(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不連続な相隔たる領域が前記支持体中のウェルであり、そのウェルがそれぞれ、前記不連続な相隔たる領域の面積に等しいかそれより小さい面積を持つ開口部を有する、請求項1に記載のアレイ。
前記不連続な相隔たる領域が、前記平面状の表面に、直線的パターンで配置され、各不連続な相隔たる領域が、0.1〜10μmの直径を持つ円によって囲まれる面積を持つ、請求項4に記載のアレイ。
前記ユニークな官能基が第1オリゴヌクレオチドであり、前記取付け部分が、第1オリゴヌクレオチドに相補的な配列を持つ第2オリゴヌクレオチドである、請求項1に記載のアレイ。
不連続な相隔たる領域の形状がほぼ円形または正方形であり、その結果、それらのサイズを単一の長さ寸法で示すことができ、かつそのような領域のサイズが、125nm〜250nmの範囲、または200nm〜500nmの範囲にあり、かつ不連続な相隔たる領域の形状がほぼ円形の場合には単一の長さ寸法が直径であり、あるいは不連続な相隔たる領域の形状がほぼ正方形である場合には単一の長さ寸法が1辺の長さである、請求項1に記載のアレイ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施には、別段の表示がない限り、当業者の技量の範囲を超えない有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技法を含む)、細胞生物学、生化学、および免疫学の通常の技法および記述を使用する。そのような通常の技法には、ポリマーアレイ合成、ハイブリダイゼーション、ライゲーション、およびラベルを用いるハイブリダイゼーションの検出が含まれる。適切な技法の具体例は後述の実施例に見ることができる。ただし、他の等価な通常の技法も、もちろん使用することができる。そのような通常の技法および記述は、標準的実験マニュアル、例えば「Genome Analysis: A Laboratory Manual Series」(I〜IV巻)、「Using Antibodies: A Laboratory Manual」、「Cells: A Laboratory Manual」、「PCR Primer: A Laboratory Manual」および「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(いずれもCold Spring Harbor Laboratory Press刊)、Stryer, L. (1995)「Biochemistry」(第4版、Freeman、ニューヨーク)、Gait「Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach」(1984、IRL Press、ロンドン)、NelsonおよびCox (2000)「Lehninger, Principles of Biochemistry」(第3版、W.H.Freeman Pub.、ニューヨーク州ニューヨーク)、ならびにBergら(2002)「Biochemistry」(第5版、W.H.Freeman Pub.、ニューヨーク州ニューヨーク)などに見出すことができ、これらは全て、あらゆる目的で、参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0018】
本発明は、分子(特にDNAフラグメント、例えばゲノムDNAフラグメント)の集団を大規模パラレル解析するためのランダム単分子アレイを提供する。一般に、本発明の単分子は、取付け部分および分析物部分を含む。取付け部分は、表面(特に、その表面または取付けられた分析物から生成するシグナルが濃縮されるように、表面上のコンパクトな面積または限られた面積)への多価取付けに対応する、高分子構造を含む。すなわち、高分子構造は表面のコンパクトかつ限定された領域を占有する。本発明の高分子構造はさまざまな方法で表面に結合させることができる。多価結合は共有結合でも非共有結合でもよい。非共有結合には、表面上の捕捉オリゴヌクレオチドと高分子構造中の相補的配列との間の二重鎖の形成、および引力的非共有結合相互作用、例えばファンデルワールス力、水素結合、イオン相互作用および疎水相互作用などによる表面への吸着が含まれる。多価共有結合は、後に詳述するように、高分子構造中の複数の相補的官能基と反応することができる反応性官能基を表面上に用意することによって、達成することができる。分析物部分は、ユニークな結合を使って高分子構造に取付けることができるか、または高分子構造と一体化して高分子構造の一部分を形成することができる。本発明の単分子は、通常は溶液から、支持材料の表面上にランダムに配置される。したがって、ある態様では、単分子が、ポアソン分布に非常に近い形で、表面上に均一に分布する。もう一つの態様では、単分子は、不連続な相隔たる領域を含有する表面上に配置され、単分子はそれらの領域に取付けられる。好ましくは、高分子構造、製造方法、およびそのような不連続な相隔たる領域の面積は、実質上全てのそのような領域が単分子を多くとも一つだけ含有するように選択される。好ましくは、本発明の単分子、特にコンカテマーは、表面上でほぼランダムコイルコンフィギュレーションをとり、不連続な相隔たる領域の面積に閉じこめられる。ある態様では、不連続な相隔たる領域が、規則的アレイ中に、直線的(rectilinear)パターン、六角形パターンなどに対応しうる所定の位置を持つ。そのような領域の規則的アレイは、解析中にアレイから収集されるシグナルの検出およびデータ解析にとって好都合である。また、不連続な相隔たる領域の限られた面積に閉じこめられた単分子は、(解析作業に蛍光プローブを使用する場合は特に)より濃縮されたシグナルまたはより強いシグナルを与え、その結果、シグナル/ノイズ値を高める。本発明の単分子は、不連続な相隔たる領域上に、ある与えられた領域が通常は同様の確からしさで異なる単分子のいずれかを受け取るように、ランダムに分布する。言い換えると、結果として生じるアレイは、製作直後は、空間的にアドレス可能(spatially addressable)ではないが、同定またはデコーディング作業を行うことによって、空間的にアドレス可能にすることができる。すなわち、単分子のアイデンティティは識別可能であるが、わかっているわけではない。後に詳述するように、いくつかの実施形態では、不連続な相隔たる領域のサブセットであって、例えば捕捉オリゴヌクレチドおよびアダプターオリゴヌクレオチドの相補的配列によって規定されるような、対応するサブセットからの単分子しか受け取らないものが存在する。
【0019】
本発明の高分子構造は、ポリマー(分岐ポリマーまたは線状ポリマー)を含み、合成物(例えば分岐DNA)でもよいし、天然源に由来するもの(例えば患者のゲノムDNAから得られる線状DNAフラグメント)であってもよい。通例、高分子構造は、合成物であっても、天然源に由来するものであって、両者の組み合わせであってもよい線状一本鎖DNAフラグメントのコンカテマーを含む。本明細書で使用する「ターゲット配列」という用語は、合成核酸または天然源(例えば患者標本など)由来の核酸を指す。通例、ターゲット配列は、本発明の方法によって(例えばRCRによって)生成させたコンカテマーの一部分であるが、他の構造、例えばデンドリマー、および他の分岐構造などの一部であってもよい。ターゲット配列が合成物であるか天然源に由来する場合、それらは通例、本発明の高分子構造または単分子を形成させる過程において、さまざまな方法によって複製される。そのような方法はコピー中にエラーを導入する場合があるが、それでもなお、それらは「ターゲット配列」という用語に包含されると理解される。
【0020】
高分子構造の個々の特徴または構成要素は、個々の実施形態におけるさまざまな設計目標を満たすように選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、例えばユニークな結合の一部として非可撓性分子スペーサーを設けることなどによって、分析物分子を表面からできる限り遠くに保っておくことが有利になりうる。もう一つの例として、一つの不連続な相隔たる領域に複数の高分子構造が取付けられるのを効果的に防ぐサイズを持つように、反応性官能基を選択することもできる。さらにもう一つの例として、例えば溶解度を高めること、水素結合による二次構造の形成を促進することなどとといった他のさまざまな目的で、高分子構造に他の官能基を設けることもできる。
【0021】
ある態様では、高分子構造が十分に大きく、そのサイズ、例えば通常の生理食塩溶液中で占める体積の長さ寸法(直径など)は、不連続な相隔たる領域のサイズとほぼ等価である。線状ポリヌクレオチドである高分子構造の場合、一態様として、サイズは数千ヌクレオチド(例えば10,000)から数十万ヌクレオチド(例えば10万〜20万)の範囲に及びうる。後に詳述するように、いくつかの実施形態では、環状DNAを生成させてから、それらをローリングサークル複製反応で複製して、環状DNAの相補鎖のコンカテマーを形成させることによって、そのような高分子構造が作製される。
【0022】
図1A〜1Gに模式的に示す実施形態で、上述の概念を、より詳しく説明する。これらの図面を説明した後、本発明の諸要素をさらに詳しく開示し、実施例を挙げる。上述のように、ある態様では、本発明の高分子構造が、ターゲット配列またはターゲットフラグメントのコンカテマーを含む一本鎖ポリヌクレオチドである。特に、そのようなポリヌクレオチドは、ターゲット配列およびアダプターオリゴヌクレオチドのコンカテマーであることができる。例えば、ソース核酸(1000)を処理(1001)して、好ましくは50〜600ヌクレオチド、より好ましくは300〜600ヌクレオチドの範囲の一本鎖フラグメント(1006)を形成させ、次にそれらをアダプターオリゴヌクレオチド(1004)に連結して、アダプター-フラグメントコンジュゲートの集団(1002)を形成させる。ソース核酸(1000)は、通常の技法を使って試料から抽出されたゲノムDNA、または通常の技法によって作成されたcDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、または合成DNAなどであることができる。処置(1001)は普通、例えば化学的断片化、酵素的断片化、または機械的断片化などといった通常の技法による断片化と、それに続く変性による、一本鎖DNAフラグメントの作成を伴う。この例では、アダプターオリゴヌクレオチド(1004)を使って、
図2Aに図解する方法により、DNAサークルの集団(1010)を形成させる(1008)。ある態様では、集団(1010)の各メンバーが、同一のプライマー結合部位を持つアダプターと、ソース核酸(1000)に由来するDNAフラグメントとを有する。アダプターは、他の機能的要素、例えば限定するわけではないが、タグ付け配列、取付け配列、パリンドローム配列、制限部位、官能化配列などを持っていてもよい。別の実施形態として、異なるプライマー結合部位を持つアダプターを用意することにより、DNAサークルのクラスを作り出してもよい。DNAサークル(1010)を形成させた後、プライマーおよびローリングサークル複製(RCR)試薬を加えることにより、通常のRCR反応で、アダプターオリゴヌクレオチドおよびDNAフラグメントの相補鎖のコンカテマー(1015)の集団(1012)を生成させる(1011)ことができ、次に、その集団を、通常の分離技法で単離することができる。あるいは、考えうる配列を全て含有する混合物から、またはサークルが合成物である場合には、サークル複製用の選択された配列を持つオリゴヌクレオチドの限られた混合物から、短いオリゴヌクレオチド(例えば6マー)の逐次ライゲーションによって、RCRを実行してもよい。また、ターゲット分子の始まりと終わりの両方に相補的なブリッジングテンプレートDNAの存在下でターゲットDNAのライゲーションを行うことによって、コンカテマーを生成させることもできる。異なるターゲットDNAの集団を、対応するブリッジングテンプレートの混合物によって、コンカテマーに変換することができる。次に、単離されたコンカテマー(1014)を、支持体表面(1018)上に配置して(1016)、単分子のランダムアレイを形成させる。取付けが不完全な単分子または先の製造ステップからくる他の試薬類であってその存在が望ましくないものまたは表面(1018)に非特異的に結合するものを除去するために、取付けには、さまざまなストリンジェンシーの洗浄ステップも含まれうる。コンカテマー(1020)は、共有結合および非共有結合を含むさまざまな技法によって、表面(1018)に固定することができる。一実施形態として、アダプターオリゴヌクレオチドのセグメント(例えばプライマー結合部位または他の要素)との複合体(例えば二本鎖二重鎖)を形成する捕捉オリゴヌクレオチドを、表面(1018)に取付けておくことができる。別の実施形態として、アダプターオリゴヌクレオチドとの三重鎖を形成するオリゴヌクレオチドクランプなどの構造を、捕捉オリゴヌクレチドが含んでもよい(Gryaznovらの米国特許第5,473,060号)。もう一つの実施形態として、例えばマイクロアレイにcDNAを取付けるために用いられる技法と同じ技法により、コンカテマー上の相補的官能基と反応して共有結合を形成する反応性官能基を、表面(1018)が持っていてもよい(例えばSmirnovら (2004), Genes, Chromosomes & Cancer, 40: 72-77;Beaucage (2001), Current Medicinal Chemistry, 8: 1213-1244;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。疎水表面、例えば低濃度のさまざまな反応性官能基(例えば-OH基)を持つ清浄なガラス表面に、長いDNA分子(例えば数百ヌクレオチド以上)を効率よく取付けることもできる。DNAフラグメントのコンカテマーは、表面への配置後に、in situで、さらに増幅することができる。例えば配置後に、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによってアダプター配列中の制限部位を再構成させることにより、コンカテマーを切断し、次に、そのフラグメントを後述のように環状化し、RCR反応によって、in situで増幅させる。
【0023】
図1Bに、単分子(例えば一本鎖ポリヌクレオチド)のランダムアレイの表面の一片(1102)を図解する。そのような分子は、通常の条件(例えばTE、SSC、SSPEなどの通常のDNAバッファー、室温)下で、約100〜300nmの直径を持つ溶液中の球状容積をほぼ満たすランダムコイルを形成し、その直径は、当業者には周知の形で、DNAのサイズおよびバッファー条件に依存する(例えばEdvinsson「On the size and shape of polymers and polymer complexes」Dissertation 696 (University of Uppsala, 2002))。ランダムコイルポリマー(例えば一本鎖DNA)のサイズの一尺度は、末端間距離の二乗平均平方根であり、これは大雑把に言ってランダムコイル状構造の直径の尺度である。本明細書において「ランダムコイル直径」というそのような直径は、例えばZetasizer Nano System(Malvern Instruments、英国)などの装置を使って、光散乱法で測定することができる。本発明の高分子構造の他のサイズ尺度には、分子量(例えばダルトンで表したもの)、および総ポリマー長(分岐ポリマーの場合、これはその分枝の全ての長さの和である)が含まれる。表面に取付けると、取付けケミストリー、結合の密度、表面の性質などに依存して、一本鎖ポリヌクレオチドは、平均して、ランダムコイルコンフィギュレーションのコンカテマーの直径にほぼ等しい直径(1110)を持つ破線の円(1108)によって規定される領域(1107)によって区切られる扁平なスフェロイド状容積を満たす。言い方を変えると、一態様として、高分子構造(例えばコンカテマーなど)は、表面(1102)上へのそのランダムコイル状態の投影像に実施的に等価な領域(例えば破線の円(1108)で図示される領域)内で、表面(1102)に取付けられる。高分子構造が占める面積は変動しうるので、いくつかの実施形態では、予想面積が、投影像(1108)の面積の2〜3倍から、そのような面積の小部分(例えば25〜50パーセント)までの範囲内に含まれうる。どこか他の項で言及するように、表面上にコンパクトな形態の高分子構造を保つことにより、高分子構造またはコンカテマーの構成要素に特異的なプローブ(例えば蛍光標識オリゴヌクレオチド)に、より強いシグナルを生じさせることが可能になる。領域(1107)の直径(1110)および単分子を含有する最近接領域までの距離(1106)は、アレイの製作において重要な二つの量である。表面上の単分子の近接性を測定するには、領域(1107)の中心間距離、領域(1007)のエッジ間距離など、さまざまな距離測定基準を使用することができる。ここでは、通例、中心間距離を使用する。本発明のアレイを製作する場合、これらのパラメータの選択は、一つには、解析工程で使用するシグナル生成系およびシグナル検出系に依存する。一般的には、分子の少なくとも20パーセント、または少なくとも30パーセント、または少なくとも40パーセント、または少なくとも過半数を、使用するシグナル生成系およびシグナル検出系で個別に解像することが可能になるような単分子の密度を選択する。ある態様では、単分子の少なくとも70パーセントを個別に解像することが可能になるような密度が選択される。ある態様では、走査型電子顕微鏡を、例えば金ナノ粒子ラベルを持つ分子特異的プローブと共に使用する場合(例えばNieら (2006), Anal. Chem., 78: 1528-1534;これは参照により本明細書に組み入れられる)はいつでも、単分子の少なくとも過半数が50nm以上の最近接距離を持つように、密度が選択され;またもう一つの態様では、単分子の少なくとも70パーセントは100nm以上の最近接距離を持つことが保証されるように、そのような密度が選択される。もう一つの態様では、光学顕微鏡を、例えば蛍光ラベルを持つ分子特異的プローブと共に使用する場合はいつでも、単分子の少なくとも過半数が200nm以上の最近接距離を持つように、密度が選択され;またもう一つの態様では、単分子の少なくとも70パーセントは200nm以上の最近接距離を持つことが保証されるように、そのような密度が選択される。さらにもう一つの態様では、光学顕微鏡を、例えば蛍光ラベルを持つ分子特異的プローブと共に使用する場合はいつでも、単分子の少なくとも過半数が300nm以上の最近接距離を持つように、密度が選択され;またもう一つの態様では、単分子の少なくとも70パーセントは300nm以上、または400nm以上、または500nm以上、または600nm以上、または700nm以上、または800nm以上の最近接距離を持つことが保証されるように、そのような密度が選択される。さらにもう一つの実施形態では、光学顕微鏡を使用する場合はいつでも、単分子の少なくとも過半数が、その顕微鏡の最小特徴解像力(minimal feature resolution power)の少なくとも2倍の最近接距離を持つように、密度が選択される。もう一つの態様では、別々に検出することができるポリマー分子の密度が、1μm
2あたり少なくとも1000、または1μm
2あたり少なくとも10,000、または1μm
2あたり少なくとも100,000になるように、本発明のポリマー分子が表面上に配置される。
【0024】
図1Cの特定実施形態を例示する本発明のもう一つの態様では、ランダムに配置される単分子の密度を、望ましい最近接距離が確保されるように選択する要件が、単分子を取付けるための実質上唯一の部位である不連続な相隔たる領域を表面上に設けることによって、取り除かれる。すなわち、そのような実施形態では、不連続な相隔たる領域の間にある表面上の領域(本明細書ではこれを「領域間部分」という)が、コンカテマーまたは他の高分子構造がそのような領域には結合しないという意味で、不活性である。いくつかの実施形態では、そのような領域間部分をブロッキング剤(例えばコンカテマーDNAとは無関係なDNA、他のポリマーなど)で処理することができる。
図1Aの場合と同様に、ソース核酸(1000)を断片化し、環状化(1010)のためにアダプターを付加(1002)し、次に、RCRによってコンカテマーを形成させる(1012)。次に、表面(1120)の設計および製作によって決定される最近接距離(1124)をそれぞれに持つ不連続な相隔たる領域(1122)の規則的アレイを有する表面(1120)に、単離されたコンカテマー(1014)を適用する。後に詳述するように、捕捉オリゴヌクレオチドまたは反応性官能基で誘導体化するためのミクロン寸法およびサブミクロン寸法を持つ不連続な相隔たる領域(1122)のアレイは、電子線リソグラフィー、ナノインプリント技術、フォトリソグラフィーなどの、通常の半導体製作技法を使って製作することができる。一般に、単分子を表面(1120)に適用した時に実質上全ての領域(1122)が一つを超える単分子によって占有されないように、不連続な相隔たる領域(1122)の面積は、取付けケミストリー、使用する高分子構造などと共に、本発明の単分子のサイズに一致するように選択される。不連続な相隔たる領域一つにつき一つだけの単分子を持つ可能性は、反応性官能基または捕捉オリゴヌクレオチドの密度を、そのような部分が単分子上の各々の相補鎖よりも少なくなるように選択することによって、増加させることができる。そうすることで、単分子は、ある特定の不連続な相隔たる領域における表面への結合を全て「占有」することになり、その結果として、第2の単分子が同様に同じ領域に結合する機会を減少させる。特に、ある実施形態では、不連続な相隔たる領域中の捕捉オリゴヌクレオチドの実質上全てが、単一の高分子構造上のアダプターオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。ある態様では、不連続な相隔たる領域が、単分子の相補的官能基またはアダプターオリゴヌクレオチドの数の約10パーセント〜約50パーセントであるような数の反応性官能基または捕捉オリゴヌクレオチドを含有する。捕捉オリゴヌクレオチドの長さおよび配列は、幅広く変動することができ、周知の原理に従って選択することができる(例えばWetmur, Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology, 26: 227-259 (1991);Hamesら編「Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach」(IRL Press、オックスフォード、1985)の第1章(BrittenおよびDavidson))。ある態様では、捕捉オリゴヌクレオチドの長さが6〜30ヌクレオチドの範囲にあり、もう一つの態様では、8〜30ヌクレオチド、または10〜24ヌクレオチドの範囲にある。捕捉オリゴヌクレオチドの長さは、(i)表面への高分子構造の効果的な結合をもたらし、その結果として、解析作業のステップ(例えば洗浄など)中に起こる高分子構造の損失が最小限に抑えられるように、かつ(ii)(分析物分子がコンカテマー中のDNAフラグメントである場合は特に)分析物分子における解析作業との干渉が回避されるように、選択される。(i)に関し、ある態様では、ストリンジェントな洗浄でも解離しないほど十分に安定な二重鎖が捕捉オリゴヌクレオチドとそれらの相補鎖との間に得られるように、配列および長さを選択する。(ii)に関し、DNAフラグメントがある特定の生物種に由来する場合は、データベースが利用可能であるなら、それを使って、そのDNAフラグメントと偽ハイブリッドまたは望ましくないハイブリッドを形成するかもしれない潜在的捕捉配列を選別することができる。捕捉オリゴヌクレオチドの配列を選択する際の他の因子は、プライマー、ハイブリダイゼーションプローブ、オリゴヌクレオチドタグなどを選択する際に考慮される因子と類似しており、それらについては、後に「定義」の項で言及する参考文献からもわかるように、十分な手引きがある。いくつかの実施形態では、不連続な相隔たる領域が2種類以上の捕捉オリゴヌクレオチドを含有し、異なる捕捉オリゴヌクレオチドのそれぞれが異なる長さおよび異なる配列を持つこともできる。不連続な相隔たる領域の規則的アレイを使用する実施形態の一側面では、最近接領域にある捕捉オリゴヌクレオチドの配列が異なる配列を持つように、捕捉オリゴヌクレオチドの配列を選択する。直線的アレイの場合は、配列タイプが交互する列によって、そのような構成が達成される。別の実施形態では、表面が、不連続な相隔たる領域のサブアレイを複数持ち、異なるサブアレイのそれぞれが、他のサブアレイとは異なる別個のヌクレオチド配列を持つ捕捉オリゴヌクレオチドを持っていてもよい。複数のサブアレイには、2個のサブアレイ、または4個以下のサブアレイ、または8個以下のサブアレイ、または16個以下のサブアレイ、または32個以下のサブアレイ、または64個以下のサブアレイが含まれうる。さらに別の実施形態では、表面が5000個以下のサブアレイを含みうる。ある態様では、表面基の望ましくない影響または捕捉オリゴヌクレオチドもしくは他の試薬との相互作用を最小限に抑えるために、マイクロアレイで行われるのと同様に、捕捉オリゴヌクレチドが、スペーサー分子(例えばポリエチレングリコールなどの不活性鎖)によって、アレイの表面に取付けられる。
【0025】
ある態様では、不連続な相隔たる領域(1122)の面積が1μm
2未満であり;もう一つの態様では、不連続な相隔たる領域(1122)の面積が0.04μm
2〜1μm
2の範囲にあり;さらにもう一つの態様では、不連続な相隔たる領域(1122)の面積が0.2μm
2〜1μm
2である。もう一つの態様では、不連続な相隔たる領域の形状がほぼ円形または正方形であり、その結果、それらのサイズを単一の長さ寸法で示すことができる場合に、そのような領域のサイズが、125nm〜250nmの範囲、または200nm〜500nmの範囲にある。ある態様では、最も近接した領域(1122)の中心間距離が0.25μm〜20μmの範囲にあり;もう一つの態様では、そのような距離が1μm〜10μmの範囲、または50〜1000nmの範囲にある。ある態様では、領域(1120)を、表面(1018)上に、領域(1122)が所定の位置を持つような事実上任意のパターンで、すなわち、シグナル収集およびデータ解析機能の効率を高める任意の規則的アレイに、整列させることができる。そのようなパターンには、領域(1122)の同心円、らせんパターン、直線的パターン、六角形パターンなどが含まれるが、これらに限るわけではない。好ましくは、領域(1122)を直線的パターンまたは六角形パターンに整列させる。
【0026】
図1Dに図解するように、一定の実施形態では、ソース核酸(1200)から製造されるDNAサークルが、アダプターオリゴヌクレオチドを含まなくてもよい。先と同様に、ソース核酸(1200)を断片化し、変性させること(1202)により、好ましくは約50〜600ヌクレオチドのサイズ範囲、より好ましくは約300〜約600ヌクレオチドのサイズ範囲の一本鎖フラグメントの集団(1204)を形成させ、次に、CircLigase(Epicentre Biotechnologies、ウィスコンシン州マディソン)などの環状化リガーゼを使った非テンプレート駆動型の反応で、それらを環状化する。DNAサークル(1206)の形成後に、選ばれた配列に結合するプライマーの混合物を用意することにより、コンカテマーを生成させる。プライマーの混合物は、DNAサークル(1206)の総数のサブセットだけがコンカテマーを生成するように選択することができる。コンカテマーを生成させた後(1208)、それらを単離し、表面(1210)に適用することにより、本発明のランダムアレイを形成させる。
【0027】
上述のように、本発明の単分子は取付け部分および分析物部分を含み、その取付け部分が、表面へのその単分子の多価取付けをもたらす高分子構造を含むようになっている。
図1Eに図解するように、高分子構造は、反応中のDNAサークルが合成物であるRCR反応によって作製されるコンカテマーであってもよい。次に、コンカテマー上のユニークな官能基を使って、単分子の分析物部分を取付ける。事実上どんな配列の合成DNAサークルでも、周知の技法を使って、数百ヌクレオチド(例えば200ヌクレオチド)までのサイズであれば簡便に、また、難しくはなるが、何百ヌクレオチドもの(例えば500ヌクレオチドまでの)サイズでも、作成することができる(例えばKoolの米国特許第5,426,180号;Dolinnayaら (1993), Nucleic Acids Research, 21: 5403-5407;Rubinら (1995), Nucleic Acids Research, 23: 3547-3553など;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。プライマー結合部位(1301)を含む合成DNAサークル(1300)を、PCR反応(1306)でプライマー(1302)と組み合わせることにより、コンカテマー(1308)を作成する。通例、この実施形態では、すべてのサークルが同じ配列を持つが、例えばコンカテマーのサブセットを、アレイの予め選択した領域に、相補的な取付け部分(例えばアダプター配列と捕捉オリゴヌクレオチド)を使って誘導するために、異なる配列を使用することもできる。分析物上の相補的官能基と反応して共有結合を形成する能力を持つ官能基(1304;「R」と呼ぶ)をその5'末端に持つプライマー(1302)を合成する。代表的官能基には、市販の化学薬品(例えばGlen Research)を使って取付けることができるアミノ基、スルフヒドリル基などがある。コンカテマー(1308)を表面(1310)に適用してアレイ(1314)を形成させた後、取付け部分を持つ分析物(1312)をアレイ(1310)に適用すると、ユニークな官能基R(1311)と取付け部分(1312)との反応により、コンカテマーとの結合が形成される。あるいは、アレイ(1310)への適用に先だって、取付け部分とユニークな官能基とが反応して結合を形成できるようにコンカテマー(1308)を分析物(1312)と混合した後、得られたコンジュゲートをアレイ(1310)に適用してもよい。コンカテマー(1308)と多くの分析物クラスとを連結するための適当な取付け部分およびユニークな官能基の選択については、文献に豊富な手引きがある。一態様として、タンパク質またはペプチド分析物をコンカテマーに連結するために、多くのホモ二官能性およびヘテロ二官能性試薬が市販され(例えばPierce)、参照により本明細書に組み入れられるHermanson「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、ニューヨーク、1996)などの文献に開示されている。例えば、ユニークな官能基がアミノ基である場合はいつでも、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル6-((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサノエート(SIAX)などの試薬を使って、コンカテマー(1308)を分析物上のスルフヒドリル基に連結することができる。分析物上の適切な相補的官能基には、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボニル基などがあり、これらは分析物上に天然に存在する場合もあるし、適切なホモ二官能性またはヘテロ二官能性試薬との反応によって付加することもできる。分析物分子は、非共有結合、例えばビオチン-ストレプトアビジン結合、複合体(例えばコンカテマーに取付けられた第1オリゴヌクレオチドと分析物に取付けられたまたは分析物の一部を形成している相補的オリゴヌクレオチドとの二重鎖)の形成などの結合を使って、高分子構造に取付けることもできる。分析物には、核酸(例えばDNAまたはRNAフラグメント)、多糖、タンパク質などの生体分子が含まれる。
