特許第5965071号(P5965071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965071異方性金属ナノ粒子を利用した発光効率が増大された光変換発光素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965071
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】異方性金属ナノ粒子を利用した発光効率が増大された光変換発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20160721BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20160721BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20160721BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01L33/50
   B82Y20/00ZNM
   C09K11/08 E
   C09K11/06 690
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-524202(P2015-524202)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-531167(P2015-531167A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】KR2013010051
(87)【国際公開番号】WO2014189188
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0058451
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507324740
【氏名又は名称】ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム キセ
(72)【発明者】
【氏名】イ ドフン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ホシク
(72)【発明者】
【氏名】チェ チャンヒョン
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133778(WO,A1)
【文献】 Kyung Cheol Choi et al,Novel Plasmonic Hybrid Phosphor for White Light Emitting Diodes,Proceedings of The International Display Workshops,2012年,Volume 19, Day 3,p.1051-1052
【文献】 Tirtha Som et al,nano silver:antimony glass hybrid nanocomposites and their enhanced fluorescence application,Solid State Sciences,2011年,Vol.13,p.887-895
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
B82Y 20/00
C09K 11/06
C09K 11/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素材と、2種以上の表面プラズモンバンド形成が可能な縦横比を有し、互いに異なる2種以上の金属を用いたコア‐シェル形態からなる異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体が導入されてなる発光層を含む光変換発光素子。
【請求項2】
前記縦横比は1.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項3】
前記異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体は、Ag、Au、Al、Cu、Li、Pd、Ptまたはこれらの合金からなったことを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項4】
前記光変換発光素子において、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の一つの表面プラズモンバンドは発光素子光源の発光波長と重畳または発光素材の吸収波長と重畳になり、他の表面プラズモンバンドは発光素材の発光波長と重畳になることを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項5】
