(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体である熱可塑性樹脂Aと、
エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、前記熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Bと、を含有し、
前記熱可塑性樹脂Aの含有量が全質量に対して50質量%〜98質量%であり、
前記熱可塑性樹脂Bの含有量が全質量に対して2質量%〜50質量%である、応力緩和性フィルムからなる応力緩和層と、
エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含み、かつ、少なくとも一部が前記応力緩和層と接触している表面層と、
を含む積層体。
4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体である熱可塑性樹脂Aと、
エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、前記熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Bと、を含有し、
前記熱可塑性樹脂Aの含有量が全質量に対して2質量%以上50質量%未満であり、
前記熱可塑性樹脂Bの含有量が全質量に対して50質量%以上98質量%以下である、応力緩和性フィルムからなる応力緩和層と、
エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含み、かつ、少なくとも一部が前記応力緩和層と接触している表面層と、
を含む積層体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
《第1の態様》
[応力緩和性フィルム]
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体である熱可塑性樹脂Aと、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、上記熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Bと、を含有し、上記熱可塑性樹脂Aの含有量が全質量に対して50質量%〜98質量%であり、上記熱可塑性樹脂Bの含有量が全質量に対して2質量%〜50質量%である。
【0020】
外的な力による傷付きや破損から対象物を保護するために用いられるフィルムには、例えば、応力緩和性等の特性が求められる。一般に、応力緩和性を有するフィルムを形成するためには、硬い樹脂が材料として用いられるが、硬い樹脂だけで形成したフィルムは、衝撃強度が低くなる傾向がある。他方、柔軟な樹脂を材料として用いたフィルムは、衝撃強度が高く、耐衝撃性を有するものの、応力緩和性に劣る傾向がある。そして、硬い樹脂に、柔軟な樹脂を添加してフィルムを形成すると、フィルムの衝撃強度を向上させることはできるが、柔軟な熱可塑性樹脂を添加した分、硬い熱可塑性樹脂の割合が減少するため、フィルムの応力緩和性が低下する。
したがって、応力緩和性を有することと、耐衝撃性を有することとは、一方を実現させようとすると、他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反の関係にあるといえる。
【0021】
本発明の第1の態様においては、フィルムを、室温(25℃)では樹脂を硬くする傾向がある4−メチル−1−ペンテンを骨格に多く含む特定の熱可塑性樹脂Aと、柔軟な特定の熱可塑性樹脂Bと、を特定の割合で含有する態様とすることにより、優れた応力緩和性と耐衝撃性とを兼ね備えたフィルムを実現する。
【0022】
以下、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムに含まれる成分について説明する。
【0023】
〔熱可塑性樹脂A〕
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Aは、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体(以下、「4−メチル−1−ペンテン系共重合体」ともいう。)である。
【0024】
本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が、70モル%〜90モル%含まれており、75モル%〜89モル%含まれていることがより好ましく、80モル%〜86モル%含まれていることが更に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が70モル%未満であると、保護フィルムとして優れた応力緩和性を得ることができない。また、4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が90モル%を超えると、保護フィルムとして優れた耐衝撃性を得ることができない。
【0025】
本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が、10モル%〜30モル%含まれており、11モル%〜25モル%含まれていることがより好ましく、14モル%〜20モル%含まれていることが更に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が10モル%未満であると、材料の剛性が上がりすぎるため、耐衝撃性が落ちるとともに、適切な応力緩和性が得られなくなる。また、4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が30モル%を超えると、結晶性が落ちて融点が観測されなくなることで柔軟化が進み、フィルム成形が困難となる。
【0026】
炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位は、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位である。本発明においては、耐衝撃性と応力緩和性とのバランスを取る室温付近にガラス転移温度を設計する点において、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位は、プロピレンに由来する構成単位が特に好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体は、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位を含んでいてもよい。4−メチル−1−ペンテン系共重合体における4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率は、10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは3モル%以下であり、更に好ましくは1モル%以下である。本発明の第1の態様においては、4−メチル−1−ペンテン系共重合体が、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体における4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が、10モル%を超えると、材料の柔軟化が進行し、応力緩和性に劣る傾向となる。
【0028】
炭素数が4〜20のα−オレフィンには、例えば、直鎖状又は分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物等が含まれる。
【0029】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る直鎖状又は分岐状のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数4〜20(好ましくは4〜10)の直鎖状のα−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等の、好ましくは炭素数5〜20(より好ましくは5〜10)の分岐状のα−オレフィンなどが挙げられる。
【0030】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキサン等の炭素数4〜20(好ましくは5〜15)の化合物が挙げられる。
【0031】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のモノ又はポリアルキルスチレンなどが挙げられる。
【0032】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン等の炭素数4〜20(好ましくは4〜10)の化合物が挙げられる。
【0033】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る非共役ポリエンとしては、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等の炭素数5〜20(好ましくは5〜10)の化合物が挙げられる。
【0034】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る官能化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン;ハロゲン化オレフィン;アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸等の不飽和カルボン酸類;アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミン等の不飽和アミン類;(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、上記不飽和カルボン酸類の酸無水物等の不飽和酸無水物類;上記不飽和カルボン酸類のハロゲン化物;4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセン等の不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0035】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る水酸基含有オレフィンは、水酸基を有するオレフィン系化合物であれば、特に限定されるものではなく、好ましくは末端水酸化オレフィン化合物である。
末端水酸化オレフィン化合物としては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセン等の炭素数4〜20(好ましくは2〜10)の直鎖状の水酸化α−オレフィン;水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセン等の好ましくは炭素数5〜20(より好ましくは5〜10)の分岐状の水酸化α−オレフィンなどが挙げられる。
【0036】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得るハロゲン化オレフィンとしては、例えば、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデセン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセン等の炭素数4〜20(好ましくは4〜10)の直鎖状のハロゲン化α−オレフィン;ハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセン等の炭素数5〜20(より好ましくは5〜10)の分岐状のハロゲン化α−オレフィンなどが挙げられる。
【0037】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位となり得る4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位としては、上記の中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサン、及びスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体に、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位が含まれる場合、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0038】
本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位、及び4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有率(モル%)は、下記の方法により測定することができる。
【0039】
〜条件〜
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:
13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0040】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体は、本発明の第1の態様の効果を損なわない範囲で、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位、及び4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体は、デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]が、0.5dl/g〜5.0dl/gであることが好ましく、0.5dl/g〜4.0dl/gであることがより好ましい。4−メチル1−ペンテン系共重合体の極限粘度[η]が、上記範囲内であると、低分子量体が少ないためフィルムのべたつきが少なくなり、また、押出フィルム成形が可能となる。
上記4−メチル1−ペンテン系共重合体の極限粘度[η]は、ウベローデ粘度計を用い、下記の方法により測定される値である。
約20mgの4−メチル1−ペンテン系共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求める(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0042】
本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、フィルム成形性の観点から、1×10
4〜2×10
6であることが好ましく、1×10
4〜1×10
6であることがより好ましい。
また、本発明の第1の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、フィルムべたつき及び外観の観点から、1.0〜3.5であることが好ましく、1.1〜3.0であることがより好ましい。
【0043】
上記4−メチル−1−ペンテン系共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、下記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出される値である。
【0044】
〜条件〜
