特許第5965075号(P5965075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5965075
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   B22D19/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-532943(P2015-532943)
(86)(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公表番号】特表2015-531688(P2015-531688A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】KR2013007010
(87)【国際公開番号】WO2014208810
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0073958
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515076965
【氏名又は名称】ティー アンド マテリアルズ カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515077032
【氏名又は名称】チョン,キョン ウー
(74)【代理人】
【識別番号】100146639
【弁理士】
【氏名又は名称】船本 康伸
(72)【発明者】
【氏名】チョン,キョン ウー
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−131676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00−19/14
B22C 1/00, 9/04
B22F 7/06
B23K 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯口により外部と連通される空間ポケットが内部に設けられた予備成形体ケースの前記空間ポケットに前記空間ポケットよりも小さい多孔性予備成形体を収納して予備成形体アセンブリを準備する予備成形体アセンブリ準備ステップと、
前記予備成形体アセンブリおよび溶融含浸剤を金型内に収容し、前記金型の入口を加圧パンチで閉塞して押して前記溶融含浸剤が前記湯口を介して前記多孔性予備成形体の空隙内に加圧含浸されるようにする加圧含浸ステップと、
を含むが、
前記多孔性予備成形体の底面と前記金型の底面との間の間隔をA1とし、前記多孔性予備成形体の側面と前記金型の側面との間の間隔をA2とし、前記溶融含浸剤が満たされた高さをC3とし、前記金型の底面から前記多孔性予備成形体の天面までの高さをA3とし、前記金型の底面から前記予備成形体ケースの天面までの高さをB3としたとき、前記加圧含浸ステップが、
5mm≦A1≦110mm、
5mm≦A2≦110mm、
A3+50mm≦C3≦B3×3
の条件下で行われることを特徴とする加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法
【請求項2】
前記加圧含浸ステップが、A3×1.5≦C3の条件下で行われることを特徴とする請求項1に記載の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記加圧含浸ステップが、前記予備成形体ケースの底面と前記金型の底面との間の間隔をB1とし、前記予備成形体ケースの側面と前記金型の側面との間の間隔をB2としたとき、0mm≦B1≦100mm、3mm≦B2≦100mmの条件下で行われることを特徴とする請求項1に記載の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記湯口が前記予備成形体ケースの天面または側面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記加圧含浸ステップ前に、前記金型および前記加圧パンチを100〜350℃に予熱するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記加圧含浸ステップ前に、前記予備成形体アセンブリを550〜950℃に予熱するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法に係り、特に、多孔性予備成形体(preform)が装入されている金型内において前記多孔性予備成形体に溶融含浸剤を加圧含浸させて金属基材複合材料(metal matrix composites;MMC)を得ようとするとき、前記溶融含浸剤の早期固化が前記金型内において不意に行われる場合であっても、前記溶融含浸剤が前記多孔性予備成形体に均一に加圧含浸されるようにするとともに、前記多孔性予備成形体が側圧および浮力により移動されることを防ぐことのできる加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:insulated gate bipolar mode transistor)、パワーコントロールチップ(power control chip)、照明用高出力LEDなど様々な電子部品における放熱問題が非常に重要な点として取り上げられている。このような放熱問題を解決するために、多孔性予備成形体に溶融金属が含浸されてなる金属基材複合材料(metal matrix composite;MMC)が基板として用いられている。金属基材複合材料は、予備成形体の空隙が占める割合などを通じて金属基材の相対的な占有率を制御することにより、様々な製品の特性に合うように必要な熱伝導率、熱膨張係数および強度などが得られるというメリットがある。
