【実施例】
【0092】
以下の実施例により本実施の形態をさらに詳しく説明するが、本実施の形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0093】
[オキシメチレン樹脂組成物の構成成分]
実施例および比較例に用いたオキシメチレン樹脂組成物の構成成分を以下に説明する。各オキシメチレンコポリマーの組成等を下記表1に示し、該オキシメチレンコポリマーに加えた各成分を下記表2に示す。
【0094】
1.(A)オキシメチレンコポリマーの調製
1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整した。該重合機に、トリオキサンを4kg/hrと、コモノマーとして1,3−ジオキソランと、連鎖移動剤としてメチラールとを供給して重合を行なった。コモノマーの供給量は、(A)オキシメチレンコポリマー中のオキシメチレン成分aに対するコモノマー成分bのモル比率((b/a)×100)が表1に示すように1.3mol%となるように調整を行なった。また、同様にメチラールの供給量は、(A)オキシメチレンコポリマーのメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が表1に示すように9.0g/10分となるように調整を行なった。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10
-5molとなる量で、連続的に添加し重合を行ない、粗オキシメチレンコポリマーを得た。
【0095】
次に、重合機より排出された粗オキシメチレンコポリマーを、トリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活した粗オキシメチレンコポリマーを遠心分離機でろ過した。その後、この粗オキシメチレンコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、上記式<1>で表される窒素量に換算して20質量ppmとした。当該添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
【0096】
前記乾燥後の粗オキシメチレンコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融している粗オキシメチレンコポリマー100質量部に対して、水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間の条件で、その不安定末端部分の分解除去処理を行なった。不安定末端部分の分解されたオキシメチレンコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、さらにオキシメチレンコポリマー100質量部に対し、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.35質量部を添加し、溶融混練し造粒することにより、オキシメチレンコポリマー(A−1)のペレットを得た。
【0097】
1.2.オキシメチレンコポリマー(A−2)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が5.0g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−2)のペレットを得た。
【0098】
1.3.オキシメチレンコポリマー(A−3)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が3.0g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−3)のペレットを得た。
【0099】
1.4.オキシメチレンコポリマー(A−4)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が2.0g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−4)のペレットを得た。
【0100】
1.5.オキシメチレンコポリマー(A−5)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)が1.0g/10分となるようにメチラールの供給量を調整した以外は、上記1.1.オキシメチレンコポリマー(A−1)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−5)のペレットを得た。
【0101】
1.6.オキシメチレンコポリマー(A−6)の調製
オキシメチレンコポリマー(A)中のコモノマー比率が、オキシメチレン成分に対して、0.6mol%となるようにコモノマーの供給量を調整した以外は、上記1.3.オキシメチレンコポリマー(A−3)の調製と同様にして、オキシメチレンコポリマー(A−6)のペレットを得た。
【0102】
〈コモノマー成分のモル比率の測定方法〉
上記コモノマーの供給量の調整により得られた各オキシメチレンコポリマーにおけるオキシメチレン成分a(モル数)に対するコモノマー成分(オキシアルキレン成分)b(モル数)の割合(モル%)(以下「(b/a)×100」とも記す。)を下記表1に示す。ここで(b/a)×100は、以下のようにして求めた。
【0103】
得られた各ポリオキシメチレンコポリマーを、溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)−d
2(D化率97%、和光純薬98%assay)中に、24時間かけて溶解させることにより、ポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を調製した。