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示唆屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0045】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、成形時の流動性の観点から、0.1g/10min〜100g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜50g/10minであることがより好ましく、0.5g/10min〜30g/10minであることが更に好ましい。
上記4−メチル1−ペンテン系共重合体のメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して、測定される値である。具体的には、4−メチル1−ペンテン系共重合体のメルトフローレート(MFR)は、230℃で2.16kgの荷重にて測定される値である。
【0046】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体の密度は、ハンドリング性の観点から、820kg/m
3〜870kg/m
3であることが好ましく、830kg/m
3〜850kg/m
3であることがより好ましい。
上記4−メチル1−ペンテン系共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定される値である。
【0047】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体の融点(Tm)は、観察されないか、又は100℃〜180℃であることが好ましく、観察されないか、又は110℃〜160℃であることがより好ましい。
上記4−メチル1−ペンテン系共重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、下記の方法により測定される値である。
約5mgの4−メチル1−ペンテン系共重合体を、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC220C型)の測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱する。4−メチル1−ペンテン系共重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却する。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を共重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
【0048】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体は、厚さ50μmのフィルムを形成し、フィルム形成の3日後に測定した損失正接(tanδ)の最大値が、−5℃〜50℃の温度範囲内にあり、好ましくは0℃〜45℃、更に好ましくは0℃〜40℃の温度範囲内にあり、かつ、損失正接(tanδ)の最大値が0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることが更に好ましい。4−メチル1−ペンテン系共重合体は、その損失正接(tanδ)の最大値が、上記温度範囲内にあり、かつ、最大値が0.5以上であると、応力緩和性により優れる。
上記4−メチル1−ペンテン系共重合体の損失正接(tanδ)の最大値及びその最大値を示す際の温度は、50μmのフィルム状にしたものを、粘弾性測定装置(MCR301、Anton Paar社製)を用い、周波数10rad/sで、−70〜180℃の温度範囲の動的粘弾性を測定することにより、得られる値である。
【0049】
本発明の第1の態様における4−メチル1−ペンテン系共重合体は、従来知られているメタロセン系触媒による合成方法、例えば、国際公開第2005/121192号パンフレット、国際公開第2011/055803号パンフレット等に記載された方法により合成することができる。
【0050】
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムにおける熱可塑性樹脂Aの含有量は、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%〜98質量%であり、50質量%〜96質量%であることが好ましく、60質量%〜95質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂Aの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%未満であると、保護フィルムとして優れた応力緩和性を得ることができない。
熱可塑性樹脂Aの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、98質量%を超えると、保護フィルムとして優れた耐衝撃性を得ることができない。
【0051】
〔熱可塑性樹脂B〕
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Bは、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(但し、上述の熱可塑性樹脂Aを除く。)である。本発明における熱可塑性樹脂Bは、エチレン系重合体及びプロピレン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0052】
エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体(コポリマー)であってもよい。エチレン系重合体としては、例えば、従来公知の手法で製造されている、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン等が挙げられる。また、エチレン系重合体としては、例えば、エチレン系重合体系エラストマーも挙げられる。
また、熱可塑性樹脂Bにおける好ましいエチレン系重合体としては、後述の熱可塑性樹脂Cにおける好ましいエチレン系重合体が挙げられる。
【0053】
プロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、プロピレンと他のモノマーとの共重合体(コポリマー)であってもよい。プロピレン系重合体としては、例えば、アイソタクティックプロピレン系重合体、シンジオタクティックプロピレン系重合体等が挙げられる。アイソタクティックプロピレン系重合体としては、ホモプロピレン系重合体であってもよく、プロピレン・炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、プロピレンを除く。)ランダム共重合体であってもよく、プロピレンブロック共重合体であってもよい。また、プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン系重合体系エラストマーも挙げられる。
また、熱可塑性樹脂Bにおける好ましいプロピレン系重合体としては、後述の熱可塑性樹脂Cにおける好ましいプロピレン系重合体が挙げられる。
【0054】
ブテン系重合体としては、ブテンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、ブテンと他のモノマーとの共重合体(コポリマー)であってもよい。ブテン系重合体としては、例えば、1−ブテンのホモポリマー、1−ブテンと1−ブテンを除くオレフィンとの共重合体等が挙げられる。該共重合体としては、例えば、1−ブテン・エチレンランダム共重合体、1−ブテン・プロピレンランダム共重合体、1−ブテン・メチルペンテン共重合体、1−ブテン・メチルブテン共重合体、1−ブテン・プロピレン・エチレン共重合体等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂Bにおける好ましいブテン系重合体としては、後述の熱可塑性樹脂Cにおける好ましいブテン系重合体が挙げられる。
【0055】
4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、4−メチル−1−ペンテンと他のモノマーとの共重合体(コポリマー)であってもよい。4−メチル−1−ペンテン系重合体としては、例えば、4−メチル−1−ペンテンのホモポリマー、4−メチル−1−ペンテンと1−ヘキセン、1−デセン、1−オクタデセン、1−ヘキサデセン等とのランダム共重合体などが挙げられる。
【0056】
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Bのメルトフローレート(MFR)は、フィルム成形性及びフィルムの機械物性の観点から、0.1g/10min〜100g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜50g/10minであることがより好ましい。
上記熱可塑性樹脂Bのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して、測定される値である。具体的には、エチレン系重合体及びブテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、190℃で2.16kgの荷重にて測定される値であり、プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、230℃で2.16kgの荷重にて測定される値であり、4−メチル−1−ペンテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、260℃で5.0kgの荷重にて測定される値である。
【0057】
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Bの密度は、軽量性、及び4−メチル−1−ペンテン系共重合体と組成物としたときの分散性の観点から、820kg/m
3〜960kg/m
3であることが好ましく、830kg/m
3〜950kg/m
3であることがより好ましい。
上記熱可塑性樹脂Bの密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定される値である。
【0058】
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムにおける熱可塑性樹脂Bの含有量は、応力緩和性フィルムの全質量に対して、2質量%〜50質量%であり、4質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜40質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂Bの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、2質量%未満であると、保護フィルムとして優れた耐衝撃性を得ることができない。
熱可塑性樹脂Bの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%を超えると、保護フィルムとして優れた応力緩和性を得ることができない。
【0059】
〔その他の樹脂〕
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、本発明の第1の態様の目的を損なわない範囲内において、上述の熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂B以外のその他の樹脂を含有していてもよい。
【0060】
〔応力緩和性フィルムの構造〕
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、熱可塑性樹脂Aを含んでなる海部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる島部と、から構成される海島構造を有することが好ましい。
本発明において、「実質的に熱可塑性樹脂Bからなる」島部とは、島部における熱可塑性樹脂Bの含有量が、島部の構成成分の全質量に対して、70質量%以上であることを意味する。
【0061】
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、熱可塑性樹脂Aを含んでなる海部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる島部と、から構成される海島構造を有していることにより、より優れた応力緩和性と耐衝撃性とを兼ね備えることができる。
このような効果が奏される理由は、応力緩和を担う熱可塑性樹脂Aが海部となることで、応力緩和性が担保され、かつ、衝撃強度の向上を担う熱可塑性樹脂Bが島部となり、フィルム中に分散することで、熱可塑性樹脂Bの衝撃強度向上効果が、より有効に発揮され、フィルムの耐衝撃性が高まるためであると考えられる。
【0062】
なお、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムが、熱可塑性樹脂Aを含んでなる海部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる島部と、から構成される海島構造を有していることは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により確認することができる。具体的には、フィルムを研削して超薄切片を作製し、いずれか一方の成分のみを四酸化ルテニウムや四酸化オスニウム等の重金属で選択的に染色した後、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。
【0063】
熱可塑性樹脂Aを含んでなる海部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる島部と、から構成される海島構造を有するフィルムは、例えば、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとをドライブレンドにより混合し、押出によりフィルム成形することで得られる。
【0064】
〔応力緩和性フィルムの製造方法〕
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの製造方法の一例を説明する。本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、例えば、下記の方法により製造することができる。但し、本発明の第1の態様は、下記の方法に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを混合(例えば、ドライブレンド)する。次いで、得られた混合物を、Tダイを設置した押出機のホッパーに投入し、シリンダー温度を100℃〜270℃、ダイス温度を200℃〜270℃に設定する。Tダイから溶融混練物を押し出し、キャスト成形して、応力緩和性フィルムを得る。
【0065】
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの厚さは、50μm〜350μmであることが好ましく、60μm〜300μmであることがより好ましく、70μm〜200μmであることが更に好ましい。本発明の応力緩和性フィルムの厚さが、上記範囲内であると、取り扱い性が容易である。