前記光変換発光素子において、発光素子として、互いに異なる複数の発光素材を発光層に導入し、前記異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の2種以上の表面プラズモン共鳴バンドの各々が前記互いに異なる発光波長を有する複数の発光素子の吸収波長及び発光波長と重畳されることを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項6】
前記異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体は、吸光スペクトルにおける散乱効率が吸収効率よりさらに大きいことを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項7】
前記光変換発光素子に使用される発光素材は、半導体量子点を含む有機または無機素材からなることを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【請求項8】
前記光変換発光素子は、近紫外線または青色発光波長の光源と、前記光源より長波長の発光波長を有する発光素材の組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変換発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横比を有する異方性金属ナノ粒子を活用して、発光効率が増大された光変換発光素子に関するもので、されに詳しくは、異方性金属ナノ粒子が形成する2種以上の表面プラズモン共鳴バンドを制御して、近紫外線または青色光源の波長、発光素材の吸収波長及び発光波長の重畳を最適化して、発光素材の励起増幅と発光増幅を共に具現して、発光効率が極大化された光変換発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新たな次世代光源として注目を受ける発光ダイオード(light-emitting diode, LED)は、既存の白熱燈、ハロゲン、 蛍光灯等の光源対比高い光効率、高速応答、長寿命、小形化等の長点と共に、蛍光灯とは異に、水銀を用いない親環境光源として優れた特徴を有する。よって、信号、標示、デイスプレー、通信、携帯端末機及び自動車産業から一般照明産業に至るまで非常に幅広い分野で活用されている。特に、このような発光ダイオードを基盤にした白色発光ダイオードは、LCD TV、ノートブック等のバックライト(back light unit、BLU)、自動車ヘッドランプ等に活用されており、一般照明価格の下落と白熱燈規制政策施行に基づいて、照明市場で持続的な高速成長が予測されている。
【0003】
一般的に、白色発光ダイオードを具現する方法として、互いに異なる単色波長の光を発現する発光ダイオードチップ(chip)の組合せを利用した方法と、発光ダイオードチップと単一または多成分発光素材の組合せを利用した方法がある。複数の発光ダイオードチップの組合せによって白色発光ダイオードを具現する場合には、各チップに印加される作動電圧の不均一と、周辺温度に基づく各チップの出力が変化して、色再現性と高色純度の白色光の具現に困難がある。よって、近紫外線(near ultraviolet)または青色の単色波長を有する発光ダイオードチップの上に、発光素材を高分子素材の封止材と共に塗布して、白色発光ダイオードを製造する方法が一般的に利用されているし、高色純度の白色光を具現するため、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)、黄色(Yellow)などの発光波長を有する単一または複数個の発光素材との組合せが活用されている。即ち、白色発光ダイオードで発光素材の役割は、発光ダイオードチップから発生される青色(または近紫外線)光を吸収して、発光素材の固有の長波長の赤色、緑色、青色、黄色等の発光色に転換させて、発光素材によって吸収されない発光ダイオードチップの発光色と共に白色を具現するものである。
【0004】
白色発光ダイオードの全体光効率は、発光ダイオード素材の性能を代表する非常に重要な要素中の一つであって、低電力で高い輝度を有する白色発光ダイオード素子のためには、発光素材の光変換効率を高めることが必須的である。また、高い色純度の白色光を具現するためには、2種以上の発光素材が要求される。即ち、発光素材の吸収波長は発光ダイオードチップの発光波長と適切な重畳を有することが有利であり、白色具現のため、発光波長はより長波長の可視光線領域で形成されなければならない。また、これと共に、高い内部量子効率を有する発光素材が好ましい。しかしながら、このような発光素材の吸収及び発光特性は、発光素材の合成または製造段階で決定される固有な特性で、吸収及び発光波長領域の制御と高い量子効率を有する発光素材を製造することは相当に制限的である。
【0005】
