特許第5965084号(P5965084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5965084トリフルオロアセチル酢酸からの6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5965084
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】トリフルオロアセチル酢酸からの6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/803 20060101AFI20160721BHJP
【FI】
   C07D213/803
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-563103(P2015-563103)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2014065366
(87)【国際公開番号】WO2015007837
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】13177234.5
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/856,262
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13195611.2
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】13198150.8
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502336151
【氏名又は名称】ロンザ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サラゴサ・デールバルト,フロレンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベルシエ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】テシュラー,クリストフ
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−519803(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059103(WO,A2)
【文献】 HETEROCYCLES,1997年,46,pp.129-132
【文献】 SYNTHESIS,2003年,10,pp.1531-1540
【文献】 DATABASE CASREACT ON STN, AN 152:357836, CHEMISTRY OF HETEROCYCLIC COMPOUNDS, 2009, 45(9), 1147-1148
【文献】 DATABASE CASREACT ON STN, AN 145:7986, RUSSIAN JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY, 2005, 41(9), 1367-1373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/803
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップ(StepS1)を含む、式(I);
【化1】
の化合物の調製方法であって、
前記ステップ(StepS1)が、反応(ReacS1)を含み;
前記反応(ReacS1)が、化合物(II)と、式(III)の化合物および式(IV)の化合物との反応であり;
前記化合物(II)が、式(II−1)の化合物、式(II−2)の化合物、式(IIa)の化合物およびそれらの混合物
【化2】
(式中、
R1は、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C(O)−O−C1−4アルキル、CH=CH、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され;
R1のC1−10アルキルは、置換されていないまたは、ハロゲン、OH、O−C(O)−C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R1のベンジル、フェニルおよびナフチルは互いに独立に、置換されていないまたは、ハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
Yは、C1−6アルコキシ、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、NH、NHR4およびN(R4)R5からなる群から選択され;
R4およびR5は、同一であるまたは異なっており、互いに独立にC1−6アルキルであるまたは一緒になってテトラメチレンもしくはペンタメチレン鎖を表し;
R10は、C1−8アルキル、C3−10シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
フェニルは、置換されていないまたは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキルおよびフェニルからなる群から互いに独立に選択される1もしくは2個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R20は、C1−6アルキル、O(CO)CH、O(CO)CFおよびOSOHからなる群から選択される)
からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