【0066】
〔応力緩和性フィルムの用途〕
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、建材や光学部品等の各種樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の輸送時、保管時、加工時等の傷付き防止や防塵を目的として、これらの表面に貼着される保護フィルムとして、好適に用いることができる。
【0067】
また、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、半導体基板の回路非形成面を研削して、半導体基板を所望の厚さとする際の、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損を防止するための保護フィルムとして、特に好適に用いることができる。本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムは、応力緩和性及び耐衝撃性に優れるので、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損の防止に有効である。
【0068】
[積層体]
本発明の第1の態様に係る積層体は、上述の本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムからなる応力緩和層と、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含み、かつ、少なくとも一部が上記応力緩和層と接触している表面層と、を含む。
本発明の第1の態様に係る積層体は、優れた応力緩和性と耐衝撃性とを兼ね備えており、また、応力緩和層と表面層との間で層間剥離が生じ難い。
【0069】
〔応力緩和層〕
本発明の第1の態様に係る積層体における応力緩和層は、上述の本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムからなる。本発明の第1の態様に係る積層体は、上述の本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムからなる応力緩和層を含むので、優れた応力緩和性と耐衝撃性とを兼ね備える。なお、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムについては、上述したので、ここでは、説明を省略する。
【0070】
〔表面層〕
本発明の第1の態様に係る積層体における表面層は、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含み、かつ、少なくとも一部が応力緩和層と接触している。本発明の第1の態様に係る積層体において、表面層は、応力緩和層の片面側にのみ(即ち、1層のみ)存在していてもよいし、応力緩和層の両面側に(即ち、合計で2層)存在していてもよい。
本発明の第1の態様に係る積層体における表面層は、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含むので、応力緩和層との間で層間剥離が生じ難い。
本発明において、「少なくとも一部が応力緩和層と接触している」とは、表面層が応力緩和層の一部分と接触しているか、或いは、表面層が応力緩和層の全体と接触していることを意味する。本発明の第1の態様に係る積層体において、応力緩和層と表面層との接触割合は、応力緩和層の総面積に対して、30%〜100%であることが好ましく、50%〜100%であることがより好ましい。
【0071】
(熱可塑性樹脂C)
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Cは、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である。本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Cとしては、応力緩和層との間で層間剥離がより生じ難い表面層を形成することができるという点において、プロピレン系重合体及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましく、プロピレン系重合体であることがより好ましい。
ここでいう、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体は、それぞれ、熱可塑性樹脂Bの項で説明した、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体と同義である。
【0072】
エチレン系重合体としては、エチレンに由来する構成単位の比率が50モル%以上の重合体が好ましい。また、プロピレン系重合体としては、プロピレンに由来する構成単位の比率が50モル%以上の重合体が好ましい。さらに、ブテン系重合体としては、1−ブテンに由来する構成単位の比率が50モル%以上の重合体が好ましい。
【0073】
エチレン系重合体が共重合体である場合、該共重合体としては、応力緩和層との間で層間剥離がより生じ難い表面層を形成することができる点において、エチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましく、エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとの共重合体であることがより好ましい。
エチレン系重合体中のエチレンに由来する構成単位の比率は、エチレン系重合体中の全構成単位を100モル%とした場合に、50モル%〜100モル%であることが好ましく、60モル%〜99モル%であることがより好ましい。エチレン系重合体中のエチレンに由来する構成単位の比率が上記範囲内であると、耐熱性及び衝撃性がより良い結果となる。
【0074】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、該共重合体としては、応力緩和層との間で層間剥離がより生じ難い表面層を形成することができる点において、プロピレンと炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、プロピレンを除く。)との共重合体であることが好ましい。
プロピレン系重合体中のプロピレンに由来する構成単位の比率は、プロピレン系重合体中の全構成単位を100モル%とした場合に、50モル%〜100モル%であることが好ましく、60モル%〜99モル%であることがより好ましい。プロピレン系重合体中のプロピレンに由来する構成単位の比率が上記範囲内であると、耐熱性及び衝撃性がより良い結果となる。
【0075】
ブテン系重合体が共重合体である場合、該共重合体としては、応力緩和層との間で層間剥離がより生じ難い表面層を形成することができる点において、1−ブテンと1−ブテンを除くオレフィンとの共重合体であることが好ましい。
ブテン系共重合体中の1−ブテンに由来する構成単位の比率は、ブテン系重合体中の全構成単位を100モル%とした場合に、50モル%〜100モル%であることが好ましく、70モル%〜99モル%であることがより好ましい。ブテン系重合体中の1−ブテンに由来する構成単位の比率が上記範囲内であると、衝撃性がより良い結果となる。
【0076】
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Cのメルトフローレート(MFR)は、フィルム成形性及びフィルムの機械物性の観点から、0.1g/10min〜100g/10minであることが好ましく、0.5g/10min〜50g/10minであることがより好ましい。
上記熱可塑性樹脂Cのメルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して、測定される値である。具体的には、プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、230℃で2.16kgの荷重にて測定される値であり、エチレン系重合体及びブテン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、190℃で2.16kgの荷重にて測定される値である。
【0077】
本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Cの密度は、軽量性の観点から、820kg/m
3〜960kg/m
3であることが好ましく、830kg/m
3〜940kg/m
3であることがより好ましく、860kg/m
3〜940kg/m
3であることが更に好ましい。
上記熱可塑性樹脂Cの密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定される値である。
【0078】
表面層における熱可塑性樹脂Cの含有量は、表面層の全質量に対して、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂Cの含有量が、表面層の全質量に対して、上記範囲内であると、応力緩和層との間で層間剥離がより生じ難い表面層を形成することができる。
【0079】
本発明の第1の態様に係る積層体における表面層は、本発明の第1の態様の目的を損なわない範囲内において、上述の熱可塑性樹脂C以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、スチレン系共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0080】
〔その他の層〕
本発明の積層体は、本発明の第1の態様の目的を損なわない範囲内において、応力緩和層及び表面層以外のその他の層を含んでいてもよい。
【0081】
〔積層体の製造方法〕
本発明の第1の態様に係る積層体の製造方法は、特に限定されるものではない。本発明の第1の態様に係る積層体の製造方法としては、応力緩和層の構成成分として含まれる4−メチル−1−ペンテン系共重合体と、表面層の構成成分として含まれる熱可塑性樹脂Cと、が界面付近で混ざり合うことで接着し、積層体が形成される方法が好ましい。このような方法としては、例えば、溶融させた樹脂を積層する共押出法、予め形成された樹脂フィルムを熱融着させる熱融着法等が挙げられ、応力緩和層と表面層との層間接着性がより高く、応力緩和層と表面層との間で層間剥離がより生じ難い積層体を形成することができる点において、溶融させた樹脂を積層する共押出法がより好ましい。
【0082】
本発明の第1の態様に係る積層体における表面層と応力緩和層との厚さの比(表面層の厚さ/応力緩和層の厚さ)は、1/99〜60/40であることが好ましく、10/90〜60/40であることがより好ましい。
【0083】
本発明の第1の態様に係る積層体の厚さは、取り扱い性が容易である点において、20μm〜500μmであることが好ましく、20μm〜350μmであることがより好ましく、50μm〜300μmであることが更に好ましい。
【0084】
[半導体用表面保護フィルム]
本発明の第1の態様に係る半導体用表面保護フィルム(以下、単に「表面保護フィルム」ともいう。)は、半導体基板の研削時に該半導体基板の回路形成面を保護するものであり、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムを含む。本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムは、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムのみからなるものであってもよいし、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムと他の層との積層体であってもよい。他の層は、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの効果を損なわない範囲で、適宜、選択することが望ましい。
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムは、上述の本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムを含むため、応力緩和性及び耐衝撃性に優れる。よって、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムによれば、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損を効果的に防止することができる。
【0085】
〔基材層〕
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムが基材層を含む場合には、該基材層は、弾性率が高いことが好ましい。基材層は、通常、上述した本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの一方の面に積層される。本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムは、基材層を含むことで、その変形が防止される。
基材層の弾性率は、周波数1.6Hzにて測定される25℃での貯蔵弾性率G’(25)が、5×10
7Pa以上であることが好ましく、1×10
8Pa〜2×10
10Paであることがより好ましい。
基材層の貯蔵弾性率G’(25)が5×10
7Pa以上であると、半導体基板の研削中又は研削後に、表面保護フィルムに起因する半導体基板の変形、及び該変形に伴う半導体基板の割れが生じ難い。
【0086】
基材層は、所望の形状に成形することができ、かつ、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムに含まれる熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bとの親和性が良好な樹脂からなることが好ましい。例えば、基材層は、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなる層であることが好ましい。
【0087】
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムが基材層を含む場合、該基材層の厚さは、20μm〜100μmであることが好ましく、38μm〜50μmであることがより好ましい。基材層の厚さが、上記範囲内であると、半導体基板の研削中又は研削後に、表面保護フィルムに起因する半導体基板の変形、及び該変形に伴う半導体基板の割れが生じ難く、また、表面保護フィルムの取り扱い性が良好である。
【0088】
〔粘着層〕
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムは、半導体基板の回路形成面に貼着するための粘着層を含んでいることが好ましい。本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムが基材層と粘着層とを含む場合、該粘着層は、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの基材層が存在する側とは反対側に含まれていることが好ましい。
【0089】