これを改善するための方案として、金属ナノ粒子の局部化された表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance, LSPR)現像を利用することができる。局部化された表面プラズモン共鳴とは、金属ナノ粒子と光の強い相互作用で、金属ナノ粒子またはナノ構造体に光(hv)が印加されば、金属ナノ粒子の表面自由電子(free electron)が入射される光の電気場(electric field)を追って集団的な振動(collective oscillation)が可能になり、表面プラズモン(Surface Plasmon)を形成し、金属ナノ粒子の周囲に非常に強い局部的な電気場(local electric field)が形成される。この時、金属ナノ粒子の近隣に発光素材が位置するようになると、金属ナノ粒子の周囲に局部的に強く形成された電気場によって、光吸収増加による励起増幅(Eex, excitation enhancement)が可能になり、発光素材の発光強さの増大を期待することができる。さらに、励起された発光素材と表面プラズモン間相互引力によって発光素材固有の量子効率(quantum yield)が増加する発光増幅(Eem, emission enhancement)を期待することができるが、これは下記式(1)で量子効率を発光消滅速度(radiative decay rate, γrad)と非発光消滅速度(non-radiative decay rate, γnon-rad)で表す時、金属ナノ粒子近隣に位置する蛍光素材の場合、金属の表面プラズモンによって誘導される発光消滅速度(metal-induced radiative decay rate, γM-rad)によって、全体発光消滅速度(γrad + γM-rad)が非発光消滅速度に比して非常に優勢になり(γrad + γM-rad >> γnon-rad)、量子効率 (Qmetal)が増加することで説明される(非特許文献1から3を参照)。
【0006】
【数1】
【0007】
即ち、金属ナノ粒子の表面プラズモンによる発光素材の全体発光増幅程度 (total enhancement, Etotal)は、励起増幅(excitation enhancement, Eex)と発光増幅(emission enhancement, Eem)の倍であり、下記式(2)のように表すことができる。
【0008】
【数2】
【0009】
よって、金属ナノ粒子の表面プラズモンによる発光素材の発光強さ増幅を極大化するためには、励起増幅(Eex)と発光増幅(Eem)を同時に具現することが重要であり、これを制御するためには、発光素材の吸収及び発光波長と金属ナノ粒子の表面プラズモンバンドとの効果的な重畳が重要である(非特許文献4及び5を参照)。
【0010】
例えば、発光素材の吸収波長とプラズモンバンドが重畳される場合には、光の吸収が増加して、発光素材の励起増幅(Eex)を期待することができるし、 発光素材の発光波長とプラズモンバンドが重畳される場合には、励起された発光素材と表面 プラズモンとのカップリングによって、発光消滅速度増加による量子効率が増加する発光増幅(Eem)を期待することができる。よって、金属ナノ粒子の表面プラズモンバンドと発光素材の吸収及び発光スペクトルの適切な重畳を誘導すれば、発光素材の励起増幅と発光増幅を同時に具現できるので、発光強さ増幅を極大化することができる。
【0011】
最近、金属ナノ粒子の表面プラズモンによる発光強さ増幅原理を利用して、近紫外線または青色波長の発光ダイオードチップと発光素材の組合せによって白色光を具現する発光ダイオード素子において、発光素材の励起増幅または発光増幅を誘導することにより、光変換効率を高め、低電力・高輝度の発光ダイオードを具現する技術が報告されている(特許文献1から3を参照)。
【0012】
しかしながら、前記特許の場合、通常的に、単一表面プラズモンバンドを有する下向式(bottom-up)方式の溶液工程で合成される金属ナノ粒子、または上向式(top-down)方式で金属薄膜を腐刻(etching)して、基板に配列されたナノ構造体を利用するようになるが、発光素子の励起増幅と発光増幅を同時に発現させ、発光強さ増幅を極大化することは相当に制限的である。例えば、近紫外線または青色波長の発光ダイオードチップを利用し、ヤグ(Yttrium Aluminium Garnet, YAG)の如き黄色発光素材を利用する白色発光ダイオード素子で球形の銀ナノ粒子を利用するようになれば、一般的に球形の銀ナノ粒子の場合、400〜500nmで表面プラズモンバンドが形成され、発光ダイオードチップの近紫外線または青色波長、黄色発光素材の吸収波長と効果的に重畳されることにより、黄色発光素材の吸収が増加して、励起増幅効果を期待することができる。しかしながら、黄色発光素材の発光波長と銀ナノ粒子の表面プラズモンバンドは効果的に重畳されないので、内部量子効率が増加する発光増幅を期待するのが難しいので、発光強さ増幅を極大化することができなくなる。
【0013】
一方、同一な白色発光ダイオード構成で金ナノ粒子を活用する場合、500〜600nmで表面プラズモンバンドが形成され、黄色発光素材の発光波長と金ナノ粒子の 表面プラズモンバンドは効果的な重畳が可能であり、内部量子効率が増加する発光増幅を具現することはできるが、発光ダイオードチップの近紫外線または青色波長とは重畳されないので、発光素材の吸収増加による励起増幅を期待するのは難しい。
【0014】