【0028】
上述のように、本発明の高分子構造は、線状ポリマー、例えばDNAフラグメントのコンカテマーに加えて、分岐ポリマーも含みうる。代表的な分岐ポリマー構造を
図1Fおよび1Gに図解する。
図1Fには、主鎖ポリヌクレオチド(1400)と複数の分枝ポリヌクレオチド(1402)とを含む分岐DNA構造が図解されている。この分岐DNA構造において、前記複数の分枝ポリヌクレオチドは、それぞれがその5'末端によって主鎖ポリヌクレオチド(1400)に接続されて、主鎖ポリヌクレオチド(1400)上の単一の5'末端(1404)以外は全て3'である末端を持つ櫛状の構造を形成しており、その単一の5'末端はユニークな官能基を持つように誘導体化される。後述するように、そのようなユニークな官能基は反応性化学基(例えば保護されたまたは保護されていないアミン、スルフヒドリルなど)であってもよいし、それに相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドを有する分析物を捕捉するためのユニーク配列を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。また、そのようなユニークな官能基は、例えばビオチンなどの捕捉部分であってもよい。そのような分岐DNA構造は、公知の技法を使って合成される(例えばGryaznovの米国特許第5,571,677号;Urdeaらの米国特許第5,124,246号;Seemanらの米国特許第6,255,469号など;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。そのような高分子構造がポリヌクレオチドである場合はいつでも、その構成要素の配列を自己集合が容易になるように選択するか、あるいはそれらを専用の連結ケミストリー(例えば以下に開示するもの)を使って連結することができ、その場合は、他の因子(例えば、いくつかの実施形態では、自己アニーリングの回避、表面上の捕捉オリゴヌクレオチドへの容易な結合など)に基づいて、配列が選択される。
図1Gには、デンドリマー構造が図解されている。このデンドリマー構造はオリゴヌクレオチド(1406)を含み、それが、それぞれに二つの官能基(1410;「R」で示す)を持つ複数の三価連結基(1408)で誘導体化される。さらに、それらの官能基により、追加ポリマー(1407)(例えばポリヌクレオチド)を取付けて、オリゴヌクレオチド(1406)への結合を形成させ、その結果として高分子構造(1409)を形成させることができる。そしてまた、それを多価リンカーで同様に誘導体化すれば、核酸デンドリマーを形成することができる。オリゴヌクレオチド用の三価リンカー(1408)は、Iyerらの米国特許第5,916,750号に開示されており、この特許は参照により本明細書に組み入れられる。
図1Hに図解するように、そのようなデンドリマー構造または分岐構造(1411)が構築されたら、それらは、線状ポリヌクレオチドについて上述したように、アレイ(1420)に取付けることができ、その後、分析物(1430)を、ユニークな官能基(1410)によって取付けることができる。場合によっては、未反応のユニークな官能基(1422)を、通常の技法でキャッピングしてもよい。あるいは、デンドリマー構造または分岐構造(1411)を、まず分析物(1430)と、例えば溶解した状態で混合して、コンジュゲートを形成させ、次にそのコンジュゲートをアレイ(1420)上に配置する。
図1Iに示すように、分析物が遊離の3'末端を持つポリヌクレオチド(1440)である場合は、その末端をin situ RCR反応で伸長させて、ターゲット配列またはさらなる付加のための他の配列のコンカテマーを形成させることができる。同様に、ポリヌクレオチド分析物は、通常の技法を使ったライゲーションによって伸長させることもできる。
【0029】
ソース核酸およびターゲット配列の環状化
本発明の一態様では、高分子構造が、試料(例えば患者、経済的に重要な生物などから得られるゲノムDNAまたはcDNA)から抽出または誘導されるポリヌクレオチド分析物(すなわちターゲット配列)のコンカテマーを含む。そのような単分子を含む本発明のランダムアレイは、配列決定、SNP測定、アレルの定量、コピー数測定などを含むゲノムワイドな解析を行うのに役立つ。哺乳類サイズのゲノムの場合、好ましくは断片化を少なくとも二段階で行い、第1段階では、約100キロ塩基(Kb)〜約250キロ塩基のサイズ範囲にあるフラグメントの集団を生成させ、各100〜250Kbフラグメントに個別に適用される第2段階では、約50〜600ヌクレオチド、より好ましくは約300〜600ヌクレオチドのサイズ範囲にある、ランダムアレイ用のコンカテマーを生成させるためのフラグメントを生成させる。本発明のいくつかの態様では、断片化の第1段階を、そのようなフラグメントの予め決定されたサブセット(例えばシグナル伝達系路のタンパク質をコードする遺伝子を含有するフラグメントなど)を選択するために使用することもできる。本発明のアレイを構築するのに必要なゲノムDNAの量は広く変動しうる。ある態様では、哺乳類サイズのゲノムに関して、少なくとも10ゲノム相当のDNAからフラグメントを生成させ;もう一つの態様では、少なくとも30ゲノム相当のDNAからフラグメントを生成させ;もう一つの態様では、少なくとも60ゲノム相当のDNAからフラグメントを生成させる。
【0030】
ゲノムDNAは、例えばSambrookら(前掲)1999;「Current Protocols in Molecular Biology」Ausubelら編(John Wiley and Sons, Inc.、ニューヨーク、1999)などに開示されているような通常の技法を使って取得される。ゲノムDNAの単離にとって重要な因子には、以下に挙げるものが含まれる:1)DNAがDNAプロセシング酵素を含まず、塩類の混入がないこと;2)ゲノム全体を等しく表していること;および3)DNAフラグメントの長さが約5,000〜100,000bpであること。多くの場合、抽出されたDNAは消化する必要がない。なぜなら、溶解および抽出中に生じる剪断力が望ましい範囲のフラグメントを生成させるからである。もう一つの実施形態として、制限エンドヌクレアーゼを使った酵素的断片化によって、さらに短いフラグメント(1〜5kb)を生成させることができる。ある実施形態では、10〜100ゲノム相当のDNAにより、フラグメントの集団がゲノム全体をカバーすることを保証する。少量のDNAしか利用できず、例えば容器の壁などへの非特異的結合による損失の危険がある場合はいつでも、担体DNA(例えば無関係な環状合成二本鎖DNA)を用意し、それを試料DNAと混合して使用することが有利なこともある。
【0031】
フラグメントを生成させる場合、どちらの段階においても、フラグメントはゲノム全体に由来してもよいし、ゲノムの選ばれたサブセットに由来してもよい。ゲノムのサブセットからのフラグメントの単離または濃縮には、参照により本明細書に組み入れられる以下の文献によって例示されるように、多くの技法を利用することができる:Kandpalら (1990), Nucleic Acids Research, 18: 1789-1795;Callowらの米国特許出願公開第2005/0019776号;Zabeauらの米国特許第6,045,994号;Deugauらの米国特許第5,508,169号;Sibsonの米国特許第5,728,524号;Guilfoyleらの米国特許第5,994,068号;Jonesらの米国特許出願公開第2005/0142577号;Gullbergらの米国特許出願公開第2005/0037356号;Matsuzakiらの米国特許出願公開第2004/0067493号など。
【0032】
哺乳類サイズのゲノムの場合、ゲノムDNAの最初の断片化は、一つ以上の「稀な」切断制限エンドヌクレアーゼ(例えばNot I、Asc I、Bae I、CspC I、Pac I、Fse I、Sap I、Sfi I、Psr Iなど)を使った消化によって達成することができる。その結果生じたフラグメントは、直接使用することもできるし、あるいは既に配列決定されているゲノムの場合には、特異的フラグメントをそのような消化DNAから単離した後、
図2Bに図解するような加工に使用してもよい。ゲノムDNA(230)を稀な切断制限エンドヌクレアーゼで消化(232)してフラグメント(234)を生成させた後、そのフラグメント(234)をさらに、5'一本鎖エキソヌクレアーゼ(例えばλエキソヌクレアーゼ)で短時間(すなわち反応を完了させない)消化して、フラグメントの末端にある制限部位配列に隣接する配列(237)を露出させる。そのような露出させた配列は、各フラグメントにユニークであるだろう。したがって、所望のフラグメントの末端に特異的なビオチン化プライマー(241)を、単離用の捕捉オリゴヌクレオチドにアニールさせるか、あるいは、そのようなフラグメントを、捕捉部分(例えばビオチン)を持つプライマーにアニールさせ、鎖置換活性を持たないDNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼStoffelフラグメント)で伸長させることができる。そのような伸長後は、プライマー(241)の3'末端がフラグメントの上側の鎖(top strand)(242)に接し、それらを連結することで、連続した鎖を形成させることができるようになる。鎖置換活性を持ち、上側の鎖を合成によって置き換えるDNAポリメラーゼを使って、後者のアプローチを実行することもできる。どちらのアプローチでも、次に、ビオチン化されたフラグメントを、ストレプトアビジンで誘導体化された固形支持体(239)を使って単離(240)することができる。
【0033】
もう一つの態様では、ゲノムDNAテンプレートからのプライマー伸長を使って、ゲノムの関心領域を取り囲む10キロ塩基を超える選ばれた配列の線形増幅物を生成させる。例えば、所定サイズのターゲットの集団を作り出すために、フォワードプライマーを使って20サイクルの線形増幅を行った後、リバースプライマーを使った20サイクルを行う。2番目のプライマーを適用する前に、長いDNAを精製するための標準的カラムを使って最初のプライマーを除去するか、数個のウラシル塩基が組み込まれている場合には、最初のプライマーを分解する。フォワード鎖よりも多数のリバース鎖が生成して、二本鎖分子と一本鎖のリバース鎖の集団が得られる。リバースプライマーをビオチン化すれば、ストレプトアビジンビーズに捕捉することができ、これを加熱すると、捕捉されたホモ二重鎖を融解することができる。取付けられた分子は全て一本鎖で、元のゲノムDNAの一方の鎖を表すことになる。
【0034】
生成した産物は、0.2〜2kbのサイズ、より好ましくは0.3〜0.6kbのサイズ(固形支持体からそれらを効果的に放出させる)に断片化し、RCR反応のために環状化することができる。
図2Aに図解する環状化の一方法では、ゲノムDNA(200)を断片化し、変性した(202)後に、一本鎖DNAフラグメント(204)を、まずターミナルトランスフェラーゼで処理(206)することによって、3'末端にポリdAテール(208)を取付ける。次に、一方の末端がポリdAテールに相補的であり、かつ他方の末端が縮重ヌクレオチドのセグメントのおかげで任意の配列に相補的であるブリッジングオリゴヌクレオチド(210)を利用して、遊離末端のライゲーション(212)を分子内で行う。ブリッジングオリゴヌクレオチド(210)の二重鎖領域(214)は、少なくともRCR用のプライマー結合部位を含有し、いくつかの実施形態では、捕捉オリゴヌクレオチドに対する相補鎖を与える配列(これは、プライマー結合部位配列と同じであっても異なってもよく、あるいはプライマー結合部位配列とオーバーラップしてもよい)を含有する。捕捉オリゴヌクレオチドの長さは広く変動しうる。ある態様では、捕捉オリゴヌクレオチドと、ブリッジングオリゴヌクレオチド中のそれらの相補鎖とが、10〜100ヌクレオチドの範囲(より好ましくは10〜40ヌクレオチドの範囲)の長さを持つ。いくつかの実施形態では、二重鎖領域(214)が、例えばオリゴヌクレオチドタグ(例えばその関連DNAフラグメントの由来源となったソース核酸を同定するためタグ)などの追加要素を含有してもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、異なるソース核酸からサークルまたはアダプターライゲーションまたはコンカテマーを別々に製造し、その際にユニークなタグを含有するブリッジングアダプターを使用しておいて、その後に、それらを混合して、ランダムアレイを作成するためのコンカテマー製造または表面への適用に使用することができる。そのようなランダムアレイでは、コンカテマー中の対応タグ配列に相補的な標識タグをハイブリダイズさせることによって、またはアダプター全体もしくはアダプターのタグ領域を配列決定することによって、関連フラグメントを同定することができる。環状産物(218)は、通常の精製カラム、または一つ以上の適当なエキソヌクレアーゼによる非環状DNAの消化、またはその両者によって、簡便に単離することができる。
【0035】
上述のように、望ましいサイズ範囲(例えば50〜600ヌクレオチド)のDNAフラグメントは、テンプレートを必要とせずに一本鎖DNAを環状化する一本鎖DNAリガーゼとして、CircLigaseなどの環状化酵素を使って、環状化することもできる。CircLigaseは、製造者の指示(Epicentre、ウィスコンシン州マディソン)に従って使用される。DNAフラグメントと一つ以上のアダプターとを含む一本鎖DNAサークルを形成させるための好ましいプロトコールは、以下に詳述するように、T4リガーゼなどの標準的リガーゼを使ってアダプターをDNAフラグメントの一端に連結し、次にCircLigaseを使ってサークルを閉じることである。
【0036】
アダプターオリゴヌクレオチドとターゲット配列とを含むDNAサークルを、T4リガーゼを使って生成させるための代表的プロトコール。ターゲット配列は合成オリゴT1N(配列:5'-NNNNNNNNGCATANCACGANGTCATNATCGTNCAAACGTCAGTCCANGAATCNAGATCCACTTAGANTGNCGNNNNNNNN-3')(配列番号1)である。アダプターは二つの別々のオリゴで構成される。T1Nの5'末端につながるアダプターオリゴはBR2-ad(配列:5'-TATCATCTGGATGTTAGGAAGACAAAAGGAAGCTGAGGACATTAACGGAC-3')(配列番号2)であり、T1Nの3'末端につながるアダプターオリゴはUR3-ext(配列:5'-ACCTTCAGACCAGAT-3')(配列番号3)である。UR3-extは、第2アダプターの挿入に備えてDNAサークルを線状化するための手段になるように、IIs型制限酵素部位(Acu I:CTTCAG)を含有する。BR2-adをBR2-temp(配列5'-NNNNNNNGTCCGTTAATGTCCTCAG-3')(配列番号4)にアニールさせて、二本鎖アダプターであるBR2アダプターを形成させる。UR3-extをビオチン化UR3-temp(配列5'-[ビオチン]ATCTGGTCTGAAGGTNNNNNNN-3')(配列番号5)にアニールさせて、二本鎖アダプターであるUR3アダプターを形成させる。1pmolのターゲットT1Nを、25pmolのBR2アダプターおよび10pmolのUR3アダプターに、50mMトリス-Cl(pH7.8)、10%PEG、1mM ATP、50mg/L BSA、10mM MgCl
2、0.3単位/μlのT4 DNAリガーゼ(Epicentre Biotechnologies、ウィスコンシン州)および10mM DTTを含有する、最終体積10μlの単一のライゲーション反応で、連結する。ライゲーション反応を、15℃で11分間、37℃で1分間を18回繰り返すという温度サイクリングプログラムで、インキュベートする。70℃で10分間加熱することによって反応を停止させる。連結した産物をストレプトアビジン磁気ビーズ(New England Biolabs、マサチューセッツ州)で捕捉することにより、過剰のBR2アダプターを除去する。3.3μlの4×結合バッファー(2M NaCl、80mMトリスHCl pH7.5)をライゲーション反応に加え、次にそれを、1×結合バッファー(0.5M NaCl、20mMトリスHCl pH7.5)中のストレプトアビジン磁気ビーズ15μgと混合する。室温で15分間インキュベートした後、ビーズを4体積の低塩濃度バッファー(0.15M NaCl、20mMトリスHCl pH7.5)で2回洗浄する。溶出バッファー(10mMトリスHCl pH7.5)を70度に予熱し、そのうちの10μlをビーズに70℃で5分間加える。磁気分離後に、上清を一次精製試料としてとっておく。上記と同様にBR2-adに対して逆相補的であるビオチン化オリゴBR-rc-bio(配列:5'-[ビオチン]CTTTTGTCTTCCTAACATCC-3')(配列番号6)を予め結合しておいた磁気ビーズを使って過剰のUR3アダプターを除去することにより、この試料をさらに精製する。最終精製試料中のアダプター-ターゲット連結産物の濃度は、尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析によって見積られる。環状化は、1mM ATPおよび供給者が提供する標準バッファー中、0.2単位/μlのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Epicentre Biotechnologies)を使って、ライゲーション産物をリン酸化することによって行われ、0.3単位/μlのT4 DNAリガーゼ(Epicentre Biotechnologies)および1mM ATPを使って、10倍モル過剰のスプリント(splint)オリゴUR3-closing-88(配列5'-AGATGATAATCTGGTC-3')(配列番号7)で環状化される。環状化された産物は、以下に説明するRCR反応を行うことによって確認される。
【0037】
ローリングサークル複製によるポリヌクレオチドコンカテマーの生成
本発明の一態様では、単分子が、通常のローリングサークル複製(RCR)反応で作成されたポリヌクレオチド(通例、ポリヌクレオチド分析物、すなわちターゲット配列)のコンカテマーを含む。RCR反応の条件および試薬を選択するための手引きは、参照により本明細書に組み入れられる以下の文献からもわかるように、当業者が利用できる数多くの文献に見出すことができる:Koolの米国特許第5,426,180号;Lizardiの米国特許第5,854,033号および同第6,143,495号;Landegrenの米国特許第5,871,921号など。一般に、RCR反応の構成要素は、一本鎖DNAサークル、DNAサークルにアニールする一つ以上のプライマー、DNAサークルにアニールさせたプライマーの3'末端を伸長するための鎖置換活性を持つDNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、および通常のポリメラーゼ反応バッファーが含まれる。そのような構成要素を、プライマーがDNAサークルにアニールし、DNAポリメラーゼによって伸長されて、DNAサークル相補鎖のコンカテマーを形成することができるような条件下で混合する。代表的なRCR反応プロトコールは以下のとおりである。50μLの反応混合物に以下の成分を集める:2〜50pmolの環状DNA、0.5単位/μLのファージφ29 DNAポリメラーゼ、0.2μg/μLのBSA、3mM dNTP、1×φ29 DNAポリメラーゼ反応バッファー(Amersham)。RCR反応を30℃で12時間行う。いくつかの実施形態では、からみ合いおよび他の分子間相互作用を避けるために、ポリメラーゼ反応における環状DNAの濃度を、低く(1mlあたり約100億〜1000億サークル、すなわち1ピコリットルあたり10〜100サークル)選択することができる。
【0038】
好ましくは、RCRによって作成されるコンカテマーは、ほぼ均一なサイズである。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のアレイを作製する方法が、コンカテマーをサイズ選択するステップを含みうる。例えばある態様では、集団として分子量の変動係数が約30%未満であるコンカテマーを選択し、もう一つの実施形態では約20%未満であるコンカテマーを選択する。ある態様では、極めて長いコンカテマー(例えば、ポリメラーゼによってより高速に合成されるDNAサークルが生成するもの)の存在を減少させるために、RCR反応混合物に低濃度の連鎖停止剤(例えばddNTP類)を加えることによって、サイズの均一性が、さらに改善される。ある実施形態では、50〜250Kbの範囲、または50〜100Kbの範囲の予想コンカテマーサイズをもたらすような濃度のddNTP類を使用する。もう一つの態様として、通常の分離技法、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、膜濾過などを使って、特定サイズ範囲のコンカテマーを濃縮してもよい。
【0039】
分岐ポリマーおよびDNAアセンブリを含む高分子構造の生成
本発明の一態様では、高分子構造が、少なくとも一つのユニークな官能基(ポリヌクレオチドの場合、これは通例、5'または3'末端の官能基である)と、固形支持体の表面の反応性官能基と特異的に反応する能力を持つ複数の相補的官能基とを持つポリマーを含む。分岐ポリマー(特に分岐ポリヌクレオチド)を含む高分子構造は、Gryaznov(前掲)、Urdea(前掲)などの文献に開示されているように、さまざまな方法で合成することができる。一態様として、本発明の分岐ポリマーには、櫛型分岐ポリマーが包含され、これは、一つ以上の分岐点が内部モノマーおよび/または連結部分に置かれた線状ポリマーユニットを含む。本発明の分岐ポリマーにはフォーク型分岐ポリマーも包含され、これは、一つまたは二つの分岐点が末端モノマーおよび/または連結部分に置かれた線状ポリマーユニットを含む。本発明の高分子構造には、一つ以上の二重鎖または三重鎖によって一つに結合された線状および/または分岐ポリヌクレオチドのアセンブリも包含される。そのようなアセンブリは、例えばGoodmanら, Science, 310: 1661-1665 (2005);Biracら, J. Mol. Graph Model, (April 18, 2006);Seemanらの米国特許第6,255,469号など(これらは参照により本明細書に組み入れられる)などによって開示されているように、構成要素線状ポリヌクレオチドから自己集合させうる。ある態様では、本発明の線状ポリマーユニットが、「-(M-L)
n-」の形式を持つ(式中、Lはリンカー部分であり、Mは、不活性非立体障害スペーサー部分として役立つことから、他の構成要素を取付けるための分岐点として、あるいはラベルを取付けるための部位;例えばUrdeaらの米国特許第5,124,246号またはWangらの米国特許第4,925,785号に記述されているようにアンプリファイヤ(amplifier)鎖またはアンプリファイヤ構造にハイブリダイズまたは結合させるオリゴヌクレオチドまたは他の結合ポリマーを取付けるための部位;例えばWhiteleyらの米国特許第4,883,750号に記述されているように「フック(hook)」を取付けるための部位;あるいは溶解度に影響を与え、二重鎖および/または三重鎖形成を促進するための他の基(例えばインターカレーター、アルキル化剤など)を取付けるための部位として役立ちうる反応性官能基を提供することまで、さまざまな機能を提供するために、広範囲にわたるさまざまな化学構造から選択されうるモノマーである)。以下の参考文献には、本発明における使用に適したいくつかのホスホロアミダイトおよび/またはハイドロゲンホスホネートモノマーが開示されており、それらの合成およびオリゴヌクレオチドへの組み込みに関する手引きが記載されている:Newtonら, Nucleic Acids Research, 21:1155-1162 (1993);Griffinら, J. Am. Chem. Soc., 114:7976-7982 (1992);Jaschkeら, Tetrahedron Letters, 34:301-304 (1992);Maらの国際出願PCT/CA92/00423;Zonらの国際出願PCT/US90/06630;Durandら, Nucleic Acids Research, 18:6353-6359 (1990);Salunkheら, J. Am. Chem. Soc., 114:8768-8772 (1992);Urdeaらの米国特許第5,093,232号;Ruthの米国特許第4,948,882号;Cruickshankの米国特許第5,091,519号;Haralambidisら, Nucleic Acids Research, 15:4857-4876 (1987)など。より具体的には、Mは、1〜20個の炭素原子と酸素、窒素、および硫黄からなる群より選択される0〜10個のヘテロ原子とを含有する直鎖状、環状、または分岐状の有機分子構造である。好ましくは、Mは、1〜16個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、またはアリール;3〜8個の炭素原子と、酸素、窒素、および硫黄からなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とを持つ複素環;グリコシル;またはヌクレオシジルである。より好ましくは、Mは、1〜8個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、アルケニル、またはアリール;グリコシル;またはヌクレオシジルである。好ましくは、Lは、リン(V)連結基であり、これは、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルまたはエチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどであることができる。一般に、ホスホロアミダイトまたはハイドロゲンホスホネート前駆体から誘導される結合は好ましいので、本発明の線状ポリマーユニットは、例えばApplied Biosystems, Inc.(カリフォルニア州フォスターシティー)モデル394などの市販自動DNA合成装置を使って、簡便に合成することができる。nは、MおよびLの性質に依存してかなり変化しうる。通例、nは約3から約100まで変化する。Mがヌクレオシドもしくはその類似体またはヌクレオシドサイズのモノマーであり、Lがリン(V)結合である場合、nは約12から約100まで変化する。好ましくは、Mがヌクレオシドもしくはその類似体またはヌクレオシドサイズのモノマーであり、Lがリン(V)結合である場合、nは約12〜約40まで変化する。ポリマーユニットは、それらの間に一つ以上の共有結合架橋を形成させることによって、アセンブルすることができる。ある態様では、一つ以上の構成要素上にあるチオール、ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート基を、一つ以上の他の構成要素上にあるハロアシル-またはハロアルキル-アミノ基と反応させて、一つ以上のチオ-もしくはジチオ-ホスホリルアシルまたはチオ-もしくはジチオ-ホスホリルアルキル架橋を形成させることにより、架橋が形成される。一般に、そのような架橋は、以下に挙げる形式の一つを持つ:-NHRSP(=Z)(O
-)-
- または-NHRS-(式中、Rはアルキルまたはアシルであり、Zは硫黄または酸素である)。アセンブリ反応には、その実施形態に依存して2〜20個の構成要素が関与しうるが、好ましくは2〜8個の構成要素が関与し、より好ましくは2〜4個の構成要素が関与する。好ましくは、上記ハロアシルアミノまたはハロアルキルアミノ基はハロアセチルアミノ基であり、より好ましくはハロアセチルアミノ基がブロモアセチルアミノ基である。ハロアシル-またはハロアルキル-アミノ基のアシル部分またはアルキル部分は、1〜12個の炭素原子を含有し、より好ましくは、そのような部分が1〜8個の炭素原子を含有する。反応は広範囲にわたるさまざまな溶媒系で行うことができるが、一般的には、アセンブリ反応は液体水性条件下で行われるか、例えば液体水性反応混合物の温度を低下させることによって得られる氷中に凍結した状態で行われる。もう一つの選択肢として、DMSO/H
2Oにおけるチオホスホリルアセチルアミノ架橋の形成が、Thuongら, Tetrahedron Letters, 28:4157-4160 (1987)およびFrancoisら, Proc. Natl. Acad. Sci., 86:9702-9706 (1989)によって報告されている。典型的な水性条件には、25mM NaClおよび15mMリン酸緩衝液(pH7.0)中、4μMの反応物が含まれる。チオ-もしくはジチオ-ホスホリルアシル-またはチオ-もしくはジチオ-ホスホリルアルキル-アミノ架橋は好ましい。なぜなら、それらは、硝酸銀、ヨウ化カリウムなどの酸化剤によって、容易にかつ選択的に切断することができるからである。好ましくは、架橋のおよそ百倍モル過剰に相当する濃度のヨウ化カリウムKI
