【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明において、少なくとも1つの導電性ポリマーおよび少なくとも1つの没食子酸と糖とのエステル(以下では没食子酸エステルと呼ばれる)を含む分散液は、例えば、著しくより良好な熱安定性を有するコーティングの製造に適しているということが見出された。
【0008】
それゆえ、本発明は、少なくとも1つの導電性ポリマーと、少なくとも1つの対イオンと、少なくとも1つの分散剤とを含む分散液であって、少なくとも1つの没食子酸と糖とのエステルを含むことを特徴とする分散液を提供する。
【0009】
本発明に関しては、没食子酸エステルは、文献でタンニンまたはタンニン物質の名称でまとめられる、没食子酸のエステルを意味すると理解される(例えば、キーワード「タンニン」のもとでのhttp://www.roempp.com/prod/indexl.htmlまたはhttp://www.biologie.uni−hamburg.de/b−online/d26/11.htmを参照)。
【0010】
以下の式のβ−1,2,3,4,5−ペンタガロイル−O−D−グルコースは、没食子酸エステルの例を代表する:
【化1】
式中、上記の式の中で示されるガロイルラジカルは、例えばジガロイルラジカルによって置き換えられてもよい。この没食子酸エステルは、純粋な物質としてまたは種々の没食子酸エステルの混合物として用いることができる。このような分散液のために使用することができる没食子酸エステルは、市販品として入手できる。
【0011】
この没食子酸エステルは、分散液中の導電性ポリマー(例えば、一般式(I)のポリチオフェンなど)の固形分含量に基づいて1〜100重量パーセント(重量%)、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%の量で、本発明に係る分散液に添加することができる。
【0012】
本発明に関しては、導電性ポリマーは、特に、酸化または還元後に電気伝導率を有するπ共役ポリマーの化合物のクラスを意味すると理解される。好ましくは、導電性ポリマーは、酸化後に、少なくとも0.01Scm
−1の程度の、乾燥状態での比電気伝導率を有するπ共役ポリマーを意味すると理解される。
【0013】
好ましい分散液は、少なくとも1つの導電性ポリマーが任意に置換されたポリチオフェン、任意に置換されたポリアニリンまたは任意に置換されたポリピロールである分散液である。
【0014】
この導電性ポリマー(1種または複数種)は、一般式(I)の繰り返し単位を含むポリアルキレンジオキシチオフェンから選択される特に好ましい。
【化2】
式中、
Aは、任意に置換されたC
1〜C
5−アルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC
2〜C
3−アルキレンラジカルを表し、
Rは、互いに独立に、H、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC
1〜C
18−アルキルラジカル、任意に置換されたC
5〜C
12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC
6〜C
14−アリールラジカル、任意に置換されたC
7〜C
18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC
1〜C
4−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカル、好ましくは直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC
1〜C
4−アルキルラジカル、任意に置換されたC
1〜C
4−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカル、特に好ましくは直鎖状もしくは分枝状の任意に置換されたC
1〜C
4−アルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8の整数、好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0または1を表し、
複数のRラジカルがAに結合されている場合、これらのRラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0015】
一般式(I)は、x個の置換基RがアルキレンラジカルAに結合することができるということを意味すると理解されるべきである。
【0016】
Aが任意に置換されたC
2〜C
3−アルキレンラジカルを表し、xが0または1を表す一般式(I)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが特に好ましい。
【0017】
まさに特に好ましくは、少なくとも1つの導電性ポリマーは、任意に置換されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。
【0018】
本発明に関しては、接頭辞「ポリ」は、そのポリマーまたはポリチオフェンが複数の同一のまたは異なる繰り返し単位を含むということを意味すると理解されたい。このポリチオフェンは、全部でn個の一般式(I)の繰り返し単位を含み、ここでnは2〜2,000の整数、好ましくは2〜100の整数である。一般式(I)の繰り返し単位は、いずれも、1つのポリチオフェン内で同一であってもよいしまたは異なっていてもよい。いずれも同一の一般式(I)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。
【0019】
このポリチオフェンは、末端基の各々にHを有することが好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、当該分散液は、少なくとも0.05Scm
−1、好ましくは少なくとも0.5Scm
−1の程度の乾燥状態での比電気伝導率を有する、一般式(I)の繰り返し単位を含む少なくとも1つのポリアルキレンジオキシチオフェンを含む。
【0021】
分散液中の、導電性ポリマー、特に一般式(I)の繰り返し単位を含むポリアルキレンジオキシチオフェンの固形分含量は、0.05〜3.0重量%の間、好ましくは0.1〜1.5重量%の間、特に好ましくは0.3〜1.0重量%の間である。
【0022】
本発明に関しては、C
1〜C
5−アルキレンラジカルAは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンであることが好ましい。C
1〜C
