅部23b、蛇行延伸部24cなどを経て先端部26まで形成される。
換言すると、アンテナ導体22は、幅方向に平行して形成される隣り合う蛇行幅部23同士の端部を蛇行延伸部24により接続することで形成される。このとき、蛇行延伸部24は、蛇行幅部23同士を幅方向の一端側と他端側とで交互に接続する。
【0019】
ここで、本実施形態では、アンテナ部20の小型化を図るために、アンテナ導体22は樹脂基板21の凹凸条30上に形成されている。具体的には、
図1に示すように、樹脂基板21の上面には幅方向に沿った凹凸条30が形成されている。凹凸条30は、凸条31と凹条32とが平行に隣り合って形成される。
【0020】
図5に示すように、本実施形態の凹凸条30は、いわゆる正弦波状であり、長さ方向にピッチP毎に同一形状が形成される。また、凸条31の頂部、および、凹条32の底部は湾曲して形成されている。すなわち、凸条31には最上部34から隣り合う凹条32に向かって傾斜する傾斜面35が形成される。同様に、凹条32には最下部36から隣り合う凸条31に向かって傾斜する傾斜面37が形成される。なお、凹凸条30のうち、凸条31から凹条32までの深さDの中間に相当する位置が、凸条31と凹条32との境界部33である。本実施形態では、境界部33は、最上部34と最下部36とを結ぶ中間位置である。また、本実施形態の境界部33は樹脂基板21に対して厚み方向に傾斜されているので、平面視において境界部33の表面が露出され上面から確認することができる。
【0021】
ここで、
図6に示すように、本実施形態のアンテナ導体22の蛇行幅部23は、凸条31の頂部(上面)、および、凹条32の底部(上面)に沿って交互に形成される。具体的には、
図5の二点鎖線で示すように、凸条31の頂部に形成される蛇行幅部23は、凸条31の最上部34から両側の傾斜面35に亘って形成される。一方、凹条32の底部に形成される蛇行幅部23は、凹条32の最下部36から両側の傾斜面37に亘って形成される。このように、蛇行幅部23を傾斜面35、37に亘って形成した分、傾斜を含めた実際の蛇行幅部23の線幅が広くなる。すなわち、アンテナ部20を小型化するために平面視で見たときの蛇行幅部23の線幅(
図5に示すWL)を細くした場合であっても、傾斜を含めた実際の蛇行幅部23の線幅が細くなるのを抑制できる。したがって、導体の線幅が細くなることによる狭帯域化を抑制できるので、所望の通信帯域幅を維持したままアンテナ導体22の基板占有面積を小さくすることができる。
【0022】
更に、隣り合う蛇行幅部23同士、すなわち凸条31の頂部に形成された蛇行幅部23と凹条32の底部に形成された蛇行幅部23との間には、傾斜した境界部33を介して隙間が形成される。したがって、隣り合う蛇行幅部23同士の間隔は、延伸方向に加えて、樹脂基板21の厚み方向にも離間する。このように、隣り合う蛇行幅部23同士の間隔を厚み方向にも離間させた分、隣り合う蛇行幅部23同士の実際の間隔が広くなる。すなわち、アンテナ部20を小型化するために平面視で見たときの隣り合う蛇行幅部23同士の間隔(
図5に示すR1)を狭くした場合であっても、厚み方向の成分を含めた実際の隣り合う蛇行幅部23同士の間隔(
図5に示すR2)が狭くなるのを抑制できる。したがって、隣り合う導体同士の隙間が狭くなることによる容量性結合を抑制できるので、所望の共振周波数を維持したままアンテナ部20を小型化することができる。
【0023】
一方、アンテナ導体22の蛇行延伸部24は、凸条31の頂部と凹条32の底部とに亘って形成される。すなわち、蛇行延伸部24は、凸条31の傾斜面35、境界部33、凹条32の傾斜面37を経由して形成される。
【0024】
次に、上述したアンテナ部20を有する無線通信モジュール10を製造する方法について説明する。
まず、凹凸条30が形成された樹脂基板21を製造する。具体的には、溶融樹脂を押し出すことで溶融樹脂シートを成形し、成形した溶融樹脂シートが硬化する前に、鏡面ロールと、周面が樹脂で被覆された樹脂ロールとで挟圧することで樹脂シートを形成する。形成した樹脂シートのうち樹脂ロールに押圧された面の上面に光硬化樹脂組成物層を形成し、形成した光硬化樹脂組成物層に凹凸条30を形成する。なお、溶融樹脂として熱可塑性ポリイミド樹脂を用い、光硬化樹脂組成物として光硬化性ポリイミド樹脂を用いる。また、樹脂シートの厚みは1.5mmである。
【0025】
次に、凹凸条30を形成した樹脂シートを以降の工程で取り扱いやすいサイズ、例えば250mm×300mmに切断する。続いて、無電解めっきにより切断した樹脂シートの表裏全面に銅薄膜を成膜し、後に電解めっきにより膜厚10μmの銅箔を形成する。その後、フォトレジストを塗布し、アンテナ導体22のミアンダパターン、および、実装部11の配線パターンが複数繰り返して描かれたマスクを用いてUV露光を行う。次に、現像により銅箔上にレジストパターンを形成し、塩化第二鉄水溶液によりエッチングする。
【0026】
更に、剥離液によってレジストを剥離する。また、銅箔の保護のために銅箔上にソルダーレジスト層を形成してもよい。この場合、スクリーンマスクを用いて全面に成膜し、ソルダーレジストパターンの描かれたマスクを使用してUV露光を行い、現像液によって実装部11の必要部分のソルダーレジストを開口するとよい。樹脂シートを繰り返しパターン毎にカットすることで、個々の樹脂基板を製造することができる。最後に製造された樹脂基板21の実装面17に必要な電子部品として通信回路13などを実装することで無線通信モジュール10を製造することができる。
なお、本実施形態では、凹凸条30の境界部33に蛇行延伸部24を形成する場合、平面視で見たときに境界部33の表面が露出しているので、境界部33の表面に容易に銅箔を形成することができる。
【0027】
次に、上述したように構成される実施例のアンテナ部40と、比較例のアンテナ部50との反射特性を電磁界シミュレータにより解析した。
実施例のアンテナ部40の各種寸法などについて
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
図7Aは、実施例のアンテナ部40の平面図である。
図7Bは、
図7Aに示すII−II線の拡大断面図である。なお、ソルダーレジストは省略して図示している。
【0028】
実施例では、樹脂基板41の凹凸条30を正弦波形状になるように形成した。樹脂基板41にはポリイミド樹脂を用い、凸条31から凹条32までの深さDを1.0mmとした。また、アンテナ導体42は銅箔を用い、蛇行幅部43と蛇行延伸部44によりミアンダ状に形成した。ここで、平面視における寸法で表すと、アンテナ導体42の線幅WLを0.2mmとし、蛇行幅部43の間隔R1を0.3mmとし、蛇行幅部43の長さL1を2.6mmとし、アンテナ導体42の延伸方向の長さL2を6.6mmとした。したがって、アンテナ導体42の基板占有面積は、6.6mm×2.6mm=17.16mm
2である。
なお、実装部11の回路などをモデル化することが困難であるために、実装部11を接地導体にして解析した。接地導体の大きさは、25mm×10mmとした。
【0029】
一方、比較例のアンテナ部50の各種寸法などについて
図8Aおよび
図8Bを参照して説明する。
図8Aは、比較例のアンテナ部50の平面図である。
図8Bは、
図8Aに示すIII−III線の断面図である。なお、ソルダーレジストは省略して図示している。
比較例では、樹脂基板51にはポリイミド樹脂を用いた。また、アンテナ導体52は銅箔を用い、蛇行幅部53と蛇行延伸部54によりミアンダ状に形成した。ここで、平面視における寸法で表すと、アンテナ導体52の線幅WLを0.2mmとし、蛇行幅部53の間隔R1を0.3mmとした。一方、蛇行幅部53の長さL1を4.4mmとし、アンテナ導体52の延伸方向の長さL2を6.6mmとした。したがって、アンテナ導体52の基板占有面積は、6.6mm×4.4mm=29.04mm
2である。すなわち、比較例のアンテナ導体52の基板占有面積は、実施例のアンテナ導体42の基板占有面積よりも大きい。
なお、実装部11の回路などをモデル化することが困難であるために、実装部11を接地導体にして解析した。接地導体の大きさは、25mm×10mmとした。
【0030】