【0104】
上記のポリオキシメチレンコポリマーの1.5質量%溶液を検体として、JEOL−400核磁気共鳴分光計(
1H:400MHz)を用い、55℃および積算回数500回の条件下、オキシメチレン成分aと、当該成分a以外のオキシアルキレン成分bとの帰属ピークを積分した。このようにして得られた積分値から、オキシメチレン成分a(モル数)に対するオキシアルキレン成分b(モル数)の割合(モル%)「(b/a)×100」を求めた。
【0105】
〈メルトフローレートの測定方法〉
上記連鎖移動剤の供給量の調整により得られた各オキシメチレンコポリマーのメルトフローレートを下記表1に示す。ここでメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)は、メルトインデクサー(東洋精機(株)社製、F−W01)を用いて求めた。
【0106】
2.オキシメチレンホモポリマー(A’)の調製
攪拌羽根の付いた、連続式にモノマー等を供給できるタンクに、脱水したホルムアルデヒドガス100質量部、触媒としてジメチルジステアリルアンモニウムアセテート0.1質量部を投入した。次いで、該タンクに、分子量調節剤として無水酢酸を、重合後のオキシメチレンホモポリマーのメルトフローレートが3.0g/10分となるような量で連続的に供給しながら、58℃で重合を行い、粗ポリオキシメチレンホモポリマーを得た。
【0107】
得られた粗ポリオキシメチレンホモポリマーを、ヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒に入れ、140℃で2時間、末端基を化学処理した。末端基を化学処理した粗ポリオキシメチレンホモポリマーを、120℃、3時間、1mmHgの条件で真空乾燥した。次に、乾燥した粗オキシメチレンホモポリマー100質量部に対して、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を0.35質量部添加し、ベント付2軸押出機で溶融混練することによりオキシメチレンホモポリマーのペレットを得た。得られたオキシメチレンホモポリマー(A’)について、上記同様のメルトフローレート(ISO1133条件D、190℃)の測定を行なったところ、3.0g/10分であった。
【0108】
【表1】
3.(B)無機系充填材
(B)無機系充填材として用いた(B−1)〜(B−3)を以下に示す。
【0109】
該(B)無機系充填材の平均粒径は、以下のとおり求めた。測定対象となる無機系充填材粒子のサンプリングを行い、サンプリングした粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率1千倍から5万倍で撮影し、得られた画像において無作為に選んだ最低100個の無機系充填材粒子の、それぞれの最大粒径を測定し、得られた各粒径の相加平均を平均粒径として求めた。
(B−1):電気化学製カーボン アセチレンブラック(平均粒径0.04μm、アスペクト比3未満)。
(B−2):東レ製CF ミルドファイバー(平均繊維径7μm、長さ30μm)。
(B−3):旭化成メタルズ製アルミニウムペーストGX−3119(平均粒径9μm)。
【0110】
4.(C)ポリアルキレンオキサイド
(C)ポリアルキレンオキサイドとして用いたポリエチレンオキサイド(C−1)〜(C−5)を以下に示す。該(C)ポリアルキレンオキサイドの平均分子量は、以下のとおり求めた。まず、測定する(C)ポリアルキレンオキサイドをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させた。そして、この溶解液を、上記コモノマー成分のモル比率((b/a)×100)の測定方法におけるJEOL−400核磁気共鳴分光計(
1H:400MHz)を使用して
1H−NMR解析を行い、オキシアルキレン成分と末端水酸基との帰属ピ−クの積分値の割合から、(C)ポリアルキレンオキサイドの平均分子量を求めた。
(C−1):三洋化成製PEG−4000(平均分子量3400)。
(C−2):三洋化成製PEG−10000(平均分子量11000)。
(C−3):三洋化成製PEG−20000(平均分子量20000)。
(C−4):明成化学製R−150(平均分子量140000)。
(C−5):明成化学製E−60(平均分子量1100000)。
【0111】
5.(D)紫外線劣化防止剤
(D)紫外線劣化防止剤として用いた(D−1)〜(D−3)を以下に示す。該(D)紫外線劣化防止剤の融点はカタログなどに開示されている値とした。
(D−1):チバ・ガイギー製チヌビン234(ベンゾトリアゾール系、融点約139℃)。
(D−2):チバ・ガイギー製チヌビン320(ベンゾトリアゾール系、融点約154℃)。
(D−3):BASF製UVINUL400(非ベンゾトリアゾール系、融点約144℃)。
【0112】
6.(E)ヒンダードアミン系物質
(E)ヒンダードアミン系物質として用いた(E1−1)〜(E2−2)を以下に示す。該(E)ヒンダードアミン系物質の分子量は開示されている分子構造から計算した。
(E1−1):三共ライフテック製サノールLS−770(分子量約480)。
(E1−2):三共ライフテック製サノールLS−765(分子量約508)。
(E2−1):旭電化製アデカスタブLA−68(分子量約1900)。
(E2−2):旭電化製アデカスタブLA−63(分子量約2000)。
【0113】
[オキシメチレン樹脂組成物等のペレットの製造]
〈ペレット(P1〜P22)の製造〉
実施例1〜
8、10、11及び15〜22並びに参考例1〜4で用いたオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜P22)を、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名「TEM−26SS押出機」、L/D=48、ベント付き)を用いて以下のとおり製造した。