【0003】
金属基材複合材料としては、炭素成形体やセラミック成形体の空隙内にアルミニウム溶融合金が加圧含浸されてなるアルミニウム基材炭素複合材料またはアルミニウム基材セラミック複合材料などが挙げられる。
【0004】
図1および図2は、従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図であり、図1は、早期固化の問題点を説明するためのものであり、図2は、側圧および浮力による問題点を説明するためのものである。
【0005】
[早期固化]
まず、図1aに示すように、金型10内にセラミックや炭素粉末などを主原料とする多孔性予備成形体(preform)30を装入し、溶融含浸剤40、例えば、アルミニウム溶湯やアルミニウム合金溶湯を注入した後に、図1bに示すように、金型10の入口を加圧パンチ20で押すと、その加圧力により溶融含浸剤40が多孔性予備成形体30の空隙に浸透して金属基材複合材料、すなわち、アルミニウム基材炭素複合材料またはアルミニウム基材セラミック複合材料が得られる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法は、金型10および加圧パンチ20が溶融含浸剤40に比べて冷たいため、この部分から熱が急激に外部に抜け出て他の個所に比べて温度が下がるため、溶融金属含浸剤40が金型10および加圧パンチ20に当たる個所の近傍Sにおいて不意に早期に固化してしまうという問題が発生する。
【0007】
このように部分的に早期固化が起こると、この部分において溶融含浸剤40の流動が円滑に行われないため、溶融含浸剤40が多孔性予備成形体30の内部に均一に浸透することができず、その結果、金属基材複合材料が熱的および構造的に欠陥を有してしまう。
【0008】
多孔性予備成形体30は自重により金型10の底面に当たるように装入されるが、この場合、金型10の底部において早期固化が起きて多孔性予備成形体30の下部には加圧含浸が行われないことがその代表例である。
【0009】
[側圧および浮力]
側圧は、図2aに示すように、金型10内に多孔性予備成形体30を装入し、溶融含浸剤40を金型10内に注入する過程において溶融含浸剤40の落下衝撃により、または、溶融含浸剤40が注入される個所とそうではない個所との間における溶湯の液面の高さ差により発生し、浮力は、図2bに示すように、多孔性予備成形体30と溶融含浸剤40との間の比重差により発生する。
【0010】
このように側圧および浮力が複合的に働いて多孔性予備成形体30の位置および姿勢が変動され、特に、浮力により多孔性予備成形体30が浮き上がっている状態でこのような状況が発生するため、その移動方向および姿勢変動が予測できないほどに不規則的になる。金型10は、金属など不透明な材質により形成されるため、多孔性予備成形体30のこのような位置および姿勢の変動に作業者は気づき難いため問題は一層深刻になる。
【0011】
加圧含浸が終わると、多孔性予備成形体30を金型10から取り出して不要な部分を切り出す過程を経るが、このように、加圧含浸中に多孔性予備成形体30の位置および姿勢が変動されれば、加圧含浸過程後にどのような部位を不要な部分として切り出さなければならないかが判断し難くなる。実際に用いられるべき部分が切り出されてしまう場合には生産歩留まりが低下され、むしろ切り出されるべき部分が複合材料として用いられる場合には製品の品質に対する信頼性が低下してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、金型内において溶融含浸剤の部分的な早期固化が発生した場合であっても、溶融含浸剤が多孔性予備成形体に均一に加圧含浸されるようにするとともに、多孔性予備成形体が側圧および浮力により移動されることを防ぐことにより、生産歩留まりの向上および複合材料の精度よい製造を図ることのできる加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明に係る加圧含浸用型金属基材複合材料の製造方法は、湯口により外部と連通される空間ポケットが内部に設けられた予備成形体ケースの前記空間ポケットに前記空間ポケットよりも小さい多孔性予備成形体を収納して予備成形体アセンブリを準備する予備成形体アセンブリ準備ステップと、前記予備成形体アセンブリおよび溶融含浸剤を金型内に収容し、前記金型の入口を加圧パンチで閉塞して押して前記溶融含浸剤が前記湯口を介して前記多孔性予備成形体の空隙内に加圧含浸されるようにする加圧含浸ステップと、を含むが、前記多孔性予備成形体の底面と前記金型の底面との間の間隔をA1とし、前記多孔性予備成形体の側面と前記金型の側面との間の間隔をA2とし、前記溶融含浸剤が満たされた高さをC3とし、前記金型の底面から前記多孔性予備成形体の天面までの高さをA3とし、前記金型の底面から前記予備成形体ケースの天面までの高さをB3としたとき、前記加圧含浸ステップが、