図9は、実施例のアンテナ部40と比較例のアンテナ部50との反射特性(S11)のシミュレーション結果を比較した図である。
図9では、縦軸をS11[dB]とし、横軸を周波数[GHz]としている。S11[dB]とは反射の大きさを表わす指標であり、ここでは給電部よりアンテナに給電された電力のうち、どのくらいの割合の電力が反射して戻ってきているかを示している。給電電力をPin[W]、反射電力をPr[W]とすると、S11[dB]は下記の式で表わされる。
【0032】
ここで、S11が小さいほど反射電力の割合が小さく、給電された電力の大部分がアンテナから放射されていることを意味している。逆に、S11が0dBである場合には、給電電力が完全に反射されてアンテナ部から放射されていないことを意味する。
図9では、実施例のアンテナ部40の特性線を実線45で示し、比較例のアンテナ部50の特性線を破線55で示している。
【0033】
図9に示すように実施例のアンテナ部40では、共振周波数が2.45[GHz]であり、通信帯域幅BW1が130[MHz]であった。また、放射効率は67.2%であり、無線LAN規格IEEE802.11の2.4[GHz]での通信に耐えうる特性を有していることがわかる。なお、通信帯域幅は、S11の値が−6[dB]以下となる周波数範囲を示している。また、放射効率は給電部25での反射による損失を含めた効率であり、放射電力÷給電電力で計算される。
一方、比較例のアンテナ部50では、共振周波数が2.43[GHz]であり、通信帯域幅BW2が80[MHz]であり、放射効率は63.2%であった。
【0034】
このように、実施例のアンテナ部40は、アンテナ導体42の基板占有面積が比較例のアンテナ部50のアンテナ導体52の基板占有面積よりも11mm
2以上小さいにも関わらず共振周波数、通信帯域幅および放射効率を比較例のアンテナ部50と同等の値にできることが確認できた。
したがって、凹凸条30を有する樹脂基板21を用いてアンテナ導体22の蛇行幅部23の長さを短くすることで共振周波数、通信帯域幅および放射効率を維持したままアンテナ導体22の基板占有面積を小さくでき、アンテナ部20を小型化することができる。
【0035】
なお、上述した実施例のアンテナ部40は、蛇行幅部43の長さを短くする例について説明したが、隣り合う蛇行幅部43の間隔を狭くしたり、蛇行延伸部44を削減して折り返し回数を低減したりすることでも基板占有面積を小さくすることができる。また、樹脂基板41に形成された凹凸条30の深さDが深いほど、より基板占有面積を縮小させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、凹凸条30を正弦波状に形成する場合について説明したが、本実施形態では樹脂基板61の凹凸条30を矩形状に形成する場合について説明する。
図10Aは、本実施形態のアンテナ部60を示す平面図である。
図10Bは、
図10Aに示すIV−IV線を切断した断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付してその説明を省略する。また、ソルダーレジストは省略して図示している。
【0037】
本実施形態のアンテナ導体62は、蛇行幅部63と蛇行延伸部64によりミアンダ状に形成した。蛇行幅部63は、凸条31の頂部である平坦面と、凹条32の底部である平坦面に交互に形成される。また、蛇行延伸部64は、境界部33を経由して形成される。
【0038】
一方、
図11Aは、比較形態のアンテナ部70を示す平面図である。
図11Bは、
図11Aに示すV−V線を切断した断面図である。比較形態のアンテナ導体72は、蛇行幅部73と蛇行延伸部74によりミアンダ状に形成した。蛇行幅部73および蛇行延伸部74は、樹脂基板71の平坦面に交互に形成される。
【0039】
ここで、本実施形態における隣り合う蛇行幅部63同士の間隔(
図10Bに示すR2)と、比較形態における隣り合う蛇行幅部73同士の間隔(
図11Bに示すR1)とを比較する。本実施形態における蛇行幅部63同士の間隔R2は、樹脂基板61の厚み方向にも離間させた分、比較形態における蛇行幅部73同士の間隔R1よりも広くなる。したがって、第1の実施形態の正弦波状の凹凸条30上にアンテナ導体22を形成する場合と同様、隣り合う導体同士の間隔が狭くなることによる容量性結合を抑制でき、結果としてアンテナ導体62の基板占有面積を小さくすることができる。
なお、蛇行幅部63は、平坦面のみに形成する場合に限られず、平坦面から鉛直面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0040】
次に、凸条31の頂部、および、凹条32の底部にアンテナ導体を形成する他の実施形態について、第3の実施形態〜第7の実施形態で説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付してその説明を省略する。また、ソルダーレジストは省略して図示している。
(第3の実施形態)
図12Aは、第3の実施形態に係るアンテナ部80の断面図である。樹脂基板81の凸条31および凹条32は、それぞれ半円状である。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部82は、凸条31の最上部34から両側の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条32の最下部36から両側の傾斜面に亘って形成される。
【0041】
(第4の実施形態)
図12Bは、第4の実施形態に係るアンテナ部85の断面図である。樹脂基板86の凸条31および凹条32は、それぞれ三角形状である。本実施形態でもアンテナ導体の蛇行幅部87は、凸条31の最上部34から両側の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条32の最下部36から両側の傾斜面に亘って形成される。
【0042】
(第5の実施形態)
図12Cは、第5の実施形態に係るアンテナ部90の断面図である。樹脂基板91の凸条31および凹条32は、それぞれ台形状である。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部92は、凸条31の平坦面に形成されると共に、凹条32の平坦面に形成される。このように台形状であっても、蛇行幅部92同士を樹脂基板91の厚み方向に離間させた分、蛇行幅部92同士の間隔を広くすることができる。
なお、蛇行幅部92は、平坦面のみに形成する場合に限られず、平坦面から傾斜面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0043】
(第6の実施形態)
図12Dは、第6の実施形態に係るアンテナ部95の断面図である。樹脂基板96の凸条31および凹条32は、それぞれ台形状であり、境界部33が平坦である。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部97は、凸条31の平坦面に形成されると共に、凹条32の平坦面に形成される。
なお、蛇行幅部97は、平坦面のみに形成する場合に限られず、平坦面から傾斜面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0044】
(第7の実施形態)
図12Eは、第7の実施形態に係るアンテナ部105の断面図である。樹脂基板106の凸条31および凹条32は、それぞれ基本形状が矩形状である。凸条31は中央が半円状に突出し、凹条32は中央が半円状に凹んでいる。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部107は、凸条31の最上部34から両側の傾斜面を超えて平坦面の一部にまで形成されると共に、凹条32の最下部36から両側の傾斜面を超えて平坦面の一部にまで形成される。
【0045】
(第8の実施形態)
図12Fは、第8の実施形態に係るアンテナ部110の断面図である。樹脂基板111の凸条31は頂部が全体的に下側に向かって湾曲状に凹み、凹条32は底部が全体的に上側に向かって湾曲状に突出している。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部112は、凸条31の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条32の傾斜面に亘って形成される。