3を使って、架橋を切断する。通例、KI
3は約0.1Mの濃度で使用される。これらの架橋の切断が容易であることは、複雑な高分子構造の合成において、著しい利点である。というのも、それは、最終産物を解析して最終産物の構造が正しいことを確認するための簡便な方法になるからである。3'-ハロアシルまたはハロアルキル-アミノ(この例ではハロアセチルアミノ)誘導体化オリゴヌクレオチド1を、5'-ホスホロチオエート誘導体化オリゴヌクレオチド2と、以下のスキームに従って反応させる:
5'-BBB ... B-NHC(=O)CH
2X+ (1)
S
-P(=O)(O-)-BBB ... B-3'→ (2)
5'-BBB ... B-NHC(=O)CH
2SP(=O)(O-)O-BBB ... B-3'
[式中、Xはハロであり、Bはヌクレオチドである]。ヌクレオチドが、より一般的な上述のポリマーユニット(M-L)
nの代表例に過ぎないことは、言うまでもない。化合物1は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のN-スクシンイミジルハロアセテートを、ホウ酸ナトリウムバッファー中の3'-アミノデオキシリボヌクレオチド前駆体と、室温で反応させることによって製造することができる。約35分後に、その混合物を(例えばH
2Oで)希釈し、脱塩し、(例えば逆相HPLCによって)精製する。Y-アミノデオキシリボヌクレオチド前駆体は、GryaznovおよびLetsinger, Nucleic Acids Research, 20:3403-3409 (1992)に記述されているように製造することができる。簡単に述べると、脱保護後に、標準的なスクシニル結合によって支持体に連結されているデオキシチミジンの5'ヒドロキシルを、ジクロロメタン/ジイソプロピルエチルアミンなどの適当な溶媒中で、クロロ-(ジイソプロピルエチルアミノ)-メトキシホスフィンとの反応により、ホスフィチル化する。テトラゾールで活性化した後、その5'-ホスフィチル化チミジンを5'-トリチル-O-3'-アミノ-3'-デオキシヌクレオシドと反応させて、ヌクレオシド部分がホスホロアミデート結合によって共有結合的に接合されているヌクレオシド-チミジン二量体を形成させる。オリゴヌクレオチドの残りの部分は、標準的なホスホロアミダイトケミストリーによって合成される。スクシニル結合を切断した後、酸処理(例えば80%酢酸水溶液、室温で18〜20時間)によってホスホロアミデート結合を切断することにより、3'末端アミノ基を持つオリゴヌクレチドを生成させる。5'-モノホスホロチオエートオリゴヌクレオチド2は、以下のように形成される:5'モノホスフェートを、オリゴヌクレチドの5'末端に、化学的にまたはキナーゼを使って酵素的に取付ける(例えばSambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1989))。好ましくは、オリゴヌクレオチド合成の最終ステップとして、Eckstein編「Oligonucleotides and Analogues」(IRL Press、オックスフォード、1991)の第12章にThuongおよびAssclineが記載している、またはTetrahedron Lett., 27:4705 (1986)にHornおよびUrdeaが記載している、化学的リン酸化により(例えばClontech Labortories(カリフォルニア州パロアルト)の5'Phosphate-ON(商標)などといった市販の試薬を使って)モノホスフェートを付加する。次に、その5'-モノホスフェートを、通常の硫化剤、例えばS
8の5%ピフィジン(pyfidine)/CS
2溶液による処理(1:1、v/v、室温で45分間)、または米国特許第5,003,097号、同第5,151,510号、もしくは同第5,166,387号に記載されている硫化剤による処理を使って硫化する。モノホスホロジチオエートも類似の手法で製造される(例えばFroehlerらの欧州特許公開0 360 609 A2;Caruthersらの国際出願PCT/US89/02293など)。上記と同様に、5'-ハロアセチルアミノ誘導体化オリゴヌクレオチド3を、以下のスキームに従って、3'-モノホスホロチオエートオリゴヌクレオチド4と反応させる:
3'-BBB ... B-NHC(=O)CH
2X+ (3)
S-P(=O)(O
-)O-BBB ... B-5'→ (4)
3'-BBB ... B-NHC(=O)CH
2SP(=O)(O
-)-BBB ... B-5'
[式中、jマーおよびkマーのヌクレオチドモノマーが反対向きである点以外、記号は上記と同意義である]。この場合、化合物3は、3'-アミノオリゴヌクレオチドについて上述したように、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のN-スクシンイミジルハロアセテートを、ホウ酸ナトリウムバッファー中の5'-アミノデオキシリボヌクレオチド前駆体と室温で反応させることによって、製造することができる。5'-アミノデオキシヌクレオシドは、Glinskiら, J. Chem. Soc. Chem. Comm., 915-916 (1970);Millerら, J. Org. Chem. 29:1772 (1964);Ozolsら, Synthesis, 7:557-559 (1980);およびAzhayevら, Nucleic Acids Research, 6:625-643 (1979)(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に従って製造される。3'-モノホスホロチオエートオリゴヌクレオチド4は、ThuongおよびAsscline(前掲)が記述しているように、製造することができる。オリゴヌクレオチド1と4および2と3を反応させて、それぞれ二つの5'末端または二つの3'末端を持つポリマーユニットを形成させてもよい。
【0040】
分枝を取付けるための反応性官能基は、さまざまな部位に導入することができる。好ましくは、ポリマーユニットまたはループ上の選ばれたモノマーまたは連結部分に、アミノ官能基を導入し、次にそれを、上述のようにハロアセチルアミノ基に変換する。ヌクレオシドモノマーのアミノ誘導体化塩基は、Urdeaらの米国特許第5,093,232号;Ruthの米国特許第4,948,882号;Haralambidisら, Nucleic Acids Research, 15:4857-4876 (1987)などに教示されているように、導入することができる。Clontech Laboratories(カリフォルニア州パロアルト)からAminomodifier II(商標)として市販されている保護ヒドロキシアミンホスホロアミダイトによって、アミノ官能基を導入することもできる。好ましくは、例えばAgrawalら, Nucleic Acids Research, 18:5419-5423 (1990);およびJagerら, Biochemistry, 27:7237-7246 (1988)に教示されているように、I
2およびアルキルジアミンを使ったホスファイト結合の酸化によって、誘導体化されたホスホロアミデート結合を生成させることにより、アミノ官能基を導入する。一般に、上記の手法については、ハロアシル-またはハロアルキル-アミノ誘導体化ポリマーユニットを、ホスホロチオエート誘導体化ポリマーユニットとは別個に製造することが好ましく、そうしない場合は、ホスホロチオエート部分に保護基が必要である。
【0041】
ランダムアレイを構築するための固相表面
本発明では広範囲にわたるさまざまな支持体を使用することができる。ある態様では、支持体が、表面(好ましくは、調査対象の単分子を同じ平面に置くことができるように、実質的に平面状である表面)を持つ堅い固体である。平面状という特徴は、検出光学機器による効率の良いシグナル収集を可能にする。もう一つの態様では、本発明の固形支持体が無孔性である(特に、単分子のランダムアレイが、所要体積の小さいハイブリダイゼーション反応によって解析される場合)。適切な固形支持体材料として、例えばガラス、ポリアクリルアミド被覆ガラス、セラミックス、シリカ、シリコン、石英、種々のプラスチックなどの材料が挙げられる。一態様として、平面状の表面の面積は0.5〜4cm
2の範囲にあることができる。ある態様では、固形支持体が、均一にシラン処理された表面を持つ顕微鏡スライドなどのガラスまたは石英である。これは、例えば酸処理後に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、および無水キシレン(8:1:24 v/v)の溶液に、80℃で浸漬することなど、通常のプロトコールを使って達成することができる(例えばBeattieら (1995), Molecular Biotechnology, 4: 213)。そのような表面は、例えば表面への適用に先だって捕捉オリゴヌクレオチドに3'または5'トリエチレングリコールホスホリルスペーサーを設けること(これにより、エポキシシラン化された表面が形成される)などによって(Beattieら(前掲)参照)、捕捉オリゴヌクレオチドの末端取付けが可能になるように、たやすく処理される。Beaucage(前掲)の開示からもわかるように、ガラスおよび他の表面に反応性官能基を付加するには、他にも多くのプロトコールを使用することができる。
【0042】
酵素処理が必要でない場合はいつでも、捕捉オリゴヌクレオチドは、好ましい性質(例えば増加した二重鎖安定性)を付与する非天然ヌクレオシド単位および/または結合を含むことができる。そのような化合物として、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、オリゴヌクレオチドN3'→P5'ホスホロアミデート、オリゴ-2'-O-アルキルリボヌクレオチドなどが挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0043】
不連続な相隔たる領域のパターンが要求される本発明の実施形態では、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィー、およびナノプリンティングを使って、そのようなパターンを広範囲にわたるさまざまな表面上に生成させることができる(例えばPirrungらの米国特許第5,143,854号;Fodorらの米国特許第5,774,305号;Guo, (2004) Journal of Physics D: Applied Physics, 37: R123-141;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0044】
ある態様では、複数の不連続な相隔たる領域を含有する表面を、フォトリソグラフィーによって製作する。市販の光学的に平坦な石英基板に、厚さ100〜500nmのフォトレジスト層をスピンコーティングする。次にそのフォトレジストを石英基板上に焼き締める。活性化すべき領域のパターンを持つレチクルの像を、フォトレジストの表面に、ステッパーを使って投影する。露光後に、フォトレジストを現像して、UV光源に曝された投影パターン部分を除去する。これは、プラズマエッチング(極めて微細な細部を生じることができる乾式現像技法)によって達成される。次に、残っているフォトレジストを強化するために、基板を焼き締める。焼き締め後、石英ウエハは官能化できる状態になっている。次に、そのウエハを、3-アミノプロピルジメチルエトキシシランの蒸着に付す。アミノ官能化モノマーの密度は、モノマーの濃度および基板のばく露時間を変えることにより、緻密に制御することができる。プラズマエッチング工程によって露出された石英の部分だけが、モノマーと反応し、モノマーを捕捉しうる。次に、アミノ官能化モノマーの単層を露出した石英にキュアするために、基板を再び焼き締める。焼き締め後は、残留フォトレジストをアセトンで除去することができる。レジストとシランとでは結合ケミストリーが異なるので、基板上のアミノシラン官能化部分は、アセトン洗浄でも、無傷のままであることができる。これらの部分は、それらをピリジンおよびN,N-ジメチルホルムアミドの溶液中、p-フェニレンジイソチオシアネートと反応させることによって、さらに官能化することができる。この場合、基板はアミノ修飾オリゴヌクレチドと反応する能力を持つ。あるいは、5'-カルボキシ修飾剤-c10リンカー(Glen Research)を持つオリゴヌクレオチドを製造することもできる。この技法では、オリゴヌクレオチドをアミン修飾支持体に直接取付けることができるので、追加の官能化ステップを回避することができる。
【0045】
もう一つの態様では、複数の不連続な相隔たる領域を含有する表面が、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)によって製作される。DNAアレイを作成するために、一般に転写層と呼ばれるレジストの層を、石英基板にスピンコーティングする。次に、一般にインプリント層と呼ばれるもう一つのタイプのレジストを、転写層の上に塗布する。次に、マスターインプリントツールにより、インプリント層に陥凹を作る。インプリント層の総厚を、インプリントの低部が転写層に達するまで、プラズマエッチングで減少させる。転写層はインプリント層より除去しにくいので、大半が手つかずのまま残る。次にインプリント層および転写層を、加熱によって硬化させる。次に、インプリントの低部が石英に達するまで、基板をプラズマエッチャーに入れる。次に、上述のように蒸着によって基板を誘導体化する。
【0046】
もう一つの態様では、複数の不連続な相隔たる領域を含有する表面を、ナノプリンティングによって製作する。この工程では、フォトリソグラフィー、インプリントリソグラフィー、または電子線リソグラフィーを使って、プリントヘッド上に要求されるフィーチャーのネガ像であるマスターモールドを作る。プリントヘッドは、通例、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの柔らかい可撓性ポリマーで作られている。この材料、または異なる性質を持つ材料の層を、石英基板上にスピンコーティングする。次に、モールドを使って、レジスト材料のトップ層に、制御された温度および圧力条件下で、フィーチャーを型押しする。次に、そのプリントヘッドをプラズマベースのエッチング工程に付して、プリントヘッドのアスペクト比を改善し、型押しされた材料の経時的弛緩によるプリントヘッドの歪みを除去する。均一に誘導体化された表面上にアミン修飾オリゴヌクレオチドのパターンを沈着させることにより、ナノプリンティングを使って、ランダムアレイ基板を作製する。これらのオリゴヌクレオチドは、RCR産物用の捕捉プローブとして役立つだろう。ナノプリンティングの潜在的利点の一つは、交互配置された異なる捕捉プローブのパターンをランダムアレイ支持体上にプリントできることである。これは、それぞれのヘッドが異なるパターンを持ち、全てのパターンが組み合わされて最終構造の支持体パターンを形成する、複数のプリントヘッドを使った逐次プリントによって達成されるだろう。そのような方法により、ランダムアレイ内でのDNA要素の位置符号化(positional encoding)が、いくらか可能になる。例えば、特定の配列を含有する対照コンカテマーを、ランダムアレイの全体にわたって規則的な間隔で結合させることができる。
【0047】
さらにもう一つの態様では、コアおよび被覆材料を持つ約100億〜1億本の光ファイバーの束または束の束から製造されたプリンティングヘッドまたはインプリントマスターを使って、サブミクロンサイズの捕捉オリゴヌクレオチドスポットの高密度アレイを製造する。ファイバーを牽引し融合させることにより、類似するサイズまたは2〜5分の1もしくは2〜5倍のサイズを持つ被覆材料によって隔てられた約50〜1000nmのコアを持つユニークな材料が作成される。被覆材料のディファレンシャルエッチング(溶解)により、非常に数多くのナノサイズのポストを持つナノプリンティグヘッドが得られる。このプリンティングヘッドは、オリゴヌクレオチドまたは他の生物学的(タンパク質、オリゴペプチド、DNA、アプタマー)もしくは化学的化合物(例えばさまざまな活性基を持つシラン)を沈着させるために使用することができる。ある実施形態では、グラスファイバーツールを、パターニングされる支持体として使用して、オリゴヌクレオチドまたは他の生物学的もしくは化学的化合物を沈着させる。この場合は、エッチングで作り出されたポストだけが、沈着させる材料と接触するだろう。また、コアを通る光を導き、光誘発性化学反応がコアの先端表面だけで起こって、その結果として、エッチングの必要を排除することが可能になるように、溶融ファイバー束の平坦な切り口を使用することもできる。どちらの場合も、次に、同じ支持体を、オリゴヌクレオチドまたは他の反応物をタグ付けするために使用した蛍光ラベルをイメージングするための導光/集光装置として、使用することができる。この装置は、大きな視野を大きな開口数(潜在的に>1)と共に与える。活性材料またはオリゴヌクレオチドの沈着を行うスタンピングツールまたはプリンティングツールを使って、2〜100種類のオリゴヌクレオチドを、交互的パターンでプリントすることができる。この工程には、約50〜500nmへのプリントヘッドの正確な位置決めが要求される。このタイプのオリゴヌクレオチドアレイは、2〜100種類のDNA集団(例えば異なるソースDNA)を取付けるために使用することができる。また、DNA特異的アンカーまたはタグを使用することにより、サブ光分解能(sub-light resolution)スポットからのパラレル読出しにも、使用することができる。情報は、DNA特異的タグ(例えば16個のDNAに対する16個の特異的アンカー)によってアクセスすることができ、5〜6色の組み合わせにより、16回のライゲーションサイクルまたは1回のライゲーションサイクルと16回のデコーディングサイクルを使って、2塩基を読み取ることができる。このアレイ作製方法は、1フラグメントあたりに要求される情報が限られている(例えばサイクル数が少ない)場合には効率がよく、したがって、1サイクルあたりの情報量または1表面あたりのサイクル数が増加する。
【0048】
ある実施形態では、「不活性」コンカテマーを使って、試験コンカテマーを取付けるための表面を準備する。表面をまず、2タイプの合成コンカテマー(一方は捕捉コンカテマーであり、他方はスペーサーコンカテマーである)上に存在する結合部位に相補的な捕捉オリゴヌクレオチドで覆う。スペーサーコンカテマーは、試験コンカテマーの製造に使用するアダプターに相補的なDNAセグメントを持たず、捕捉コンカテマーに対して約5〜50(好ましくは10)倍過剰に使用される。捕捉オリゴヌクレオチドを持つ表面を、スペーサーコンカテマーが捕捉コンカテマーに対して約10倍(または5〜50倍)過剰に使用されている合成コンカテマー(連鎖ライゲーション(chain ligation)またはRCRによって製造)の混合物で、「飽和」させる。スペーサーコンカテマーと捕捉コンカテマーの比が約10:1であるため、捕捉コンカテマーは大部分がスペーサーコンカテマーの海に浮かぶ個別の島になる。10:1という比により、二つの捕捉コンカテマーは平均すると二つのスペーサーコンカテマーで隔てられることになる。コンカテマーが約200nmの直径を持つとすると、二つの捕捉コンカテマーは約600nmの中心間間隔を持つことになる。次に、この表面を使って、捕捉コンカテマーの一領域(ただしスペーサーコンカテマー上には存在しない領域)に相補的な結合部位を持つ試験コンカテマーまたは他の分子構造を取付ける。一つの捕捉コンカテマースポットにつき試験コンカテマーが一つだけ取付けられることを保証するために、捕捉コンカテマーは、試験コンカテマー中の結合部位の数より少ないコピー数を持つように製造することができる。試験DNAは捕捉コンカテマーだけに結合することができるので、集塊を作らずに高い部位占有率を持つ試験コンカテマーのアレイを製造することができる。ランダムな取付けであるため、表面上のいくつかの部分にはコンカテマーが何も取付けられていないということもありうるが、遊離の捕捉オリゴヌクレオチドを持つこれらの部分は、試験コンカテマーを結合することができないだろう。というのも、試験コンカテマーは捕捉オリゴヌクレオチドに対する結合部位を持たないように設計されるからである。ここに記載する個々の試験コンカテマーのアレイは、格子パターンには整列されないだろう。秩序正しい格子パターンはデータ収集を単純化するはずである。なぜなら、必要なピクセル数が少なくなり、画像解析システムもそれほど精巧でなくてよいからである。
【0049】
一態様として、複数の本発明のアレイを単一の表面上に置くことができる。例えば、標準的な96または384ウェルプレート形式に合致するように、パターニングされたアレイ基板を作成することができる。作成フォーマットは、一片のガラスまたはプラスチックおよび他の光学適合材料上、9mmピッチの6mm×6mmアレイの8×12パターンまたは4.5mmピッチの3.33mm×3.33mmの16×24パターンであることができる。ある例では、各6mm×6mmアレイが、1マイクロメートルピッチの250〜500nm角の領域3600万個からなる。ユニットアレイ間で異なる反応が混合しないように、疎水性もしくは他の表面または物理的障壁を使用することができる。
【0050】
一例として、シリコン、石英、またはガラス表面上の二酸化ケイ素にリソグラフィーで規定した部位を、3-アミノプロピルジメチルエトキシシランなどのシラン処理剤でシラン処理した後、p-フェニレンジイソチオシアネートなどの誘導体化剤で誘導体化することにより、DNA試料用の結合部位(すなわち不連続な相隔たる領域)を調製する。例えば、結合部位は、フォトリソグラフィー、電子線直接描画、またはナノインプリントリソグラフィーによって作成された四角形、円形または規則的/不規則的多角形であることができる。結合部位間の領域における非特異的結合の最小化。結合部位を取り囲む区域の湿潤性(疎水性対親水性)および反応性を制御して、その区域(すなわち結合部位以外の場所)におけるDNA試料の結合を防ぐことができる。例えば、この区域は、表面に共有結合するヘキサメチルジシラザン(HMDS)などの薬剤を使って、疎水性になるように、したがってDNA試料の親水性結合には適さなくなるように、製造することができる。同様に、この区域をDNA試料に対して非反応性にするフッ素系炭素化合物などの化学薬剤で、この区域をコーティングしてもよい。
【0051】
先の段落に挙げた三つの表面製作工程では、以下の代表的ステップに従う。フォトリソグラフィーの場合:
1)ガラスウエハを洗浄する
2)HMDSで表面をプライミングする
3)フォトレジストに結合部位をパターニングする
4)HMDSを除去するために酸素で結合部位表面を反応性イオンエッチングする
5)0.3%3-アミノプロピルジメチルエトキシシランでシラン処理する
6)裁断中のウエハを保護するためにフォトレジストでコーティングする
7)ウエハをチップに裁断する
8)フォトレジストを剥がす
9)10%ピリジンおよび90%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液で、溶液1mlにつき2.25mgのp-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)を使って、結合部位を2時間誘導体化した後、メタノール、アセトン、および水ですすぐ。
【0052】
電子線直接描画による表面製作の場合:
1)ガラスウエハを洗浄する
2)HMDSで表面をプライミングする
3)電子線でPMMAに結合部位をパターニングする
4)HMDSを除去するために酸素で結合部位表面を反応性イオンエッチングする
5)0.3%3-アミノプロピルジメチルエトキシシランでシラン処理する
6)裁断中のウエハを保護するためにフォトレジストでコーティングする
7)ウエハをチップに裁断する
8)フォトレジストを剥がす
9)10%ピリジンおよび90%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液で、溶液1mlにつき2.25mgのp-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)を使って、結合部位を2時間誘導体化した後、メタノール、アセトン、および水ですすぐ。
【0053】
ナノインプリントリソグラフィーによる表面製作の場合:
1)ガラスウエハを洗浄する
2)HMDSの表面をプライミングする
3)転写層でウエハをコーティングする
4)ナノインプリントテンプレートおよび転写層の上にあるフォトポリマーを使って、コンタクトプリントパターニングする
5)パターンを転写層まで乾式エッチングする
6)HMDSを除去するために酸素で結合部位表面を反応性イオンエッチングする
7)0.3%3-アミノプロピルジメチルエトキシシランでシラン処理する
8)裁断中のウエハを保護するためにフォトレジストでコーティングする
9)ウエハをチップに裁断する
10)フォトレジストを剥がす
11)10%ピリジンおよび90%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液で、溶液1mlにつき2.25mgのp-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)を使って、結合部位を2時間誘導体化した後、メタノール、アセトン、および水ですすぐ。
【0054】
上述のように、ガラス表面も、本発明のランダムアレイを構築するために使用することができる。例えば、適切なガラス表面を、顕微鏡カバースリップから構築することができる。顕微鏡カバースリップ(22mm角、厚さ約170μm)をテフロン(登録商標)製ラックに入れる。それらを95%エタノール/水中の3M KOHに、2分間浸漬する。次に、それらを水中ですすいだ後、アセトンですすぐ。これにより、表面汚染が取り除かれ、シラン処理の準備がガラスに施される。プラズマ洗浄はKOH洗浄に代わる一方法である。ガラスの代りに溶融シリカまたは溶融石英を使用することもできる。清浄な乾燥したカバースリップを、アセトン中の0.3%3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、0.3%水に浸漬する。それらを45分間反応させておく。次にそれらをアセトン中ですすぎ、100℃で1時間、キュアする。3-アミノプロピルジメチルエトキシシランはガラス表面上に単層を形成するので、3-アミノプロピルトリエトキシシランの代用品として使用することができる。単層表面の方が低いバックグラウンドをもたらす。シラン処理剤は蒸着法を使って適用することもできる。3-アミノプロピルトリエトキシシランは、液相で沈着させると、より多くのポリマー表面を形成する傾向がある。次に、アミノ修飾シランをチオシアネート基で終端させる。これは、10%ピリジンおよび90%N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液中、溶液1mlにつき2.25mgのp-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)を使って行われる。反応を2時間行った後、スライドをメタノール中で洗浄し、次にアセトン、および水ですすぐ。次に、カバースリップを乾燥すると、プローブを結合する準備が整う。シラン処理剤の末端にあるアミノ基を修飾するために使用することができる化学薬品は他にもある。例えば、グルタルアルデヒドを使って、シラン処理剤の末端にあるアミノ基を、アミノ修飾オリゴヌクレオチドにカップリングすることができるアルデヒド基に修飾することができる。100mM重炭酸ナトリウム水溶液中の10〜50μM捕捉オリゴヌクレオチド溶液を表面に適用することによって、捕捉オリゴヌクレオチドをカバースライドの表面に結合させる。溶液を乾燥させた後、水中で洗浄する。3-アミノ基をPDCで終端させることを避け、5'末端がカルボキシル基またはアルデヒド基で修飾されている捕捉オリゴヌクレオチドへの(3-アミノ末端の)直接コンジュゲーションを行うことが有益であるかもしれない。カルボキシル基の場合は、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド)を含有する溶液に、オリゴヌクレオチドを適用する。アルデヒド基の場合は、オリゴを5〜10分間濡れた状態に保ってから、表面を1%水素化ホウ素ナトリウムで処理する。
【0055】
本発明のもう一つの態様では、ナノメートルサイズのビーズを使って、ランダムアレイを製造する。コンカテマーを生成させるために使用するサークル中のアダプターオリゴヌクレオチドに相補的な短いオリゴヌクレオチド(例えば6〜30ヌクレオチド)で誘導体化されたサブミクロン(例えば20〜50nm範囲)のガラスタイプまたは他のタイプのビーズを使用する。ビーズ上のオリゴヌクレオチドの数および配列の長さは、溶解した状態でコンカテマーを弱く結合するように、制御することができる。ビーズの反応速度は、固相支持体のみの場合より、はるかに速いはずである。コンカテマーを結合した後、ビーズをアレイ基板の表面に沈降させる。アレイ基板は、表面への優先的結合と、それによる間隔の空いたコンカテマーのアレイの形成を可能する条件を選択することができるように、より長く、より安定で、より多くのオリゴヌクレオチドを持つ。ビーズが磁気ビーズである場合は、磁場を使ってそれらを表面に引張ることができ、それらを表面付近で移動させるために使用することもできる。あるいは、遠心分離を使ってビーズを表面上に濃縮することもできる。代表的なプロトコールは以下のとおりである:1.1μlにつき100万個のコンカテマーを含むコンカテマー溶液20μlの調製物を、約8塩基長(異なる条件下で6〜16塩基を使用しうる)の捕捉ヌクレオチド約500個を持つ2000万個のナノビーズと混合する。100nmナノビーズは約40,000nm