粘着層は、粘着剤等からなる層であってもよい。粘着層を構成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系;合成ゴム系;シリコーンゴム系;アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等のアクリル系の粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、粘着性等の観点からアクリル系の粘着剤が好ましい。
【0090】
粘着層を構成する粘着剤は、放射線硬化型、熱硬化型、加熱発泡型等の一定条件により粘着力が低下する粘着力スイッチング機能を有する粘着剤、又は該スイッチング機能を有さない粘着剤のいずれであってもよい。
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムでは、回路形成面から容易に剥離することができ、回路形成面を損傷するおそれが少ないという観点から、粘着剤は、粘着力スイッチング機能を有するアクリル系の紫外線硬化型粘着剤が好ましい。
【0091】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、分子中に光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル系共重合体100質量部と、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物0.1質量部〜20質量部と、光開始剤5〜15質量部と、を含む粘着剤等が挙げられる。
【0092】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる、アクリル酸エステル系共重合体としては、例えば、エチレン性二重結合を有するモノマー、及び反応性官能基を有する共重合性モノマーを共重合した共重合体と、上記反応性官能基と反応し得る基を有する光重合性炭素−炭素二重結合を含むモノマーと、を反応させた化合物等が挙げられる。
【0093】
アクリル酸エステル系共重合体を得るための、共重合体に含まれるエチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル;アクリアミド;スチレン;等のエチレン性二重結合を有するモノマーなどが挙げられる。
【0094】
また、アクリル酸エステル系共重合体を得るための、共重合体に含まれる反応性官能基を有する共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらのうち1種のみを、上記エチレン性二重結合を有するモノマーと重合させてもよく、これらの2種以上を、上記エチレン性二重結合を有するモノマーと重合させてもよい。
【0095】
アクリル酸エステル系共重合体を得る場合における、エチレン性二重結合を有するモノマーと、反応性官能基を有する共重合性モノマーとの重合比は、70質量%〜99質量%:30質量%〜1質量%であることが好ましく、80質量%〜95質量%:20質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0096】
また、アクリル酸エステル系共重合体を得るための、光重合性炭素−炭素二重結合を含むモノマーは、特に限定されるものではなく、共重合体に含まれる反応性官能基(例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基等)と反応し得る基を有する、光重合性炭素−炭素二重結合を含む光反応性モノマーであればよい。
【0097】
共重合体に含まれる反応性官能基と、光反応性モノマーの反応性官能基と反応し得る基と、の組み合わせの例としては、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等が挙げられる。このような組み合わせの中でも、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。また、光反応性モノマーの反応性官能基と反応し得る基は、共重合体の反応性官能基と付加反応する基に限定されず、共重合体の反応性官能基と縮合反応する基であってもよい。
【0098】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる、分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。低分子量化合物は、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に、1種のみが含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
ここでいう「低分子量化合物」とは、分子量が10,000以下の化合物を指し、上記低分子量化合物の分子量は、より好ましくは5,000以下である。
【0099】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤に含まれる光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。光開始剤は、紫外線硬化型粘着剤に、1種のみが含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。紫外線硬化型粘着剤中の光開始剤の含有量は、アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対して、5質量部〜15質量部であることが好ましく、5質量部〜10質量部であることがより好ましい。
【0100】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリーグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物などが挙げられる。
【0101】
アクリル系の紫外線硬化型粘着剤は、ロジン樹脂系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を含んでいてもよい。これらによれば、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤の粘着特性を調整することができる。
【0102】
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムが粘着層を含む場合、該粘着層の厚さは、特に限定されるものではなく、3μm〜100μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。粘着層の厚さが、上記範囲内であると、十分な粘着性を得ることができ、また、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの効果が損なわれ難い。
【0103】
粘着層を含む本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムの粘着力は、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して0.1N/25mm〜5N/25mmであることが好ましく、0.1N/25mm〜3N/25mmであることがより好ましい。表面保護フィルムの粘着力が、上記範囲内であると、表面保護フィルムを半導体基板の回路形成面に対して十分に貼着することができ、また、回路形成面から表面保護フィルムを剥離する際に、半導体基板の破損が生じ難く、さらに、半導体基板の回路形成面から表面保護フィルムを剥離した後に、回路形成面に粘着層が残り難い。
なお、粘着剤が、放射線硬化型、熱硬化型、加熱発泡型等の粘着力スイッチング機能を有する場合には、放射線照射等により粘着力をスイッチングさせて低下させた後の粘着力が、上記範囲内にあることが好ましい。
【0104】
〔その他の層〕
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムは、例えば、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムと粘着層との間に、弾性率の低いその他の層を含んでいてもよい。その他の層の弾性率は、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの弾性率よりも低いことが好ましい。その他の層の具体的な弾性率としては、周波数1.6Hzで測定した25℃における貯蔵弾性率G’(25)が、8×10
6Pa以下であることが好ましく、1×10
4Pa〜8×10
6Paであることがより好ましい。その他の層の貯蔵弾性率G’(25)が、8×10
6Pa以下であると、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムの効果が損なわれ難い。
【0105】
その他の層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)等を含む樹脂層が挙げられる。これら中でも、その他の層は、酢酸ビニル単位の含有量が5質量%〜50質量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む樹脂層であることが好ましい。
【0106】
〔表面保護フィルムの製造方法〕
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム、基材層、及び粘着層を含む表面保護フィルムは、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムと基材層とを積層し、さらに、該応力緩和性フィルムの基材層が存在する側とは反対側に粘着層を形成することで得られる。
【0107】
本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムと基材層とを積層する方法としては、例えば、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムを形成する樹脂と基材層を形成する樹脂とを多層製膜機により押出製膜する方法、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム及び基材層を、それぞれカレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法、キャスト法等の公知の方法により成膜した後、これらをドライラミネートにより積層する方法等が挙げられる。後者の場合には、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムと基材層との接着力を高めるために、両者の間に新たに接着層を形成してもよいし、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム及び基材層のそれぞれに、コロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
【0108】
粘着層は、上記粘着剤を溶液、エマルション液等の粘着剤塗布液とし、この粘着剤塗布液をロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の公知の方法で、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。粘着層を形成した後は、粘着層の汚染防止のため、粘着層表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0109】
剥離フィルムの一方の面に、上述の方法で粘着剤塗布液を塗布し、乾燥させて粘着層を形成した後、該粘着層をドライラミネート法等により、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム上に転写してもよい。
【0110】
粘着剤塗布液を乾燥させる際の乾燥条件は、特に限定されるものではなく、一般的には、80℃〜300℃の温度範囲において、10秒間〜10分間乾燥することが好ましく、80℃〜200℃の温度範囲において、15秒間〜5分間乾燥することがより好ましい。また、粘着剤塗布液の乾燥終了後、表面保護フィルムを40℃〜80℃で5時間〜300時間程度加熱してもよい。
【0111】
本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムでは、半導体基板の回路形成面の汚染防止の観点から、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルム、基材層、粘着層等の全ての製膜環境、及びこれらの原料資材の製造環境が、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【0112】
〔半導体装置の製造方法〕
本発明の第1の態様に係る半導体装置の製造方法は、一方の面のみに回路が形成された半導体基板を準備する準備工程と、上記半導体基板の回路形成面に、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムを、該表面保護フィルムの上記粘着層と、上記半導体基板の回路形成面と、が対向するように貼着する貼着工程と、上記半導体基板の回路非形成面を研削する研削工程と、上記半導体基板の回路形成面に貼着された表面保護フィルムを、上記半導体基板の回路形成面から剥離する剥離工程と、を含む。
【0113】
一般的な半導体装置の製造方法では、500μm〜1000μm程度の厚さの半導体基板の一方の面に、回路を形成する。その後、回路を形成していない側の面(回路非形成面)を研削し、半導体基板を薄層化する。
準備工程は、回路非形成面を研削する前の、厚みのある半導体基板を準備する工程である。半導体基板としては、例えば、シリコンウェハ、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の基板が挙げられる。
【0114】
貼着工程は、上記半導体基板の回路形成面に、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムを、該表面保護フィルムの上記粘着層と、上記半導体基板の回路形成面と、が対向するように貼着する工程である。
貼着は、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。自動貼り機としては、例えば、タカトリ(株)製、型式:ATM−1000B、同ATM−1100、同TEAM−100、帝国精機(株)製、型式:STLシリーズ、日東精機(株)製、型式:DR−8500II、同DR−3000II等が挙げられる。
【0115】
研削工程は、上記半導体基板の回路非形成面を研削する工程である。
研削は、例えば、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の方法により行なうことができる。いずれの方法においても、砥石で半導体基板を研削する。
【0116】
研削工程開始時の半導体基板の温度は、通常、18℃〜28℃程度であり、好ましくは20℃〜25℃である。また、研削工程中の半導体基板の温度は、研削する基板の材質に依存するが、通常、20℃〜120℃であり、30℃〜80℃であることが好ましく、40℃〜70℃であることがより好ましい。
【0117】