18−アルキルRは、好ましくは、直鎖状もしくは分枝状のC
1〜C
18−アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルを表し;C
1〜C
4−アルキルは、好ましくは、直鎖状もしくは分枝状のC
1〜C
4−アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチルを表し、C
1〜C
8−アルキルは、さらに、例えば、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、neo−ペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルを表し;本発明に関しては、C
1〜C
4−ヒドロキシアルキルRは、好ましくは、1以上の、しかし好ましくは1つのヒドロキシル基で置換されている直鎖状、環状、分枝状もしくは非分枝状のC
1〜C
4−アルキルラジカルを表し;C
5〜C
12−シクロアルキルラジカルRは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し;C
6〜C
14−アリールラジカルRは、例えば、フェニルまたはナフチルを表し、C
7〜C
18−アラルキルラジカルRは、例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。上記の一覧は、本発明を例として記載する役割を果たすが、排他的なものであると考えられるべきではない。
【0023】
本発明に関しては、ラジカルAおよび/またはラジカルRの可能な任意のさらなる置換基としては、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基およびカルボキシアミド基が挙げられる。
【0024】
ポリアニリンまたはポリピロールについての可能な置換基は、例えば、上に列挙されたラジカルAおよびRならびに/またはラジカルAおよびRのさらなる置換基である。非置換のポリアニリンおよびポリピロールが使用されることが好ましい。
【0025】
本発明の範囲は、上記のおよび以下に特定されるすべてのラジカルの定義、パラメータ、および説明を、全般的にまたは好ましい範囲内において互いとともに、すなわち、特定の範囲と好ましい範囲との間の任意の所望の組み合わせを含めて、包含する。
【0026】
当該分散液中の導電性ポリマーとして用いられるポリチオフェンは、中性またはカチオン性であることができる。好ましい実施形態では、このポリチオフェンはカチオン性である。「カチオン性」は、単にこのポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみに関する。Rラジカル上の置換基に応じて、当該ポリチオフェンは正電荷および負電荷をその構造単位の中に有することができ、この場合、この正電荷は当該ポリチオフェン主鎖上に存在し、負電荷は、存在する場合、スルホネート基またはカルボキシレート基によって置換されたRラジカル上に存在する。これに関して、当該ポリチオフェン主鎖の正電荷は、Rラジカル上に任意に存在し得るアニオン性基によって部分的にまたは完全に飽和されていてもよい。全体的に見ると、このポリチオフェンは、これらの場合にはカチオン性であってもよく、電荷を帯びていなくてもよく、またはアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、それらは、すべてカチオン性ポリチオフェンであると考えられる。なぜなら、このポリチオフェン主鎖上の正電荷が非常に重要だからである。この正電荷は、上記式の中には示されていない。なぜなら、それらの正確な数および位置は明確に特定できないからである。しかしながら正電荷の数は、少なくとも1であり、多くともnである(nは、このポリチオフェン内のすべての(同じまたは異なる)繰り返し単位の総数である)。
【0027】
任意にスルホネートまたはカルボキシレート置換された、従って負に帯電したRラジカルによってこの正電荷と均衡がとられていない限りでは、この正電荷と均衡をとるために、このカチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とする。
【0028】
対イオンは、単量体アニオンであってもよくまたは高分子アニオンであってもよく、後者は、以下ではポリアニオンとも呼ばれる。
【0029】
高分子アニオンは単量体アニオンよりも好ましい。なぜなら、高分子アニオンは膜形成に寄与し、かつそのサイズに起因して、熱的により安定な、導電性の膜を導くからである。しかしながら、この高分子アニオンに加えて、当該分散液は、単量体アニオンも含むことができる。
【0030】
本発明においては、高分子アニオンは、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸のアニオン、またはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸のアニオンであってもよい。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と他の重合性単量体(アクリル酸エステルおよびスチレンなど)との共重合体であってもよい。
【0031】
好ましくは、本発明に係る分散液は、高分子カルボン酸または高分子スルホン酸の少なくとも1つのアニオンを対イオンとして含む。
【0032】
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンが、高分子アニオンとして特に好ましい。
【0033】
このポリアニオンを供給するポリ酸の分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、特に好ましくは2,000〜500,000である。このポリ酸またはそのアルカリ金属塩は市販されており、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などは、公知の方法(例えばHouben Weyl、Methoden der organischen Chemie、第E20巻、Makromolekulare Stoffe、第2部、(1987)、1141頁以下参照)によって調製することができる。
【0034】
当該分散液は、高分子アニオン(1種または複数種)および導電性ポリマーを、とりわけ0.5:1〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、より好ましくは2:1〜20:1の重量比で含むことができる。当該導電性ポリマーの重量は、本発明においては、当該重合において完全変換があると仮定して、使用される単量体の初期重量に相当する。
