(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内筒部を構成する前記隔壁とその外周にある境界壁と、前記外筒部を構成する隔壁が一体的に構成され、前記外筒部の外周にある外周壁がセラミックセメントでコートされている請求項3に記載のハニカム構造体。
前記外筒部のテーパー状に形成された端面に開口するセルの開口部が、セラミックを主成分とする封止材により塞がれるとともに、前記封止材により、少なくとも前記テーパー状の端面を外周とするテーパー部のセル内が、埋められている請求項1〜9のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
セラミックハニカム構造体に触媒を担持してハニカム触媒体として使用する場合、通常、ハニカム構造体の全てのセルに触媒を担持し、当該全てのセルに排気ガスを通過させるため、側面のみを保持して使用している。そのため、通常、ハニカム構造体(ハニカム触媒体)の側面の破壊圧力が、ハニカム構造体(ハニカム触媒体)そのものの機械的強度になる。このような、側面のみで保持され、全ての保持力が外周から中心軸方向等に向かうように作用していた従来の構造に対し、テーパー保持構造を適用したハニカム構造体は、セルの延びる方向(排ガスの流通方向)にも保持力が分散する構造になっている。側面強度が低く、側面だけでは保持できない薄壁ハニカム等に特に適した構造である。
【0007】
セラミックハニカム触媒体を缶体(容器)に把持して形成される触媒コンバータは、自動車の激しい振動により把持が緩むことがあり、更に、通常、熱膨脹係数がセラミックの10倍以上であるステンレススティールにより容器が形成されるため、使用中に温度が上昇すれば容器の方がセラミックハニカム構造体より大きく膨脹し、セラミックハニカム構造体の把持が緩むことがある。このように、セラミックハニカム構造体の把持が緩まないようにするためには、容器が熱膨張したときにも把持が緩んでハニカム構造体が動くということがないように、ハニカム構造体と缶体の間に配置する弾力性のマットに予め高い圧力を掛けてセラミックハニカム構造体を把持する必要がある。しかし、隔壁の厚さが0.1mmを下回るようなセラミックハニカム構造体の場合は、このように高い圧力で把持した場合には、その圧力により破壊されることもある。これに対し、セラミックハニカム構造体のセルの延びる方向の強度は、側面の強度(側面に中心軸方向に向かって力を加えたときの強度)の5倍以上である。そして、外周付近(側面付近)のセルが変形していると側面の強度が低下する傾向にあるが、セルの延びる方向の強度は、このようなセルの変形に影響され難い。このように、側面の強度が低いセラミックハニカム構造体でも、側面保持(セルと直角方向に力を加える保持)だけではなく、側面の強度より5倍以上も高い強度の「セルの延びる方向」(セルと平行方向)にも保持力の一部を分担させることにより、自動車の激しい振動にも耐えることができるようになる。
【0008】
特許文献1には、円筒形のセラミックハニカム構造体(断面の大きさ、セルの大きさは、一様)の外周(側面)に、側面の一部がテーパー状のセラミック筒(6)が配設された構造が開示されている。これは、セラミック筒がハニカム構造体とは全く別の部品であるため、部品点数が増加し、その分コスト高であった。また、セラミック筒の材質がハニカム構造体の材質と同じであっても、セラミック筒の熱膨張係数はハニカム構造体の熱膨張係数より大きくなるため、熱衝撃でクラックが生じやすいという問題があった。また、セラミック筒がハニカム形状のハニカム構造体より密度の高い「中実」構造であり、これにより熱容量が増加するため、浄化性能が悪化するという問題があった。尚、セラミックハニカム構造体の熱膨張係数が小さいのは、セラミックハニカム構造体を押出成形するときに、セラミックを含む押出原料が、加圧された状態で押出成形用の口金の狭いスリットを通って排出されながらハニカム形状に成形されるため、押出原料中のセラミックが一定方向に配向し、これにより、熱膨張係数が小さくなるのである。そのため、セラミック原料が同じであっても、このように狭いスリットを加圧状態で通過することによって成形された隔壁と、他の方法で成形された筒状のセラミックとはその熱膨張係数が異なるのである。また、セラミック筒の形成方法として、焼成が不要なセラミックセメントにより、一部がテーパー状になるように塗布して形成する方法が考えられるが、セラミックセメントの塗布に時間がかかり、コストが高くなると考えられる。さらに、ハニカム構造体に触媒を担持して排ガスの浄化に使用する場合、ハニカム構造体の温度が1000℃になることもあるが、セラミックセメント材料は、通常、このような高温に耐えることができないため、適用範囲が限定されると考えられる。
【0009】
特許文献2には、製造工程における乾燥工程または焼成工程で、片端面の収縮を抑制し、反対側の端面を大きく収縮させることによって、側面全体をテーパー状に形成したセラミックハニカム構造体が開示されている。このようにして製造される特許文献2に記載のハニカム構造体は、一方の端面と他方の端面とで外径が異なり、更に、一方の端面と他方の端面とでセルの大きさが異なるものである。そして、隔壁及び外周壁が中心軸方向に対して傾斜した構造になっている。このようなハニカム構造体を製造する場合、現実的には押出成形した時点では、ハニカム構造体は軟らかく、特に隔壁厚さが薄くなればなるほど柔らかくなる。そのため、押出成形後の軟らかい状態で全体がテーパー状のハニカム構造体を立てて置くと、非常に不安定な状態となり、例えば、プリンを皿にあけた場合のように上部は自由な状態となる。テーパーを付けるためには、通常の条件より激しく収縮するような条件が必要となる。このような状態でテーパーが付くほど激しく乾燥を行なえば、断面形状の変形および外径のバラツキが大きくなり、その結果テーパー形状のバラツキが大となり、設定したテーパー状にすることは非常に難しくなる。テーパー形状が定まらずにバラツキが大きくなった場合、ハニカム構造体と缶体はマットを介して点接触となり、その部分に応力集中が発生しハニカム構造体が破損することもある。また、押出成形直後の軟らかいときに、型に強制的に沿わせた状態で乾燥させて、テーパー形状を決める方法も考えられるが、強制的に型に沿わせた場合には、現実には、ハニカム構造体の外周部の隔壁が変形し強度低下を生じるという問題が生じると考えられる。このように、特許文献2に記載の発明では、工業的に利用できるようなコントロールされたテーパー形状は得られないという問題があった。