【0046】
(第9の実施形態)
図12Gは、第9の実施形態に係るアンテナ部115の断面図である。樹脂基板116の凸条31および凹条32は、それぞれ基本形状が矩形状である。凸条31は中央が更に矩形状に突出した矩形部118を有し、凹条32は中央が更に矩形状に凹んだ矩形部119を有する。本実施形態のアンテナ導体の蛇行幅部117は、凸条31の矩形部118を覆うように形成されると共に、凹条32の矩形部119を覆うように形成される。
【0047】
(第10の実施形態)
第1から第9の実施形態では、樹脂基板の凹凸条30を一組のみ形成する場合について説明したが、本実施形態では樹脂基板101に複数組の凹凸条を形成する場合について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付してその説明を省略する。また、ソルダーレジストは省略して図示している。また、実装部11に実装される回路などは省略して図示している。
【0048】
図13Aは、本実施形態のアンテナ部100を示す平面図である。
図13Bは、
図13Aに示すVI−VI線を切断した断面図である。
図13Cは、
図13Aに示すVII−VII線を切断した断面図である。
図13Aに示すように、本実施形態の樹脂基板101は、異なる条方向および異なる断面形状の第1凹凸条30aと第2凹凸条30bとが形成される。具体的には、第1凹凸条30aの凸条31および凹条32は、条方向が樹脂基板101の幅方向であり、断面形状が正弦波状である(
図13Bを参照)。一方、第2凹凸条30bの凸条31および凹条32は、条方向が樹脂基板101の長さ方向であり、断面形状が台形状である(
図13Cを参照)。
【0049】
本実施形態のアンテナ導体102は、第1凹凸条30aに形成される第1アンテナ導体102aと、第2凹凸条30bに形成される第2アンテナ導体102bとを有している。アンテナ導体102は、給電部25から第1アンテナ導体102a、第2アンテナ導体102bを経て、先端部26まで形成される。
本実施形態の第1アンテナ導体102aは、蛇行幅部103aが第1凹凸条30aの凸条31および凹条32に沿って交互に形成され、蛇行延伸部104aが隣り合う蛇行幅部103a同士を接続する。したがって、第1アンテナ導体102aは、蛇行幅部103aから蛇行延伸部104aを介して折り返されることで蛇行しながら樹脂基板101の長さ方向に延伸する。
一方、本実施形態の第2アンテナ導体102bは、蛇行幅部103bが第2凹凸条30bの凸条31および凹条32に沿って交互に形成され、蛇行延伸部104bが隣り合う蛇行幅部103b同士を接続する。したがって、第2アンテナ導体102bは、蛇行幅部103bから蛇行延伸部104bを介して折り返されることで蛇行しながら樹脂基板101の幅方向に延伸する。
【0050】
このように、樹脂基板101に複数組の凹凸条30を形成することで、例えば、樹脂基板101内の離れた位置に凹凸条30を形成することができる。したがって、アンテナ導体も凹凸条30に合わせて、離れた位置に自由に設定できる。すなわち、例えば、特殊な形状の樹脂基板101であっても、アンテナ導体を様々な位置に形成できるので、樹脂基板101のスペースを有効利用でき、無線通信モジュール10を更に小型化することができる。なお、複数の凹凸条30は、異なる条方向および異なる断面形状に限られず、同じ条方向および同じ断面形状であってもよい。
【0051】
(第11の実施形態)
本実施形態は、データの送信または受信の少なくとも何れかを行うことができる電磁誘導型のアンテナ装置、および、該アンテナ装置を適用した通信システムとしてのRFIDシステム201である。
図14は、RFIDシステム201の構成の一例を示す図である。
RFIDシステム201は、電子機器としての無線通信装置であるリーダライタ装置210と、電子機器としての無線通信媒体であるICカード220とを備えている。
リーダライタ装置210は、非接触によるICカード220に記憶されたデータの読み出し、ICカード220へのデータの書き込みを行う。リーダライタ装置210は、制御部211、アンテナ装置として機能するアンテナ部230を有している。制御部211は、インターフェイス212、制御回路213、データ送受信回路214(通信回路)を有している。インターフェイス212は、リーダライタ装置210と通信可能に接続されたホストコンピュータ215との間でのデータ信号の入出力を行う。制御回路213は、ホストコンピュータ215の指示に応じてリーダライタ装置210全体を制御する。データ送受信回路214は、インターフェイス212を介してホストコンピュータ215により入力されたデータ信号に変調などをし、送信信号に変換する。また、データ送受信回路214は、アンテナ部230で受信した受信信号に復調などをし、データ信号に変換する。アンテナ部230は、後述するようにコイル状に形成され、ICカード220のアンテナ部240に向かう磁束を発生させる。
ホストコンピュータ215は、情報処理装置であって、リーダライタ装置210に対してデータ信号を送受信する。
【0052】
ICカード220は、非接触でリーダライタ装置210との間でデータを送受信する。ICカード220は、制御部221、アンテナ装置として機能するアンテナ部240を有している。制御部221は、記憶部222、通信応答回路223を有している。記憶部222は、受信したデータやID情報などを記憶する。アンテナ部240は、後述するようにコイル状に形成され、電源を有していない。すなわち、ICカード220はいわゆるパッシブ型である。アンテナ部240はリーダライタ装置210からの磁束を受けることで、電磁誘導によって誘導電圧が生じ、制御部221が駆動する。具体的には、通信応答回路223がリーダライタ装置210からの送信信号を受信し、それに応答して通信を行う。
【0053】
次に、本実施形態のアンテナ部240の構成について
図15〜
図17を参照して説明する。ここでは、ICカード220のアンテナ部240について説明するが、リーダライタ装置210のアンテナ部230も同様に構成することができる。
図15は、ICカード220の平面図である。
図16は、ICカード220の一部断面図である。
図17は、
図16に示す樹脂基板242を拡大した断面図である。
【0054】
図15に示すように、ICカード220は、制御部221、アンテナ部240、共振用のコンデンサ241を有している。制御部221、アンテナ部240および共振用のコンデンサ241は、基材としての樹脂基板242上に配置されている。制御部221はICチップにより構成され、樹脂基板242の端部に実装されている。アンテナ部240は、アンテナ導体243がコイル状に樹脂基板242上に形成されている。
【0055】
図16は、
図15に示すVIII−VIII線を切断した断面図である。
図16に示すように、アンテナ部240は、下側から樹脂基板242、アンテナ導体243、ソルダーレジスト244の順番に積層されている。本実施形態では、アンテナ導体243を樹脂基板242の厚み方向(
図16に示す上下方向)に立体的に形成することで、アンテナ導体243の線幅を実質的に広く形成し、アンテナ部240の抵抗を低減させている。
具体的には、
図16に示すように、樹脂基板242の上面に凹凸条250を形成している。凹凸条250は、凸条251と、凹条252とが樹脂基板242の厚み方向と直交する実装面242aの方向に交互に形成されている。
【0056】
図17に示すように、本実施形態の凹凸条250は、いわゆる正弦波状であり、実装面の方向にピッチP毎に同一形状が形成される。また、凸条251の頂部および凹条252の底部は湾曲して形成されている。すなわち、凸条251には最上部254から隣り合う凹条252に向かって傾斜する傾斜面255が形成される。同様に、凹条252には最下部256から隣り合う凸条251に向かって傾斜する傾斜面257が形成される。なお、凹凸条250のうち、凸条251から凹条252までの深さDの中間に相当する位置が、凸条251と凹条252との境界部253である。本実施形態では、境界部253は、最上部254と最下部256とを結ぶ中間位置である。また、本実施形態の境界部253は、樹脂基板242の実装面242aに対して厚み方向に傾斜されているので、平面視において表面が露出され、上面から確認することができる。