さらに、色純度が高い白色発光を具現するために、互いに異なる発光波長を有する青色、緑色、赤色、黄色などの2種以上の複数の発光素材を導入しようとする場合、単一表面プラズモンバンドを形成する金属ナノ粒子またはナノ構造体を利用しては異種発光素材の同時発光増幅を期待するのが難しいので、輝度と色純度が高い光変換発光素子を具現することは相当に制限的な問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国特許登録番号10-0659900号公報
【特許文献2】韓国特許登録番号10-0966373号公報
【特許文献3】韓国特許登録番号10-1062789号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Chemical Reviews, 2011, 111, 3888
【非特許文献2】Nature Materials, 2010, 9, 193
【非特許文献3】Analyst, 2008, 133, 1308
【非特許文献4】Nano Letters、2007、7、690
【非特許文献5】Applied Physics Letters、2008、93、53106
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記の如き従来技術等の問題点を解決しようとするもので、本発明の目的は、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体が形成する2種以上の表面プラズモン共鳴バンドを制御して、近紫外線または青色光源の発光波長、発光素材の吸収波長及び発光波長との重畳を最適化することにより、発光素材の励起増幅と発光増幅とを同時に具現して、発光効率が極大化された光変換発光素子を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、異方性金属ナノ粒子の2種以上の表面プラズモンバンドを制御して、互いに異なる発光波長を有する2種以上の発光素材の吸収波長及び発光波長との重畳を最適化して、複数の発光素材の同時発光増幅を具現する光変換発光素材を提供することである。
【0019】
前記のような目的を達成するための、本発明の光変換発光素子は、発光素子の発光層が2種以上の表面プラズモンバンド形成が可能な異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体が導入された発光素材からなることにより、発光素材の励起増幅と発光増幅を同時に具現して、発光強さの増幅を極大化させることにより、低い電力で高輝度の光変換発光素子であることを特徴とする。
【0020】
本発明で使用される異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体とは、短軸と長軸の縦横比を有する形態のナノサイズの粒子を意味し、特に、ナノ構造体とは金属薄膜を腐刻して(etching)形成されたナノサイズの構造体を意味する。前記異方性金属ナノ粒子としては、Ag、Au、Al、Cu、Li、Pd、Ptなどの金属またはこれらの合金(alloy)からなる金属が利用され得る。本発明の発光素子において、前記異方性金属ナノ粒子の原料になる金属としては、スペクトル重畳を考慮して金属の種類を選ぶことができるし、発光素子の発光波長位置、発光素材の吸収及び発光波長の位置に基づいて金属の種類を選んで、縦横比(aspect ratio)を調節することができる。
【0021】
例えば、紫外線領域で吸収及び発光波長を有する発光素材の発光強さを増幅させようとする場合には、紫外線領域でプラズモンバンドを有するAlナノ粒子またはAlと他の金属の合金(alloy)を利用することが有利である。一方、可視光線領域で吸収及び発光波長を有する発光素材の発光強さを増幅させようとする場合には、可視光線領域で表面プラズモンバンドを有するAgまたはAuナノ粒子を利用するか AuとAgまたは他の金属との合金を利用することが有利である。
【0022】
前記異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体を製造する方法としては、金属前駆体(precursor)を還元剤(reducing agent)と界面活性剤(surfactant)を利用して、溶液工程でナノ粒子を合成する上向式方法(bottom-up)と、電子ビームリソグラフイー(electron beam lithography)の如き方法で金属薄膜を腐刻して、ナノ構造体を製造する下向式方法(top-down)があり、製造単価を考慮する場合、上向式方法を利用するのが好ましい。異方性金属ナノ粒子は金属核(seed)を製造した後、これを異方性棒(rod)形態に成長(growth)させ、ナノ棒(nanorod)を合成する方法が活用されるし、ナノ棒の縦横比は、ナノ棒の合成過程で核のサイズ、核と金属前駆体の相対的な比(ratio)、溶液のpH、温度などの因子で調節する方法と、合成後ナノ棒を腐刻するか金属前駆体を追加して再成長させる方法を利用することもできる。異方性ナノ粒子を合成し、縦横比を制御する技術は既に良く知られているところ、具体的な合成過程に対しては省略する。
【0023】