【0010】
特許文献3には、円筒状のハニカム構造体(断面の大きさ、セルの大きさは、一様)の外周(側面)に、一部がテーパー状に形成された筒状の外筒を固着させた構造が開示されている。これは、外筒がハニカム構造体とは全く別の部品であるため、部品点数が増加し、その分コスト高であった。また、外筒の材質がハニカム構造体の材質と同じであっても、外筒の熱膨張係数はハニカム構造体の熱膨張係数より大きくなるため、熱衝撃でクラックが生じやすいという問題があった。また、外筒が「中実」構造であり、これにより熱容量が増加するため、浄化性能が悪化するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、缶体に収納したときに缶体内でずれることを防止し、正確なテーパー形状を有し、浄化性能に優れ、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって以下のハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する、セラミックを主成分とする多孔質の隔壁を有する筒状の内筒部と、流体の流路となる複数のセルを区画形成する、セラミックを主成分とする多孔質の隔壁を有し、前記内筒部の外周を覆うように配置された外筒部とを有するハニカム形状の多孔質基材を備え、前記外筒部の少なくとも片側の端面が、先端に向かうに従って外径が細くなるテーパー状であるハニカム構造体
であり、前記外筒部のテーパー状の端面の中心軸方向における先端が、前記内筒部の端面から離れており、前記内筒部の外周の一部が露出しているハニカム構造体。
【0014】
[2] 前記外筒部のテーパー状の端面の中
の一のテーパー状の端面の中心軸方向における先端が、前記内筒部の端面に接している[1]に記載のハニカム構造体。
【0016】
[
3] 前記内筒部が、その外周に境界壁を有する[1]
または[2]に記載のハニカム構造体。
【0017】
[
4] 前記内筒部を構成する前記隔壁とその外周にある境界壁と、前記外筒部を構成する前記隔壁とその外周にある外周壁とが一体的に構成されている[
3]に記載のハニカム構造体。
【0018】
[
5] 前記内筒部を構成する前記隔壁とその外周にある境界壁と、前記外筒部を構成する隔壁が一体的に構成され、前記外筒部の外周にある外周壁がセラミックセメントでコートされている[
3]に記載のハニカム構造体。
【0019】
[
6] 前記内筒部の外周の中心軸に直交する断面の形状と、前記外筒部の外周の中心軸に直交する断面の形状とが相似形である[1]〜[
5]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0020】
[
7] 前記多孔質基材に形成された各セルの中心軸に直交する断面の大きさが、一方の端部から他方の端部まで同じである[1]〜[
6]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0021】
[
8] 前記内筒部と前記外筒部とが、異なるセル密度及び/又は異なる隔壁厚さである[1]〜[
7]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0022】
[
9] 前記外筒部の隔壁厚さが、前記内筒部の隔壁厚さより厚い[
8]に記載のハニカム構造体。
【0023】
[
10] 前記外筒部のテーパー状に形成された端面に開口するセルの開口部が、セラミックを主成分とする封止材により塞がれるとともに、前記封止材により、少なくとも前記テーパー状の端面を外周とするテーパー部のセル内が、埋められている[1]〜[
9]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0024】
[
11] 前記封止材が、コロイダルシリカにコージェライト微粉末を混合したセラミックセメントである[
10]に記載のハニカム構造体。
【0025】
[
12] 前記封止材が、γ−アルミナを主成分とする触媒担体である[
10]に記載のハニカム構造体。
【0026】
[
13] [
3]〜[
12]のいずれかに記載のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記境界壁の内側および前記内筒部のみに担持された触媒とを備えるハニカム触媒体。
【0027】
[
14] [
1]に記載のハニカム構造体の製造方法であって、内筒部を構成する隔壁とその境界部、外筒部を構成する隔壁とその外周にある外周壁とを一体的に成形し、焼成した後、少なくとも一方の端面より前記境界壁にそって外筒部を構成する隔壁とその外周壁を研削するハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のハニカム構造体は、外筒部の少なくとも片側の端面が、先端に向かうに従って外径が細くなるテーパー状であるため、缶体に収納したときに把持力を軸方向に分散させ径方向の圧力を軽減でき、テーパー形状部分を機械的に固定することができ、缶体内でずれることを防止することができる。また、焼成後に機械加工でテーパー部を形成できるため正確なテーパー形状を形成することができる。また、外筒部がハニカム状であり、熱容量が小さいため、使用時の初期温度上昇が速く、浄化性能に優れるものである。また、内筒部及び外筒部が、いずれもハニカム形状であり、同じセラミック原料で押出成形により形成されるため、内筒部及び外筒部の熱膨張係数が同じであり、耐熱衝撃性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0031】
(1)ハニカム構造体:
(1−1)本発明のハニカム構造体の一の実施形
態;
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1A、
図1B、