2あり、4000個までの短いオリゴヌクレオチドを保持することができる。捕捉プローブの密度を制御するための一方法は、この場合であれば、同じ取付けケミストリーを持つ2〜4塩基長オリゴヌクレオチドを約8倍多く、捕捉プローブと混合することである。また、もっと小さいナノビーズ(20〜50nm)を使用することもできる。2.300を超えるコピーを持つコンカテマーが、有意な個数でナノビーズに付着するように、反応条件(温度、pH、塩濃度)を調節する。3.その反応を、同じストリンジェント条件下で、サイズが約200nmの活性部位1600万個を持つ4×4mmのパターニングされた表面を有する支持体に適用し、ナノビーズを基板表面上に自然にまたは強制的に沈降させて、大きいコンカテマーをナノビーズと共に連れてくる。ナノビーズ-コンカテマーが移動する必要がある最大距離は約1mmである。ビーズの垂直移動は、潜在的コンカテマー-コンカテマー遭遇の数を最小化する。反応溶液は、少しずつ(例えば5μlずつ4回)適用することができる。この場合、適用される溶液の厚さ(例えばナノビーズ最大移動距離)は、わずかに約250ミクロンである。4.反応のストリンジェンシーをさらに増加させることにより、コンカテマーをナノビーズから放出させ、それらを、長さ20〜50塩基の捕捉オリゴヌクレオチド約300個を持つ支持体上の活性部位に取付ける。5.ナノビーズに取付けたコンカテマーは、最初は主として、支持体上の活性部位の間に沈降するだろう。なぜなら、不活性表面は活性表面よりも25倍多いからである。ナノビーズ-コンカテマーを約1〜数ミクロン移動させるために、わずかな水平移動力(例えば基板傾斜などの力)をかけてもよい。
【0056】
検出機器
上述のように、本発明に従って作製されたランダムアレイ上の単分子からはシグナルが生成し、そのシグナルは、走査電子顕微鏡、近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)、全反射照明蛍光顕微鏡(TIRFM)など、いくつかの検出システムによって検出される。表面上のナノスケール構造を解析し検出することを目的とするそのような技法の応用については、以下に挙げる文献(これらは参照により本明細書に組み入れられる)からもわかるように、豊富な手引きが文献に見出される:Reimerら編「Scanning Electron Microscopy: Physics of Image Formation and Microanalysis」第2版(Springer, 1998);Nieら, Anal. Chem., 78: 1528-1534 (2006);Hechtら, Journal Chemical Physics, 112: 7761-7774 (2000);Zhuら編「Near-Field Optics: Principles and Applications」(World Scientific Publishing、シンガポール、1999);Drmanacの国際特許公開WO 2004/076683;Lehrら, Anal. Chem., 75: 2414-2420 (2003);Neuschaferら, Biosensors & Bioelectronics, 18: 489-497 (2003);Neuschaferらの米国特許第6,289,144号など。特に興味深いのは、例えばNeuschaferらの米国特許第6,289,144号;Lehrら(前掲);およびDrmanacの国際特許公開WO 2004/076683などに開示されているTIRFMである。一態様として、本発明のアレイと共に使用される機器は、三つの基本構成要素を含む:(i)プローブ、洗浄液などの試薬類を貯蔵し、アレイに移動させ、加工するためのフルイディクスシステム;(ii)アレイを保持または包含し、フロースルーおよび温度制御能を持つ、反応チャンバまたはフローセル;ならびに(iii)照明および検出システム。ある実施形態では、フローセルが、温度を約5〜95℃(より具体的には10〜85℃)の範囲に維持することができる温度制御サブシステムを持ち、毎秒約0.5〜2℃の速度で温度を変化させることができる。
【0057】
一態様として、本発明の高分子構造を結合するために誘導体化されている1インチ角で厚さ170マイクロメートルのカバースリップ用のフローセルを使用することができる。このセルは、二つの平面の間にガラスおよびガスケットをサンドイッチ状に挟むことによって、「アレイ」を封入する。一方の平面は、イメージングを可能とするのに十分なサイズの開口部と、カバースリップ用のインデキシングポケット(indexing pocket)を持つ。他方の平面は、ガスケット用のインデキシングポケット、流体ポート、および温度制御システムを持つ。一つの流体ポートは、流体をフローセルから「引く」または「押す」シリンジポンプに接続され、他のポートは、漏斗状の混合チャンバに接続される。また、そのチャンバには液面センサが装備される。溶液類は漏斗内に投入され、必要に応じて混合された後、フローセル内に引き込まれる。液面センサが、フローセルに接続された漏斗中の空気を読み取ったら、液体を漏斗まで戻すために、ポンプを既知量だけ逆転させる。これにより、空気がフローセルに入るのを防ぐ。サンドイッチ状に挟むことによって起こる流体流れ/毛細管効果を調整するために、カバースリップ表面を区分けして、ストリップに分割してもよい。そのような基板は、毛細管流動効果を排除することによって基板上をバッファーが一様に流れやすくなるように、「開放(open air)」/「オープンフェイス(open face)」チャンバに格納することができる。イメージングは、TIRFまたは落射照明およびZeiss axiovert 200上の1.3メガピクセルHamamatsu orca-er-agなどのシステムを使って、100倍対物レンズで達成することができる。この構成は、基板にランダムに結合したRCRコンカテマー(無秩序アレイ)をイメージングする。イメージング速度は、対物レンズ拡大倍率を下げること、格子パターニングされたアレイを使用すること、および各画像で収集されるデータのピクセル数を増やすことによって改善することができる。例えば、最大4台(またはそれ以上)のカメラを、好ましくは10〜16メガピクセルの範囲で使用することができる。最大四つ(またはそれ以上)の発光スペクトルにまたがってピクセルデータを収集するために、複数のバンドパスフィルタおよび二色性ミラーも使用することができる。倍率が低下した対物レンズの低下した集光度を補償するために、励起光源の出力を増加させることができる。試料をハイブリダイズ/反応させている間もイメージングシステムを遊ばせておかないように、各カメラに一つ以上のフローチャンバを使用することによって、スループットを増加させることができる。アレイのプロービングは不連続的に行うことができるので、二つ以上のイメージングシステムを使用することにより、一組のアレイからデータを収集して、アッセイ時間をさらに減少させることができる。
【0058】
イメージング工程中は、基板に焦点を合わせておかなければならない。焦点を保つ際に重要な因子には、基板の平坦性、焦平面に対する基板の直交性、および基板を歪ませうる機械的力などがある。基板の平坦性は十分に制御することができ、1/4波長より良好な平坦性を持つガラスプレートは容易に得られる。基板上の一様でない機械的力は、ハイブリダイゼーションチャンバの適正な設計によって、最小限に抑えることができる。焦平面に対する直交性は、よく調節された高精度ステージによって達成することができる。自動焦点ルーチンは一般に動作するのに余分な時間を要するので、それらは、必要な場合に限って、実行することが望ましい。各画像を取得した後は、その画像の焦点が合っているかどうかを決定するために、速いアルゴリズムを使って画像が解析されるだろう。画像の焦点が合っていない場合は、自動焦点ルーチンが動作するだろう。その場合は、次のイメージングサイクル時に、そのアレイのそのセクションに戻ったときに使用するために、対物レンズのZ位置情報が保存されるだろう。対物レンズのZ位置を基板上のさまざまな位置でマッピングすることにより、基板画像取得に必要な時間が短縮されるだろう。
【0059】
蛍光の基づくシグナルに適した照明および検出システムは、80ミリワット532nm固体レーザーに結合されたTIRFスライダを装備したZeiss Axiovert 200である。このスライダは、正しいTIRF照明角度で、対物レンズを通して基板を照明する。TIRFは、基板と光学的に結合されたプリズムを通して基板を照明することにより、対物レンズを利用せずに達成することもできる。基板上でTIRFを実行するために平面導波路も使用することができる。落射照明も使用することができる。光源はラスター、スプレッドビーム、コヒーレント、インコヒーレントであることができ、単スペクトル源またはマルチスペクトル源に由来することができる。
【0060】
イメージングシステムの一実施形態は、1.25mmの視野を持つ20倍レンズを含み、検出は10メガピクセルカメラで達成される。そのようなシステムは、パターニングされたアレイに1ミクロンピッチで取付けられた約150万個のコンカテマーをイメージングする。この構成では、コンカテマー1個につき約6.4個のピクセルがある。コンカテマーあたりのピクセルの数は、対物レンズの視野を増減することによって調節することができる。例えば、1mmの視野は、コンカテマーあたり10ピクセルという値をもたらし、2mmの視野はコンカテマーあたり2.5ピクセルという値をもたらす。対物レンズの倍率およびNAに対して視野を調節することにより、光学機器および画像解析ソフトウェアによる解像がまだ可能な、最も低いコンカテマーあたりのピクセル数を得ることができる。
【0061】
TIRF照明および落射照明には、どちらも、ほとんどどんな光源でも使用することができる。照明スキームの一つは、共通の単色照明光源セット(6〜8色におよそ4つのレーザー)をイメージャー間で共有することである。各イメージャーは、任意の与えられた時刻に、異なる波長でデータを収集し、光源は、光学スイッチングシステムによって、そのイメージャーに切り替えられる。そのような実施形態では、照明光源は、好ましくは、少なくとも6つ、より好ましくは8つの異なる波長を生じる。そのような光源には、気体レーザー、ファイバーカプラで結合された複数のダイオード励起固体レーザー、濾波されたキセノンアーク灯、波長可変レーザー、またはより新規なSpectralum Light Engine(近日中にTidal Photonicsから販売される)などがある。Spectralum Light Engineは、プリズムを使って、光をスペクトル的に分離する。スペクトルは、Texas Instruments Digital Light Processorに投射され、これは、そのスペクトルの任意の部分をファイバーまたは光コネクタに選択的に反射することができる。このシステムは、バルブの加齢に伴うまたはバルブ交換による強度の相違を自動的に補償するために、個々の波長を横断して出力を監視し、較正して、それらを一定に保つ能力を持つ。
【0062】
以下の表は、考えうるレーザー、色素およびフィルタの例を表す。
【0064】
24時間で1領域につき約350(1色につき約60)の画像により60億のコンカテマーをうまくスコアリングするには、各イメージャーについてパラレル画像取得、画像取得速度の増加、および視野の増加を組み合わせる必要があるだろう。加えて、イメージャーは6〜8色をサポートしうる。市販の顕微鏡は普通、約1mmの視野を20倍の倍率、0.8のNAでイメージングする。0.5ミクロンというコンカテマーピッチ案では、これは、1画像あたりほぼ400万のコンカテマーということになる。これは、1回のハイブリダイゼーションサイクルあたり60億のスポットに約1,500の画像、または350回のイメージングサイクルで50万の画像をもたらす。大規模シークエンシング作業では、各イメージャーが、好ましくは、16メガピクセルCCDへの300ミリ秒の露出時間として、1日あたり約200,000の画像を取得する。したがって、好ましい機器設計は、それぞれが4つのフローセルを担当する4つのイメージャーモジュールである(合計16のフローセル)。上述のイメージングスキームは、各イメージャーが1000万ピクセルのCCD検出器を持ち、ほぼ300ミリ秒の露出時間で使用されると仮定している。これは、6つの蛍光体ラベルについてデータを収集するための方法として、許容できるはずである。このイメージング技法の考えうる短所の一つは、他の蛍光体はイメージングされているのに、一定の蛍光体が光源によって意図せずに光退色するかもしれないことである。光力を低く維持し、露出時間を最小限に保つことにより、光退色が著しく減少するだろう。インテンシファイドCCD(ICCD)を使用することにより、標準CCDより何桁も低い照明強度および露出時間でほぼ同じ品質のデータを収集することができるだろう。ICCDは一般に1〜1.4メガピクセルの範囲で入手することができる。要求される露出時間がはるかに短いので、1メガピクセルICCDは、標準CCDが一つの画像を取得する時間で10以上の画像を取得することができる。高速フィルタホイールおよび高速フローセルステージと一緒に使用すれば、1メガピクセルICCDは、10メガピクセル標準CCDと同じ量のデータを収集することができるはずである。
【0065】
より高い開口数でより大きな視野をイメージングする能力を持つ光学機器は、カスタムレンズアセンブリとして製作することができる。3mmの視野をNA>0.9でイメージングする能力を持つ20倍の光学機器を製作することができそうである。そのようなイメージングシステム二つを、高ピクセル数CCDまたはCCDモザイクアレイと組み合わせると、ほぼ14時間で、全8フローセルアッセイをイメージングできるはずである。上述のように、16フローセルを用いることによって、さらなるゲインを実現することができる。フローセルの数を二倍にすると、各視野あたりの画像数が減ることにより、イメージング時間が9時間に短縮されるだろう。
【0066】
コンカテマーおよび他のランダムDNAアレイでの反応効率は、プローブ、アンカーまたはプライマーおよび酵素の効率的な使用に依存しうる。これは、DNAを反応体積の異なる部分から表面の近傍に持ってくるために、液体を混合する(例えばフロースルーチャンバで液体を前後にプールする)か、撹拌するか、水平もしくは垂直電場を印加することによって達成しうる。効率のよい低コストアッセイ反応のためのアプローチの一つは、反応混合物を液滴などの薄層またはサイズ/厚さが約1〜数ミクロン(ただし好ましくは10ミクロン未満)の層に適用することである。1×1ミクロンスポット部分に指定された1×1×1ミクロン体積では、1pmol/1μl(1μM濃度)で、約1000分子のプローブが1〜1000コピーのDNAに近接しているだろう。100〜300分子までのプローブを使用すれば、プローブ濃度を有意に低下させず、有意なシグナルを得るのに十分なプローブが反応することになるだろう。このアプローチは、プローブおよび酵素を除去および洗浄するために開け閉めしておける開放反応チャンバで使用することができる。
【0067】
上述のように、複数のカメラと複数のフローセルを使うことによって、より高いスループットを達成することができる。1台のロボット液体処理ガントリーで例えば16のフローセルに対応することができる。また、システムの構成要素は全て、共通の温度制御システムおよび試薬セットを共有することができる。コンビナトリアルSBHシークエンシング作業の場合、ロボットは、フローセル漏斗に分配するために、プローブプールおよびライゲーションバッファーを準備をすることができる。専用シリンジポンプは、洗浄液およびハイブリダイゼーションバッファーを、各フローセルの漏斗ポートに直接分配することができる。各イメージャーは、2〜4フローセルのグループに対応することができる。フローセルの各グループは、研究用顕微鏡によく見られる自動プレートステージと同様のXYモーションプラットフォーム上に置くことができる。システム制御および全システム構成要素間の協調は、マスターコンピュータで動作しているソフトウェアによって行うことができる。制御ソフトウェアはアッセイサイクルを非同期的に実行することにより、アッセイ全体を通して各イメージャーを連続的に動作させることができる。フローセルは、一つの加熱器と一つの冷却器とを持つ温度制御システムに接続され、各フローセルまたは2〜4ブロックのセルを需要に応じて独立して加熱または冷却することを可能にする。各フローセル温度を監視することができ、フローセル温度が設定閾値未満に低下したら、バルブは熱水再循環側に開きうる。同様に、フローセルが設定閾値を上回ったら、バルブは冷水再循環側に開きうる。フローセルが設定温度範囲内にある場合は、どちらのバルブも開かない。熱および冷再循環水はアルミニウムフローセルボディを通過するが、アッセイバッファーおよび試薬類とは別々で隔離されたままである。
【0068】
ターゲット配列コンカテマーのランダムアレイの配列解析
上述のように、生体分子(例えばゲノムDNAフラグメントまたはcDNAフラグメント)のランダムアレイは、大規模配列決定のプラットフォーム、およびSAGE(serial analysis of gene expression)法やMPSS(masively parallel signature sequencing)法によってなされる測定と同様の方法で配列タグを計数することに基づくゲノムワイドな測定のプラットフォームになる(例えばVelculescuら, (1995), Science 270, 484-487;およびBrennerら (2000), Nature Biotechnology, 18: 630-634)。そのようなゲノムワイドな測定には、限定するわけではないが、例えば、当業者に知られる広範囲にわたるさまざまなアッセイによって行うことができるような、多形(ヌクレオチドの置換、欠失、および挿入、逆位など)の決定、メチル化パターン、コピー数パターンなどの決定が含まれる(例えばSyvanen (2005), Nature Genetics Supplement, 37: S5-S10;Gundersonら (2005), Nature Genetics, 37: 549-554;Fanら (2003), Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology, LXVIII: 69-78;および米国特許第4,883,750号;同第6,858,412号;同第5,871,921号;同第6,355,431号など;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0069】
本発明のランダムアレイでは、例えば、限定するわけではないが、ハイブリダイゼーションに基づく方法、例えばDrmanacの米国特許第6,864,052号;同第6,309,824号;および同第6,401,267号;ならびにDrmanacらの米国特許出願公開第2005/0191656号(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に開示されているもの、SBS法、例えばNyrenらの米国特許第6,210,891号;Ronaghiの米国特許第6,828,100号;Ronaghiら (1998), Science, 281: 363-365;Balasubramanianの米国特許第6,833,246号;Quakeの米国特許第6,911,345号;Liら, Proc. Natl. Acad. Sci., 100: 414-419 (2003)(これらは参照により本明細書に組み入れられる)、ならびにライゲーションに基づく方法、例えばShendureら (2005), Science, 309: 1728-1739(これは参照により本明細書に組み入れられる)など、さまざまなシークエンシング方法を使用することができる。一態様として、本発明に従ってターゲットポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する方法は、以下に挙げるステップを含む:(a)ターゲットポリヌクレオチドから複数のターゲットコンカテマーを生成させるステップ(各ターゲットコンカテマーはターゲットポリヌクレオチドのフラグメントのコピーを複数含み、複数のターゲットコンカテマーには、ターゲットポリヌクレオチドを実質的にカバーする数のフラグメントが含まれる);(b)ターゲットコンカテマーの少なくとも過半数が光学的に解像可能であるような密度で表面に固定されたターゲットコンカテマーのランダムアレイを形成させるステップ;(c)各ターゲットコンカテマー中の各フラグメントの少なくとも一部の配列を同定するステップ;および(d)コンカテマーのフラグメントの各部分の配列のアイデンティティからターゲットポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を再構築するステップ。通例、「実質的ににカバーする」とは、解析されるDNAの量が、ターゲットポリヌクレオチドの少なくとも2コピーに相当するものを含有すること、もう一つの態様では少なくとも10コピー、もう一つの態様では少なくとも20コピー、もう一つの態様では少なくとも100コピーに相当するものを含有することを意味する。ターゲットポリヌクレオチドには、ゲノムDNAフラグメントおよびcDNAフラグメントなどのDNAフラグメント、ならびにRNAフラグメトを含めることができる。
【0070】
一態様として、複数のDNAまたはRNAフラグメント中の配列を決定するために本発明と共に使用されるシークエンシング方法は、以下のステップを含む:(a)それぞれがDNAまたはRNAフラグメントのコンカテマーを含む複数のポリヌクレオチド分子を生成させるステップ;(b)ターゲットコンカテマーの少なくとも過半数が光学的に解像可能であるような密度で表面に固定されたポリヌクレオチド分子のランダムアレイを形成させるステップ;および(c)解像可能なポリヌクレオチド中の各DNAまたはRNAフラグメントの少なくとも一部の配列を、光学的に検出可能な反応物の少なくとも一つの化学反応を使って同定するステップ。ある実施形態では、そのような光学的に検出可能な反応物がオリゴヌクレオチドである。もう一つの実施形態では、そのような光学的に検出可能な反応物がヌクレオシド三リン酸、例えばコンカテマーにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを伸長させるために使用することができる蛍光標識ヌクレオシド三リン酸である。もう一つの実施形態では、そのような光学的に検出可能な試薬が、コンカテマー上で隣接した二重鎖を形成する第1オリゴヌクレオチドと第2オリゴヌクレオチドとを連結することによって形成されるオリゴヌクレオチドである。もう一つの実施形態では、そのような化学反応が、例えばコンカテマーにハイブリダイズしたプライマーを伸長させることなどによる、DNAまたはRNAの合成である。さらにもう一つの実施形態では、上記の光学的に検出可能な反応物が、核酸結合性オリゴペプチドまたはポリペプチドまたはタンパク質である。
【0071】
ある態様では、ランダムアレイ上のコンカテマーのポリヌクレオチド分析物のパラレルシークエンシングが、Drmanacが前掲の特許に開示したコンビナトリアルSBH(cSBH)によって達成される。ある態様では、第1および第2のオリゴヌクレオチドプローブセット(各セットは、そのセット内の所定のプローブ長について考えうる全ての配列を持つオリゴヌクレオチドを含むメンバープローブを有する)を用意する。例えば、あるセットが長さ6のプローブを含有するとすると、そのセットは4096(=4
6)個のプローブを含有する。もう一つの態様では、第1および第2のオリゴヌクレドプローブセットが、選ばれたターゲットポリヌクレオチドセットを検出するために設計された選ばれたヌクレオチド配列を持つプローブを含む。配列は、一つのプローブまたはプローブプールをハイブリダイズさせ、第2のプローブまたは第2のプローブプールをハイブリダイズさせ、それぞれのターゲット配列上で完全にマッチした二重鎖を形成するプローブを連結し、連結されるプローブを同定して、ターゲット配列に関する配列情報を取得し、全てのプローブまたはプローブプールがハイブリダイズされるまでこれらのステップを繰返し、そのハイブリダイゼーションおよび同定ステップ中に蓄積される配列情報からターゲットのヌクレオチド配列を決定することによって決定される。
【0072】
シークエンシング作業のために、いくつかの実施形態では、米国特許第6,864,052号に開示されているように、上記のセットをサブセットに分割し、それらをプールして一緒に使用することができる。第1セットおよび第2セットからのプローブを、ターゲット配列に、一緒にまたは順番に、セット全体として、またはサブセットもしくはプールとして、ハイブリダイズさせることができる。第1セットまたは第2セット中のプローブの長さは、ある態様では5〜10ヌクレオチドの範囲、もう一つの態様では5〜7ヌクレオチドの範囲にあって、連結された時に、それらがそれぞれ10〜20および10〜14の範囲の長さを持つライゲーション産物を形成するようになっている。
【0073】
もう一つの態様として、そのような技法を使って、取付けられたDNAコンカテマーのそれぞれの配列アイデンティティを、「シグネチャー」アプローチで決定することもできる。取付けられたコンカテマーの約25〜50%(いくつかの応用例では10〜30%)が各プローブに対して完全マッチ配列を持つことになるように、約50〜100個あるいは200個のプローブを使用する。このタイプのデータにより、コンカテマー内の各増幅DNAフラグメントを、基準配列にマッピングすることが可能になる。例えば、そのような工程により、4色のラベリングスキームで16回のハイブリダイゼーション/ストリップオフサイクルを使って、64個の4マー(すなわちが考えうる全256個の4マーの25%)をスコアリングすることができる。コンカテマー中に増幅された60〜70塩基フラグメントでは、64プローブのうち約16プローブが陽性になるだろう。というのも、64塩基長の配列には64の考えうる4マー(すなわち全ての考えうる4マーの4分の1)が存在するからである。無関係な60〜70塩基フラグメントは、著しく異なる約16の陽性デコーディングプローブセットを持つことになる。64プローブのうちの16プローブの組み合わせが偶然に存在する確率は10億フラグメントごとに1であり、これは実際上、そのコンカテマーのユニークなシグネチャーになる。20サイクルで80プローブをスコアリングし、20の陽性プローブを生成させると、より一層ユニークであると思われるシグネチャーを生成し、偶然による出現率は10億の10億倍回に1回である。「シグネチャー」アプローチはcDNAライブラリーから新規遺伝子を選択するために使用されたことがある。シグネチャーアプローチの実行は、試験した全てのプローブについて、得られた強度を選別し、陽性プローブ閾値を満たすプローブを所定の(予想される)数まで選択することである。これらのプローブは、そのアレイ中に存在すると予想される全DNAフラグメントの配列にマッピングされるだろう(より長い基準配列のスライディングウィンドウを使用することができる)。選ばれた陽性プローブを全てまたは統計的に十分な数だけ持つ配列が、与えられたコンカテマー中のDNAフラグメントの配列として割り当てられる。もう一つのアプローチでは、前もって測定しておいた完全マッチおよびミスマッチハイブリダイゼーション/ライゲーション効率を使って、予想されるシグナルを、使用したプローブの全てについて定義することができる。この場合は、相関係数に似た尺度を算出することができる。
【0074】
4マーをスコアリングする好ましい方法は、プローブのペア、例えば:N
(5-7)BBBをBN
(7-9)と、連結することである(ここに、Bは所定の塩基であり、Nは縮重塩基である)。より長いDNAコンカテマープローブ上でシグネチャーを生成させるには、より多くのユニーク塩基が使用されるだろう。例えば、1000塩基長のフラグメントにおける25%の陽性率は、N
(4-6)BBBBおよびBBN
(6-8)によって達成されるだろう。より長いフラグメントが、約60〜80プローブという同じ数(4色を使って15〜20のライゲーションサイクル)を必要とすることに注意されたい。
【0075】
ある実施形態では、与えられた長さの全てのプローブ(例えば4096個のN
2-4BBBBBBN
2-4)または全てのライゲーションペアを使って、コンカテマー中のDNAの全配列を決定することができる。例えば、N
(5-7)B
3とBBN
(6-8)の1024の組み合わせをスコアリングして(4色を使用すると256サイクル) 、約250塩基(好ましくは約100塩基)までのDNAフラグメントの配列を決定することができる。
【0076】
多数のNを持つシークエンシングプローブのデコーディングは、効率の差を最小限に抑えるために、縮重塩基における配列のサブセットを複数合成することによって準備することができる。各サブセットを適正な濃度で混合物に加える。また、一部のサブセットは、他のサブセットよりも多くの縮重位置を持ちうる。例えば、セットN
(5-7)BBBの64プローブのそれぞれは、4つの異なる合成で製造することができる。一つは、完全に縮重した通常の5〜7塩基であり;2番目はN0-3(A,T)5BBBであり;3番目はN0-2(A,T)(G,C)(A,T)(G,C)(A,T)BBBであり、4番目はN0-2(G,C)(A,T)(G,C)(A,T)(G,C)BBBである。
【0077】
三つの特異的合成で得たオリゴヌクレオチド調製物を、実験的に決定した量で通常合成に加えて、BBB配列の前にATリッチ(例えばAATAT)または(AもしくはT)および(GもしくはC)交互配列(例えばACAGTもしくはGAGAC)を持つターゲット配列とのハイブリッド生成を増加させる。これらの配列はハイブリッド形成の効率が低いと予想される。1024のターゲット配列全てを、N
0-3NNNNNBBBプローブとのハイブリッドを形成する効率について調べることができ、最も弱い結合を与えるタイプを、約1〜10の追加合成で製造し、基本プローブ調製物に加えることができる。
【0078】
シグネチャーによるデコーディング:小数の異なる試料に対する小数のプローブ:20プローブ中5〜7陽性(4色を使って5サイクル)は、約1万〜10万の異なるフラグメントを識別する能力を持つ。