反応(ReacS1)が、ワンポットで実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、C1−5アルキル、C3−6シクロアルキル、C(O)−O−C1−4アルキル、CH=CH、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択され;
R1のC1−5アルキルが、置換されていないまたは、ハロゲン、OH、O−C(O)−CH、O−C1−5アルキル、S−C1−5アルキル、S(O)−C1−5アルキル、S(O)−C1−5アルキル、O−C1−4アルキレン−O−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R1のベンジルおよびフェニルが互いに独立に、置換されていないまたは、ハロゲン、C1−2アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Yが、C1−6アルコキシ、NHR4およびN(R4)R5からなる群から選択され;
R4およびR5が、同一であるまたは異なっており、互いに独立にC1−6アルキルであるまたは一緒になってテトラメチレンもしくはペンタメチレン鎖を表す、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
R10が、C1−8アルキル、C3−10シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
フェニルが、置換されていないまたは、ハロゲン、シアノ、ニトロおよびC1−6アルキルからなる群から互いに独立に選択される1もしくは2個の同一であるまたは異なる置換基で置換される、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
R20が、C1−4アルキル、O(CO)CH、O(CO)CFおよびOSOHからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
化合物(II)が、式(II−1)の化合物、式(II−2)の化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
反応(ReacS1)が溶媒中で実行され;前記溶媒が溶媒(SolvS1)であり、前記溶媒(SolvS1)が、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMF、DMA、DMSO、スルホラン、THF、2−メチル−THF、3−メチル−THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
反応(ReacS1)が酸の存在下で実行され、前記酸が化合物(AddS1)であり;前記化合物(AddS1)が、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、硫酸、塩酸、無水酢酸、塩化アセチル、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロアセチル酢酸およびオルトエステルからの6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の調製方法ならびに医薬、化学または農薬製品の調製のためのそれらの使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
2−トリフルオロメチルピリジンおよび6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体は、生物学的に活性な化合物を調製するための中間体である。例えば、WO00/39094A1は、除草剤としてのトリフルオロメチルピリジンを開示しており、WO2006/059103A2は、医薬、化学および農薬製品の製造における中間体としてのトリフルオロメチルピリジンを開示しており、WO2008/013414A1は、バニロイド受容体アンタゴニストとしてのトリフルオロメチルピリジンを開示しており、WO2012/061926A1は、カルシウムチャンネル遮断薬としてのトリフルオロメチルピリジンを記載している。
【0003】
6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の調製のための一般的な経路は、Okadaら、Heterocycles 1997、46、129−132頁によって最初に報告されており、ほかの人によって若干修正されているだけである。一般的な合成戦略をスキーム1:
【0004】
【化1】
にまとめる。
【0005】
この経路は、エチルビニルエーテルが非常に可燃性であり、したがって取り扱いが困難であるので、また、トリフルオロアセチル化エノールエーテルおよびトリフルオロアセチル化エナミン中間体が不安定であり、長期間保存することができないので、6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の大規模生産について欠点を有している。さらに大部分のビニルエーテルは変異原性である。
【0006】
Volochnyukら、Synthesis 2003、10、1531−1540頁は、4位において、トリフルオロメチル残基で置換されたピリジンの調製方法を開示している。このピリジンは二環式複素環の一部である。この方法は、トリフルオロアセチルケトンまたはトリフルオロアセチル酢酸のエチルエステルと反応するアミノピラゾールで開始する。この方法は、Volochnyukの6位が、Volochnuykの二環式複素環のピラゾール部分とピリジン部分を連結する環内C原子であるので、基本的には、本発明の所望の6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体を調製するのに適していない。この開示は、トリフルオロアセチル酢酸の使用については全く言及していない。
【0007】