本発明において、発光素材とは、発光機構(mechanism)によって区分される蛍光(fluorescence)または燐光(phosphorescence)を発現できる半導体量子点(quantum dot)を含む有・無機素材を意味するものであって、その種類には特別に限定が無いし、高色純度の白色発光のためには、単一または複数の発光素材等を活用することができる。
【0024】
本発明において、前記発光素材は近紫外線または青色発光波長を有する半導体発光ダイオードと、前記発光ダイオードより長波長の発光波長を有する発光素材の組合せからなるものが好ましい。
【0025】
本発明において、前記発光素材としては、近紫外線または青色光を放出する窒化物半導体を使用することができるし、この外にも赤色光、緑色光等を発光する多様な発光素子を使用することができる。具体例として、本発明の光変換発光素子は、近紫外線または青色発光波長の光源と、前記光源より長波長の発光波長を有する発光素材の組合せを含むものが好ましい。
【0026】
本発明の光変換発光素子において、発光素子光源の発光波長、発光素材の吸収及び発光波長と、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の表面プラズモンバンドとの適切なスペクトル重畳のため、異方性金属ナノ粒子の縦横比を制御して、表面プラズモンバンドを調節することができる。即ち、異方性ナノ粒子の表面プラズモンバンドは縦横比を制御することにより調節が可能であるが、縦横比が増加すればするほど長軸方向のプラズモン共鳴バンド(longitudinal band)は長波長に移動し、短軸方向の表面プラズモン共鳴バンド(transverse band)は長軸方向のプラズモンバンドに比べて大きな変化が無い特徴を有する。よって、光変換白色発光素子を構成する発光ダイオードチップと発光素材のスペクトルに基づいて異方性金属ナノ粒子の造成、サイズ及び縦横比を制御して、プラズモンバンドを調節することが好ましい。さらに詳しくは、異方性金属ナノ粒子の長軸と短軸による2種以上の表面プラズモン共鳴バンドを近紫外線、可視光線及び近赤外線領域まで制御して、近紫外線または青色波長の光源、発光素材の吸収波長及び発光波長との重畳を最適化して、発光素材の励起増幅と発光増幅を共に具現することができる。
【0027】
さらに、本発明では、前記ナノ粒子として、発光素子光源の発光波長、発光素材の吸収及び発光波長と異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の表面プラズモンバンドとの適切なスペクトル重畳のために、互いに異なる2種以上の金属を利用して、コア‐シェル(core-shell)形態に製造されたナノ粒子を利用することもできる。
【0028】
さらに、本発明は、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の一つの表面プラズモンバンドは発光素子光源の発光波長と重畳または発光素材の吸収波長と重畳になり、残りの他の表面プラズモンバンドは発光素材の発光波長と重畳になる光変換発光素子を提供することもできる。コア‐シェルナノ棒の短軸方向表面プラズモンバンドは発光ダイオードチップの発光波長と重畳され、発行素材は発光ダイオードチップの励起光をより効果的に吸収することができるし、励起増幅が可能になる。さらに、これと共に、発光素材の発光波長はコア‐シェルナノ棒の長軸方向表面プラズモンバンドと適切に重畳され、発光素材の内部量子効率が増大される発光増幅が可能になる。よって、発光素材の励起増幅と発光増幅が同時に発現されることにより、発光強さの増幅が極大化される効果がある。
【0029】
本発明において、異種の複数の発光素材を発光層に導入する場合、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の2種以上の表面プラズモン共鳴バンドの各々が、互いに異なる発光波長を有する2種以上の発光素材の吸収及び発光波長と重畳される光変換発光素子を提供することができる。
【0030】
本発明において、前記異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体の吸光(extinction) スペクトルで計算される散乱効率(scattering efficiency)と吸収効率(absorption efficiency) サイズで、散乱効率が吸収効率より大きいナノ粒子を使用するのが好ましい。この場合、前記異方性金属ナノ粒子のサイズ及び縦横比(aspect ratio)は、ナノ粒子の吸光を構成する散乱効率と吸収効率とを考慮して決定する。これは、一般的に、金属ナノ粒子の散乱は発光素材の発光強さ増幅に関連があり、球形のナノ粒子の場合、ナノ粒子半径(radius, r)の6乗(r6)に比例する反面、吸収は発光素材の消光(quenching)に関連があり、ナノ粒子半径の3乗(r3)に比例するからである。よって、散乱効果が大きい異方性ナノ粒子を使用することが、発光素材の発光増幅に有利であり、これのために、ナノ粒子のサイズが短軸方向には10nm以上300nm以下、長軸方向には11nm以上3000nm 以下であり、 縦横比は1.1以上10以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、近紫外線または可視光線領域で発光波長を有する発光素子と、可視光線領域で吸収及び発光波長を有する発光素材との組合せからなる光変換発光素子において、発光層に発光素材と共に異方性金属ナノ粒子を導入することにより、発光素材の励起増幅と発光増幅が同時に具現され、発光強さ増幅が極大化され、光変換効率が増大された低電力・高輝度の光変換発光素子を提供することができる。
