(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5965085
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】アリ溝式ワーク把持装置、及びアリ溝式ワーク把持装置付きアリ溝摺動ステージ
(51)【国際特許分類】
G12B 5/00 20060101AFI20160721BHJP
B25B 1/24 20060101ALI20160721BHJP
B25B 1/10 20060101ALI20160721BHJP
B25B 1/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
G12B5/00 T
B25B1/24 Z
B25B1/10 Z
B25B1/02
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-8449(P2016-8449)
(22)【出願日】2016年1月20日
【審査請求日】2016年1月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506177268
【氏名又は名称】株式会社ミラック光学
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(72)【発明者】
【氏名】村松 洋明
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−036771(JP,U)
【文献】
特開2003−300125(JP,A)
【文献】
特開2011−027556(JP,A)
【文献】
実開昭60−029439(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第2171035(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 5/00
B23Q 3/06
B25B 1/00 − 24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
前記支持部に固定され、ワークの一方を把持する第1の把持面を有する固定把持部と、
前記ワークの他方を把持する第2の把持面を有し、アリ溝とアリとの嵌合により前記支持部に対して自在に摺動する摺動把持部と、
雌ネジ孔を有して前記支持部に固定される固定保持部と、
ハンドルに連結され、前記雌ネジ孔に係合して前記摺動把持部に螺合する係合部を有する雄ネジ棒と、を備え、
前記ハンドルの操作により前記固定把持部に対して前記摺動把持部を摺動させ、
前記支持部には、連結されるアリ溝摺動ステージの摺動ユニットに設けられた連結ボルト孔に適合する連結用長孔が設けられることを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項2】
支持部と、
前記支持部を挟んで接続される第1及び第2のアリ溝式ワーク把持ユニットと、からなり、
前記第1及び第2のアリ溝式ワーク把持ユニットは、
ワークの一方を把持する第1の把持面を有する第1及び第2の固定把持部と、
前記ワークの他方を把持する第2の把持面を有し、支持部のアリと嵌合するアリを有し、前記支持部に対して自在に摺動する第1及び第2の摺動把持部と、
前記第1及び第2の固定把持部を貫通し、前記第1及び第2の摺動把持部に係合する第1及び第2の係合部を有し、第1及び第2のハンドルにそれぞれ連結する第1又は第2の雄ネジ棒と、を備え、
前記第1又は第2のハンドルの操作により前記第1又は第2の摺動把持部を前記第1又は第2の固定把持部に対して摺動させ、
前記支持部には、連結されるアリ溝摺動ステージの摺動ユニットに設けられた連結ボルト孔に適合する連結用長孔が設けられることを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアリ溝式ワーク把持装置であって、第1及び第2の前記アリ溝式ワーク把持ユニットは、前記第1及び第2のハンドルが前記支持部を挟んで相互に逆向きになるように設けられることを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアリ溝式ワーク把持装置であって、前記摺動把持部には、与圧調整ネジ用の孔が設けられ、与圧