WO2004/078729A1は、とりわけ、ビニルエーテルから調製される4−アルコキシ−1,1,1−トリフルオロブタ−3−エン−2−オンからの式(Xa);
【0008】
【化2】
の化合物の調製を開示しており、実施例P2の18頁には、式(I−2)
【0009】
【化3】
の化合物の調製のための4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロブタ−3−エン−2−オンの使用を開示している。
【0010】
式(Xa)の化合物および式(I−2)の化合物は、除草剤の調製のための中間体である。
【0011】
F.Swarts、Bulletin de la Classe des Sciences、Academie Royale de Belgique、1926、12、721−725頁は、本発明において使用される特定の基質の調製を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2000/039094号
【特許文献2】国際公開第2006/059103号
【特許文献3】国際公開第2008/013414号
【特許文献4】国際公開第2012/061926号
【特許文献5】国際公開第2004/078729号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Okadaら、Heterocycles 1997、46、129−132頁
【非特許文献2】Volochnyukら、Synthesis 2003、10、1531−1540頁
【非特許文献3】F.Swarts、Bulletin de la Classe des Sciences、Academie Royale de Belgique、1926、12、721−725頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体の調製のための改善された手順の必要性がある。
この必要性は、以下に概要を示す本発明の方法によってかなえられる。
【0015】
R.W.Leiby、J.Org.Chem.1985、50、2926−2929頁は、アントラニレートとオルトエステルの反応を開示している。それ故、構造的にアントラニレートに匹敵するエナミンはオルトエステルとも反応し、したがって、トリフルオロメチルピリジンとなるトリフルオロアセチル酢酸との反応にはもはや利用できなくなることが予想される。
予想外に、オルトエステル、エナミンおよびトリフルオロアセチル酢酸を含む混合物中で、トリフルオロメチルピリジンの生成が観察された。
【0016】
従来技術と比較して、本発明の方法はいくつかの利点を提供する:重要なことには、例えば、WO2004/078729A1の16頁、8〜9行に記載されているような、ビニルエーテルからMoriguchi、J.Org.Chem.、1995、60、3523−3528頁にしたがって調製される、例えば、WO2004/078729A1の実施例P2における物質(3)であるWO2004/078729A1の4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロブタ−3−エン−2−オン、すなわち1−エトキシ−3−オキソ−4−トリフルオロブテンの形態で使用されるような、ビニルエーテル、トリフルオロアセチル化エノールエーテル中間体または単離されたトリフルオロアセチル化エナミン中間体を必要としない。さらに、本発明の方法は、公知の手順と比較して合成ステップの数を削減し、これは全体的なコストを削減することになる。
【0017】
以下の記載において、別段の記述のない限り、以下の意味を用いる:
周囲圧力 通常1バール(天気によって変わる);
アルキル 直鎖状または分枝状アルキルを意味し、アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどが含まれる;
環状アルキルまたはシクロアルキルには、シクロ脂肪族、ビシクロ脂肪族および三環脂肪族残基が含まれ;「シクロアルキル」の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニルおよびアダマンチルが含まれる;
アルコキシ アルキル−O、すなわち脂肪族アルコールから酸素結合水素を取り外して得られる基を意味する;
(アルコキシ)アルコキシは、そのアルキル基が1つの追加的なアルコキシ基で置換されているアルコキシ基を指す;(アルコキシ)アルコキシの例には式MeO−CH−O−を有するメトキシメトキシ、式MeO−CH−CH−O−を有する2−(メトキシ)エトキシおよび式(C)CH−O−CH−CH−O−を有する2−(シクロプロピルメトキシ)エトキシが含まれる;
Ac アセチル;
tBu 第三ブチル;
塩化シアヌル 2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン;
DABCO 1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;
DMF N,N−ジメチルホルムアミド;
DMA N,N−ジメチルアセトアミド;
DMSO ジメチルスルホキシド;
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
ハロゲン F、Cl、BrまたはJ、好ましくはF、ClまたはBrを意味する;
ヘミアセタールは、アルコール、例えばメタノールまたはエタノールのケトンまたはアルデヒドとの付加体を指し;ヘミアセタールは、水のエノールエーテルへの付加によって得ることもできる;例えば、メタノールのトリフルオロアセトンとのヘミアセタールはFC−C(OH)(OCH)−CHである;
ヘキサン ヘキサン異性体の混合物;
水和物 水のケトンまたはアルデヒドとの付加体を指す。例えば、トリフルオロアセトンの水和物はFC−C(OH)−CHである;
LDA リチウムジイソプロピルアミド
