【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を詳述する。
【0030】
前述した実施の形態に係る固体電解コンデンサを以下の方法にて作製し、その電気的特性を測定した。
【0031】
(実施例1)
まず、約30,000(μFV/g:CV/g)のタンタル粉末に直径0.4mmのタンタルからなるワイヤーを埋め込んだ、縦3.5mm、横3.0mm、高さ1.5mmのプレス体を、温度1,500℃で焼結し、タンタル焼結体を作製した。この焼結体をリン酸水溶液中で30Vの電圧を印加して陽極酸化を行い、陽極酸化皮膜を形成した。
【0032】
さらに、p−アミノベンゼンスルホン酸とペルオキソ二硫酸アンモニウムをモル比率が2:1の割合で混合させた20mass%の水溶液に、陽極酸化皮膜で被覆された焼結体を浸漬し、次いで、室温で乾燥させた後、3,4−エチレンジオキシチオフェンに浸漬した。さらに、室温で保持して3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合を行い、焼結体の陽極酸化皮膜の表面の約90%に厚さが約1μmのポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる第一の固体電解質層を形成した。
【0033】
続いて、焼結体をエタノールと水に順に浸漬することで洗浄し、乾燥した後に、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)により測定した、分子量が約100,000のポリスチレンスルホン酸における一部のスル
ホ基に、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンをドーピングした導電性高分子を、水溶液中で安定的に分散させた分散液に焼結体を浸漬し、一定の速度で引き上げた。その後、150℃で熱処理をすることで、第一の固体電解質層の表面に、厚さが約4μmの第二の固体電解質層を形成させ、陽極酸化皮膜の表面に第一の固体電解質層と第二の固体電解質層を合わせた約5μmの厚みを有した固体電解質層を形成した。
【0034】
ここで、分散液の中に存在している導電性高分子の荷電状態を表す電位、すなわち、ゼータ電位を電気泳動光散乱測定法(レーザードップラー法)で測定した。測定値は−50mVを示していた。また、電気泳動光散乱測定法により測定した導電性高分子の平均粒子径が300nmであった。
【0035】
次に、第二の固体電解質層を形成した焼結体を、粒子径が約10nmのカーボンブラックと樹脂と有機溶剤からなるグラファイトペーストに浸漬し、一定の速度で引き上げた後、150℃の熱処理を施すことでグラファイト層を形成し、さらに、粒子径が約10μmの扁平状の銀フィラーと樹脂と有機溶剤からなる銀ペーストに浸漬し、一定の速度で引き上げた後、150℃の熱処理を施すことで銀層を形成し、素子陰極部とした。
【0036】
次に、素子陰極部と、銅を基体としてその両面をNi、Agの順序でメッキ処理した、厚み30μmの陰極端子となるリードフレームを導電性接着剤で接着した。さらにタンタルからなるワイヤーと陽極端子となるリードフレームをレーザーを用いて溶接した。それぞれのリードフレームの一部分を除く素子露出部を、溶融した熱可塑性樹脂でモールド成形することで外装樹脂を形成させ、固体電解コンデンサを作製した。
【0037】
(実施例2)
実施例1と同様に、第一の固体電解質層と第二の固体電解質層を形成し、これらの工程を3回ずつ繰り返し、陽極酸化皮膜の表面に第一の固体電解質層と第二の固体電解質層が交互に3層ずつ積層され、第一の固体電解質層と第二の固体電解質層を合わせた厚みが約15μmの固体電解質層を形成した。それ以降の工程は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0038】
(実施例3)
実施例1と同様に、陽極酸化皮膜を形成し、N−(n−アルキル)ベンジルイミン−m−スルホン酸とペルオキソ二硫酸アンモニウムをモル比率が2:1の割合で混合した20mass%の水溶液に、陽極酸化皮膜を形成した焼結体を浸漬し、次いで室温で乾燥させた。その後、3,4−エチレンジオキシチオフェンに浸漬し、さらに室温状態で保持させ3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合を行い、焼結体に形成した陽極酸化皮膜の表面の約90%に、厚さが約1μmのポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる第一の固体電解質層を形成した。それ以降の工程は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様に、第一の固体電解質層を形成し、第二の固体電解質層を形成しないで、第一の固体電解質層の表面にグラファイト層を形成し、以降の工程は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同様に、陽極酸化皮膜を形成し、アミノ基またはイミノ基を含まない有機スルホン酸として、p−トルエンスルホン酸をドーパントとして含む導電性高分子を化学酸化重合で形成し、第一の固体電解質層とした。それ以降の工程は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0041】
(比較例3)
実施例1と同様に、第一の固体電解質層を形成し、平均分子量が7,000のポリスチレンスルホン酸における一部のスル
ホ基に、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンをドーピングした導電性高分子を含んだ分散液に焼結体を浸漬し、一定の速度で引き上げた。その後、温度150℃で熱処理をすることで、第二の固体電解質層を形成した。以降の工程は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0042】
(比較例4)
実施例1と同様に、第一の固体電解質層を形成し、平均分子量が600,000のポリスチレンスルホン酸における一部のスル
ホ基に、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェンをドーピングした導電性高分子を含んだ分散液に焼結体を浸漬し、一定の速度で引き上げた。その後、温度150℃で熱処理をすることで、第二の固体電解質層とし、以降は実施例1と同様に行い固体電解コンデンサを作製した。
【0043】
実施例1、2、3及び比較例1、2、3、4の条件で、それぞれ作製した50個の固体電解コンデンサについて電気特性を測定した。測定項目は、ESR、ショート不良率の2項目である。ESRは交流インピーダンスブリッジ法により測定している。ESRは印加した基準信号の周波数が100kHz、電圧が1Vrms、DCバイアスは1.5Vとしている。また、ショート不良率については固体電解コンデンサの定格電圧である6.3Vの信号を印加し、30秒後の値を測定し、LCの基準値を超えたものを不良と判定した。作製した50個の固体電解コンデンサの各特性の平均値を、表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、従来技術で作製した比較例1の積層固体電解コンデンサはESRが55mΩであったのに対し、本発明の実施例1、2、3は共に16%以上低くなっており、本発明の効果が確認できた。
【0046】
また、アミノ基またはイミノ基を含まない、p−トルエンスルホン酸をドーパントとして含む導電性高分子で、第一の固体電解質層を形成した比較例2のショート不良数が16%であった。これに対し、本発明の実施例1、2、3は共にショート不良が発生しておらず、第二の固体電解質層が均一な厚みで形成されているため、LCを抑制する効果が確認できた。
【0047】
また、分子量が10,000以上500,000以下の範囲外であるポリスチレンスルホン酸をドーパントとして含む第二の固体電解質層を形成した比較例3、4は、本発明の実施例1、2、3と比較してESRやショート不良率が高くなっていた。これは、分子量が低い場合は分散液中の導電性高分子が凝集し、分子量が高い場合は分散液の粘度が高くなり、形成が不均一になるためと考えられる。
【0048】
以上示したように、上記の手段により、本発明の固体電解コンデンサは、導電性高分子を電解質とする固体電解コンデンサにおいて、緻密な導電性高分子からなる固体電解質層を形成し、且つ、固体電解コンデンサの陽極酸化皮膜に対し均一な厚みの固体電解質層を形成することにより、ESRやLCが低く、ショート不良数の少ない固体電解コンデンサを実現するこができる。
【0049】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。