調整ネジの締め込みにより前記摺動把持部の走行中のガタを調整することを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアリ溝式ワーク把持装置であって、前記摺動把持部には、ストッパ用の孔が設けられ、ストッパを差し込むことで前記摺動把持部から前記雄ネジ棒が抜けるのを防止し、前記ストッパを外すことで、異なる第2の把持面を有する他の摺動把持部に交換自在であることを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアリ溝式ワーク把持装置であって、前記支持部の側面には、第1の把持面と第2の把持面とが密着した位置を原点とする目盛が設けられることを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアリ溝式ワーク把持装置であって、
前記支持部に設けられる前記連結用長孔には、前記連結用長孔と交差する方向に突起する連結ボルト孔が設けられ、前記連結ボルト孔のピッチと異なるピッチの連結ボルト孔にも適合することを特徴とするアリ溝式ワーク把持装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のアリ溝式ワーク把持装置が連結されたアリ溝式ワーク把持装置付きアリ溝摺動ステージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリ溝式ワーク把持装置、及びそのアリ溝式ワーク把持装置が取り付けられたアリ溝摺動ステージに係り、特に、アリ溝式の摺動機構を用いてワークを把持して固定するアリ溝式ワーク把持装置、及びそのアリ溝式ワーク把持装置によりワークを把持して固定し、アリ溝式の摺動機構を用いてワークの位置出しをするアリ溝摺動ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
アリ溝摺動ステージは、主としてCCDカメラやセンサなどの電機・電子機器、レンズや顕微鏡等の光学機器、LEDなどの照明機器といった精密機器に用いられ、精密な位置決めやピント合わせなどの位置調整用のステージとして用いられている。さらに、アリ溝摺動ステージにこれらの精密機器を取り付けた後においてもその位置がアリ溝摺動ステージにより微調整できる。
【0003】
このアリ溝摺動ステージは、目盛による精密な位置調整が可能であるため、上述した精密機器に限らず、広範囲な物品に用いられる。すなわち、位置調整などの対象となる物品をアリ溝摺動ステージのステージ面上に固定し、アリ溝摺動機構により精密な位置決めが行われる。本明細書では、アリ溝式ワーク把持装置の対象となる物品を「ワーク」と称する。この「ワーク」は、一般的な意味である工作機械の加工対象物に限らず、例えば、上述した精密機器の部品、顕微鏡で観察する試料用のプレパラート、表面キズを検査する供試体など、特に機械加工が行われない対象物も含まれる。
【0004】
図11に、一般的なアリ溝摺動ステージ30の構成を示す。アリ溝摺動ステージ30は、台形状のアリ溝31を有する固定ユニット33に対し、台形状のアリ32を有する摺動ユニット34が移動可能に嵌合される。この固定ユニット33は、固定用孔35を有するベース39を介して土台(図示せず)に固定される。また、摺動ユニット34は、治具取付用孔36に挿入されるボルト(図示せず)を介してワーク固定治具(図示せず)に接続される。この摺動ユニット34は、ハンドル37を回転させることにより図中の矢印の方向に移動する。この移動は、アリ溝摺動ステージ30の内部に、送りねじ(図示せず)、又は、ラックアンドピニオン(図示せず)による駆動機構が組み込まれていることによる。そして、その移動量は、
図11の固定ユニット33及び摺動ユニット34の裏面側に対になって設けられる目盛38により測定される。これらの駆動機構により、ハンドル37の回転が、摺動ユニット34の水平方向への移動に変換される。さらに、摺動ユニット34をその位置の固定する摺動固定ネジ40、摺動ユニット34の滑り具合を調整する与圧調整ネジ41が設けられる。
【0005】
このアリ溝摺動ステージ30には精密機器や治具が取り付けられる治具取付用孔36が設けられている。ユーザは、対象となるワークをステージとなる摺動ユニット34に固定するために固定用治具を製作する場合がある。すなわち、自社でアリ溝摺動ステージ30を使用する場合に、対象となるワークに合わせて固定用治具を自社製作する。そして、製作された固定用治具は、ボルトなどの締結具を介して治具取付用孔36に固定される。