【0035】
使用される単量体アニオンは、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのまたはより高級のスルホン酸(ドデカンスルホン酸など)などのC
1〜C
20−アルカンスルホン酸の単量体アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロオクタンスルホン酸などの脂肪族C
1〜C
20−ペルフルオロスルホン酸の単量体アニオン、2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C
1〜C
20−カルボン酸の単量体アニオン、トリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸などの脂肪族C
1〜C
20−ペルフルオロカルボン酸の単量体アニオン、およびベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸などのC
1〜C
20−アルキル基によって任意に置換された芳香族スルホン酸の単量体アニオン、およびカンファースルホン酸などのシクロアルカンスルホン酸の単量体アニオン、またはテトラフルオロホウ酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロリン酸の単量体アニオン、過塩素酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸の単量体アニオン、ヘキサフルオロひ酸の単量体アニオンまたはヘキサクロロアンチモン酸の単量体アニオンである。
【0036】
p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはカンファースルホン酸のアニオンが、単量体アニオンとして好ましい。
【0037】
電荷の均衡をとるための対イオンとしてアニオンを含むカチオン性ポリチオフェンは、当該技術分野では、ポリチオフェン/(ポリ)アニオン錯体とも呼ばれることが多い。
【0038】
本発明に係る分散液の中の、例えばこのようなポリマー/対イオン錯体の形態の導電性ポリマーおよび対イオンの総含量は、例えば、当該分散液の総重量に基づき0.05〜10重量%の間、好ましくは0.1〜2重量%の間である。
【0039】
本発明に係る分散液は、1以上の分散剤を含んでもよい。分散剤の例として以下の溶媒が挙げられる:メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;塩化メチレンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族エーテルおよび芳香族脂肪族エーテル。水また水と上述の有機溶媒との混合物も分散剤として用いてもよい。
【0040】
好ましい分散剤は、水、またはアルコール(例えばメタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノール)などの他のプロトン性溶媒、ならびに水とこれらのアルコールとの混合物であり、特に好ましい溶媒は水である。
【0041】
当該分散液は、表面活性物質、例えばイオン性および/または非イオン性の界面活性剤;接着促進剤、例えば有機官能性シランまたはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシランなどのさらなる成分も含んでよい。
【0042】
本発明に係る分散液は、電気伝導率を増大させるさらなる添加剤、例えばエーテル基を含む化合物(例えばテトラヒドロフラン);ラクトン基を含む化合物(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなど);アミドまたはラクタム基を含む化合物(カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、ピロリドンなど);スルホンおよびスルホキシド(例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO));糖類または糖類誘導体(例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース)、糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトール);フラン誘導体(例えば2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸)、および/またはジアルコールまたはポリアルコール(例えばエチレングリコール、グリセロールまたはジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール)を含むことができる。電気伝導率増大添加剤として、テトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはソルビトールを使用することが特に好ましい。
【0043】
本発明に係る分散液はさらに、有機溶媒に可溶または水に可溶である1以上の結合剤を含んでもよく、その例としては例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、シリコーン、エポキシ樹脂、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステルおよびエチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、またはセルロース誘導体などの高分子有機結合剤が挙げられる。
【0044】
本発明に係る分散液中のこの高分子結合剤の含量は、分散液の総重量に基づき0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜30重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%である。
【0045】
当該分散液の中に任意に含まれるこのような有機結合剤は、それが所定の温度で液体であるならば、任意に、分散剤として機能することもできる。
【0046】
本発明に係る分散液は、1〜14のpHを有することができ、1〜8のpHが好ましい。
【0047】
例えば塩基または酸をこの分散液加えて、pHを調整することができる。当該分散液の膜形成を妨げずかつより高い温度、例えばはんだ付け温度で揮発性ではない添加物、例えば塩基では2−(ジメチルアミノ)−エタノール、2,2’−イミノジエタノールまたは2,2’,2”−ニトリロトリエタノールおよび酸ではポリスチレンスルホン酸などが、好ましい。