NMP N−メチル−2−ピロリドン;
スルファミン酸 HO−SO−NH
THF テトラヒドロフラン;
トリフルオロアセトン 1,1,1−トリフルオロプロパン−2−オン;
キシレン 1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼンまたはそれらの混合物。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明の対象は、ステップ(StepS1)を含む、式(I);
【0019】
【化4】
の化合物の調製方法であって、
前記ステップ(StepS1)が、反応(ReacS1)を含み;
前記反応(ReacS1)が、式(II)の化合物と、式(III)の化合物および式(IV)の化合物との反応であり;
前記式(II)の化合物が、式(II−1)の化合物、式(II−2)の化合物、式(IIa)の化合物およびそれらの混合物;
【0020】
【化5】
(式中、
R1は、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、C(O)−O−C1−4アルキル、CH=CH、ベンジル、フェニルおよびナフチルからなる群から選択され;
R1のC1−10アルキルは、置換されていないまたは、ハロゲン、OH、O−C(O)−C1−5アルキル、O−C1−10アルキル、S−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、S(O)−C1−10アルキル、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、C3−8シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R1のベンジル、フェニルおよびナフチルは互いに独立に、置換されていないまたは、ハロゲン、C1−4アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
Yは、C1−6アルコキシ、O−C1−6アルキレン−O−C1−6アルキル、NH、NHR4およびN(R4)R5からなる群から選択され;
R4およびR5は、同一であるまたは異なっており、互いに独立にC1−6アルキルであるまたは一緒になって、テトラメチレンもしくはペンタメチレン鎖を表し;
R10は、C1−8アルキル、C3−10シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
前記フェニルは、置換されていないまたは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−6アルキルおよびフェニルからなる群から互いに独立に選択される1もしくは2個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R20は、C1−6アルキル、O(CO)CH、O(CO)CFおよびOSOHからなる群から選択される)
からなる群から選択される、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
式(II)の化合物、式(III)の化合物および式(IV)の化合物はステップ(StepS1)および反応(ReacS1)において同時に存在する。したがって、反応(ReacS1)は好ましくはワンポットで実行される。すなわち、反応(ReacS1)はワンポット反応である。
【0022】
好ましくは、R1は、C1−5アルキル、C3−6シクロアルキル、C(O)−O−C1−4アルキル、CH=CH、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択され;
R1の前記C1−5アルキルは、置換されていないまたは、ハロゲン、OH、O−C(O)−CH、O−C1−5アルキル、S−C1−5アルキル、S(O)−C1−5アルキル、S(O)−C1−5アルキル、O−C1−4アルキレン−O−C1−4アルキル、C3−6シクロアルキルおよび1,2,4−トリアゾリルからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
R1の前記ベンジルおよび前記フェニルは互いに独立に、置換されていないまたは、ハロゲン、C1−2アルコキシ、NOおよびCNからなる群から選択される1、2、3、4もしくは5個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
より好ましくは、R1は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロプロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、C(O)−O−CH、C(O)−O−C、CH−O−C(O)−CH、CH−O−CH、CH−S−CH、CH−S(O)−CH、CH−CH−O−CH、CH−O−CH−CH−O−CH、CH−O−CH−CH−O−CH−CH、CH=CHおよびフェニルからなる群から選択される。
さらにより好ましくは、R1は、メチル、エチル、クロロメチル、ブロモメチル、CH−O−C(O)−CHおよびCH−O−CH−CH−O−CHからなる群から選択され;
特に、R1は、メチル、クロロメチルおよびCH−O−CH−CH−O−CHからなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、Yは、C1−6アルコキシ、NHR4およびN(R4)R5からなる群から選択され;
R4およびR5は、同一であるまたは異なっており、互いに独立にC1−6アルキルであるまたは一緒になってテトラメチレンもしくはペンタメチレン鎖を表し;
より好ましくは、Yは、メトキシおよびエトキシからなる群から選択される。
【0024】
好ましくは、R10は、C1−8アルキル、C3−10シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