8〜20マーRCR産物のデコーディング:この応用例では、DNAコンカテマーの形をしたユニークな8〜20塩基認識配列のランダムな分布として、アレイを形成させる。8〜20塩基プローブ領域の配列を決定するために、プローブをデコードする必要がある。これを行うために少なくとも二つの選択肢を利用することができ、以下の例では、12マーについて、その工程を説明する。まず最初に、短いプローブのハイブリダイゼーション特異性および完全にマッチしたハイブリッドのライゲーション特異性を利用して、配列の半分を決定する。12マーに隣接する6〜10塩基は予め定義され、6マー〜10マーオリゴヌクレオチドのサポート(support)として機能する。この短い6マーは、その3'末端で4つの標識6マー〜10マーの一つに連結する。これらのデコーディングプローブは、4つのオリゴヌクレオチドプールからなり、各オリゴヌクレオチドは、4〜9個の縮重塩基と1個の所定塩基とからなる。また、このオリゴヌクレオチドは4つの蛍光ラベルの一つで標識されるだろう。したがって、4つの考えうる塩基A、C、G、またはTのそれぞれは、蛍光色素によって表されるだろう。例えば、これら5群の4つのオリゴヌクレオチドと1つのユニバーサルオリゴヌクレオチド(Us)を、ライゲーションアッセイで使用することにより、12マーの最初の5塩基を配列決定することができる:B=末端の特定色素またはタグと関連づけられた4塩基のそれぞれ:
UUUUUUUU.BNNNNNNN
*
UUUUUUUU.NBNNNNNN
UUUUUUUU.NNBNNNNN
UUUUUUUU.NNNBNNNN
UUUUUUUU.NNNNBNNN。
6個以上の塩基は、追加のプローブプールを使って配列決定することができる。12マーの中央近くの位置における識別を改善するために、6マーオリゴヌクレオチドをさらに12マー配列中に置くことができる。これには、そのシフトに対応するために、非標識オリゴヌクレオチドの3'末端に縮重塩基を組み込む必要があるだろう。これは、12マーの6位および7位に関するデコーディングプローブの一例である。
UUUUUUNN.NNNBNNNN
UUUUUUNN.NNNNBNNN。
【0079】
同様にして、12マーの右側から6塩基を、固定されたオリゴヌクレオチドおよび5'標識プローブを使って、デコードすることができる。上述のシステムでは、12マーの片側の6塩基を定義するのに6サイクルが必要である。ライゲーション部位から離れた塩基の冗長サイクル解析により、これは7または8サイクルは増加しうる。したがって合計すると、12マーの完全な配列決定は、12〜16サイクルのライゲーションで達成できるだろう。タイプの異なる二つの検出プローブライブラリーを組み合わせることによる、アレイ化DNAの部分的なまたは完全な配列決定。このアプローチでは、一つのセットが一般タイプN
3-8B
4-6のプローブ(アンカー)を持ち、これがセットBN
6-8、NBN
5-7、N
2BN
4-6、およびN
3BN
3-5からの第1の2または3または4プローブ/プローブプールと連結される。主な要件は、第1セットからのプローブを第2セットからの2〜4またはそれ以上のプローブと共に数サイクルで試験して、より長い連続した配列、例えば5〜6+3〜4=8〜10を、ほんの3〜4サイクルで読み取ることである。一例として、この工程は以下のとおりである:
1)1〜4個の4マーまたはより多くの5マーアンカーをハイブリダイズして、1DNAあたり70〜80%の1または2アンカーを得る。プールからどのアンカーが陽性であるかを識別するための一方法は、異なるハイブリッド安定性を持つ(おそらくNの数も異なる)特異的プローブを混合することである。プールからどのアンカーがスポットにハイブリダイズされるかを決定するために、アンカーにタグ付けしてもよい。追加DNAセグメントとしてのタグは、検出方法としてのアジャスタブルディスプレイスメント(adjustable displacement)に、使用することができる。例えば、EEEEEEEENNNAAAAAおよびFFFFFFFFNNNCCCCCプローブは、ハイブリダイゼーションまたはハイブリダイゼーションおよびライゲーション後に、対応する二つのディスプレーサー(displacer):EEEEEEEENNNNNおよびFFFFFFFFNNNNNNNNによって、差別的に除去することができ、この場合は、2番目の方が効率的である。どのアンカーが陽性であるかを決定するためだけに、別個のサイクルを使用することができる。この目的には、複数の色で標識またはタグ付けされたアンカーを、非標識N7〜N10サポーターオリゴヌクレオチドに連結することができる。
2)4つの塩基に対応する4色を持つBNNNNNNNNプローブをハイブリダイズさせる;二つのアンカーが一つのDNA中で陽性である場合には、弁別的に洗浄して(またはタグに対する相補鎖で置換して)、スコアリングされた二つの塩基のどちらがどちらのアンカーに関連するかを読み取る。このようにして、二つの7〜10塩基配列を同時にスコアリングすることができる。
【0080】
2-4サイクルにおいてさらなる2-4塩基について4-6塩基のアンカーに伸長して、各アレイにつき16の異なるアンカー(4色を使用する場合、32〜64回の物理的サイクル)を実行して1フラグメントにつき約16の考えうる8マー(合計約100塩基)を決定する(それを基準配列にマッピングするには十分である(100マーが10個の8マーからなるセットを持つ確率は、1兆の1兆倍回に1回未満(10
-28)である))。もう一つのアレイ中の同じフラグメント上で並列してスコアリングされた異なるアンカーからのデータを組み合わせることにより、そのフラグメントの配列、ひいてはゲノム全体の配列を、オーバーラップする7〜10マーから生成させることができる。
【0081】
デコーディングプローブまたは配列決定プローブのより大きなマルチプレックスのための、DNAタグによるプローブのタグ付け。プローブを直接標識する代わりに、それらを、天然塩基または新しい合成塩基(isoGおよびisoCなど)で構成される異なるオリゴヌクオチド配列でタグ付けすることができる。タグは、異なるオリゴヌクレオチド長(約6〜24塩基)および/または配列(GC含量を含む)を使って、それらのアンチタグと極めて正確な結合効率を持つように設計することができる。例えば、4回の連続的サイクルまたは1回のハイブリダイゼーションサイクルとそれに続く弁別的洗浄で、特異的アンチタグを使って認識することができる、4つの異なるタグを設計することができる。弁別的洗浄では、初期シグナルが、各タグにつき、それぞれ95〜99%、30〜40%、10〜20%および0〜5%に低下する。この場合、異なるタグを持つプローブは同じドットにはまれにしかハイブリダイズしないと仮定すると、二つの画像を取得することにより、4つの測定が得られる。それらが連続的に(または2〜16の異なる色で標識して1回に2〜16が)デコードされるとしても、多くの異なるタグを持つことのもう一つの利点は、1回のアッセイ反応に多数の個別に認識できるプローブを使用できることである。このように、プローブが短いインキュベーションおよび除去反応でデコードされるのであれば、4〜64倍長いアッセイ時間(これは、より特異的なまたはより強いシグナルをもたらしうる)が可能だろう。
【0082】
デコーディング工程には48〜96以上のデコーディングプローブが必要である。これらのプールは、それぞれが異なる蛍光スペクトルを持つ4つの蛍光体でそれらをエンコードすることにより、さらに12〜24以上のプールに組み合わされる。20倍対物レンズを使うと、各6mm×6mmアレイは、10メガピクセルカメラを使って完全にカバーするのに、約30画像を必要としうる。1マイクロメートルアレイ部分のそれぞれは、約8ピクセルによって読まれる。各画像は250ミリ秒で取得される(露光に150ミリ秒およびステージを移動させるのに100ミリ秒)。この速い取得を使うと、各アレイをイメージングするのに約7.5秒あるいは各基板上の96アレイの全セットをイメージングするのに12分を要するだろう。イメージングシステムの一実施形態において、この高い画像取得速度は、それぞれが異なる蛍光体の蛍光スペクトルをイメージングする4つの10メガピクセルカメラによって達成される。カメラは一連の二色性ビームスプリッターを通して顕微鏡に結合される。余分な時間を要する自動焦点ルーチンは、取得した画像の焦点が合っていない場合にのみ動作する。その場合は、次のイメージングサイクル時に、そのアレイのそのセクションに戻ったときに使用するために、Z軸位置情報が保存されるだろう。基板上の各位置について自動焦点位置をマッピングすることにより、画像取得に要する時間が劇的に短縮されるだろう。
【0083】
各アレイはデコードするのに約12〜24サイクルを要する。各サイクルは、ハイブリダイゼーション、洗浄、アレイイメージング、およびストリップオフステップからなる。これらのステップは、この順に、上記の例の場合、それぞれ5、2、12、および5分を要し、各サイクルにつき合計24分、あるいは作業がリニアに行われたとして、各アレイにつきほぼ5〜10時間を要しうる。各アレイをデコードする時間は、システムが絶えずイメージングできるようにすることによって、2分の1に短縮することができる。これを達成するために、各顕微鏡で二つの別個の基板のイメージングを互い違いに配置する。一つの基板を反応させている間に、他方の基板をイメージングする。
【0084】
cSBHを使った代表的デコーディングサイクルには、以下のステップが含まれる:(i)アレイの温度をハイブリダイゼーション温度(通常は5〜25℃の範囲)に設定する;(ii)次に、ロボットピペッターを使って、少量のデコーディングプローブを適当な量のハイブリダイゼーションバッファーと予備混合する;(iii)混合した試薬をハイブリダイゼーションチャンバにピペッティングする;(iv)予定の時間、ハイブリダイズさせる;(v)ポンプ(シリンジなど)を使ってチャンバから試薬を排出する;(vi)非ハイブリッドのミスマッチを洗浄するためにバッファーを加える;(vii)チャンバ温度を適当な洗浄温度(約10〜40℃)に調節する;(viii)チャンバを排液する;(ix)イメージングを改善する必要がある場合は、洗浄バッファーを追加する;(x)各アレイを、好ましくは高ピクセル数の高感度ccdカメラ(群)と光学的に結合された中倍率(20倍)顕微鏡対物レンズを使って、イメージングする;プレートステージがチャンバ(あるいは投入ロートを含むフローセル)をオブジェクト(object)の上で動かすか、対物光学アセンブリがチャンバの下で動く;二色性ミラー/ビームスプリッターを使用する一定の光学的配置を使って、マルチスペクトル画像を同時に収集することにより、画像取得時間を短縮することができる;アレイは、アレイ/画像サイズ/ピクセル密度に応じて、セクションごとにイメージイングするか、全体的にイメージングすることができる;セクションは(活性部位作製時に)基板上に予めコードしておいた統計的に有意な空領域を使って画像を整列することによりアセンブルするか、マルチステップナノプリンティング技法を使って作製することができ、例えば特定の捕捉プローブを使って、部位(活性部位のグリッド)を、そのグリッド中に空領域を残してプリントし、次に、別個のプリントヘッドを使って、その領域に異なるパターンまたは捕捉プローブをプリントすることができる;(xi)チャンバを排液してプローブストリップバッファーで置き換え(または既に充填されているバッファーを使用)、チャンバをプローブストリップオフ温度(60〜90℃)に加熱する;ストリップオフステップでは、ストリップオフ温度を下げるために、高pHバッファーを使用することができる;指定した時間、待つ;(xii)バッファーを除去する;(xiii)次のデコーディングプローブプールをセットで使って、次のサイクルを開始する。
【0085】
ラベルおよび本発明のアレイ上のポリヌクレオチドに対するプローブによるシグナル生成
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、放射性部分、蛍光部分、比色部分、化学発光部分などの直接的または間接的取付けなど、さまざまな方法で標識することができる。DNAを標識する方法およびDNAアダプターを構築する方法に関する包括的な総説は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブの構築に応用できる手引きになる。そのような総説には、Kricka, Ann. Clin. Biochem., 39: 114-129 (2002);Schaferlingら, Anal. Bioanal. Chem., (April 12, 2006);Matthewsら,
Anal. Biochem., Vol 169, 1-25 (1988);Haugland「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」第10版(Invitrogen/Molecular Probes, Inc.、ユージーン、2006);KellerおよびManak「DNA Probes」第2版(Stockton Press、ニューヨーク、1993);ならびにEckstein編「Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach」(IRL Press、オックスフォード、1991);Wetmur, Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology, 26: 227-259 (1991);Hermanson「Bioconjugate Techniques」(Academic Press、ニューヨーク、1996)など。本発明に応用できる多くのより具体的な方法が、以下の参考文献例に開示されている:Fungらの米国特許第4,757,141号;Hobbs, Jr.ら 米国特許第5,151,507号;Cruickshankの米国特許第5,091,519号;(レポーター基を取付けるための官能化オリゴヌクレオチドの合成);Jablonskiら, Nucleic Acids Research, 14: 6115-6128 (1986)(酵素-オリゴヌクレオチドコンジュゲート);Juら, Nature Medicine, 2: 246-249 (1996);Bawendiらの米国特許第6,326,144号(誘導体化蛍光ナノ結晶);Bruchezらの米国特許第6,274,323号(誘導体化蛍光ナノ結晶)など。
【0086】
ある態様では、一つ以上の蛍光色素、例えばMenchenらの米国特許第5,188,934号(4,7-ジクロロフルオレセイン色素);Begotらの米国特許第5,366,860号(スペクトル的に分割可能なローダミン色素);Leeらの米国特許第5,847,162号(4,7-ジクロロローダミン色素);Khannaらの米国特許第4,318,846号(エーテル置換フルオレセイン色素);Leeらの米国特許第5,800,996号(エネルギー移動色素);Leeらの米国特許第5,066,580号(キサンテン色素);Mathiesらの米国特許第5,688,648号(エネルギー移動色素)などを、オリゴヌクレオチドプローブのラベルとして使用する。標識は、以下に挙げる特許および特許出願(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に開示されているように、量子ドットを使って行うこともできる:6,322,901;6,576,291;6,423,551;6,251,303;6,319,426;6,426,513;6,444,143;5,990,479;6,207,392;2002/0045045;2003/0017264など。本明細書で使用する「蛍光シグナル生成部分」という用語は、一つ以上の分子の蛍光吸収および/または蛍光放出特性によって情報を伝達するシグナリング手段を意味する。そのような蛍光特性には、蛍光強度、蛍光寿命、蛍光スペクトル特徴、エネルギー移動などが含まれる。
【0087】
標識オリゴヌクレオチドに容易に組み込まれる市販の蛍光ヌクレオチド類似体には、例えばCy3-dCTP、Cy3-dUTP、Cy5-dCTP、Cy5-dUTP(Amersham Biosciences、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)、フルオレセイン-12-dUTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、Texas Red(登録商標)-5-dUTP、Cascade Blue(登録商標)-7-dUTP、BODIPY(登録商標)FL-14-dUTP、BODIPY(登録商標)R-14-dUTP、BODIPY(登録商標)TR-14-dUTP、Rhodamine Green(商標)-5-dUTP、Oregon Green(登録商標)488-5-dUTP、Texas Red(登録商標)-12-dUTP、BODIPY(登録商標)630/650-14-dUTP、BODIPY(登録商標)650/665-14-dUTP、Alexa Fluor(登録商標)488-5-dUTP、Alexa Fluor(登録商標)532-5-dUTP、Alexa Fluor(登録商標)568-5-dUTP、Alexa Fluor(登録商標)594-5-dUTP、Alexa Fluor(登録商標)546-14-dUTP、フルオレセイン-12-UTP、テトラメチルローダミン-6-UTP、Texas Red(登録商標)-5-UTP、Cascade Blue(登録商標)-7-UTP、BODIPY(登録商標)FL-14-UTP、BODIPY(登録商標)TMR-14-UTP、BODIPY(登録商標)TR-14-UTP、Rhodamine Green(商標)-5-UTP、Alexa Fluor(登録商標)488-5-UTP、Alexa Fluor(登録商標)546-14-UTP(Molecular Probes, Inc.、米国オレゴン州ユージーン)などがある。合成後の取付けに利用することができる他の蛍光体として、なかんずくAlexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)647、BODIPY 493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY 530/550、BODIPY TMR、BODIPY 558/568、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、Cascade Blue、Cascade Yellow、ダンシル、リサミン(lissamine)ローダミンB、Marina Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 514、Pacific Blue、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、Texas Red(Molecular Probes, Inc.(米国オレゴン州ユージーン)から入手することができる)、ならびにCy2、Cy3.5、Cy5.5、およびCy7(Amersham Biosciences(ニュージャージー州ピスカタウェイ)など)が挙げられる。PerCP-Cy5.5、PE-Cy5、PE-Cy5.5、PE-Cy7、PE-Texas Red、およびAPC-Cy7などのFRETタンデム蛍光体も使用することができ、PE-Alexa色素(610、647、680)およびAPC-Alexa色素も使用することができる。ビオチンまたはその誘導体を、検出オリゴヌクレオチド上のラベルとして使用し、続いて、検出可能に標識されたアビジン/ストレプトアビジン誘導体(例えばフィコエリトリンコンジュゲートストレプトアビジン)または検出可能に標識された抗ビオチン抗体で結合することもできる。ジゴキシゲニンをラベルとして組み込み、続いて検出可能に標識された抗ジゴキシゲニン抗体(例えばフルオレセイン化抗ジゴキシゲニン)で結合することができる。アミノアリル-dUTP残基を検出オリゴヌクレオチドに組み込み、続いてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)誘導体化蛍光色素(例えば上に列挙したもの)にカップリングすることもできる。一般に、検出可能に標識されたコンジュゲートパートナーを、検出が可能なように結合することができる限り、コンジュゲートペアのどのメンバーでも、検出オリゴヌクレオチドに組み込むことができる。本明細書で使用する抗体という用語は、任意のクラスの抗体分子、またはそのサブフラグメント(例えばFab)を指す。他の適切な検出オリゴヌクレオチド用ラベルとして、フルオレセイン(FAM)、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)、ダンシル、ビオチン、ブロモデオキシウリジン(BrdU)、ヘキサヒスチジン(6×His)、リン-アミノ酸(例えばP-tyr、P-ser、P-thr)、または他の任意の適切なラベルを挙げることができる。ある実施形態では、以下に挙げるハプテン/抗体ペアを検出に使用する(この場合、抗体のそれぞれは検出可能なラベルで誘導体化される):ビオチン/α-ビオチン、ジゴキシゲニン/α-ジゴキシゲニン、ジニトロフェノール(DNP)/α-DNP、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)/α-FAM。以下のスキームで説明するように、プローブを、とりわけハプテンで間接的に標識した後、そのハプテンを、例えばHoltkeらの米国特許第5,344,757号;同第5,702,888号;および同第5,354,657号;Huberらの米国特許第5,198,537号;Miyoshiの米国特許第4,849,336号;MisiuraおよびGaitのPCT公開WO 91/17160等に開示されているように、捕捉剤によって結合することができる。本発明と共に使用するために、多くの異なるハプテン-捕捉剤ペアを利用することができる。代表的なハプテンには、ビオチン、デス-ビオチンおよび他の誘導体、ジニトロフェノール、ダンシル、フルオレセイン、CY5、および他の色素、ジゴキシゲニンなどがある。ビオチンの場合、捕捉剤はアビジン、ストレプトアビジン、または抗体であることができる。抗体は、他のハプテンの捕捉剤として使用することができる(多くの色素-抗体ペアが市販されている;例えばMolecular Probes)。
【0088】
本発明のキット
本明細書に記載する方法の商業化においては、本発明のランダムアレイを構築し、それをさまざまな応用例に使用するための一定のキットが、とりわけ有用である。本発明のランダムアレイを応用するためのキットには、例えば、ターゲットポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定するためのキット、基準DNA配列と試験DNA配列の間の相違の大規模同定を行うためのキット、エクソンをプロファイリングするためのキットなどがあるが、これらに限るわけではない。キットは、典型的には、表面を持つ少なくとも一つの支持体、および本発明のランダムアレイを構築するのに、またはそれを使った応用を行うのに、必要または有用な一つ以上の試薬を含む。そのような試薬には、限定するわけではないが、核酸プライマー、プローブ、アダプター、酵素などがあり、それぞれ、流通に適したパッケージ(例えば、限定するわけではないが、箱、封をした小袋、ブリスター包装およびカートンなど)中の容器(例えば、限定するわけではないが、バイアル、チューブまたはボトルなど)に入れられる。パッケージは典型的には、梱包されている材料の使用法を示すラベルまたは添付文書を含む。本明細書にいう「梱包材料」には、キット中の試薬を配布するための梱包に用いられる任意の物品(例えば、限定するわけではないが、容器、バイアル、チューブ、ボトル、小袋、ブリスター包装、ラベル、タグ、指示シートおよび添付文書など)を包含する。
【0089】
一態様として、本発明は、ソース核酸から得られるDNAフラグメントのコンカテマーのランダムアレイを作製するためのキットであって、以下の構成要素を含むものを提供する:(i)表面を持つ支持体;および(ii)各DNAフラグメントに連結して、それと共にDNAサークル(各DNAサークルは、ローリングサークル複製反応によって複製されて、表面上にランダムに配置することができるコンカテマーを形成する能力を持つ)を形成させるための少なくとも一つのアダプターオリゴヌクレオチド。そのようなキットにおいて、表面は、不連続な相隔たる領域のアレイを持つ平面状の表面であることができ、その場合、各不連続な相隔たる領域は、前記コンカテマーのサイズと等価なサイズを持つ。不連続な相隔たる領域は、0.1〜20μmの範囲の最近接距離を持つ規則的アレイを形成してもよい。不連続な相隔たる領域上のコンカテマーは、それらが光学的に解像可能であるような最近接距離を持ちうる。不連続な相隔たる領域には捕捉オリゴヌクレオチドが取付けられていてもよく、捕捉オリゴヌクレオチドとアダプターオリゴヌクレオチドの相補的領域との間の複合体の形成によってコンカテマーを不連続な相隔たる領域に取付けることができるように、アダプターオリゴヌクレオチドは、それぞれに、捕捉オリゴヌクレオチドに相補的な領域を持つことができる。いくつかの実施形態では、コンカテマーが前記不連続な相隔たる領域にランダムに分布し、最近接距離は0.3〜3μmの範囲にある。そのようなキットはさらに、(a)前記DNAフラグメントにホモポリマーテールを取付けて、前記アダプターオリゴヌクレオチドの第1末端に結合部位を提供するためのターミナルトランスフェラーゼ、(b)前記アダプターオリゴヌクレオチドの鎖を前記DNAフラグメントの末端に連結して前記DNAサークルを形成させるためのリガーゼ、(c)前記アダプターオリゴヌクレオチドの鎖の一領域にアニールさせるためのプライマー、および(d)鎖にアニールさせたプライマーをローリングサークル複製反応で伸長するためのDNAポリメラーゼを含みうる。上述のアダプターオリゴヌクレオチドは、4〜12の範囲の縮重塩基数を持つ第2の末端を持ちうる。
【0090】
もう一つの態様として、本発明は、ターゲットポリヌクレオチドを配列決定するためのキットであって、以下の構成要素を含むものを提供する:(i)光学的に解像可能な不連続な相隔たる領域のアレイを有する平面状の表面を持つ支持体(各不連続な相隔たる領域は1μm
2未満の面積を持つ);(ii)不連続な相隔たる領域上にランダムに配置された複数のコンカテマーにハイブリダイズさせるための第1のプローブセット(コンカテマーはそれぞれにターゲットポリヌクレオチドのDNAフラグメントのコピーを複数含有する);および(iii)複数のコンカテマーにハイブリダイズさせるための第2のプローブセット(第1セットからのプローブが第2セットからのプローブと隣接してハイブリダイズする場合はいつでも、それらのプローブが連結されるようになっている)。そのようなキットはさらに、リガーゼ、リガーゼバッファー、およびハイブリダイゼーションバッファーを含みうる。いくつかの実施形態では、不連続な相隔たる領域に捕捉オリゴヌクレオチドが取付けられていてもよく、コンカテマーはそれぞれに捕捉オリゴヌクレチドに相補的な領域を持っていて、前記コンカテマーが、捕捉オリゴヌクレオチドと前記コンカテマーの相補的領域との間の複合体の形成によって、不連続な相隔たる領域に取付けることができるようになっていてもよい。
【0091】
さらにもう一つの態様として、本発明は、単分子アレイを構築するためのキットであって、以下の構成要素を含むものを提供する:(i)反応性官能基を持つ表面を有する支持体;および(ii)それぞれがユニークな官能基と複数の相補的官能基とを持つ複数の高分子構造(高分子構造は、表面上にランダムに取付けることができ、その取付けは、一つ以上の反応性官能基と一つ以上の相補的官能基との反応によって形成される一つ以上の結合によって形成され、ユニークな官能基は、分析物分子上の官能基と選択的に反応して、単分子アレイを形成させる能力を持つ)。そのようなキットのいくつかの実施形態では、表面が、前記反応性官能基を含有する不連続な相隔たる領域のアレイを有する平面状の表面であり、各不連続な相隔たる領域は1μm
2未満の面積を持つ。さらなる実施形態では、不連続な相隔たる領域が、0.1〜20μmの範囲の最近接距離を持つ規則的アレイを形成する。さらなる実施形態では、不連続な相隔たる領域上のコンカテマーが、それらが光学的に解像可能であるような最近接距離を持つ。さらなる実施形態では、高分子構造が、一つ以上のDNAフラグメントのコンカテマーであり、ユニークな官能基がコンカテマーの3'末端または5'末端にある。
【0092】
もう一つの態様として、本発明は、DNAフラグメントを環状化するためのキットであって、以下の構成要素を含むものを包含する:(a)一つ以上のDNAフラグメントに連結して、それと共にDNAサークルを形成させるための、少なくとも一つのアダプターオリゴヌクレオチド、(b)前記DNAフラグメントにホモポリマーテールを取付けて、前記アダプターオリゴヌクレオチドの第1末端に結合部位を提供するための、ターミナルトランスフェラーゼ、(c)前記アダプターオリゴヌクレオチドを前記DNAフラグメントの末端に連結して、前記DNAサークルを形成させるためのリガーゼ、(d)前記アダプターオリゴヌクレオチドの鎖の一領域にアニールさせるためのプライマー、および(e)鎖にアニールさせたプライマーをローリングサークル複製反応で伸長するためのDNAポリメラーゼ。そのようなキットの一実施形態では、上記のアダプターオリゴヌクレオチドが、4〜12の範囲の縮重塩基数を有する第2の末端を持ちうる。上記のキットはさらに、ターミナルトランスフェラーゼ用の反応バッファー、リガーゼ、およびDNAポリメラーゼを含みうる。さらにもう一つの態様として、本発明は、Circligase酵素(Epicentre Biotechnologies、ウィスコンシン州マディソン)を使ってDNAフラグメントを環状化するためのキットであって、体積排除(volume exclusion)ポリマーを含むものを包含する。もう一つの態様として、そのようなキットはさらに、以下の構成要素を含む:(a)pHを制御し、Circligaseに最適化された塩組成を提供するための反応バッファー、および(b)Circligase補因子。もう一つの態様では、そのようなキット用の反応バッファーが、0.5M MOPS(pH7.5)、0.1M KCl、50mM MgCl
2、および10mM DTTを含む。もう一つの態様では、そのようなキットが、Circligase、例えば10〜100μLのCircligase溶液(濃度100単位/μL)を含む。代表的な体積排除ポリマーは米国特許第4,886,741号に開示されており、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン硫酸などのポリマーが挙げられる。ある態様では、ポリエチレングリコール(PEG)が50%PEG4000である。ある態様では、サークル形成用のキットが以下の構成要素を含む:
【0093】
【表2】
最終反応体積:20μL。上記の構成要素は以下のプロトコールで使用される:
1.DNA(5'-リン酸基および3'-ヒドロキシル基を持つssDNAテンプレート)の長さに応じてDNAを60〜96℃で加熱する。
2.2.2×反応混合物を60℃で約5〜10分間、予熱する。
3.DNAを96℃まで予熱した場合は、それを60℃に冷却する。
4.DNAとバッファーとを冷却せずに60℃で混合し、2〜3時間インキュベートする。
5.ライゲーション反応を停止するために酵素を熱失活させる。
【0094】
ミスマッチ酵素切断による大規模突然変異発見
本発明のアレイおよびシークエンシング方法は、ミスマッチ切断技法を用いる多形の大規模同定に使用することができる。突然変異検出のためのいくつかのアプローチでは、ヘテロ二重鎖を使用し、ミスマッチそのものを切断認識に利用する。ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウムを使って修飾されたミスマッチにおけるピリミジンによる化学的切断は、切断されたフラグメントを放出させるための一つのアプローチになる。同様にして、酵素T7エンドヌクレアーゼIまたはT4エンドヌクレアーゼVIIも、酵素ミスマッチ切断(EMC)技法に使用されている(例えばYouilら, Proc. Natl. Acad. Sci., 92: 87-91 (1995);Mashalら, Nature Genetics, 9: 177-183 (1995);Babonら, Molecular Biotechnology, 23: 73-81 (2003);Ellisら, Nucleic Acids Research, 22: 2710-2711 (1994)など;これらは参照により本明細書に組み入れられる)。Cleavaseは、Third Wave Technologiesから商品化されている切断フラグメント長多形(cleavage fragments length polymorphism:CFLP)技法で使用される。一本鎖DNAをフォールドさせて二次構造をとらせると、DNAは、その鎖の塩基配列に依存する位置に、内部ヘアピンループを形成するだろう。Cleavaseは一本鎖DNAをそのループの5'側で切断するので、そのフラグメントをPAGEまたは同様のサイズ分割技法によって分離することができる。Mut SおよびMut Yなどのミスマッチ結合タンパク質も、その突然変異部位同定能力を、ヘテロ二重鎖の形成に依拠している。ミスマッチは通常、修復されるが、ゲル電気泳動における移動度シフトまたはエキソヌクレアーゼからの保護によってフラグメントを選択するために、これらの酵素の結合作用を使用することができる(例えばEllisら(前掲))。
【0095】
ヘテロ二重鎖形成のためのテンプレートは、ゲノムDNAからのプライマー伸長によって調製される。基準DNAの同じゲノム領域について、試験DNAの場合と同じ方法で、ただし別個の反応として、過剰の反対鎖を調製する。生成した試験DNA鎖をビオチン化し、ストレプトアビジン支持体に取付ける。加熱と相補鎖の除去によってホモ二重鎖の形成を防止する。ここで、基準調製物を一本鎖試験調製物と混合して、アニールさせることにより、ヘテロ二重鎖を生じさせる。このヘテロ二重鎖はいくつかのミスマッチを含有すると思われる。残存DNAを洗い流してから、ミスマッチエンドヌクレアーゼを加える。仮に1kbごとにミスマッチがあるとすると、10kbプライマー伸長物の場合は、これにより、約10個のフラグメントが生成すると予想される。切断後に、各フラグメントは各末端でアダプターを結合して、ミスマッチフラグメントサークル選択工程に移行することができる。大きいゲノムフラグメントから得られるミスマッチ切断されたDNAの捕捉。大きいゲノムフラグメントから上述のように調製された5〜10kbのゲノムフラグメントを、ターミナルトランスフェラーゼでビオチン化ジデオキシヌクレオチドを3'末端に付加することによってビオチン化し、過剰のビオチン化ヌクレオチドを濾過によって除去する。同じ配列領域をカバーする基準BACクローンを、同じ6塩基切断因子で消化して、試験DNAから生成するフラグメントと一致させる。ビオチン化ゲノムフラグメントを、BAC基準DNAの存在下で熱変性し、ゆっくりとアニールさせて、ビオチン化ヘテロ二重鎖を生成させる。基準BAC DNAは、ゲノムDNAに対して大過剰であるから、ビオチン化産物の大半がヘテロ二重鎖になる。次に、基準DNAを除去するために、ビオチン化DNAを表面に取付けることができる。残存DNAを洗い流してから、ミスマッチエンドヌクレアーゼを加える。切断後に、各フラグメントは各末端でアダプターを結合して、以下に述べるミスマッチサークル選択工程に移行することができる。(a)DNAをミスマッチの両側で切断する。(b)連結することができる5'オーバーハングを生成させる(4塩基認識部位を持つ適当な制限エンドヌクレアーゼによる消化で3'オーバーハングも生成させる)。(c)一端に活性オーバーハングを持っているアダプターを導入する。(d)アダプターを、生成した二つのフラグメントのそれぞれに連結する(上側の鎖の3'末端への配列の付加後、5'リン酸基から右側へのライゲーションのみ)。(e)その分子をリン酸化し、ブリッジングオリゴヌクレオチドを使って、一本鎖分子の二つの末端を連結する。(f)環状化後に、RCR反応でプライマーを伸長することによって、コンカテマーを生成させる。
【0096】
ミスマッチ切断産物からのサークル形成
方法I.上で生成させたヘテロ二重鎖は、
図7および
図8に図解するように、小さいDNAサークルの選択に使用することができる。
図7に示すように、この工程では、試料のヘテロ二重鎖(700)をミスマッチ酵素で処理して、突然変異部(702)を取り囲む両方の鎖(704および706)が切断された産物を生じさせることにより、フラグメント(707)および(705)を得る。T7エンドヌクレアーゼIまたは同様の酵素は、突然変位部位の5'側を切断して、突然変異を取り囲む両方の鎖にさまざま長さの5'オーバーハングを生じさせる。次の段階は、切断産物を増幅およびシークエンシングに適した形で捕捉することである。アダプター(710)を、ミスマッチ切断によって生じたオーバーハングに連結するが(フラグメント(705)だけを図示してある)、オーバーハングの性質がわからないので、少なくとも三つのアダプターが必要であり、各アダプターは考えうる全ての末端に適応するように縮重塩基を使って合成される。バッファー交換および試料精製ならびに所望であれば表面における直接増幅のための捕捉が可能なように、環状化されない鎖の上に内部ビオチン(708)を持つアダプターを製造することができる。
【0097】
突然変異間の介在配列は配列決定する必要がなく、システムの配列決定容量を低下させるので、ゲノム由来の試料を研究する際には、これを除去する。配列複雑度の削減は、酵素認識部位から離れた点でDNAを切断するIIs型酵素によって達成される。そうする場合、切断部位とその結果生じるオーバーハングは、全ての塩基変異の組み合わせになるだろう。使用することができる酵素として、MmeI(2塩基の3'オーバーハングを持つ20塩基)およびEco P15I(25塩基と2塩基の5'オーバーハング)が挙げられる。アダプターは約50bp長で、ローリングサークル増幅を開始するための配列を提供すると共に、サークル形成用のスタッファー(stuffer)配列ならびにIIs型制限エンドヌクレアーゼの認識部位(715)を提供する。アダプターをフラグメントに連結し終えたら、DNAをIIs型制限酵素で消化(720)して、アダプターに取付けられたままの突然変異部位を含有する配列20〜25塩基分を除いて、全て放出させる。
【0098】
次に、過剰のフラグメントDNAを除去するために、アダプター付きのDNAフラグメントをストレプトアビジン支持体に取付ける。ミスマッチ切断末端に連結しなかった過剰のアダプターもストレプトアビジン固形支持体に結合するだろう。IIs型酵素によって生成した新しい縮重末端は、ここで、第2のアダプターに、第2アダプターの一方の鎖のリン酸化によって連結することができる。他方の鎖はリン酸化されず、3'末端がジデオキシヌクレオチドでブロックされる。形成された構造は基本的に、二つの異なるアダプターの間に捕捉された関心対象のゲノムフラグメントである。この構造からサークルを生成させるには、単に、例えば制限部位(722)および(724)での消化によって付着末端を形成させた後、分子内ライゲーションを行うことなどにより、分子の両端を一つにして連結するだけでよい。この事象は効率よく起こるはずだが、別の分子の末端がその分子の他方の末端で連結して、各ユニット分子の二量体分子またはそれ以上の多量体を生成させる可能性もある。これを最小限に抑えるための一方法は、分子内ライゲーションだけが有利になるように希釈条件下でライゲーションを行ってから、その後のステップのために試料を再濃縮することである。分子間ライゲーションを起こさずにサークル形成の効率を最大にするためのもう一つの戦略は、表面上の過剰なアダプターをブロックすることである。これは、ラムダエキソヌクレアーゼを使って下側の鎖を消化することによって、達成することができる。第2のアダプターが既に取付けられているなら、それは消化から保護されるだろう。なぜなら、利用できる5'リン酸基がないからである。第1アダプターだけを表面に取付けると、5'リン酸基が露出されて、アダプターの下側の鎖が分解を受ける。これにより、過剰の第1アダプターが表面から失われることになる。
【0099】
ラムダエキソヌクレアーゼ処理後、第1アダプターの上側の鎖の5'末端を、第2アダプターの3'末端へのライゲーションに向けて準備する。これは、分子の再環状化がライゲーションと共に起こりうるように、アダプターに制限酵素部位を導入することによって達成することができる。環状分子中に捕捉されたDNAの増幅がローリングサークル増幅によって進行すると、サークルの長い線状コンカテマーコピーが形成される。伸長がビオチンの5'側で始まると、サークルおよび新たに合成された鎖が、溶液中に放出される。表面上の相補的オリゴヌクレオチドは凝集の原因となり、下流での応用にとって十分な結合をもたらす。一方の鎖は閉じたサークルであり、テンプレートとして働く。露出した3'末端を持つ他方の鎖は、開始プライマーとして働き、伸長される。
【0100】
方法II.
図8に図解するこの方法は、上述の手法に似ていて、以下の点が変更されている:1)バッファー交換および試料精製のための捕捉が可能なように、環状化されない鎖の上に3'ビオチン(808)を持つアダプターを製造することができる。2)上述した10kbヘテロ二重鎖フラグメントの配列複雑度の削減を、例えば制限部位(810)(812)および(814)による4塩基切断制限酵素を使って行う。一つの反応に2個または3個の酵素を使用すると、ゲノムフラグメントサイズを約100塩基まで縮小することができるだろう。アダプター-DNAフラグメントは、過剰なフラグメントDNAを除去するために、ストレプトアビジン支持体に取付けることができる。ミスマッチ切断された末端に連結しなかった過剰なアダプターも、ストレプトアビジン固形支持体に結合するだろう。次に、ビオチン化およびリン酸化された鎖を、ラムダエキソヌクレアーゼで除去することができる。このラムダエキソヌクレアーゼは、5'末端から分解させるが、リン酸化されていない鎖は無傷のまま残す。ここで、この構造からサークルを生成させるには、分子の両端を一つにし、それらを連結して、サークルを形成させる必要がある。上述のようにブリッジングオリゴヌクレオチドを使ってサークルを形成させるために、いくつかのアプローチを利用することができる。ターミナルトランスフェクラーゼで3'末端にポリクレオチドを付加することにより、ブリッジオリゴヌクレオチド(818)の半分をそこにハイブリダイズさせるための配列を作りだすことができる(ポリAテール(816)として示す)。残りの半分はアダプター中の配列に結合することになる。あるいは、エキソヌクレアーゼによる一方の鎖の除去後にブリッジをそこにハイブリダイズさせるための配列になるようなアダプターを、エキソヌクレアーゼの添加前に、4塩基切断因子によって生成される末端に付加することもできる。この選択手法の重要な一面は、環状化および増幅のための鎖を選択できることである。これにより、元の突然変異を持つ鎖(5'オーバーハングに由来)だけが増幅され、アダプターに由来する鎖は増幅されないことが、保証される。もし3'陥凹鎖が増幅されると、アダプターからのミスマッチが、突然変異部位またはその近傍に、偽の塩基コールを生成しうる。環状分子中に捕捉されたDNAの増幅がローリングサークル増幅によって進行すると、サークルの線状コンカテマーコピーが形成される。
【0101】
ミスマッチに由来するサークルの他の応用例.ミスマッチに由来する小さい環状DNA分子は、PCRなどの他の手段によって増幅することができる。一般的なプライマー結合部位をアダプター配列中に組み込むことができる。増幅した材料は、Sangerシークエンシングまたはアレイベースのシークエンシングなどといった方法による突然変異検出に使用することができる。
【0102】
cDNAの無細胞クローン選択.伝統的なクローニング方法には、細菌がプラスミド複製による配列を排除する傾向を持つことや、個々のcDNA分子のクローンを作成するには時間の掛かる試薬集約的なプロトコールが必要であることなど、いくつかの短所がある。線状一本鎖は、閉じて環状型になっているDNA分子の増幅によって作製することができる。これらの大きなコンカテマー状の線状型は単分子から生じ、細菌コロニーを拾ってcDNA含有プラスミドを回収するのとほぼ同じ方法で単一の反応チャンバに分離すれば、効率の良い単離されたターゲットとしてPCRに役立ちうる。本発明者らは、このアプローチを、細胞に基づくクローン選択ステップを通す必要のないcDNAクローン選択手段として開発するつもりである。この手法の第1ステップでは、cDNAの3'末端のポリdT配列に結合させるためのポリdA配列を持つ、5'末端に対する遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを連結する。このオリゴヌクレオチドは、T4 DNAリガーゼを使って2つの末端を連結し、サークルを形成させることを可能にするブリッジとして働く。
反応の第2ステップは、プライマーまたはブリッジングオリゴヌクレオチドを使って、φ29ポリメラーゼなどの鎖置換ポリメラーゼに、サークルのコンカテマーを生成させることである。次に、長い線状分子を希釈し、1536ウェルプレートに、単分子を含むウェルを選択することができるようにアレイする。ウェルの約10%が1分子を含有することを保証するために、約90%は分子を含まないものとして犠牲にする必要があるだろう。陽性であるウェルを検出するために、ターゲット中のユニバーサル配列を認識するデンドリマーをハイブリダイズさせて、ターゲット1分子あたり10K〜100Kの色素分子を生じさせる。過剰なデンドリマーを、ビオチン化捕捉オリゴへのハイブリダイゼーションによって除去する。ウェルを蛍光プレートリーダーで解析し、DNAの存在をスコアリングする。次に、陽性ウェルを再アレイすることにより、さらなる増幅のために、完備したウェルを持つプレートへとクローンを統合する。
【0103】
スプライス変異体検出およびエクソンプロファイリング
ここに記載する工程は、何千もの遺伝子およびそれらのスプライス変異体の発現レベルを同定および定量するためのランダムDNAアレイと「スマート(smart)」プローブプールに基づく。真核生物では、一次転写物が転写複合体から現われるにつれて、スプライソソームが、一次転写物上のスプライス部位と相互作用して、イントロンを切り出す(例えばManiatisら, Nature, 418: 236-243 (2002))。しかし、スプライス部位配列を改変する突然変異またはスプライソソームとスプライス部位の相互作用に影響を及ぼす外部因子のせいで、選択的スプライス部位または潜在的スプライス部位が選択されて、異なるエクソンセットを持つmRNAによってコードされるタンパク質変異体の発現をもたらすということが起こりうる。大規模ESTシークエンシングプロジェクトで得られたcDNA配列の調査により、50%を超える遺伝子が既知のスプライス変異体を持つことが示された。マイクロアレイに基づくアプローチを使った最近の研究では、75%もの遺伝子が選択的スプライシングを受ると見積られた(例えばJohnsonら, Science, 302: 2141-2144 (2003))。
【0104】
選択的スプライシングによって生じるタンパク質の多様性は、高等真核生物における生物学的過程の複雑さの一因になっている可能性がある。また、このことから、変異型タンパク質の異常発現が疾患の病理発生の原因になりうることも考えられる。実際、選択的スプライシングは、成長ホルモン欠乏症、パーキンソン病、嚢胞性線維症および筋緊張性ジストロフィーのようなさまざまな疾患に関連することがわかっている(例えばGarcia-Blancoら, Nature Biotechnology, 22: 535-546 (2004))。新規なスプライス変異体を単離し、特徴づけるのは困難であるため、がんにおけるスプライス変異体の役割を暗示する証拠は、氷山の一角に過ぎないのかもしれない。mRNAのスプライシングパターンを迅速かつ確実に特徴づけることができるツールを入手することができれば、がんおよび疾患発生全般における選択的スプライシングの役割を解明するのに役立つだろう。
【0105】
一態様として、本発明の方法は、以下に挙げるステップによるスプライス変異体の大規模測定を可能にする。(a)ターゲットmRNAまたは全mRNAから完全長第1鎖cDNAを調製する。(b)生成した完全長(または全)第1鎖cDNA分子を、アダプター配列の組み込みによって環状化する。(c)アダプター配列に相補的なプライマーを使って、cDNAサークルのローリングサークル複製(RCR)を行うことにより、最初のcDNAを100コピー以上含むコンカテマーを形成させる。(d)アダプター配列の一部に相補的な捕捉オリゴヌクレオチドで被覆されたガラス表面に、RCRで作製した「cDNAボール」を取付けることにより、ランダムアレイを調製する。高度なサブミクロンパターニングが施された表面の場合、1mm
2に100万〜1000万のcDNAスポットを設けることができる。この取付けは分子過程であり、個々の「cDNAボール」またはコンカテマーをロボットでスポッティングする必要はないことに注意されたい。(e)試料生物/組織中の1000以上のターゲット遺伝子〜全ての既知遺伝子に含まれる10,000以上のエクソンを全て試験するために、4096の6マーおよび1024の標識5マーの既製ユニバーサルライブラリーから出発して、高度なコンピュータプログラムと簡単なロボットピペッターとを使って、約200の6マーおよび20の5マーの40〜80プールを作成する。(f)各サイクルのアレイ画像を生成させるための高感度10メガピクセルCCD検出器を持つ自動化された顕微鏡様の機器を使って、4〜8時間の工程において、40〜80サイクルで全てのプローブプールを、同じランダムアレイにハイブリダイズ/連結させる。(g)コンピュータプログラムを使って、スポットシグナル強度解析を行うことにより、どのcDNAがどのスポット上にあるかを同定すると共に、予想されるエクソンのいずれかが、解析した遺伝子のいずれかに、欠けているかどうかを同定する。アレイにおける出現数を計数することにより、各スプライス変異体について正確な発現レベルを得る。
【0106】
標識mRNA/cDNAとハイブリダイズさせた現行の発現アレイを使って、ただ単に、転写された遺伝子の集団全体にわたる、エクソン使用の比率に関する情報、またはスプライシング事象の定量を得る代りに、このシステムでは、一つの転写物についてエクソンパターンの完全な解析が得られる。その感度の上限では、何百という他の細胞のうちの1細胞にしか存在しないmRNAタイプの単分子まで、詳細に解析することができる。これは、癌細胞の早期診断にユニークな可能性をもたらす。選択的cDNA調製物と、標準的な384ウェルフォーマットの「ランダムアレイのアレイ」と、ユニバーサルな短いプローブの「スマート」プールとの組み合わせは、例えば選択した試料中の少数遺伝子の深い解析、または多数の試料における、より全般的な解析、または小数試料中の多数の遺伝子の解析など、アッセイの設計に著しい自由度を与える。解析は、1)各特異的スプライス変異体の検出、2)野生型mRNAおよび選択的スプライシングを受けたmRNAの発現の定量を、同時にもたらす。ヘテロ接合性の喪失およびランダムアレイ上の単スポット上の同じ転写物における二つの遺伝子からのエクソンの二つのサブセットの存在により、遺伝子欠失および遺伝子転座の検出に基づいて、総体的な染色体変化をモニターするために使用することもできる。このアッセイの例外的な容量と情報量は、極めて少量のmRNAからの簡単な試料調製、全て既製の実証された試薬類(ユニバーサル標識および非標識プローブのライブラリーならびに最終的には全てのヒトおよびモデル生物遺伝子について開発されるであろうプライマー/アダプターを含む)に基づく完全に自動化されたアッセイと結びつけて考えられる。ここに提案するスプライス変異体プロファイリング工程は、個々の完全長cDNAクローンのハイスループットシークエンシングと等価であり、rSBHスループットは、4〜8時間のアッセイで100万cDNA分子のプロファイリングに達することができる。このシステムは、疾患の出現および進行中に起こるさまざまなスプライス変異体の発現レベルの変化をモニターするための強力なツールになるだろう。新規スプライス変異体の発見を可能にすること、または既知のスプライス変異体ががんの進行をモニターするための生体マーカーとして役立つことを実証することもできる。選択的スプライス変異体の役割および治療ターゲットとしてのそれらの考えうる用途をさらに理解するための手段を提供することもできる。この低コストなハイスループットアッセイの万能性および柔軟性は、がん研究および診断薬ならびに他の全ての生物医学分野において、大きな商業的機会をもたらす。この高容量システムはサービス提供ラボまたはサービス提供会社にとって理想的である。
【0107】
インビトロ転写用テンプレートの調製.エクソン配列を、プラスミドpBluescriptなどのベクターのマルチクローニング部位(MCS)にクローニングする。プローブプールの有用性を実証する目的には、連続した完全長配列をクローニングする必要はなく、適正なタンパク質コーディングフレームを維持する必要もない。1kbより短い遺伝子の場合は、完全長配列用の遺伝子特異的オリゴを使って、PCR産物をcDNAから生成させる。それより長い遺伝子の場合は、エクソンの連続するブロックに対応する約500bpを含むPCR産物を生成させ、pBluescriptのMCS中の適当なクローニング部位にクローニングすることによって、それらのフラグメントを順序づける。これは、選択的スプライス変異体をクローニングするためのアプローチでもある。というのも、望ましい変異体は、PCRに使用されるcDNAソース中に存在しないかもしれないからである。
【0108】
MCSの最後の部位を使って、細胞mRNAのポリAテールを真似るために、40個のAからなるストリングを挿入する。これは、ポリAテールが後述する試料調製ステップと干渉するかもしれないという可能性を考慮に入れるためだが、ポリdAテールは、上述のゲノムフラグメントの試料調製物に組み込まれるので、これが問題になるとは思われない。T7 RNAポリメラーゼを使って、ランオフ転写物を生成させ、生成したRNAを標準的な方法で精製する。
【0109】
アレーイング用試料の調製。プローブプールは特定遺伝子用に設計されるので、それら特定遺伝子だけについて、cDNAを調製する。逆転写酵素反応をプライミングするために、遺伝子特異的プライマーを使用する。したがって1000の遺伝子には、1000のプライマーを使用する。逆転写のためのプラミング部位の位置は、注意深く選択する。というのも、>2kbのcDNAの合成が高い効率で起こると期待することは、合理的でないからである。最後のエクソンがコーディング配列の末端と長い3'非翻訳領域とからなることは、非常によくあることである。例えばCD44の場合、完全長mRNAは約5.7kbであるが、3'UTRは3kbから構成され、コーディング領域は2.2kbしかない。したがって、逆転写プライマー部位の論理的な位置は、通常は、コーディング配列の末端のすぐ下流である。一部のスプライス変異体では、選択的エクソンがしばしばブロックとして一つにクラスター化して、変動領域を生じる。テネイシンC変異体(8.5kb)の場合、最も一般的なアイソフォームは、8追加エクソンのブロックを持ち、この領域におけるエクソン使用には変動があることを示唆する証拠がある。したがって、テネイシンCの場合、プライマーはこの領域のすぐ下流に置かれるだろう。>2kbの長さを持つcDNAの合成に関わる問題ゆえに、長い遺伝子については、複数のプライマーを使ってエクソンを2kbのブロックに分割する必要があるかもしれない。
【0110】
逆転写反応は、市販のシステム、例えばInvitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)のSuperScript IIIシステムや、Stratagene(カリフォルニア州ラホーヤ)のStrataScriptシステムを使って行うことができる。一本鎖cDNA分子を作製したら、残りの手順には、上述のように、アダプター配列の付加、分子の環状化およびRCRが含まれる。cDNAの5'末端は、基本的に、逆転写を開始させるために使用した遺伝子特異的プライマーが組み込まれたものである。逆転写プライミングオリゴの5'末端上に7塩基ユニバーサルタグを組み込むことにより、生成するcDNAは全て、同じ7塩基配列を5'末端に持つことになる。従って、縮重塩基を持つテンプレートオリゴヌクレオチドを使わなくても、アダプター配列とユニバーサルタグの両方に相補的な単一のテンプレートオリゴヌクレオチドを使って、ターゲット分子の全てにアダプターを連結することができる。通常は不明確なcDNAの3'末端(mRNAの5'末端)については、ゲノムフラグメントのランダム配列末端のように処理することができる。ポリAテールを付加する同様の方法が適用されるだろう。したがって、サークル閉環反応も、同じものを使用することができる。
【0111】
逆転写酵素は、時期尚早に終結して、切断型cDNAを生成しやすい。著しく切断されたcDNAは、おそらく、遺伝子割当てに結びつくほど十分なプローブ結合部位を持たず、したがって解析されないだろう。完全長に近いが完全長ではないcDNA分子は、5'エクソンを欠くスプライス変異体として現われうる。そのような変異体を裏付ける補強証拠が配列データベースから得られないのであれば、それらは無視されうる。そのような問題を避ける方法は、完全長cDNA(または望ましい3'末端を持つもの)だけを、サークル閉環反応に適合するものとして選択することである。そうすれば、切断型分子は環状化されず、複製もされないだろう。まず、ライゲーションをブロックするために、ジデオキシ-シトシン残基を全てのcDNAの3'末端に付加することができ、次に所望の配列をターゲットとするミスマッチオリゴを使って、新しい3'末端を、T4エンドヌクレアーゼVIIを使って酵素ミスマッチ切断によって生成させることができる。新しい3'末端を持つcDNAは、続いてポリdAテールを付加し、環状化および複製の標準的プロトコールに付すことができる。
【0112】
エクソンフラグメントのコンカテマーの複製およびアッセイは、上述のように、コンビナトリアルSBHを使って行うことができる。この技法で用いる5マーおよび6マープローブを選択するために、以下のステップのアルゴリズムを使用することができる。
【0113】
ステップ1:1000〜2000の最も短いエクソン(全部で約20〜50kb)を選択し、1024個の利用可能な標識5マーのそれぞれについて、マッチする配列を見つける。平均すると、各5マーは、20kbに20回出現するだろうが、一部は50回以上または100回以上出現しうる。最も頻度の高い5マーを選択することにより、最も多数の短いエクソンが、単一の標識プローブで検出されるだろう。目標は、1サイクルあたり約50〜100個の短いエクソン(500エクソンの10%〜20%)を検出することである。したがって、10個未満の標識プローブおよび50〜100個の非標識6マーで十分だろう。少数の標識プローブが好ましい。なぜなら、それにより、総蛍光バックグラウンドが最小限になるからである。
【0114】
ステップ2.選択した10個の5マーに相補的な1000個の遺伝子全てにおける全ての部位に隣接する全ての6マーを見つける。平均して、各2kb遺伝子にそのような部位が20存在するだろう。部位の総数は約20,000になり、例えば各6マーは平均して5回出現するだろう。6マーをヒット頻度で分類する。最も頻繁なものは20ヒット以上を持ちうる。例えばそのような6マーは、10個の標識プローブと組み合わせることにより、20遺伝子を検出するだろう。したがって、500遺伝子のそれぞれについて一つのプローブペアを得るには、最低25個の6マープローブが必要だろう。現実的には、100〜200個の6マーが必要になりうる。
【0115】
6マーおよび5マープローブの既製のライブライーを使用するコンビナトリアルSBHの利点ゆえに、確立されたピペッティングロボティクスを使って、1プールにつき約200プローブを含む40のプローブプールが容易に調製される。生成する情報は、1エクソンあたり3つを上回るプローブを持つことに等しいので、1セットの1000遺伝子に要求される30,000の長いエクソン特異的プローブが、8000の5マーおよび6マーの使用で効果的に置き換えられる。
【0116】