研削工程後、必要に応じて、半導体基板の回路非形成面を更に処理してもよい。回路非形成面の処理は、表面保護フィルムを介して、半導体基板を裏面加工機のチャックテーブル等に固定して行なう。回路非形成面の処理としては、例えば、半導体基板のポリッシング、ケミカルエッチング、ドライエッチング、プラズマ処理等が含まれ、半導体基板の回路非形成面に生じた歪みの除去や、半導体基板の更なる薄層化、酸化膜等の除去、電極形成前の処理等を行なう。
【0118】
また、上記研削工程後、半導体基板の裏面にダイボンディング用接着フィルムを、貼着する工程を行なってもよい。ダイボンディング用接着フィルムを貼着する装置としては、例えば、タカトリ(株)製、型式:ATM−8200、同DM−800等がある。また、最近では、裏面加工部、ダイボンディング用接着フィルム貼り付け部、及び表面保護フィルム剥離部が一体の装置となった、いわゆるインライン裏面加工機も実用化されている。このようなインライン裏面加工機としては、例えば、(株)東京精密製、型式:PG300RMが挙げられる。
【0119】
剥離工程は、上記研削工程後、
半導体基板の回路形成面に貼着された表面保護フィルムを、上記半導体基板の回路形成面から剥離する工程である。
表面保護フィルムの剥離は、人の手により行なってもよいが、一般的に自動剥がし機と称される装置により行なう。自動剥がし機としては、例えば、タカトリ(株)製、型式:ATRM−2000B、同ATRM−2100、帝国精機(株)製、型式:STPシリーズ、日東精機(株)製、型式:HR8500−II等がある。また、表面保護フィルムの剥離は、表面保護フィルムの剥離性を高めるため、半導体基板を加熱しながら行なってもよい。
【0120】
表面保護フィルムを剥離した後の半導体基板の回路形成面を、必要に応じて洗浄する。 洗浄方法としては、例えば、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄する場合には、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、半導体基板表面の汚染状況により適宜選択する。
【0121】
本発明の第1の態様に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の回路形成面に、本発明の第1の態様に係る応力緩和性フィルムを貼着するので、半導体基板の回路非形成面の研削時に、回路形成面に傷が付いたり、塵が付着したりするおそれがない。また、研削工程中に、薄い半導体基板が破損するのを防止することができる。
【0122】
《第2の態様》
[応力緩和性フィルム]
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体である熱可塑性樹脂Aと、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、上記熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Bと、を含有し、上記熱可塑性樹脂Aの含有量が全質量に対して2質量%以上50質量%未満であり、上記熱可塑性樹脂Bの含有量が全質量に対して50質量%以上98質量%以下である。
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムによれば、ある程度高い応力緩和性を有し、かつ、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じ難い。
【0123】
外的な力による傷付きや破損から対象物を保護するために用いられるフィルム(以下、「保護フィルム」ともいう。)には、例えば、応力緩和性等の特性が求められる。
本発明者らは、応力緩和性を担う樹脂として、4−メチル−1−ペンテンを骨格に多く含む特定の熱可塑性樹脂を見出した。しかしながら、該熱可塑性樹脂だけで形成したフィルムは、高い応力緩和性を有するものの、離型性が高く、他の層と積層した場合に層間剥離が生じ易い。
本発明の第2の態様においては、フィルムを、応力緩和性を担う4−メチル−1−ペンテンを骨格に多く含む特定の熱可塑性樹脂Aと、接着性及び密着性を担う特定の熱可塑性樹脂Bと、を特定の割合で含有する態様とすることにより、ある程度高い応力緩和性を有し、かつ、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じ難いフィルムを実現する。
【0124】
以下、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムに含まれる成分について説明する。
【0125】
〔熱可塑性樹脂A〕
本発明の第2の態様における熱可塑性樹脂Aは、以下の点を除き、本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Aと同義であり、好ましい範囲(例えば、4−メチル−1−ペンテン系共重合体の構成単位及びその含有率、4−メチル−1−ペンテン系共重合体の物性(例えば、極限粘度[η]、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、メルトフローレート(MFR)、密度、融点(Tm)等)及びその測定方法、合成方法など)とその理由も同様である。
【0126】
本発明の第2の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が、70モル%〜90モル%含まれており、70モル%〜88モル%含まれていることがより好ましく、70モル%〜86モル%含まれていることが更に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が70モル%未満であると、保護フィルムに必要な程度の高い応力緩和性を得ることができない。また、4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位が90モル%を超えると、離型性が高くなりすぎるため、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じる。
【0127】
本発明の第2の態様における4−メチル−1−ペンテン系共重合体には、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が、10モル%〜30モル%含まれており、11モル%〜30モル%含まれていることがより好ましく、14モル%〜30モル%含まれていることが更に好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が10モル%未満であると、材料の剛性が上がりすぎるため、適切な応力緩和性が得られなくなる。また、4−メチル−1−ペンテン系共重合体に含まれる炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位が30モル%を超えると、結晶性が落ちて融点が観測されなくなることで柔軟化が進み、フィルム成形が困難となる。
【0128】
炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位は、エチレン又はプロピレンに由来する構成単位である。本発明においては、応力緩和性の観点から、炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位は、プロピレンに由来する構成単位が特に好ましい。
【0129】
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムにおける熱可塑性樹脂Aの含有量は、応力緩和性フィルムの全質量に対して、2質量%以上50質量%未満であり、5質量%以上48質量%以下であることが好ましく、10質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂Aの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、2質量%未満であると、保護フィルムに必要な程度の高い応力緩和性を得ることができない。
熱可塑性樹脂Aの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%以上であると、離型性が高くなりすぎるため、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じる。
【0130】
〔熱可塑性樹脂B〕
本発明の第2の態様における熱可塑性樹脂Bは、以下の点を除き、本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Bと同義であり、好ましい範囲(例えば、組成、物性(メルトフローレート(MFR)、密度等)及びその測定方法など)とその理由も同様である。
【0131】
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムにおける熱可塑性樹脂Bの含有量は、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%以上98質量%以下であり、52質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂Bの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、50質量%未満であると、十分な接着性及び密着性を発現させることができず、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じる。
熱可塑性樹脂Bの含有量が、応力緩和性フィルムの全質量に対して、98質量%を超えると、保護フィルムに必要な程度の高い応力緩和性を得ることができない。
【0132】
〔その他の樹脂〕
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、本発明の第2の態様の目的を損なわない範囲内において、上述の熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂B以外のその他の樹脂を含有していてもよい。
【0133】
〔応力緩和性フィルムの構造〕
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、熱可塑性樹脂Aを含んでなる島部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる海部と、から構成される海島構造を有することが好ましい。
本発明において、「実質的に熱可塑性樹脂Bからなる」海部とは、海部における熱可塑性樹脂Bの含有量が、海部の構成成分の全質量に対して、70質量%以上であることを意味する。
【0134】
熱可塑性樹脂Aを含んでなる島部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる海部と、から構成される海島構造を有する、本発明の応力緩和性フィルムは、より高い応力緩和性を有し、かつ、他の層を積層させた場合に層間剥離がより生じ難いものとなる。このような効果が奏される理由は、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
接着性及び密着性を担う熱可塑性樹脂Bが海部となることで、熱可塑性樹脂Bによる接着性能及び密着性能がより有効に発揮される。その結果、他の層を積層させた場合であっても、層間剥離がより生じ難いものとなる。また、応力緩和性を担う熱可塑性樹脂Aが島部となり、フィルム中に分散することで、熱可塑性樹脂Aによる応力緩和性能がより有効に発揮される。その結果、フィルムの応力緩和性がより高いものとなる。
【0135】
なお、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムが、熱可塑性樹脂Aを含んでなる島部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる海部と、から構成される海島構造を有していることは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により確認することができる。具体的には、フィルムを研削して超薄切片を作製し、いずれか一方の成分のみを四酸化ルテニウムや四酸化オスニウム等の重金属で選択的に染色した後、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。
【0136】
熱可塑性樹脂Aを含んでなる島部と、実質的に熱可塑性樹脂Bからなる海部と、から構成される海島構造を有するフィルムは、例えば、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとをドライブレンドにより混合し、押出によりフィルム成形することで得られる。
【0137】
〔応力緩和性フィルムの製造方法〕
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムの製造方法の一例を説明する。本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、例えば、下記の方法により製造することができる。但し、本発明の第2の態様は、下記の方法に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを混合(例えば、ドライブレンド)する。上述の海島構造を形成するという観点からは、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを溶融混練等により均一に混ぜるよりも、ドライブレンド等により適度に混練する方が好ましい。
次いで、得られた混合物を、Tダイを設置した押出機のホッパーに投入し、シリンダー温度を100℃〜270℃、ダイス温度を200℃〜270℃に設定する。Tダイから溶融混練物を押し出し、キャスト成形して、応力緩和性フィルムを得る。
【0138】
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムの厚さは、50μm〜350μmであることが好ましく、60μm〜300μmであることがより好ましく、70μm〜200μmであることが更に好ましい。本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムの厚さが、上記範囲内であると、取り扱い性が容易である。
【0139】
〔応力緩和性フィルムの用途〕
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、建材や光学部品等の各種樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の輸送時、保管時、加工時等の傷付き防止や防塵を目的として、これらの表面に貼着される保護フィルムとして、好適に用いることができる。
【0140】
また、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、半導体基板の回路非形成面を研削して、半導体基板を所望の厚さとする際の、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損を防止するための保護フィルムとして、特に好適に用いることができる。