前記フェニルは、置換されていないまたは、ハロゲン、シアノ、ニトロおよびC1−6アルキルからなる群から互いに独立に選択される1もしくは2個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
より好ましくは、R10は、C1−8アルキル、C3−10シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、
前記フェニルは、置換されていないまたはハロゲンおよびC1−6アルキルからなる群から互いに独立に選択される1もしくは2個の同一であるまたは異なる置換基で置換されており;
さらにより好ましくは、R10は、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され;
特に、R10は、C1−4アルキルからなる群から選択され;
より特別には、R10はメチルまたはエチルである。
【0025】
好ましくは、R20は、C1−4アルキル、O(CO)CH、O(CO)CFおよびOSOHからなる群から選択され、
より好ましくは、R20は、メチル、エチル、O(CO)CH、O(CO)CFおよびOSOHからなる群から選択され;
さらにより好ましくは、R2はメチルまたはエチルである。
【0026】
好ましくは、式(II)の化合物は、式(II−1)の化合物、式(II−2)の化合物およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
好ましくは、モル比[式(II)の化合物:式(III)の化合物]は、[1:0.9]から[1:100]、より好ましくは[1:0.9]から[1:10]、さらにより好ましくは[1:0.9]から[1:5]、特に[1:0.9]から[1:2.5]である。
【0028】
好ましくは、モル比[式(II)の化合物:式(IV)の化合物]は[20:1]から[1:20]、より好ましくは[10:1]から[1:10]、さらにより好ましくは[10:1]から[1:5]、特に[10:1]から[1:3]である。
【0029】
反応(ReacS1)は溶媒中で実行することができ;
好ましくは、前記溶媒は溶媒(SolvS1)であり、前記溶媒(SolvS1)は好ましくは、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMF、DMA、DMSO、スルホラン、THF、2−メチル−THF、3−メチル−THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択され;
より好ましくは、前記溶媒(SolvS1)は、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMF、DMA、スルホラン、THF、2−メチル−THF、3−メチル−THF、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択され;
さらにより好ましくは、前記溶媒(SolvS1)は、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、アセトニトリル、DMF、DMA、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、トルエン、クロロベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
好ましくは、前記溶媒(SolvS1)の重量は、式(II)の化合物の重量の0.1から100倍、より好ましくは1から50倍、さらにより好ましくは1から25倍である。
【0030】
反応(ReacS1)は酸の存在下で実行することができ、
好ましくは、前記酸は化合物(AddS1)であり;
前記化合物(AddS1)は、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、硫酸、塩酸、無水酢酸、塩化アセチル、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択され;
好ましくは、前記化合物(AddS1)は、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸、塩酸、無水酢酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択され;
より好ましくは、前記化合物(AddS1)は、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸、塩酸、無水酢酸、メタンスルホン酸およびそれらの混合物からなる群から選択され;
さらにより好ましくは、前記化合物(AddS1)は、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、モル比[式(II)の化合物:化合物(AddS1)]は、[1:0.001]から[1:100]、より好ましくは[1:0.01]から[1:10]、さらにより好ましくは[1:0.05]から[1:5]、特に[1:0.05]から[1:2]、より特別には[1:0.05]から[1:1]、さらにより特別には[1:0.05]から[1:0.5]である。
【0032】
好ましくは、反応(ReacS1)の反応温度は、−50から250℃、より好ましくは−20から180℃、さらにより好ましくは0から150℃、特に10から150℃、より特別には50から120℃である。
好ましくは、反応(ReacS1)は、周囲圧力から20バール、より好ましくは周囲圧力から15バール、さらにより好ましくは周囲圧力から10バールの圧力で実行する。
好ましくは、反応(ReacS1)の反応時間は、30分から96時間、より好ましくは45分から48時間、さらにより好ましくは45分から36時間、特に45分から24時間、より特別には1時間から24時間である。