【0057】
図18は、樹脂基板242を示す平面図である。樹脂基板242には、上述した凹凸条250が上面に形成されている。ここでは、凸条251の最上部254を実線で示し、凹条252の最下部256を一点鎖線で示している。
図18に示すように、凸条251および凹条252は交互に異なる大きさの独立した環状で巻回形成されている。具体的には、最外側の凹条252aが最も大きい矩形状の環状であり、凹条252aの内側に位置する凸条251aが凹条252aよりも小さい矩形状の環状である。以降、内側に向かって凸条251と凹条252とが交互に配置されると共に、内側に位置するほど小さな矩形状で形成される。
【0058】
図16および
図17に戻り、アンテナ導体243について説明する。
図17では、アンテナ導体243を二点鎖線で示している。本実施形態のアンテナ導体243は、凸条251の頂部(上面)および凹条252の底部(上面)に形成されている。すなわち、アンテナ導体243は、凸条251では最上部254から両側の傾斜面255に亘って形成され、凹条252では最下部256から両側の傾斜面257に亘って形成されている。また、アンテナ導体243は境界部253からそれぞれ凸条251側への所定の範囲および凹条252側への所定の範囲には形成されていないので、凸条251に形成されたアンテナ導体243と凹条252に形成されたアンテナ導体243との間に隙間が形成される。
図15に示すように、アンテナ導体243は、凸条251の頂部および凹条252の底部に沿って渦状に形成される。ここで、渦状とは、
図15の平面視で示すように、徐々に一巻き分の大きさを小さくしながら連続する一巻き以上の形状をいうものとする。
図15では、アンテナ導体243の外側の一端245から渦状に内側の他端246まで到っている。
なお、アンテナ導体243の他端246と、制御部221から延びる導体の一端247とは、樹脂基板242の裏側に配線された配線パターンを介して導通される。
【0059】
このようにアンテナ導体243を凸条251の頂部および凹条252の底部に形成することで、凸条251の頂部および凹条252の底部が傾斜している分だけアンテナ導体243を樹脂基板242の厚み方向に形成できる。したがって、実質的にアンテナ導体243の線幅を広げることができるために、アンテナ導体243自体の抵抗が低減する。これによりアンテナ部240で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部240を小型化することができる。また、実質的にアンテナ導体243の線幅を広がっているものの、上側から見たときのアンテナ導体243の線幅(投影線幅)は狭いために、樹脂基板242のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、アンテナ導体243が外側の一端245から渦状に内側の他端246まで到るときに、アンテナ導体243は一巻き毎に凸条251の頂部と凹条252の底部とに交互に形成される。具体的には、
図15に示すように、一端245から一巻き目のアンテナ導体243aは凹条252の底部に形成される。さらに、二巻き目のアンテナ導体243bは凸条251の頂部に形成され、三巻き目のアンテナ導体243cは凹条252の底部に形成され、以降も同様に交互に形成される。このように、一巻き毎にアンテナ導体243を凸条251から凹条252あるいは凹条252から凸条251に入れ替えるために、一巻き毎にアンテナ導体243を凹凸条250の境界部253を経由させている。
【0061】
ここで、アンテナ導体243が凸条251と凹条252との間で入れ替わる状態を
図19を参照して説明する。
図19は、
図15および
図18に示すA部の斜視図である。
図19に示すように、樹脂基板242の各凸条251および各凹条252には、アンテナ導体243の一つの巻き目が終わり次の巻き目が開始される位置に、移行部258が形成されている。
移行部258は、平面視において一回りごとにアンテナ導体243の外側の巻き目が開始される位置に向かって傾斜している。したがって、例えば、一巻き目のアンテナ導体243aと二巻き目のアンテナ導体243bとに注目すると、アンテナ導体243は凹条252aの底部から移行部258の境界部253を経由することで凸条251aの頂部に入れ替わる。同様に、二巻き目のアンテナ導体243bから三巻き目のアンテナ導体243cに注目すると、アンテナ導体243は凸条251aの頂部から境界部253を経由することで凹条252bの底部に入れ替わる。
【0062】
このように、凹凸条250においてアンテナ導体243の各巻き目が終了し次の巻き目が開始される位置に移行部258を形成することで、アンテナ導体243を一巻き毎に凹条252の底部と凸条251の頂部との交互に形成することができる。アンテナ導体243を一巻き毎に凸条251の頂部と凹条252の底部との交互に形成することにより、隣り合うアンテナ導体243の線間を狭くすることができるので、樹脂基板242のサイズが大きくなるのを防止できる。
また、移行部258は平面視においてアンテナ導体243の外側の巻き目が開始される位置に向かって傾斜しているので、アンテナ導体243を単に直線状に形成するだけで移行部258の位置でアンテナ導体243が凸条251の頂部と凹条252の底部との間で入れ替わる。
なお、移行部258は外側の巻き目が開始される位置に向かって傾斜させる場合に限られず、内側の巻き目が開始される位置に向かって傾斜させてもよい。
また、凹凸条250には移行部258を形成することなく単に直線状であってもよい。この場合にはアンテナ導体243は平面視で境界部253を斜めに経由させることで、凹条252の底部から凸条251の頂部あるいは凸条251の頂部から凹条252の底部に入れ替えることができる。
【0063】
次に、上述したアンテナ部240を有するICカード220あるいはリーダライタ装置210を製造する方法について説明する。
まず、凹凸条250が形成された樹脂基板242を製造する。具体的には、溶融樹脂を押し出すことで溶融樹脂シートを成形し、成形した溶融樹脂シートが硬化する前に、鏡面ロールと、周面が樹脂で被覆された樹脂ロールとで挟圧することで樹脂シートを形成する。形成した樹脂シートのうち樹脂ロールに押圧された面の上面に光硬化樹脂組成物層を形成し、形成した光硬化樹脂組成物層に凹凸条250を形成する。なお、溶融樹脂として熱可塑性ポリイミド樹脂を用い、光硬化樹脂組成物として光硬化性ポリイミド樹脂を用いる。また、樹脂シートの厚みは1mmである。
【0064】
次に、凹凸条250を形成した樹脂シートを以降の工程で取り扱いやすいサイズ、例えば250mm×300mmに切断する。続いて、切断した樹脂シートに孔あけ加工を行い、無電解めっきにより樹脂シートの表裏全面および孔内壁面に銅薄膜を成膜し、後に電解めっきにより膜厚25μmの銅箔を形成する。その後、フォトレジストを塗布し、アンテナ導体パターンおよび制御部221の配線パターンが描かれたマスクを用いてUV露光を行う。次に、現像により銅箔上にレジストパターンを形成し、塩化第二鉄水溶液によりエッチングする。
【0065】
更に、剥離液によってレジストを剥離する。ここで銅箔の保護のために銅箔上にソルダーレジスト層を形成してもよい。この場合、スクリーンマスクを用いて全面に成膜し、ソルダーレジストパターンの描かれたマスクを使用してUV露光を行い、現像液によって実装部の必要部分のソルダーレジストを開口するとよい。樹脂シートを繰り返しパターン毎にカットすることで、個々の樹脂基板を製造することができる。最後に製造された樹脂基板242の実装面242aに必要な電子部品として制御部221および共振用のコンデンサ241を実装することでICカード220あるいはリーダライタ装置210を製造することができる。
なお、本実施形態では、移行部258の境界部253にアンテナ導体243を形成する場合、境界部253が傾斜し、平面視において表面が露出しているので、容易に銅箔を形成することができる。
【0066】
次に、上述したように構成される実施例のアンテナ部260と、比較例のアンテナ部270とのインピーダンスを電磁界シミュレータにより解析した。