【0032】
即ち、本発明によれば、異方性金属ナノ粒子の2種以上の表面プラズモンバンドと発光素子の発光波長、発光素材の吸収及び発光波長の全てが効果的に重畳され、発光素材の吸収増加による励起増幅と、発光素材の内部量子効率が増加する発光増幅を共に具現して、発光強さ増幅を極大化することができる発光素子を提供することができる。
【0033】
さらに、本発明によれば、色純度を高めるために、互いに異なる吸収及び発光波長を有する複数の発光素材などを活用する場合、異方性金属ナノ粒子の2種以上の表面プラズモンバンドを制御して、発光素材などの吸収及び発光波長との重畳を最適化して、複数の発光素材の同時発光増幅を具現できるので、色純度と輝度が向上された光変換発光素子を提供することができる。
【0034】
よって、異方性金属ナノ粒子またはナノ構造体を利用して光効率が増大された本発明の光変換発光素子は、既存の発光ダイオードを基盤にした信号、デイスプレー、通信、携帯端末機及び自動車産業から一般照明産業に至るまで、非常に幅広い分野で活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】異方性金属ナノ粒子が導入され発光効率が増大された光変換白色発光素子の原理を表す模式図である。
図2】異方性金属ナノ粒子の透過電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)写真と、それに該当する表面プラズモンバンドを表す紫外線-可視光線スペクトル(UV-Vis spectrum)である。
図3】金−銀コア‐シェルナノ棒の金属組成比及び縦横比に基づく近紫外線、可視光線及び近赤外線領域で表面プラズモンバンドの精密な制御を表す紫外線-可視光線スペクトルである。
図4】金ナノ棒の縦横比制御に基づく可視光線及び近赤外線領域で表面プラズモンバンドの精密な制御を表す紫外線-可視光線スペクトルである。
図5図4の紫外線-可視光線スペクトルに該当する、縦横比が制御された金ナノ棒の透過電子顕微鏡写真である。
図6】互いに異なる発光波長を有する複数の発光素材と異方性金属ナノ粒子が発光層に共に導入された光変換発光素子を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下で、近紫外線または可視光線領域で発光波長を有する発光ダイオード(light emitting diode)と可視光線領域で吸収及び発光波長を有する発光素材との組合せからなる、本発明の光変換白色発光素子に対して、添付された図面を参照して詳しく説明する。
【0037】
図1は、異方性金属ナノ粒子によって発光効率が増大された光変換白色発光素子の概念を説明する模式図であって、図1(a)は、光変換白色発光素子の構成を表す模式図であるが、基板または発光ダイオードチップ、発光素材、異方性金属ナノ粒子及び透明性高分子媒質からなり得る。さらに、図1(b)は、発光ダイオードチップ、発光素材及び異方性金属ナノ粒子のスペクトル重畳(spectrum overlap)を表す。
【0038】
図2は、近紫外線、可視光線及び近赤外線領域で2種以上の表面プラズモンバンドを有する異方性ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真と、それに相応する紫外線-可視光線スペクトルを表す。
【0039】
先に、図2(a)は、金核を基盤に、金前駆体を添加して成長させて合成した金ナノ棒の透過電子顕微鏡写真であり、図2(b)は、さらに前記 金ナノ棒を核にして、銀前駆体を添加して合成した金-銀コア(core)-シェル(shell)からなるナノ棒である。図2(b)で、相対的に一層黒く見られる部分が金コアであり、これを囲む部分が銀シェルである。さらに、図2(c)は、金ナノ棒(点線)と金-銀コア‐シェルナノ棒(実線)の紫外線-可視光線スペクトルで、金ナノ棒は、可視光線と近赤外線領域で各々短軸と長軸の表面プラズモン共鳴バンドが観察されることを分かるし、金-銀コア‐シェルナノ棒は、近紫外線と可視光線領域で短軸と長軸の表面プラズモン共鳴バンドが観察されるのを分かる。このような異方性ナノ粒子の表面プラズモンバンドは、前記で説明したように望む波長領域で形成されるように精密な調節が可能である。例えば、金-銀コア‐シェルナノ棒の場合、金ナノ棒と銀前駆体の相対的な比を調節すれば、銀シェルの厚さを制御できるが、この時、銀シェルの厚さに基づいて金-銀コア‐シェルナノ棒の表面プラズモンエネルギーを、近紫外線領域から可視光線領域に至るまで、精密な制御が可能である。
【0040】