【0114】
前記2軸押出機のホッパー下を冷却水により冷却し、210〜215℃に設定し、ダイヘッドを210℃に設定した。この温度条件で、表2に示すように(A)オキシメチレンコポリマー、(B)無機系充填材、(C)ポリアルキレンオキサイド、必要に応じて(D)紫外線劣化防止剤や(E)ヒンダードアミン系物質を、前記2軸押出機のトップより定量フィーダーを用いて供給した。スクリュー回転数150rpmの条件で前記各成分の混合物を溶融混練し、ベントより脱気し、ダイヘッドから溶融混練物を押し出し造粒し、実施例1〜
8、10、11及び15〜22並びに参考例1〜4で用いたオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜P22)を得た。なお、造粒中にオキシメチレン樹脂組成物の生産性を後述のとおり評価した。
【0115】
〈ペレット(P23)の製造〉
表3に示すように、オキシメチレンコポリマー(A−1)だけを配合した((B)および(C)成分等を配合しなかった)以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P9)の製造と同様の方法でオキシメチレンコポリマー(A−1)のペレット(P23)を製造した。
【0116】
〈ペレット(P24)の製造〉
表3に示すように、(B)無機系充填材を配合しなかったこと以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P24)を製造した。
【0117】
〈ペレット(P25)の製造〉
表3に示すように、無機系充填材(B−1)の配合量を9.5質量部とした以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P25)を製造した。
【0118】
〈ペレット(P26)の製造〉
表3に示すように、ポリアルキレンオキサイド(C−3)に代えて、ポリアルキレンオキサイド(C−1)を用いた以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P26)を製造した。
【0119】
〈ペレット(P27)の製造〉
表3に示すように、ポリアルキレンオキサイド(C−3)に代えて、ポリアルキレンオキサイド(C−5)を用いた以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P27)を製造した。
【0120】
〈ペレット(P28)の製造〉
表3に示すように、(C)ポリアルキレンオキサイドを配合しなかったこと以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P28)を製造した。
【0121】
〈ペレット(P29)の製造〉
表3に示すように、ポリアルキレンオキサイド(C−3)の配合量を20質量部とした以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P29)を製造した。
【0122】
〈ペレット(P30)の製造〉
表3に示すように、オキシメチレンコポリマー(A−1)に代えて、上記調製したオキシメチレンホモポリマー(A’)を用いた以外は、上述のオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P2)の製造と同様の方法でオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P30)を製造した。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
[実施例1〜
8、10、11及び15〜22並びに参考例1〜4]
上記製造したオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P1〜22)を下記条件で射出成形することにより、
図4に示す形状の各成形体Y(外装用接合部品に相当)を作製した。作製した各成形体Yについて、後述のとおり各評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
【0125】
射出成形機:(株)日本精鋼所製;J110AD−180H、
シリンダー温度:200℃、
射出圧力:80MPa、
射出時間:20秒、
冷却時間:10秒、
金型温度:80℃。
【0126】
[比較例1〜8]
上記製造したペレット(P23〜30)を実施例1と同様の条件で射出成形することにより、
図4に示す形状の各成形体Y(外装用接合部品に相当)を作製した。作製した各成形体Yについて、後述のとおり各評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0127】
[評価項目]
1.生産性の評価
オキシメチレン樹脂製外装用接合部品の生産性の評価は、オキシメチレン樹脂組成物等のペレットの生産性および当該接合部品の代表として
図4に示す成形体Yの成形性および品位により行った。なお、成形体Yは、
図4に示すように取付金具Xと接合して用いることを想定した。成形により得られた成形体Yおよび準備した取付金具Xの概寸を
図5に示す。取付金具Xは、SUS304製でありバリがないことを確認し、成形体Yと接触するエッジ部は0.4rの面取りを施した。
【0128】
(1)オキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価
オキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価は、2軸押出機のトルクを、無機系充填材を含まないペレット(P23)を造粒した場合と同じになるように調整して造粒したときの、オキシメチレン樹脂組成物等の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、並びにペレットの外観および臭気などにより、総合的に行った。具体的には、無機系充填材を含まないペレット(P23)を造粒した場合を評価の基準として、以下のとおりオキシメチレン樹脂組成物等の生産性評価を行った。
【0129】
(生産性評価)
◎:平均造粒量の低下が20%未満でペレット(P23)の生産性と同等の場合、
○:平均造粒量の低下が20%以上30%未満の場合、
◇:平均造粒量の低下が30%以上40%未満の場合、
△:平均造粒量の低下が40%以上50%未満、またはペレットの着色・臭いなどが若干発生した場合、
×:平均造粒量の低下が50%以上、またはストランドギレもしくはストランド径が不安定になったりするなど明らかに造粒状態が悪化した場合。
【0130】
(2)オキシメチレン樹脂製外装用接合部品の品位評価
外装用接合部品の品位の評価には、上述のとおり実施例および比較例で作製した
図4に示す成形体Yを用いて行なった。
【0131】
なお、実施例および比較例における成形体Yの成形は、四個取り金型を用いて30ショット実施し、その中で10ショットから30ショットまでの計量時間や離型状況などの運転状態の観察と、20ショットから30ショットの成形体Yの品位(外観(光沢、平滑性、シルバーやフローマークなど)や色、それらの安定性など)の目視による観察とを行なった。
【0132】
無機系充填材などを含まないオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P23)を用いた比較例1では、10ショットには成形が安定し、品位も問題ない成形体Yが得られた。
【0133】
当該比較例1の場合を評価基準として、以下のとおり外装用接合部品の品位評価を行った。
【0134】
(品位評価)
◎:成形体Yの生産性が比較例1の場合と同等で、成形体Yの使用に問題のない場合、
◇:品位が安定するまでに時間がかかったたり、生産のバラツキなどが確認されたりした場合、
△:成形体Yについて、色のバラツキやシルバーなどが部分的に確認された場合、
×:成形体Yについて、意匠面の中央にシルバーなどが確認されたり、光沢度が大きく低下したりするなど、生産や使用に際し明らかに不良と判断された場合。
【0135】
2.靭性の評価
靭性の評価は、実施例および比較例で作製した成形体Yにおいて、
図6に示すような部位(上下の四角囲み部分)を万能試験機(島津製作所製、オートグラフAGS−X)で引張試験(試験方法としてはISO527に準拠、試験は50cm/minで行い、伸度はチャック間伸度とした)をn=5で実施し、得られた引張伸度(%)を相加平均した値を用いて行なった。
【0136】
比較として用いる値は、比較例1における、無機系充填材などを含まないオキシメチレン樹脂組成物のペレット(P23)から得られた成形体Yの評価結果とした。従来技術である比較例1で得られた成形体Yの引張伸度は20%未満であった。
【0137】
(評価基準)
×:引張伸度が20%未満だった場合、
△:少し改善がみられ引張伸度が25%未満20%以上の場合、
◇:引張伸度が30%未満25%以上の場合、
○:引張伸度が35%未満30%以上の場合、
◎:引張伸度が35%以上と大きく改善が見られた場合。
【0138】
3.耐久性などの評価
耐久性などの評価には、実施例および比較例で作製した成形体Yを使用した。各評価はn=5で行い、以下のとおり、(1)外観、(2)色差、(3)耐久性の順で実施した。外装用接合部品の耐久性などの評価の前処理として、成形体Yを
図6のようにセットし、サンシャインウェザーメーターS300(スガ試験機製)を用いて、JIS−A1415に準じて、ブラックパネル温度63℃、雨有り条件で2000時間の耐候試験処理を行なった。
【0139】
(1)外観
サンシャインウェザーメーターより成形体Yを取り出し、意匠面の汚れや水滴を軽くふき、上記耐候試験処理の実施前後の成形体Yの外観を観察した。当該成形体Yの外観の評価基準は以下のとおりとした。
【0140】
(外観の評価基準)
×:明らかに外観の違いや変化が確認され、外装用接合部品としての使用が不可能と判断される場合、
△:意匠面に一部白化やブリードなどの変化が観察された場合、
◇:意匠面以外に白化やブリードなどの変化が確認された場合、
○:多少外観の違いが確認された場合、
◎:外観の違いがほとんど確認されなかった場合。
【0141】
なお、従来技術である比較例1で得られた成形体Yの上記耐候試験処理の実施後の外観は、意匠面全体に黄変や白化(くもり)が確認された。
【0142】
(2)色差
耐候試験処理を実施していない成形体Yと上記外観観察を行なった成形体Yを用いて、色彩色差計CR−200(ミノルタ製)にて色差ΔEを測定した。当該成形体Yの色
差ΔEの評価基準は以下のとおりとした。
【0143】
(色差の評価基準)
◎:ΔEが2.5未満の場合(耐候試験処理の実施前後で色の差がわかり難いレベル
)、
○:ΔEが2.5以上3.0未満の場合、
◇:ΔEが3.0以上3.5未満の場合、
△:ΔEが3.5以上4.0未満の場合、
×:ΔEが4.0以上の場合(耐候試験処理の実施前後で色差が目視で明らかにわか
るレベル)。
【0144】
なお、従来技術である比較例1で得られた成形体Yの色差は4.0以上であった。
【0145】
(3)耐久性
上記取付金具Xと耐候試験処理後の成形体Yとを用いて、以下に示すような(1)〜(4)工程を繰り返して行った(
図7参照)。
(1)所定の位置の待機状態から、取付金具Xの開口部Wから成形体Yを挿入する(待機状態→挿入動作)、
(2)成形体Yの先端部が取付金具Xの天板に触れるまで押込む(挿入動作→接合状態)、