5mm≦A1≦110mm、5mm≦A2≦110mm、A3+50mm≦C3≦B3×3の条件下で行われることを特徴とする。
【0014】
前記加圧含浸ステップは、A3×1.5≦C3の条件下で行われることがさらに好ましい。
【0015】
前記加圧含浸ステップは、前記予備成形体ケースの底面と前記金型の底面との間の間隔をB1とし、前記予備成形体ケースの側面と前記金型の側面との間の間隔をB2としたとき、0mm≦B1≦100mm、3mm≦B2≦100mmの条件下で行われることがさらに好ましい。
【0016】
前記湯口が前記予備成形体ケースの天面または側面に形成されてもよい。
前記加圧含浸ステップ前に、前記金型および前記加圧パンチを100〜350℃に予熱するステップを含むことが好ましい。
【0017】
前記加圧含浸ステップ前に、前記予備成形体アセンブリを550〜950℃に予熱するステップを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金型や加圧パンチに当たる部分において溶融含浸剤の早期固化が発生するとはいえ、実際に加圧含浸が行われる空間ポケットにおいては熱が外部に流出されることが予備成形体ケースによりかなり遮断され、且つ、多孔性予備成形体が予備成形体ケースにより金型や加圧パンチからある程度離隔した状態を維持する。このため、加圧含浸が行われる個所においては溶融含浸剤の流動性が依然として円滑に行われる。
【0019】
また、予備成形体アセンブリが浮力の影響を克服する程度に十分な重量を有するように設計されれば、多孔性予備成形体が側圧および浮力により移動されることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a図1a、従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図1b図1b、従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図2a図2aは、従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図2b図2bは、従来の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図3a図3aは、本発明に係る加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図3b図3bは、本発明に係る加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図である。
図4図4は、図3の予備成形体アセンブリ60を説明するための図である。
【符号の説明】
【0021】
10:金型
20:加圧パンチ
30:多孔性予備成形体
40:溶融含浸剤
50、51、52:予備成形体ケース
53:空間ポケット
54:湯口
55:受け台
56:ボルト
60:予備成形体アセンブリ
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。下記の実施形態は、本発明の内容を理解するために提示されたものに過ぎず、当分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内において多くの変形が可能であるということは理解できるであろう。よって、本発明の権利範囲がこのような実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0023】
図3は、本発明に係る加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法を説明するための図であり、図4は、図3の予備成形体アセンブリ60を説明するための図である。
【0024】
[予備成形体アセンブリ60の準備ステップ]
多孔性予備成形体30を直接的に金型10に装入すると、側圧および浮力により多孔性予備成形体30の位置および姿勢が変動される問題が発生し、また、このような位置および姿勢の変動などに起因して溶融含浸剤40が早期固化される個所に多孔性予備成形体30が移動して位置して不均一な含浸が行われる虞があるため、本発明は。図4に示すように、予備成形体ケース50内に多孔性予備成形体(perforate preform)30が収納されてなる予備成形体アセンブリ(preform assembly)60を金型10に装入することを一つの特徴とする。
【0025】