【0048】
本発明に係る分散液の粘度は、付与方法に応じて0.1〜100,000mPa・sの間(20℃において100s
−1のせん断速度で測定される)であってよい。好ましくは、粘度は、1〜10,000mPa・s、特に好ましくは10〜1,000mPa・sの間である。
【0049】
本発明に係る分散液の調製は、例えば欧州特許出願公開第440 957(A)号明細書に記載されている条件と同様に、最初に、導電性ポリマーの調製のための対応する前駆体から、対イオンの存在下で導電性ポリマーの分散液を調製することにより行われる。これらの分散液の調製のための改善された変法は、無機塩含量またはその一部の除去のためのイオン交換体の使用である。このような変法は、例えば、独国特許出願公開第196 27 071(A)号明細書に記載されている。このイオン交換体は、例えば生成物とともに撹拌されてもよいし、または生成物が、イオン交換カラムが充填されたカラムにわたって運ばれてもよい。例えば低金属含量は、このイオン交換体を使用することによって成し遂げることができる。
【0050】
当該分散液中の粒子の粒径は、脱塩後に、例えば高圧ホモジナイザーを用いて減少させることができる。この操作は、効果を高めるために繰り返されてもよい。特に、本発明では、100〜2,000barの間という高圧が、粒径を大きく低下させるために特に有利であるということが判明した。
【0051】
当該ポリアニリン/ポリアニオン、ポリピロール/ポリアニオンまたはポリチオフェン/ポリアニオン錯体の調製およびその後の1以上の分散剤の中での分散または再分散も可能である。
【0052】
次いで、本発明に係る分散液の調製のために、例えば、没食子酸エステル、任意にさらなる分散剤および任意にさらなる添加剤、有機結合剤などのさらなる成分がこれらの分散液に添加され、これらの成分は、例えば撹拌しながら混合される。
【0053】
例えば、対応する単量体は、導電性ポリマーの調製のための前駆体として理解され、それらは、以下では前駆体とも呼ばれる。種々の前駆体の混合物も使用することができる。適切な単量体前駆体は、例えば、任意に置換されたチオフェン、ピロールまたはアニリン、好ましくは任意に置換されたチオフェン、特に好ましくは任意に置換された3,4−アルキレンジオキシチオフェンである。
【0054】
置換3,4−アルキレンジオキシチオフェンとして、例として、一般式(II)の化合物を挙げることができる。
【化3】
式中、
Aは、任意に置換されたC
1〜C
5−アルキレンラジカル、好ましくは任意に置換されたC
2〜C
3−アルキレンラジカルを表し、
Rは、互いに独立に、H、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC
1〜C
18−アルキルラジカル、任意に置換されたC
5〜C
12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC
6〜C
14−アリールラジカル、任意に置換されたC
7〜C
18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC
1〜C
4−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカル、好ましくは直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC
1〜C
4−アルキルラジカル、任意に置換されたC
1〜C
4−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカル、特に好ましくは直鎖状もしくは分枝状の任意に置換されたC
1〜C
4−アルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8の整数、好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0または1を表し、
複数のRラジカルがAに結合されている場合、これらのRラジカルは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0055】
まさに特に好ましい単量体前駆体は、任意に置換された3,4−エチレンジオキシチオフェン、好ましい実施形態では非置換の3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0056】
上述の前駆体についての、特にチオフェンについての、好ましくは3,4−アルキレンジオキシチオフェンについての可能な置換基は、一般式(III)に対してRについて挙げられたラジカルである。
【0057】
ピロールおよびアニリンについての可能な置換基は、例えば、上に列挙されたラジカルAおよびRおよび/またはラジカルAおよびRのさらなる置換基である。
【0058】
ラジカルAおよび/またはラジカルRの可能な任意のさらなる置換基は、一般式(I)に関連して挙げられた有機基である。
【0059】
導電性ポリマーの調製のための単量体前駆体の調製のためのプロセスは当業者に公知であり、例えばL.Groenendaal、F.Jonas、D.Freitag、H.PielartzikおよびJ.R.Reynolds、Adv.Mater.、12(2000) 481−494およびその中で引用される文献に記載されている。
【0060】
本発明に係る分散液は、電気特性の熱安定性を有する導電性コーティングまたは帯電防止コーティングの製造に極めて適している。
【0061】
それゆえ、本発明はさらに、本発明に係る分散液から得ることができる導電性コーティングまたは帯電防止コーティングを提供する。
【0062】
本発明に係るコーティングの製造のために、本発明に係る分散液は、例えば公知のプロセスによって、例えばスピンコーティング、含浸、注入、滴下、噴霧、ミスト形成(misting)、ナイフコーティング、ブラッシングまたは印刷、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷またはタンポン印刷によって、0.5μm〜250μmの乾燥前膜厚で、好ましくは2μm〜50μmの乾燥前膜厚で適切な基材へと付与され、次いで少なくとも20℃〜200℃の温度で乾燥される。
【0063】
本発明に係る分散液は、本発明に係る分散液から製造されたコーティングの電気特性の、室温より上での、特に80℃を超える温度での著しくより高い安定性を示す。
【0064】
以下の実施例は、本発明を例によって説明する働きをするが、決して限定として解釈されるべきではない。