実施例のアンテナ部260の各種寸法などについて
図20Aおよび
図20Bを参照して説明する。
図20Aは、実施例のアンテナ部260の平面図である。
図20Bは、
図20Aに示すIX−IX線の断面図である。
【0067】
実施例では、樹脂基板262の凹凸条250を正弦波形状になるように形成した。樹脂基板262には、ポリイミド樹脂を用い、凸条251から凹条252までの深さDを0.2mmとした。平面視における寸法で表すと、アンテナ導体263の線幅WLを0.2mmとし、凸条251のアンテナ導体263と凹条252のアンテナ導体263との間隔R1を0.05mmとした。アンテナ導体263は厚さ25μmの銅箔とした。また、アンテナ導体263の巻き数を10巻きとし、最も内側に位置する一巻き分のアンテナ導体263の長手方向の長さL3を20mmとし、短手方向の長さL4を10mmとした。なお、制御部221をモデル化することが困難であるために、制御部221に代えてポート264を設置した。また、
図20Bでは、便宜上ソルダーレジストの図示を省略している。
【0068】
一方、比較例のアンテナ部270の各種寸法などについて
図21Aおよび
図21Bを参照して説明する。
図21Aは、比較例のアンテナ部270の平面図である。
図21Bは、
図21Aに示すX−X線の断面図である。
比較例では、樹脂基板272には、ポリイミド樹脂を用いた。また、平面視における寸法で表すと、アンテナ導体273の線幅WLを0.2mmとし、アンテナ導体273間の間隔R1を0.05mmとした。アンテナ導体273は厚さ25μmの銅箔とした。また、アンテナ導体273の巻き数を10巻きとし、最も内側に位置する一巻き分のアンテナ導体273の長手方向の長さL3を20mmとし、短手方向の長さL4を10mmとした。なお、制御部221に代えてポート274を設置した。また、
図21Bでは、便宜上ソルダーレジストの図示を省略している。
【0069】
図22Aは、実施例のアンテナ部260と比較例のアンテナ部270との抵抗(インピーダンスの実部)を比較した図である。
図22Aでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部260の抵抗の特性線を実線281で示し、比較例におけるアンテナ部270の抵抗の特性線を破線282で示している。
図22Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部270の抵抗が5.3[Ω]であるのに対して、実施例のアンテナ部260では抵抗が4.1[Ω]であった。すなわち、実施例のアンテナ部260は、比較例のアンテナ部270に比べて抵抗を約23%低減できることを確認できた。したがって、アンテナ部260で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部を小型化することができる。
【0070】
図22Bは、実施例のアンテナ部260の深さDと抵抗低減効果の関係を示す図である。
図22Bでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図22Bに示すように、深さ0[mm]、すなわち比較例の抵抗5.3[Ω]から深さDが深くなるにつれて、抵抗低減効果が大きくなることがわかる。深さDが0.5[mm]の場合は3.3[Ω]まで低下する。したがって、深さDが深くなるにつれて、小型化効果が大きくなる。
【0071】
一方、
図23Aは、実施例のアンテナ部260と比較例のアンテナ部270とのインダクタンスを比較した図である。
図23Aでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部260のインダクタンスの特性線を実線283で示し、比較例におけるアンテナ部270のインダクタンスの特性線を破線284で示している。
図23Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部270のインダクタンスが3.6[μH]であり、実施例のアンテナ部260のインダクタンスが3.5[μH]であった。すなわち、実施例のアンテナ部260と、比較例のアンテナ部270とは略同一のインダクタンスであった。
【0072】
図23Bは、実施例のアンテナ部260の深さDとインダクタンスの変化の関係を示す図である。
図23Bでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図23Bに示すように、深さDが深くなってもインダクタンスはほとんど変化しないことがわかる。上述したように、比較例に相当する深さDが0[mm]の場合はインダクタンスが3.6[μH]であるのに対し、深さDが0.2[mm]の場合はインダクタンスが3.5[μH]である。
したがって、本解析によって、実施例のアンテナ部260では、比較例のアンテナ部270に対してインダクタンスを略同一にしたまま、小型化できることを確認できた。
【0073】
このように、本実施形態によれば、アンテナ導体243を凸条251の頂部および凹条252の底部に形成することで、樹脂基板242のサイズを大きくすることなくアンテナ導体243の実質的な線幅を大きくし、アンテナ導体243の抵抗を低減することができる。したがって、アンテナ部240で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部240を小型化することができる。
【0074】
(第12の実施形態)
第11の実施形態では、アンテナ導体243の外側の巻き目が開始される位置に向かって傾斜する移行部258について説明したが、本実施形態では異なる移行部について説明する。なお、アンテナ導体243を凸条251の頂部および凹条252の底部に形成する構成は、
図16および
図17と同様であり、その説明を省略する。
図24は、本実施形態の樹脂基板310を示す平面図である。樹脂基板310には、凹凸条250が上面に形成されている。ここでは、凸条251の最上部254を実線で示し、凹条252の最下部256を一点鎖線で示している。
図24に示すように、凸条251および凹条252は一回りごと交互に渦状に巻回形成される。具体的には、最外側の凹条252aが一回りすると、二回り目で凸条251aに移行する移行部311が形成されている。以降も同様に、移行部311を経由して、一回りごとに凹条252と凸条251とが交互に移行される。ここで、アンテナ導体243が凸条251と凹条252との間で入れ替わる状態を
図25を参照して説明する。
図25は、
図24に示すB部の斜視図である。
【0075】
図25に示すように移行部311では、樹脂基板310の厚み方向に傾斜させることで凸条251から凹条252、あるいは凹条252から凸条251に移行される。したがって、本実施形態では、凸条251の頂部および凹条252の底部に沿ってアンテナ導体243を形成することで、アンテナ導体243は一巻きごとに凸条251の頂部と凹条252の底部に交互に形成される。
【0076】
図25において、例えば、一巻き目のアンテナ導体243aと二巻き目のアンテナ導体243bとに注目すると、アンテナ導体243は凹条252aの底部から移行部311の傾斜を経由することで凸条251aの頂部に入れ替わる。同様に、二巻き目のアンテナ導体243bから三巻き目のアンテナ導体243cに注目すると、アンテナ導体243は凸条251aの頂部から移行部311の傾斜を経由することで凹条252bの底部に入れ替わる。
したがって、本実施形態でも第11の実施形態と同様に、樹脂基板310のサイズを大きくすることなくアンテナ導体243の実質的な線幅を大きくし、アンテナ導体243の抵抗を低減することができる。これによりアンテナ部で得られる誘電電圧が増加するため、その分アンテナ部を小型化することができる。
【0077】
次に、凸条251の頂部および凹条252の底部にアンテナ導体を形成する他の実施形態について、第13の実施形態〜第25の実施形態で説明する。
(第13の実施形態)
図26Aは、第13の実施形態に係るアンテナ部350の断面図である。樹脂基板351の凸条251および凹条252は、それぞれ半円状である。本実施形態のアンテナ導体352は、凸条251の最上部254から両側の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条252の最下部256から両側の傾斜面に亘って形成される。