図8に示すように、一方の端面1aから他方の端面2aまで貫通し流体の流路となる複数のセル3aを区画形成する、セラミックを主成分とする多孔質の隔壁4aを有する筒状の内筒部11と、一方の端面1bから他方の端面2bまで貫通し流体の流路となる複数のセル3bを区画形成する、セラミックを主成分とする多孔質の隔壁4bを有し、内筒部11の外周12を覆うように配置された外筒部21とを有するハニカム形状の多孔質基材5を備えるものであり、外筒部21の両側の端面が、先端22に向かうに従って外径が細くなるテーパー状になったものである。このように、本実施形態のハニカム構造体100は、外筒部21の両側の端面が、先端22に向かうに従って外径が細くなるテーパー状であるため、缶体に収納(キャニング)したときにテーパー形状部分を中心軸方向に力を加えながら固定することができ、缶体内でずれることを防止することができる。また、焼成後に機械加工でテーパー部を形成できるため正確なテーパー形状を形成することができる。また、本実施形態のハニカム構造体100は、外筒部21がハニカム状であり、セル3bの部分が空洞であるため、熱容量が小さい。そのため、使用時の初期温度上昇が速く、浄化性能に優れるものである。また、内筒部11及び外筒部21が、いずれもハニカム形状であり、同じセラミック原料で押出成形により一体的に形成されるため、内筒部11及び外筒部21の熱膨張係数が同じであり、耐熱衝撃性に優れたものである。
図1Aは、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す平面図である。
図1Bは、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
図8は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の端面の一部を拡大して示した平面図である。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体100において、多孔質基材5は、内側に位置する内筒部11と内筒部11の外周を取り囲むように配置された外筒部21とを有するものである。外筒部21は、少なくとも片側の端面がテーパー状になっていればよい。
【0033】
外筒部21のテーパーの角度は、30〜90°が好ましく、45〜60°が更に好ましい。30°より小さいとセルの延びる方向の分担保持力が小さくなり、ハニカム構造体を缶体に収納した時のズレを防止する効果が低下したり、側面の分担圧力が大きくなってハニカム構造体が破壊することがある。90°より大きいと外筒部が欠けたりすることがある。外筒部21のテーパーの角度とは、外筒部21の端面と内筒部11の外周12とにより形成される角度であり、外筒部21の先端部分の角度である。また、外筒部21のテーパー状の端面(一方の端面1b,他方の端面2b)の中心軸方向における先端22,22が、内筒部11の端面(一方の端面1a,他方の端面2a)から離れており、内筒部11の外周12の一部が露出している。
【0034】
外筒部21を形成する隔壁4bは、中心軸(セルの延びる方向)に直交する断面において、多孔質基材5の中心軸を中心として放射状に延びる方向に沿って形成された直線状のものと、外筒部21の外周形状(円形)に相似な形状(円形)のものとの組み合わせになっている。このように形成することにより、外筒部のセル形状が一定となり、成形時の土の流れが均一となり安定した成形が可能となる。尚、中心軸(セルの延びる方向)に直交する断面における、外筒部21を形成する隔壁4bの延びる方向はこれに限定されるものではない。また、内筒部11と外筒部21とは、異なるセル密度(中心軸に直交する断面におけるセル密度)であり、且つ異なる隔壁厚さである。さらに具体的には、外筒部21のセル密度は、内筒部11のセル密度より低く、外筒部21の隔壁厚さは、内筒部11の隔壁厚さより厚く形成されている。外筒部21の隔壁厚さは、内筒部11の隔壁厚さの0.5〜5.0倍が好ましく、1.0〜3.0倍が更に好ましい。多孔質基材5の隔壁厚さをこのように形成することにより、ハニカム構造体を成形するときの隔壁の変形を防止することができ、更にハニカム構造体の側面からの圧縮に対する強度が向上する。外筒部21の隔壁厚さが、内筒部11の隔壁厚さの0.5倍より薄いと、絶対強度が不足する懸念があり、5.0倍より厚いと成形時の内周部への土の供給と外周部への土の供給のバランスが悪くなり、強度低下の原因となるセル変形が発生する懸念がある。また、内筒部11の隔壁厚さは、40〜130μmが好ましく、50〜90μmが更に好ましい。40μmより薄いと、隔壁がうまく押し出し出来ずハニカム構造体とならない懸念があり、130μmより厚いと性能が悪化することがある。外筒部21の隔壁厚さは、50〜150μmが好ましく、70〜130μmが更に好ましい。50μmより薄いと、隔壁がうまく押し出し出来ず強度低下の原因となるセル変形が発生する懸念があり、150μmより厚いと質量が増し性能低下発生の懸念がある。内筒部11と外筒部21のセル密度は、同じであっても異なっていてもよい。また、内筒部11のセル密度は、46.5〜186セル/cm
2が好ましく、46.5〜140セル/cm
2が更に好ましい。46.5セル/cm
2より小さいと、幾何学的表面積が小さいため浄化性能が低くなってしまうことがあり、186セル/cm
2より大きいと圧力損失が高くなりエンジンの馬力が低下することがある。外筒部21のセル密度は、31〜140セル/cm
2が好ましく、46.5〜116セル/cm
2が更に好ましい。31セル/cm
2より小さかったり、140セル/cm
2より大きいと内筒部11のセル密度と差が出来すぎ成形が不安定となり、強度低下の原因となるセル変形が発生する懸念がある。
【0035】
外筒部21の幅は、2〜15mmが好ましく、3〜10mmが更に好ましい。このように形成することにより、ハニカム構造体を缶体に収納した時のズレを効果的に防止することができる。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体は、材料がコージェライトで外筒部21がハニカム形状であるため、熱膨張係数が小さい。特に、押出成形によって作製されるコージェライトハニカム構造体の熱膨脹係数は、非常に小さくなる。その理由は以下の通りである。原料に未焼成カオリンを使用すると、押出成形用の口金を通過する際、未焼成カオリンの六角板状の結晶カオリナイトが、隔壁と平行に並ぶ。それを焼成すると、カオリナイトの結晶に沿って六角柱のコージェライト結晶が寝た状態(六角柱のコージェライト結晶の中心軸が、カオリナイト結晶の六角形の結晶面に平行になった状態)で生成される。そのため、六角柱状のコージェライト結晶の中心軸は、ハニカム構造体のセルの延びる方向及び径方向が混在した状態の配向となる。そして、六角柱状のコージェライトの結晶の熱膨張係数は六角柱の軸方向が「−1.1×10
−6」、その径方向(直角方向)が「+2.9×10
−6」であるため、ハニカム構造体全体の熱膨張係数としては、0.2〜0.5×10