【0006】
特許文献1には、手動ステージの実施例としてアリ溝摺動ステージの詳細が開示されている。特に、固定部品に対する摺動部品の摺動を固定する摺動固定ネジ、及び摺動部品の摺動の程度を調整する摺動調節ネジなどの機能が記載されている。
【0007】
一方、機械加工の分野などでワークを加工する際にワーク自体を挟んで固定する方法として、バイス又は万力と称される治具が用いられるのが一般的である。特に、「ミニチュアバイス」と称されるワークを把持する小型固定治具が知られている。このミニチュアバイスは、ハンドルを回して固定用ブロックを移動させてワークを挟み込む治具である。
【0008】
また、特許文献2には、複雑な角度斜面のついた形状のワークの固定加工などを安定的にかつ能率的に行うバイスが開示されている。ここでは、固定側又は移動側の口金が、その加え面が傾斜面である台形断面として本体側及び可動体側においてそれぞれ滑り嵌め機構を形成するとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4505535号公報
【特許文献2】実開平6-9872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のアリ溝摺動ステージのユーザは、対象となるワークをアリ溝摺動ステージの面上に固定するために自ら治具を設計、製作するのが一般的であった。これは、アリ溝摺動ステージに取り付ける物品の構成や形状が多様であるためユーザ側でユーザが自ら設計、製作せざるを得ないからであった。
【0011】
しかし、ユーザが自らワーク固定用治具を設計、製作する場合に、対象となる物品の構成、仕様、形状、寸法などのバリエーションが多岐にわたる場合には、汎用的な治具を設計、製作するのが難しいという問題がある。また、アリ溝摺動ステージについても、多様な型式があり、また、それらの形状や寸法も異なるが、それに対応する汎用的な治具を設計、製作するのが難しいという問題がある。
【0012】
また、上述した「ミニチュアバイス」の場合には、固定用ブロックを移動させるための摺動ガイドを2本の細いシャフトだけに頼っているためガタが大きく簡易なホビー用品の構成である。従って、加工精度が要求される精密機械や機械加工の場合には適さないという問題がある。また、このミニチュアバイスは、アリ溝摺動ステージへの取り付けが全く不可であるという問題がある。
【0013】
さらに、一般的な万力についても加工精度が要求される精密機械や機械加工の場合には適さないという問題があり、アリ溝摺動ステージへの取り付けが全く不可であるという問題がある。
【0014】
本願発明の一つの目的は、かかる課題を解決し、各サイズのアリ溝摺動ステージに簡易に接続でき、多様な形状のワークを高い精度で把持するアリ溝式ワーク把持装置を提供することである。
【0015】
また、本願発明の他の目的は、かかる課題を解決し、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置は、支持部と、支持部に固定され、ワークの一方を把持する第1の把持面を有する固定把持部と、ワークの他方を把持する第2の把持面を有し、アリ溝とアリとの嵌合により支持部に対して自在に摺動する摺動把持部と、雌ネジ孔を有して支持部に固定される固定保持部と、ハンドルに連結され、雌ネジ孔に係合して摺動把持部に螺合する係合部を有する雄ネジ棒と、を備え、ハンドルの操作により固定把持部に対して摺動把持部を摺動させ
、支持部には、連結されるアリ溝摺動ステージの摺動ユニットに設けられた連結ボルト孔に適合する連結用長孔が設けられることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、支持部に固定された固定把持部と支持部に対して自在に摺動する摺動把持部とによりワークが把持される。この摺動把持部は支持部に対してアリ溝とアリとの嵌合により摺動するため、ガタが発生せず精度の高い動作でワークを把持できる。また、ハンドルに接続された雄ネジ棒の係合部が摺動把持部の内面側の雌ネジ孔に係合する。これにより、ハンドルの操作により固定把持部に対して摺動把持部が自在に摺動する。さらに、支持部に固定される固定保持部に設けられた雌ネジ孔に雄ネジ棒を保持させることで、雄ネジ棒が自重により弛まず、雄ネジ棒が抉れることなく高い精度で把持することができる。