予備成形体ケース50には、湯口54により外部と連通される空間ポケット53が内部に設けられ、多孔性予備成形体30は、空間ポケット53内に収納される。空間ポケット53は1つであってもよく、同図に示すように、複数であってもよい。空間ポケット53を複数設けると、従来とは異なり、一回の加圧含浸工程により複数の金属基材複合材料を製造することができるというメリットがある。
【0026】
空間ポケット53内において多孔性予備成形体30への加圧含浸が行われることが予想されるため、空間ポケット53と多孔性予備成形体30との間には溶融含浸剤が流れ込むように隙間が存在することが好ましく、このため、空間ポケット53は、多孔性予備成形体30よりも僅かに大きく形成されることが好ましい。
【0027】
溶融含浸剤40は、空間ポケット53の上部若しくは側面に流れ込む虞があるため、湯口54は、製品の品質および生産性を考慮して、予備成形体ケース50の天面や側面などに形成されてもよい。図面には、天面に形成される場合が示されている。
【0028】
空間ポケット53に多孔性予備成形体30を容易に収納するように、予備成形体ケース50には、複数のケース51、52がボルト56や溶接などにより組み付けられることが好ましい。
【0029】
予備成形体ケース50の底面の全体が金型10の底面に当たると、予備成形体アセンブリ60の熱が金型10の底面を介して外部に早く放出されてしまうため好ましくない。このため、これを念頭に置いて、予備成形体ケース50の底面の下に受け台55を設けて予備成形体ケース50が受け台55により支持されながら金型10の底面から僅かに浮き上がるように設けることが好ましい。
【0030】
しかしながら、場合によっては、予備成形体ケース50の下に溶融含浸剤40が流れ込む場合、予備成形体ケース50と金型10の底面との間において溶融含浸剤40が早期に固化されて溶融含浸剤40の流動が妨げられる虞があり、これは、溶融含浸剤40の無駄使いの原因になるため、受け台55を設けない方がよい。この場合、多孔性予備成形体30の底面と金型10の底面との間の間隔(図3のA1)が特に十分に確保されなければならない。
【0031】
[予熱ステップ]
加圧含浸に用いられる構成要素としては、金型10と、加圧パンチ20および予備成形体アセンブリ60が挙げられるが、これらは、溶湯、すなわち、溶融含浸剤40よりも冷たいため、この近傍において溶融含浸剤40の早期固化が起こる虞がある。このため、このような早期固化を防ぐために、加圧含浸前に金型10と、加圧パンチ20および予備成形体アセンブリ60を予熱する過程を経ることが好ましい。
【0032】
金型10及び加圧パンチ20はその素材が鋼材であるため、予熱はこのような鋼材の剛性が保たれる範囲内において行われざるを得ず、具体的に、100〜350℃で行われることが好ましい。
【0033】
予備成形体アセンブリ60の場合には、予備成形体アセンブリ60内において加圧含浸が行われることが予想されるため、金型10や加圧パンチ20よりも高い温度に予熱されることが好ましく、その温度は、溶融含浸剤40の溶融温度辺りやそれよりも高い550〜950℃であることが好ましい。例えば、溶融含浸剤40としてアルミニウム溶湯が用いられ、予備成形体30として炭素成形体が用いられる場合、予備成形体アセンブリ60は約550℃を上回って予熱されなければならない。
【0034】
[加圧含浸ステップ]
前記予熱過程が終わると、図3aに示すように、予備成形体アセンブリ60を金型10内に装入し、溶融含浸剤40を注入する。すると、まだ加圧含浸が行われていない状況ではあるが、溶融含浸剤40が湯口54を介して空間ポケット53に染み込んで位置する。次いで、図3bに示すように、金型10の入口を加圧パンチ20で閉塞して押すと、その加圧力により溶融含浸剤40が空間ポケット53内において多孔性予備成形体30の空隙内に加圧含浸される。
【0035】
予備成形体ケース50としては、溶融含浸剤40よりも大きい比重を有するものが用いられることが予想されるため、加圧含浸過程において溶融含浸剤40の側圧や浮力により予備成形体ケース50の位置や姿勢が変動されることは発生しない。また、空間ポケット53は、溶融含浸剤40が流動可能なように多孔性予備成形体30よりは大きいとはいえ、多孔性予備成形体30の姿勢が回転などにより変動される程度に大きくはないため、多孔性予備成形体30の姿勢が空間ポケット53内において変動されることもなくなる。
【0036】
このように、本発明においては、多孔性予備成形体30を直接的に金型10に装入するわけではなく、予備成形体アセンブリ60を金型10に装入するため、側圧や浮力などにより発生する溶融含浸剤40の揺動により多孔性予備成形体30の位置や姿勢が不意に変動されることが防がれる。
【0037】
一方、上記のように予熱過程を経るとしても、金型10および加圧パンチ20は依然として溶融含浸剤40の温度よりは遥かに低いため、依然として、従来と同様に、この部分において熱が急速に外部に抜け出て溶融金属含浸剤40が金型10および加圧パンチ20に当たる個所の近傍において早期固化が起こる。このような早期固化は、図3aに示すように、加圧含浸がまだ行われていない溶融含浸剤40の注入後から直ちに発生する。