−6以下となる。この熱膨張係数は、例えば、プレス製法で作製されたハニカム構造体等の他の製法で作製されたハニカム構造体より、格段に低い値である。これに対し、円筒状のハニカム構造体の外周に配設するための、厚さ3mm程度のセラミック筒を押出成形により作製しても結晶配向が非常に少なくなるため(よく配向するのは、原料の粒度にも関係するが、厚さ2mm未満の薄いものに限られる)、熱膨脹係数はハニカム構造体の約5倍(1.0〜2.0×10
−6)程度になる。
【0037】
内筒部11は、その外周12に境界壁13を有する。そして、内筒部11の両端面付近では、境界壁13が外部に露出した構造になっている。このように、内筒部11が、その外周に境界壁13を有することにより、テーパー面を形成するために研削した後、内筒部の隔壁4aが露出しないため、隔壁4aが欠けたりしない利点がある。境界壁13の厚さは、内筒部の隔壁4aの1〜10倍が好ましく、2〜6倍が更に好ましい。境界壁13をこのような厚さにすることにより、研削加工時またはその後の取り扱いで、欠け等不具合が発生し難くなる利点がある。また、内筒部11の外周12の中心軸に直交する断面の形状と、外筒部21の外周の中心軸に直交する断面の形状とが相似形である。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体100において、多孔質基材5は、隔壁4a,4bの平均細孔径が、0.5〜10μmであることが好ましく、2〜6μmであることが更に好ましい。0.5μmより小さいと、触媒担体が担持され難くなり、10μmより大きいと機械的強度が低下することがある。隔壁4a,4bの平均細孔径は、水銀ポロシメーターで測定した値である。
【0039】
隔壁4a,4bの気孔率は、20〜45%であることが好ましく、製造の容易さの点で25〜40%であることが更に好ましい。20%より小さいと、触媒担体が担持され難くなったり、焼成時の収縮が大きくなるため寸法のバラツキが大きくなったりすることがあり、45%より大きいと機械的強度が低下することがある。隔壁4a,4bの気孔率は、水銀ポロシメーターにより測定した値である。
【0040】
ハニカム構造体100のセル3a,3bの形状は特に限定されないが、中心軸に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。また、
図1A、
図8に示すように、本実施形体のハニカム構造体100の外筒部21のセル3bの形状のように、一対の対向する2辺が円弧状に形成され、もう一方の一対の対向する2辺が直線状に形成された形状であってもよい。また、多孔質基材5に形成された各セル3a,3bの中心軸に直交する断面の大きさが、一方の端面1a,1bから他方の端面2a,2bまで同じであることが好ましい。これにより、安定した製品が得られる利点がある。
【0041】
本実施の形態の多孔質基材5(隔壁4a,4b)は、セラミックを主成分とするものである。隔壁3の材料としては、具体的には、セラミックとしては、炭化珪素、コージェライト、アルミナタイタネート、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、及びLAS(リチウムアルミニウムシリケート)又はこれらを組み合わせたものを好適例として挙げることができる。特に、炭化珪素、コージェライト、ムライト、窒化珪素、アルミナ、アルミナタイタネート等のセラミックが、耐アルカリ特性上好適である。中でも酸化物系のセラミックは、コストの点でも好ましい。また、「セラミックを主成分とする」というときは、呼称されるセラミック結晶を全体の90質量%以上含有することをいう。残りは、他のセラミック結晶またはガラスを挙げることが出来る。
【0042】
ハニカム構造体100の大きさは、特に限定されないが、中心軸方向長さが50〜500mmが好ましい。また、例えば、ハニカム構造体100の外筒部21の側面部分の中心軸に直交する断面における外周形状が円形の場合、その直径が50〜350mmであることが好ましい。
【0043】
また、ハニカム構造体100は、外筒部21の側面に位置する外周壁23を有してもよい。なお、外周壁23は、成形時に多孔質基材と一体的に形成させる成形一体壁であることが好ましいが、成形後に、多孔質基材の外周を研削して所定形状とし、セラミックセメント等で外周壁を形成するセメントコート壁であることも好ましい態様である。
【0044】
(1−2)本発明のハニカム構造体の他の実施形
態(第2の実施形態);
本発明のハニカム構造体の他の実施形
態(第2の実施形態)は、
図2A、
図2Bに示すように、上記本発明のハニカム構造体の一の実施形
態において、外筒部21の隔壁4bが、中心軸に直交する断面において、内筒部11の隔壁4aの延びる方向と同じ方向に延びているものである。つまり、外筒部21の隔壁4bは、内筒部11の隔壁4aと同様に、直交する2方向に延びる隔壁を有するものである。但し、外筒部21の隔壁4bと内筒部11の隔壁4aとは、連続的に繋がっている部分もあるが、連続して繋がっていない部分もある。本実施形
態のハニカム構造体101の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の一の実施形
態において好ましいとされた条件が好ましい。
図2Aは、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す平面図である。
図2Bは、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0045】
(1−3)本発明のハニカム構造体の更に他の実施形
態(第3の実施形態);
本発明のハニカム構造体の更に他の実施形
態(第3の実施形態)は、
図3A、
図3Bに示すように、上記本発明のハニカム構造体の一の実施形
態において、外筒部21の隔壁4bが、中心軸に直交する断面において、内筒部11の隔壁4aと連続的に繋がるように形成されたものである。このように構成したため、口金製作上の点で好ましい。本実施形
態のハニカム構造体102の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の一の実施形
態において好ましいとされた条件が好ましい。
図3Aは、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
図3Bは、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0046】