【0078】
(第14の実施形態)
図26Bは、第14の実施形態に係る樹脂基板355の断面図である。樹脂基板356の凸条251および凹条252は、それぞれ三角形状である。本実施形態でもアンテナ導体357は、凸条251の最上部254から両側の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条252の最下部256から両側の傾斜面に亘って形成される。
【0079】
(第15の実施形態)
図26Cは、第15の実施形態に係るアンテナ部360の断面図である。樹脂基板361の凸条251および凹条252は、それぞれ台形状である。本実施形態のアンテナ導体362は、凸条251の平坦面に形成されると共に、凹条252の平坦面に形成される。このように台形状であっても、凸条251および凹条252の平坦面を広くすることでアンテナ導体362の抵抗を低減させることができる。一方、平面視においてアンテナ導体362の線間を狭くできるので、樹脂基板361のサイズが大きくなることを防止できる。なお、アンテナ導体362は、平坦面のみに形成する場合に限られず、平坦面から傾斜面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0080】
(第16の実施形態)
図26Dは、第16の実施形態に係るアンテナ部365の断面図である。樹脂基板366の凸条251および凹条252は、それぞれ台形状であり、境界部253が平坦である。本実施形態のアンテナ導体367は、凸条251の平坦面に形成されると共に、凹条252の平坦面に形成される。なお、アンテナ導体367は、平坦面のみに形成する場合に限られず、平坦面から傾斜面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0081】
(第17の実施形態)
図26Eは、第17の実施形態に係るアンテナ部370の断面図である。樹脂基板371の凸条251および凹条252は、それぞれ基本形状が矩形状である。凸条251は中央が半円状に突出し、凹条252は中央が半円状に凹んでいる。本実施形態のアンテナ導体372は、凸条251の最上部254から両側の傾斜面を超えて平坦面の一部にまで形成されると共に、凹条252の最下部256から両側の傾斜面を超えて平坦面の一部にまで形成される。
【0082】
(第18の実施形態)
図26Fは、第18の実施形態に係るアンテナ部375の断面図である。樹脂基板376の凸条251は頂部が全体的に下側に向かって湾曲状に凹み、凹条252は底部が全体的に上側に向かって湾曲状に突出している。本実施形態のアンテナ導体377は、凸条251の傾斜面に亘って形成されると共に、凹条252の傾斜面に亘って形成される。
【0083】
(第19の実施形態)
図26Gは、第19の実施形態に係るアンテナ部380の断面図である。樹脂基板381の凸条251および凹条252は、それぞれ基本形状が矩形状である。凸条251は中央が更に矩形状に突出した矩形部383を有し、凹条252は中央が更に矩形状に凹んだ矩形部384を有する。本実施形態のアンテナ導体352は、凸条251の矩形部383を覆うように形成されると共に、凹条252の矩形部384を覆うように形成される。
【0084】
(第20の実施形態)
図26Hは、第20の実施形態に係るアンテナ部385の断面図である。樹脂基板386の凸条251および凹条252は、それぞれ矩形状である。本実施形態のアンテナ導体387は、凸条251の平坦面に形成されると共に、凹条252の平坦面に形成される。このように矩形状であっても、凸条251および凹条252の平坦面を広くすることでアンテナ導体387の抵抗を低減させることができる。一方、平面視においてアンテナ導体387の線間を狭くできるので、樹脂基板386のサイズが大きくなることを防止できる。なお、アンテナ導体387は、平坦面に限られず鉛直面の一部に跨って形成されていてもよい。
【0085】
(第21の実施形態)
図27は、第21の実施形態に係るアンテナ部390の断面図である。樹脂基板391の凸条251および凹条252は、それぞれ矩形状である。本実施形態のアンテナ導体392は、凸条251の平坦面に形成されると共に、凹条252の平坦面に形成される。本実施形態は、第20の実施形態とは異なり、アンテナ導体392は線幅を広くしていない。すなわち、アンテナ導体392は、線幅を変えることなく、凸条251の頂部と凹条252の底部に交互に形成したものである。
【0086】
ここで、
図27に示すように線幅を変えずにアンテナ導体392を矩形状の凸条251、凹条252に1巻毎に交互に形成したアンテナ部390と、比較例のアンテナ部とのインピーダンスを電磁界シミュレータにより解析した。
実施例では、樹脂基板391にポリイミド樹脂を用い、
図27に示すように凸条251から凹条252までの深さDを0.2mmとした。また、アンテナ導体392の線幅WLを0.2mmとし、平面視における寸法で表したアンテナ導体間の間隔R1を0.05mmとした。アンテナ導体392は厚さ25μmの銅箔とした。また、アンテナ導体392の巻き数、最も内側に位置する一巻き分のアンテナ導体392の長手方向の長さL3、短手方向の長さL4などは、上述した
図21Aと同様とした。
一方、比較例のアンテナ部の各種寸法などについては、上述した
図21Aおよび
図21Bと同様とした。
【0087】
図28Aは、実施例のアンテナ部390と比較例のアンテナ部との抵抗(インピーダンスの実部)を比較した図である。
図28Aでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部390の抵抗の特性線を実線401で示し、比較例におけるアンテナ部の抵抗の特性線を破線402で示している。
図28Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部の抵抗が5.3[Ω]であるのに対して、実施例のアンテナ部390の抵抗が4.7[Ω]であった。すなわち、実施例のアンテナ部390は、比較例のアンテナ部に比べて抵抗を約11%低減できることを確認できた。
【0088】
図28Bは、実施例のアンテナ部390の深さDと抵抗低減効果の関係を示す図である。
図28Bでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図28Bに示すように、深さ0[mm]、すなわち比較例の抵抗5.3[Ω]から深さDが深くなるにつれて、抵抗低減効果が大きくなることがわかる。深さDが0.75[mm]の場合は4.3[Ω]まで低下する。
【0089】
一方、
図29Aは、実施例のアンテナ部390と比較例のアンテナ部とのインダクタンスを比較した図である。
図29Aでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部390のインダクタンスの特性線を実線403で示し、比較例におけるアンテナ部のインダクタンスの特性線を破線404で示している。
図29Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部のインダクタンスが3.6[μH]であり、実施例のアンテナ部390のインダクタンスが3.5[μH]であった。すなわち、実施例のアンテナ部390と、比較例のアンテナ部とは略同一のインダクタンスであった。
【0090】
図29Bは、実施例のアンテナ部390の深さDとインダクタンスの変化の関係を示す図である。
図29Bでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図29Bに示すように、深さDが深くなってもインダクタンスはほとんど変化しないことがわかる。上述したように、比較例に相当する深さDが0[mm]の場合はインダクタンスが3.6[μH]であるのに対し、深さDが0.2[mm]の場合はインダクタンスが3.5[μH]である。
【0091】