【0033】
反応(ReacS1)後、式(I)の化合物は、慣用的な任意の方法で単離することができる。
好ましくは、式(I)の化合物を、反応(ReacS1)後、前記反応(ReacS1)から得られた反応混合物の加水分解および酸性化によって単離する。
加水分解および酸性化は好ましくは、化合物(InAcS1)の添加によって実行し、前記化合物(InAcS1)は無機酸水溶液であり、好ましくは前記化合物(InAcS1)は、塩酸水溶液および硫酸水溶液からなる群から選択される。
加水分解および酸性化の後、任意の溶媒(SolvS1)を好ましくは蒸留によって除去し;式(I)の化合物を好ましくは溶媒(SolvExtrS1)を用いた抽出によって抽出し、前記溶媒(SolvExtrS1)は好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルムおよびそれらの混合物からなる群から選択され;前記抽出に、好ましくは、蒸留による前記溶媒(SolvExtrS1)の除去が後続する。
【0034】
反応(ReacS1)から得られた反応混合物の処理またはNaOHもしくはKOHの水溶液またはメタノール溶液での式(I)の粗生成物の処理による鹸化、続く、酸性化および溶媒(SolvExtrS1)での抽出、好ましくは、続く、蒸留による前記溶媒(SolvExtrS1)の除去によって、Y=OHを有する式(I)の化合物を得ることによる、式(I)の化合物の精製も可能である。
【0035】
式(II)の化合物は公知の化合物であり、公知の方法でまたは公知の方法と同様にして調製することができる。
例えば、式(II−2)の化合物は、F.Swarts、Bulletin de la Classe des Sciences、Academie Royale de Belgique、1926、12、721−725頁によって教示されているように、エチルトリフルオロアセトアセテートの鹸化によって調製することができる。
式(III)の化合物は市販されておりまたは、公知の方法と同様にして調製することができる。
式(IV)の化合物は公知の化合物であり、公知の方法でまたは公知の方法と同様にして、例えばWO2004/078729A1に記載されているようにして調製することができる。
【0036】
本発明のさらなる対象は、上記に定義した通りの、またすべてのその好ましい実施形態の式(I)の化合物による、医薬、化学または農薬製品の調製のための前記式(I)の化合物の使用であって、前記式(I)の化合物は上記したような方法にしたがって、また、すべてのそれらの好ましいそれぞれの実施形態で調製されている、使用である。
【実施例】
【0037】
[実施例1] 反応(ReacS1)
式(II−2)の化合物(0.10g、0.64mmol)、DMF(0.5ml)、式(IV−1)の化合物(74mg、0.64mmol)、式(III−1)の化合物(0.16ml、0.96mmol)
【0038】
【化6】
および硫酸(0.007ml、0.13mmol)の混合物を80℃で3時間撹拌した。反応混合物のサンプルをブライン(3ml)および塩酸水溶液(1N、2ml)で希釈し、酢酸エチル(3ml)で抽出した。減圧下で抽出物を濃縮した後、H NMRによる分析は式(I−1)の化合物を示した。
【0039】
【化7】
H NMR(400MHz、d−DMSO):δ2.78(s,3H)、3.91(s,3H)、7.89(d,J=8Hz,1H)、8.44(d,J=8Hz,1H)。
【0040】
[実施例2] 反応(ReacS1)
式(II−2)の化合物(0.12g、0.77mmol)、トルエン(0.5ml)、式(IV−1)の化合物(113mg、0.98mmol)、式(III−1)の化合物(0.16ml、0.96mmol)およびトリフルオロ酢酸(0.01ml、0.13mmol)の混合物を80℃で17時間撹拌した。反応混合物のサンプルをブライン(3ml)および塩酸水溶液(1N、2ml)で希釈し、酢酸エチル(3ml)で抽出した。減圧下で抽出物を濃縮した後、H NMRによる分析は式(I−1)の化合物を示し、H NMRデータは実施例1で示した通りであった。
【0041】
[実施例3] 反応(ReacS1)
式(II−2)の化合物(0.169g、1.08mmol)、トルエン(0.52ml)、式(IV−2)の化合物(0.26mmol、WO2004/078729A1の実施例P2と同様にして調製した。ここで、冷却した後得られた、式(IV−2)の化合物である3−アミノ−4−メトキシエトキシ−ブタ−2−エン酸エチルエステルを含む反応混合物を取り、減圧下で濃縮し、得られた残留物を本実施例で使用した。この残留物中の式(IV−2)の化合物の含量はH−NMRによって、標準物質に対して決定した)、
【0042】
【化8】
式(III−1)の化合物(0.40ml、2.4mmol)およびトリフルオロ酢酸(0.01ml、0.13mmol)を80℃で18時間撹拌した。混合物を塩酸水溶液(1N、10ml)で希釈し、酢酸エチルで(5mlで1回、2.5mlで2回)抽出し、合わせた抽出物をブライン(5ml)で洗浄し、脱水し(MgSO)、減圧下で濃縮して式(I−2)の化合物を油状物(114mg)として得た。
内部標準(4−ニトロベンズアルデヒド)を用いたH NMRによる定量化により、式(IV)の化合物に関する収率が54%であることが示された。
【0043】
H NMR(400MHz、CDCl):δ1.42(t,J=7Hz,3H)、3.36(s,3H)、3.57(m,2H)、3.71(m,2H)、4.43(q,J=7Hz,2H)、5.02(s,2H)、7.68(d,J=8Hz,1H)、8.26(d,J=8Hz,1H)。
【要約】
本発明は、トリフルオロアセチル酢酸(II)およびオルトエステル(III)からの6−トリフルオロメチルピリジン−3−カルボン酸誘導体(I)の調製方法ならびに医薬、化学または農薬製品の調製のためのそれらの使用を開示する。