また、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージとすることができる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置は、支持部と、支持部を挟んで接続される第1及び第2のアリ溝式ワーク把持ユニットと、からなり、第1及び第2のアリ溝式ワーク把持ユニットは、ワークの一方を把持する第1の把持面を有する第1及び第2の固定把持部と、ワークの他方を把持する第2の把持面を有し、支持部のアリと嵌合するアリを有し、支持部に対して自在に摺動する第1及び第2の摺動把持部と、第1及び第2の固定把持部を貫通し、第1及び第2の摺動把持部に係合する第1及び第2の係合部を有し、第1及び第2のハンドルにそれぞれ連結する第1又は第2の雄ネジ棒と、を備え、第1又は第2のハンドルの操作により第1又は第2の摺動把持部を第1又は第2の固定把持部に対して摺動させ
、支持部には、連結されるアリ溝摺動ステージの摺動ユニットに設けられた連結ボルト孔に適合する連結用長孔が設けられることを特徴とする。
【0019】
上記構成により、1台のアリ溝式ワーク把持装置により、2個のワークを同時にそれぞれ独立して把持することができる。また、2個のワークは、形状が異なるものであっても同時に把持できる。
また、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージとすることができる。
【0020】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、第1及び第2のアリ溝式ワーク把持ユニットが、第1及び第2のハンドルが支持部を挟んで相互に逆向きになるように設けられることが好ましい。これにより、第1及び第2のハンドルの間隔を操作性を考慮して拡大する必要がなくなり、コンパクトなアリ溝式ワーク把持装置とすることができる。
【0021】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、摺動把持部には与圧調整ネジ用の孔が設けられ、与圧調整ネジの締め込みにより摺動把持部の走行中のガタを調整することが好ましい。これにより、与圧調整ネジを締め込むことで摺動把持部と雄ネジ棒との間に発生するガタを除去でき、対象となるワークを高い精度で把持することができる。
【0022】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、摺動把持部にはストッパ用の孔が設けられ、ストッパを差し込むことで摺動把持部から雄ネジ棒が抜けるのを防止し、ストッパを外すことで、異なる第2の把持面を有する他の摺動把持部に交換自在であることが好ましい。これにより、摺動把持部をワークの形状に合わせて交換でき、多様な形状のワークを高い精度で把持することができる。
【0023】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、支持部の側面には第1の把持面と第2の把持面とが密着した位置を原点とする目盛が設けられることが好ましい。これにより、固定把持部と摺動把持部との間に挟まれるワークのサイズを計測し、例えばワークの幅方向の中心位置などを容易に算出することができる。
【0025】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、支持部に設けられる連結用長孔には、連結用長孔と交差する方向に突起する連結ボルト孔が設けられ、連結ボルト孔のピッチと異なるピッチの連結ボルト孔にも適合することが好ましい。これにより、標準サイズのアリ溝摺動ステージに連結可能なだけでなく、例えば、小型サイズのアリ溝摺動ステージなど特殊なボルト孔のピッチを有するアリ溝摺動ステージにも連結することができる。
【0026】
また、アリ溝式ワーク把持装置は、アリ溝摺動ステージに連結されて使用されることが好ましい。これにより、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージとすることができる。また、アリ溝摺動ステージに連結することにより、高い精度により位置出しが可能なアリ溝式ワーク把持装置とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置によれば、各サイズのアリ溝摺動ステージに簡易に接続でき、多様な形状のワークを高い精度で把持するアリ溝式ワーク把持装置を提供することができる。