(3)成形体Yの嵌合部(Z部)を押して(補助動作)、取付金具Xより引き抜く(抜去動作)、
(4)所定の待機位置まで成形体Yを抜きだす(抜去動作→待機状態)。
【0146】
上記工程(1)〜(4)は、挿入動作0.5秒、補助動作0.5秒、抜去動作0.5秒、待機状態0.5秒で行なった。上記工程(1)〜(4)を繰り返し、成形体Yの変化(折れ、削れ、へたれ、極度の白化など)を観察し、変化が生じるまでの回数を測定した。当該回数により、外装用接合部品としての成形体Yの耐久性を以下のとおり評価した。
【0147】
(耐久性の評価基準)
×:1×10
5回未満の場合、
△:1×10
5回以上3×10
5未満の場合、
◇:3×10
5回以上1×10
6未満の場合、
○:1×10
6回以上3×10
6未満の場合、
◎:3×10
6回以上と大きく改善がみられた場合。
【0148】
なお、比較例1で得られた成形体Yは、1×10
5回未満で折れとなり、折れた成形体Yに一部削れが確認された。
【0149】
[実施例1〜8および比較例1〜8の評価結果]
実施例1〜8および比較例1〜8の評価結果を下記表4に示す。
【0150】
実施例1〜8および比較例1〜8の評価結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、その生産性を従来技術に比して著しく損なうことなく、従来技術よりも一層優れた靭性および耐久性などを有することがわかった。
【0151】
実施例1〜3、比較例1〜3の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品、すなわち(B)無機系充填材を特定量含有する樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性を維持でき、優れた耐久性などを有することがわかった。
【0152】
実施例2、4、5、比較例1、4、5の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品、すなわち平均分子量を特定量に制御したポリアルキレンオキサイド(C)を含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性を維持できることがわかった。さらに好ましい平均分子量に制御したポリアルキレンオキサイド(C)を含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性を維持でき優れた耐久性などを有する傾向にあることがわかった。
【0153】
実施例2、6、7、比較例1、6、7の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品、すなわちポリアルキレンオキサイド(C)を含有する樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性を維持でき優れた靭性を有することがわかった。さらに、アルキレンオキサイド(C)の含有量を好ましい範囲にすることにより、接合したときの装着感が良好となる傾向にあることがわかった。
【0154】
実施例2、8、比較例1、8の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品において、コモノマー含有量を好ましい範囲に制御した(A)オキシメチレンコポリマーを含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性を維持できる傾向にあることがわかった。
【0155】
【表4】
[実施例2、
10、11及び15〜22並びに参考例1〜4および比較例1の評価結果]
実施例
10、11及び15〜22並びに参考例1〜4の評価結果を下記表5に示す。
【0156】
実施例
10、11及び15〜22並びに参考例1〜4の評価結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、その生産性を従来技術に比して著しく損なうことなく、従来技術よりも一層優れた靭性および耐久性などを有することがわかった。
【0157】
実施例2、
10及び11、
参考例1及び2、比較例1の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品において、好ましいメルトフローレートの(A)オキシメチレンコポリマーを含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性をより維持でき優れた靭性を有する傾向にあることがわかった。
【0158】
実施例2、
参考例3及び4、比較例1の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品において、好ましい平均粒径の(B)無機系充填材を含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、生産性をより維持でき、さらに優れた靭性を有する傾向があることがわかった。
【0159】
実施例2、15〜17、比較例1の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品において、好ましい(D)紫外線劣化防止剤を含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、さらに優れた耐久性などを有する傾向にあることがわかった。
【0160】
実施例2、18〜22、比較例1の結果から、本実施の形態のオキシメチレン樹脂製外装用接合部品において、好ましい(E)ヒンダードアミン系物質を含む樹脂組成物からなるオキシメチレン樹脂製外装用接合部品は、さらに優れた耐久性などを有する傾向にあることがわかった。
【0161】
【表5】