(1−4)本発明のハニカム構造体の更に他の実施形
態(第4の実施形態);
本発明のハニカム構造体の更に他の実施形
態(第4の実施形態)は、
図4A、
図4Bに示すように、上記本発明のハニカム構造体の「第3の実施形
態」において、内筒部11が、境界壁13(
図3A、
図3B参照)を有していないものである。このように構成したため、一般のハニカム構造体を母材として利用できる点で好ましい。本実施形
態のハニカム構造体103の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の「第3の実施
形態」において好ましいとされた条件が好ましい。
図4Aは、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す平面図である。
図4Bは、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0047】
(1−5
)ハニカム構造体
の形態(第5
の形態);
ハニカム構造体
の形態(第5
の形態)は、
図5A、
図5Bに示すように、上記本発明のハニカム構造体の「第4の実施
形態」において、外筒部21のテーパー状の端面1b,2bの中の両方のテーパー状の端面1b,2bの中心軸方向における先端22,22が、内筒部11の端面(一方の端面)1a,1aに接している。「外筒部21のテーパー状の端面(一方の端面1a)の中心軸方向における先端22が、内筒部11の端面(一方の端面1a)に接している」というときは、外筒部21の先端22と、内筒部11の端面(一方の端面1a)の最外周14とが同じ位置にあることを意味する。第5
の形態は、このように構成したため、内筒部11の隔壁が露出しない点で好ましい
。ハニカム構造体104の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の「第4の実施
形態」において好ましいとされた条件が好ましい。
図5Aは
、ハニカム構造体
の形態を模式的に示す平面図である。
図5Bは
、ハニカム構造体
の形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0048】
(1−6)本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第6の実施形態);
本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第6の実施形態)は、
図6に示すように、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において、外筒部21のテーパー状に形成された端面1bに開口するセル3bの開口部が、セラミックを主成分とする封止部24により塞がれるとともに、封止部24により、少なくともテーパー状の端面1bを外周とするテーパー部25のセル3b内が、埋められたものである。テーパー部25は、円錐台から、面積の小さい側の端面を底面とする円柱形状が取り除かれた、傾斜部分のみの形状である。このように構成したため、外筒部の隔壁が薄いときに補強され、取り扱い時に欠けを防止できる点で好ましい。封止部24は、テーパー部25から、0〜10mmだけ深く充填されていることが好ましく、3〜5mmだけ深く充填されていることが更に好ましい。0mmより浅いと剥離する懸念があり、10mmより深いと施工に時間が掛かったり、質量が重くなり浄化性能が悪化する懸念がある。封止部24は、セラミックセメントであることが好ましい。セラミックセメントとしては、コロイダルシリカにコージェライト微粒子を混入したもの、または触媒担体が好ましい。触媒担体としては、γ−アルミナを主成分とするものであることが好ましい。本実施
形態のハニカム構造体105の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において好ましいとされた条件が好ましい。
図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0049】
(1−7)本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第7の実施形態);
本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第7の実施形態)は、
図7に示すように、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において、外筒部21の片側の端面(一方の端面)1bのみが、先端22に向かうに従って外径が細くなるテーパー状になっているものである。本発明のハニカム構造体をエンジンの排気管等に装着して排ガス浄化装置として使用する場合、エンジンからの排ガスを片方の端面から流入させて使用する。そのため、ハニカム構造体は排ガスが流入する側(排ガスの上流側)の端面から圧力を受け、反対側(排ガスの下流側)の端面方向に押される状態になる。従って、ハニカム構造体は排ガスの下流側に向かってずれやすくなっている。特にエンジン直下で使用される場合ハニカム構造体は、セルの延びる方向が上下となり触媒自身の質量が重力で下方向への力が加わる。このような状態で使用されるとき、外筒部21の片側の端面(一方の端面)1bのみをテーパー状にするだけでも、そのテーパー状の端面側を排ガスの下流側に向けてハニカム構造体を排気管内に装着すれば、ハニカム構造体がずれることを防止する効果を発揮することができる。本実施
形態のハニカム構造体106の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において好ましいとされた条件が好ましい。
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0050】
(1−8)本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第8の実施形態);
本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第8の実施形態)は、
図9に示すように、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において、中心軸に直交する断面において、内筒部11の外周12から内側に向かって5〜10セルの範囲の隔壁4aが、内側から外側に向かうに従って漸次厚くなるように形成されたものである。このように構成したため、隔壁4aが全体的に薄い場合でも、押出成形時の隔壁の変形を防止することができる。本実施