このように、本実施形態によれば、アンテナ導体を矩形状の凸条の頂部および凹条の底部に形成することで、樹脂基板のサイズを大きくすることなくアンテナ導体の抵抗を低減することができる。したがって、上述したアンテナ部をリーダライタ装置に用いた場合にはアンテナ導体で発生する電力ロスを低減することができ、発生する磁束量が増加するため、その分アンテナを小型化することができる。また、上述したアンテナ部をICカードに用いた場合には、誘起電圧が増加するため、その分アンテナを小型化することができる。
なお、第11の実施形態のように、アンテナ導体が凸条の頂部および凹条の底部に形成され、かつ頂部と底部が傾斜している場合に比べると、抵抗低減効果は小さくなっている。これは本実施形態の場合は実質的な線幅が大きくなっていないためである。それにもかかわらず抵抗低減効果があるのは、
図27に示すように実質的な間隔R2が大きくなっており、寄生容量が低減して自己共振周波数が高域シフトしているためと考えられる。したがって、大きな抵抗低減効果を得るためには凸条の頂部および凹条の底部が傾斜しているような樹脂基板を用いることが望ましい。
【0092】
(第22の実施形態)
図30は、第22の実施形態に係るアンテナ部320の断面図である。
本実施形態では、樹脂基板321に凸条251のみが形成される場合について説明する。
図30に示すように、凸条251の頂部は湾曲して形成され、最上部254から傾斜する傾斜面255が形成される。なお、平面視では、凸条251は、一回りのみ巻回形成される。
また、
図30に示すように、アンテナ導体322は、凸条251の頂部、すなわち凸条251の最上部254から両側の傾斜面255に亘って形成される。なお、アンテナ導体322は、両側の傾斜面255から更に樹脂基板321の平坦面323に亘って形成してもよい。アンテナ導体322は、凸条251の頂部に沿って形成されることで、一巻きのみ形成される。
【0093】
このようにアンテナ導体322を凸条251の頂部に形成することで、凸条251の頂部が傾斜している分だけアンテナ導体322を樹脂基板321の厚み方向に形成できる。したがって、実質的にアンテナ導体322の線幅を広げることができるために、アンテナ導体322自体の抵抗を低減することができる。これにより誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部320を小型化することができる。
【0094】
(第23の実施形態)
図31は、第23の実施形態に係るアンテナ部330の断面図である。
本実施形態では、樹脂基板331に凹条252のみが形成される場合について説明する。
図31に示すように、凹条252の底部は湾曲して形成され、最下部256から傾斜する傾斜面257が形成される。なお、平面視では、凹条252は、一回りのみ巻回形成される。
また、
図31に示すように、アンテナ導体332は、凹条252の底部、すなわち凹条252の最下部256から両側の傾斜面257に亘って形成される。なお、アンテナ導体332は、両側の傾斜面257から更に樹脂基板331の平坦面333に亘って形成してもよい。アンテナ導体332は、凹条252の底部に沿って形成されることで、一巻きのみ形成される。
【0095】
このようにアンテナ導体332を凹条252の底部に形成することで、凹条252の底部が傾斜している分だけアンテナ導体332を樹脂基板331の厚み方向に形成できる。したがって、実質的にアンテナ導体332の線幅を広げることができるために、アンテナ導体332自体の抵抗を低減することができる。これにより誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部330を小型化することができる。
【0096】
(第24の実施形態)
図32は、第24の実施形態に係るアンテナ部410の断面図である。
本実施形態では、樹脂基板411に凸条251と凹条252が形成され、アンテナ導体412を凸条251の頂部に形成し、凹条252の最下部256には形成しない場合について説明する。なお、凸条251および凹条252の形状は、第11の実施形態と同様である。
図32に示すように、アンテナ導体412は、凸条251の最上部254から両側の傾斜面255、境界部253および凹条252の傾斜面257に亘って形成されている。すなわち、本実施形態では、アンテナ導体412が凸条251のみを中心にして形成されている。
【0097】
このように、凸条251のみを中心にしてアンテナ導体412を形成することで、平面視において凸条251をアンテナ導体412の経路と同一とする渦状に形成することができる。
したがって、アンテナ導体412を単に凸条251が連続する方向に沿って形成すればよいため、アンテナ導体412を凸条251の頂部および凹条252の底部に交互に形成したり、移行部258を形成したりする必要がないため、アンテナ部410を容易に製造することができる。
なお、アンテナ導体412は境界部253に亘るまで形成しなくてもよい。また、アンテナ導体412が一巻きであると、第22の実施形態と同様の形態になるため、二巻き以上の渦状に形成することが好ましい。
【0098】
次に、凸条251のみを中心にしてアンテナ導体412を形成した実施例のアンテナ部410と、比較例のアンテナ部とのインピーダンスを電磁界シミュレータにより解析した。
実施例では、樹脂基板411の凹凸条を正弦波形状になるように形成した。樹脂基板411には、ポリイミド樹脂を用い、
図32に示すように、凸条251から凹条252までの深さDを0.2mmとした。また、平面視における寸法で表すと、アンテナ導体412の線幅WLを0.2mmとし、アンテナ導体412間の間隔R1を0.05mmとした。アンテナ導体412は厚さ25μmの銅箔とした。また、アンテナ導体412の巻き数、最も内側に位置する一巻き分のアンテナ導体412の長手方向の長さL3、短手方向の長さL4などは、上述した
図20Aと同様とした。
比較例も、上述した
図21Aおよび
図21Bと同様とした。
【0099】
図33Aは、実施例のアンテナ部410と比較例のアンテナ部との抵抗(インピーダンスの実部)を比較した図である。
図33Aでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部410の抵抗の特性線を実線413で示し、比較例におけるアンテナ部の抵抗の特性線を破線282で示している。
図33Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部の抵抗が5.3[Ω]であるのに対して、実施例のアンテナ部410の抵抗が4.6[Ω]であった。すなわち、実施例のアンテナ部410は、比較例のアンテナ部に比べて抵抗を約13%低減できることを確認できた。これによりアンテナ部410で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部410を小型化することができる。
【0100】
図33Bは、実施例のアンテナ部410の深さDと抵抗低減効果の関係を示す図である。
図33Bでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図33Bに示すように、深さ0[mm]、すなわち比較例の抵抗5.3Ωから深さD=0.11[mm]が最も抵抗低減効果が大きくなり、深さD=0.05[mm]以上、好ましく0.05[mm]以上0.25[mm]以下で抵抗低減効果があり、すなわちこの範囲でアンテナの小型化効果がある。
【0101】
一方、
図34Aは、実施例のアンテナ部410と比較例のアンテナ部とのインダクタンスを比較した図である。
図34Aでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部410のインダクタンスの特性線を実線414で示し、比較例におけるアンテナ部のインダクタンスの特性線を破線284で示している。
図34Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナのインダクタンスが3.6[μH]であり、実施例のアンテナ部410のインダクタンスが3.5[μH]であった。すなわち、実施例のアンテナ部410と、比較例のアンテナ部とは略同一のインダクタンスであった。
【0102】
図34Bは、実施例のアンテナ部410の深さDとインダクタンスの変化の関係を示す図である。