【0028】
また、本発明に係るアリ溝摺動ステージによれば、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置の第1の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【
図2】アリ溝式ワーク把持装置の第1の実施形態の側面図である。
【
図3】アリ溝式ワーク把持装置の第1の実施形態の正面図及び断面図である。
【
図4】アリ溝式ワーク把持装置の第1の実施形態の底面図である。
【
図5】アリ溝摺動ステージに連結されたアリ溝式ワーク把持装置を示す側面図である。
【
図6】アリ溝式ワーク把持装置が連結される標準サイズのアリ溝摺動ステージの平面図である。
【
図7】アリ溝式ワーク把持装置が連結される小型サイズのアリ溝摺動ステージの平面図である。
【
図8】本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置の第2の実施形態の概略構成を示す平面図である。
【
図9】アリ溝式ワーク把持装置の第2の実施形態の側面図である。
【
図10】アリ溝式ワーク把持装置の第2の実施形態の正面図である。
【
図11】一般的なアリ溝摺動ステージの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(アリ溝式ワーク把持装置の第1実施形態)
以下に、図面を用いて本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置1aの第1実施形態につき、詳細に説明する。
図1に、アリ溝式ワーク把持装置1aの第1実施形態を平面図で示す。
図1(a)は、アリ溝式ワーク把持装置1aがワーク8aを挟まずに閉じている状態を示す。
図2(b)は、アリ溝式ワーク把持装置1aがワーク8aを挟んでいる状態を示す。
図2に、
図1(a),(b)のそれぞれに対応した側面図を示す。すなわち、
図2(a)は、
図1(a)をA−A方向から見た側面図であり、
図2(b)は、
図1(b)をB−B方向から見た側面図である。
図3に、
図1のアリ溝式ワーク把持装置1aを正面図で示す。
図3(a)は、
図2(a)をC1−C1から見た正面図であり、
図3(b)は、
図2(a)をC2−C2から見た断面図である。さらに、
図4は、
図1のアリ溝式ワーク把持装置1aの底面図であり、
図2(a)のアリ溝式ワーク把持装置1aをD−D方向から見た底面図を示す。
【0031】
アリ溝式ワーク把持装置1aは、支持部2a、固定把持部3a、摺動把持部4a、固定保持部6a、及び雄ネジ棒5aから構成される。固定把持部3aは、支持部2aに固定され、把持されるワーク8aの一方を把持する固定把持面18Aを有する。
図2(b)に示すように、この固定把持部3aは、固定ネジ用孔20aに固定ネジ19aを締め込むことで支持部2aに固定される。また、摺動把持部4aは、把持されるワーク8aの他方を把持する摺動把持面18Bを有する。また、固定保持部6aは、貫通する雌ネジ孔(図示せず)を有して支持部2aに固定される。
図2(b)に示すように、この固定保持部6aは、固定ネジ用孔20aに固定ネジ19aを締め込むことで支持部2aに固定される。さらに、雄ネジ棒5aは、ハンドル9aに連結され、固定保持部6aの内面側の雌ネジ孔に係合し、摺動把持部4aに螺合する係合部7aを有する。
【0032】
すなわち、ワーク8aは、その位置が支持部2a上に固定される固定把持部3aと、ハンドル9aの回転操作によりその位置が支持部2a上を自在に摺動する摺動把持部4aとにより挟まれる。ここで、その位置が支持部2a上に固定される固定保持部6aに設けられた雌ネジ孔は雄ネジ棒5aと係合する。これにより、ハンドル9aを回転させると雄ネジ棒5aが前後に移動し、それにより摺動把持部4aを移動させることができる。なお、雄ネジ棒5aの先端部には、断面方向にストッパ用孔16aが設けられている。そして、
図2(a)に示すように、ストッパ用孔16aに挿入されたストッパ15a(