図3は、金-銀コア‐シェルナノ棒の紫外線-可視光線スペクトルで、金ナノ棒と銀前駆体の相対的な比を調節するによって、該ナノ棒の表面プラズマモンバンドの制御が可能であることを意味する。さらに詳しくは、図3の点線は核として使用された金ナノ棒の表面プラズモンバンドであり、この時、銀前駆体の添加量が増加するによって、長波長の金-銀コア‐シェルの長軸方向の表面プラズモンバンドが漸次短波長に移動する。よって、金-銀コア‐シェルの表面プラズモンバンドは可視光線領域で形成が可能であり、精密な制御が可能である。さらに、金ナノ棒の場合にも、前記で説明したように、縦横比を制御することにより可視光線領域から近赤外線領域に至るまで、表面プラズモンバンドの精密な制御が可能である。
【0041】
図4図5は、金ナノ棒の縦横比調節に基づく表面プラズモンバンドの変化と透過電子顕微鏡写真を表す。
【0042】
図4の吸光スペクトルから、縦横比が減少すればする程、長波長の近赤外線領域で形成される表面プラズモンバンドは可視光線領域の短波長に移動し、短波長の可視光線領域で形成される短軸表面プラズモンバンドは大きな変動が無い。
【0043】
図5は、図4に相応する金ナノ棒の透過電子顕微鏡写真で、図5(a)は 縦横比が平均2で、長軸表面プラズモンバンドは625nmで形成され、図5(b)は縦横比が平均2.6で、長軸表面プラズモンバンドは664nmで形成され、図5(c)は縦横比が平均2.9で、長軸表面プラズモンバンドは715nmで形成され、図5(d)は、縦横比が平均4.5で、長軸表面プラズモンバンドが820nmで形成されることを表す。
【0044】
前記光変換白色発光素子において、発光ダイオードとしては、近紫外線または青色光を放出する窒化物半導体を使用することができるし、これ以外にも赤色光、緑色光等を発光する多様な発光素子を使用することができる。
【0045】
さらに、前記光変換白色発光素子において、発光素材としては、半導体量子点(quantum dot)を含む有・無機発光素材など、種類に無関に適用が可能であり、高色純度の白色発光のためには、単一または複数の発光素材を活用することができる。
【0046】
異方性金属ナノ粒子を活用して発光効率が増大された光変換白色発光素子を製造するために、前記で合成された異方性ナノ粒子を発光素材と共に、光学的に透明性を有するポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate, PMMA)、エポキシ系(epoxy)、シリコン系(silicone)等の高分子に混合した後、フィルムを製造して、近紫外線または青色発光ダイオードチップの上に乗せるか、または混合液を発光ダイオードチップの上に均一に塗布して素子を製造する。
【0047】
例えば、図1を参考して詳しく説明すれば、図1(a)で表した模式図の如く、近紫外線または青色発光ダイオードチップと黄色発光素材との組合せによって白色光を具現する場合、金-銀コア‐シェルナノ棒を発光素材と共に上記で説明した透明高分子媒質に分散させ、発光層に位置するようにして製造する。この時、異方性金属ナノ棒は、金-銀コア‐シェルナノ棒に極限されないし、近紫外線と可視光線領域で2種以上の表面プラズモンバンドを形成する金属ナノ粒子及びナノ構造体を使用することができる。
【0048】
図1(b)のスペクトル重畳模式図で表した如く、発光ダイオードチップの発光波長、発光素材の吸収及び発光波長を考慮して、図2(c)と図3における如く金-銀コア‐シェルナノ棒の表面プラズモンバンドを調節し、スペクトルが全て適切に重畳されるナノ粒子を選んで、発光層に発光素子と共に導入すれば、次のような効果が発現される。
【0049】
金-銀コア‐シェルナノ棒の短軸方向表面プラズモンバンドは、発光ダイオードチップの発光波長と重畳され、発光素子は発光ダイオードチップの励起光をより効果的に吸収することができるし、励起増幅が可能になる。さらに、これと共に、発光素材の発光波長は、金-銀コア‐シェルナノ棒の長軸方向表面プラズモンバンドと適切に重畳され、発光素材の内部量子効率が増大される発光増幅が可能になる。よって、発光素材の励起増幅と発光増幅が同時に発現されることにより、発光強さ増幅が極大化される。
【0050】
一方、高色純度の白色光具現のために、互いに異なる発光波長を有する複数の発光素材を発光層内に導入する場合には、前記で説明した光変換発光素子の製造方法と類似に、図6の如く製造することができる。
【0051】
前記で説明した場合と類似に、複数の発光素材の吸収及び発光スペクトルを考慮して、図2(c), 図3図4における如く、表面プラズモンバンドを精密に調節し、スペクトル重畳を最適化することにより、前記の場合と同一な原理で、発光増幅を誘導することが可能である。
【0052】
特に、発光素材の最大吸収波長と最大発光波長の差異を意味するストックス移動(Stokes,s shift)が小さい緑色または赤色発光素材の場合、短波長の近紫外線または青色発光ダイオードチップの光を効果的に吸収することができないので、光変換効率が非常に低いが、この場合、近紫外線領域と可視光線領域で同時に表面プラズモンバンドを有する異方性金属ナノ粒子を活用すれば、励起増幅と発光増幅の効果を共に発現することが可能である。
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図6
図1
図2
図3
図4