図34Bでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図34Bに示すように、深さDが深くなってもインダクタンスはほとんど変化しないことがわかる。上述したように、比較例に相当する深さDが0[mm]の場合はインダクタンスが3.6[μH]であるのに対し、深さDが0.25[mm]の場合はインダクタンスが3.5[μH]である。
【0103】
(第25の実施形態)
図35は、第25の実施形態に係るアンテナ部415の断面図である。
本実施形態では、樹脂基板416に凸条251と凹条252が形成され、アンテナ導体417を凹条252の底部に形成し、凸条251の最上部254には形成しない場合について説明する。なお、凸条251および凹条252の形状は、第11の実施形態と同様である。
図35に示すように、アンテナ導体417は、凹条252の最下部256から両側の傾斜面257、境界部253および凸条251の傾斜面255に亘って形成されている。すなわち、本実施形態では、アンテナ導体417が凹条252のみを中心にして形成されている。
【0104】
このように、凹条252のみを中心にしてアンテナ導体417を形成することで、平面視において凹条252をアンテナ導体417の経路と同一とする渦状に形成することができる。
したがって、アンテナ導体417を単に凹条252が連続する方向に沿って形成すればよいため、アンテナ導体417を凸条251の頂部および凹条252の底部に交互に形成したり、移行部258を形成したりする必要がないため、アンテナ部415を容易に製造することができる。
なお、アンテナ導体417は境界部253に亘るまで形成しなくてもよい。また、アンテナ導体417が一巻きであると、第23の実施形態と同様の形態になるため、二巻き以上の渦状に形成することが好ましい。
【0105】
次に、凹条252のみを中心にしてアンテナ導体417を形成した実施例のアンテナ部415と、比較例のアンテナ部とのインピーダンスを電磁界シミュレータにより解析した。
実施例では、樹脂基板416の凹凸条を正弦波形状になるように形成した。樹脂基板416には、ポリイミド樹脂を用い、
図35に示すように、凸条251から凹条252までの深さDを0.2mmとした。また、平面視における寸法で表すと、アンテナ導体417の線幅WLを0.2mmとし、アンテナ導体417間の間隔R1を0.05mmとした。アンテナ導体417は厚さ25μmの銅箔とした。また、アンテナ導体417の巻き数、最も内側に位置する一巻き分のアンテナ導体417の長手方向の長さL3、短手方向の長さL4などは、上述した
図20Aと同様とした。
比較例も、上述した
図21Aおよび
図21Bと同様とした。
【0106】
図36Aは、実施例のアンテナ部415と比較例のアンテナ部との抵抗(インピーダンスの実部)を比較した図である。
図36Aでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部415の抵抗の特性線を実線418で示し、比較例におけるアンテナ部の抵抗の特性線を破線282で示している。
図36Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナ部の抵抗が5.3[Ω]であるのに対して、実施例のアンテナ部415では抵抗が4.2[Ω]であった。すなわち、実施例のアンテナ部415は、比較例のアンテナ部に比べて抵抗を約21%低減できることを確認できた。これによりアンテナ部415で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部415を小型化することができる。
【0107】
図36Bは、実施例のアンテナ部415の深さDと抵抗低減効果の関係を示す図である。
図36Bでは、縦軸を抵抗[Ω]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図36Bに示すように、深さ0[mm]、すなわち比較例の抵抗5.2Ωから深さD=0.2[mm]が最も抵抗低減効果が大きくなり、深さD=0.1[mm]以上で抵抗低減効果がある。この深さDの条件においては、アンテナ部415で得られる誘起電圧が増加するため、その分アンテナ部415を小型化することができる。
【0108】
一方、
図37Aは、実施例のアンテナ部415と比較例のアンテナ部とのインダクタンスを比較した図である。
図37Aでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を周波数[MHz]としている。実施例におけるアンテナ部415のインダクタンスの特性線を実線419で示し、比較例におけるアンテナ部のインダクタンスの特性線を破線284で示している。
図37Aに示すように、例えば周波数13.56[MHz]では、比較例のアンテナのインダクタンスが3.6[μH]であり、実施例のアンテナ部415のインダクタンスが3.6[μH]であった。すなわち、実施例のアンテナ部415と、比較例のアンテナ部とは略同一のインダクタンスであった。
【0109】
図37Bは、実施例のアンテナ部415の深さDとインダクタンスの変化の関係を示す図である。
図37Bでは、縦軸をインダクタンス[μH]とし、横軸を深さD[mm]としている。周波数は13.56[MHz]である。
図37Bに示すように、深さDが深くなってもインダクタンスはほとんど変化しないことがわかる。上述したように、比較例に相当する深さDが0[mm]の場合はインダクタンスが3.6[μH]であるのに対し、深さDが0.2[mm]の場合はインダクタンスが3.6[μH]である。
【0110】
図38は、第24の実施形態の樹脂基板411および第25の実施形態の樹脂基板416を示す平面図である。ここでは、凹条252の最下部256を一点鎖線で示し、凸条251の最上部254は省略して図示している。
図38に示すように、凹条252(および凸条251)は渦状に巻回形成されているが、移行部が形成されておらず、凸条251と凹条252との間の移行が行われない。
【0111】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、上述した実施形態を適時組み合わせてもよい。
【0112】
第1〜第10の実施形態では、アンテナ部20と実装部11との位置関係が
図3に示すものとして説明したが、この形態に限定されない。
第1〜第7の実施形態では、蛇行幅部を凸条31の頂部および凹条32の底部に交互に形成する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、一つの蛇行幅部23を凸条31の頂部に形成し、隣り合う蛇行幅部23の何れかの蛇行幅部23も凸条31の頂部に形成してもよい。
図39は、第26の実施形態に係るアンテナ部420を示す斜視図である。本実施形態のアンテナ部420は、蛇行幅部23を凸条31の頂部のみに形成している。
同様に、一つの蛇行幅部23を凹条32の底部に形成し、隣り合う蛇行幅部23の何れかの蛇行幅部23も凹条32の底部に形成してもよい。すなわち、蛇行幅部23は、凸条31の頂部および凹条32の底部に交互に形成しなくてもよい。
【0113】
第11〜第25の実施形態では、無線通信媒体としてICカードを用い、無線通信装置としてリーダライタ装置を用いる場合について説明したが、この場合に限られず、コイル状にアンテナ導体を形成する装置に適用することができる。
第11〜第25の実施形態では、電磁誘導方式によるRFIDシステムについて説明したが、この場合に限られず、電波方式、電磁界共振結合方式(電磁共鳴方式)などによるRFIDシステムにも用いることができる。
【0114】
なお、第11〜第22の実施形態では、基材の上面に凸条および凹条を交互に巻回形成すると共に、アンテナ導体を一巻きごとに凸条の頂部および凹条の底部に交互に形成する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、基材の上面に凸条および凹条が交互に巻回形成した上で、アンテナ導体の一つの巻き目を凸条の頂部に形成し、前後の何れかの巻き目も凸条の頂部に形成してもよい。
同様に、アンテナ導体の一つの巻き目を凹条の底部に形成し、前後の何れかの巻き目も凹条の底部に形成してもよい。すなわち、アンテナ導体を凸条の頂部および凹条の底部に交互に形成しなくてもよい。