図1参照)は、雄ネジ棒5aのストッパ用孔16aにまで捻じ込まれ、摺動把持部4aの内部に挿入された雄ネジ棒5aの回転を止める。また、このストッパ15aを捻じ込むことで摺動把持部4aから雄ネジ棒5aが抜けるのが防止できる。また、支持部2aに固定される固定保持部6aに設けられた雌ネジ孔に雄ネジ棒5aを保持させることで、雄ネジ棒5aが自重により弛まず、雄ネジ棒5aが抉れることなく高い精度で把持することができる。
【0033】
支持部2aに固定されている固定把持部3aは、固定ネジ19aを外すことで異なる固定把持面18Aを有する固定把持部3aに交換することができる。さらに、ストッパ15aを摺動把持部4aから外し、固定把持部3aを支持部2aに固定している固定ネジ19aを外すことで、異なる摺動把持面18Bを有する摺動把持部4aに交換することができる。すなわち、
図1(b)、
図2(b)に示すように、ワーク8aを両側から把持する固定把持部3aの固定把持面18A又は摺動把持部4aの摺動把持面18Bは、ワーク8aの特定の形状に合わせた把持面18A,18Bに交換することで、ワーク8aをより把持し易くできる。
【0034】
例えば、筒状のワーク8aを把持する場合には、把持面18A,18Bが凹状の筒体をしたワーク8aが好ましい場合がある。その場合には、固定把持部3a又は摺動把持部4aを凹状の筒体をした把持面18A,18Bを有する固定把持部3a又は摺動把持部4aに交換しても良い。或いは、固定把持部3a又は摺動把持部4aに凹状の筒体をした把持面18A,18Bを有する部品を取り付けても良い。
【0035】
図3(b)に示すように、摺動把持部4aに設けられたアリ溝13aと支持部2aに設けられたアリ14aとが嵌合する。そして、ハンドル9aの回転操作により支持部2aに対して摺動把持部4aが摺動する。また、摺動把持部4aには、与圧調整ネジ用孔24aが設けられ、この与圧調整ネジ用孔24aに与圧調整ネジ23aを締め込む。これにより、与圧調整ネジ23aが摺動把持部4aに設けられた逆三角形の断面を有する突出部22aを押し込む。この与圧調整ネジ23aによる押し込みにより摺動把持部4aの走行中のガタが解消される。すなわち、与圧調整ネジ23aを締め込むことで摺動把持部4aと支持部2aとが密着し、その摩擦により走行中のガタが解消する。
【0036】
図4に、
図2に示す支持部2aの底面をD−D方向から見た底面図を示す。この底面には、
図1に示す連結用長孔10a及び連結ボルト孔11aが設けられ、アリ溝式ワーク把持装置1aが連結ボルト12aによりアリ溝摺動ステージ30に連結される。また、固定ネジ孔20aに固定ネジ19aが挿入されて固定把持部3a及び固定保持部6aが支持部2aに固定される。
【0037】
図2(a),(b)に示すように、支持部2aの側面には、ワーク8aが設置されていない場合に固定把持面18Aと摺動把持面18Bとが密着する位置を原点とする目盛21aが設けられる。これにより、固定把持部3aと摺動把持部4aとの間に挟まれるワーク8aの寸法をアリ溝式ワーク把持装置1aに設けられた目盛21aにより精密に計測することができる。また、例えば、円形断面のワーク8aの幅方向の中心位置などをアリ溝式ワーク把持装置1aにより算出することができる。
【0038】
(アリ溝式ワーク把持装置付きアリ溝摺動ステージの構成)
図5に、アリ溝摺動ステージ30に連結されたアリ溝式ワーク把持装置1aを側面図で示す。アリ溝式ワーク把持装置1aは、上述したように単独で使用しても良いが、従来技術であるアリ溝摺動ステージ30に連結させて使用しても良い。すなわち、従来、アリ溝摺動ステージ30は、購入したユーザがワーク8aを取り付ける装置又は治具を製作し、それをアリ溝摺動ステージ30に取り付けていた。これに対して精度の高い本アリ溝式ワーク把持装置1aを使用することで、ユーザが自社で装置又は治具を製作する手間とコストが省略できる。また、本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置1aは、ワーク8aを確実に把持でき、また、汎用性が高いため多様な形状に対応できる。
【0039】
そして、アリ溝式ワーク把持装置1aが連結されたアリ溝摺動ステージ30は、上述したように、アリ溝式ワーク把持装置1aによりワーク8aが固定された状態で位置調整が行われる。この際、アリ溝式ワーク把持装置1aに設けられた目盛21aにより、ワーク8aの中心位置が容易に算出され、その値を用いて位置調整ができる。本願では、アリ溝摺動ステージ30について、一般的な一方向に摺動するX軸ステージにより説明したが、例えば、二方向に摺動するXY軸ステージ、鉛直方向に摺動するZ軸ステージ、回転ステージなどが選択され、或いは組み合わされて使用されても良い。