本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、応力緩和性を有するため、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損の防止に有効である。また、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムは、他の層を積層させた場合であっても、層間剥離が生じ難いため、半導体基板の回路形成面への貼着、半導体基板の回路形成面からの剥離等の作業性が良い。
【0141】
[積層体]
本発明の第2の態様に係る積層体は、上述の本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムからなる応力緩和層と、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、及びブテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である熱可塑性樹脂Cを含み、かつ、少なくとも一部が上記応力緩和層と接触している表面層と、を含む。
本発明の第2の態様に係る積層体は、ある程度高い応力緩和性を有し、かつ、他の層と積層させた場合に層間剥離が生じ難い、上述の本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムからなる応力緩和層を含むため、応力緩和性がある程度高く、また、応力緩和層と該応力緩和層が接触している層との間で層間剥離が生じ難い。
【0142】
〔応力緩和層〕
本発明の第2の態様に係る積層体における応力緩和層は、上述の本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムからなる。なお、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムについては、上述したので、ここでは、説明を省略する。
【0143】
〔表面層〕
本発明の第2の態様に係る積層体における表面層は、本発明の第1の態様に係る積層体における表面層と同義であり、好ましい範囲(例えば、組成、存在位置、応力緩和層との接触割合等)とその理由も同様である。
【0144】
(熱可塑性樹脂C)
本発明の第2の態様における熱可塑性樹脂Cは、本発明の第1の態様における熱可塑性樹脂Cと同義であり、好ましい範囲(例えば、組成、物性(メルトフローレート(MFR)、密度等)及びその測定方法、表面層における含有量など)とその理由も同様である。
【0145】
〔その他の層〕
本発明の第2の態様に係る積層体は、本発明の第2の態様の目的を損なわない範囲内において、応力緩和層及び表面層以外のその他の層を含んでいてもよい。
【0146】
〔積層体の製造方法〕
本発明の第2の態様に係る積層体の製造方法は、本発明の第1の態様に係る積層体の製造方法と同様であり、好ましい範囲(例えば、製造条件、表面層と応力緩和層との厚さの比(表面層の厚さ/応力緩和層の厚さ)、積層体の厚さ等)とその理由も同様である。
【0147】
[半導体用表面保護フィルム]
本発明の第2の態様に係る半導体用表面保護フィルム(以下、単に「表面保護フィルム」ともいう。)は、半導体基板の研削時に該半導体基板の回路形成面を保護するものであり、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムを含む。本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムは、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムのみからなるものであってもよいし、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムと他の層との積層体であってもよい。他の層は、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムの効果を損なわない範囲で、適宜、選択することが望ましい。
【0148】
本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムは、上述の本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムを含むため、ある程度高い応力緩和性を有する。よって、本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムによれば、半導体基板の回路形成面の傷付きや破損を効果的に防止することができる。
また、本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムが、上述の本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムと他の層との積層体である場合には、層間剥離が生じ難いため、半導体基板の回路形成面への貼着、半導体基板の回路形成面からの剥離等の作業を良好に行なうことができる。
【0149】
〔基材層〕
本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得る基材層は、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得る基材層と同義であり、好ましい範囲(例えば、弾性率、存在位置、組成、厚さ等)とその理由も同様である。
【0150】
〔粘着層〕
本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得る粘着層は、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得る粘着層と同義であり、好ましい範囲(例えば、存在位置、粘着層を構成する粘着剤、厚さ、粘着力等)とその理由も同様である。
【0151】
〔その他の層〕
本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得るその他の層は、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムに含まれ得るその他の層と同義であり、好ましい範囲(例えば、弾性率、組成等)とその理由も同様である。
【0152】
〔表面保護フィルムの製造方法〕
本発明の第2の態様に係る表面保護フィルムの製造方法は、本発明の第1の態様に係る表面保護フィルムの製造方法と同様であり、好ましい範囲(例えば、製造条件等)とその理由も同様である。
【0153】
〔半導体装置の製造方法〕
本発明の第2の態様に係る半導体装置の製造方法は、本発明の第1の態様に係る半導体装置の製造方法と同様であり、好ましい範囲(例えば、製造条件等)とその理由も同様である。
【0154】
本発明の第2の態様に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の回路形成面に、本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムを貼着するので、半導体基板の回路非形成面の研削時に、回路形成面に傷が付いたり、塵が付着したりするおそれがなく、また、研削工程中に、薄い半導体基板が破損するのを防止することができる。
本発明の第2の態様に係る半導体装置の製造方法において、半導体基板の回路形成面に貼着する本発明の第2の態様に係る応力緩和性フィルムが他の層との積層体である場合には、層間剥離が生じ難いので、貼着作業を良好に行なうことができる。
【0155】
〔樹脂改質剤〕
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤は、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を70モル%〜90モル%、及び炭素数2又は3のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%〜30モル%含み、かつ、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の比率が10モル%以下の共重合体である熱可塑性樹脂Aと、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4−メチル−1−ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、上記熱可塑性樹脂A以外の熱可塑性樹脂Bと、を含有し、上記熱可塑性樹脂Aの含有量が全質量に対して2質量%以上50質量%未満であり、上記熱可塑性樹脂Bの含有量が全質量に対して50質量%以上98質量%以下である。
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤によれば、樹脂に対して、ある程度高い応力緩和性と、他の層と積層させた場合に層間剥離し難い接着性と、を付与することができる。
【0156】
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤における熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bは、それぞれ応力緩和性フィルムの項で説明した熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bと同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは、説明を省略する。
また、本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤における熱可塑性樹脂Aの含有量及び熱可塑性樹脂Bの含有量についても、それぞれ応力緩和性フィルムの項で説明した熱可塑性樹脂Aの含有量及び熱可塑性樹脂Bの含有量と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは、説明を省略する。
【0157】
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤の改質対象となる樹脂は、特に限定されるものではない。本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤の改質対象となる樹脂としては、基材の剛性、耐熱性、熱可塑性樹脂Aとの分散状態が及ぼす応力緩和性等の観点から、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体等が好ましい。
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤は、改質対象となる樹脂100質量部に対して、5質量部〜50質量部配合することが好ましく、10質量部〜45質量部配合することがより好ましい。
【0158】
本発明の第2の態様に係る樹脂改質剤は、特定量の熱可塑性樹脂Aと特定量の熱可塑性樹脂Bとを含有し、更に、本発明の第2の態様の目的を損なわない範囲内において、例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機又は有機の充填剤、有機系又は無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【実施例】
【0159】
以下、本発明の第1の態様及び第2の態様を実施例により更に具体的に説明する。本発明の第1の態様及び第2の態様はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0160】
《第1の態様の実施例》
[合成例1A]共重合体A−1Aの合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、アルミニウム(Al)換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、44.0gの粉末状の共重合体A−1Aを得た。
【0161】
得られた共重合体A−1Aの各種物性の測定結果を表1に示す。
共重合体A−1A中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は84.1mol%であり、プロピレンの含有率は15.9mol%であった。また、共重合体A−1Aの密度は838kg/m
3であった。共重合体A−1Aの極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は340,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。共重合体A−1Aの融点(Tm)は132℃であり、tanδの最大値は1.6(最大値を示す際の温度:39℃)であった。
【0162】
[合成例2A]共重合体A−2Aの合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体A−2Aを得た。
【0163】
得られた共重合体A−2Aの各種物性の測定結果を表1に示す。
共重合体A−2A中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A−2Aの密度は839kg/m
3であった。共重合体A−2Aの極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。共重合体A−2Aの融点(Tm)は観察されず、tanδの最大値は2.8(最大値を示す際の温度:31℃)であった。
【0164】
[合成例3A]共重合体A−3A(比較共重合体)の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、750mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.15MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.005mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、45.9gの粉末状の共重合体A−3Aを得た。
【0165】
得られた共重合体A−3Aの各種物性の測定結果を表1に示す。
共重合体A−3A中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は92.3mol%であり、プロピレンの含有率は7.7mol%であった。また、共重合体A−3Aの密度は832kg/m
3であった。共重合体A−3Aの極限粘度[η]は1.6dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は370,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。共重合体A−3Aの融点(Tm)は178℃であり、tanδの最大値は0.4(最大値を示す際の温度:40℃)であった。
【0166】
共重合体の各種物性の測定方法を以下に示す。
【0167】
〔組成〕
共重合体中の4−メチル−1−ペンテン及びプロピレン(炭素数3のα−オレフィン)の含有率(モル%)は、
13C−NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
【0168】
〜条件〜
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:
13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0169】
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