形態のハニカム構造体107の他の条件については、上記本発明のハニカム構造体の一の実施
形態において好ましいとされた条件が好ましい。
図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の端面の一部を拡大して示した平面図である。
【0051】
尚、上記各実施形態のハニカム構造体の各特徴は、相反する条件でない限り、それぞれ他の特徴と組み合わせることができ、各実施
形態の特徴を組み合わせたハニカム構造体としてもよい。
【0052】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の一実施
形態の製造方法について説明する。
【0053】
一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する筒状の内筒部と、一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有し、内筒部の外周を覆うように配置された外筒部とを有するハニカム成形体を押出成形により形成する。得られるハニカム成形体は、内筒部の外周に境界壁が形成されたものとする。ハニカム成形体を押出成形する方法は、特に限定されないが、例えば、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土を押出成形によりハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得ることが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法や、二つの機械を一体化した混連成形機を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0054】
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであり、添加剤としては、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。成形原料としては、焼成することにより、上記本発明のハニカム構造体の一実施形態において挙げられた隔壁の材料が形成されるものが好ましい。
【0055】
使用するセラミック原料の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整し、焼成条件を最適化することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質基材を得ることができる。
【0056】
上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0057】
ハニカム成形体の外筒部の両端面をテーパー加工し、外筒部の両端面をテーパー状にする。テーパー加工は、ハニカム成形体を焼成した後におこなってもよい。焼成後のほうが焼成の歪を回避できるので、正確なテーパーが得られるのでより好ましい。押出成形直後の柔らかい状態で型を押し付けたりする方法も考えられるかもしれないが、現実的には加工した部分の近くのセルが変形し、機械的強度が低下したりするため実用的ではない。ハニカム成形体の端部の外周付近(外筒部の端面)をテーパー加工する方法としては、乾燥後のハニカム成形体を回転させながら、所定のテーパー形状を有する、ダイヤモンドをまぶした砥石を、押し当てる手法が好ましい。これにより、10秒程度で簡単、迅速にテーパー加工することが出来る。尚、円筒状のハニカム成形体の外周に、セラミックセメントでセラミック筒を形成する場合、厚く塗布するのに1分程度かかり、乾燥に100℃前後の温度で2時間程度を要し、非常に時間のかかるものである。尚、本発明のハニカム構造体の1の実施形態は、内筒部がその外周に境界壁を有するため、ハニカム成形体を押出成形した時点で、内筒部と外筒部の区別が付くが、例えば、
図4A、
図4Bに示す、本発明のハニカム構造体の更に他の実施
形態(第4の実施形態)の場合、境界壁がないため、ハニカム成形体を押出成形した時点では内筒部と外筒部との区別が付かない状態である。この場合、テーパー加工により所定のテーパー構造を形成した後の、テーパー状に形成された端面を有する部分が外筒部となる。焼成品の加工も同様である。
【0058】
次に、両端面がテーパー状に形成された外筒部を有するハニカム成形体を焼成して、ハニカム構造体を得る。焼成の条件(温度、時間)は、成形原料の種類、所望する特性により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。
【0059】
(3)ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体の一実施
形態は、上述した本発明のハニカム構造体と、本発明のハニカム構造体の内筒部のみに担持された触媒とを備えるものである。本実施形態のハニカム触媒体を缶体に収納(キャニング)する場合、外筒部のテーパー状の端面が、ハニカム構造体を保持するためのマットによって塞がれた状態になり、排気ガスが流れないため、触媒を担持しないことが好ましい。触媒は、内筒部のセル内の隔壁表面及び/又は隔壁の細孔内に担持されることが好ましい。
【0060】
本実施
形態のハニカム触媒体の製造方法としては、上述した本発明のハニカム構造体を製造し、得られたハニカム構造体の内筒部のセル内に触媒を担持することによりハニカム触媒体を得ることが好ましい。触媒の担持方法は、一般的な、ハニカム構造体への触媒担持方法と同様にすることができる。具体的には、ハニカム構造体の内筒部11の外周12を樹脂製のパッキンとフィルム等でシールし、外筒部に触媒液が流れないようにした後に、シールを施した側の端面から内筒部のセル内に触媒液を流し込むことにより触媒を担持する方法が挙げられる。また、他の方法としては、上記ハニカム構造体の、内筒部11の外周12にシールを施した反対側の端面を数ミリ触媒液に浸漬させ、その状態で反対側の端面(内筒部11の外周12にシールを施してある側の端面)から減圧をすることにより、内筒部のセル内に触媒液を吸引し、内筒部のセル内の隔壁に触媒を担持する方法が挙げられる。
【0061】
触媒液を内筒部のセル内に流入させた後に、余剰スラリーを圧縮空気で吹き飛ばすことが好ましい。その後に、触媒を乾燥、焼付けすることにより、セル内の隔壁表面に触媒が塗工(担持)されたハニカム触媒体を得ることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