【0040】
(アリ溝摺動ステージとの連結)
以下、アリ溝式ワーク把持装置1aをアリ溝摺動ステージ30に連結させる構成について説明する。
図6に、アリ溝式ワーク把持装置1aが連結される標準サイズのアリ溝摺動ステージ30aの上面を平面図で示す。また、
図7に、アリ溝式ワーク把持装置1aが連結される小型サイズのアリ溝摺動ステージ30bの上面を平面図で示す。
図5に示すように、アリ溝式ワーク把持装置1aの支持部2aとアリ溝摺動ステージ30の摺動ユニット34の上面とは、連結ボルト孔11aに挿入される連結ボルト12a(
図1(a),(b)参照)により相互に連結される。
【0041】
図1,
図2に示すように、アリ溝式ワーク把持装置1aの支持部2aには、連結されるアリ溝摺動ステージ30a,30bの摺動ユニット34に設けられた治具取付用孔36に適合する連結用長孔10a,連結ボルト孔11aが設けられる。すなわち、
図5に示すように、連結ボルト孔11aに挿入される連結ボルト12a(
図1参照)は、
図1(a),(b)及び
図4に示す連結用長孔10a,連結ボルト孔11aに挿入される。そして、連結ボルト12aは、
図6,
図7に示す治具取付用孔36に係合される。従って、例えば、
図11に示す標準サイズのアリ溝摺動ステージ30や特殊な小型サイズのアリ溝摺動ステージ30bの治具取付用孔36に適合させる必要がある。
【0042】
図6の標準サイズのアリ溝摺動ステージ30aの治具取付用孔36は、P1,P2のボルト孔のピッチが標準ピッチとなっている。従って、
図1の連結用長孔10aは、このP1,P2のボルトピッチに適応するように長孔となっている。すなわち、連結ボルト12aをこの連結用長孔10aに収めて締結すれば標準サイズのアリ溝摺動ステージ30aの治具取付用孔36に設けられた連結ボルト12aが収納される。
【0043】
一方、
図7の小型サイズのアリ溝摺動ステージ30bの治具取付用孔36は、P3,P4,P5のボルト孔のピッチとなっている。この特殊なボルトピッチに適合させるため、支持部2aに設けられる連結用長孔10aには、連結用長孔10aと交差する方向に突起する連結ボルト孔11aが設けられる。この連結ボルト孔11aのピッチは連結用長孔10aのピッチと異なるため、特殊なボルトピッチを有するアリ溝摺動ステージ30bにも適合させることができる。なお、これらの特殊なボルトピッチは、上述した小型サイズのボルトピッチに限らず、市販のアリ溝摺動ステージ30に合わせて最適な連結用長孔10a及び連結ボルト孔11aが選択される。
【0044】
(アリ溝式ワーク把持装置の第2実施形態)
図8に、本発明に係るアリ溝式ワーク把持装置1bの第2実施形態の概略構成を平面図で示す。また、
図9に、
図8のアリ溝式ワーク把持装置1bを側面図で示す。
図9は、
図8をF−F方向から見た側面図である。さらに、
図10に、
図8のアリ溝式ワーク把持装置1bを正面図及び断面図で示す。
図10(a)は、
図8のG1−G1の方向から見た正面図である。
図10(b)は、
図8のG2−G2で切断した断面図である。本アリ溝式ワーク把持装置1bの第2実施形態は、アリ溝式ワーク把持装置1aの第1実施形態を2個逆向きに組み合わせた実施形態である。
【0045】
このアリ溝式ワーク把持装置1bの第2実施形態は、支持部2b、第1アリ溝式ワーク把持ユニット17a(以下、第1把持ユニット17aという。)、及び第2アリ溝式ワーク把持ユニット17b(以下、第2把持ユニット17bという。)から構成される。第1把持ユニット17aと第2把持ユニット17bとは、支持部2bを挟んで逆向きに接続され、第1把持ユニット17aは第1ワーク8b
1を把持し、第2把持ユニット17bは第2ワーク8b
2を把持する。すなわち、アリ溝式ワーク把持装置1bの第2実施形態は、第1把持ユニット17a及び第2把持ユニット17bにより異なる第1ワーク8b
1及び第28b
2を同時に把持できる。
【0046】
図8に示すように、第1把持ユニット17aは、第1ワーク8b
1の一方を把持する固定把持面18Aを有する第1固定把持部3b
1、第1ワーク8b