具体的には、約20mgの粉末状の共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0170】
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記のとおりである。
【0171】
〜条件〜
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示唆屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0172】
〔メルトフローレート(MFR)〕
共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。単位は、g/10min)である。
【0173】
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m
3)を軽量性の指標とした。
【0174】
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。
約5mgの共重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱した。共重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を共重合体の融点(Tm)とした。この共重合体の融点(Tm)を耐熱性の指標とした。
【0175】
〔衝撃吸収性〕
上記にて得られた粉末状の共重合体を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を100℃〜250℃、ダイス温度を250℃に設定し、Tダイから溶融混練物を押し出した。この押し出した溶融混練物を、チルロール温度20℃、引取速度10m/minで引き取ることにより、厚さ50μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムを45mm×10mmに切り出し、試験片とした。
この試験片について、粘弾性測定装置(MCR301、Anton Paar社製)を用いて、周波数10rad/sで、−70〜180℃の温度範囲の動的粘弾性を測定し、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)の最大値(ピーク値)と、その最大値を示す際の温度(ピーク時の温度)とを測定した。
【0176】
【表1】
【0177】
<実施例1A>
共重合体A−1A 75質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体、密度:907kg/m
3、MFR(230℃):7g/10min、(株)プライムポリマー製)25質量部と、を混合(ドライブレンド)した。次いで、得られた混合物を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を230℃、ダイス温度を250℃に設定し、Tダイから溶融混練物を押し出し、キャスト成形することにより、実施例1Aのフィルムを得た。フィルムは、厚みが50μmのものと、200μmのものとを形成した。
【0178】
<実施例2A>
共重合体A−1A 60質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)40質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、実施例2Aのフィルムを得た。
【0179】
<実施例3A>
共重合体A−1A 60質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F107、プロピレンのホモポリマー、密度:910kg/m
3、MFR(230℃):7g/10min、(株)プライムポリマー製)40質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、実施例3Aのフィルムを得た。
【0180】
<実施例4A>
共重合体A−2A 60質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)40質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、実施例4Aのフィルムを得た。
【0181】
<実施例5A>
共重合体A−1A 60質量部と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、直鎖状低密度ポリエチレン、密度:924kg/m
3、MFR(190℃):3.8g/10min、(株)プライムポリマー製)40質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、実施例5Aのフィルムを得た。
【0182】
<比較例1A>
共重合体A−1A 25質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)75質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、比較例1Aのフィルムを得た。
【0183】
<比較例2A>
共重合体A−3A 60質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)40質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、比較例2Aのフィルムを得た。
【0184】
<比較例3A>
フィルムの原料として、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)のみを使用したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、比較例3Aのフィルムを得た。
【0185】
<比較例4A>
フィルムの原料として、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)のみを使用したこと以外は、実施例1Aと同様の方法により、比較例4Aのフィルムを得た。
【0186】
〔透過型電子顕微鏡(TEM)によるフィルムの観察〕
実施例1A〜5A及び比較例1A〜2Aのフィルムを、断面方向にマイクロトームにて研削し、フィルム断面の超薄切片をトリミングした後、四酸化ルテニウムの蒸気に一定時間晒して一方を選択的に染色させた。作製したサンプルを、日立ハイテク(株)製の透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、型式:H−7650)を用い、加速電圧:100kV、及び観察倍率:10000倍の測定条件にて観察したところ、実施例1A〜5A及び比較例1A〜2Aのフィルムが、共重合体A−1A、共重合体A−2A、又は共重合体A−3Aを含む海部と、実質的にプロピレン系重合体からなる島部と、から構成される海島構造を有していることが確認された。実施例2AのフィルムのTEM画像を
図1に示す。
【0187】
〔評価〕
実施例1A〜5A及び比較例1A〜4Aのフィルムについて、引張降伏点強度(YS)、引張破断伸び(EL)、引張破断強度(TS)、引張弾性率(YM)、耐衝撃性、及び応力緩和性の評価を行なった。評価結果を下記の表2に示す。
【0188】
1.引張降伏点強度、引張破断伸び、引張破断強度、及び引張弾性率
厚みが200μmのフィルムを幅25mm×長さ100mmのダンベル状に切断したものを試験片として用いた。
JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片の引張降伏点強度(単位:MPa)、引張破断伸び(単位:%)、引張破断強度(単位:MPa)、及び引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0189】
2.耐衝撃性
厚みが50μmのフィルムを幅100mm×長さ100mmの短冊状に切断したものを試験片として用いた。
23℃の条件下、試験片を金属製のチャックに挟み、先端径が12.7mmの円筒状の測定治具を斜め50cmの高さから落下させた。そして、目視にて試験片に接触が認められた際の試験片への衝撃強度(破壊エネルギー)を測定し、下記の評価基準に従って、フィルムの耐衝撃性の評価を行なった。
実用上許容できるものは、[A]に分類されるものである。
【0190】
(評価基準)
A:破壊エネルギーが0.05J以上である。
B:破壊エネルギーが0.05J未満である。
【0191】
3.応力緩和性
厚みが50μmのフィルムから幅10mm×長さ100mmのシートを打ち抜いたものを試験片として用いた。
引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離75mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片を10%伸長させた。そして、10%伸長させた際の応力(初期応力)を計測し、そのまま試験片の伸長を120秒間保持させ、その間の応力の変化についても計測した。そして、上記初期応力と伸長から60秒後の応力との差から応力緩和率を算出し、下記の評価基準に従って、フィルムの応力緩和性の評価を行なった。
実用上許容できるものは、[A]、[B]及び[C]に分類されるものである。
【0192】
(評価基準)
A:応力緩和率が60%以上である。
B:応力緩和率が55%以上60%未満である。
C:応力緩和率が52%以上55%未満である。
D:応力緩和率が52%未満である。
【0193】
【表2】
【0194】
表2に示すように、実施例1A〜5Aのフィルムは、耐衝撃性と応力緩和性とを兼ね備えていることがわかる。これに対して、比較例1A、3A、及び4Aのフィルムは、応力緩和性に劣り、比較例2Aのフィルムは、耐衝撃性に劣ることがわかる。
【0195】
<実施例6A>
共重合体A−1A 75質量部、及びエチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、直鎖状低密度ポリエチレン、密度:924kg/m
3、MFR(190℃):3.8g/10min、(株)プライムポリマー製)25質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる3層構成の積層体(厚さ:160μm)を、リップ幅200mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸二種三層シート成形機、(株)テクノベル製)を用い、共押出しにより、二種三層フィルム(中間に応力緩和層)を成形した。シリンダー温度は200℃、ダイス温度は200℃に設定した。
【0196】
<実施例7A>
実施例6Aと同様の方法により、共重合体A−1A 75質量部、及びプロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体、密度:907kg/m
3、MFR(230℃):7g/10min、(株)プライムポリマー製)25質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0197】
<実施例8A>
実施例6Aと同様の方法により、共重合体A−1A 75質量部、及びエチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)25質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系共重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)80質量部、及びエチレン系重合体(タフマー(登録商標)DF605、エチレン・ブテン共重合体(エチレンに由来する構成単位の比率:50モル%以上、密度:861kg/m
3、MFR(230℃):0.9g/10min、三井化学(株)製)20質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0198】
<実施例9A>
実施例6Aと同様の方法により、共重合体A−2A 75質量部、及びプロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)25質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0199】
<比較例5A>
実施例6Aと同様の方法により、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0200】
<比較例6A>
実施例6Aと同様の方法により、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0201】
<比較例7A>
実施例6Aと同様の方法により、共重合体A−1A 100質量部からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:30μm)と、からなる2層構成の積層体(厚さ:130μm)を成形した。
【0202】
〔評価〕
実施例6A〜9A及び比較例5A〜7Aの積層体について、引張降伏点強度(YS)、引張破断伸び(EL)、引張破断強度(TS)、引張弾性率(YM)、耐衝撃性、応力緩和性、及び剥離強度の評価を行なった。評価結果を下記の表3に示す。
【0203】
1.引張降伏点強度、引張破断伸び、引張破断強度、及び引張弾性率
積層体を幅25mm×長さ100mmのダンベル状に切断したものを試験片として用いた。
JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片の引張降伏点強度(単位:MPa)、引張破断伸び(単位:%)、引張破断強度(単位:MPa)、及び引張弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0204】
2.耐衝撃性
積層体を幅100mm×長さ100mmの短冊状に切断したものを試験片として用いた。
23℃の条件下、試験片を金属製のチャックに挟み、先端径が12.7mmの円筒状の測定治具を斜め50cmの高さから落下させた。そして、目視にて試験片に接触が認められた際の試験片への衝撃強度(破壊エネルギー)を測定し、下記の評価基準に従って、積層体の耐衝撃性の評価を行なった。
実用上許容できるものは、[A]に分類されるものである。
【0205】
(評価基準)
A:破壊エネルギーが0.05J以上である。
B:破壊エネルギーが0.05J未満である。
【0206】
3.応力緩和性
積層体から幅10mm×長さ100mmのシートを打ち抜いたものを試験片として用いた。
引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離75mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片を10%伸長させた。そして、10%伸長させた際の応力(初期応力)を計測し、そのまま試験片の伸長を120秒間保持させ、その間の応力の変化についても計測した。そして、上記初期応力と伸長から60秒後の応力との差から応力緩和率を算出し、下記の評価基準に従って、積層体の応力緩和性の評価を行なった。
実用上許容できるものは、[A]、[B]及び[C]に分類されるものである。
【0207】
(評価基準)
A:応力緩和率が60%以上である。