焼成によりコージェライトが得られるコージェライト化原料に、水、バインダを加えて真空脱気しながら混練し、所定の口金を使用して押出成形することにより、一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体は、内筒部とその外周を覆う外筒部とを有する構造であり、内筒部の外周に境界壁を有するものであった。また、中心軸に直交する断面において、内筒部の隔壁は、均一な厚さ(
図8を参照)に形成されたものであった。
【0064】
次に、ハニカム成形体を乾燥、焼成させることによりハニカム焼成体を得た。得られたハニカム焼成体の外筒部の端面を、テーパー加工して
図1A、
図1Bに示すようなハニカム構造体を得た(実施例1)。ハニカム焼成体の外筒部の端面をテーパー加工する方法としては、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、セルの延びる方向に対して45°の角度でハニカム焼成体の外筒部の端面の外周部分に押しあてることにより、45°の角度のテーパー形状の端面(外筒部の端面)を得る方法とした。
【0065】
得られたハニカム構造体の、外筒部の側面部分の外径(直径)は114mmであり、内筒部の外径(直径)は106mmであり、内筒部の中心軸方向長さは、114.3mmであった。また、内筒部の外周(境界壁)が露出した部分の中心軸方向の長さは5mmであった。また、内筒部の、隔壁厚さは0.09mmであり、セル密度は62セル/cm
2であった。また、外筒部の、隔壁厚さは0.13mmであり、セル密度は46.5セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の質量は293gであった。得られた、ハニカム構造体について、以下の方法で「耐熱衝撃性」及び「浄化性能」を測定し、「加熱振動試験」を行った。結果を表1に示す。
【0066】
尚、表1において、「形状」及び「隔壁形状」の欄は、作製したハニカム構造体の形状について各図面を挙げて示している。例えば、実施例6では、形状「
図1A、
図1B」、隔壁形状「
図9」であるが、これは、
図1A、
図1Bに示されるハニカム構造体100において、内筒部の外周から内側に向かって5セルの範囲の隔壁が、
図9に示すように、内側から外側に向かうに従って漸次厚くなるように形成されたものであることを示している。また、比較例3について説明すると、
図10A、
図10Bに示されるハニカム構造体110は、外筒部がハニカム構造ではないが、この場合における隔壁形状「
図9」は、ハニカム構造の外周から内側に向かって5セルの範囲の隔壁が、
図9に示すように、内側から外側に向かうに従って漸次厚くなるように形成されたものであることを示している(
図9に示されるハニカム構造体107の境界壁を残し外筒部を中実にしたもの)。また、比較例4について説明すると、
図11A、
図11Bに示されるハニカム構造体111は、ハニカム構造体が、外筒部を有する構造ではないが、この場合における隔壁形状「
図9」は、ハニカム構造の外周から内側に向かって5セルの範囲の隔壁が、
図9に示すように、内側から外側に向かうに従って漸次厚くなるように形成されたものである(
図9に示されるハニカム構造体107の境界壁を残し外筒部を取り去った状態)。また、「内筒部セル構造」の欄は、「隔壁厚さ(mm)/セル密度(個/cm
2)」を示している。例えば、実施例1の「0.09/62」は、隔壁厚さが0.09(mm)であり、セル密度が62(個/cm
2)であることを示している。「外筒部セル構造」についても「内筒部セル構造」の場合と同様である。また、「質量(g)」の欄は、ハニカム構造体の質量を示している。
【0067】
(耐熱衝撃性)
耐熱衝撃性試験は、「JASO M505−87 6.7項」に規定される手順で行う。室温の試料を所定の温度に保持した電気炉に入れ、20分間保持する。試料を取り出し、耐火レンガの上に置き「クラックの有無を観察しつつ」室温まで冷却する。尚、上記「クラックの有無を観察しつつ」試料を冷却することは、「JASO M505−87 6.7項」の規定にはなく、本「耐熱衝撃性試験」に特有の操作である。耐熱衝撃性は、試料の外観を観察したときにクラックがなく、全周を金属棒(直径約1〜3mmの鉄製の棒)で軽くたたいたときに打音が金属音である最大温度差(室温との温度差:「電気炉温度−室温」)とする。クラックが発生するか、又は打音が金属音でない場合、「異常」であるとする。試料は触媒を施していないハニカム構造体で、最初の所定温度は、「600℃+室温」とし、異常がなければ電気炉の温度を50℃上げ、異常が発生するまで50℃ずつ温度を上げながら試験を繰り返した。5個のハニカム構造体について試験を行い、異常が認められた温度より1段階下の温度(異常が認められた温度より50℃低い温度)の平均値を耐熱衝撃性試験の結果とした。表1には、上記「最大温度差」が示されている。最大温度差は、比較例2または比較例4を50℃以上下回らないことが好ましい。
【0068】
(浄化性能)
アメリカ連邦試験法LA−4モードで、次の条件で浄化性能を評価する。車輌「排気容量:2300cm
3 1998年モデル、米国ULEV仕様車」、ハニカム構造体(コンバーター)搭載位置「床下」、ハニカム構造体サイズ「最外周径:φ114mm、内周壁径:φ106mm」、触媒「Pd(パラジウム)300g/ft
3」、触媒熱処理「(電気炉980℃×10時間)+(車輌80km/時間×2時間)」とした。測定は2回行い、2回の測定値の平均値を評価結果とした。表1には、HC(炭化水素)の結果(g/マイル)について示す。
【0069】
(加熱振動試験)