1の他方を把持する摺動把持面18Bを有する第1摺動把持部4b
1,第1係合部7b
1,及び第1ハンドル9b
1に連結する第1雄ネジ棒5b
1から構成される。一方、第2把持ユニット17bは、第2ワーク8b
2の一方を把持する固定把持面18Aを有する第2固定把持部3b
2、第2ワーク8b
2の他方を把持する摺動把持面18Bを有する第2摺動把持部4b
2、第2係合部7b
2、及び第2ハンドル9b
2に連結する第2雄ネジ棒5b
2から構成される。
【0047】
図10に示すように、第1摺動把持部4b
1及び第2摺動把持部4b
2は、アリ溝13bを有し、支持部2bに設けられたアリ14bとの嵌合により支持部2b上を自在に摺動する。また、第1雄ネジ棒5b
1及び第2雄ネジ棒5b
2は、第1固定把持部3b
1及び第2固定把持部3b
2に係合し、第1摺動把持部4b
1及び第2摺動把持部4b
2を貫通する。そして、第1ハンドル9b
1又は第2ハンドル9b
2の回転操作により第1摺動把持部4b
1又は第2摺動把持部4b
2を第1固定把持部3b
1又は第2固定把持部3b
2に対して摺動させる。このように、第1把持ユニット17a及び第2把持ユニット17bは、
図8に示すように、それぞれ異なるワーク把持範囲X1,X2において把持することができる。
【0048】
上述したように、第1把持ユニット17a及び第2把持ユニット17bは、第1ハンドル9b
1及び第2ハンドル9b
2が支持部2bを挟んで相互に逆向きになるように設けられる。これにより、第1ハンドル9b
1及び第2ハンドル9b
2がそれらの回転操作の際に相互に干渉することがない。また、第1把持ユニット17a及び第2把持ユニット17bを離間させる支持部2bの厚みを最小限にすることができる。
【0049】
なお、上述したアリ溝式ワーク把持装置1bの第2実施形態においては、同第1実施形態のアリ溝式ワーク把持装置1aにて説明した他の機能及び部品を有する場合があるが、本明細書ではその記載を省略する。
【0050】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ、及び配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
1a,1b アリ溝式ワーク把持装置、2a,2b 支持部、3a 固定把持部,3b
1 第1固定把持部,3b
2 第2固定把持部、4a 摺動把持部,4b
1 第1摺動把持部,4b
2 第2摺動把持部、5a 雄ネジ棒,5b
1 第1雄ネジ棒,5b
2 第2雄ネジ棒、6a 固定保持部、7a 係合部,7b
1 第1係合部,7b
2 第2係合部、8a ワーク,8b
1 第1ワーク,8b
2 第2ワーク、9a ハンドル,9b
1 第1ハンドル,9b
2 第2ハンドル、10a 連結用長孔、11a 連結ボルト孔、12a 連結ボルト、13a,13b アリ溝、14a、14b アリ、15a ストッパ、16a ストッパ用孔、17a 第1アリ溝式ワーク把持ユニット,17b 第2アリ溝式ワーク把持ユニット、18A 固定把持面,18B 摺動把持面、19a 固定ネジ、20a 固定ネジ用孔、21a 目盛、22a 突出部、23a 与圧調整ネジ、24a 与圧調整ネジ用孔、30 アリ溝摺動ステージ,30a 標準サイズ,30b 小型サイズ、31 アリ溝、32 アリ、33 固定ユニット、34 摺動ユニット、35 固定用孔、36 治具取付用孔、37 ハンドル、38 目盛、39 ベース、40 摺動固定ネジ、41 与圧調整ネジ、X1,X2 ワーク把持範囲。
【要約】
【課題】各サイズのアリ溝摺動ステージに簡易に接続でき、多様な形状のワークを高い精度で把持するアリ溝式ワーク把持装置を提供し、汎用的なワーク固定用治具を備えた利便性の高いアリ溝摺動ステージを提供する。
【解決手段】アリ溝式ワーク把持装置1aは、支持部2aと、支持部2aに固定され、ワーク8aの一方を把持する固定把持面18Aを有する固定把持部3aと、ワーク8aの他方を把持する摺動把持面18Bを有し、アリ溝とアリとの嵌合により支持部2aに対して自在に摺動する摺動把持部4aと、雌ネジ孔を有して支持部2aに固定される固定保持部3aと、ハンドル9aに連結され、雌ネジ孔に係合して摺動把持部4aに螺合する係合部7aを有する雄ネジ棒5aと、を備え、ハンドル9aの操作により固定把持部3aに対して前摺動把持部4aを摺動させる。
【選択図】
図1