B:応力緩和率が55%以上60%未満である。
C:応力緩和率が52%以上55%未満である。
D:応力緩和率が52%未満である。
【0208】
4.剥離強度
積層体を幅15mm×長さ100mmの短冊状に切断したものを試験片として用いた。
測定装置として、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用い、チャック間距離80mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、応力緩和層と表面層との接着面に対して180°の方向に引っ張り、応力緩和層と表面層との間を剥離させた。5個の試験片の測定値を平均し、剥離強度とした。
【0209】
【表3】
【0210】
表3に示すように、実施例6A〜9Aの積層体は、耐衝撃性と応力緩和性とを兼ね備えていることがわかる。また、実施例6A〜9Aの積層体では、応力緩和層及び表面層の層間の剥離強度が高く、応力緩和層と表面層との密着性が良好であることがわかる。これに対して、比較例5A及び6Aの積層体は、応力緩和性に劣り、比較例7Aの積層体は、応力緩和層及び表面層の層間の剥離強度が低く、層間剥離し易いことがわかる。
【0211】
《第2の態様の実施例》
[合成例1B]共重合体A−1Bの合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、44.0gの粉末状の共重合体A−1Bを得た。
【0212】
得られた共重合体A−1Bの各種物性の測定結果を表4に示す。
共重合体A−1B中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は84.1mol%であり、プロピレンの含有率は15.9mol%であった。また、共重合体A−1Bの密度は838kg/m
3であった。共重合体A−1Bの極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は340,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−1Bの融点(Tm)は132℃であり、tanδの最大値は1.6(最大値を示す際の温度:39℃)であった。
【0213】
[合成例2B]共重合体A−2Bの合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体A−2Bを得た。
【0214】
得られた共重合体A−2Bの各種物性の測定結果を表4に示す。
共重合体A−2B中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A−2Bの密度は839kg/m
3であった。共重合体A−2Bの極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−2Bの融点(Tm)は観察されず、tanδの最大値は2.8(最大値を示す際の温度:31℃)であった。
【0215】
共重合体A−1B及びA−2Bの各種物性の測定方法を以下に示す。
【0216】
〔組成〕
共重合体中の4−メチル−1−ペンテン及びプロピレン(炭素数3のα−オレフィン)の含有率(モル%)は、
13C−NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
【0217】
〜条件〜
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:
13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0218】
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
具体的には、約20mgの粉末状の共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0219】
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記のとおりである。
【0220】
〜条件〜
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示唆屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0221】
〔メルトフローレート(MFR)〕
共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。単位は、g/10min)である。
【0222】
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m
3)を軽量性の指標とした。
【0223】
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。
約5mgの共重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱した。共重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を共重合体の融点(Tm)とした。この共重合体の融点(Tm)を耐熱性の指標とした。
【0224】
〔衝撃吸収性〕
上記にて得られた粉末状の共重合体を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を100℃〜250℃、ダイス温度を250℃に設定し、Tダイから溶融混練物を押し出した。この押し出した溶融混練物を、チルロール温度20℃、引取速度10m/minで引き取ることにより、厚さ50μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムを45mm×10mmに切り出し、試験片とした。
この試験片について、粘弾性測定装置(MCR301、Anton Paar社製)を用いて、周波数10rad/sで、−70〜180℃の温度範囲の動的粘弾性を測定した。そして、得られたガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)の最大値と、その最大値を示す際の温度と、を衝撃吸収性の指標とした。
【0225】
【表4】
【0226】
[応力緩和性フィルム]
<実施例1B>
共重合体A−1B 30質量部と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、直鎖状低密度ポリエチレン、密度:924kg/m
3、MFR(190℃):3.8g/10min、(株)プライムポリマー製)70質量部と、を混合(ドライブレンド)した。次いで、得られた混合物を、リップ幅240mmのTダイを設置した20mmφの単軸押出機(単軸シート形成機、(株)田中鉄工所製)のホッパーに投入した。そして、シリンダー温度を230℃、ダイス温度を250℃に設定し、Tダイから溶融混練物を押し出し、キャスト成形することにより、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0227】
<実施例2B>
共重合体A−1B 40質量部と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体、密度:907kg/m
3、MFR(230℃):7g/10min、(株)プライムポリマー製)60質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Bと同様の方法により、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0228】
<実施例3B>
共重合体A−2B 20質量部と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)80質量部と、を混合(ドライブレンド)したこと以外は、実施例1Bと同様の方法により、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0229】
<比較例1B>
原料として、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)50質量部と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP0540、直鎖状低密度ポリエチレン、密度:903kg/m
3、MFR(190℃):3.8g/10min、(株)プライムポリマー製)50質量部と、を混合(ドライブレンド)して得られた混合物のみを使用したこと以外は、実施例1Bと同様の方法により、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0230】
<比較例2B>
原料として、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)のみを使用したこと以外は、実施例1Bと同様の方法により、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0231】
<比較例3B>
原料として、共重合体A−1Bのみを使用したこと以外は、実施例1Bと同様の方法により、応力緩和性フィルム(厚み:200μm)を得た。
【0232】
〔透過型電子顕微鏡(TEM)によるフィルムの観察〕
実施例1B〜3Bの応力緩和性フィルムを、断面方向にマイクロトームにて研削しフィルム断面の超薄切片をトリミングした後、四酸化ルテニウムの蒸気に一定時間晒して一方を選択的に染色させた。作製したサンプルを日立ハイテク(株)製の透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、型式:H−7650)を用い、加速電圧:100kV、及び観察倍率:3000倍の測定条件にて観察したところ、実施例1Bの応力緩和性フィルムが、共重合体A−1Bを含む島部と、実質的にエチレン系重合体からなる海部と、から構成される海島構造を有しており、実施例2Bの応力緩和性フィルムが、共重合体A−1Bを含む島部と、実質的にプロピレン系重合体からなる海部と、から構成される海島構造を有しており、実施例3Bの応力緩和性フィルムが、共重合体A−2Bを含む島部と、実質的にエチレン系重合体からなる海部と、から構成される海島構造を有していることが確認された。実施例3BのフィルムのTEM画像を
図2に示す。
【0233】
〔応力緩和率の測定〕
実施例1B〜3B及び比較例1B〜3Bの応力緩和性フィルムから、幅10mm×長さ100mmのシートを打ち抜いたものを試験片として用いた。
引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離75mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片を10%伸長させた。そして、10%伸長させた際の応力(初期応力)を計測し、そのまま試験片の伸長を120秒間保持させ、その間の応力の変化についても計測した。そして、上記初期応力と伸長から60秒後の応力との差から応力緩和率(単位:%)を算出し、応力緩和性の評価の指標とした。結果を下記の表5に示す。
【0234】
[積層体]
<実施例4B>
共重合体A−1B 30質量部、及びエチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)70質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を、リップ幅200mmの二種三層型Tダイを設置した20mmφの単軸押出機((株)テクノベル製)を用い、共押出しにより成形した。なお、シリンダー温度は200℃、ダイス温度は200℃に設定した。
【0235】
<実施例5B>
実施例4Bと同様の方法により、共重合体A−1B 40質量部、及びプロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)60質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を成形した。
【0236】
<実施例6B>
実施例4Bと同様の方法により、共重合体A−2B 30質量部、及びエチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)70質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系共重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)80質量部、及びエチレン系重合体(タフマー(登録商標)DF605、エチレン・ブテン共重合体(エチレンに由来する構成単位の比率:50モル%以上、密度:861kg/m
3、MFR(230℃):0.9g/10min、三井化学(株)製)20質量部を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を成形した。
【0237】
<比較例4B>
実施例4Bと同様の方法により、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)50質量部と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP0540、(株)プライムポリマー製)50質量部と、を混合(ドライブレンド)して得られた混合物からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を成形した。
【0238】
<比較例5B>
実施例4Bと同様の方法により、プロピレン系重合体(プライムポリプロ(登録商標)F327、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を成形した。
【0239】
<比較例6B>
実施例4Bと同様の方法により、共重合体A−1B 100質量部からなる応力緩和層(厚さ:100μm)と、エチレン系重合体(エボリュー(登録商標)SP2540、(株)プライムポリマー製)100質量部からなる表面層(厚さ:各30μm)と、からなる二種三層構成の積層体(厚さ:160μm、層構成:表面層/応力緩和層/表面層)を成形した。
【0240】
〔剥離強度の測定〕
実施例4B〜6B及び比較例4B〜6Bの積層体を、幅15mm×長さ100mmの短冊状に切断したものを試験片として用いた。
カッターを用いて、試験片の表面(一方の面)に傷を付けた後、該試験片の両端に強粘着テープを貼り付け、該強粘着テープを手で引っ張り、表面層と応力緩和層との間を剥離させる試みを行なった。この際、剥離しなかった積層体については、下記の表5の該当欄に、「剥離しない」と記載した。剥離した積層体に関しては、別途、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用い、チャック間距離80mm、引張速度300mm/min、及び温度23℃の条件で、応力緩和層と表面層との接着面に対して180°の方向に引っ張り、応力緩和層と表面層との間を剥離させ、剥離強度(層間剥離強度)を測定した。剥離強度は、5個の試験片について測定し、平均値を算出した。結果を下記の表5に示す。
【0241】
【表5】
【0242】
表5に示すように、本発明の応力緩和性フィルムは、良好な応力緩和性を有し(実施例1B〜3B参照)、また、他の層と積層した場合には、他の層との間で良好な接着性を示した(実施例4B〜6B参照)。