ハニカム構造体に、セラミック繊維でできた無膨張マットを巻き缶体に収納する。缶体は、ハニカム構造体の外筒部の外径に所望の圧力となるマットの厚さを加えた大きさの内径を有し、一方の端部はストレートのまま、他の端部にハニカム構造体の外筒部の端面と同じ角度のテーパー部を有し、そのテーパーの先は、排気管と同じ外径になるようコーン形状となっている。そして、その缶体のストレートの端部側からマットを巻いたハニカム構造体を入れハニカム構造体のテーパー部が缶体テーパー部に当たりマットが所定の圧力になるところまで押し込む。缶体のストレート側にはフランジが付いており、そのフランジ部分に「蓋」を取り付ける。「蓋」は、缶体に接続するフランジから始まり、上記缶体のテーパー形状と同じ形状のテーパー部、その先にコーン部を有し、先端に高温ガスが供給される管に接続するためのフランジが付いている。その蓋を缶体に押し当て、フランジ同士をボルトで締め付けて缶体と蓋の間からガスが漏れないようにする。蓋のテーパーは、フランジ同士を合わせたとき、ハニカム構造体のテーパーに合うような位置関係にしてある。なお、比較例2,4は、圧力0.2MPaで不合格となったので、0.5MPaに上げたものでも試験をした。この状態で、ハニカム構造体のセルに、プロパンガスを燃焼した高温ガスを5分間流し、その後、室温の空気を5分間流すというサイクルを繰り返しながら、振動試験機から振動を100時間与える。高温ガスの温度は900℃とする。振動条件は、「加速度:30G、周波数:200Hz」とする。試験後、ハニカム構造体が缶体内で、2mm以上ずれた場合にそのハニカム構造体は不合格であるとし、2mm未満のずれの場合にそのハニカム構造体を合格とした。加熱振動試験の合否判定としては、2個のハニカム構造体について試験を行い、2個とも合格の場合を合格「○」とし、少なくとも一つの不合格がある場合と不合格「×」とした。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例2〜
4、6〜9、11、
参考例1、2、比較例1〜4)
「形状」、「隔壁形状」、「内筒部セル構造」、「外筒部セル構造」及び「質量」を表1のように変化させた以外は、上記実施例1の場合と同様にしてハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体について、実施例1の場合と同様にして、上記方法で「耐熱衝撃性」及び「浄化性能」を測定し、「加熱振動試験」を行った。結果を表1に示す。
【0072】
尚、比較例1および比較例3のハニカム構造体は、円筒状の多孔質基材31の外周に、コロイダルシリカにコージェライト微粒子を混入したセラミックセメントを塗工して形成されたセラミック筒32が配設されたものとした。セラミック筒32はハニカム形状ではなく、単にセラミックセメントが塗工されて形成されたものとした。セラミック筒32の両端部は、テーパー状に形成されており、テーパー角度は、中心軸方向に対して45°とした。また、比較例3のハニカム構造体は境界壁を有していないが、多孔質基材の外周壁が境界壁と同じ位置関係にあるため、表1の比較例3の境界壁の欄は「有」と表示している。ハニカム構造体110は、セラミック筒32の側面部分の外径(直径)は114mmであり、多孔質基材31の外径(直径)は106mmであり、多孔質基材31の中心軸方向長さは、114.3mmであった。また、多孔質基材31の外周が露出した部分の中心軸方向の長さは5mmであった。
図10Aは、従来のテーパー部を有するハニカム構造体を模式的に示す平面図である。
図10Bは、従来のテーパー部を有するハニカム構造体を模式的に示す、部分切断面を表した正面図である。
【0073】
また、
図11A、
図11Bに示すハニカム構造体111は、円筒状の多孔質基材33からなるハニカム構造体111とした。ハニカム構造体111は、中心軸方向長さが114.3mmであり、外径が106mmであった。
図11Aは、従来のハニカム構造体を模式的に示す平面図である。
図11Bは、従来のハニカム構造体を模式的に示す正面図である。
【0074】
表1より、実施例1〜
4、6〜9、11
、参考例1、2のハニカム構造体は、耐熱衝撃性及び浄化性能に優れ、加熱振動試験の結果も良好であることがわかる。耐熱衝撃性では、比較例1及び比較例3のハニカム構造体は、実施例1〜
4、6〜9、11
、参考例1、2のハニカム構造体と比較して、100〜140℃(約15%)程度低い結果であった。これはセラミック筒の影響である。耐熱衝撃性の目安である熱膨脹係数を、実施例1のハニカム構造体の外筒部と、比較例1のセラミック筒とで比較調査した結果では、「比較例1」が1.7×10
−6/℃であったのに対し、「実施例1」は0.3×10
−6/℃であり、実施例1が比較例1の約5分の1であった。セラミック筒の熱膨脹係数が高い場合、全体が熱せられた触媒に常温の空気が導入された過程では、セラミック筒の膨張が大きいため、中のハニカム構造体を外側に向かって引っ張る状態となり、低い温度差でハニカム構造体が破壊するのである。
【0075】
また、加熱振動試験では、比較例2のハニカム構造体及び比較例4のハニカム構造体が、実施例1〜
4、6〜9、11
、参考例1、2のハニカム構造体と同じキャニング圧力0.2MPaで不合格となっている。これら通常のキャンニング構造では、圧力を0.5MPaにアップしないと合格にならない。
【0076】
また、浄化性能では、実施例1〜
4、参考例1のハニカム構造体の平均値0.053(g/マイル)に対し、比較例1のハニカム構造体が0.064(g/マイル)であり、実施例1〜
4、参考例1のハニカム構造体に対して比較例1のハニカム構造体が21%悪化している。また、実施例6〜
9、参考例2のハニカム構造体の平均値0.045(g/マイル)に対し、比較例3のハニカム構造体が0.057(g/マイル)であり、実施例6〜
9、参考例2のハニカム構造体に対して比較例3のハニカム構造体が27%悪化している。比較例1、3のハニカム構造体の質量が、セラミック筒の質量が大きいことより、実施例1〜
4、参考例1、実施例6〜
9、参考例2のハニカム構造体の質量に対して重いために、比較例1,3の浄化性能が悪いものと考えられる。つまり、質量が大きいと、熱容量が大きくなるため、比較例1,3のハニカム構造体は温度上昇が遅くなったことが浄化性能の悪化につながったものと考えられる。尚、実施例11のハニカム構造体、部分的にセラミックセメントを外筒部に充填して、テーパー部を強化したものであるが、質量増加が32g(12%)と少なかったので、浄化性能は、実施例6〜
9、参考例2のハニカム構造体と差がない結果であった。
【0077】
表1より、セラミック筒によるテーパー部を設けたハニカム構造体(比較例1,3)が、耐熱衝撃性が低下するのに対し、実施例1〜
4、6〜9、11
、参考例1、2のハニカム構造体は、通常のセラミックハニカム構造体(比較例2,4)と同等の耐熱衝撃性が得られ、浄化性能の低下もなく、通常のセラミックハニカム構造体(比較例2,4)より低いキャニング圧力で使用が可能(加熱振動試験より)であった。このことは、部品点数を増やすことなく、更に高性能ではあるが強度が低くなる超薄壁のセラミックハニカム構造体の使用を可能とするものである。