エクソンプロファイリング.エクソンのプロファイリングは、遺伝子同定段階およびエクソン同定段階という二段階で行うことができる。遺伝子同定段階では、アレイ上の各コンカテマーを、ある特定遺伝子とユニークに結びつけることができる。理論的には、以下のスキームを使えば、1000個の遺伝子を同定するのに、10のプローブプールまたはハイブリダイゼーションサイクルで十分だろう。各遺伝子にユニークな二進コードを割り当てる。したがって、二進数字の数は、8遺伝子の場合は3数字、1024遺伝子の場合は10数字というように、遺伝子の総数に依存する。各プローブプールは、二進コードの数字に対応するように設計され、1遺伝子につき1ヒットだけで、それらの遺伝子の半分のユニークな組み合わせをヒットするようなプローブを含有するだろう。したがって、各ハイブリダイゼーションサイクルにつき、遺伝子のユニークな半分は、その数字に関して1を記録し、残りの半分は0を記録するだろう。10個のプローブプールを使った10回のハイブリダイゼーションサイクルにより、アレイ上のコンカテマーの全てに1000のユニークな遺伝子を割り当てるのに十分な、1024のユニークな二進コードが生成する。同定データに冗長性を与えるために、15〜20サイクルが使用されるだろう。20サイクルを使用した場合、100万のユニークな二進コードが得られ、失われたエクソンまたは遺伝子欠失によるシグナルの喪失を説明するのに十分な情報が存在するはずである。またこれは、平均で、各遺伝子につき10データポイント(それぞれ500データポイントの20サイクルは、合計10,000データポイントをあたえる)または1エクソンにつき1陽性プローブペアを持つことに等しくなるだろう。20サイクル後のこの時点で、このシステムは、アンプリオット(ampliot)に100万のユニークな遺伝子アイデンティティを割り当てる能力を持つ。したがって、アンプリオットの遺伝子アイデンティティを数えることにより、与えられた任意の試料中の全ての遺伝子の発現レベルを定量的に決定すること(ただしスプライス変異体のサブタイピングではない)ができる。
【0117】
各アンプリオットを遺伝子割当てと結びつけた後、エクソン同定段階では、そのエクソンパターンがプロファイリングされる。エクソン同定段階では、遺伝子の全てまたは大半において、1遺伝子につき1つのエクソンが、1回のハイブリダイゼーションサイクルで試験される。ほとんどの場合、10〜20回のエクソン同定サイクルで十分なはずである。したがって、20回のエクソン同定サイクルの場合、各遺伝子中の10エクソンのそれぞれについて2プローブの情報が得られるだろう。20を超えるエクソンを持つ遺伝子の場合、1遺伝子につき2エクソンを同じサイクルでプローブすることができるような方法を開発することができる。一つの可能性は、色の異なる複数の蛍光体を使用することであり、もう一つの可能性は、異なるライゲーションプローブペアの差別的なハイブリッド安定性を利用することである。
【0118】
結論として、合計約40回のアッセイサイクルにより、各スポットにおける遺伝子アイデンティテイを取得し、10,000エクソンのそれぞれについて、選択的スプライシングまたは染色体欠失による失われたエクソンの正確な同定をもたらすのに十分な情報冗長性で、3つのマッチングプローブペアを提供するのに十分な情報が与えられるだろう。
【実施例1】
【0119】
ランダムアレイ支持体としてのガラスカバースリップ:
誘導体化プロトコール
この実施例では、DNAコンカテマーを配置するための支持体として使用されるガラスカバースリップを製造する。以下の材料を使用する:
Millipore DI水
2.5mLの3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン(Gelest)
1.6グラムのp-フェニレンジイソチオシアネート(Acros Organics/fisher)
210グラムのKOH(VWR)
エタノール(VWR)
メタノール(VWR)
ピリジン(VWR)
N,N-ジメチルホルムアミド(VWR)
アセトン(VWR)
装置
100c乾燥器
磁気撹拌プレート
2インチ×0.5インチ磁気撹拌子 1
4リットルNuncビーカー 2
4インチ×8インチ×4インチ硝子容器 7
1リットルメスシリンダー
100mLメスシリンダー 1
実験用天秤 1
Metzlerはかり 1
大秤量皿 1
小秤量皿 1
厚手ニトリル手袋 1対
大ロート 1対
1mLピペットマン(フィルターチップ付き)
Nalgene撹拌子 1
気密容器(タッパーウェア) 1
【0120】
大メスシリンダーを使ってエタノール950mlを計量し、4リットルNuncビーカーに加える。小メスシリンダーでDI水50mlを計量し、同じnuncビーカーに入れる。KOHペレット210グラムを実験用天秤の秤量皿に秤取る。ビーカーに撹拌子およびKOHペレットを加える。ビーカーを撹拌プレートに置き、KOHが完全に溶解するまで低速で撹拌する。KOHを溶解している間に、予洗したガラス容器6個を配置する。容器2〜5を上端から1/2インチまでDI水で満たす(約800ml)。容器6を上端から1/2インチまでアセトンで満たす。溶解したKOH溶液を容器1に上端から1/2インチまで注意深く注ぎ込む。ラックに収納したカバースリップを容器1に入れて3分間待ち、容器1からラックを取り出し、容器2〜5で、それぞれの容器にラックを最低15秒間は放置することによって洗浄する。ラックを容器6に短時間沈める。ラックを取りのけておき、容器1および2の溶液を、塩基性廃液容器に、大ロートと厚手ニトリル手袋を使って捨て、実験器具を清掃し、乾燥する。清浄な乾燥ガラス容器7個を配置する。容器1にアセトン775mlを加える。容器1にDI水2.5mlを加える。容器1をピペットチップで20秒間撹拌する。新しいピペットチップを使って、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン2.5mlを容器1に加える。ピペットチップを使って10秒間撹拌する。カバースリップのラック5個を全て、容器に浸漬する。容器1をポリプロピレン製のフタで覆う。45分間待つ。反応完了の15分前に、容器2〜4をアセトンで上端から1/2インチまで満たし、容器5を水で上端から1/2インチまで満たす。容器6をアセトンで上端から1/2インチまで満たす。反応が完了(45分間)したら、カバースリップラック1〜5を容器1から容器2に移し、15秒間待つ。これを容器6まで繰り返す。ラックを空の容器7に入れ、100c乾燥器に入れる。1時間待つ。ガラス容器7個を配置する。ラックを乾燥器から取り出した後、Meltzerはかりを使って、p-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)1.6グラムを小秤量皿に秤取る。洗浄した1リットルメスシリンダーにジメチルホルムアミド720mlを注ぎ込み、ピリジンで800mlまで満たす。この溶液を、清浄な硝子容器に50%注ぎ込んだ後、それをシリンダーに戻すことによって混合する(1回繰返す)。この溶液で容器1を上端から1/2インチまで満たす。PDCを秤量皿から容器1に加える。撹拌子を使って容器を混合する。溶解しようとしないPDC塊を押し砕き、再び撹拌する。この時点でカバースリップラックはもう冷めているはずである。5つのラックすべてを容器1に入れる。ポリプロピレン製のフタで覆う。2時間待つ。反応完了の10分前に、容器2および3をメタノールで上端から1/2インチまで満たす。容器4および5をアセトンで上端から1/2インチまで満たす。容器6を65%アセトン35%水で上端から1/2インチまで満たす。容器7をアセトンで満たす。ラックを順次、全ての容器に移し、それぞれの移動の間、15秒間待つ。ラックを容器7から取り出し、容器1〜7の内容物を、有機廃液槽に捨てる。ラックを容器7に移し、乾燥器で15分間乾燥する。乾燥したラックを気密容器に入れる。この時点で取付けの準備ができている。
【実施例2】
【0121】
大腸菌ゲノムDNAからのRCR産物の調製およびガラスカバースリップへの配置
大腸菌ゲノムDNA(32μg)(Sigma Chemical Co)をDnaseI(Epicentre)0.16Uを使って37℃で10分間断片化した後、95℃で10分間熱失活させた。アガロースゲル電気泳動で確認したところ、反応産物は平均サイズ200bpで分布していた。反応産物が所要のサイズ分布を満たさない場合は、新しい酵素を加えて、それらをさらに消化した。ゲノムDNAの最終濃度は200ng/μlだった。
【0122】
Dnase消化したDNA(26ng/μl)を、New England Biolabs(NEB)のターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(0.66U/μl)と、NEBが供給する反応バッファー中で反応させた。この反応はdATP(2mM)を含有し、37℃で30分間行った後、70℃で10分間熱失活させた。次に、DNA試料を95℃に5分間加熱してから、氷で急冷した。
【0123】
次に、まず、65塩基オリゴヌクレオチド(TATCATCTACTGCACTGACCGGATGTTAGGAAGACAAAAGGAAGCTGAGGGTCACATTAACGGAC)(配列番号8)と第2のオリゴヌクレオチド(NNNNNNNGTCCGTTAATGTGAC3'2'3'ddC)(配列番号9)とのハイブリッドを65マーの3'末端で形成させること(この際、7つの「N」はオーバーハングを形成する)により、ゲノムDNAの5'末端に、合成DNAアダプターを連結した。短い方のオリゴは、ゲノムフラグメントの5'末端に65マーを連結するためのスプリントとして役立つだろう。このスプリント分子は、その5'末端が、ゲノムDNAの5'末端にあるさまざまな塩基にハイブリダイズする7つの縮重塩基からなっている。1200pmolのアダプターを1200pmolのスプリントとを、52μl中、95℃から室温まで1時間かけて、ゆっくりハイブリダイズさせることにより、アダプターハイブリッドを形成させた。
【0124】
T4 DNAリガーゼ(0.3U/μl)を、ゲノムDNA(17ng/μl)およびアダプター-スプリント(0.5μM)と、NEBが供給する1×リガーゼ反応バッファー中で混合した。ライゲーションを15℃で30分間、20℃で30分間進行させた後、70℃で10分間失活させた。次に、第2のスプリント分子(AGATGATATTTTTTTT3'2'3'ddC)(配列番号10)(0.6μM)を反応に加え、その混合物にリガーゼバッファーおよびT4 DNAリガーゼ(0.3U/μl)を追加した。反応を15℃で30分間、次に20℃で30分間進行させてから、70℃で10分間失活させた。
【0125】
次に、ライゲーション混合物を、エキソヌクレアーゼI(NEB)(1U/μl)で、37℃で60分間処理した後、80℃で20分間失活させた。
【0126】
ローリングサークル複製は、NEBが供給する反応バッファー中、BSA(0.1μg/μl)、0.2mM各dNTP、開始プライマー(TCAGCTTCCTTTTGTCTTCCTAAC)(配列番号11)2fmol/μl、エキソヌクレアーゼで処理したゲノムDNAのライゲーション24pg/μl、およびφ29ポリメラーゼ(0.2U/μl)を使って行った。反応を30℃で1時間行った後、70℃で10分間熱失活させた。
【0127】
カバースリップの表面にまずアミン修飾オリゴヌクレオチドを取付けることにより、カバースリップの表面にRCR反応産物を取付けた。0.1μM NaHCO
3中で捕捉プローブ([AMINOC6][SP-C18][SP-C18]GGATGTTAGGAAGACAAAAGGAAGCTGAGG)(配列番号12)(50μM)をDITC誘導体化カバースリップに加え、40℃で約30分間乾燥させた。カバースリップをDDI水で15分間すすぎ、乾燥した。次に、RCR反応産物(4.5μl)を0.5μlの20×SSPEと混合し、スライドの中心に加えた。試料を風乾し、取付けられていない物質を3×SSPE中で10分間洗い落とした後、DDI水で短時間洗浄した。次に、スライドを乾燥してから、顕微鏡で組み立てた。取付けられたRCR産物を、アダプターの一領域に相補的な11マーTAMRA標識プローブをハイブリダイズさせることにより、可視化した。
【0128】
RCR反応産物を、一本鎖80マー合成DNAターゲット(NNNNNNNNGCATANCACGANGTCATNATCGTNCAAACGTCAGTCCANGAATCNAGATCCACTTAGANTAAAAAAAAAAAA)(配列番号13)から、上述のように、ただしTDTによるポリA付加を行わずに形成させた。このRCR反応は推定12.6fmol/μlのターゲット分子を含有した。反応産物(5μl)を、20μlの総反応体積で、SSPE(2×)およびSDS(0.3%)と混合した。0.1μM NaHCO
3を使って50μMの溶液中で沈着させた捕捉プローブ([AMINOC6][SP-C18][SP-C18]GGATGTTAGGAAGACAAAAGGAAGCTGAGG)の列を表面上に乾燥させたカバースリップに、試料を適用して、湿潤チャンバ中に30分間放置した。次に、その溶液を3×SSPE中で10分間洗い落としてから、水中で短時間洗浄した。
【0129】
さまざまな反応構成要素を、それらがRCR産物形成に及ぼす影響について調べた。RCR反応にはφ29を0.2U/μlの最終濃度で加えるよりも、0.1U/μlの最終濃度で加えた方が、検出プローブハイブリダイゼーション後の強度が大きいRCR産物をより高い比率で生成することがわかった。開始プライマーは推定ターゲット濃度に対して10〜100倍のモル比で添加することが最適であることもわかった。伸長時間を長くすると、より強い蛍光シグナルが得られるが、より発散したコンカテマーを生じる傾向があった。現在の取付けプロトコールでは、2時間の伸長時間により、RCR産物の形態への有害な影響を最小限に抑えつつ、1時間のインキュベーションと比較して強化されたシグナルが得られた。
【0130】
合成およびゲノムターゲットの推定濃度を、RCR反応中、0.1から0.25fmol/μlに下げることによって、RCR産物のさらなる最適化が達成された。これは、典型的には、取付けに方法1を使用することにより、明確でユニークなPCR産物を、顕微鏡スライドの表面にもたらす。より高濃度のターゲット(例えば>5fmol/μl)がRCR反応中に存在しうる合成ターゲットの場合は、RCR産物を方法2で取付けることができる。取付け方法1.RCR反応産物(4.5μl)を0.5μlの20×SSPEと混合し、スライドの中央に加えた。試料を風乾し、取付けられていない材料を3×SSPE中で10分間洗い落としてから、DDI水中で短時間洗浄した。次に、スライドを乾燥してから、顕微鏡上で組み立てた。取付けられたRCR産物を、アダプターの一領域に相補的な11マーTAMRA標識プローブをハイブリダイズさせることにより、可視化した。取付け方法2.RCR反応産物(1μl)を50μlの3×SSPEと混合し、捕捉プローブが取付けられているカバースリップの中央に加えた。SDS(0.3%)を添加すると、誘導体化された表面にではなく、捕捉プローブへの特異的な取付けが促進されることがわかった。試料を室温で30分間インキュベートし、取付けられていない材料を、3×SSPE中で10分間洗い落とした後、DDI水中で短時間洗い落とした。次に、スライドを乾燥してから、顕微鏡上で組み立てた。取付けられたRCR産物を、アダプターの一領域に相補的な11マーTAMRA標識プローブをハイブリダイズさせることにより、可視化した。上記のプロトコールにより、2〜4平方ミクロンあたり約1RCR産物というRCR産物密度が得られる。得られたカバースリップの代表的な画像を
図3に示す。
【実施例3】
【0131】
蛍光標識プローブを使ったRCR産物の識別
炭疽菌(Bacillus anthracis)およびペスト菌(Yersinia pestis)の診断領域に由来するPCR産物を一本鎖DNAに変換し、ユニバーサルアダプターに取付けた。次に、それら二つの試料を混合し、RCRを使って一緒に複製し、ガラス表面上にランダムアレイとして沈着させた。
図4に図解するように、アンプリコン特異的プローブによる逐次的ハイブリダイゼーションにより、アレイ上の各スポットが上記二つの配列のどちらか一方にユニークに対応すること、およびそれらをそのプローブと特異的に結びつけうることが示された。この結果は、RCR反応によって生成する約100〜1000コピーのDNAフラグメントを持つサブミクロンサイズのDNAコンカテマー中に存在するDNAを同定する際の感受性および特異性を示している。炭疽菌由来の155bpアンプリコン配列およびペスト菌由来の275bpアンプリコン配列を、プライマーペアのうち一方のプライマーをリン酸化したPCRプライマーを使って、標準的なPCR技術で増幅した。リン酸化された鎖をラムダエキソヌクレアーゼで分解することにより、一本鎖型のPCR産物を生成させた。次に、一本鎖産物をユニバーサルプアダプターに連結することができるように、T4 DNAポリヌクレオチドキナーゼを使って、残った鎖の5'末端をリン酸化した。ターゲットの5'末端とユニバーサルアダプターの3'末端とに相補的なテンプレートオリゴヌクレオチドの助けを借りて、ユニバーサルアダプターをターゲット分子の5'末端に、T4 DNAリガーゼを使って連結した。次に、アダプターを連結したターゲットを、アダプターとターゲットの3'末端とに相補的な塩基を持つブリッジングオリゴヌクレオチドを使って環状化した。エキソヌクレアーゼIを使った処理により、線状DNA分子を除去した。一本鎖試料を混合し、ブリッジングオリゴヌクレオチドを開始プライマーとして、環状化したアダプター-ターゲット分子をφ29ポリマーゼで複製することにより、RCR産物(DNAコンカテマー)を生成させた。
【0132】
アミン修飾オリゴヌクレオチドの取付けに備えてカバースリップを準備するために、カバースリップをまずカリウム/エタノール溶液中で洗浄した後、すすいで、乾燥した。次に、それらを3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アセトン、および水の溶液で45分間処理し、100℃の乾燥器で1時間キュアした。最終ステップとして、カバースリップをp-フェニレンジイソチオシアネート(PDC)、ピリジン、およびジメチルホルムアミドの溶液で、2時間処理した。捕捉オリゴヌクレオチド(配列5'-GGATGTTAGGAAGACAAAAGGAAGCTGAGG-3')(配列番号14)はユニバーサルアダプター配列に相補的であり、5'末端がアミン基および2つのC-18リンカーで修飾される。取付けのために、0.1M NaHCO
3中10μMの捕捉オリゴ10μlを、誘導体化したカバースリップの中央にスポットし、70℃で10分間乾燥し、水ですすいだ。DNAコンカテマーのアレイを作るために、DNAコンカテマーを含有するRCR反応液を3×SSPEで10倍に希釈し、次に、そのうちの20μlを、カバースリープ表面上の固定化捕捉オリゴヌクレオチド全体に、水分飽和チャンバ中で30分間、沈着させた。次に、DNAコンカテマーを含むカバースリップを反応チャンバに組み入れ、2mLの3×SSPEですすいだ。炭疽菌およびペスト菌に由来するアレイ化ターゲットコンカテマー分子を、TAMRA標識オリゴマー:プローブBrPrb3(配列:5'-CATTAACGGAC-3'(配列番号15)、ユニバーサルアダプター配列に特異的に相補的)、プローブBa3(配列:5'-TGAGCGATTCG-3'(配列番号16)、Ba3アンプリコン配列に特異的に相補的)、プローブYp3(配列:5'-GGTGTCATGGA-3'、Yp3アンプリコン配列に特異的に相補的)で、順次プローブした。プローブは、室温の3×SSPE中、0.1μMの濃度で20分間、アレイにハイブリダイズさせた。過剰なプローブを2mlの3×SSPEで洗い落とした。画像をTIRF顕微鏡で撮影した。次に、1mlの3×SSPEを使って80℃で5分間、プローブを剥がすことにより、次のハイブリダイゼーションに備えて、アレイ化ターゲット分子を準備した。
【0133】
図4に示すように、3つのプローブの逐次ハイブリダイゼーションから得えられる画像をオーバーレイすることにより、アダプタープローブとハイブリダイズしたアレイ化分子の大半は、アンプリコン1プローブ(例えば
図4の「A」)またはアンプリコン2プローブ(例えば
図4の「B」)のどちらか一方にだけハイブリダイズし、両方にハイブリダイズするものは極めて少ないことがわかる。この特異的ハイブリダイゼーションパターンは、アレイ上の各スポットが1タイプの配列(炭疽菌アンプリコンまたはペスト菌アンプリコンのどちらか)だけを含有することを実証している。
【実施例4】
【0134】
縮重塩基を含有する合成80マーオリゴヌクレオチドから作製されたアレイ化コンカテマーにおける塩基位置のデコーディング
縮重塩基を含有する合成オリゴヌクレオチドの個々の分子は4つの部分集団に分割することができ、それぞれは、その特定位置に、A、C、GまたはT塩基を持ちうる。この合成DNAから作製されるコンカテマーのアレイは、スポットの約25%が、それぞれの塩基を持ちうる。
図5に示すように、それら4つの塩基に特異的なプローブペアの、4回にわたる連続的ハイブリダイゼーションおよびライゲーションにより、これらのコンカテマーの部分集団をうまく同定できるということを実証した。5'リン酸化3'TAMRA標識ペンタマーオリゴヌクレオチドを、4つのヘキサマーオリゴヌクレオチドの一つとペアにした。これら4つのライゲーションプローブペアのそれぞれは、A、C、GまたはT含有型ターゲットのいずれか一つにハイブリダイズするはずである。大半のターゲットについて3より高い識別スコアが得られたことから、ナノボールターゲット間の一塩基の相違を同定できることが実証された。識別スコアは、最も高いスポットスコアを、同じスポットの他の3つの塩基特異的シグナルの平均で割ったものである。アッセイ条件(バッファー組成、全ての構成要素の濃度、サイクル中の各ステップの時間および温度)を調節することにより、シグナル対バックグラウンドおよび完全マッチ対ミスマッチ比が高くなると期待される。これは、6マープローブのスポット型アレイで行った類似のライゲーションアッセイによって実証された。この場合、完全マッチ/バックグラウンド比は約50、平均完全マッ対/ミスマッチ比は30だった。これらの結果はさらに、連続的プローブサイクルの数を増やすか、1サイクルにつき異なる色素で標識された4つ以上のプローブを使用することによって、コンカテマー中に存在するDNAの部分配列または完全配列を決定できることも実証している。合成オリゴヌクレオチド(T1A:5'-NNNNNNNNGCATANCACGANGTCATNATCGTNCAAACGTCAGTCCANGAATCNAGATCCACTTAGANTAAAAAAAAAAAA-3')(配列番号13)は、位置32に縮重塩基を含有している。ユニバーサルアダプターをこのオリゴヌクレオチドに連結し、そのアダプター-T1A DNAを、上述のように環状化した。このターゲットでのローリングサークル複製(RCR)反応を使って作製したDNAコンカテマーを、ランダムアレイ上にアレイした。このランダムアレイ上の各スポットは、一分子のT1Aに由来するタンデムに複製されたコピーに相当するので、アレイされた特定スポット中のDNAは、T1Aの位置32に対応する位置にA、またはC、またはG、またはTのいずれか一つを含有するだろう。これらの部分集団を同定するために、4つの塩基のそれぞれに特異的な4つのライゲーションプローブセットを使用した。CAAACという配列を持つ、T1Aの位置33〜37に対応する5'リン酸化3'TAMRA標識ペンタマーオリゴヌクレオチド(プローブT1A9b)を、位置27〜32に対応する以下のヘキサマーオリゴヌクレオチドの一つとペアにした:ACTGTA(プローブT1A9a)、ACTGTC(プローブT1A10a)、ACTGTG(プローブT1A11a)、ACTGTT(プローブT1A12a)。これら4つのライゲーションプローブペアのそれぞれは、A、C、GまたはT含有型T1Aのいずれか一つにハイブリダイズするはずである。各ハイブリダイゼーションサイクルについて、T4 DNAリガーゼを含有するライゲーション/ハイブリダイゼーションバッファー中、20℃で5分間、プローブをアレイと共にインキュベートした。過剰のプローブを20℃で洗い落とし、TIRF顕微鏡で画像を撮影した。次のハイブリダイゼーションの準備をするために、結合しているプローブを剥がした。
【0135】
全てのスポットの位置を確定するためにアダプター特異的なプローブ(BrPrb3)をアレイにハイブリダイズさせた。次に、上記4つのライゲーションプローブペアを、0.4μMで、アレイに順次ハイブリダイズさせることにより、
図5に4つのスポットについて図示するように、塩基を同定した。スポットの大半が4つのライゲーションプローブペアの一つだけと関連づけられること、したがってT1Aの位置32にある塩基の性質を特異的に決定できることは、明らかである。
【実施例5】
【0136】
合成80マーオリゴヌクレオチドの末端にある二つの縮重塩基のデコーディング
上記の合成オリゴヌクレオチドは、ランダムなゲノムDNA末端を真似て、5'末端に8個の縮重塩基を含有している。このオリゴヌクレオチドから作製されるコンカテマーは、アダプター配列のすぐ隣に置かれたこれら8つの縮重塩基を持ちうる。既知のアダプター配列に隣接する未知の2塩基を配列決定することが実行可能であることを実証するために、アダプターの3'末端にハイブリダイズさせるための特異的配列を持つ12マーオリゴヌクレオチド(UK0-12配列5'-ACATTAACGGAC-3')(配列番号17)をアンカーとして使用し、BBNNNNNNの形をした16個のTAMRA標識オリゴヌクレオチドを、配列読み取りプローブとして使用した。各ハイブリダイゼーションサイクルにつき、0.2μMのUK0-12アンカープローブおよび0.4μMのBBNNNNNNプローブを、T4 DNAリガーゼを含有するライゲーション/ハイブリダイゼーションバッファー中、20℃で10分間、アレイと共にインキュベートした。過剰のプローブを20℃で洗い落とし、TIRF顕微鏡で画像を撮影した。次のハイブリダイゼーションの準備をするために、結合しているプローブを剥がした。BBNNNNNNプローブセットのサブセット(すなわちBBの代りにGA、GC、GGおよびGT)を使って、
図6に示すように、これら4つのプローブの一つに特異的に結合するターゲットから作製されたコンカテマーアレイ上のスポットを、20を超える平均完全マッチ/ミスマッチ比で、同定することができた。
【0137】
定義
本明細書で使用する核酸化学、生化学、遺伝学、および分子生物学の用語は、その分野の標準的な専門書および教科書(例えばKornbergおよびBaker「DNA Replication」第2版(W.H. Freeman、ニューヨーク、1992);Lehninger「Biochemistry」第2版(Worth Publishers、ニューヨーク、1975);StrachanおよびRead「Human Molecular Genetics」第2版(Wiley-Liss、ニューヨーク、1999);Eckstein編「Oligonucleotides and Analogs: A Practical Approach」(Oxford University Press、ニューヨーク、1991);Gait編「Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach」(IRL Press、オックスフォード、1984)など)のものに従う。
【0138】
「アンプリコン」は、ポリヌクレオチド増幅反応の産物を意味する。すなわち、これは、一つ以上の出発配列から複製されるポリヌクレオチド(通常は二本鎖)の集団である。一つ以上の出発配列は、同じ配列の一つ以上のコピーであってもよいし、異なる配列の混合物であってもよい。アンプリコンは、その産物が一つ以上のターゲット核酸の多数の複製物であるような種々の増幅反応によって生成されうる。一般に、アンプリコンを生成する増幅反応は、反応物(ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)の塩基対形成が、反応産物の生成に必要な相補鎖をテンプレートポリヌクレオチド中に持つという点で、「テンプレート駆動型(template-driven)」である。一態様として、テンプレート駆動型反応は、核酸ポリメラーゼによるプライマー伸長、または核酸リガーゼによるオリゴヌクレオチドライゲーションである。そのような反応には、参照により本明細書に組み入れられる以下の文献に開示されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、線形ポリメラーゼ反応、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)、ローリングサークル増幅などがあるが、これらに限るわけではない:Mullisらの米国特許第4,683,195号;同第4,965,188号;同第4,683,202号;同第4,800,159号(PCR);Gelfandらの米国特許第5,210,015号(「taqman」プローブを使ったリアルタイムPCR);Wittwerらの米国特許第6,174,670号;Kacianらの米国特許第5,399,491号(「NASBA」);Lizardiの米国特許第5,854,033号;青野らの特開平4-262799(ローリングサークル増幅)など。一態様として、本発明のアンプリコンは、PCRによって生成される。増幅反応の進行と同時に反応産物を検出することができるような検出ケミストリーを利用できるのであれば、増幅反応は「リアルタイム」増幅(例えばLeoneら, Nucleic Acids Research, 26: 2150-2155 (1998)などの参考文献に記述されている後述の「リアルタイムPCR」または「リアルタイムNASBA」)であってもよい。本明細書において「増幅する」という用語は、増幅反応を行うことを意味する。「反応混合物」は、反応を実行するのに必要な反応物(これには、例えば反応中にpHを選択したレベルに維持するための緩衝剤、塩類、補因子、補集剤などが含まれうるが、それらに限るわけではない)を全て含有する溶液を意味する。
【0139】
「相補的または実質上相補的」とは、ヌクレオチド間または核酸間(例えば、二本鎖DNA分子の二つの鎖の間、またはオリゴヌクレオチドプライマーと一本鎖核酸上のプライマー結合部位との間など)で起こるハイブリダイゼーションもしくは塩基対形成または二重鎖の形成を指す。相補的ヌクレオチドは、一般に、AとT(もしくはAとU)またはCとGである。二つの一本鎖RNAまたはDNA分子は、適当なヌクレオチド挿入またはヌクレオチド欠失を加えて最適に整列して比較した時に、一方の鎖のヌクレオチドが他方の鎖のヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は少なくとも90%〜95%、より好ましくは約98〜100%と対を形成するのであれば、実質上相補的であるという。あるいは、RNAまたはDNA鎖が選択的ハイブリダイゼーション条件下でその相補鎖にハイブリダイズする場合には、実質的相補性が存在する。典型的には、少なくとも14〜25ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約65%の相補性、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%の相補性がある場合に、選択的ハイブリダイゼーションが起こるだろう。参照により本明細書に組み入れられるM. Kanehisa, Nucleic Acids Res. 12:203 (1984)を参照されたい。