【0038】
このため、金型10内に溶融含浸剤40を注入してから含浸を始めるまでの時間を最大限に短縮することが重要であり、また、多孔性予備成形体30を金型10および加圧パンチ20からある程度離隔させて設けることが重要である。
【0039】
具体的に、多孔性予備成形体30の底面と金型10の底面との間の間隔をA1とし、多孔性予備成形体30の側面と金型10の側面との間の間隔をA2としたとき、5mm≦A1≦110mm、5mm≦A2≦110mmの条件下で加圧含浸が行われることが好ましい。
【0040】
前記A1およびA2の値が小さ過ぎると、金型10の低い温度が予備成形体アセンブリ60に影響を及ぼして空間ポケット53において溶融含浸剤40が早期に固化されて加圧含浸の過程において溶湯の流れが悪化してしまうという問題が発生する。
【0041】
また、前記A1およびA2の値が大き過ぎると、金型10が大型化されなければならないため、溶融含浸剤40の投入量が増えて溶融含浸剤40の注入時間が長引いてしまう結果、加圧含浸を行おうとするときに既に全体の溶湯の温度が低下してしまうという問題が発生する。このため、上述したように適当に多孔性予備成形体30を金型10から離隔させることが好ましい。
【0042】
このとき、予備成形体ケース50も金型10から適当に離隔しなければならないが、予備成形体ケース50の底面と金型10の底面との間の間隔をB1とし、予備成形体ケース50の側面と金型10の側面との間の間隔をB2としたとき、予備成形体ケース50は、0mm≦B1≦100mm、3mm≦B2≦100mmの条件下で前記加圧含浸が行われることが好ましい。前記B1が0である場合には、予備成形体ケース50が受け台55なしにそのまま金型10の底面に当たる。
【0043】
一方、溶融含浸剤40が満たされた高さをC3とし、金型10の底面から多孔性予備成形体30の天面までの高さをA3としたとき、前記C3とA3との間の差分が小さ過ぎると、予備成形体アセンブリ60の上部にある溶融含浸剤40が薄過ぎて問題となる。
【0044】
具体的に、予備成形体アセンブリ60の上部にある溶融含浸剤40が薄過ぎると、加圧パンチ20により溶融含浸剤40に働く力のうち下向きの力のベクトル成分が溶融含浸剤40に働き難いため、溶融含浸剤40が湯口54に正常に流れ込まない結果、全体的な加圧含浸速度が非常に遅く、このとき、加圧パンチ20に当たる個所の近傍において溶融含浸剤40の早期固化が起きて溶融含浸剤40の流動性が低下する現象も発生するため、前記加圧含浸速度の低下がこのような早期固化の度合いを倍加させ、その結果、これらの複合的な作用により湯口54への溶融含浸剤40の流れ込みが非常に困難になるという問題が発生する。
【0045】
空間ポケット53が複数設けられる場合、各空間ポケット53ごとにこのような現象の度合いが相違するため、前記C3とA3との間の差分が小さ過ぎると、完成製品の信頼性の側面からみて好ましくない。
【0046】
また、予備成形体アセンブリ60の上部にある溶融含浸剤40が薄過ぎると、加圧パンチ20と予備成形体アセンブリ60との間の距離が短過ぎて加圧パンチ20による加圧力が溶融含浸剤40により打ち消されずに実質的に直接的に予備成形体アセンブリ60に働いてしまい、これは、予備成形体ケース50や多孔性予備成形体30の形状の変形または崩壊につながるという問題も発生する。
【0047】
逆に、前記C3とA3との間の差分が大き過ぎると、必要以上に多量の溶融含浸剤40を注入する結果となり、この場合、溶融含浸剤40の注入時間が長引いて全体の溶湯の温度が低下し、これは、溶融含浸剤40の無駄遣いによる生産コストの増加につながる。
【0048】
このような点を考慮して、前記C3は、A3+50mm≦C3、A3×1.5≦C3、C3≦B3×3の条件を満たす範囲にあることが好ましい。ここで、B3は、金型10の底面から予備成形体ケース50の天面までの高さである。
【0049】
上述したように、本発明によれば、金型10や加圧パンチ20に当たる個所において溶融含浸剤40の早期固化が起きるとはいえ、実際に加圧含浸が行われる空間ポケット53においては熱が外部に流出されることが予備成形体ケース50によりかなり遮断され、且つ、多孔性予備成形体30が予備成形体ケース50により金型10や加圧パンチ20からある程度離隔した状態を維持する。このため、加圧含浸が行われる個所においては溶融含浸剤40の流動性が依然として円滑に行われる。
【0050】
また、予備成形体アセンブリ60が浮力の影響を克服する程度に十分な重量を有するように設計されれば、多孔性予備成形体30が側圧および浮力により移動されることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の加圧含浸型金属基材複合材料の製造方法は、様々な電子部品の放熱問題を解消するための金属基材複合材料の製造に好適に使用可能であり、これにより、金属基材複合材料の生産効率がかなり改善されることが期待される。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4