【0140】
「二重鎖」は、完全にまたは部分的に相補的であって、Watson-Crick型の塩基対形成を起こして安定な複合体を形成する、少なくとも二つのオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを意味する。「アニーリング」および「ハイブリダイゼーション」という用語は、安定な二重鎖の形成を表すために、可換的に使用される。二重鎖に関して「完全にマッチした」とは、二重鎖を構成しているポリヌクレオチド鎖またはオリゴヌクレオチド鎖が、各鎖中のすべてのヌクレオチドが他方の鎖中のヌクレオチドとWatson-Crick塩基対形成を起こすような形で、互いに二本鎖構造を形成することを意味する。「二重鎖」という用語は、使用しうるヌクレオシド類似体、例えばデオキシイノシン、2-アミノプリン塩基を持つヌクレオシド、PNAなどの対形成を包含する。2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド間の二重鎖中の「ミスマッチ」とは、その二重鎖中の一対のヌクレオチドがWatson-Crick結合を起こせないことを意味する。
【0141】
ゲノムまたはターゲットポリヌクレクレオチドに関して「遺伝子座」または「座」とは、ゲノムまたはターゲットポリヌクレオチドの連続した小領域またはセグメントを意味する。本明細書にいう遺伝子座または座は、ミトコンドリアDNAを含むゲノムにおけるヌクレオチド、遺伝子、もしくは遺伝子の一部の位置を指すか、またはそれがある遺伝子内にあるかどうか、もしくはある遺伝子と関連するかどうかとはかかわりなく、ゲノム配列の任意の連続部分を指しうる。一態様として、遺伝子座は、ミトコンドリアDNAを含むゲノム配列の任意の部分(単一のヌクレオチドから数百(例えば100〜300)ヌクレオチド長のセグメントまで)を指す。
【0142】
「遺伝子変異体」は、遺伝子座における一つ以上のヌクレオチドの置換、逆位、挿入、もしくは欠失、またはある遺伝子座から別の遺伝子座へのDNAの転座を意味する。一態様として、遺伝子変異体は、ある個体集団中に存在しうる、ある遺伝子座における選択的ヌクレオチド配列であって、その集団の他のメンバーと比較してヌクレオチド置換、挿入、および欠失を含むものを意味する。もう一つの態様として、ある遺伝子座における挿入または欠失は、もう一つの個体集団における同じ座と比較して、そのような座における1〜10ヌクレオチドの付加または不在を含む。
【0143】
「ハイブリダイゼーション」は、二つの一本鎖ポリヌクレオチドが非共有結合的に結合して安定な二本鎖ポリヌクレオチドを形成する過程を指す。「ハイブリダイゼーション」という用語は、三本鎖ハイブリダイゼーションも指しうる。その結果生じる(通常は)二本鎖のポリヌクレオチドが「ハイブリッド」または「二重鎖」である。「ハイブリダイゼーション条件」は、典型的には、約1M未満の塩濃度、より一般的には約500mM未満、約200mM未満の塩濃度を含むだろう。「ハイブリダイゼーションバッファー」は、5×SSPEなどの緩衝塩溶液である。ハイブリダイゼーション温度は、5℃という低温であってもよいが、典型的には22℃より高く、さらに典型的には約30℃より高く、好ましくは約37℃を超える。ハイブリダイゼーションは、通常はストリンジェントな条件、すなわちプローブがそのターゲットサブ配列にハイブリダイズするような条件で行われる。ストリンジェントな条件は配列に依存し、状況が異なればストリンジェントな条件も異なる。長いフラグメントほど、特異的ハイブリダイゼーションには、高いハイブリダイゼーション温度を必要とする。相補鎖の塩基組成および長さ、有機溶媒の存在、ならびに塩基ミスマッチの程度などといった他の因子もハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼしうるので、いずれか一つのみの絶対値よりもパラメータの組み合わせの方が重要である。一般に、ストリンジェントな条件は、所定のイオン強度およびpHにおけるその具体的配列についてのTmを約5℃下回るように選択される。代表的なストリンジェント条件には、少なくとも0.01M〜1M以下のNaイオン濃度(または他の塩)、pH7.0〜8.3、および少なくとも25℃の温度が含まれる。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mMリン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)および25〜30℃の温度という条件は、アレル特異的プローブハイブリダイゼーションに適している。ストリンジェントな条件については、例えばSambrook, FritscheおよびManiatis「Molecular Cloning A laboratory Manual」(第2版、Cold Spring Harbor Press (1989))およびAnderson「Nucleic Acid Hybridization」(第1版、BIOS Scientific Publishers Limited (1999))を参照されたい(これらの参考文献は、上述のあらゆる目的に関して、その全てが、参照により本明細書に組み入れられる)。「特異的に〜にハイブリダイズする」または「〜に特異的にハイブリダイズする」などの表現は、あるヌクレオチド配列または配列群が複雑な(例えば全細胞)DNAまたはRNA混合物中に存在する場合に、ある分子が、ストリンジェントな条件下で、その特定ヌクレオチド配列または配列群に、実質的に、またはもっぱらそれだけに、結合、二重鎖化、またはハイブリダイズすることを指す。
【0144】
「ライゲーション」は、テンプレート駆動型の反応において、二つ以上の核酸(例えばオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド)の末端間に、共有結合を形成することを意味する。結合の性質は多種多様であることができ、ライゲーションは酵素的または化学的に行うことができる。本明細書にいうライゲーションは、通常は、酵素的に行われて、あるオリゴヌクレオチドの末端ヌクレオチドの5'炭素と、もう一つのオリゴヌクレオチドの3'炭素との間に、リン酸ジエステル結合を形成する。さまざまなテンプレート駆動型ライゲーション反応が、以下の参考文献に記述されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる:Whitelyらの米国特許第4,883,750号;Letsingerらの米国特許第5,476,930号;Fungらの米国特許第5,593,826号;Koolの米国特許第5,426,180号;Landegrenらの米国特許第5,871,921号;XuおよびKool, Nucleic Acids Research, 27: 875-881 (1999);Higginsら, Methods in Enzymology, 68: 50-71 (1979);Englerら, The Enzymes, 15: 3-29 (1982);ならびにNamsaraevの米国特許出願公開第2004/0110213号。酵素的ライゲーションは、通常は、使用するそのリガーゼに必要な二価カチオン、補酵素などを全て含有する緩衝塩類溶液であるリガーゼバッファー中で行われる。
【0145】
「マイクロアレイ」または「アレイ」とは、核酸を含有する部位のアレイを保持する表面(通常は平面状または実質的に平面状の表面)を持つ固相支持体であって、アレイの各メンバー部位が、固定化されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの同一コピーを含み、空間的に明確であり、アレイの他のメンバー部位とはオーバーラップしないようになっているもの、すなわち、部位が空間的に不連続であるものを指す。場合によっては、マイクロアレイの部位は、不連続であるだけでなく、相隔てられていてもよい。すなわち、異なる部位は境界を共有するのではなく、通常は核酸が結合していない部位間領域によって、隔てられる。空間的に明確なハイブリダイゼーション部位はさらに、その位置およびその固定化オリゴヌクレオチドのアイデンティティが既知であるか、または例えばその使用前に、予め決定されるという点で、「アドレス可能」であってもよい。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが一本鎖であり、固相支持体に、通常は5'末端または3'末端によって共有結合される。別の態様では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、固相支持体に、例えばビオチン-ストレプトアビジン結合、共有結合された捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションなどによって、非共有結合的に取付けられる。従来のマイクロアレイ技術は、以下の参考文献に概説されている:Schena編「Microarrays: A Practical Approach」(IRL Press、オックスフォード、2000);Southern, Current Opin. Chem. Biol., 2: 404-410 (1998);Nature Genetics Supplement, 21: 1-60 (1999)。本明細書にいう「ランダムアレイ」または「ランダムマイクロアレイ」は、空間的にアドレスされない空間的に不連続なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの領域を持つマイクロアレイを指す。すなわち、取付けられたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのアイデンティティは、少なくとも最初はその位置から識別することができないが、アレイ上で特定の作業(例えば配列決定、デコーディングプローブのハイブリダイゼーションなど)を行うことによって決定することができる。ランダムマイクロアレイは、しばしば、マイクロビーズの平面的アレイから形成される(例えばBrennerら, Nature Biotechnology, 18: 630-634 (2000);Tulleyらの米国特許第6,133,043号;Stuelpnagelらの米国特許第6,396,995号;Cheeらの米国特許第6,544,732号など)。
【0146】
「ミスマッチ」は、Watson-Crick塩基対G-CおよびA-T以外の、塩基A、T(またはRNAの場合はU)、G、およびCの任意の二つの間の塩基対を意味する。考えうる8つのミスマッチは、A-A、T-T、G-G、C-C、T-G、C-A、T-C、およびA-Gである。
【0147】
「突然変異」および「多形」は、ヌクレオチド配列が基準DNA配列または野生型配列または正常組織配列とは一つ以上の塩基の挿入および/または欠失によって異なっているDNA分子(例えば遺伝子)を表すために、通常はある程度可換的に用いられる。文脈によっては、突然変異が、ある生物にとって病的であるかどうかとはかかわりなく、任意の塩基変化であると理解されるのに対して、多形は、通常、直接的な病理学的帰結を伴わない塩基変化であると理解されるという点で、Cotton(「Mutation Detection」Oxford University Press、オックスフォード、1997)の用法に従う。
【0148】
本明細書にいう「ヌクレオシド」には、2'-デオキシ型および2'-ヒドロキシル型を含む天然ヌクレオシド、例えばKornbergおよびBaker「DNA Replication」第2版(Freeman、サンフランシスコ、1992)に記述されているものが包含される。ヌクレオシドに関して、「類似体」には、例えばScheit「Nucleotide Analogs」(John Wiley、ニューヨーク、1980);UhlmanおよびPeyman, Chemical Reviews, 90: 543-584 (1990)などに記述されている修飾塩基部分および/または修飾糖部分を持つ合成ヌクレオシドが含まれる。ただし、それらは、特異的ハイブリダイゼーションが可能であるものとする。そのような類似体には、結合特性を強化する、複雑度を下げる、特異性を増加させるなどの目的で設計された合成ヌクレオシドが含まれる。強化されたハイブリダイゼーション特性またはヌクレアーゼ耐性を持つ類似体を含むポリヌクレオチドは、UhlmanおよびPeyman(前掲);Crookeら, Exp. Opin. Ther. Patents, 6: 855-870 (1996);Mesmaekerら, Current Opinion in Structual Biology, 5: 343-355 (1995)などに記述されている。二重鎖安定性を強化する能力を持つポリヌクレオチドの代表的タイプには、オリゴヌクレオチドN3'→P5'ホスホロアミデート(本明細書では「アミデート」という)、ペプチド核酸(本明細書では「PNA」という)、オリゴ-2'-O-アルキルリボヌクレオチド、C-5プロピニルピリミジンを含有するポリヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)などの化合物が含まれる。そのようなオリゴヌクレオチドは市販されているか、あるいは文献記載の方法を使って合成することができる。
【0149】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長によって特定のDNA配列をインビトロ増幅するための反応を意味する。言い換えると、PCRは、プライマー結合部位に挟まれたターゲット核酸のコピーまたは複製物を数多く作製するための反応であって、以下に挙げるステップの一回以上の繰返しを含む:(i)ターゲット核酸を変性するステップ、(ii)プライマー結合部位にプライマーをアニールさせるステップ、および(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で核酸ポリメラーゼによってプライマーを伸長するステップ。通例、反応は、サーマルサイクラー装置中で、各ステップに最適化された異なる温度を循環する。具体的温度、各ステップにおける継続時間、ステップ間の変化速度は、例えば次に挙げる文献からもわかるように、当業者によく知られる多くの因子に依存する:McPhersonら編「PCR: A Practical Approach」および「PCR2: A Practical Approach」(IRL Press、オックスフォード、それぞれ1991および1995)。例えば、Taq DNAポリメラーゼを使用する通常のPCRでは、二本鎖ターゲット核酸を>90℃の温度で変性し、50〜75℃の範囲の温度でプライマーをアニールさせ、72〜78℃の範囲の温度でプライマーを伸長することができる。「PCR」という用語は、例えば、限定するわけではないが、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量PCR、マルチプレックスPCRなどといった、派生形の反応も包含する。反応液量は数百ナノリットル(例えば200nL)から数百μL(例えば200μL)までの範囲にわたる。「逆転写PCR」または「RT-PCR」は、ターゲットRNAを相補一本鎖DNAに変換する逆転写反応が先行して行われた後、増幅が行われるPCRである(例えばTecottらの米国特許第5,168,038号、この特許は参照により本明細書に組み入れられる)。「リアルタイムPCR」は、反応の進行と同時に反応産物(すなわちアンプリコン)の量がモニターされるPCRである。リアルタイムPCRには多くの形態があり、それらは主として、反応産物のモニタリングに使用される検出ケミストリーが異なる(例えばGelfandらの米国特許第5,210,015号(「taqman」);Wittwerらの米国特許第6,174,670号および同第6,569,627号(インターカレーティング色素);Tyagiらの米国特許第5,925,517号(分子ビーコン);これらの特許は参照により本明細書に組み入れられる)。リアルタイムPCR用の検出ケミストリーは、Mackayら, Nucleic Acids Research, 30: 1292-1305 (2002)に概説されており、この参考文献も参照により本明細書に組み入れられる。「ネステッドPCR」は、第1PCRのアンプリコンが、新しいプライマーセット(そのうち少なくとも一方は最初のアンプリコンの内部位置に結合するもの)を用いる第2PCR用の試料になるという、二段階PCRを意味する。ネステッド増幅反応に関して本明細書にいう「初期プライマー」とは、第1アンプリコンを生成させるために使用するプライマーを意味し、「二次プライマー」とは、第2(またはネステッド)アンプリコンを生成させるために使用する一つ以上のプライマーを意味する。「マルチプレックスPCR」は、複数のターゲット配列(または単一のターゲット配列と一つ以上の基準配列)が同じ反応混合物中で同時に行われるPCRを意味する(例えばBernardら, Anal. Biochem., 273: 221-228 (1999)(二色リアルタイムPCR))。通常は、増幅される各配列ごとに、異なるプライマーセットを使用する。「定量PCR」は、試料または標本における一つ以上の特定ターゲット配列の存在量を測定するために設計されたPCRを意味する。定量PCRには、そのようなターゲット配列の絶対的定量と相対的定量の両方が含まれる。定量的測定は、一つ以上の基準配列を使ってなされ、その基準配列はターゲット配列とは別個に、またはターゲット配列と一緒に、アッセイされうる。基準配列は、試料または標本にとって内在性または外因性であることができ、後者の場合は一つ以上の競合的テンプレートを含みうる。典型的な内在性基準配列には、以下に挙げる遺伝子の転写物のセグメントがある:β-アクチン、GAPDH、β
2-ミクログロブリン、リボソームRNAなど。定量PCRの技法は、以下に挙げる参考文献(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に例示されるように、当業者には周知である:Freemanら, Biotechniques, 26: 112-126 (1999);Becker-Andreら, Nucleic Acids Research, 17: 9437-9447 (1989);Zimmermanら, Biotechniques, 21: 268-279 (1996);Diviaccoら, Gene, 122: 3013-3020 (1992);Becker-Andreら, Nucleic Acids Research, 17: 9437-9446 (1989)など。
【0150】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は可換的に用いられ、それぞれに、ヌクレオチドモノマーの線状ポリマーを意味する。本明細書で使用するこれらの用語は二本鎖型も指しうる。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを構成するモノマーは、モノマー間相互作用の規則的パターン(例えばWatson-Crick型の塩基対形成、塩基スタッキング、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型の塩基対形成など)を介して天然ポリヌクレオチドに特異的に結合することにより、二重鎖型または三重鎖型を形成する能力を持つ。そのようなモノマーおよびそれらのヌクレオシド間結合は天然の結合であってよいし、その類似体(例えば天然類似体または非天然類似体)であってもよい。非天然類似体として、例えばPNA、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、蛍光体またはハプテンなどのラベルの取付けを可能にする連結基を含有する塩基を挙げることができる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの使用が、酵素的処理、例えばポリメラーゼによる伸長、リガーゼによるライゲーションなどを必要とする場合はいつでも、そのような場合のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、どの位置にも、または一部の位置には、ヌクレオシド間結合、糖部分、または塩基の一定の類似体を、そのような類似体が酵素反応に適合しない場合に、含有しないことは、当業者には理解されるだろう。ポリヌクレオチドは典型的には、数モノマー単位(例えば5〜40、この場合、それらは通常、「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる)から、数千モノマー単位までのサイズを持つ。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが文字(大文字または小文字)の配列(例えば「ATGCCTG」など)によって表される場合はいつでも、別段の表示がない限り、または文脈から明らかでない限り、ヌクレオチドは左から右に向かって5'→3'の順であること、そしてまた、「A」がデオキシアデノシンを表し、「C」がデオキシシチジンを表し、「G」がデオキシグアノシンを表し、「T」がチミジンを表し、「I」がデオキシイノシンを表し、「U」がウリジンを表すことは言うまでもない。別段の注記がない限り、用語法および原子番号付け規約は、StrachanおよびRead「Human Molecular Genetics 2」(Wiley-Liss、ニューヨーク、1999)に開示されているものに従う。通常、ポリヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合によって連結された4つの天然ヌクレオシド(例えば、DNAの場合はデオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、RNAの場合はそのリボース相当物)を含む。しかしそれらは、非天然ヌクレオチド類似体(例えば修飾された塩基、糖、またはヌクレオシド間結合を含むもの)を含んでもよい。酵素が、その活性にとって、例えば一本鎖DNA、RNA/DNA二重鎖など、特定のオリゴヌクレオチド基質またはポリヌクレオチド基質要求性を持つことは、当業者には明白であるので、オリゴヌクレオチド基質またはポリヌクレオチド基質に関して適当な組成を選択することは、とりわけ専門書、例えばSambrookら「Molecular Cloning」第2版(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1989)などの参考文献の手引きがあれば、当業者の知識で十分に対応することができる。
【0151】
「プライマー」は、ポリヌクレオチドテンプレートとの二重鎖を形成したときに、核酸合成の開始点としての役割を果たし、伸長された二重鎖が形成されるようにその3'末端からテンプレートに沿って伸長される能力を持つ、天然または合成のオリゴヌクレオチドを意味する。伸長過程で付加されるヌクレオチドの配列は、テンプレートポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常、プライマーはDNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは通常、9〜40ヌクレオチドの範囲、または場合によって14〜36ヌクレオチドの範囲の長さを持つ。
【0152】
「リードアウト(readout)」は、測定および/または検出される一つまたは複数のパラメータであって、数字または値に変換することができるものを意味する。文脈により、リードアウトは、収集または記録されたそのようなデータの実際の数値表現を指しうる。例えば、マイクロアレイからの蛍光強度シグナルのリードアウトは、マイクロアレイの各ハイブリダイゼーション部位で生じるシグナルの位置および蛍光強度である。したがってそのようなリードアウトは、さまざまな方法で、例えばマイクロアレイの画像、数表などとして、記録または保存することができる。
【0153】
「固形支持体」「支持体」および「固相支持体」は可換的に使用され、剛体または半剛体表面を一つまたは複数持つ材料または材料群を指す。多くの実施形態では、固形支持体の少なくとも一つの表面が実質的に平坦であるだろうが、一部の実施形態では、異なる化合物のための合成領域を、例えばウェル、隆起領域、ピン、エッチングされたトレンチなどによって、物理的に分離することが望ましいこともあるだろう。他の実施形態によれば、固形支持体は、ビーズ、樹脂、ゲル、ミクロスフェア、または他の幾何学的構成をとるだろう。マイクロアレイは通常、少なくとも一つの平面的固相支持体、例えばガラス製顕微鏡スライドなどを含む。
【0154】
DNAの「基準配列」または「基準集団」とは、基準DNA集団と試験DNA集団の相補鎖間で起こるヘテロ二重鎖の形成によって、DNAまたはRNAの試験集団(または「試験DNA配列」もしくは「試験DNA集団」)と比較される、個々のDNA配列またはDNA(またはそこから誘導されるRNA)の収集物を指す。完全にマッチしたヘテロ二重鎖が形成される場合は、基準集団と試験集団の各メンバーは同一であり、そうでない場合、それらは互いの変異体である。典型的には、基準集団のメンバーのヌクレオチド配列は既知であり、その配列は、典型的には、Genbank、Emblなどの配列データベースに記載されている。一態様として、DNAの基準集団は、既知細胞タイプまたは組織ソース由来のcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーを含みうる。例えば、DNAの基準集団は、健常個体の組織に由来するcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーを含み、DNAの試験集団は、罹患個体の同じ組織に由来するcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーを含みうる。DNAの基準集団は、個々のポリヌクレオチド、cDNA、遺伝子またはそのエクソンを組み合わせた収集物、例えば既知p53変異体の全てまたはサブセットをコードする遺伝子またはエクソン、シグナル伝達経路の遺伝子を含んでもよい。
【0155】
ある分子の、もう一つの分子への結合(例えばプローブに対する標識ターゲット配列の結合)に関して「特異的」または「特異性」とは、それら二分子の間の認識、接触、および安定な複合体の形成と、それに加えて、その分子の他の分子との認識、接触、または複合体形成が実質的に少ないこととを意味する。一態様として、第2分子に対する第1分子の結合に関して「特異的」とは、第1分子が、ある反応または試料中の別の分子を認識し、その分子と複合体を形成する限りにおいて、それが第2分子との複合体を最も多数形成することを意味する。好ましくは、この最も多数とは、少なくとも50パーセントである。一般に、特異的結合事象に関与する分子は、その表面上または空洞中に、互いに結合する分子間の特異的認識をもたらす部分を持つ。特異的結合の例には、抗体-抗原相互作用、酵素-基質相互作用、ポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド間の二重鎖または三重鎖の形成、受容体-リガンド相互作用などがある。特異性または特異的結合に関して本明細書にいう「接触」とは、例えばファンデルワールス力、水素結合、塩基スタッキング相互作用、イオン相互作用および疎水相互作用などの弱い非共有結合的化学相互作用がそれらの分子の相互作用を支配するのに十分なほど二つの分子が近くにあることを意味する。
【0156】
本明細書で使用する「T
m」という用語は「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団の半分が一本鎖に解離した状態になる温度である。当技術分野では核酸のTmを算出するための等式がいくつかよく知られている。標準的な参考文献に示されているように、核酸が1M NaClの水性溶液中にある場合、Tm値の簡単な推定値は、式:Tm=81.5+0.41(%G+C)によって算出されうる(例えばAndersonおよびYoung「Quantitative Filter Hybridization, in Nucelic Acid Hybridization」(1985)を参照されたい)。他の参考文献(例えばAllawi, H.T.およびSantaLucia, J., Jr., Biochemistry 36, 10581-94 (1997))には、配列特徴だけでなく構造特徴および環境特徴を考慮してT
mを算出する代替計算方法が記載されている。
【0157】
「試料」は、通常、生物学的ソース、環境ソース、医学的ソース、または患者ソースから得られたある量の材料であって、ターゲット核酸の検出、測定、または標識が求められるものを意味する。一方において、これは、標本または培養物(例えば微生物学的培養物)を包含するものとする。他方において、これは、生物学的試料および環境試料をどちらも包含するものとする。試料は、合成起源の標本を含みうる。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)の体液、固形物(例えば糞便)または組織、ならびに液状および固形の食品および飼料製品および成分、例えば乳製品、野菜、肉および肉副産物、および廃棄物でありうる。生物学的試料は、患者から採取された材料、例えば限定するわけではないが、培養物、血液、唾液、脳脊髄液、胸水、乳汁、リンパ液、喀痰、精液、針吸引物などを含みうる。生物学的試料は、さまざまな科の家畜、ならびに野生動物、例えば限定するわけではないが、有蹄類、熊、魚、齧歯類などの動物の全てから得ることができる。環境試料は、表層物質、土壌、水および産業試料などの環境材料、ならびに食品および乳製品を加工するための設備、器具、装置、用具、使い捨て品および非使い捨て品を含みうる。これらの例が本発明に適用可能な試料タイプを限定するとみなしてはならない。
【0158】
上記の教示内容は、本発明を例示するためのものであって、本発明の請求項の範囲がそれらの詳細によって限定されることはない。本発明の好ましい例示的実施形態を記述したが、そこに本発明から逸脱することなくさまざまな改変および変更を加えうることは当業者には明白であり、本発明の真の趣旨および範囲に含まれるそのような改変および変更は全て、本願請求項に包含されるものとする。